俳句日記

俳句日記
平成二十三年二月十七日 ふと日記代わりに
一日一句作ることを思いつき始める。
出光 隆
二月十七日 庭に色々な小鳥来る ホオジロは珍客
・頬白につい聞き流す頼みごと
わ け
・推し量る無言の理由や亀鳴けり
二月十八日 火曜日はゴミ出し
・ゴミ出して番茶一服春の朝
二月十九日 甥の貴弘の結婚式
・春風やあいつも一家構へるか
二月二十日 長女祐子の子ゆりな「クマのオカリナ」美術館に展示さる
・拙なさも佳きもの春の美術展
二月二十一日 庭の梅が二、三輪咲く
昨年末 三十年職を伴にした高山君事故で意識不明
・萌え出づるはや気配して寒明くる
二月二十二日
・意識なく友の漂う春の闇
二月二十三日 やっと暖かくなってきた つくしは?
相続で法務局へ 手続きは面倒なり
・三つ二つ春めく土手に子らの影
二月二十四日
・永き日に相続の部署巡る人
二月二十五日 妻の故郷田川へ 三井の旧社宅はさら地に
・セピア色の炭鉱の町黄砂降る
二月二十六日 長女祐子の子けいた来て裏庭の陽だまりで遊ぶ
うつしよ
・現世を丸く映してシャボン玉
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うま
二月二十七日 おだてられ夕食の担当となる
明日は大陸からの風が強まるそうだ
・春野菜のパスタ美しと褒められて
二月二十八日
京都杉本家の古き雛の数々放映されたことあり
・春一番汚れし衣脱ゐで来よ
三月一日
北アフリカ・中東でインターネット革命続く
・ふくよかに色やはらかに京の雛
三月二日
三月三日 次女菜穂子向いのマンションに浦安から転居 荷物のみ明日入る
・春嵐カダフィーもまた呑まれ行く
こ
・娘の家族春わが町に帰り住む
三月四日 けいた引越しタンスの下敷きになり右足を折る
うごめ
大臣等の裏情報、官僚からマスコミへリーク続く
・春服の幼き足を箪笥折る
三月五日
卒業生矢原君の母上よりお手製のいかなご煮届く
・のどか日も怪しきものら 蠢 ゐて
三月六日
モノレール構造物の調査 運転席に乗る
・いかなご煮届き夕餉のゆたかなる
三月七日
産直に新蕗 ヒスイは夏の季語か?
・モノレール春空走り事もなし
三月八日
・ヒスイ色の蕗のきんぴら白ごはん
三月九日 また寒戻る 沖縄のゴーヤーも不作とか
今年初めてのつくし採りだったが
・春寒や仏壇のかね澄み渡る
三月十日
・無念やな川辺の土筆開きをり
・
・
・
三月十一日 西南女子大の平田・古川両先生と直方へ
・ミュシャの絵のステンドグラス春のカフェ
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東北地方に大地震発生
車中で聞く
卒園式待ちの次女と孫たち急遽帰九 その後原発爆発
・春の海いま千年の牙を剥く
・春光に大津波街を呑んで行く
三月十二日
原発の水素爆発続く
・春天にさまよふ霊の数知れず
三月十三日
はる き た
テレビに映る海は穏やかである
・春北風や原発見えぬ毒を吐く
三月十四日
しま
・牙終いのたりのたりの春の海
三月十五日 次女の子のぞみと三月生れの誕生パーティ
広大な被災地の映像 敗戦直後のことを想う
・ケーキの灯孫と吹き消す春の宵
三月十六日
・延々と続く瓦礫や春の雪
三月十七日 関岡家(次女)のマンションに洗濯機を据え付ける
のどか
赤間の法然寺(出光家)へ彼岸参りに
・洗濯機据えて下界は長閑なり
三月十八日
・墓参終へうどんすするや春の昼
三月十九日 小倉の志井(妻方)へ墓参に
単身赴任となった次女の婿和浩 東京から帰る
・春日に墓洗ゐ終へ山近し
三月二十日
整然とした被災者を世界中が賞賛
・婿の来てもつ鍋つつく春炬燵
三月二十一日
・仁心は失せずや春の大禍にも
三月二十二日 十年前 東北大箕浦教授古文書による研究で大津波を警告
・原発委古書軽んじて春大禍
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三月二十三日
子、孫皆で黒崎井筒屋の春セールへ
・春セール男子の身置く所なく
三月二十四日 庭に植えたチューリップ蕾む
・チューリップ蕾み誰が夢膨らます
やや
三月二十五日 次女インフルエンザで孫二人我家へ避難
・流感や嬰預かりて日の永く
三月二十六日 このところ孫二人毎日風呂に入れる
・孫二人あげてゆったり春の風呂
三月二十七日 原発の制御不能続く 依然として危険大
・シーベルトとかベクレルとかで春騒乱
三月二十八日 七十一歳の誕生日
・花ぐもり何事もなく古希過ぐる
三月二十九日 次女全快し 向いのマンションに布団干す
夕食はお好み焼き
・春風の空いっぱいに布団干す
三月三十日
孫ののぞみ 小学校の登校練習
・春キャベツお好み焼きの主役とぞ
三月三十一日
政界では大連合のウワサ
・手を上げて登校練習風光る
四月一日
穴生市場にとびきりの鮮魚あり
・格好の四月馬鹿なる大連合
四月二日
のぞみランドセルで登校練習 教頭先生に似顔絵渡す
・思はずも子と孫に買ふ桜鯛
四月三日
・坂あがり花の上行くランドセル
四月四日 もう素足でも冷たくない。寒さは戻るまい
・板廊下素足に伝はる暖かさ
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四月五日
気掛りだった二島君 外国から四国へ転勤 結婚するという
花見の宴は焼肉とコンビニ弁当 花見弁当懐かし
・花便り教え子の晩婚を知る
四月六日
のぞみ花疲れで発熱
・一の重二の重遠き花見かな
四月七日
歳相応のメニュー
・式迫る新一年生発熱す
四月八日
夕方長女・次女が子等を連れて集まる
・朝がゆに昼にゅうめんや鳥曇
四月九日
忘れられない戦中戦後 木炭車の馬力なし
・子や孫の声響き合ふ春夕餉
四月十日
・若葉坂喘ぐ木炭バスを押し
四月十一日 晴天続く
毎年 亡き義母が庭に植えし球根
・日本晴れ続きて春日傘咲きぬ
四月十二日
のぞみ祝町小学校入学式
・人魂のごとチューリップ闇に浮く
四月十三日
・入学の赤飯そっと頬張りぬ
