紅の吸血鬼と巡る運命 ID:73191

紅の吸血鬼と巡る運命
さくらあめ
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
フランドール・スカーレット⋮
レミリア・スカーレット⋮⋮
その子孫はハリー・ポッターの世界でどんな運命を辿るのか
届く招待状
帰れない邸宅
交わるマルフォイ家
スリザリンの末裔
運命の闇の帝王
裏切りの⋮⋮⋮⋮⋮⋮
初めての小説なのでどうかお手柔らかに⋮
主人公とマルフォイがいちゃいちゃします、ごめんなさいマルフォイ好きなんです↑
でも全体的に短めです
一話ごと文字数も結構違うので読みにくいかもしれませんごめんなさい⋮⋮
!
タグ付けよくわからないので付け足した方がいいと思うものがあったらよろしくで
す
!
目 次 1 2 話 ﹃ト ロ ー ル、そ し て 覚 醒﹄ 2話 ﹃ダイアゴン横丁﹄ │││
1話 ﹃招待状﹄ │││││││
14話 ﹃手紙﹄ │││││││
13話 ﹃明かされる秘密﹄ ││
4話 ﹃組分け﹄ │││││││
5話 ﹃寮﹄ │││││││││
6話 ﹃少しの授業﹄ │││││
7話 ﹃目覚め﹄ │││││││
8話 ﹃帝王の血族﹄ │││││
9話 ﹃一人じゃない部屋﹄ ││
1 8 話 ﹃ニ コ ラ ス・フ ラ メ ル﹄ 17話 ﹃純血のblood﹄ │
16話 ﹃present﹄ ││
怪しさ漂う秘密の部屋編
19話 ﹃テストと学期末﹄ ││
1 1 話 ﹃H a l l o w e e n﹄ 10話 ﹃変化﹄ │││││││
105 99
126 120
153
146
3話 ﹃いざホグワーツへ﹄ ││
1 5 話 ﹃マ ル フ ォ イ 家 に 帰 る よ﹄ 特に何もしない賢者の石編
84
1
90
7
36
110
18
45
27
60
72
65
78
│
20話 ﹃血にまみれた契約﹄ │
21話 ﹃再会﹄ │││││││
170 159
特に何もしない賢者の石編
もうひと眠りしようかと思い、天蓋付きのふわふわのベッドに腰をおろした瞬間に
ていた分厚いカーテンを閉じた。
フェリシア・スカーレット・ドラクルはそんなことを思いながら外を見るために開け
本当は昼に起きているのだって嫌だ。
吸血鬼ではない人間状態のままでも太陽は苦手だしやはり煩わしい。
いる。
とって煩わしいことこの上ない太陽がいつも以上に張り切って地上に光を振りまいて
雨上がりのせいもあり、庭の木や花々が水滴を反射し瑞々しく輝き⋮さらに、彼女に
どこまでも続く蒼天。
季節は夏。
1話 ﹃招待状﹄
1話 『招待状』
1
敬愛するフランドール様のよくしていた格好らしい。
白のブラウスに紅いベストとふわりと広がる紅いスカート。
をはじめた。
リボンにはいつもどおりのサイドでお団子を作ってもらいつつ、フェリシアは着替え
だ。
それは紅いシルクのリボンで、設定した髪型に勝手に結ってもらうことができるもの
両親からもらった宝物が入っている。
鏡台の上に置かれている精密に装飾が施されている金色の箱を丁寧に丁寧に開くと、
て自慢できるものだった。
偉大なるフランドール様の特徴を受け継ぐ髪はフェリシアが唯一確かな自信を持っ
高貴さを表すように妖しく輝く紫紺の瞳。
絹のようになめらかなプラチナブロンドの髪。
鏡を覗き込むといつもと変わらぬ自分の顔。
と向かう。
全く空気の読めないメイドだと溜め息をつきながらも身支度を整えるために鏡台へ
イドのミレーユの声が響いた。
﹁フィリィ様。朝食の準備が整いましたので一階の食堂へとお越しください。﹂というメ
2
フェリシアは身支度も整ったので食堂へと向かう事にした。
☆
苺のジャムトーストにトマトサラダにトマトスープ、そしてトマトジュースとあまり
﹂
庶民と変わらない朝食︵赤いものばかりだが︶を咀嚼しているとミレーユが新聞と1つ
の郵便物を抱えて持ってきた。
﹂
その郵便物の味がある羊皮紙に、胸を高鳴らせる。
裏にはあの独特のマークの封蝋。
﹁ね、ねぇ、ミレーユ。これって⋮もしかして⋮⋮
!
ホグワーツからの招待状ですっ
!
きっとそうです
!
!
フェリシアはメイドに向かってきらきらとした眼差しを向ける。
お嬢様
!
はい
!
﹁とりあえず開けてみるわね﹂
﹁はい
1話 『招待状』
3
それからフェリシアは慎重に封を開け始めた。
すると、緑色の光を帯びながら文字が浮かび上がってきた。
﹃フェリシア・スカーレット・ドラクル殿
このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜
﹂
び申し上げます。 教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。 なお、新学期は9月1日に始まります。
校長 アルバス・ダンブルドア
副校長 ミネルバ・マクゴナガル﹄
私、安心しましたよ∼﹂
﹁よかった⋮⋮これでお母様達が通った学園へ私も通うことが出来る⋮
お嬢様
!
﹁はい
!
!
