酪農家で発生した牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)

演 題 番 号:7
演 題 名 :酪農家で発生した牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)Ⅰ型感染症
発表者氏名 :○福田智大、 安食 隆
発表者所属 :島根県出雲家保
1.はじめに:近年、全国的に BVDV 感染症に対する関心が増す中、各地で BVDV 持続感染牛対策が実施されるようになっ
てきている。当所においても、BVDV 対策について生産者へ啓発を進めており、その中で平成18年6月、管内酪農家におい
て発育不良、慢性下痢および皮膚病を呈した BVDVⅠ型感染牛を確認したのでその概要を報告する。
2.疫学的事項:当該農場は、成牛約150頭、育成牛および子牛約220頭を飼養する農場で、平成16年9月6日生まれ
の自家産牛1頭に、生時からの発育不良と平成17年8月頃からの皮膚病変が認められた。病性鑑定時には、皮膚病変が鼻鏡
や陰門を含む体表全体に認められ、糞便は暗黒色物を交えた粘液様の下痢便であった。母牛は、平成14年7月31日生まれ
の自家産牛で、病畜が初産であり、2産目は平成17年10月に胎齢178日で流産した。本農場では、過去4年間の外部導
入はなかった。
3.材料及び検査方法:病畜の血清および糞便乳剤について、RT-PCR 法によるペスチウイルス遺伝子の検出と MDBK-SY
細胞および BFM 細胞を用いたウイルス分離検査を実施し、母牛については、血清およびバフィーコートを材料に同様に
RT-PCR 法による検査を実施した。分離ウイルス株遺伝子を制限酵素 PstⅠと反応(RFLP)させ遺伝子型別を行った。病畜
については病理組織学的検査を定法により実施した。また、本農場における BVDV 感染症浸潤状況の確認のため、飼養牛全
頭の採血を実施し、バフィーコートからのウイルス分離および BVDV 遺伝子検出を実施した。
4.成績:糞便および血清中より非細胞病原性 BVDV のみを分離し、RFLP よりⅠ型と判定した。母牛の BVDV 検査は、陰
性であった。皮膚および舌に化膿性表皮炎を、腸管では腸管壁内リンパ装置(パイエル板)の消失が認められた。牛群の全頭
検査で、新たに1頭の育成牛に BVDV 感染を確認した。
5.まとめ:症状および病理組織学的所見から粘膜病の発症が疑われたが、細胞病原性 BVDV は分離されなかった。そのた
め今回の症例は BVDV 持続感染牛であったものと考えられ、化膿性表皮炎は、免疫の低下により2次的に引き起こされたも
のと推察された。本牛および全頭検査における陽性牛の感染時期は異なっており、本農場では、繰り返し BVDV の流行が生
じていたことが推察された。