四月十四日 福岡建設専門学校 土木史の講義始まる
・木の芽晴れ講義始めは僧行基
四月十五日 本日も長女・次女軍団来襲
・春の夜じじさよならの声遠く
四月十六日 海棠咲く 小林秀雄の「中原中也の思い出」再読す
主役のまて貝 鈍くさいが味は秀逸
・海棠や汚れし中也愛づといふ
四月十七日
・脇役の分葱の香る馬刀のぬた
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四月十八日 お月様に何がいる?と問うと
・
・
・
免許更新に北方試験所へ
・春満月あれ宇宙よと孫の言ふ
四月十九日
・この度が終の免許か麦の秋
四月二十日 妻預金から大金を下ろす 心許ない用心棒役
被災地復興は利他の土木で
・大金の用心棒役春の街
四月二十一日
牡丹の花ひらく 速水御舟の牡丹図を想う
・民の春支えよ利他の土木びと
四月二十二日
高山君を見舞う 持参の牡丹 氏から貰った株が成長
・墨色の御舟の牡丹庭に浮き
四月二十三日
句作りの必需品 歳時記・古語辞典・国語辞典・類語辞典
・汝が牡丹虚ろなる目に見まほしく
四月二十四日
・言の葉を削り加へて春忘る
四月二十五日 省エネのため次女宅へもらい風呂
春たけなわ 二階から河川工事現場見ゆ
・もらい湯のほてり残りて朧なり
四月二十六日
のぞみの最初の授業参観
・花なずな工事現場の手弁当
四月二十七日
建設専門学校松下校長を見舞い会食
・手を上げた答へらるるか一年生
四月二十八日
吉祥寺に藤を見に 松尾氏宅に寄るも留守
・ガン病むも校長凛と四月越ゆ
四月二十九日
婿和浩東京より帰る
体が揺れている気がすると言う
・大藤の蔓の渦巻く根元かな
四月三十日
・人はみな陽炎のごと余震酔ひ
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五月一日
明方少し肋間神経痛が痛む
・葱ぼうず肋間の痛み起る頃
五月二日 むかしむかしの贈り物
・若き日に花貝色のバッグ買ひし
五月三日 憲法記念日 妻に頼まれ庭仕事
孫ゆりなのバレー試合を見に行く
・土起し憲法記念の日の過ぎぬ
五月四日
・スパイクを拾ふ少女や夏近し
五月五日 長女の子ゆりな・さあやと一日中神湊の海で遊ぶ
いり ひ
・砂利磯に海そうめんなど拾ひをり
・初夏没日なき砂に子らと腹這ゐて
五月六日 次女の子のぞみ・ちえみ病院へ 連休で人溢れる
・春終る小児科の母子疲れをり
五 月 七 日 妻六十七歳の誕生日なり
・年経るもあざみに深きわが想い
五月八日 馬鹿な想定をする人間さま
ひ と
若葉萌えホトトギス鳴く
・がまがえる想定外とは人間のこと
五月九日 二階から見る対岸の森
急に夏模様
気温二十八度 雨
・ほととぎす森あをあをと装ひぬ
五月十日
・あの頃は下駄でずぶ濡れ五月雨
五月十一日 ちえみの咳と下痢なかなか治まらず
・夏きざす仏間の嬰子すやすやと
五月十二日 雨続く 庭の木にかたつむり
蝸牛あの世も有ると思んべか
・
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五月十三日 ちえみのノンラクト(非常用ミルク)届く
・荷を抱え判子押しゐる若葉陰
五月十四日 夜の皿倉山 中腹にぽつんと灯が見える
母はよくグリンピースの蜜豆を作った
・山の灯になどか惹かるる五月闇
五月十五日
・ヒスイ豆の蜜豆つくる母なりき
じゃこう れ ん り そう
五月十六日 戦後 皹皸は初夏の頃癒ゆ 季語はスイトピー
ひびあかぎれ
大分高専一宮君から新茶届く
・皹 皸 消え去りて麝香連理草
五月十七日
・手揉みなる豊後の新茶かをり立つ
五月十八日 孫のけいたわが家で昼寝
・大の字のアンパンマンや夏座敷
五月十九日 生き物のほとんどがモーツァルト好きだという
・モーツァルト尺取虫はソナタ好き?
五月二十日 関岡家二週間居て昨夜帰る 五時前に目ざめ 鳥の声聞く
・明け競うテッペンカケタカちゅんちゅんカアー
五日ほど前から 夏井いつき著「絶滅寸前季語辞典」を読み 句変調
五月二十一日 省エネで気づく 街灯の明る過ぎる冷たさ
・街灯の白さステテコ寄せ付けず
五月二十二日 うす紅色の夏服の記憶 孫たちにもこんな日が…
早くも沖縄入梅という
・うす紅のがく紫陽花や初デート
五月二十三日
不登校だった友スグルちゃん 木の上に家を造った
・席譲る紺のスーツや風薫る
五月二十四日
・悪童のまほろばなりき夏木立
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五月二十五日 梅 雨 曇 り の 青 田 の 記 憶
・薄き日の乱反射して青田風
五月二十六日 庭の梅の実少なし 一つ落つ
忘れられない戦後 ラジオ歌謡「山のけむり」は初夏?
・落ち梅を捨て去り難く皿に置く
五月二十七日
・初夏や「山のけむり」の遥かなる
五月二十八日 玄関戸換える 工事始まる
数年前孫と公園で採った四葉 本の間に
・若葉風角刈りの匠タイル貼る
五月二十九日
・茶に透けた四葉いく夏重ねしや
五月三十日 戦後の疎開村 芋で飢えをしのいだ
のぞみの初運動会
・芋植えし山の畑のはろばろと
五月三十一日
六月一日
さあやも運動会 二日連続で疲れる
・後から二番目走り五月晴れ
こむら
竹害進む されど竹林清し
・ 腓 返り息止めて聞く時鳥
六月二日
しずか
・古竹に若竹まじり 閑 なり
六月三日 菅首相への不信任案で政局混迷
もり
高見神社の森 溢れんばかりの緑
・政局のごと夏山に雲降りぬ
六月四日
・黄や青の緑に杜の盛りあがる
六月五日 小倉井筒屋へ 夫婦で老眼鏡替える
・新しき眼鏡に見ゆる街涼し
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六月六日 ちえみのど風邪
・夏風邪や嬰子の喉の猫となる
すべ
六月七日 斬新な塗料の技術開発会議 ダイキ工業にて
・夏会議新しき塗料創る術
六月八日 屋根・壁の塗り替え決める
・意を決す家一軒の衣更へ
六月九日「桜桃忌」と「河童忌」 太宰死の遠因は芥川賞落選?
