有限グラフの第 l 固有値

グラフの等周定数と第 2 固有値
連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
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References
有限グラフの第 l 固有値
田中 守
東北大学 大学院理学研究科
第 8 回数学総合若手研究集会
∼ 数学を中心とした広範な知識の交流 ∼
2012 年 3 月 1 日
北海道大学 学術交流会館
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グラフの等周定数と第 2 固有値
連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
1
グラフの等周定数と第 2 固有値
2
連結性と高次固有値
3
エクスパンダーの族
4
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λl (G) ←→ h l (G) ←→
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References
min λ2 (Gi )
i=1,2,...,l
λl (G): 有限グラフ G の離散ラプラシアンの第 l 固有値
h l (G): G の等周定数 (連結性の強さを測る量)
{Gi } l : G の分割
i=1
G2
G1
G3
G
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連結性と高次固有値
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References
有限グラフ
有限グラフ G = (V, E) とは,
有限集合 V と E ⊂ {xy : x, y ∈ V, x , y} の組. ただし xy = yx と
する.
V の元を G の頂点といい, E の元を G の辺という.
G
グラフ H に対して, V H と書けば H の頂点集合, E H と書けば H の
辺集合を表すとする.
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連結性と高次固有値
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References
有限グラフの例
(i) 完全グラフ K n とは V K n := {1, 2, . . . , n} かつ E K n := {i j : i , j}
の有限グラフである.
K1
···
K2
K3
K4
K5
(ii) 素数 p に対して有限グラフ Z p を, V Z p := Z p = {0, 1, . . . , p − 1}
かつ E Z p := {i j : j = i + 1} ∪ {i j : j = i−1 , i , 0, i , i−1 } で定義
する.
···
Z2
Z3
Z5
Z7
Z 11
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連結性と高次固有値
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References
等周定数
定義 (等周定数)
G の等周定数とは,
{
h(G) := min
F⊂V
∂F
|∂F|
|F|
: 1 ≤ |F| ≤
|V|
}
F
2
G
である. ただし, ∂F := {xy : x ∈ F, y ∈ V − F}.
h(G) > 0
⇐⇒ G が連結, つまり任意の 2 頂点をいくつかの辺をつない
で結ぶことができる.
Figure: 連結なグラフの例
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References
等周定数
定義 (等周定数)
G の等周定数とは,
∂F
{
h(G) := min
F⊂V
|∂F|
|F|
: 1 ≤ |F| ≤
|V|
}
F
2
G
である. ただし, ∂F := {xy : x ∈ F, y ∈ V − F}.
h(G) > 0
⇐⇒ G が連結, つまり任意の 2 頂点をいくつかの辺をつない
で結ぶことができる.
Figure: 連結でないグラフの例
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
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References
等周定数
定義 (等周定数)
G の等周定数とは,
{
h(G) := min
∂F
|∂F|
F⊂V
|F|
: 1 ≤ |F| ≤
|V|
}
F
2
G
である. ただし, ∂F := {xy : x ∈ F, y ∈ V − F}.
等周定数は,
{
h(G) = min
∅,F⊂V
{
|∂F| |∂(V − F)|
,
max
|F|
|V − F|
}
}
: F , ∅, V
と書くこともでき, 2 つに分けた頂点集合の間の結びつきの強さを
表していると言える.
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例
n ∈ N に対して,
h(K 2n) = n.
n1 , n2 ∈ N に対して, G n1 ,n2 := (V K n1 ∪ V K n2 , E K n1 ∪ E K n2 ∪ {xy})
とする. ただし x ∈ V K n1 かつ y ∈ V K n2 . このとき
h(G n1 ,n2 ) =
Figure: K 4
1
.
min{n1 , n2 }
Figure: G4,3
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離散ラプラシアンの固有値
x ∈ V に対して deg(x) := |{y ∈ V : xy ∈ E}|, つまり x と辺で結ば
れている頂点 y の数とする.
定義 (グラフ上の離散ラプラシアン)
G 上の離散ラプラシアンとは, |V| × |V|-実対称行列
∆G := D(G) − A(G), ただし






deg(xi ) i = j
1 xi x j ∈ E
D(G)i j := 
A(G)
:=

i
j


0 その他,
0
その他,
ここで V = {x1 , x2 , . . . , x|V| }.
