経済原論 第10回 不確実性・不完全情報の世界 授業の内容 1. 不確実性 – 不確実性とリスク – リスクを回避する方法(危険分散) • • 保険 契約形態 2. 不完全情報 – 逆選択とシグナリング – モラル・ハザードとインセンティブ契約 2 1.不確実性 本来は・・・。 • 不確実性(Uncertainity) 「これから起こる事が確実でないこと」 (確率すら計算できない場合を指すこともある) • リスク(Risk) 「これから起こる事が確実でないこと」 (確率が計算する事が可能である場合をいうこ ともある) • この講義では、リスクを危険を伴う不確実性と いう意味で扱う。 3 1.不確実性 • リスクの例 – 株式市場 – 企業の輸出と為替レート – 就職先の選択 – 新しいプロジェクトへの参入 • リスクへの対処 – ポートフォリオ – 先物取引 – 失業保険 – 多角経営 4 1.不確実性 • 危険分散 – 「卵は1つのバスケットに入れて運ぶよりも、分けて 運んだ方がよい」 – その代表例が、「保険」。 • 保険 – 我々は、火事に遭うというリスクに直面している。 – 火事に遭った時の補償を保険加入者で出し合うこと で、リスクを保険加入者に分散することができる。 – また、保険加入者が多ければ大数の法則が成り立 ち、火災の発生確率や被害額を予測できる。 5 1.不確実性 • 保険の限界 – 企業の利潤を補償する保険はない。 – サッカー選手は足に保険をかけるが、我々はその 保険に入れない。その原因は、モラルハザードにあ る。 • モラルハザード(Moral Hazard) 「ある人が利己的な行動をするために、その人 を含めて多くの人が被害を被ること」 – 企業の経営努力の喪失 – 当り屋 – 少し具合が悪いだけで病院に行く 6 1.不確実性 • 保険の限界 – 企業の利潤を補償する保険はない。 – サッカー選手は足に保険をかけるが、我々はその 保険に入れない。その原因は、モラルハザードにあ る。 • モラルハザード(Moral Hazard) 「ある人が利己的な行動をするために、その人 を含めて多くの人が被害を被ること」 – 企業の経営努力の喪失 – 当り屋 – 少し具合が悪いだけで病院に行く 7 1.不確実性 • 契約形態によるリスク分散 – 企業の収益の変動を引き受けるのは誰か? • 株主への配当 • 内部留保の取り崩し • 労働者の賃金(ボーナスによる変動) – コンビニエンス・ストア • 賃金契約(本部の直営店のケース) • 利益分割方式(店の収益の一定割合をフランチャイズ料 として本部に支払うシステム) • 定額フランチャイズ方式(店の収益とは関係なく、毎月一 定の金額がフランチャイズに支払われるシステム) 8 2.不完全情報 • 情報の経済学 – これまでは、誰もが情報を共有しているという前 提で議論をしてきたが、ここでは、情報が完全に 行き渡っていない状態(不完全情報の状態)を前 提に議論をする。 – 労働市場の例 1. 採用をした後、まじめに働いてくれるか、定年まで辞 めずに働いてくれるかはわからない。 2. 採用をする側は、誰が優秀な学生か、情報を持って いない。 9 2.不完全情報 • 逆選択(Adverse Selection) 「質の良いものの中に、質の悪いものが含まれてい る為に質の良い商品の取引が阻害されること」 • そのような財のことをレモンという – 中古車市場 – 保険 – 銀行と企業の取引 • 新卒市場の採用もこの例に含まれる 10 2.不完全情報 • 逆選択の解消法 – 第3者の目を入れる • 中古車のディーラー • 格付け会社(ムーディーズ) – 標準化 • フランチャイズ・チェーン化 – シグナリング • 多大な広告 11 2.不完全情報 • シグナリングとしての教育の役割 – ベッカーの人的資本理論 • 大学は人的資本を高めるもの – スペンスのシグナリング理論 • 大学は先天的に決まっている能力を採用企業に伝え るためのもの。 12 2.不完全情報 • 教育のシグナリング効果 1. 企業は雇った労働者の能力の見分けがつかない。 2. 仕事量に応じて賃金を払うと、20*1/2+10*1/2=15の賃金 を全員に支払う事になる。 • この状況は能力の高い人からみると不公平 3. 能力の高い人が負担2で大学に入り、そうでない人は15の 負担で大学に入るとする。 4. この時、大卒には20、高卒には10の賃金を支払うことで、 能力の高い人は大学に行き、そうでない人は高卒で就職 をし、両者を区別できる。 割合 仕事量 教育の負担 能力の高い人 2分の1 20 2 そうでない人 2分の1 10 15 13 2.不完全情報 • モラル・ハザード – プリンシパル・エージェント問題 プリンシパル エージェント 依頼人 弁護人 経営者 労働者 株主 経営者 銀行 融資先 保険会社 被保険者 タクシー会社 タクシー運転手 – エージェントの行動によって、プリンシパルの利益に変化が 生じる。エージェントの行動や、プリンシパルの疑いによって 利益が減じる事を、モラル・ハザードという。 – モラル・ハザード、エージェントの行動に関する情報をプリン 14 シパルが知り得ない事によって起きる。 2.不完全情報 • 暗黙の契約理論 – 若いときに賃金を安くおき、高齢時に賃金を高く おく。年功賃金の存在を説明する1つの理論。 – 採用後に真面目に働くインセンティブを高める。 賃金、貢献度 賃金 貢献度 年齢 15
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