4
1話 『招待状』
5
ミレーユは心底安堵した様子を見せてから屋敷の仕事へと戻っていった。
☆
フェリシアの両親はとても優秀な魔法使いだった。
ホグワーツのスリザリンの卒業生でもあるのだが、とても忠実なヴォルデモート卿の
死喰い人でもあったのだ。
だが、ヴォルデモート卿を裏切ったとある家系を始末する際にそこの人々と相打ちに
なり2人とも死んでしまった。
ドラクル家は純血の魔法使いでもあるが純血の吸血鬼でもある特殊な家系だ。
歴史も長く、そのためか純潔の家系の頂点に君臨している。
これまで一切人の血が混ざらずにフェリシアまで続いてきた。
フェリシアは11歳という幼さで既に純血の家全ての頂点にたっているのだ。
この事実はフェリシアはよく知らない。
両親は吸血鬼にだけかかる特別な病気にかかり亡くなったとしか知らされていない。
身内には自分一人だと思い続けている。
☆
アゴン横丁へと出掛けた。
両親の杖が入った箱も持って、リビングにある暖炉へ向かうと、パウダーを使いダイ
ル家だけの特別な深紅の鍵を持つ。
お気に入りのナイトキャップのような帽子をかぶり、グリンゴッツ魔法銀行のドラク
るわ﹂と告げる。
そう決めると、残りの朝食をさっさと済ませ、ミレーユに﹁学用品を揃えに言ってく
レーユはうるさいから置いて行きましょう﹂
﹁ホグワーツに入学出来ると決まったなら早速学用品などを買いにいかないとだわ⋮ミ
6
2話 ﹃ダイアゴン横丁﹄
たくさんの人。足音。喧騒。
やっぱりここは少し苦手だ。
多少煩くてもミレーユを連れてくるべきだったとフェリシアは今更後悔している。
たくさんの﹃目﹄が見える。
たくさんの﹃食物﹄が見える。
嫌な思考を振り払おうと頭を振った。
フェリシアは目的の銀行に向かって歩き出そうとするといきなり誰かにぶつかって
しまった。
た。
フェリシアは慌てて顔をあげてその人と目を合わせるとその人はいきなり跪いてき
﹁ご、ごめんなさ⋮﹂
2話 『ダイアゴン横丁』
7
﹁ああ⋮⋮やっと会えた。フェリシア様。﹂
彼はそう言うとフェリシアの手の甲にキスを落とした。
﹂
フェリシアはさっぱり訳がわからない。
﹁えっ⋮⋮と⋮⋮貴方は
マルフォイさんの言葉に頷く。
﹁おっと、失礼。私はルシウス・マルフォイ。名前くらいは知っているだろう
?
てから今まで⋮会っていなかったですわね﹂
﹂
﹁ええ、存じておりますわ。マルフォイさん。そしてお久しぶりです。両親が亡くなっ
もあった。
ルシウス・マルフォイはヴォルデモートの死喰い人でありながら両親の忠実な部下で
?
8
﹁連絡がつかなかったから心配していました。成長した貴女を見ることができて感激し
ています。そして私のことはルシウス、と。﹂
ルシウスはフェリシアの手を持ったまま壁際に移動した。
﹁は、はい。ルシウス⋮さん。ルシウスさんこそ普段の喋り方で構わないです。﹂
のだろう
私の息子でも紹介しよう。フェリシア様と同級生になるはずだ。﹂
﹁そうか。すまないな。やはり慣れないからな。君もホグワーツの学用品を買いに来た
私と同じプラチナブロンドの髪だ。
すると、ルシウスの後ろにいた青白い顔の少年が前に出てくる。
?
私はにこりと微笑んでからドラコと握手をした。
﹁ドラコ・マルフォイだ。よろしく。﹂
2話 『ダイアゴン横丁』
9
﹁よろしくねドラコ。﹂
するとドラコの顔が少し紅くなる。
なんだか面白い。
ルキンの洋装店〟にてホグワーツの制服を仕立てる。
マルフォイ親子と別れたあと、グリンゴッツ魔法銀行でお金を下ろし、〝マダム・マ
☆
ドラコとホグワーツでまた会う約束をしてから親子から離れた。
﹁では、私もこれで。﹂
ルシウスは時計を見てそう告げた。
﹁おっと、そろそろ時間だな。ドラコ、行くぞ。﹂
10
次に〝フローリシュ・アンド・ブロッツ書店〟で教科書などの教材を買い揃えた。
そして今フェリシアは魔法生物のペットショップで難しい顔をしながら悩んでいた。
白猫と黒猫の前で行ったり来たりしながらうんうん唸っている。
ふと顔を上げると白猫と目が合った。
ミルクのように真っ白でふわふわな毛並みに、左右色違いの翠と蒼の瞳。
そ の 瞳 に す う っ と 吸 い 込 ま れ た 感 覚 に 陥 っ た 私 は 迷 い を 即 座 に 捨 て て そ の 白 猫 を
買ってしまっていた。
それと、ミレーユとの連絡用にフクロウを買って魔法生物ペットショップを後にし
た。
鍋などの実験に使うものなども買い、残りはオリバンダーの店のみ。
新しく買うのではなく両親の杖のどちらかがフェリシアに合うかどうか見てもらう
ためだ。
もし合わなかったら新しく買うけれども。
すると、棚を整理していた随分と年をとった店員がこちらを振り向く。
﹁こんちにはー。杖を確かめてほしいのだけれど﹂
2話 『ダイアゴン横丁』
11
新しく杖を買うわ。﹂
?
棚に収納してあった杖が床に落ちる。
すると、店内に突風が発生した。
二本の杖のうち漆黒の杖を手に持ち、軽く振ってみた。
開ける。
フェリシアは鞄から厳重に守られた箱を取り出し、箱の裏を撫でたあと、小さな鍵で
﹁よかろうとも。ではお父様の杖から振ってみてくれるかの
﹂
﹁おじいさん。お父様かお母様の杖が私に合うかどうか見て欲しいの。合わなかったら
老人店員が握手を求めてきたため、返しながら用件を伝えることにした。
かれれて光栄です﹂
﹁いらっしゃいませ。⋮おや、これはドラクル家のお嬢さんじゃないですか。お目にか
12
﹁ふむ⋮なかなかのものですな。お母様の方はどうです
﹂
余りにも暴れるために棚が破壊され天井からは建材がパラパラと落ちてきている。
今度はたくさんの光の弾が空中に現れ大暴れし始めた。
今度は純白の杖を手に持ち、またしても軽く振ってみた。
?
くると見て回る。
屋敷へ戻る前に何か面白いものがないか探検することに決め、ダイアゴン横丁をくる
☆
もちろん帰る前に店の掃除をきっちりと手伝った。
くれたおじいさんに満面の笑顔を向けて感謝をした。
母親の杖が自分に合ってホッとし、店をめちゃくちゃにしてしまったけれど杖をみて
切にしなされ。﹂
﹁これは⋮僅差ではあるがお母様の杖の方がよいようですじゃ。二つとも珍しい杖。大
2話 『ダイアゴン横丁』
13
そして、とある店のショーウィンドウの前で立ち止まった。
蝙蝠がワンポイントになっている緻密なデザインの黒い羽ペンだ。
思わず手を伸ばした時、誰かと手が触れる。
驚いて横を向くと同じようにこちらを向いている一人の少女と目が合った。
青紫色のさらさらそうな髪に、濃い蒼輝の瞳。
髪は下のほうでおさげにしてあり、頭にはフェリシアと似たようなナイトキャップの
帽子をかぶっていた。
﹂
帽子と同じように
どうすればいいのかわからなくて黙っていると少女が口を開いた。
﹂
﹁数ある商品の中から同じ商品を選ぶだなんて私達似てるのかもね
﹁ふふ、そうね。貴女、名前はなんていうの
?