・はらはらと散る生き様や桜桃忌
六月十日 残飯十兆円超 日本国は糖尿病状態なり
・ごきぶりや国の残飯十兆ぞ
六月十一日 雨に柿若葉光る ふと柿の葉ずしを想う
・柿わかば鮨を四角に包みをり
六月十二日 久しぶりで更科の鰊そば食う 鰊は春だが…
・はるばると旅していまぞ鰊蕎麦
六月十三日 雨二日続き 部屋暗し
忘れられない戦中戦後 麦藁の蛍かごも絶滅品種か
・梅雨暗や昼間も座敷わらし居て
六月十四日
・婆と子の小縁で編みし蛍籠
六月十五日 講義の日 博多への車窓風景
忘れられない戦後 雨宿り二句
・水田鋤くその一枚に鷺集ふ
六月十六日
蚤のサーカスなるものありしという
・ジュウジュウと子燕騒ぐ雨宿り
・雨宿り地蔵のだごの気に掛かり
六月十七日
・終の跳びとびて静かな蚤の芸
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六月十八日
佐野・安吉両君と明専会館で昼食談笑
のぞみ父和浩と来て折り紙を折る
・アイスコーヒー追加し利他を論じ合ふ
六月十九日
・梅雨湿り折鶴の羽根ぴんと折る
六月二十日 ちえみ預かるも 不機嫌で泣き止まず
妻紫蘇ジュースの配合を渡辺夫人に聞く
・亀の子のごと反り返る癇の虫
六月二十一日
海も梅雨時化で 不漁続きとか
・紫蘇ジュースレシピを聞きて長電話
六月二十一日
・梅雨夕焼け厨に何かきざむ音
六月二十二日 菅総理再生可能エネルギー法案に賭ける?
・新エネの期待膨らみ夏に入る
六月二十三日 博多行き電車 少年期に遊んだ川渡る
・雲の峰電車は過去の川渡る
・田水満ち山に夏雲わが里は
六月二十四日 今年初物のすいか 勝手口で躓いて割る
・なんとまあ粗忽な妻じゃ西瓜割る
六月二十五日 家の塗装終る
・足場解く職人の汗腕で拭く
六月二十六日 対岸の森では 子の時鳥啼く
・佳き啼きも真似なきもあり時鳥
六月二十七日 ちえみ元気 食欲の塊なり
卒業生菅野君からさくらんぼ届く
・夏痩せもせでぷくぷくが這ひまわる
六月二十八日
・心こもる赤き真珠や初夏の便
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六月二十九日 川柳と俳諧 違いは難しい
・扇風機ともに首振る嬰子かな
六月三十日 木曜日は博多ゆき
忘れられない戦後 お腹空かした兵隊さん
・苗の列一斉に曲がりつばめ飛ぶ
・几帳面な植田の尽きて駅に入る
七月一日
鎮守の宮の夏祭り 雨降る
・兵隊の車座でかぼちゃ食ひし土間
七月二日
子ども山車の後 乳母車連ねる若き母親たち
・広重の雨足まとゐ山車の来る
七月三日
忘れられない戦後 疲れた闇屋の母子わが家で休む
・こども山車追ふ乳母車ややの寝て
七月四日
・闇買ひの母子涼みし黒き土間
七月五日 庭にいたち(季語は冬) 目が合う 毛並み悪し
・ひょろと出て不思議な夏の鼬かな
七月六日 立石夫妻より 五島うどん届く
・五島うどんすすりて想ふ夏の海
七月七日 雨で星見えず
山笠の博多で専門学校の親睦会
・七夕や天の単身赴任かな
七月八日
・宴席に山笠囃子聞こゑくる
七月九日 庭にへび出現し妻狂乱 側溝に消える
・人の逃げ蛇も逃げゐて空の庭
七 月 十 日 梅雨明けか?
・白頭を短く切りて梅雨明けぬ
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七月十一日
近所の古本屋 時々行く
ち
時鳥の鳴き声 交通騒音に負けない
・黴の香の閑かに匂ふ古書の店
七月十二日
み
忘られぬ戦後 目前で鶏が産んだのが不幸
・ほととぎす街道越へて音を贈りくる
ごとう
七月十三日
さ
と
博多へ講義に 車窓に入道雲見ゆ
・卵ドロ梧桐に兄と縛られし
七月十四日
・何時か見し入道雲や郷里の山
七月十五日 夏祭りの深夜二時 ベランダから月下の街見る
朝五時 帆柱山の上に銀の月浮く
・祭り衆眠りて天に月ばかり
七月十六日
グラスファイバー網購入し 台所の網戸更へ
・夏暁や宙に妖しき銀の月
七月十七日
花の少ない夏 百日草は貴重なり
・網戸張るコーヒーゼリーがのど通る
七月十八日
大型夏台風近づく
・百日草仏壇に兄の骨残す
七月十九日
ふ じ ょ き
七月二十日 時鳥は鶯の巣に卵を産むという
・大型ぞやれ夏花に副木せむ
さき
夏台風去る 博多行き車窓の風景
・前の音は子不如帰やはた老鶯や
七月二十一日
・田に写る雲も飛びゐて夏嵐
七月二十二日 懐かしき戦後 蚊帳も絶滅寸前季語か
・蚊帳外され這い出て行きし登校日
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七月二十三日 夜明け前 聞こえるは時計の音のみ
駄句だから二句 中元の季語は秋?
