社員食堂におけるHACCP厨房の実施例 メールマガジン102号 補足資料 (1)なぜリテール(小規模食品)施設のHACCP導入が必要か? 1 会社規模 事業所数(注1) 従業員数 導入率% (注2) 大企業(売上50億 <) 2,600 (4%) 100〜30 0 88 中企業(売上50億 >) 10,700(1 6%) 20〜100 34 小企業(売上1億>) 54,600(8 0%) 1〜20 14 2 (1)リテールHACCPシステム(Retail HACCP system)とは 理由1:一向に減らない食中毒 ⇒原因:食の安全・安心システム、 HACCP導入の遅れ! 企業規模別HACCP導入実態 (2)リテールHACCPとは ・食品を扱う企業の80%は小規模で あり、導入率は14%と低迷 ・食中毒の発生率は確率的に事業者 数に比例する リテール施設のHACCP導入を進め 「食の安心安全」を守る 注1:総務省統計局調査(平成24年度) 注2:農水省食料産業局(平成26年度) 導入率は「すでに導入している企業」と「導入途中企業」の合計とした 起 源 対 象 米国FDA(Food and Drugs Administration = 米国食品医薬 品局)から小規模(Retail)食品取扱施設を対象としたHACCPシステム のガイドラインを1998年に提唱 ホテル、レストラン、居酒屋、スナック、バー、ケータリングサービス、ベーカ リー、社員食堂、医療・介護施設、小規模厨房など (2)「食の安全・安心」堅持には ⇒中小規模施設へのリテールHACCP導入が必須 (3)一般とリテールHACCPの違い 理由2:なぜ小規模事業所に食中毒が多いか? ソフト面 ⇒①メニューが多い ②従業員の兼務作業 ③従事者の個人的衛生管理 要 ハード面 ⇒①面積の制約 ②原材料の容積の収納スペース ③設備の共用=交又汚染 因 HACCPの知恵から学び、改善することが重要 リテールHACCP導入のポイント(その1) 3 (1)意識、及びメンタル上のポイント 一般HACCP ⇒製品に対しての管理手段 リテールHACCP ⇒料理の管理基準 ①交差汚染と従事者の衛生管理 ②手狭なスペース ⇒ハードで対応できない ⇒ソフトでカバー リテールHACCP導入のポイント(その2) (2)ハード面のポイント ①HACCPは難しいとの「先入観」払拭 イ)専門用語にとらわれず実は今行っている仕事の延長線で十分 対応できる ロ)自社のレベルに合った仕組(システム)を構築する ハ)難しいと感じたら悩まずに相談や指導してくれる機関の活用 ①まず自分の職場の設備実態自主監査を行う 目的:「これで安全は担保できるのか?」を顧客目線で問題点を 洗い出す。この時、担当者だけでなく幹部同行が必須。 調査後は速やかに反省会を開き改善点の解決策を決める。 ⇒ これで50%のHACCP認識が醸成できる ②KKD(慣習・経験・勘・度胸)意識の改革 古くからの食品取り扱いの慣習や調理者の経験と勘と度胸は 尊重するが、これは必ずしも安全は担保されない ②自主監査場所は厨房のみでなく周辺環境/材料受入/廃棄物保管/ ③従業員の衛生教育の徹底(反復教育) 力量の異なる人たちの参画(パート/アルバイト)⇒力量は均一 でなければならない ③交差汚染防止 ⇒ ヒト・モノの動線・・・リテールでは最大のポイント ④手洗い設備の完備 ④自分達のメニューFDに危害分析を取り込む すべて100点満点はできない⇒でも絶対に見逃せない重要点 (CCP)は確実に実行する ⑥食べ残し、食材残渣の処置 ⇒ PE袋と蓋付き容器への収納と廃棄 リテールHACCP導入のポイント(その3) 4 更衣及びトイレ/空調設備/給排気設備/風の流れ等 ⑤次亜塩素系(食品添加物)の空間噴霧タイプの活用 5 HACCP対応社員食堂の実践 ~外観写真~ 6 (3)ソフト面のポイント ①フローダイアグラム(FD)の作成 