フェリシアも思わずつられて笑顔になってしまう。
少女はフェリシアに明るい笑顔を向ける。
!
!
14
﹁あたしはレイシア・スカーレット・トラクル
気軽にレイって呼んでよ
あなたは
!
﹂
?
イ。﹂
フェリシアとレイシアは握手を交わした。
﹁あたし達、名字もミドルネームも似てるんだね
レイは難しげに考え込む仕草をする。
不思議な縁だなぁ⋮﹂
﹁私はフェリシア・スカーレット・ドラクル。この出会いを記念にフィリィって呼んでレ
!
その表情がおかしくってまた笑顔になってしまった。
!
!?
そう言うと、レイシアは驚いたようにフェリシアを見た。
こんな⋮出会ったばかりの子に⋮もう会えないかもしれないのに
!?
﹁い、いいの
﹂
﹁本当、これはきっと運命の出会いだったのよ。記念にこの羽ペン買ってあげるわ。﹂
2話 『ダイアゴン横丁』
15
レイったらなに言ってるのよ貴方のその荷物、ホグワーツの新入生でしょう
レイシアのその一言にフェリシアは耐えられなくなって声をあげて笑ってしまった。
﹁ふふっ
私もなのよ。それに貴女とはずっと仲良くできそうな予感がするわ。この羽ペンは
!
﹂
!
﹁フィ⋮フィリィ∼⋮
ありがとおおおおおおお
そう告げるとレイシアは感激したのか目を潤ませた。
今日の出会いとこれからの友情の印、よ﹂
?
煩くて慌ただしくて甘いものが大好きなドジメイド、ミレーユのために何か買ってい
家に帰ろうかとも思ったけれど、家にいるたった一人の使用人。
アと別れた。
ドラコと同じように新学期にて必ず会うことを約束し、名残惜しかったけれどレイシ
プレゼントする。
レイシアの頭をぽんぽんと撫でたあと、蝙蝠の羽ペンを二本購入し、一本レイシアに
!
16
2話 『ダイアゴン横丁』
17
こうと再びさ迷う事にした。
カエルチョコや百味ビーンズなどの甘いものをたっぷり購入。
変な時間に行動させられるのを防ぐためにたくさんの花の装飾があしらわれた金の
懐中時計などを手土産に屋敷へと帰宅した。
3話 ﹃いざホグワーツへ﹄
9月1日 9時40分 ロンドン キングスクロス駅
フェリシアはミレーユを引き連れてマグルの人々で混み合う駅を大きなカートを押
しながら歩く。
くなったらフクロウ便をいつでも送りなさい。ミレーユ、私だって本当は寂しいのよ
ミレーユの事、本当の姉のように思っていたから⋮﹂
?
﹁⋮⋮ミレーユ。貴女を信頼しているんだから私の大事な屋敷を貴女に預けるの。寂し
だなんて⋮⋮﹂
﹁フィリィ様⋮私⋮⋮私⋮⋮さみしいですうううう⋮あんな大きなお屋敷に一人ぼっち
18
本当はこんなこと気恥ずかしくて言えないけれど、生まれた時からお世話になってい
るのだ、これくらいいいだろう。とフェリシアは思った。
ミレーユは感動したのか涙を流しながらぷるぷるしている。
駅
公衆の面前よ
﹂
やがて顔をあげたと思うとフェリシアにいきなり抱きついてきた。
こ、ここ
!
!!
﹁ちょ、ミミミミレーユ
!
そして顔をあげフェリシアに宣言をする。
ミレーユはハンカチで涙をぬぐい、遠慮なく鼻をかんだ。
フェリシアはミレーユにハンカチを押し付けて体から離す。
くて⋮私⋮⋮私っ⋮⋮うぅ⋮﹂
﹁フィリィ様ぁ⋮⋮私⋮フィリィ様にそんな風に思っていただけてるなんて思っていな
!?
屋敷を死守致します。﹂
﹁私、フィリィ様が帰ってくるまでフローラ様とフィジック様がフィリィ様に残したお
3話 『いざホグワーツへ』
19
そう宣言したミレーユはいつもとは違う顔つきだった。
そうこう話している間に9と10と書いてある柱の間まで来てしまっていた。
﹁これ⋮どうしたの
よ
﹂
お守りとでも思ってください
﹂
!
ことに胸がいっぱいになった。
フェリシアはミレーユが自分の為にこんなに可愛らしいネックレスを作ってくれた
!
﹁私がフィリィ様の為に作ったものです。私の想いがたっぷり詰まったネックレスです
?
アンティークのような可愛らしいデザインの小さな鍵と蝶がついているものだ。
り出した。
ミレーユは蜂蜜色のメイド服のポケットの中から同じ蜂蜜色をしたネックレスを取
あ、そうだ、これを⋮フィリィ様に⋮。﹂
﹁それではフィリィ様。私がお見送りできるのはここまでです。どうかお気をつけて。
20
最近いつも眠そうだったのも、指に絆創膏を貼っていたのも全てこの為だったのかと
納得できた。
﹁ありがとうミレーユ。一生大事にするわね。あ⋮⋮⋮そろそろ行かないと⋮ミレーユ
来て﹂
ミレーユの名を呼んで近くにこさせると、ミレーユの頬にキスをした。
まるで家族にするかのように。
ミレーユは一瞬ぼうっとしていたが、すぐに元に戻ると向日葵のような笑顔を私に向
ける。
9と4分の3番線の駅に入ったフェリシアとりあえず手始めにレイシアを探す事に
☆
﹁行ってらっしゃいませフィリィ様♪﹂
3話 『いざホグワーツへ』
21
した。
﹂
フェリシアが辺りをきょよきょろと見回していると突然誰かに手を掴まれる。
﹁きゃっ⋮
﹁何をしているんだ
じゃないか
﹂
ドラクル﹂
いい。僕のコンパートメントへ来いよ。友人はホグワーツに着いてから探せばいいん
﹁わかったフェリシア。だが出発までもう10分を切った。そろそろ列車に乗った方が
ドラコは何かを考えたあと頷いた。
ラクルなんて堅苦しいし。﹂
﹁友人がいないか探していて⋮⋮。ていうか普通にフェリシアって呼んでいいわよ。ド
?