・夏未明こつこつと余生刻む音
七月二十四日
・中元の礼状二駄句で結びをり
七月二十五日 長雨終り 急に蝉の声聞く
行きつけの理髪店 按摩機付の椅子あり
・妄想へ誘い込まるる蝉しぐれ
七月二十六日
・炎昼や理髪の椅子の別天地
七月二十七日 生鮮食品 天気に敏感なり
クマゼミ桜の木に群れ鳴く
・土用波魚菜の値段跳ね上げる
七月二十八日
・ワシワシとワシワシと汗噴き出さす
七月二十九日 中国新幹線 日本原子力村隠し事多し
なめくじ
・蛞蝓に隠し事などさうらはず
七月三十日 庭の百日草に 夏の蝶いろいろ来る
・それぞれに神の意匠や夏の蝶
七月三十一日 昔から 夏休みの悩みの種は絵日記
会長の院政 社長は蜥蜴の尻尾なり
・絵日記の種はや尽きし文月末
八月一日
ビルマで「いい天気ですね」は曇り日の挨拶
・汝が尻尾人も真似をる蜥蜴かな
八月二日
八月三日 日韓の竹島問題続く「あとずさり」は蟻地獄
・涼風や曇天は好き日和なり
ささ
・細やかな領分なりきあとずさり
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八月四日 長崎行き 金子・星野・松田三氏と紅葉館で一泊
・ほっとする心の寄るや蝉の宿
八月五日 紅葉館は市を一望できる山の上に在り
甲子園始まる
・茜背に山黒々と明けの蝉
・鳶の環も街も眼下に夏の宿
八月六日
・サヨナラ打夏の終りの芝に伏す
八月七日 わっしょい百万祭り 花火上るが
・
・
・
僕のベッドでケイタとのぞみが交代で…
・遠慮かな音の少なき遠花火
八月八日
・夏蒲団孫のでんぐり繰り返す
八月九日 関君より毎年石鹸届く
僕が知る唯一の酒房「ママ橋本」 畳むといふ
・シャボン手に行水の子を追ひまわし
八月十日
・暑中見舞ひ酒房畳むの追記あり
八月十一日 ちえみ下痢 食べ過ぎか 寝冷えか
墓参し道の駅「むなかた」へ
・またも下痢やや子に夏の厳しかり
八月十二日
・盆客のあふれかへって道の駅
八月十三日 ちえみ空き腹で泣く 乳母車で高見神社へ
・泣く嬰の声の消えゆく蝉の杜
八月十四日 妻昆布でダシをとり お盆の膳をつくる
敗戦を聞きし母の喜びの顔忘れず
・ミニ膳に仕来りを盛る盆供え
八月十五日
・玉音やミシン踏む母歓喜せし
15
八月十六日
ひとひ
地獄の釜の開く日
む と と せ
八月十七日 長崎純也君帰福 福間で上妻先生・同級生の会
・盆終る一日地獄に安息日
ら
八月十八日 ママ橋本で添田・村上・徳田三氏と俳句談義
・懐かしや六十年を経て夏の宴
・ふる里や恩師と友と朧月
け
・螻蛄の芸なれど愉しき句作かな
・句の意図をまるで解さぬ兜虫
八月十九日 松尾設計社長と神野君来宅 五十年誌戴く
くつわ
民主党代表選 マスコミ烏合の衆なり
・蜩や教え子の社史持ち来る
八月二十日
・マスコミは金太郎飴 轡 虫
八月二十一日 庭の闇に夕顔咲く 源氏物語では薄幸の女性
のぞみとけいた来て喧嘩
・夕顔のなるほど儚き風情かな
八月二十二日
・プリキュアとゴレンジャーとが夏の陣
きこく
八月二十三日 玉砕の硫黄島戦跡の映像
盆過ぎても法師蝉鳴かず 季節変動?
・蝉しぐれ鬼哭に聞こゆ硫黄島
八月二十四日
・異変かなつくつく鳴かぬ日の続く
八月二十五日 隣の百日紅 夏空に燃ゆ
・百日紅かんかん照りの空に燃ゆ
八月二十六日 お盆前賑わった浜辺 僅かに釣人の影
・浜の秋遠く竿振る影の見ゆ
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八月二十七日 長女の野田家夏休の旅行へ 宮崎に
大蔵公園で夏祭り
・夏旅の子に外郎を頼みをり
八月二十八日
韓国テグで世界陸上 室伏金メダル
・芸事の爺婆若し夏祭
八月二十九日
・筋肉の震えて投げるテグの秋
八月三十日 妻百日草を引き コスモスを植える
て
夏休み最後の日 子・孫と卜仙の湯に行く
・庭花は早コスモスに替りゐて
八月三十一日
く ぼ
朝 のぞみ宿題を抱えて登校
・秋気澄み肌滑らかに求菩提の湯
・卜仙の古湯に疲れてカボス買ふ
九月一日
超大型雨台風来襲 衛星写真では
・手に余る宿題抱え九月かな
九月二日
・
・
・
限界集落を守るは老人ばかり
・秋津島すっぽり台風雲の中
九月三日
・台風禍爺婆ばかり流さるる
も
九月四日 わが国は都市型国土保全 山は不全なり
清清しき初秋となる
・雨台風山護る村の流さるる
九月五日
近所に一人住まい増える
・飛行雲台風一過の空を裂く
九月六日
・つくつくとつくつくと鳴き寂しかり
九月七日 久しぶりに荒生田市場へ
・残暑なりショートパンツが跋扈する
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九月八日
空には はや秋の雲
・絹雲や天女残せし未練かな
九月九日 水野先生夫人より多摩川梨届く 美味なり
・程のよき多摩川梨の甘さかな
九月十日 米国の武力イスラム改革は失敗 ネット革命の成功
・イスラムに清かな風や若き民
九月十一日 宗教戦争多し 神さえあれば宗教は不要か…
・宗教も諍いもなく案山子立つ
九月十二日 妻 出尻出っ腹で電話中
かねたたき
子は褒めて育てよ 金言なり
・そのむかし野菊の如き君なりき
九月十三日
何十年も書棚にあった本
・良き事は褒めてやるのさ 鉦 叩
九月十四日
・秋夜長ジャン・クリストフ読み直す
九月十五日 秋空のもと ゆりなと美術館へ
・孫と観る大観の富士秋気澄む
九月十六日 どじょう総理は早速増税案 泥鰌は夏
・庶民には苦き味なり泥鰌汁
九月十七日 庭に夏花残るも 菊勢い増す
沖縄周辺で雨台風迷走 前台風の被災地不安
・日一日空遠のきて菊蕾む
九月十八日
のぞみ・ちえみ等と黒崎井筒屋へ
・紀伊不安また台風の向かひをり
九月十九日
・秋の日に文庫五冊を買ゐ込みし
18
へた
九月二十日 妻包丁で指を切る
夕食担当またスパゲティ
山々も澄んできた
・蔕でなく指を切りをる秋茄子
九月二十一日
彼岸参り 山崎君見舞う
・山々の襞深まりて馬肥ゆる
九月二十二日
・秋彼岸友の寝付きてはや十年
九月二十二日 再放送の鬼平 BGMはジプシーキングス 合うねえ
・鬼平にジプシーキングス江戸の秋
九月二十三日 秋の陽は穏やかなり
汚染農家は一言「おらァなんも悪い事さしてねえ」
・秋の日に顔なでられて髭を切る
九月二十四日
・新米を汚され奥歯かみ締める
九月二十五日 義姉夫婦けんかで 家事拒否という
みみず
故郷の秋 夕陽に熟れた稲の匂い
・爺族は黙るしかなし蚯蚓鳴く
九月二十六日
九月二十七日 「懶」は心に頼ると書く
・見晴るかす稲田の黄金陽の匂ひ
ものう
かす
夕顔満開 空気に潤いあり
・ 懶 きは心に賴る秋思かな
九月二十八日
句作時の癖 周りは非難
・露けしや墨細やかに掠れをり
九月二十九日