リテールフードサービスはメニューが多いことからすべてのフローダイア グラムは作成しにくいが イ)加熱工程:「焼く」「蒸す」「揚げる」「煮る」「炒める」「炊く」のレシピ ロ)生食工程:「サラダ」「刺身」「生鮮食」などのレシピ ②調理の兼務作業 ⇒ 誰でもが出来る作業標準を作成する 多能工化対応 ③7Sの教育徹底 ⇒ 見やすい表示と朝礼等での喚起 ④設備の始業点検「指さし確認」と定期的な維持管理 1 社員食堂におけるHACCP厨房の実施例 メールマガジン102号 補足資料 HACCP対応社員食堂の実践 ~制約条件~ 7 制約条件: HACCP対応社員食堂の実践 ~ゾーニング計画1~ 8 施設のゾーニング実施計画: ◆与えられた厨房スペース(喫食スペースの座席数および給食数 ◇HACCPのベースとなるPP(一般衛生管理プログラム)に沿った により設定) ゾーン区画と通過部分の考え方を整理 ◆既存厨房機器の活用 ◆作業区域の明確化 厨房 出入口 ◆予算(施設費,設備費等) ‣荷受・検収室の充実(HACCPに基づいた重要管理点) ‣前室(手洗い設備・消毒設備・長靴洗い場)・更衣室・トイレの充実 管 理 区 域 前室 厨房 洗浄 下膳 食 堂 ・ コ ミ ュ ニ テ ィ 区 域 128㎡ 更衣室 ‣洗浄室(洗浄・殺菌消毒・保管・残飯の搬出)の充実 社員ロッカールーム 下処理 ◆作業区分の明確化と作業切り替え時の動線 バスルーム 食品庫 (交差汚染防止を考慮し、人・物の流れを工夫) 休憩室 ‣パススルー開口、パススルー冷凍・冷蔵庫、パススルー消毒保管庫 食堂 手洗い 配膳カウンター ‣冷凍・冷蔵庫、シンク、調理台、移動台等を用途別に区分 ‣作業切り替えタイミングに合わせた手洗い設備(入室時に励行) ‣床の色分けによる見える化(床の色に合わせた使用器具等の色分け) 食堂 156席 食堂 出入口 214㎡ ‣履物、エプロンの使い分け ‣爪ブラシの個別化 玄関・ロビー トイレ・化粧室 ◇食品衛生上の衛生管理におけるゾーン区画 ① 汚染作業区域 ② 準清潔作業区域 ③ 清潔作業区域 ④ 生産外区域 [与えられた厨房スペース] HACCP対応社員食堂の実践 ~ゾーニング計画2~ 9 HACCP対応社員食堂の実践 ~ゾーニング計画3~ 10 施設のゾーニング実施計画: 施設のレイアウト実施計画: ◇同時に、PP(一般衛生管理プログラム)を実行するための具体的なSSOP(衛生標準作業手順 書)の立て直しを実施 ◇主要献立とレシピをもとに、調理工程一覧図(フローダイアグラム)を作成し、ゾーニング 計画に活用 ‣従来からの管理運営基準として作成した「自主衛生管理マニュアル」の立て直しを実施し、ゾーニングの ‣食材ごとに、 目的を確認!~ハード面でできることソフト面でできること~ どの作業を どのような設備機器と (1) 従事者の衛生管理 その付帯器具を使用して (2) 機械器具類の衛生管理 (3) 調理器具類の衛生管理 どこの どの場所で行うのかを (4) 使用水の衛生管理 汚染レベルに従った区域分けまで組み込んで (5) 食品等の衛生的な取り扱い フローダイアグラムにまとめ、 (6) 施設設備の衛生管理 ゾーニング計画との整合性を確認した (7) ねずみ族・昆虫等の防除 フローダイアグラムの役割 (8) 排水および廃棄物の衛生管理 ★作業の流れの把握 (9) 洗剤・消毒薬の衛生管理 ★人・物の流れの整理 (10) 従事者の衛生教育訓練 ★問題点の表面化と共通認識 [自主衛生管理マニュアルの一例] (11) 衛生管理体制(事故発生時の対応) ★理想と問題の発見 ◇SSOPで重要度が低いハザード(危害要因)を管理する ★ゾーニングや動線プランとの PPは食品を取り扱うためには当然行わなければならない決まりであり、HACCPの健康危害 にかかわる調理過程上の重要な管理点を絞り込むために必要なプログラム! ★CCP(重要管理点)の位置確認 HACCP対応社員食堂の実践 ~原設計案の見直し~ 11 整合確認 HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容1~ 施設のゾーニング計画をもとに実施設計図を作成: ◆ゾーン区画の床を色分け (1)物の流れ、人のルートをたどり、調理機器のレイアウトを確認 ◆ 調理従事者に視覚的にゾーン区画を認識させる ⇒ 「見える化!」 (2)ゾーン区画の通過部分の考え方を整理(壁、扉、衛生管理) 12 ◆生産外区域:グレー ‣前室(床構造:ドライシステム) ◆汚染作業区域:グレー ‣荷受・検収室 (床構造:ドライシステム) ◆ 清潔作業区域:グリーン ポ イ ン ト ◇調理従事者がSSOP(標準衛生作業手順書)に従った作業を日常平易に実 [施設図] 施できる作業環境を整えることを先行した施設図へと修正した ‣厨房:CCP(重要管理点)の ‣洗浄室 (床構造:ウエットシステム) 存在する場所 (床構造:ウエットシステム) ◆準清潔作業区域:イエロー ‣前処理室 (床構造:ウエットシステム) ◆汚染作業区域:イエローグレー ‣食品庫 (床構造:ドライシステム) 2 社員食堂におけるHACCP厨房の実施例 メールマガジン102号 補足資料 HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容2~ HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容3~ 13 ◆床の色分けに付随させた「見える化!」 14 ◆荷受・検収室の充実~原材料の品質・衛生管理の徹底~ による交差汚染の防止 [入口フロア踏込み] :給食施設の調理従事者は複数の作業区域またがって (1)入口フロアに踏込みを設置 作業することを前提に作業工程を組み、それによる使い分け ‣納入業者の立ち入り場所の明確化 ◆ エプロン・長靴は、清潔作業用、準清潔作業用、汚染作業用 ポ イ ン ト ‣調理従事者の下足の履き替え場所を指定 に色分けして使用区分の明確化 ‣厨房・・・グリーン ポ (2)食材の仕分け管理エリアにする ‣専用検収台(高さ60cm)の設置 イ ン ‣ダンボール等外装から専用容器等へ移し替えてか ト ら食品庫への持ち込み ‣前処理室・・・ベージュ(エプロン)、白(長靴) ‣洗浄室・・・ピンク ◆ 保管専用の長靴ラック、エプロンハンガーを色分けし、保管 場所の明確化 ‣厨房・・・ブルー ‣前処理・・・イエロー [荷受・検収室] ‣泥付の根菜類の仕分け・保管 ◆ たわし・スポンジ、たわし専用ケース、バケツ等色分けによる 使用場所の明確化 ‣ピーラー(球根皮剥機)の設置 [長靴ラック:一部をテープで色分け] HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容4~ HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容5~ 15 ◆手洗い・消毒設備の充実 ~手洗いの重要性~ [ピーラー専用コーナー] 16 ◆前処理室の充実 ~交差をなくす動線づくり~ [パススルー開口(開)] [前室の手洗い設備] (1)手洗いのタイミングに合わせた設置 ‣各区分の入口の近く ‣作業中に頻繁に手を洗える場所 ポ イ (2)「正しい手洗い方法」の掲示 ン ‣イラスト付きで分かりやすい手順書 ト [パススルー開口(閉)] ◆ 交差汚染をなくす [爪ブラシ個別化] ポ イ ン ト (3)爪ブラシの個別化 動線の明確化 ‣パススルー開口 ‣パススルー冷蔵庫 ‣パススルー冷凍庫 ‣専用消毒保管庫 ‣シンクの使い分け ‣従事者の名前を付けて使い分け HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容6~ 17 ◆食品庫の充実~原材料の保管管理の徹底~ [パススルー冷蔵庫・冷凍庫] [シンクの使い分け] [まな板・包丁・器具類 