フェリシアが後ろを振り向くとドラコだった。
!
22
?
ドラコの言う通りだった。
もしかしたらレイシアは既に列車に乗っているのかもしれない。
乗るところも決まっていなかったからドラコについていくことに決めた。
☆
10時 列車は出発し、ホグワーツへゆっくりとむかい始めた。
ドラコと二人きりのコンパートメント。
結局何も話していないしなんというかもの凄く気まずい。
フェリシアは教科書などを取り出し、2回目の予習でもしようかと思っているとドラ
コが口を開いた。
か
﹂
﹁ドラクル家は純血の魔法使いの家系でありつつも、純血の吸血鬼であるって本当なの
3話 『いざホグワーツへ』
23
?
﹁本当よ﹂
数分の間。
?
ついにホグワーツまで残り数十分程度でつくかどうかの距離になる。
それからはフェリシアとドラコは他愛のない話をしながら時間を潰した。
﹁ありがとう⋮ドラコ﹂
今まで吸血鬼だと聞いて怖がらない人はいなかったからだ。
ドラコの返事にフェリシアは驚いた。
﹁怖くなんかないさ。僕はマルフォイ家の長男だしな﹂
﹁怖い⋮
﹂
﹁本当だったのか⋮前から存在は知っていたがやはり本人から聞くと違うな⋮﹂
24
﹁なぁフェリシア。そろそろ制服に着替えたらどうだ
らな﹂
﹁そうね。そうするわ﹂
僕も着替えなければならないか
?
﹂
僕がいるのに着替えようとするな
せめて僕がコンパートメントから出てから
私服のブラウスのボタンに手をかけて外し始めるとドラコは真っ赤な顔で抗議した。
﹁待て
にしてくれ
!
そしてついに耐えられなくなって思わず下を向いてしまった。
フェリシアはドラコの抗議に気づき顔が真っ赤になってしまう。
た。
今まで男性が近くにいなかったフェリシアがつい無意識で行ってしまった行動だっ
!
!
﹁ご、ごめんなさい⋮⋮﹂
3話 『いざホグワーツへ』
25
運命のホグワーツ魔法魔術学園に到着したのであった。
そして数十分後⋮
﹁い、いや、うん、まあ、今度から気をつけてくれ⋮﹂
26
4話 ﹃組分け﹄
ホグワーツの駅についた頃にはすっかり夜になっていた。
フェリシアはドラコにエスコートされながらたくさんのホグワーツの生徒で賑わう
駅におりる。
そのあと引率の先生に従い、ぬかるんだ道を歩いた後、ボートに乗りホグワーツへと
たどり着いた。
ここまでの間で気になっていたことをドラコに聞こうと思い、顔をあげる。
﹂
?
﹂
﹁ねえ、ドラコ。なんで私達こんなに注目されているの
?
﹁なるほどね、確かにマルフォイ家は純血の有名な家系だものね。﹂
﹁それは、君が僕の隣にいるからじゃないのか
4話 『組分け』
27
28
生徒の数を数え終わったらしい引率の先生は扉を叩きその先にいた深緑のローブを
着た先生に生徒を預けた。
その先生はマクゴナガル先生と言うらしく、フェリシアは招待状に記してあった副校
長だとすぐに思い当たる。
マクゴナガル先生からは4つの寮についてや、寮の仕組みなどを簡単に教えてもらっ
た。
そしてフェリシア達新入生はいよいよ大広間へと入る事になった。
そこには4つのとんでもなく長いテーブル。
空中に浮かぶ蝋燭。
天井には黒い空に浮かぶ数々の星々。
本物の空に見えるように魔法がかけてあるらしい。
家にあった何かの本で読んだのだ。
家には大きな書庫があるからきっとその中の一つだろうとフェリシアは思った。
ちなみに家にある本全て読破し、記憶している。
そんなことを考えているといつの間にか前に椅子が置かれていて、その上にはボロボ
ロのとんがり帽子が置かれていた。
すると、そのとんがり帽子に口みたいなものが現れ大きな声で歌い始めたのだ。
忍耐強く真実で
君は正しく忠実で
ハッフルパフに入るなら
ほかとは違うグリフィンドール
勇猛果敢な騎士道で
勇気ある者が住まう寮
グリフィンドールに入るなら
君が行くべき寮の名を
かぶれば君に教えよう
私はホグワーツ組分け帽子
私は彼らの上を行く
シルクハットはすらりと高い
山高帽子は真っ黒だ
あるなら私は身を引こう
私を凌ぐ賢い帽子
﹃私はきれいじゃないけれど
4話 『組分け』
29
30
苦労を苦労と思わない
古き賢きレインブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
必ずここで得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
大広間に元の静寂が戻るとマクゴナガル先生は新入生に向けて声をかける。
帽子が歌い終えると、大広間は拍手につつまれた。
だって私は考える帽子﹄
︵私に手なんかないけれど︶
君を私の手にゆだね
かぶってごらん恐れずに
?
﹂
﹁新入生は、名前を呼ばれたものから順に、この椅子に座り帽子をかぶってもらいます。
よろしいですね
﹁ドラクル・スカーレット・ フェリシア﹂
フェリシアは緊張で喉がカラカラしていた。
そしてついにフェリシアの番がやって来そうだ。
そしてマクゴナガル先生はやたらと長い羊皮紙の巻物を読みあげていく。
﹃ハッフルパフ﹄
﹁アボット・ハンナ﹂
?
﹂
その名が呼ばれた瞬間大広間がざわつく。
﹂
?
?
﹁本当に存在していたのか﹂
﹁ドラクルって吸血鬼の⋮⋮﹂
﹁嘘だろ
﹁ドラクルだって
4話 『組分け』
31
﹁どの子だ
﹂
?
﹁純血の⋮⋮﹂
!?