λ1 (G) ≤ λ2 (G) ≤ · · · ≤ λ|V| (G) : ∆G の固有値
いつでも λ1 (G) = 0.
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離散ラプラシアンに関する補足
離散ラプラシアン ∆G は, RV = { f : V → R} 上の線形作用素とみ
なすこともできる. つまり, f ∈ RV と x ∈ V に対して,
∑
∆G f (x) = f (x) deg(x) −
f (y).
xy∈E
RV
そのため, ∆G f = 0 を満たす f ∈
は, 各点での値がその周りの
点の平均となる (調和関数の平均値の性質).
また, 差分 d : RV → R E を, f ∈ RV , xy ∈ E に対して,
d f (xy) := | f (x) − f (y)|
と定義すると,
∑
x∈V
∆G f (x) f (x) =
∑
d f (xy)d f (xy).
xy∈E
そのため, 微分を用いたラプラシアン ∆ の離散の場合の類似物と
して −∆G が定義されている.
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連結性と高次固有値
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∆G の固有値に関するグラフの性質
λ2 (G) > 0 ⇐⇒ G が連結.
λl (G) = 0 かつ λl+1 (G) > 0 ⇐⇒ G の連結成分の個数が l.
···
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References
等周定数と離散ラプラシアンの第 2 固有値
” h(G) > 0 ⇐⇒ λ2 (G) > 0 ⇐⇒ G が連結”であった. では,
疑問
h(G) と λ2 (G) には, 数値的にどのような関係があるだろうか?
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連結性と高次固有値
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References
等周定数と離散ラプラシアンの第 2 固有値
” h(G) > 0 ⇐⇒ λ2 (G) > 0 ⇐⇒ G が連結”であった. では,
疑問
h(G) と λ2 (G) には, 数値的にどのような関係があるだろうか?
deg(G) := max x∈V deg(x).
定理 (Alon-Milman ’85 + Dodziuk ’84)
λ2 (G)
2
≤ h(G) ≤
√
2 deg(G)λ2 (G).
(1)
この定理より, λ2 (G) も 2 つに分けた頂点集合の間の結びつきの強
さを表していると言える.
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連結性と高次固有値
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References
定理 (Alon-Milman ’85 + Dodziuk ’84)
λ2 (G)
2
≤ h(G) ≤
√
2 deg(G)λ2 (G).
(1)
疑問
l > 2 に対しても, 不等式 (1) のように λl (G) と ”グラフの連結性”
を関係付けることができるであろうか ?
そこで ”λl (G) = 0 かつ λl+1 (G) > 0 ⇐⇒ G の連結成分の個数が l”
···
に注目し, 新たな ”グラフの連結性” を定義する.
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分割
定義 (導入された部分グラフ)
グラフ H が, 導入された G の部分グラフであるとは,
V H ⊂ V かつ E H = {xy ∈ E : x, y ∈ V H } であること.
導入された G の部分グラフは, その頂点集合から決まる.
定義 (分割)
G の分割とは, 導入された G の部分グラフの族 {Gi = (Vi , Ei )} l
i=1
で V = t l Vi (直和) を満たすもの.
i=1
G2
G1
G3
G
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高次等周定数
定義 (高次等周定数)
G の高次等周定数を, 各 l ∈ N に対して,
{
}
|∂Vi |
l
: {Gi = (Vi , Ei )}i=1 は G の分割
h l (G) := min max
i=1,2,...,l |Vi |
で定義する.
特に, h2 (G) = h(G) = min F⊂V {|∂F|/|F| : 1 ≤ |F| ≤ |V|/2}.
また, h l (G) = 0 かつ h l+1 (G) > 0 ⇐⇒ G の連結成分の個数が l.
G2
G1
G3
G
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例
h l (K ln) = n,
h3 (G2n,2n) = n,
h2 (G2n,2n) =
1
,
2n
ここで G2n,2n は 2 つの完全グラフ K 2n と K 2n を 1 つの辺で結んだ
ものであった.