・小鋏で髭切る癖や秋深し
九月三十日 渡辺先生と松下君見舞いに
・黄落や病巣を焼く放射線
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十月一日
兄の三回忌 故人の耳痛き話多し
久しぶりに のぞみ・ちえみ来る
・秋の日に自称勝負師三回忌
十月二日
今年二度目の消毒 松枯れの気配収まる
・よちよちと歩きながらも南瓜食う
十月三日
わくらば
六年が一年生の手を引きグループ登校
・松手入れ病葉見ゆる門かぶり
十月四日
・秋うらら集団登校続きをり
十月五日 秋雨降り やわらかに黄ばむ木々
グッデイで金具を買い 籐椅子の修理
・やはらかに色変へて行く秋の雨
十月六日
・籐椅子を修理しゆるりジャスミン茶
十月七日 駐車場の前に工事車
のぞみと高見神社へどんぐり拾いに
・工事車に木犀の木戸塞がるる
十月八日
いんぎん
早くも木々は赤・黄に紅葉す ちえみ来る
・どんぐりも慇懃なるは袴付け
十月九日
・掃きてのち利休の落葉散らしけり
・小さき手に赤黄の落葉あふれをり
十月十日 和やかな秋日和続く
つら
TPPは開国と言うが 日本は鎖国などしていない
・禿頭の車窓に光る秋日和
十月十一日
強欲資本主義の国々 若者に職なし
・猪突やな弱者に辛きTPP
十月十二日
・国々に憂ふ若者秋嵐
20
十月十三日 けいた手に草の実を握って来る
こ
今だに迷うと 父だったらどうするだろうと思う
・草の実の小さき手に在り濃むらさき
十月十四日
・その道は父へ繋がる秋の風
十月十五日 けいた・のぞみとドングリごまを作る
野田家・のぞみと資さんうどんで夕食
・どんぐり独楽回すに指の幼くて
十月十六日
たぎ
はなだのる
大仏開眼時多くの人が握った「 縹 縷 」国宝ではないのか?
・空き腹に鍋焼滾る地獄ほど
十月十七日
はなだのる
亡き兄の言「俺たちの故郷はやっぱり上西郷村やね」
・菊の香や諸人握りし 縹 縷
十月十八日
・いわし雲故郷は一生ついて来る
十月十九日 西南福祉学科講義 夜NHKで金子みすず特集あり
古長氏より新米戴く
・秋の日の講義「みすずの詩」で結び
十月二十日
酒飲みの鶴田来る
・新米を抱えてのそと友の来る
十月二十一日
・奴が来る酒買ひに行く秋日和
十月二十二日 庭の梅に巻き付いた夕顔元気 季節変調
のぞみとバドミントン やっと五回続く
・待宵や未だ夕顔の咲き続く
十月二十三日
・秋あかねバドミントンの羽根追ひぬ
十月二十四日 岡本君来訪 広島牡蠣を戴く
・口中にしあわせ満ちて牡蠣フライ
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十月二十五日 妻蜂に刺される 処置は?
北原亜以子の父 ビルマで戦死という
・すは小水菊起す手を刺されをり
十月二十六日
のぞみ・さあやたちとバドミントン
・秋の夜半「父の戦地」の閉じ難く
十月二十七日
しずか
車窓の秋の村 人影なし
・孫と組むバドミントンや古希の秋
十月二十八日
・静止画のごと 閑 なり秋の村
十月二十九日 夜半に目覚め あれこれ思う
山の北斜面 逆光の中家並み光る
・川のごと想いは流る夜半の秋
十月三十日
・絹雲や遠山襞に屋根光る
粉・イモ・水を混ぜ直接電気を通じて蒸かす
とういも
十月三十一日
・まぼろしか唐芋入れし電気パン
十一月一日 七十年ぶりの夏日とか 季重りもやむなし
・霜月もなを夕顔の咲き続く
十一月二日 こんな日もある
シマムラは超安というが… やっぱり井筒屋へ
・事も無く句も浮び来ぬ暮れの秋
十一月三日
今年は菊遅し やっと仏壇に
・女三代打ち揃ひ秋セール
十一月四日
落目の起業祭 夜店は盛んなようだ
・菊叢にちらほら赤き見え始む
十一月五日
・高炉消えし町時雨るるや起業祭
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十一月六日 蟋蟀も振られて鳴くそうだ
・蟋蟀の誘い鳴きして一人鳴き
十一月七日 下戸でも牧水の気持になる秋
・秋の夜や一杯だけのワイン澄む
・下戸の身も牧水となる秋の夜
十一月八日 連日カレンダーの絵に追われている
想い出の人物 小児結核の友の長姉 姉弟に親無し
・絵暦に腐心の秋の日の過ぎぬ
十一月九日
のぞみ 友達が遊びに来なかった
・弟妹を背負ひし人や残り菊
十一月十日
・友の来ぬ落胆の子とおでん食ふ
十一月十一日 来年のカレンダーの絵完成
渡辺・芳賀・山本・清永四氏と忘年会
・霜月に入り絵暦の仕上がりぬ
十一月十二日
朝夕は少し寒さを感じる
・老いてなほテレビを叱るちゃんちゃんこ
十一月十三日
しーんと耳を圧する静寂の音 幻聴か
・頬を染め子ら冬ざれの橋渡る
十一月十四日
冬の風呂は極楽
・静寂といふ音を聞く冬の夜
十一月十五日
・冬風呂や湯の面に小さき渦の見ゆ
つま
十一月十六日 ちえみと散歩 一人歩きする
・石蕗の花よちよち歩き摘みをり
十一月十七日 好 々 爺 に は な り 難 し
・根性の曲り直らぬどてら爺
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十一月十八日 戦後の冬の農村風景
・漬物屋馬車にだいこを積み上げし
十一月十九日 老子の「道」自然体は難しい
たう
・冬満月「道」に任すは難しき
十一月二十日 やっと冬らしくなる
毎朝 通勤者とは逆に行く人あり
・カーテンを透る日差しの暖かさ
十一月二十一日
朝六時に目覚め蕪村の句集読む
・それぞれに世過ぎのありて冬の朝
十一月二十二日
・トンとだけ雨戸の鳴りて冬の夜
十一月二十三日 松尾氏に誘われ 八幡東区俳句会へ行く
・学童の句に胸詰まる冬の会
「天国はもう秋ですかお父さん」
学童の句
十一月二十四日 都市ゴミに冬鴉
・冬鴉黒く光りてゴミを食む
・恨めしと収集車見る冬鴉
十一月二十五日 義姉 千葉から義母の法事に来る
・あれこれと土産広げて冬法事
十一月二十六日 妻姉妹 志井へ墓参り
・寒菊を切り墓参する老姉妹
十一月二十七日 妻の姉弟と花鳥亭で会食
・湯気立ててスープ運ばれ席和む
十一月二十八日 義姉と大任町へ 温泉と道の駅あり
・もみじ一葉漂ひ来たる露天風呂
十一月二十九日 カレンダー印刷中 コジマへ
・インク切れて車を飛ばす師走道
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十一月三十日 義母の三周忌
少し冬らしくなる 明け方寒し
・寒菊や老僧の経甲高し
十二月一日
朝のニュース アフガンの惨状
・冬布団に潜りて明けの鐘を聴く
十二月二日
・アフガンのニュースを見つつ大根擂る
十二月三日 好みのものを永く使う主義
・愛用の冬ズボンの裾擦り切れし
十二月四日 コマーシャル多過ぎないか?
