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第 18回 日本臨床 スポーツ医学会
学術集会
シンポジウムⅣ :女 性選手のメデ ィカルサポー トの最新
3.ス ポー ツによる拒食症
Anorexia athletica
松 田貴雄
日本臨床 スポ ー ツ医学会誌 16巻 2号 別刷
第 18回 日本臨床 スポ ー ツ医学会
学術集会
シンポジウムⅣ :女 性選手のメディカルサポー トの最新
3.ス ポー ツによる拒食症
Anorexia athletica
松 田貴雄
*
キー ・フー ド :exercise amenOrrhea,anorexia nervosa,hypoestrogenemia
運動性無月経 ,神 経 因性食欲不振 ,低 エ ス トロゲ ン 態
'大
要 旨〕 摂 食障害 は,近 年増 えた女性 の精神 障害 の ひ とつ である.神 経 因性 食欲不振 症 はここ20年 間 で,10
〔
倍 に増加 した との報告 もあ る 予後不 良で,全 快 は半分 と報告 されて い る
スポー ツi窒 手が 摂 食障害 になる と競技継続 がで きない こ とが ほ とん どであ る 食事指導 な どの治療 に抵
す
抗 るが 礎 技 与1l ll i tlす る誤解_の 解消 で環1的 に回復す る ことが あ る ス ポー ツアス リー トの摂 食障害
`
′
に対 して =tft'liを f二 ■ ´tス ■― ′ドク ターが関与 して い く必要 性が あ る
′‐
`
骨粗ほ症 疲 ,」 il′ iを す J■ 二 七 t' tiニ ス コ ゲ ン1ナ t態 を改善す る必要性 が提 唱 されて い る
.
0は
と思 われ る
じめ に
しか しなか ら ,ti各 な定義 .診 断基
3に
以前 よ り,や せ と無 月経 を特徴 とす る拒 食 症
よ
準 に基 づ くと全 lTl調 査 は見 liた らず .岡 野
る1996年 の 4体 育系大学女子 アス リー ト1,000名
は,日 本 で も1980年 代 よ りそ の増加 が報告 され
近年そ の増加 は著 しい とされる.疫 学調査 によっ
に対 す る調査 では,一 般女性 の 3%に 対 し,審 美
系 12%,持 久系 スポー ツ20%が ,質 問紙法 を用 い
て推定 される患者数 は,人 口10万 人あた り,1980
た 調 査 で あ る Eating Attitude Test(EAT)の 短
,
11に は1.5∼ 1.8人 であった
1)が
,1998年 には厚生
イ石川班 の 調査 で は,18.5人 と約 10倍 の 増 加 で
チった
」
三城の学校 を対象 に摂食異常調査表の記入 に よ
ンた調査 による と,有 病率 は04∼ 1.0%で
■´
,
た■ 三言令は平均 17.8歳 で あ った
2,
縮版 ,EAT-26° に よる調査 で20点 以上 を示 す
,
摂食 障害類似者 の割合 であった。
ス ポ ー ツ選 手 の 摂 食 障 害 は,Sundgot Bor
gen5)が ,1993年 にエ リー ト女子 ア ス リー トの調
査 よ り Anorexia athleicaと 提 唱 し て い る (表
1)ス ポ ー ツ選手 は体重 が軽 い ほ うが競技 力 向
■イ )95%以 上が女 性 で,厚 労省 の難治性疾患
上 につ なが ると考 え られ ,摂 食障害 を発症 しやす
指定 されて い る 病 因 の解明や標準化
は確 立 されて い ない。発 病 の低年齢
い と考 え られた.ま た.も ともとやせ のため,適
克 11t
il iに
成長 スパ ー トや peak bone mass形 成
正 体重 の判定 は難 しく,診 断が困難 で,発 症 して
い て も,や せの正 当化 をす るため にスポ ー ツによ
期 に重 なる こ とか ら低 身長 や骨粗丞症が発症す る
ことが問題 となって い る。
リー 層取 り組 む こと もあ り,一 般 の摂 食障害 と比
較 して難治性 にな りやす い とされて い る
運動選手 に限って も,摂 食障害 は増加 して い る
拒 食症 は,摂 食障害 の 1つ の病型 で ある。神経
因性 食欲不振症 とされる食事 が摂 れない,大 況 に
された治J,f法
が進 んで
.
