エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ 『描く: 谷澤 コミュニケーションアートから見た進化する風景』 邦彦(アーティスト・クリエイティブディレクター) 多田さんから多様性というキーワードが今回のテーマということで、トップバッターで一 番多様性の代表みたいな谷澤です。今、ご紹介にあずかりましたようにアーティストとい う職業で、ホワイトシップという会社のボードメンバーでもあります。 初めにイントロダクションとして、ホワイトシップという会社がどのような活動している か、そのあたりを説明させていただきたいと思います。みなさん、かなりロジカルな人が 多いと思いますので、アートとは何か、こんなに楽しいものだ、あるいは持続可能性な社 会の切り口としての、なくてはいけない一つの大きなエレメントなんだということを、感 じていただければ嬉しいなと思います。 まず初めに 『EARTHの真ん中にART』がある。(地球の真ん中にアートがある)こ れは、ホワイトシップという会社の根拠、硬く言えばビジネスタグラインなんですね。こ れはずっとクリエイティブな仕事をしてきたなかで、2000 年位に急に思いついたフレー ズで、地球の真ん中はアートなんだ〜 と発見したというか、気付いたんですね。みなさん も今日お帰りになって英語の辞書を見ていただくと、びっくりすることがありまして、そ れというのは、Eを調べると、ほとんど人間の文明とか産業がEから始まるんですね。ぼ くはそれで辞書を見ながらドキドキワクワクするわけです。Hを調べると これがまたお もしろいんですけど、人間の感情、気持ちを表す言葉が意外と多いんです。なるほど、E とHを結ぶためにアートが存在するんだ、ということはつまりEとHを繋ぐためにアート の役割があるのではないかと思いました。たくさんあるEの中から教育(education)の E、環境(environment)のE 、アートの主は娯楽性と思っているのでエンターテイメン ト(entertainment) のEを、これをアートで ハート(heart)、ユーモア(humor)、 honesty、human そういうようなところにつなぐアート。アートをロジックに説明するの は難しいのですけれども、ぼくはソウルコミュニケーションアートと名前をつけてしまい まして、魂のコミュニケーションから生まれて、魂のコミュニケーションをするのが実は アートなんだ、ということで「ソウルコミュニケーションアート」という言葉を使って、 今、活動しています。 3 つのEの仕事をもう少し具体的に紹介させていただきます。 これは、デザインの仕事でして、ディスプレイですね。 Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved. エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ <次の図表> これは壁画でして、壁画というカテゴリは、歴史から見ると面白くてどこから始まったの だろう、実は美術(アート)史から垣間見ると、政治とか経済とかと必ずリンクしている。 ・・・あまり話すと長くなるのでやめておきますね。 <次の図表> 壁画の方の 一つの仕事として、病院のリニューアルだったり、エルダーホーム、昔で言う と老人ホームのリニューアルですね。 <次の図表> これは、舞台美術でして、ステージアートの分類の中に入るのですが、こういう仕事があ ります。 <次へ図表> これもディスプレイと同じ一環の仕事なんですけれども、1994 年位から急に絵画を始め たんですね。それまで絵画のデッサンはほとんどしていなくて、もともとファッションの 仕事とか空間の仕事をしていました。 10 年前に急に絵を書き出し、たまってくるのでちょうど縁があってバーニーズニューヨー クのディレクターに気に入ってもらえて初めて人前に見せたのがこのウインドウディスプ レイ。 これはバーニーズの新宿、横浜のウインドウディスプレイを飾るという幸運なデビューを し、人前に見せるきっかけをいただいたんです。ここからアーティストとして出走してい くんですね。 <次の図表> これはぼくの家でして、まさに多様性の住宅といっていいと思います。ぼくには子供が3 人おりまして、子育てをして、といってもぼくが育てているわけじゃないですけれども、 かみさんをサポートしています。 公園を何かデザインしたいと思いました。なぜかというと、最近公園が怖い危険な地域だ と思われたり、あるいは公園デビューという言葉を聞いたことがあるかと思うのですが、 ゆるやかなコミュニケーションの場である公園がガチガチの、あるいは危険性をはらんだ ものになってしまっている、ということを自分も子供を育てる中で感じて、ぜひ公園をつ くってみたいと思ったんですね。 