Illustrator 9・10・CS・CS2・CS3 透明効果の分割・統合処理対策 透明効果とは 透明効果とは、Illustrator9 や InDesign2.0 以降で新たに加わった機能です。この透明効果 を使用した場合、設定によって出力に問題が起こる事があります。 透明を使用した場合、 PDF/X-1a 出力の際に必ず分割処理を行わなくてはなりません。しかし、 データの内容によって適切な設定は異なるため、出力が期待通りに行われないことがありま す。その場合は、データのの変更・修正が必要になります。 透明となる例 「透明」が含まれたデータとは透明パレットで設定する以外にも、あらかじめ透明が適用さ れているスタイルや効果があります。実際に透明が適用されているかどうかは、 「分割・統 合プレビュー」で確認する事が重要です。 ・ 「シンボル」 「グラフィックスタイル」の一部 ・効果メニューの一部(ぼかし・ドロップシャドウ・光彩) など 図:分割の例 背面:不透明オブジェクト 不透明オブジェクト → 分割 不透明オブジェクト 前面:透明オブジェクト 不透明オブジェクト 分割の概要 アプリケーション上の全ての透明オブジェクトは、視覚的には透明を保持しながら、透明を 含んでいない不透明度 100%のデータへの変換が必要となります。この処理を「分割」とい います。透明効果を使用した場合、データ処理のどこかの段階で「分割」を行わなければな りません。 不透明グラデーション 背面:不透明グラデーション → 分割 画像 * 背面:透明グラデーション 不透明グラデーション *:グラデーション(透明・不透明を問わず)の上に透明グラデーション が重なった場合、その重なり部分は画像化されます。 分割・統合プレビュー 以下では、主に Illustrator CS2 での確認手順を例に説明します。 その他のアプリケーション(InDesign・Acrobat)でも、基本的な手順は同じです。 1. ウィンドウ / 分割・統合プレビューを選択し、ダイアログを表示します。 2. ここで一度、 「更新」ボタンでプレビューを表示させます。プレビューが表示されると「ハ イライト:」ポップアップがアクティブになります。「透明オブジェクト」を選択すると、 プレビューで赤くハイライト表示される部分があります。ここが透明を含んでいる箇所にな ります。 その他のメニュー 3. 「分割・統合プレビュー」で確認できるその他のハイライトメニューの詳細を説明します。 [ なし(カラープレビュー)] ハイライト表示を行わずにアートワークのカラープレビューが表示されます。 [ ラスタライズされる複雑な領域 ] ラスタライズされる部分がハイライト表示されます。 [ 透明オブジェクト ] 透明を含んでいるオブジェクト、および透明効果の影響を受ける範囲がハイライト表示され ます。ここでハイライト表示される領域の境界線に、分割・統合処理による演算誤差(いわ ゆる白い線が出るバグ)が発生することがあります。 [ 影響されるすべてのオブジェクト ] 透明なオブジェクト、および透明なオブジェクトと重なり合うために透明の影響を受けるオ ブジェクトがハイライト表示されます。ハイライト表示されたオブジェクトは分割・統合処 理の影響を受けます。 [ 影響される EPS ファイル ] 透明効果の影響を受けるリンクされた EPS ファイルがハイライト表示されます。 [ 拡張拡張されるパターン ] 透明の影響を受けるパターンは、パターンとしてではなく、個々の画像や図形の集まりとし て扱われます。この部分がすべてハイライト表示されます。 [ アウトライン化される線 ] アウトライン化される線がハイライト表示されます。アウトライン化される線に透明部分が あるか、または「すべてのバスをアウトラインに変換」オプションが選択されているとハイ ライト表示されます。 実例での検証 以下では、特に使用頻度の高い透明効果である、文字に対するドロップシャドウを例に挙げ 検証します。 「分割・統合プレビュー」「レイヤー」ウィンドウで、データの変更にともなう 透明効果の影響を確認してください。 検証データ 図 1. のようなドロップシャドウ(透明効果)がある時、「分割・統合プレビュー」で図 2. 全 体のオブジェクトにどのような影響が起こるかを確認する事ができます。 オブジェクトはそれぞれレイヤーで分けられ、下層から順に赤の「背景」 ・ 「下」の文字・ 「透 明オブジェクト」 ・ 「上」の文字で構成されている事を下図レイヤーウィンドウで確認して下 さい。 図 1. 文字とドロップシャドウ 図 2. 全体 透明効果の回避 図 3. 透明オブジェクト 図 4. 影響されるすべてのオブ ジェクト 図 5.「下」レイヤー移動後 透明効果で特に注意したいのはスミベタ(Bk100%)への影響です。文字に限らずスミベタ のオブジェクトは、意図せず強制的にケヌキとなる場合があります。原因としては、透明効 果の影響により「画像化」される部分と「ベクトルオブジェクト」のままになる部分で分割・ 統合されるためと考えられます。デザイン上、問題がなければ図 5.「下」の文字を透明オブジェ クトより上層のレイヤーに移動する事で、透明効果の影響を避ける事が可能です。 分割・統合の結果 ① ← ベクトル オブジェクト 影響される全てのオブジェクトが分割・統合された結果、図 6. の ように分割されます。(「上」の文字は影響を受けません) 大きく分けて 3 つに分割されることになります。 ① 背景赤の単純なベクトルオブジェクト ② ← 画像 ② 一枚の画像(画像化)。 「下」の文字の上部は画像の一部となる。 ③ 背景赤に「下」の文字の下部がベクトルオブジェクトとして ノセの状態となる。 「下」の文字で、画像の一部となる部分はベクトルオブジェクト ③ のようなノセにはならず、ケヌキのような状態で版が焼かれてし ← ベクトル オブジェクト 図 6. 分割・統合後(イメージ) まう結果となります。 CMY3 色 出力結果 左図は Bk 版をのぞいた CMY3 色で出力した結果です。 スミ文字と黒のドロップシャドウは出力されていない状態で す。分割・統合処理された「下」の文字について、上部の画 像化される部分はケヌキとなり、下部はノセになっている事 がわかります。この結果により「版ズレ」や「ケヌキ部分と ノセ部分での色味の差」が発生する可能性があります。 図 .CMY3c での出力結果 色指定での回避方法 図 7. は白のドロップシャドウが、見た目の上でも「下」の文字に重なっている事がわかり ます。デザイン上、レイヤー移動での回避が困難な場合(デザインが変わる・シャドウが隠 れる、など)色指定でケヌキを回避する事ができます。図 8. 背景「赤」の色成分をスミ文 字に追加して強制的なオーバープリントの状態とする事で、スミ文字はノセと同様の出力結 果が得られます。 ※但し条件として背景は平網(1 色)に限る。 背景がそれ以外(画像・グラデ)の場合は「属性」からのオーバープリント設定、 TrueFlow 側でオーバープリントの読み込みが必要となる。 図 7. 文字上のドロップシャドウ 図 8. 背景「赤」の色成分 図 9. スミ文字 + 背景「赤」 注意:ドロップシャドウの色味の変化 図 10.「下」文字 =Bk100% 図 11.「下」文字 =Bk100% + 背景色 スミ文字にかぶる部分のドロップシャドウが、 「下」の文字に背景の色成分を足した事によ り変化している事が事がわかります。 「下」の文字が強制的オーバープリントとなるために 起こる影響と考えられます。ドロップシャドウの色によって見え方が変わるので充分な確認 が必要です。
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