かぶったはいいけれどさっきから帽子はずっと唸ったままだ。
﹃ふうむ⋮⋮⋮難しいな⋮⋮⋮﹄
い、とんがり帽子をかぶった。
フランドール様譲りの綺麗なプラチナブロンドの髪をなびかせ、堂々と椅子へ向か
こんなところで立ちすくんでなんかいられないとフェリシアは決意した。
のだ。
でもフランドール様のように立派な吸血鬼でもあり素晴らしい魔女になると決めた
どうすればいいのかわからない。
でしまう。
フェリシアは吸血鬼の特性上そのひそひそ声までもを聞きとってしまい立ちすくん
﹁フェリシア様がいるだと⋮
﹂
﹁吸血鬼だって⋮こわいわ⋮﹂
32
﹃君 の 選 択 次 第 で 運 命 は 変 わ る。君 を 信 じ て グ リ フ ィ ン ド ー ル に す る か ⋮ ど う す る か
⋮⋮﹄
フェリシアはグリフィンドールという単語を聞き思わず嫌だと思ってしまった。
両親に限らずドラクル家の人々は皆スリザリンだったのだから。
もちろん敬愛するフランドール様もスリザリンだった。
﹄
!
﹃⋮⋮わかった。では⋮そうしよう。スリザリン
︶
スリザリンの方から歓喜の声があがる。
?
それからしばらくすると、ドラコもスリザリンに選ばれ、フェリシアの隣へやってき
にした。
フェリシアは何となく嫌な気分になり下を向いて組分けの儀が終わるのを待つこと
める。
席に着くやいなやスリザリンの人達はそわそわした様子でフェリシアのことを見始
フェリシアは組分けを受ける前よりも軽い足どりでスリザリンの方へと向かった。
︵これは恒例なのだろうか
4話 『組分け』
33
た。
﹁無事に選ばれたみたいでよかったな。約10分もかかったから驚いたよ。﹂
ドラコはフェリシアに向かってひそひそと話し始めた。
﹁ありがとう、そしてドラコもおめでとう。本当に私って10分もかかってたの⋮⋮
ドラコは静かに頷く。
﹁ああ。それにしても、もっと堂々としてろよ。最高位の純血の子なんだからさ﹂
﹁⋮⋮⋮でも⋮皆に怖がられているしいるし、好奇の目線で見られるのがなんか⋮﹂
注意した。
﹂
フェリシアのいつもはしゃんとした姿勢が今は少し丸まっているのをみてドラコは
?
34
﹁まあ⋮確かにあまりにもジロジロ見られると気分も害すよな﹂
ドラコはそこだけ少し大きめの声で言う。
ドラコの声が聞こえたのか周囲の人はフェリシアから目線を外した。
た。
せ、皆で食べる事になりフェリシアはとりあえずトマト料理がないか目を輝かせてい
組分けの儀が終わると、ダンブルドア校長先生が全テーブルの上に料理等を出現さ
⋮⋮⋮とかの言葉が微かに聞こえたが、よく聞こえなかったので無視することにした。
フ ェ リ シ ア は レ イ シ ア の 名 が 呼 ば れ た 時 に 堕 ち た 家 だ と か 例 の 家 系 ⋮ マ グ ル の
そして、7分程かけてグリフィンドールに決まったようだ。
レイシアは緊張しているのか同じ手と足が同時に出ている。
マクゴナガル先生がレイシアを呼ぶ声が聞こえた。
﹁トラクル・スカーレット・レイシア﹂
4話 『組分け』
35
5話 ﹃寮﹄
ディナーを食べた後は各寮へ向かうことになっていた。
そして今は地下にあるスリザリンの寮に向かっている。
ディナー中はちらちら見られてはいるけど誰もフェリシアに話しかけてこなかった。
きっと隣で目を光らせていたドラコのおかげだろう。
﹁ふふ⋮素直になればいいのに﹂
﹁別に僕は何もしていない﹂
するとドラコは目線を外して答えた。
﹁食事中、ありがとうねドラコ﹂
36
﹂
僕は何もしていないんだ
﹁ぼ、僕は前から素直だ﹂
﹁嘘は良くないわよ
﹁い、いい加減にしろよ
﹂
!
ドラコは赤い顔で反論する。 !
?
談話室はとても広く、スリザリンの生徒が余裕で皆入れる程の広さだ。
寮へ入るとそこは緑と銀のスリザリンの色で統一させられた談話室になっていた。
監督生は合言葉を皆に教えてから絵にもそれを伝え寮の中へと入っていった。
い。
どうやら、寮には血みどろ男爵というゴーストに合言葉を言わないと入れないらし
を聞くことにした。
いい反応を見せてくれたドラコに満足したフェリシアは寮の前についた監督生の話
﹁仕方ないわね⋮そういうことにしておいてあげるわ﹂ 5話 『寮』
37
全体的に照明は暗めになっていた。
﹂
監督生は全員が入ったことを確認すると、こう告げた。
﹁新入生入学を記念して、歓迎会を行いたいと思う
すると皆のテンションは急上昇。
れたグラスを2つ持ってやってきた。
?
﹁ありがとう。なんか、こういう空気慣れていなくて⋮生まれてからずっと静かな屋敷
アに渡した。
ドラコはフェリシアに話しかけながら持ってきたかぼちゃジュースを1つフェリシ
﹁フェリシアはあっちに行かないのか
﹂
ドラコは壁際に寄りかかっているフェリシアを見つけると、かぼちゃジュースが注が
こういう空気に慣れていないフェリシアは自然と壁際の方に移動していた。
次々と飲み物や軽食などが並べられ、皆でわいわいし始める。
!
38
でメイドと二人きりだったから⋮。﹂
﹁そうだったのか。なんか、すまない。﹂
ドラコはひどく申し訳なさそうな顔をする。
﹁いいのよ。ドラコは悪くないわ。﹂
フェリシアはドラコに精一杯の笑顔を向ける。
その笑顔を見て安心したのか、ドラコの表情も少し柔らかくなった。
☆
就寝時間まで残り1時間となったところで歓迎会はお開きとなり、寮の部屋割りの説
明を受けていた。
﹁男子はあっちで、女子はそっち側だ。1部屋4人になっている。ルームメイトについ
5話 『寮』
39
て は 配 っ た 紙 を 見 て く れ。そ れ で は 各 自 部 屋 に 戻 っ て く れ。荷 物 も 届 い て い る は ず
だ。﹂
﹂
フェリシアは紙を見つめていて自分の名前がないことに気づいた。
﹁あの⋮私の部屋は⋮⋮
﹁⋮⋮っ
教えていただいてありがとうございました﹂
⋮⋮⋮いえ、いいんです。仕方のないことですから。だから謝らないでくだ
さい。部屋、そこですよね
の部屋だ。
監督生が教えてくれた部屋は皆の寮がある方ではなく談話室のすぐ隣にある鍵付き
?