ある行政に忍者のように入り込んで、公園のデザインができないか、行くだけで楽しくて コミュニケーションができて、ハッピーになってしまうような空間をつくりたいと思って Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved. エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ いるのですが、なかなか難しくて。そのフラストレーションを自分の家につくりだしたの がこの作品でして。説明しますと、タイルを多用してますが、タイルは高いので、例えば メキシコとかポルトガルのタイルに代わるものはないかと気付いたのが屋根瓦でして。瓦 も漆黒の色からブルー、グリーン、レッドとかいろいろあるのでそれを使ってます。 ずっとアーティストとして活動していく中で、作品を作って展覧会をやって、気に入って もらえると売れるという、作品はそこで商品になってしまうんですね。自分は商品を作っ ているという気持がなく、売れた瞬間に商品になってしまう。作品と商品はどういうふう に違うのか。アートは商品でないのではないか、と僕はおぼろげながらに思っていて、ど うしても展覧会で発表するというステージの上に乗ってしまうと、その辺がよくわからな い。 とにかくもっと面白い仕掛けがないかというので、ソウルコミュニケーションアートにつ ながるのですが、2000 年に横浜異人館でやりました。これも展覧会だったのですがお客 さんに参加していただけるような仕掛けを考えました。 一番の左の<図表を示す>、あなたを見てインスピレーションで絵を描きます。10 種類く らいの紙を用意して、来てくれた人にお好きな紙を選んでもらう。その選んでもらった紙 の上にその人をパッと見て印象やイメージを描きます。 <図表> これは出来上がった作品をどんどん窓に貼っていったその作品です。 20 分くらいで一枚を仕上げる。5 日間で 150 人くらい描かせていただいて、5 日目の最 終日に空間ができあがるというストーリーの展覧会で、これを機にコミュニケーションツ ールのアートを発見したのですけれども。これが発見したソウルコミュニケーションアー トでこのコンセプトを検証したり、模索する時期があったんですが、その中で一つやった のが次の、 <次の図表> これは子供向けの ワークショップでして 『ハートレター』と我々が名前をつけている ワークショップです。現在の美術教育っていうのはお粗末でして、ちょっと聞きたいので すが、子供の時、小学校2年生位までは、すごく絵が好きだった人、手を挙げていただけ ますか? ありがとうございます。 今現在、仕事とか趣味を含めて、絵を描くのを、例えばビジネスの現場で落書きとか絵を 描くことをひんぱんにやっている人、手を挙げて下さい。 Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved. エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ 想像以上におられたのでちょっとびっくりしたのですけれども。 要するにものを正確に 書かないといけないとか、綺麗に塗らないといけない、もちろんそ れも大切なことなんですけれどもね、形を正確にとらまえることも大切なんですが。 もともとアートというのはもっと自由になるためにあるというのがあった。イマジネーシ ョンをどんどん開花させて、クリエーションに繋げるというふうにぼくは思っていて、小 学校のとき幼稚園のときに受ける美術教育というのは、もっと子供たちに自由を与えて制 作する場でないといけないんじゃないかと。なかなか学校教育に導入するのは難しいので すが、自分たちで縁があるときはこういうふうにやってます。さっきの横浜の異人館でや ったイベントと同じことを子供たちにはやってもらうのです。 <次の図表> これは、1 年生から 6 年生までの子供たちの作品で「君たちの心を描いてみよう」という お題を出して書いてもらったものです。アーティストのときと同じように、作品には必ず サインをすることとタイトルをつけることを子供たちに伝えてナビゲイトしながらこのよ うな作品を書いたんですね。これがさっきもお話しましたけれども、Education の一番 の核になる仕事、活動です。 <次の図表> 先ほど多田さんからご紹介いただいた一番のもの、プロジェクトなんですけど、ハートギ フトプロジェクトというものをやっています。アース のまん中にもアートがあるように、 実はハート heart のスペルの中にもアートがある。