消毒保管庫] [各区分の手洗い設備] HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容7~ 18 ◆前室の充実 ~厨房入室前のエプロン・靴の 履き替えの必然~ [手洗い・消毒設備] [原材料専用冷凍冷蔵庫] (1)手洗い設備・消毒設備 ‣手洗い専用シンク (1)原材料専用の冷凍冷蔵庫を設置 ‣自動水洗、混合水洗 ポ (2)エプロン・長靴の履き替え イ ‣区分に合わせた色分けによる使い分 ン ト (3)長靴洗い場・清掃用具 ‣原材料を適正な温度で保管する ポ イ(2)荷受・検収室の仕分け管理により原材料 ン 由来の危害をできる限り存在させない工夫 ト ‣荷受・検収室で外装箱から取出し、食材ごとに [エプロン長靴の使い分け] ‣専用洗い場を設け洗浄・消毒の徹底 専用容器に入れて保管 [食品別に専用容器へ保管] (4)除菌マット [長靴洗い場] [床洗浄ブラシ] 3 社員食堂におけるHACCP厨房の実施例 メールマガジン102号 補足資料 HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容8~ 19 ◆洗浄室の充実~洗浄・消毒作業がしやすい動線~ 20 ◆更衣室充実 ~清潔な作業衣を正しく着用~ [↖厨房側の消毒保管庫] [専用エプロン] HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容9~ ↑ [パススルー消毒保管庫 ↑] ‣上が白衣、下が私服の使い分けにより ②食器消毒保管庫 白衣と私服の交差を防ぐ ③まな板・包丁・器具消毒保管庫 ‣余裕のある収納設備(すべて収納) ポ ‣食器・調理器具等の衛生的な保管管理 イ ン (2)専用エプロン・長靴 ト ‣色を分けて使い分け ポ (2)入場時の衛生チェック イ ①従事者の日常健康・衛生チェック手順書 ン ②粘着ローラーによる毛髪等除去手順書 ト ③入室管理手順書 (3)残飯の搬出 ‣イラストや写真入りの手順書、大きな鏡 ‣残飯を衛生的に排出する動線(洗浄室出入 口のすぐそばに風除室とコンポスト)設置 [上段:白衣専用、下段:私服専用] (1)ロッカーの使い分け (1)①パススルー消毒保管庫 [パススルー消毒保管庫] HACCP対応社員食堂の実践 ~具体的内容10~ 21 [かがみ、粘着ローラー、衛生作業手順書] (姿見)で確認し、チェック表へ記録 HACCP対応社員食堂の実践 ~まとめ2~ 22 HACCPは、新しい高度で難しい衛生管理手法ではない!! ◆厨房の充実 ~空調設備・温度管理設備~ HACCPによる衛生管理は、これまでの経験と勘に基づく衛生管理と違い、 ‣安全な食品を調理するための手順を整理することができる ⇒12手順7原則 ‣原材料から配膳に至る全工程について、科学的根拠(過去の情報やデータ)に 基づいた工程管理ができる ⇒危害分析により、危害要因とその管理手段を具体的に予測する (1)空調設備の敷設 :換気および温度の管理は労働衛生上必要な措置だが、 [空調設備] ⇒CCP(重要管理点)を定め、連続的に監視し、安全を確保する 加熱調理された食品の衛生を確保するためにも重要 ‣「二重排気ダクト」方式採用による熱気の排気 ポ ‣清浄空気の吹き出し イ ン (2)温度管理設備の敷設 ト :作業場の環境は、食品を衛生的に取り扱う上で大きく影響する 完成後は、調理の現場を反映させた危害分析を行い、 必ず検証を行う! ⇒ そして、HACCPプランの定着化!! リスクを認識したうえで食の安全が実証的に、体系的に説明され、それが 作業場の温度を管理し、調理従事者が快適に作業ができる環境も重要 マニュアルやデータなど現実的な裏付けに基づき継続的に実証できる! ‣エアコン ⇒ご利用のお客様から安全な食事であると安心され信頼を得ることができる! 4
© Copyright 2024 Paperzz