!
なったみたいで⋮⋮君の部屋はそこだよ。一人部屋だ。本当にすまない⋮﹂
﹁説 明 し 忘 れ て い た よ う だ。⋮⋮ そ の、君 が 吸 血 鬼 だ と い う こ と が 女 子 の 不 安 の 種 に
監督生におずおずと話しかけると監督生は完全に忘れてたという顔をしていた。
?
40
鍵を開けるとそこはとても広い部屋で設備もちゃんと揃った部屋だった。
スリザリン色を貴重とした家具がバランスを考えてきちんと配置されている。
フェリ
天蓋付きのベッドの上には数個のトランクに分けて入れてある荷物や教科書。
大人しく籠に入っているミルク色の仔猫ネフティスがいた。
そういう大事な事はドジメイドのミレーユには任せられない。
スネイプ先生には葬儀の時いろいろと手伝ってもらったのだ。
?
あ⋮スネイプ先生。お久しぶりです。お部屋ありがとうございます。
﹁吾輩とダンブルドア校長の魔法で急遽作ったのだ。気に入ってもらえたかな
シア。﹂
﹁スネイプさん
フェリシアはいつの間にか隣に来ていたスネイプ先生に深く頭をさげた。
とっても気に入りました。﹂
!
﹁ああ、そうだな。両親の葬儀ぶりか⋮⋮。﹂
5話 『寮』
41
全て覚えてしまった教科書を開き、簡単に明日の予習をする。
いつもどおりの味にホッとした気分になる。
いたミルクティーを作って飲んだ。
フェリシアはキッチンに置いてあった茶葉を取り出し、ミレーユによく淹れてあげて
夜の覇者、吸血鬼のペットだからという単純な理由。
ネフティスの名前はエジプトの夜を司る女神からつけた名前だ。
荷物整理をする。
スネイプ先生が立ち去った後は、ネフティスを籠から開放してご飯をあたえ、簡単に
そう言うとスネイプ先生は素早くその場を立ち去っていった。
﹁まあ、気に入ってもらえたならそれでいい。では、吾輩はこれで。﹂
﹁そう⋮ですね⋮﹂
42
﹁ミレーユ⋮⋮どうしてるのかしら⋮⋮﹂
ホグワーツに来た初日にミレーユのことを心配してしまうなんてどうかしてる。
そんな心配を振り払おうと、もう寝てしまおうと決めてクッションの上で丸まってい
たネフティスを抱き上げ一緒にベッドに入る。
吸血鬼としてもまだ幼いフェリシアにとってそれは拷問にも近いものだった。
たくさんの﹃食物﹄がそこにある。
いつでも壊せてしまうモノの﹃目﹄がそこら中にある。
生まれた頃からいつもいたミレーユがいない寂しさ。
皆からの嫌悪や崇拝などのいろいろな感情。
そのフェリシアの頬には一筋の涙が伝っていた。
ネフティスに顔をうずめ、フェリシアは小さく呟いた。
﹁おやすみ⋮﹂
5話 『寮』
43
44
11歳の少女にはとてもとても耐えられるものではなかった。
6話 ﹃少しの授業﹄
少女は完全に忘れていたのだ。
朝がすこぶる弱いということを。
起きろフェリシア
﹂
!
﹁⋮⋮ア⋮⋮い⋮おい、起きろ
﹁ん⋮⋮⋮だれ⋮⋮⋮⋮⋮
﹂
フェリシアの体を誰かが揺すっている。
!
目をこすって確認すると慌てた表情をしたドラコがいた。
?
なんでドラコがここに
!?
﹁な、な
6話 『少しの授業』
45
﹂
!!!?!?!???!?!?
フェリシアは勢い良く起き上がり布団を掴んで自分の方へ引き寄せる。
ドラコは大きな溜め息をついてフェリシアを見る。
?
未だに誰一人として出来なかった。 フェリシアはいろんな意味で畏れられているからスリザリンでドラコ以外の友人は
ラコと走っていった。
ドラコに急かされ手早く準備をし、ネフティスにご飯をあげてから教室へ向かってド
始まってしまう。急げフェリシア﹂
﹁別に謝ることでもないだろう
悪いのは僕の方だ。それよりも早くしないと1限目が
﹁そうだったの⋮⋮ごめんなさい⋮﹂
たことについては許してくれ﹂
こに鍵開けの呪文を唱えて来てみたらフェリシアがぐっすり寝てた。勝手に鍵をあけ
﹁朝、姿を見かけないから心配になったんだ。大広間にもいなかったからな。それでこ
46
ドラコもそのことを気にかけているのかクラッブとゴイルという子分的な存在とは
付き合わなくなっていた。
﹂
眠くなるような魔法史の授業の最中フェリシアはドラコに話しかける。
﹂
﹁あの⋮ドラコ⋮⋮﹂
﹁なんだ
﹁私といるとドラコまで孤立しちゃうわよ
するとドラコは一呼吸おいてから告げた。
?
?
むしろこれが普通だ﹂
ありがとドラコ⋮
!
﹁∼っ
!
?
﹂
﹁孤立しようともフェリシアがいる。それに優秀な家系の者同士つるんでいて何が悪い
6話 『少しの授業』
47
ドラコのその言葉に嬉しくなった私は満面の笑みを浮かべた。
するとドラコの顔はたちまち真っ赤になる。
本当にドラコは面白い。
﹂
さっきから顔がニヤついてる﹂
次はグリフィンドールとの飛行訓練で、フェリシアはレイシアに会えると内心ワクワ
クしていた。
?
探していた子にも会えるから⋮
﹁フェリシア、飛行訓練楽しみなのか
﹁うん
!