Figure: K 6
Figure: G4,4
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例
より一般に, G lm1 ,m2 ,...,ml を, VGl
m1 ,m2 ,...,ml
EG l
m1 ,m2 ,...,ml
= ∪ l V K m1 かつ
i=1
= ∪ l E K m1 ∪ ∪ l−1 {xi yi+1 } の有限グラフとする.
i=1
i=1
ここで xi ∈ K mi , yi+1 ∈ K mi+1 . このとき l > 2 に対して,
(
l
h l G2n,2n,...,2n
)
1
= ,
n
(
)
l
h l+1 G2n,2n,...,2n = n = h(K 2n).
···
Figure: G l
4,4,...,4
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連結性と高次固有値
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例
より一般に, G lm1 ,m2 ,...,ml を, VGl
m1 ,m2 ,...,ml
EG l
m1 ,m2 ,...,ml
= ∪ l V K m1 かつ
i=1
= ∪ l E K m1 ∪ ∪ l−1 {xi yi+1 } の有限グラフとする.
i=1
i=1
ここで xi ∈ K mi , yi+1 ∈ K mi+1 . このとき l > 2 に対して,
(
l
h l G2n,2n,...,2n
)
1
= ,
n
(
)
l
h l+1 G2n,2n,...,2n = n = h(K 2n).
···
Figure: G l
4,4,...,4
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連結性と高次固有値
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定理 1
l > 2 に対して
λl (G)
2l
≤ h l (G) ≤ 3 l
√
2 deg(G)λl (G)
(2)
これは不等式 (1)
λ2 (G)
2
≤ h(G) ≤
√
2 deg(G)λ2 (G)
のように h l (G) が λl (G) で評価できることを表している.
また, この定理 1 は
λl (G) = 0 かつ λl+1 (G) > 0 ⇐⇒ h l (G) = 0 かつ h l+1 (G) > 0
という事実の数値的な拡張である.
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(
一方で, h l+1 G l
)
2n,2n,...,2n
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= n = h(K 2n) のように, 高次等周定数と
分割に含まれる導入された部分グラフの等周定数とが関係してい
るように見える.
···
定理 2
G の任意の分割 {Gi } l
i=1
に対して
min λ2 (Gi ) ≤ λl+1 (G).
i=1,2,...,l
(3)
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定理 3
或る l ∈ N に対して
λl+1 (G) > 2(l + 1)3 l+1
を満たすならば, G の分割 {Gi } l
i=1
√
2 deg(G)λl (G),
(4)
が存在して
λl+1 (G) ≤ 2(l + 1)3 l+1 min h(Gi ).
i=1,2,...,l
(5)
定理 3 は, λl+1 (G) λl (G) のとき, λl+1 (G) は或る分割の各導入さ
れた部分グラフの結びつきの強さを表していると言える.
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連結性と高次固有値
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(1) λ2 (G)/2 ≤ h(G) と (3) mini=1,2,...,l λ2 (Gi ) ≤ λl+1 (G) を使うと,
次が得られる.
例
もし l = 2 かつ n > 2 · 34 ならば, G2n,2n は仮定 (4) を満たす.
Figure: G2n,2n
この例のように仮定 (4) はとても強いように見える.
問題
この仮定 (4) を弱めることは可能であるか?
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連結性と高次固有値
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エクスパンダーの族
エクスパンダーの族は, コンピュータネットワークの理論や, 距離
空間の埋め込みなどに応用のある対象である.
定義 (エクスパンダーの族)
エクスパンダーの族とは, 有限グラフの列 {G n = (V n, E n)}∞ で以
n=1
下を満たすものである:
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h(G n) ≥ C.
√
不等式 (1) λ2 (G)/2 ≤ h(G) ≤ 2 deg(G)λ2 (G) から, 条件 3 は, 或
る定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して λ2 (G n) ≥ C である
ことと同値である.
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エクスパンダーの族
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References
定義 (エクスパンダーの族)
エクスパンダーの族とは, 有限グラフの列 {G n = (V n, E n)}∞ で以
n=1
下を満たすものである:
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h(G n) ≥ C.
例
有限連結グラフの族 {Z pn } pn:prime はエクスパンダーの族である.
···
Z2
Z3
Z5
Z7
Z 11
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エクスパンダーの族
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定義 (エクスパンダーの族)
エクスパンダーの族とは, 有限グラフの列 {G n = (V n, E n)}∞ で以
n=1
下を満たすものである:
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h(G n) ≥ C.