,
*
国立病院機構西別府病 12L総 合 スポーツ外来
日本臨床 スポー ツ医学会誌
過食 ・食 べ 吐 きを伴 う神経性大食症 ,い わゆる過
i Vd 16No 2,2008
227
シ ンポ ジ ウ ム Ⅳ :女 1■ 選 手 の メデ ィ カルサポ ー トの最新
表2
表 l Anorexia athletica :ア ノ レ キ シ ア・ ア ス レ チ カ
神経性食欲不振症 の診断基準 (厚 生省研 究班 1990)
(Sundgot― Borgen, 1993)
標準体重 の -20%以 上 の体重 減少
1■ つん 00
標準体重 の -5%以 上 のやせ
2
3
肥 る こ とへ の過剰 な恐 れ
食事制 限 (<1,200kc」 /日
4
食行動 の異常 (不 食,多 食,隠 れ食いなど)
体重や体型についてのゆがんだ認識
(体 重増加 に対す る極端な恐怖な ど
)
)
4
体 重 減 少 を説 明す る 医学 的疾 病 や感情 の 障害
が ない
発症年齢 30歳 以下
5 1女 ′ な らば)無 月経
R︶ ´
0 ワ′
1生
胃腸 障害
6
思春期 の遅 れ (16歳 で初潮 が な い)
やせ の 原因 と考 え られ る器 質的疾患 が な い
厚 生省特 定疾患神経性 食欲不振症調査研 究班 ネ
中経性
月経異常 (原 発性 お よび続発性無 月経 ,稀 発 月
経)
8.
ボデ イイメ ー ジの崩壊
9
自己誘発 嘔吐 ,下 痢 や利尿剤 の使用
10
むち ゃ食 い
11
脅迫感 に とらわれた運動
食欲不振症 の対応 の ために (マ ニ ュ ア ルパ ンフ レッ
ト)」 (1992年 1月 TTlこ 末松弘行)よ り
陸上競技 は小学 4年 よ り開始
中学入学後 1年
よ り駅伝全 国大会 に出場 .2年 生 にな り 高校生
に混 じて国体候補選手 に選 ばれ,合 宿等 に参加
41kgあ った体重 が X年 7月 に39増 に減少 し,大 会
で成績不振 .そ の後 の 国体 の合宿 で,高 校 生選手
食症 に くわえて,特 定 の不能 の 3つ
,'ン
タ イプ に分
よ り体重 を減 らした ほ うが い い とア ドバ イ ス さ
れ
け られる。
さらに体重が減少 した
摂食障害 の診 断基準 は,厚 生 省研究班が 1990年
に作製 した基 準 (表 2)を 用 い るが ,ア メ リカ精神
1lI P■
医学会 の 精神 疾 患 の 分類 と診 断 の 手 引 き(DSM―
Ⅳ)(表 3)を 用 い る ことが多 い。 これ以外 に世 界
千
1を
保健機構 (WHO)の ものが あ るが ,ス
に特化 した ものは ない
│:│イ
=`た
た
ヽ
.:il il,[k
153cm(標 準体重46 3kglで ある
表3
:「
性能障害 の
家族歴 .既 往歴 に特記 す べ を ニヒは な し 父 親
入 L:: :[Jl:は 体重 350
l・
増 ,BM114 7,体 温 36 3t
37/分 で,検 査所見等 は表 4
患者は,14歳 女性 ,陸 上中距離選手 で, 身長 は
1
診 を指示 ・ :内 lて「 )+'プ ヽで │ま 貧 血はな
I性 能 の ,t卜 を■■ 壬│_ ・1 11:[│li化 器内
は駅 伝 競技 経験 あ り
例
に監 督が貧 血 を
ため 精 介 l i liサ に ブ
、た
ポ ー ツ選手
.