横浜の異人館でやったイベントを機に、 コミュニケーションから生まれるのがアートであるべきだ、そのアートを広げよう。あな たの心とか宇宙、気持ちとか思いやり、思いを絵に表現して、日本の冠婚葬祭の文化の中 にすべりこませたいという思いで立ち上げたのがこのプロジェクトです。 <次の図表> これは実際にオーダーメイドの絵画なんですけど、その人から依頼を受けてぼくが描き上 げる。約 4 年間で約 400 人ぐらいの人からオーダーを受けて、ほとんど口コミなんですけ ど、広がっているプロジェクトがこのハートギフトです。 <次の図表・時間の関係で次々切り替え> 個人の思いもあるし 家族全員のイメージを絵にするとかですね、いろんな依頼の仕方が あるのですが、それが発展して今、ヴィジョンアートということで、これはどういうこと かというと、例えば経営者とか組織の中のリーダーの思いをどうしても言葉では伝えきれ ない社員とかメンバーに伝えきれない思いを可視化するというひとつのアート。コーチン グのコーチとか、コンサルタント会社と組んで会社の中に入っていって、経営者の思いや Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved. エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ ビジョン、あるいは社員やメンバーの思いを言葉で吸い上げてそれをアートとして表現す る。出来上がったものを鑑賞アートということでそこに何が隠されているのかを参加者全 員で発見していくというプログラムです。 <次の図表> これはこの企業のための作品なんですけど、ちょうど社員と朝礼のときにお披露目をした 時のものです。その後ポスターをつかって、どういうものがアートに隠れているのかを言 葉に吸い上げることもしました。 <次の図表> 別の会社の、このときは、社長の経営者の思いをチャートに書いていただいて、アートに したものです。 <図表・次々と切り替え> このあたりずっとそうですね。こういう風に抽象画が出来上がるのですが、およそ言葉で 伝えきれないものをシェアするということが、アートが入ることで非常にスムーズに出来 る。これはすごく難しいことなのですが、日々こういう現場に立ち会うと、言葉で伝えら れないことをアートによってシェアすることができるということを実感しています。 <次の図表> これは、アート 美術、芸術というのはやっぱり、上の方の難しい方の「藝」と 下の簡 単なほうの「芸」。上の方は、東京藝大 文藝春秋の「藝」であったり。まあ普通に一般的 に使われるのは下の簡単な方ですが、 全く語源が違いまして、上は植えつけるという意 味があり、下は刈り取るという意味があります。もともとどちらも農業用語でして、アー ト、茫洋として曖昧なアートを語るときのひとつの側面をこれは照らしているのではない か。もともとアートというのは基本的に、人の心に思いやりとかやさしさを植えつけるた めにあったのではないかなと思っています。 <次の図表> これは最後になりますが、ひとつのケーススタディになるのですけれども、「世界の子供の 国にワクチンを」という NPO がありまして、細川首相の奥さんが座長をやられているので すが、そのフォーラムが今月の 8 日にありました時に、これもまたぼくの作品なんですけ れども「子供は希望の贈り物〜 Gift of Hope」という22人の子どものポートレート作品 を使って、ナビゲイトした時のもようです。フォーラムの親善大使みたいな形ですね。今 日、前にその時のポスターをもってきたんですけど。 アートっていうと難しいというきらいもあるでしょうけれども、ひとつの物と物、人と人 との心をつなぐツールとしてアートがあるというふうに思っています。 Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved. エコプロダクツ 2005 JFS 「持続可能な社会ってなあに」~キーワードはつながる・みつける・育つ~ 最後にですね、持続可能な多様性を認めるというのは、アーティストの僕から言わせてい ただくと、アーティストのような人種が本当に生き生きと活動できる世の中が実はすごく 持続可能な社会なんではないかなと思います。是非支援していただきたいという言葉を最 後にしめくくらせていただきます。 ありがとうございました。 Copyright(C) 2002-2006 Japan for Sustainability All Rights Reserved.
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