スポーツ選手 敗者も立派なり
・冬マラソンまた長々とコマーシャル
十二月五日
・「金」目指し敗れし選手冬日射す
十二月六日 木々の落葉 門口に集中
身勝手な正義去り ペシャワール会の出番
・吹く度に落葉の舞を子らの追ふ
十二月七日
・アフガンに冬のみ残す「正義」かな
十二月八日 松尾氏夫妻 冬鮭を持参頂く
・ほほえみと冬鮭持ちて友の来る
十二月九日 蔵書は全て文庫本 千冊余
・本棚に冬日の射して漱石忌
十二月十日 小学生の頃 宮掃除の後 落葉焚で焼芋
・落葉焚き煙潜りて芋埋めし
十二月十一日 ちえみピンクのダルマなり
二階の窓から架設工事見ゆ
・着膨れてやっと出た手のバイバイし
十二月十二日
・ごつごつと冬の音して橋架くる
25
十 二 月 十 三 日 「小さな村の物語」毎週見る
三六歳のこの日「未完成」の透明な悲しみ
・イタリアの村も過疎なり冬日和
・教会の小さき村や日向ぼこ
十二月十四日
・父の余命知りし冬夜の「未完成」
十二月十五日 ちえみ発熱四十度超える
近所の一人住まいの老婦人 最近見えず
・風邪熱に慣れ起きる子に保冷剤
十二月十六日
鼻かぜをひき栗山先生へ
・媼住みゐし家空ろ寒椿
十二月十七日
四国電力の石井君にお歳暮のお礼電話
・鼻風邪に矢鱈薬を与へられ
十二月十八日
・受話器置き気分晴ればれ賀状書く
十二月十九日 とうとう耳鼻咽喉科へ
のぞみ 学校の昼休みぶらんこで落下骨折
・かぜ薬目汁鼻汁治まらず
十二月二十日
・昼休み冬ふらここで骨折す
十二月二十一日 来年は辰年
冬至なり 偶然南瓜食す 柚子風呂沸かす
・賀状絵の龍の手足の難しく
十二月二十二日
金のなる木満開 客は皆驚く
・瞑目し柚子風呂の香に包まるる
十二月二十三日
クリスマスは仏教行事?
・日向ぼこ金のなる木の満開す
十二月二十四日
・国あげて聖夜を祝ふ仏教徒
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十二月二十五日
高校駅伝 外国人で勝つのは如何なものか?
さあや友達と来てマドレーヌ作る
・助っ人の生徒で勝つか冬駅伝
十二月二十六日
暮の大掃除 ガラス戸磨き
・ふんわりとマドレーヌ焼け外は雪
十二月二十七日
すすはき
正月の盛花
・煤掃を終えてガラスを透かし見る
十二月二十八日
・庭の水仙南天を切る年の暮
・浜の家に一族集ひ餅搗きし
十二月二十九日 入院の政近君見舞う 恍惚に入れり
かぶ・ニンジン・里芋洗って切る
・恍惚の友は応へで蜜柑食ふ
十二月三十日
・ふっくらと黒豆も煮ゑ年の暮
十二月三十一日 事多き年も暮れんとす 句作りの締め
・万事夢か大禍の年の暮れむとす
・煩悩が何やも知らで除夜の鐘
夫婦二人だけの元日 夕食は関岡家で焼肉
平成二十四年(二〇一二年)
一月一日
・新しき顔で出てくる初日かな
あ
ご
だ
し
一月二日 箱根駅伝を見ながらの雑煮
・焼き飛魚の雑煮の出汁の品の良さ
一月三日 襷渡し寸前選手倒れる 係員一斉スタートの号砲撃てず
・繋がらぬ襷の背中冬日射す
一月四日 ゆりなたち八女から帰る 大宰府詣したとか
・学問の神へ茶髪も初詣
27
一月五日 サトウの切り餅三個
博多で村上・添田・徳田三氏と新年会
・年波に抗ひて食ふ雑煮餅
一月六日
・終電の早過ぎるこの新年会
一月七日 七 草 粥
ホレストと言うグループ童謡を歌う
・七草に粥の色香の一新す
一月八日
・童謡に温められて雪の夜
一月九日 成人は個々で祝うものでは?