●症
(
9月
「
il i102 51.脈 拍
三:」 ]で あった。
腹水貯留があ り,飢 餓 に よ li ヒ して内科入
院にて カロ リー設定 を行 t ::二 f千 導 を行 った。
神経性食欲不振症 の診断基準 (DSM― Ⅳ
)
年齢 と身長 に対する正常体重 の最低限 またはそれ以上 を維持することの拒
`
下の体重が続 くような体重減少 ;ま たは成長期間中に期待 される体重増加がな
になる
:::`:さ
れ る体 重 の85%以
1待 され る体重 の85%以 下
)
2
3
体重 が不足 して い る場合 で も,体 重 が増 える こ とまたは肥 満 す る ことに対す こit,恐 怖
自分 の体重 また は体形 の感 じ方 の 障害 ,自 己評価 に対 す る体 重 や体形 の i量 妥tな 影響
または現在 の低体重 の重
大 さの否認
4
初潮後 の女性 の場合 は,無 月経 ,す なわ ち月経周期 が連続 して少 な く とも 3回 欠如す る (エ ス トロゲ ンな どの
ホ ルモ ン投与後 のみ 月経 が起 きて い る場合 ,そ の女性 は無 月経 とみ な され る
│
アメリカ精神医学会「精神疾患の分類 と診断の手引 き」(DSM― Ⅳ
※我が国では85%で な く,80%を 基準 としている
)
228
日本臨床 スポ ーツ医学会誌 :∨ o116
No 2,2008
3
二 │11食 事全 量摂取 に もかかわ らず体 重減少 は持
iiレ た 母親 が患者 の部屋 よ り食 べ たはず の もの
■ゴ ミ箱 よ り発見 し,診 察 によ り吐 きダ コが観察
た。 当院へ はスポ ー ツ無月経 で紹介 され,拒
`れ
」
こFI疑 い で精神科受診 となった
スポ ー ツ無月経 に対 しては,生 命 の 危険 は比 較
表4
:
:
GPTlll↑
HBs抗 原 (― )HCV抗 体 (―
FT3 1 99 FT4 1 14 TSH 1 82
ACTH39 6 コー チ ブル358↑ GH2 18↑
エ ス トラ ジ オ ー ル
FSH 0 10↓ LH O.4↓
血糖 79 GOT38↑
│
tF_ft tに よって も
ス トロゲ ン・ プ ロゲ ステ ロ シ〕
13↓
消退 出血 はなかった
tそ :'■ 34 0kgで -214口 円力1ト
精神科 で,[当 ド
/よ
す ことへ の抵 llLが あ
重減少 を認め 」 11を
り,3無 月経て ■責
=や
=::千
い
栄■
ll1 1:」 シ
食
:f,こ
;二
検査所見など
検査所見
血 液検査
ヘ モ グ ロ ビ ン127 血小板 167
総蛋 白76 総 コ レステ ロー ル181
的少 な い 状 況 の た め,LH― RH― THRテ ス トを施
行 した 全 く反応 は認 め られなか った 図 11 エ
科では
スポ ーツによる拒食症
の診断となった 精神
県検査 :糖
ii l象
(―
トン体 (―
)
千
:
`:'卜
CT llll:41盤
二 ´て 摂 取 カ ロ リ ー 計 算 を行
■:=な 社の記録,① 標準体重
)ケ
l lNl月
(+`
隻イ
骨塩 定 壮 撓骨 YAヽ 1732001
=■ L li{を 切った ら入院治療 ,② 37
イ (ブ 、の 目標値 で運動禁止 と
/[1ヽ
■
k「 Ⅲ
)ま
1l ttイ ドを設定 した治療方針が提案 され
い ´■′
た ´三 ン 母親か らは,「 娘 の生真面 目な性格
―
´ヒ.食 べ たもののグラム数までつ け ると
:‐
いので は ?」 といった懸念が呈示 され,ス ポ ー ツ
外来での対応 となった
スポーツ外 来 では,競 技復帰意欲 の確認 を行
」じになって しま うのでは ?」 ,「 前 の病院で
1ま くいかなかったや り方 を繰 り返 しても治 らな
い,競 技力低下 につ ながる原因が解明され るまで
は,① 食事 の摂取 については本人 に任せ,あ まり
146 3kI´ ',「
F二
.