ハリー・ポッター達と一緒にいるようだ。
レイシアの姿もちゃんと見つけることが出来た。
すると後から急いでグリフィンドール生がやってくる。
スリザリン生はグリフィンドールよりも先に全員揃って静かに待つ。
﹁そうか、よかったな。僕も飛行訓練は楽しみだ﹂
!
48
ドラコはもちろん一発で成功させている。
﹁が、頑張るもん⋮⋮絶対あがらせるわ
﹂
!
とっとと箒の横に立ちなさい
﹂
!
﹁何をしているんですかグリフィンドールの皆さん
フーチ先生の声が響く。
﹁さあ、箒の上に手をかざし、あがれと言います。あがれ
!
全員一斉にあがれと言うが、一発で手元に寄せたのは数人だけだった。
﹂
それを聞いたグリフィンドール生は慌てて箒の横に立つ。
!
けれどフェリシアは何度あがれと言っても箒がびくともしないのだ。
﹂
!?
なんで⋮⋮
!
﹁お前にも苦手なものとかあったんだな⋮⋮﹂
﹁∼っ
6話 『少しの授業』
49
フェリシアはほっぺをぷくぅと膨らませる。
挑戦すること数分。もうほとんどの生徒の箒があがっていた。
お願いします
あがってください
お願いしま
それでも一向にあがらないフェリシアは、ついに箒に向かってお願いする形になって
﹂
あがってください
!
いた。
あがれ
!
﹁で は 次 に 少 し 浮 い て み ま し ょ う。い い で す か
行ってはいけません。﹂
そのとき問題が起こった。
膝 あ た り ま で で す。そ れ 以 上、上 に
グリフィンドール生の一人の箒が暴走してどんどん上に上がっていってしまったの
?
あがらなかった子は普通に自分で手に持って授業を次にすすめることになった。
!
すなんでもしますから
﹁あがれ
!
それでも箒は少しも動かない。
!!
!
50
だ。
その少年は空中で箒に振り回され、落とされそうになっている。
フェリシアは助けなきゃと思い、迷わず地面を蹴った。
﹂
﹂
もちろん箒にはのっていない。というか投げ捨てた。
﹁え⋮
﹂
﹁箒⋮⋮なし
﹁Why
?
﹁だ、大丈夫⋮なんとか。あ、ありがとうドラクルさん⋮。﹂
君﹂
空を最高速度で飛んで暴れる箒に必死につかまる少年を捕まえた。
まずはあの少年を助けないといけないのだから。 けれどフェリシアは気にしない。
どよめく皆の声が聞こえる。
!?
?
?
﹁大丈夫
6話 『少しの授業』
51
﹁いえいえ。貴方が怪我をしなくてよかったわ﹂
フェリシアはそう言って微笑んだ。
少年をお姫様だっこして地面に降りる。
吸血鬼の加護のおかげでネビルを抱き上げるのなんて楽勝だ。
それと君の名前は
﹂
するとグリフィンドール生やフーチ先生がかけてくるのが見えた。
﹁そういえば君、なんで私の名を
?
﹁ありがとうミス・ドラクル。ネビル・ロングボトムは一応医務室に連れて行きます。授
そこにちょうどフーチ先生がやって来てフェリシアに感謝をした。
﹁ああ、なるほどね⋮次からは気をつけてねネビル﹂
﹁あ、あの、僕ネビル・ロングボトムって言うんだ。君の名前は噂でよく聞くから⋮﹂
?
52
業は中止
各自次の授業に備えて自習でもするように
﹂
!
﹁フィリィ∼
﹂
﹁ちょ、あぶな⋮待って
﹂
レイシアは勢い余ってフェリシアを地面に押し倒してしまった。
レイシアはフェリシアの注意を聞くはずもなくフェリシアに向かって飛びつく。
!!!
レイシアがフェリシアの名を叫びながら走ってくる。
!!!!
フーチ先生はそれだけ言うとネビルを連れて医務室に向かって行った。
!
フェリシアは頭をさすりながら立ち上がる。
﹁だから危ないって言ったのに⋮⋮⋮﹂
6話 『少しの授業』
53
﹂ ﹁ご、ごめーん⋮それにしても
くれてありがとう
ハリー
箒なしで飛べるなんて凄いね
レイ﹂
きらきらと目を輝かせながら話すレイシア。
ハーマイオニー
﹁いつもどおり飛んだだけよ。元気にしてた
友達もいっぱい出来たんだよ
あと
ロン
こ
ネビルを助けて
きてきて
!
!
!
﹁うん
﹂
!
!
!
!
の子がフェリシア・ドラクルだよ
!
!
箒なしで飛べるなんてどうやったの
すごいわね。貴女吸血鬼なんでしょう
噂で聞
?
ジャーよ。よろしくね。﹂
いたわ。今度吸血鬼について詳しく教えて欲しいわ。あ、私はハーマイオニー・グレン
?
﹁初めましてフェリシアさん。話はレイシアからたくさん聞いているわ。それにしても
アに呼ばれてやってきた。
髪の毛がくるくるした女の子とメガネをかけた男の子、そして赤毛の男の子がレイシ
!
!
?
54
ハーマイオニーは言いたいことを全て言ってから握手を求めてきた。
なんだか凄い子だなぁと若干引き気味で握手をする。
﹁よ、よろしくですハーマイオニーさん﹂
次はメガネをかけた男の子⋮ハリー・ポッターだ。
﹁僕ハリー・ポッター。よろしくフェリシア﹂
と、これまた引き気味で挨拶をする。
男性がいきなり呼び捨てで名前を呼ぶだなんて馴れ馴れしすぎる⋮生き残った男の
子っていうのは礼儀がなってないのかしら
最後は赤毛の男の子だ。
﹁貴方の事は知っているわ。よろしくね﹂
6話 『少しの授業』
55
?
﹁ぼ、僕はロン
ロナルド・ウィーズリーさ。よろしく﹂
!
﹁ふあ
﹂
﹁ドラコ
!?
﹁いいから黙っててくれフェリシア﹂
﹂
声の主の方へ顔を向けるとドラコだった。
﹁フェリシア、穢れた血やその仲間とはつるむな。お前は僕といればいいんだ。﹂
!?