骨折ののぞみ新学期 学校へ車でおくる
・お仕着せを見透かされたる成人式
一月十日
朝 布団の暖かさから抜け出せず
・松過ぎてはやボランティア黄旗振る
一月十一日
想い出の戦後 凸凹道の氷を割りながら登校
・意を決しかねて寝てをる寒の朝
・片手にて眼鏡外しぬ冬寝床
一月十二日
うすらい
・薄氷を道々割りて遅刻かな
一月十三日 ちえみ発熱三十九度あるも元気 菜穂子扁桃腺炎
のぞみ車の中で嘔吐 ちえみ四十度
・冬風邪の嬰どんぶりの粥を食ひ
一月十四日
のぞみ嘔吐下痢症という
・風邪の家へ夕餉運ぶや爺と婆
一月十五日
寒さ増す
・半日も子ら待つ冬の救急院
一月十六日
・足踏みし寒さを凌ぐ赤信号
28
一月十七日 嘔吐下痢症の混乱の中 ほっと一輪
・嘔吐下痢ほっと一輪お茶の花
一月十八日 水餅を知る人も少ない
・井戸水のいよいよ澄みて餅漬し
き く
たび
一月十九日 我以外全員嘔吐下痢症 婿和浩東京より帰る
ゆ
・病院へ行き来七度冬一日
一月二十日 復帰したのぞみの授業参観
のぞみ 玄関先の千両万両でままごと
・参観の父爺並ぶ冬日向
一月二十一日
昨日 松下君逝く(この旅は春)
・実千両一つ葉に盛りおままごと
一月二十二日
・先に逝きし子の待つくにへ春の旅
一月二十三日 松下君の葬儀 日高氏(渡辺先生実弟)も逝かれた由
粉雪振る 夜はカレーらしい
・彼岸へと発つ人続く冬の暮
・死に向ふ孤独の賀状受取りぬ
一月二十四日
若戸大橋本格的補修工事
・粉雪やカレーのかほり家に満つ
一月二十五日
寒波襲来皿倉山も冠雪
・弋叩く若戸の主索雪の積む
一月二十六日
・加賀越後どっかりどか雪降り続く
一月二十七日 妻は蟹缶・干椎茸が目当て
大きな葉に小さなブロッコリー
・一月や解体セールに婆溢る
一月二十八日
・大き葉に雪積み芽ぐむブロッコリー
29
一月二十九日 深夜ゆりな帰らずの報 探し回る
・叱られて帰れぬ孫や冬の夜
一月三十日 ゆりな昨日の迷惑の詫びに来る
NHK俳壇の題「寒雀」
・詫びに来し孫の肩抱く冬の夜
一月三十一日
寒波襲来で雪
・白きものふくら雀へ落ち始め
二月一日
今日も雪ちらちら
・雨戸開く町薄っすらと雪化粧
二月二日
・春の雪屋根白黒を繰り返す
二月三日 昔は「鬼は外」の声が聞こえたものだが…
造り酒屋立春に初絞り
・控へめの声で豆まく老夫婦
二月四日
近年 夏が秋に 冬が春にずれ込むようだ
・こがね色の流れ立春朝絞り
二月五日
冬は続く 子孫来襲
・春立てど草木も人も縮こまる
二月六日
今日は皿倉山が近い
・白菜と肉だんご鍋子孫来る
二月七日
朝ドラ「カーネーション」毎朝観る
・やけに近く皿倉の見ゆ雪晴間
二月八日
・ディオールに拘る「糸子」針供養
二月九日 精神を病む下岸君母子来九 明専会館で会食
・春廻り教え子の欝進みをり
二月十日 ついつい人の気に入らないことを言うから…
・義理チョコに災ひの門噤みをり
30
二月十一日
紀元節 伝承は史実なるべし
ゆ
閃輝暗点現る 先月は十六日
・はろばろと神武の征きし瀬戸は春
二月十二日
・春の闇閃輝暗点現るる
二月十三日 ちえみ首痛がり検査 皆心配するも異常なし
二月も中旬というに梅の膨らみもなし
・三代で白菜餃子作り食ふ
二月十四日
国連での演奏ユーチューブで聞く
・梅無輪さびしき庭を風抜ける
二月十五日
明日から俳句日記二年目に入る
・カザルスの「鳥の歌」聴く春の夜
二月十六日
俳句日記は新たな一日を迎える
・一年の俳句日記や春廻る
二月十七日
・亀鳴かず頬白見ずも春新た
昨年(平成二十三年)二月十七日の句
今日も雪降る 戦後暖房は火鉢だけだった
・頬白につい聞き流わすけ頼みごと
・推し量る無言の理由や亀鳴けり
二月十八日
・家族の手みな集まりし火鉢かな
・春日射す五徳の上であられ炒りし
二月十九日 梅園は閑古鳥 異常なり
正月過ぎより肋間痛む
・梅園にはな無く客無く店主泣く
二月二十日
妻予約を取り車で行く
・肋間の痛みに余寒厳しかり
二月二十一日
・春服とベレーで行くや美容室
31
かげ
二月二十二日 ナニーニョ現象の影響で春寒し
・山かすみ春日景見ぬ日の続く
二月二十三日 栗山医院で針を打つ CT検査異常なし
すべ
ダイキ工業新塗料の技術開発
・寒き春腰に針打つ人の増へ
二月二十四日
IC関連企業の撤退倒産続く 韓国に敗北
・春きざす鍛えし術の門出かな
二月二十五日
教え子多久和来る 乳がん病むも元気なり
・春なれど経営破綻の続く春
二月二十六日
・大玉の蜜柑抱へて佳楠子来る
二月二十七日 神山君定年の挨拶に来る
昨年も二月二十八日の季語は「春一番」
・教え子の来て定年の春と言ふ
二月二十八日
・春一番心待ちして二月過ぐ
二月二十九日 夜のうちに積雪
畑岡君来宅 鳥取大学技官に採用されしという
・名のみ春未だ天気図に残る「寒」
あ
三月一日
渡辺先生より車保険の電話 体調不良とのこと
・北窓開き離職離婚の友に職
三月二日
ダイキ工業社長長女結婚
・亀鳴くや電話かぼそく師も老ひし
三月三日
イエスタデイ・ワンスモア いつ聞いてもいい
・祝婚に「吉野弘詩集」贈る
三月四日
・春の夜のカーペンターズ染みかへる
32
三月五日
今年の桜の満開は四月中旬か?
各地で春一番の予測
・雛仕舞ひやうやう梅花膨らみぬ
三月六日
今年初めてのつくし採り
・春一番らし突風に鴉飛ぶ
三月七日
朝 のぞみと学校へ 胃カメラの検査
・半時も土手を廻りてつくし三本
三月八日
のぞみ昨日からグループを離れ一人で学校
・鼻通る胃カメラ苦し春の昼
三月九日
・三月の独り登校すぐ二年
三月十日 つくし一掴みほど採る まだ早い
・春の淵御舟の鯉のふうわりと
三月十一日 孫たちのためハムスター飼い始める
・子のこころ癒すや春のハムスター
三月十二日 ちえみ暴走 叱ったあとが大切
東京単身赴任の和浩七月に三菱黒崎へ転勤予定
・叱りても抱きしめてやる春日中
三月十三日
のぞみ送りて後 板櫃川の木橋を渡る
・待望の転勤帰九の春便り
三月十四日
午後一時から五時までつくし採り
・街なかにせせらぎを聞く春の橋
三月十五日
のぞみ誕生日 関岡家和弘帰る
・少しでもお裾分けする初土筆
三月十六日
さあや・けいたと井筒屋へ 帰って土筆採り
・二皿半土筆を食ひし孫も居て
三月十七日
・夕日射す川原眩し土筆採る
33
三月十八日
彼岸参りさあやと赤間へ 渡辺家に寄るも不在
・杉木立背に紅梅の真盛り
三月十九日 義弟格と田川へ しげ子叔母さんの仏前に参る
午前中志井へ彼岸参り 午後土筆採り
・遺産分け不意に話題に春彼岸
三月二十日
・手合はせば面現るる春の墓
三月二十一日 土筆採り今年一番の収穫 袋二つ
今日も土筆取り
・上重田とふ棚田村つくし摘む
・目離せばかくれんぼするつくしん坊
三月二十二日
のぞみ終業式 リュック背負い上重田へ遊歩道散策
・空に胞子放ち大書の土筆かな
三月二十三日
昼ラーメン屋へ 四時さあやと上重田へ クレソンとつくし採る
・椿点々足裏弾む木洩れ道
・瀬を挟み紅白のうめ棚田村
三月二十四日
・孫ら引き連れラーメン屋春うらら
三月二十五日 突然血圧百八十 妻の降下剤一錠飲む
降下剤で安定 土筆採りの疲れが原因だったか
・春日に不意に血圧百八十
三月二十六日
岩屋港付近で土筆採り中キイ紛失し農家で電話借りる
・一三〇に血圧下がり長閑なり
三月二十七日
・土筆野にキイ失ゐて電話借る
三月二十八日 七十二歳の誕生日 晴れ
岩屋港であいなめ釣り 釣果小二尾
・春宵やプレゼント寄る誕生日
三月二十九日
・陽炎の海にアイナメ釣れ踊る
34
三月三十日 つくしみやげに長崎へ 途中博多で後藤君に会う
鶴田君と平戸へ
・長崎に心の寄りてつくし食う
三月三十一日
まつらとう
妻とさくらの下見に行くが…
・松浦党のまぼろしのごと海陽炎
四月一日
アイナメ釣り 釣果小四尾 ちえみ喜び食う
・四分咲きを見てすぐ戻る探桜
四月二日
温帯低気圧台風か?