会
▲
■
・■
■
15分
プロラクチン
160
A・
120
388
贔 一■^
、日
■
、
一
■・
80
40
0
15分
前
図
30分
60分
l LH― RH― TRHテ ス ト結果
日本 臨 床 スポ ー ツ 医学 会 誌
i Vd 16No 2,2008
229
シンポ ジウムⅣ :女 性選手 の メデ ィカル サポ ー トの最新
41 67kg
90%
身長 153cm
標準体重 463k3
37 4kg
80%
ヨ﹃
↑
ジョギング
隔
→朧詢
11/15
旧
→動詞
10/31
許可
12/20
1/14
↑
↑
競技復帰 □― ドレー ス
許可
優勝
エス トロゲ ンパ ッチ
エ ルカルチン
×年 11月
(×
図
関与 しない
2
経過
2体 重が減少 しないこ とのみ :l標 と
指導 した
する,3限
を設定 を切った
らスポー ッ外来 でな く,精 神科 もしく│ま 心警 │ヽ 千
1
界値 (標 準体重 の 7制
これ も歯 の健康 は競技力 に関与す るこ
とを説 明 した。 この時期 を境 に本 人 の競技復帰意
欲 が高 ま り,体 重 の 増加 は まだ認 め られ て い な
か ったが .ジ ョギ ングの 開始 を許可 した
lill」 に エ ス ト
)EIが (1:■ │「 レ
す シウ エ、■ ′
`
ン ノど要 Itを 三 :i::し rt tl ifi:イ ケに効果 を
での入院管理 を行 うといった対応 を行 うことを本
人に確認 した
'レ
.
まず,走 れな くなった原因,つ まり競技力向上
=‐
に対す る本人 の誤認識 の解 明 を行 った.採 血 に
よって,身 体特性 を把握 す ると同時にカウンセ リ
ングを行 い,本 人の反応する質問項 目について追
た ● :tに は抵抗が
伝 えた ところ :こ :::を 1ま
`し
ニ ll却│を
ハ
あ ったた め エ ス トロ ゲ ン
使用 し
さ らに補助 食品につ い て │ま ]清 tな 過乗1摂 取
は腎機能等 へ の負担 がかか る こ とを 夕 まし カル
ニ チ ン (エ ルカルチ ン)の 内 :::を 1:● した ,図 2).
た
求 した 「呼吸は苦 しくなかった」,「 脱力感が急
に きた」の コ メ ン トを選 択 した 採 血 にお い て
も,ヘ モ グロビン値.血 清鉄か らは貧血は認 め ら
そ の後 は順 調 に体重 が
に入 り,部 活復帰 を許 口
I
│口
肝機 能 の 若 干 の L昇 を差 し引 い て
ェ リチ ン値 は150を 超 える高値で,酸 素運
れ なか った
も,フ
+1)年 1月
.x年 12月
X-1年 11月 に入 って
│`更
して 、■
競技 会 の 出場 を許可 した ヒニろ 県 内 の ロー ド
レースで い きな り優 勝十 こ`iど の回復 をみた。 当
搬能力 の高 い ことをうかが わせ る値 である と本人
に伝 えた.競 技成績 の低 下 は酸 素運搬 能 につ い て
の 問題ではな く,心 肺機能 の強化 とは別 の 強化法
初 は,関 係者か らは哉′t伎 ■ に対 しての懸念 も大
につい て相談 した。 カル ニ チ ン分画 ではアシルカ
ル ニチ ンが69%と 著明に低下 してお り,「 筋持久
蛇 まで復帰 し,県 代入tiと して競技 が継続で き
て い る。
きか ったが ,問 題 な (
力 の欠如 に よる,筋 へ の エ ネ ル ギ ー供給不足 Jと
X+2年 )は 体重43
●まとめ
い う言葉に本人は反応 を見せたことか ら,体 重減
少 は,患 者本人には全 く競技力 の向上に繋が らな
いことを説明 したところ,治 療 について前向きの
一 般 に摂 食障害 の患者 の95%以 上が女性 で,発
症年齢 は平均 l「 8歳 で.厚 労省 の難治性疾患克服
事業 に指定 されて い る 病 因 の解 明や標準化 され
姿勢を示 した
.
