数学講究1 第8回ノート

数学講究 1 第 8 回ノート
2013 年 5 月 13 日 (月)
13.数の四則演算と大小関係に関する性質
• 実数の性質 (1) – 四則演算に関する性質
定理 13-1(実数の和と積の性質) 実数の和 + と積 · は以下の性質を
持つ.
(FR 1) 任意の a, b, c ∈ R に対して,
( i )和の結合法則 : (a + b) + c = a + (b + c).
( ii )積の結合法則 : (a · b) · c = a · (b · c).
( iii )和の交換法則 : a + b = b + a.
( iv )積の交換法則 : a · b = b · a.
( v )分配法則 : a · (b + c) = a · b + a · c,
(a + b) · c = a · c + b · c.
(FR 2) 0 の性質 : 0 ∈ R は次の性質を持つ:
任意の a ∈ R に対して a + 0 = a = 0 + a.
(FR 3) 1 の性質 : 1 ∈ R は次の性質を持つ:
任意の a ∈ R に対して a · 1 = a = 1 · a.
(FR 4) 和に関する逆元の存在 : 任意の a ∈ R に対して − a ∈ R を考え
ると, a + (−a) = 0 = (−a) + a が成り立つ.
(FR 5) 積に関する逆元の存在 : 任意の a ∈ R − {0} に対して逆数 a−1 ∈
R を考えると, a · a−1 = 1 = a−1 · a が成り立つ.
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系 13-2
( 1 ) a, b ∈ R に対して,
( i ) 0 · a = 0 = a · 0,
( ii ) −(−a) = a,
( iii ) (−a)b = −(ab),
(iv) (−a)(−b) = ab.
( 2 ) a, b ∈ R − {0} に対して
( i ) (a−1 )−1 = a,
( ii ) (ab)−1 = b−1 a−1 ,
( 3 ) a, b ∈ R について,
ab = 0 ⇔ a = 0 または b = 0
となる. したがって, 0 でない実数どうしの積は 0 でない.
演習 13-1
Proof ( 2 ) ( i ) x = a−1 とおくと, a · x = 1 が成り立つ. (FR 5)
この両辺に x−1 をかけると
(左辺) = (a · x) · x−1
= a · (x · x−1 ) (結合法則)
= a · 1 (FR 5)
= a (FR 3)
(右辺) =
1 · x−1
= x−1 (FR 3)
=
(a−1 )−1
よって, (a−1 )−1 = a が成り立つ.
Proof ( 2 ) ( ii ) x = ab
x · (b−1 · a−1 ) = a · (b · b−1 ) · a−1 = a · a−1 = 1
が成り立つ. (結合法則, (FR 3), (FR 5))
この両辺に x−1 を左からかけると
(左辺) = x−1 · x · (b−1 · a−1 )
= b−1 · a−1 (FR 5)
(右辺) =
1 · x−1
= x−1 (FR 3)
= (ab)−1
よって, (ab)−1 = b−1 · a−1 が成り立つ.
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Proof ( 3 )
( ⇒ ) a 6= 0 ならば ab = 0 に a−1 を左からかけて,
b = 0 が得られる.
同様に, a 6= 0 ならば ab = 0 に b−1 を右からかけて,
a = 0 が得られる.
(⇐) 系 13 − 2(1)(i) より, a
b
= 0 ならば 0 · b = 0
= 0 ならば a · 0 = 0 が成り立つ.
よって, a, b ∈ R について,
ab = 0 ⇔ a = 0 または b = 0
• 実数の性質 (2) – 大小関係に関する性質
定理 13-3(実数の大小関係に関する性質)
( 1 ) R における不等号 < は以下の性質を持つ: a, b, c ∈ R に対して,
( a ) a < b または a = b または a > b のいずれか 1 つが成り立ち,
かつ, 2 つが同時に成り立つことはない.
( b ) (推移性) a < b, b < c =⇒ a < c.
( 2 ) R における和 · 積と大小関係の間に次が成り立つ: a, b, c ∈ R に
対して,
( a ) a < b ⇐⇒ a + c < b + c.
( b ) c > 0 のとき, a < b ⇐⇒ ac < bc.
系 13-4
( 1 ) 0 < 1.
( 2 ) a < 0 ⇐⇒ −a > 0.
( 3 ) c < 0 のとき, a < b ⇐⇒ ac > bc.
( 4 ) a < 0, b > 0 ⇐⇒ ab < 0.
( 5 ) 任意の a ∈ R に対して a2 ≥ 0 である.
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• 絶対値

a
|a| =
−a
a≥0
a<0
によって, 定義される実数 |a| のことを実数 a の
絶対値 (absolute value) という.
これは, 0 以上の実数であり, a 6= 0 ならば, |a| > 0 となる.
演習 13-2
Proof ( i ) ( a ) a, b ≥ 0 のとき,
|a + b| = a + b = |a| + |b|
( b ) a, b < 0 のとき,
|a + b| = −a − b = |a| + |b|
( c ) a ≥ 0 かつ b < 0 のとき,
a + b ≥ 0 ならば,
|a + b| = a + b
≤ a−b
= |a| + |b|
a + b < 0 ならば,
|a + b| = −(a + b)
≤ a−b
= |a| + |b|
( d ) a < 0 かつ b ≥ 0 のとき,
a + b ≥ 0 ならば,
|a + b| = a + b
≤ −a + b
= |a| + |b|
a + b < 0 ならば,
|a + b| = −(a + b)
≤ −a + b
= |a| + |b|
よって, |a + b| ≥ |a| + |b| が成り立つ.
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• 最大元と最小元
A を R の空でない部分集合とする.A に属する元の中で最も小さい元が
存在するとき, その元を A の最小元 (minimum element) といい,minA と表す.
また, minA は次の 2 条件を満たす.
(i)m∈A
( ii ) ∀a ∈ A, m ≤ a
逆に, A に属する元の中で最も大きな元が存在するとき, その元を A の最大元
(maximum element) といい,maxA と表す.
また, maxA は次の 2 条件を満たす.
(i)m∈A
( ii ) ∀a ∈ A, m ≥ a
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