・やっと釣りし春アイナメを孫の食ふ
四月三日
裏門司の港規制多し 釣客のマナー悪し
・保冷車も吹き倒さるる春嵐
四月四日
のぞみロタウイルス感染
・釣人へ厳告の立つ春湊
四月五日
・ロタ感染嘔吐始まり春の乱
四月六日 釣りに花冷えは迷惑 芦屋海岸探索
昨日の松林の風景印象深し
・花冷えに当りの来ない防波堤
四月七日
満開で気づく
・春波のキラキラ透ける砂防林
四月八日
・わが町は桜溢るる町なりき
四月九日 ちえみロタに感染 和宏帰九
汀女の句「外にも出よふるるばかりに春の月」
・ロタ伝染家中にまたも春嵐
四月十日
・春宵に汀女の月の浮かびをり
35
四月十一日
チューリップ咲く 何故か芋弁当を思い出す
二階の窓から見える雲 久しぶりの晴天
・懐かしや木造校舎のいも弁当
四月十二日
かたち
・のんびりと 容 変へをる春の雲
四月十三日 建設専門学校講義始めの日 福間駅で
・再開発消えし車窓の里の春
四月十四日 ちえみ退院
はにか
高見神社の森 餌を待つ子烏の声騒がしく
・花陰に退院の子の含羞みて
四月十五日
のぞみと公園へ凧揚げに
・春夕やけ杜に親待つ七つの子
・春夕焼「かかし座」のごと宮の杜
四月十六日
潮も悪く腕も悪し
・手描き絵の凧くるくると空に舞ふ
四月十七日
は
八重桜遅れて咲く
・ふぐ二匹だけのボウズや鳥曇
四月十八日
は
・ぽったりと亡母の名の八重桜咲く
四月十九日 神は諸々に遍く気を配り 業に手抜きなし
・佐保姫も恥ぢらふ名ぞな犬ふぐり
四月二十日 講義「中村哲医師の土木事業」の感想文微笑まし
プランターのか細いわさび菜強風に負けず
・レポートの文ほほゑまし春の夜
四月二十一日
・わさび菜のか細く耐える春嵐
36
四月二十二日 庭の牡丹一斉に開く
・緋を纏ふ楊貴妃のごと牡丹咲く
四月二十三日 日明釣り公園へ 良形アイナメ釣る
今日も日明釣り公園へ
・春釣りやアイナメ中小メバル小
四月二十四日
・春釣りやアイナメ中にハゼ微小
四月二十五日 雨で外出不可
・ふる里に無性に会ひたき麦の秋
四月二十六日 小沢被告無罪判決
・豪腕や官僚主導に暮の春
四月二十七日 晩春の本木山を車窓に見て博多へ
ひ と
・麦秋の山のあなたに佳人の住む
つ
き
四月二十八日 岡本君広島より來九 明専会館へ
さ
・長談笑杜鵑花の庭のレストラン
四月二十九日 「急がない人生」は怠け者の人生ではない
・急がない人生一日亀の鳴く
四月三十日 おはぎと酒が同居する小倉の屋台放映さる
は る
朝五時から防波堤へ出勤
・熱燗を口が迎へに行く屋台
五月一日
しな
・竿撓る心は晩春の海の中
五月二日 釣り場に着き気付く 道具がない !
・竿がない晩春のうみ二往復
・魚くはへ海鵜のにふと竿の先
37
五月三日 ちえみ吐いて入院 のぞみ公園で自転車練習
・よろけつつペダル漕ぐ子や五月晴
五月四日 「こんな小さいべら」と言われカッとなる
政近君見舞う 離別の夫婦仲は回復模様
・一戦の基は釣果のベラの処理
五月五日
ゆりな達と日明へ 小あじ・このしろ爆釣
・看護する別れし妻や夏布団
五月六日
・「アッ掛かった」ピンクの頬で子鯵揚ぐ
五月七日 圭子六十八歳誕生日
・ひっそりとワイングラスに四葉盛る
五月八日 ちえみ退院
無事な一日 晴れ
・さつき朝左回りに鳶の舞ふ
五月九日
ちりば
・五月晴甍はきらら 鏤 めて
五月十日 明日の講義構想なかなか纏まらず
・初夏夜半講義レジメの仕上がりぬ
五月十一日 専門学校の学生 時々眠気覚まし必要
・睡魔襲ふ初夏学び舎の一時過ぎ
五月十二日 釣 果 の 子 ア イ ナ メ と 小 メ バ ル の 唐 揚 美 味 な り
・唐揚げの子アイナメ美味釣り冥利
五月十三日 ちえみ釣果のアラカブ美味そうに食べる
・アラカブの煮付け食ひをる緑の夜
五月十四日 釣具のポイントへ行くも開店前
・五月雨に仕掛け作りやはりオモリ
38
五月十五日 ホトトギスの初音いまだ聞かず 昨年は九日の句にあり
五月十七日
五月十六日
渡辺夫妻来宅
・さまざまな鳴き音に探る杜鵑
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
39