X年 11月 に入 り,回 復期 に入って過食 ・食べ吐
た治療 法 は確 ikさ れて い な いが ,発 病 の低年齢が
進 んで.成 長 スパ ー トや peak bone mass形 成期
きが見 られるようにな り,本 人には吐 いていいこ
とを伝 え,嘔 吐後の う歯 (虫 歯)に 気 をつ けるよう
日本 臨床 スポ ーツ医学会誌
現在
に重 なる こ とか ら,低 身長や骨粗霧症が発症す る
:
∨o1
16 No 2, 2008
3
ニヒも懸念 されて い る。 これ に対 して摂食障 害 に
を しば しば行 う
:る アプ ローチ は多方面か ら始 まって い る。
スポ ーツに よる拒食症
プ ログステ ロ ン製剤 の投与 によ
り,出 血が あれば第 1度 無 月経 エ ス トロゲ ン
プ ログ ス テ ロ ン投与 によ り消退出血があるか ない
,
(1こ スパー ト中である場合 は,体 重減少時 に一
かで 第 2度 無月経 の診断 となる 体力 の消耗 につ
ながる との ことか ら,心 療 内科 ・精神科 では重 要
して伸 びが鈍化す る。 最終身長は推定最終 身長
I)低 下す る。 身長 の伸 び と相 関す るイ ンス リ ン
Fl成 長 因子 I(IGF― I)は
,炭 水 化物 や蛋 白質 の
摂収 と正 の相 関を有す るので,低 体重期 間が長 く
視 されて い ない
続 くと身長 の伸 びが抑制 される。骨端線が 閉 じる
に伴 う精神症状 の改善 に も奏効 したのではな いか
前 に栄 養状 態 が 回復 しな い場合 は,低 身長 とな
る 成長 スバ ー ト後 では,低 体重 .低 蛋 自・ 低 カ
と考えている
今回の症例 にお い てエ ス トロ グ ン投与 は,飢 餓
て は 50pg m′ 程 度 の エ ス トラ ジ オ ー ル 値 と な
ル シウ ム な どつた
11メ [美 ,tIGF― I血 症 .低 エ ス
トロ ケ ン上Ji:■ ヒ■ :││:た .D it卜 をきたす要 因 と
り,生 殖 に よイ(│^分 で あるが,カ ルシ ウ ム等 の吸
収率改善 に │ま 有効で.懸 念 される不 正 出血 な どの
なえ
■ 」I
「
Iち
´、il減
1枚 2日 間の投与 は血 中濃度 とし
副作用 は 内複肥 it[│ま あ ま りみ られず出血 はほ と
ん どない こ とが 多数 であ る llt栄 養状態 の改善が
・
,〕 ケ 日密 度 の減少は迅速で, 1年
少す ることも稀 では な い.体 重 と
なかなか認め られ な い症 例につい て も有効 と思 わ
: J復 して も骨密度の回復 は認め られない こ
れる.特 に内服等 を嫌 が る摂食障害患者 にお け る
_も 多 く,競 技継続 にあた り,高 頻度 に疲 労骨折
経皮吸収型 の薬斉」の使用 は有 効 と考 える ただ し
運動 を再 開 した際 は,貼 布 した シー ルが汗 ではが
を起 こす ことが 問題 となる.骨 吸収 の充進 と骨形
成の低下 で,場 合 によってはビスフ ォス フォネー
ミ製剤の考慮 も近 い将来必要 となる治療 となる と
れや す い な どのデメ リッ トはあるが ,最 近 では塗
布す るタイプの ジェルの薬剤 も発売 されて い る。