{K n}∞ は, 条件 1 と条件 3 を満たすが, 条件 2 は満たさない.
n=1
K1
K2
···
K3
K4
K5
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
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定義 (エクスパンダーの族)
エクスパンダーの族とは, 有限グラフの列 {G n = (V n, E n)}∞ で以
n=1
下を満たすものである:
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h(G n) ≥ C.
下のグラフの列は, 条件 1 と条件 2 を満たすが, 条件 3 は満たさ
ない.
···
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
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References
定義 (エクスパンダーの族)
エクスパンダーの族とは, 有限グラフの列 {G n = (V n, E n)}∞ で以
n=1
下を満たすものである:
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h(G n) ≥ C.
例 (Margulis ’88)
有限生成群 Γ の有限商群には, Γ の生成元集合から導かれる有限
商群の生成元集合が決まる. また, 有限生成群 (特に有限群) は生成
元集合を決めることで, そのケーリーグラフと呼ばれるグラフを
定義することができる. 性質 (T) を持つ有限生成群の有限商群の列
はエクスパンダーの族である.
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連結性と高次固有値
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観察
{G n = (V n, E n)}∞ を有限グラフの列とし, 各 n での G n の分割
n=1
{H ni } l を与える. 各 i = 1, 2, . . . , l に対して, {H ni }∞ がエクスパ
i=1
n=1
ンダーの族になっていると仮定する.
この時, 定理 2 を使うと, 以下の 3 つが成り立つことがわかる.
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h l+1 (G n) ≥ C.
···
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系1
{G n = (V n, E n)}∞ を有限グラフの列で以下を満たすものとする:
n=1
1
n → ∞ のとき |V n| → ∞;
2
定数 k > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対し deg(G n) ≤ k;
3
定数 C > 0 が存在し, 任意の n ∈ N に対して h l+1 (G n) ≥ C.
このとき, 或る l0 ≤ l と, 数列 {nm}∞ , 任意の m に対して G nm の
0
m=1
i l
分割 {H m
} が存在して, 各 i = 1, 2, . . . , l0 に対して, 列 {H ni m }∞
m=1
i=1
はエクスパンダーの族である.
注意
この結果は, 船野-塩谷による次の結果を, グラフの場合に示した
ものである: 第 l 固有値が無限大に発散する閉重み付きリーマン
多様体の列は, k 個のレビ族の和である.
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
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References
一様埋め込み
連結グラフ G の頂点集合には, 2 頂点を結ぶ辺の最小数で距離 dG
を与えることができる.
定義 (一様埋め込み)
連結グラフの列 {(G n, dGn )}∞ が, 距離空間 (Y, dY ) に一様埋め込み
n=1
できるとは, 関数 ρ1 , ρ2 : [0, ∞) → [0, ∞) と各 n で写像
f n : V n → Y が存在し, 以下が成り立つこと:
1
任意の n と任意の x, y ∈ V n に対し
ρ1 (dGn (x, y)) ≤ dY ( f n(x), f n(y)) ≤ ρ2 (dGn (x, y)),
2
r → ∞ のとき ρ1 (r) → ∞.
特に, (G n, dGn ) がすべて同じグラフ (G, dG ) のとき, (G, dG ) が
(Y, dY ) に一様埋め込みできると言う.
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
一様埋め込み
References
一様埋め込み不可能性
一様埋め込みとは, 距離空間の等長埋め込みや擬等長埋め込みよ
りも非常に弱い埋め込みである. しかし, 次が成り立つ.
定理 (Gromov ’91)
エキスパンダーの族は, ヒルベルト空間に一様埋め込みできない.
この結果は, ヒルベルト空間に一様埋め込みできないケーリーグ
ラフを持つ有限生成無限群の存在を示すために用いられている.
それは, K-理論の Baum-Connes 予想などと関連している. 上の
Gromov の定理の拡張として次が示せる.
系2
系 1 の有限グラフの列は, ヒルベルト空間に一様埋め込みでき
ない.
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References
ご清聴ありがとうございました。
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References
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連結性と高次固有値
エクスパンダーの族
一様埋め込み
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