アスベスト関連疾患の臨床診断 - Clydebank Asbestos Group

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PL-4-08 Gunnar Hillerdal (英文あり)
アスベスト関連疾患の臨床診断
グンナー・ヒラーダル
カロリンスカ大学病院胸部医学部[スウェーデン]
どのような疾患がアスベスト曝露に関連するか
主な所見と疾患は、胸郭内にある:肺自体か胸膜。どちらの部位ともに良・悪性疾患がある。
良性胸膜疾患には、胸膜肥厚斑(プラーク)、良性石綿胸水(胸膜炎)、び慢性胸膜肥厚(線維
症);肺では石綿肺がある。悪性疾患には、肺の気管支がんと悪性胸膜中皮腫がある。
胸膜病変
胸膜肥厚斑(プラーク)
胸膜肥厚班(プラーク)は、個々に分かれた、隆起した不透明の明るい円形の病変である。
壁側胸膜に特徴的に発生、即ち胸壁の内側に発生し、肺を侵さない。結果として症状はなく、
胸部X線でのみ診断される。小さなプラークは診断困難で、過少及び過剰診断がともに非常に
多い。呼吸困難や痛み等のどんな症状も胸膜肥厚斑(プラーク)に帰すべきでないが、他の原
因検索はすべきである。曝露後30年以上たつまでは、胸膜肥厚斑(プラーク)はまず見られな
い。
良性石綿胸水
胸水は、アスベストの吸入によって発生しうる;早期に発現し、通常は浸出性である。まれに
は数か月から数年持続する。同じ側や反対側に再発があり、突然発病しうる。大量なこともある
が、1リットル以上はまれである。しばしば無症状で、X線所見で驚かされる。浸出液はしばしば
出血性で、漿液性や繊維性のこともある。好酸球を含むこともある。通常はリンパ球を認める。
時にびまん性の胸膜肥厚や円形の空洞が残るが、しばしば痕跡を残さずに消失する。
良性石綿胸水の診断には、以下の三つの基準を満たすことが必要である。
① アスベストへの曝露
② 特に悪性の他の疾患の除外
③ 悪性中皮腫の除外のために少なくとも2年間の経過の観察
びまん性胸膜肥厚
胸膜肥厚斑(プラーク)とのレントゲン上の違い、胸膜肥厚斑(プラーク)は、肺実質に対して
明瞭な境界を示す。びまん性胸膜肥厚の臓側病変は、より肺実質と混合したびまん性の変化
を示す。CTで特にはっきりするが、経験をつめば標準のレントゲン写真でもわかる。繊維束、
カラスの足、crows feet サインが発生し、肺実質に達し、時間がたつと繊維組織によるしめつ
けで、気管支の変形が起こる。気管支が曲がって閉塞し、抹消の無気肺が起こる。いわゆる「円
形無気肺」で、アスベストに曝露した患者に今日非常にしばしば見られる。び慢性の胸膜の繊
維化は、肺の圧迫をおこし、肺機能の低下も起こり得る。
胸部レントゲンとCTが典型的に円形無気肺を示唆し、かつ気管支鏡が正常なら、胸部レント
ゲンだけの経過観察でよい。もし不確実なら、針生検を行う。
中皮腫
もっとも普通の初発症状は、呼吸困難と胸痛である。まれには、発熱、咳、全身倦怠を示す。
レントゲン上、胸水が通常見られる。浸出液は血性のこともあるが、大多数は漿液性で、10から
20%は胸水がない。病気の進行とともに胸水はふつう減少し消失する。浸出液が少なく胸膜肥
厚斑がわずかだと、肺塞栓や非特異的な胸膜炎が最初は疑われる。遅かれ早かれ腫瘍浸潤
で強い痛みがおこり、強力な鎮痛剤が必要になる。侵された胸郭は縮み呼吸しても動かなくな
る。CTを全て行うべきだが、疑いは常に胸膜生検によって確定されるべきである。いくつかの症
例では診断は困難で、大きく生検しても遅れることがある。治療は不幸なことに困難である。非
常に早期の症例は外科手術ができ、ついで放射線及び/または化学療法を行う;手術の不可
能例では、現在明らかな効果を示す化学療法の体制がいくつかある。ゆえに診断はとても重要
である。
肺実質病変
石綿肺(アスベストーシス)
石綿肺の用語は、石綿曝露による実質の繊維化に限定すべきである。もちろん真の石綿肺
と同時に起こり得るが、胸膜の病変だけでは石綿肺ではない。
症状と徴候
主要症状は呼吸困難(息切れ)である。これは、ほかの心肺疾患でも普通の非特異的症状
である。早期の徴候は特に肺底部の毛髪性ラ音だが、石綿肺に特異的ではない。指の湾曲も
起こり得るが、実際にはまれで、見られるのは3分の1以下である。
レントゲン所見
曝露が知れていて明らかな胸膜病変、つまり胸膜肥厚斑や広範な胸膜肥厚がある瀰漫性の
不整型間質性陰影があれば、診断は容易である。早期にはレントゲンでは見るのが不可能か
困難なので、過剰及び過少診断が起こり得る。交絡要因として、小不整影をきわめて高頻度に
起こす喫煙がある。とくに高分解能技術によるCTは、通常の胸部X線より早期に石綿肺を発見
できる。
肺機能
古典的所見は、肺繊維症と同じで拘束性疾患である。はっきりしたレントゲン変化がなくても、
石綿に関連した肺の異常が起こる証拠がある。
臨床診断
石綿肺の診断のためには、以下の所見をもたなければならない:
① 信頼できる曝露歴
② 曝露と診断の間の適切な時間
③ 肺繊維症に合致するX線所見
④ 拘束性肺機能
⑤ 肺底部の吸気ラ音(必須ではない)
石綿に曝露していてもほかの型の肺繊維症が起こり得ることに注意すべきである;肺繊維症
のあるものは治療可能なので、重症例では確診のために肺生検が推奨される。
肺がん
石綿による肺がんは他のものと違いはない。検査、治療も同じようにすべき。患者にとって
(補償など)経済的に大切なので石綿の曝露を明らかにすることが重要である。
私たちは、石綿に曝露した人をいかに経過観察すべきか? その健康診断の目
的は何か?
科学的、補償的な目的で曝露と関連する疾患を発見することや、更なる罹患率、死亡率の
上昇を防ぐために疾患の徴候を発見することである。健康診断はまた、法的要因や心理的原
因(調査される人や医師が安心する;しかしこれは医学的な利点がなければ理由にはならな
い)にもよる。
(患者、医師、社会にとって)これらの目的のうち一番大切なのは、医学的なそれである。現
在、早期発見で治癒できるのは肺がんだけである。ゆえに、一定期間でCTをすべきと主張する
人がいるが、コストベネフィットが証明されない限り、推奨できない。
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