低 エ ス トロゲ ン状態 の継続 は,更 年期 における急
もi〒 えな くもない.骨 形成 に関 して も,低 エ ス ト
コゲン状態か らも受 け る影響 は少 な くない ビ タ
激 な骨塩量低下でわかる よ うに,骨 に対す る影響
は大 きい こ とが容 易 に想像 される
ミンDの 投与や ビタミンKの 投与 もある程度 の効
果は示す ものの,改 善 には時 間がかか │)す ぎ 疲
労骨折 を生 じて競技生 命 を短 くする こ とに もつ な
が
がる。 こ うした ことか らも低 エ ス トロ ゲ ン1サ t態 の
行 ったほ うが よい とす る意 見が優勢であるが,投
改善 は早期 よ り取 り組 むべ き事 象 に挙 げ られる
これ まで, アス リー トの無 月経 の原 因は,ハ ー
ドトレーニ ングな どに よる身体 的 。精神的 ス トレ
与す るに して も,低 用量 ピル を用 い て副作用逓減
ス や 体 脂 肪 率 の 低 下 な どが 挙 げ られ て きた。
F schと McArthurの 研 究つよ り,月 経発 来 に体
:=妨 が 17%以 上必 要 と提唱 された ことか ら,体 脂
スポー ツ現場 では,「 運動性無 月経」と表 現 して
プ ロ デステ ロ ン投 ケ │ま
賛 否 の あ る ところだ
将 来 的 に内膜 J畠 な どの 懸 念 もあ │)投 与 を
に努 める とともに,男 性 ホル モ ン作用 の少 な いデ
ソゲス トレル を含 む 1相 性 の ものが使 いやす い
い るが ,問 題 は月経があ るな しではな く,低 エ ス
トロゲ ンが問題 で あるので,ア ス リー トに とって
二_')減
少が無月経の原 因 とされて きた。 しか しな
「 :「 °
6以 下 で も正常 月経 を有す ることも多 く
‐ 三:rヒ SWaineの 研 究mで は,ェ ネ ル ギ ー摂取
● こ 可 与を示唆 して い る.血 中エ ス トラジオ ー
も適切 な用語 ではない と考 える 骨粗髯症 な どに
つ なが る
「運 動性低 エ ス トロ ゲ ン(状 態 )」 の用語 を
,
使用 して い くことを今後提案 して い きた い。
摂食障害 は非理論的なやせへ の希求 で ある。食
し、
I::1: 体脂肪 率 とは低 い相 関 で あ ったの に
対 し 二 レギ ーバ ラ ンス と高 い相 関 を示 した
へ の異常 な執着 と気分情緒 の変化 は,飢 餓が引 き
エ ネ ルキ ー■取が 十分でな い場合 に,ト レー ニ ン
を困惑 させ るが,こ の状 況 は更年期 にお け る低 エ
ス トロゲ ン状態 に起 因す る様 々 な症状 に類似す る
=、
起 こす心理行動異常 と説明 される.家 族や医療者
.
コー チ ゾル分泌 が増加 し,視 床
グ過剰 になる と
下 ,さ らに下垂 体前葉か らの性腺刺激 ホ ルモ ンの
とも言 えな くもな い.原 因 は他 にある として も
同様 に存 在 す る状 態 は低 エ ス トロ ゲ ン状 態 で あ
低下 によ り,卵 巣か らのエ ス トロゲ ン分泌 を抑制
り, この改善 は問題解決 に寄与す ることは本症例
す る と考 え られ る
で も確認 された
下 部 か らの性 腺刺 激 ホルモ ン放 出ホ ルモ ンの低
,
.
一 般 に婦人科 では,診 断 のためのホルモ ン投与
日本臨床 スポ ーツ医学会誌
ス ポ ー ツにお け る摂食 障害 に つ い て も対 応 は
:
∨o1
16 No 2, 2008
231
シンポ ジウムⅣ :女 1生 選手 の メデ ィカルサポ ー トの最新
表5
た り,練 習が で きなかった り,競 技 に出場す るこ
行動制限表 の一例
とがで きな い と自分 自身 の存在感 を失 って しま う
行動範 囲
自室 内
│
1清
と考 える ことが 多 い 発症前 は指導者や保護者 の
言 うことに素直 に従 う優等 生で ある ことが多 い に
拭
もかかわ らず ,発 症後 は競技成 績が芳 しくな い こ
とに対す る不安 を,几 帳面 さと完全主 義 で補 お う
とす る強迫 性人格障害傾 向が強 くあ らわれる。 一
方で,依 存 的で,依 存 で きな い と攻撃的にな り
,
未熟 な防衛活 動 に走 りがちである。 さ らに親か ら
は期待 に応 える ことを求め られ ることで, これ ら
は強化 され,失 敗 した際 に 自己 の無力感 を強 く感
手
受
紙
信ILI曽
38 1屋 上
39 1
1電
眸
40 1病 院建 物 内
42
じる傾 向 を有 す る.指 導者 も自己愛的人格 障害 に
ラ ジ カセ
話発信
近 い性格 を有 す ること も多 く,指 導者 の指導方針
や,練 習環境 も競技力 向上 の誤解 を招 く一 因 とな
│
評貫
シ ャワー
ること も多 い.ス ポ ー ツ現場 に直接携 わることは
こ うした競技特性 の理解 に もつ なが り,治 療 のポ
イ ン トの発見 に も必要 な ことと思 われ る
こ うし
た背景が ,ス ポ ー ッアス リー トの摂食障害 を難治
■ t=
化 させ る要因で もある。少 な くと も,そ こには競
43
技力向上 に対す る誤解 があ り, これ を解消す るこ
とで 回復す るこ とが ある
これは競技 にお ける選
iよ 二 :114,も にき く
i
、i
復帰意 欲 の 有無
一 l ijt,て
it'1
競
│よ
ノ
イ
離i二 とな
様 々で あるが,特 にエ ス トログ ン補充療法 につい
る ‐ノて
ては婦 人科以タトの他科 の 医師にはなかなか手 を出
しに くい領域 で,今 回の症例 は,婦 人科 スポー ツ
',ヽ
ア ス リー ト′
し十
な・
tiし 摂 食障害 につ
い て は診 断 ・治療 で 様 々な 」_ 'メ 針 の違 い が見
′
fi省 石川班 か ら早
受 け られ る 近 い将 来 =
`
ラ イ ン を出す こ と
期発 見 を 目的 と した治■ ■
ドクターの治療参画が奏 効 した症例 とい える 摂
食障害治療 の基本 は栄養療法 と心理 療法 である
′・
心理 ・行動異 嵩
を呈す る飢 餓症候群 は,低 栄養状
い
を改善
態
しな 限 り 申
{快 しな い 心理療 法 の大
きな妨 げ とな るため
そ fL■
.I′
三
二■ rtt ι と考 え る
.
.「
:11こ や養護教諭 に向け
が予定 されて い る
│〔 l ・
‐
た もので ある
li _11生 班では
でに
,す
/ι
ヽ
栄 養療 法 が ′
と
理療 法 に先
専門
立 って優先 され る 心理療 法 は認知 の偏 りを修正
し,困 難や ス トレス に対 処す る能力 を向上 させ
家 向け の ガイ ドラ
れてい る 多方面
´‐
か らアプ ローチ が求 ‐ ´│し ていると言 うことは
これ といった決定 1■ :外 千・治療 の方法が ない こ
ス トレスを食 行動 の異常 で 解決 させ ないで,別 の
と も意味す る
適切 な解決 となる行動 パ ター ンを学 ばせて い くこ
とを主 とす る 拒食症が難治 となる状態 の 1つ と
療法 (表 5)以 夕ヽ,こ もイ
■力とされる治療 法 が数多 く
存在 し,自 助 ク し-7
地域 医療 ネ ッ トヮー ク も
して,人 格 障害 の合併がある
存在 して い る
,
:′
,
アス リー トは もと
│::」 :::::に
認め られて い る認知行動
」イ│ま 学童生徒 で ある ことか ら
【
学校 医や -111ヽ 1・ 」、
児科 ・ プライマ リー ケア医
もと強迫性 人格 障害的性格 を有 した者が 多 く,不
,
そ こで,身 体症状 な どよ り,臓
に特化
した
器
専│¬ 外来へ の紹介 となる 摂食障害
につ い ては :ク 淀
Fの 際、念頭 にない と器質性 の治
安や緊張 を完全主 義 でカバ ー しようとす る傾 向が
をまず受診す る
ある
アス リー トの摂食 障害 は,「 競技 力 向上 に対 す
療 に終始す るこ とに なる.逆 に心理 的な診断治療
にのみ 目が向け られる と,今 度 は身体症状 へ の対
る誤解」が原 因 となっている ケ ース が数 多 く含 ま
れて い る と考 え られ る.ス ポ ー ツ選手 は練習 しな
い と,不 安 ・抑 うつ を生 じ,大 る と思 い込 んでい
日本 臨床 スポー ツ医学会 誌
1■ :tkさ
応が不十分 にな りがちになること も多 い
:
∨o1
16 No 21 2008
心療 内
3
´
ヽ/ 一
,
オ一¨
ヽ
´﹂ [ 1999年 1年 間 の 初 診 患 者 の 検 討 ―
異な り,閉 鎖 病棟 な
や、 ク リニ ック対応
岡野 五 郎 :ス ポ ー ツ選 手 にお け る食 欲 異 常 とエ
ネ ル ギ ー 要 求 臨 床 ス ポ ー ツ 医 学 1ま 4):433
439, 2001.
4)
ニr」 `二 ろ摂 食障害 につ い て は,ス
ス ー
・ ミ■ 1た 手
なければ,最 も選手 の嫌
`れ
三 'l riな くなる事態 につ なが る。 これ
三
「 ´:I害 に対 して十分 な取 り組 み を考慮 して
1
振症 の推定有病数年次推移
厚 生省特定疾患神
:平
成 1年 度研 究報
経性食欲不振 症調査研 究班
告書
」
:2731,1990
堀 田員理 ほか :内 分 泌 疾 患 総合 医療 セ ン ター
内科 にお け る神 経性 食欲 不振 症 患 者 の 実 態 ―
1982
Sundgot― Borgen, 」 : PreValence of eating
disovdeus in elite imale athletes lnt」 SpOrt
ゝTutr 3 : 29-40, 1993
堀 田具理 :内 科 医 にで きる摂 食 障 害 の 治療 と診
断
7)
三 輪 書 店 .2001
Frisch.R E
ヽIcArthur,」
lV I Menstrual
cycles i fatness as a deterlllinant of lllini
munl 、‐
eight for height necessar卜 for their
maintenance
文
献
:患
藤 田利 治 ほか
者調査 に基 づ く神経性食欲不
l et al. : The eating attitudes
/1ed 12 :871-878
relates.Psychol ゝ
護治性 とい われる結果 に至 るこ
ズ性 スポ ー ツ医学 に携 わる ドクター と
‐
Garner, D
test i psychometric features and clinical cor―
二」 二され る。 で きるだ け早期 に発 見
■子を発 見 す る こ とは重 要 な鍵 とな
:一
東 女 医大 誌
71 : 147-154, 2001
して い な い施設 も多 く,治
・ ― ス も少 な くな い と思 わ
,'I=1:■
スポーツによる拒食症
or
onsct
Science 185 : 949-
951, 1974
Zanker,C.L,Swaine,I L : The relationship
between serum oestradiol concentration and
omen distance run―
energy balance in young、 ″
ners.Int 」SpOrts lvled 19(2): 104-108, 1998
堀田真理 :神 経性食欲不振症.第 22回 日本思春
期学会学術集会抄録 ,6168,2004
Anorexia athletica
N/1atsuda,T*
partment of Sports Outpatients
・
ヽational Hospita1 0rganization,Nishibeppu Hospital
=, A C7dS i exercise amenorrhea.anorexia ner、
osa.hypoestrogenenlla
ハじst′ acti :[こ ling disorder is one of the ps卜 chological diseases aflecting、 /omen、 Those numbers have increased
〔
: :tヽ til itヽ ::` Iモ
iti lJt
::
lT:1(:l all
haS also been reported that anorexia nervosa has increased in these past 10 years by a factor of
,f complete recovery is hali
ょlillete develops an eating disorder,it is difllcult to continue playing his/her sport
Ⅱe/She resists the
treatlllcll1 0f thc meal guidance lt is important for canceling nlisunderstanding of weight lt is necessary that a
sports doclor fanliliar vハ
th the characteristics of various sports participates in the treatment of eating disorders
among sports athletes
Osteoporosis and stress fractures are often amalgamated The necessity for improving the state of
h卜
poestrogenenlia is advocated
日本 臨床 スポ ーツ医学会誌 :Vo1 16 No 21 2008
233