寄せられた。
3人と挨拶をすませ、少し歩きながら他愛もない話をしていると誰かに思い切り抱き
﹁よろしくお願いいたしますわロナルドさん﹂
56
﹁え⋮⋮でも、その、これは⋮﹂
公衆の面前でドラコに抱き寄せられているのだ。
男性に慣れていないフェリシアの脳内許容量は既に危機状態に陥っていた。
﹂
﹁ハリー・ポッター。お前も友達を選んだ方がいい。裏切りの赤毛の家に穢れた血だと
﹂
は⋮生き残った男の子の名が廃るね﹂
﹁なんだって
ドラコの話を聞いたロンは拳を握り締める。
最低
!
レイシアはドラコに怒鳴った。
本当の事を言っているだけだ。﹂
?
﹁僕は何か間違ったことを言ってるか
!
?
﹁さっきから聞いていれば貴方は酷い事しか言ってないじゃない
6話 『少しの授業』
57
ドラコはレイシアの言葉を全く気にもせずしゃべり続ける。
そこをハリーが遮った。
﹁フェリシア
!?
﹁え、どうしたんだフェリシア
フェリシア
﹂
?
ドラコがフェリシアに話しかけてもフェリシアは反応しない。
?
まさしく〝きゅ∼〟という言葉がピッタリ合うような感じだ。
フェリシアは真っ赤な顔で目をくるくる回していた。
ドラコはレイシアにつられて抱き寄せていたフェリシアを見る。
﹂
ハリーの言葉はレイシアの叫びによってかき消された。
﹁ああ、言ってる。友達を血で選ぶなんて間違って⋮│││﹂
58
見事に気を失っていた。
ドラコとレイシアは厳しい視線を交差させる。
﹂
﹁今日はここまでだ。僕はフェリシアを運ぶ。またなポッター﹂
!
ハリーが呼びかけるもドラコは振り返らず、ホグワーツの中へと消えていった。
﹁待てよマルフォイ
6話 『少しの授業』
59
7話 ﹃目覚め﹄
⋮⋮私⋮⋮⋮
﹂
フェリシアが目覚めたのはあれから数時間後の事だ。
﹁⋮⋮⋮あ⋮れ
?
﹁そう⋮でしたか⋮⋮﹂
顔を上げるとスネイプ先生がいた。 吾輩に心配をかける行為はやめてくれたまえ﹂
﹁起きたかフェリシア。マルフォイがここまで運んでくれたのだ。感謝したまえ。今後
ここは医務室のベッドの上だった。
強い医薬品の匂いに、真っ白いベッドがたくさん並ぶ。
フェリシアが寝かされていたのは見覚えのない場所。
?
60
﹁大丈夫そうならもう寮にもどるのだな﹂
﹂
そう一言告げるとスネイプ先生はどこかへ行ってしまった。
﹁あら、起きたのね体調はどう
﹁だいぶ良くなってきましたのでもう寮に戻りますわ﹂
る。
そこへスネイプ先生と入れ違いにどこかへ行っていたマダムポンフリーがやって来
?
ガシャン
フェリシアはサイドテーブルに置いてあったネクタイをしめ、ローブを羽織った。
﹁そうね、気をつけておかえりなさい﹂
7話 『目覚め』
61
フェリシアが医務室を出ようとしたその時。
﹂
マダムポンフリーが何かの薬品が入ったビーカーを落とした。
﹁っ
欲しい。血が欲しい⋮⋮ホシイ⋮ホシイノ
頭がぼーっとする。
フェリシアはなんとなくドラコのもとへ駆け寄る。
ているクラッブとゴイルに話をしていた。
急いでスリザリンの寮に帰ってくるとドラコはソファーに座って、お菓子を食べ続け
理性を保つためにもフェリシアはその場を駆け出して寮へ向かった。
恐らくマダムポンフリーが割れたビーカーを拾ったときに破片で指を切ったのだ。
ち、理性が揺らぐ。
久しく飲んでいない血の香りを嗅がされた事により、フェリシアの全細胞は沸き立
鼻腔に広がる血の香り。
!?
62
﹁フェリシア
もう大丈夫なのか
﹂
?
大事な友達の血を吸おうとするなんてどうかしてる。
表情を隠して平然とするために。
そう言ってくるりと回ってみせる。
﹁うん、この通りよ。運んでくれてありがとう﹂
あと少しで魅惑を使おうとしていたところだった。
チャーム
ドラコの言葉にハッとする。
!?
フェリシアのアメジストのような綺麗な紫の瞳が紅く紅く染まっていることを。
その時ドラコは見逃さなかった。
フェリシアは慌てて自室に戻っていった。
﹁ネフティスのお世話しないといけないから私はもう部屋に戻るわね﹂
7話 『目覚め』
63
フェリシアは自室に入るなりその場に座り込んだ。
その夜のフェリシアの部屋には血を啜る音しか響かなかった。
翼は任意でしまうことも出来て本当に便利だと思う。
背中にはフランドールと同じ7色の宝石を持った翼がはえていた。
血を口に含んだ瞬間全細胞が活性化する。
他の人から血を貰う訳にもいかず、手首を口元に持っていく。
倒れた時に耐えていたものが溢れてしまったのだろうか。
フェリシアは倒れる前からかなりの危ない状態だった。
吸血鬼によくある吸血衝動だ。
﹁っ⋮⋮はあ⋮はあ⋮⋮くっ⋮⋮⋮な、んで⋮﹂
64
か面白く、フェリシアは魔法薬学が好きになった。
授業の開幕は酷すぎてスネイプ先生が嫌になるところだったが、授業の中身はなかな
なんでそんなことをするのだろうかとフェリシアは疑問に思っていた。
グリフィンドール生が何か言い訳をしたりするとすぐ減点する。
ハーマイオニーを無視する。
まだ習ってもいない薬の問題を何度もハリーに問いかけ、隣で一生懸命手を挙げてる
地獄の授業になっていた。
スリザリン寮の先生でもあるスネイプ先生の授業はグリフィンドール生にとっては
ですぐに目を逸らした。
フェリシアはレイシア達と目が合って会釈したが、隣のドラコの視線がキツかったの
もちろんグリフィンドールと合同だ。
フェリシアが倒れた翌日最初の授業は魔法薬学の授業だった。
8話 ﹃帝王の血族﹄
8話 『帝王の血族』
65
﹂
だがフェリシアは自分にとっての地獄がこの先に控えていることをまだ知らない。
そう、次の授業はクィレル先生の闇の魔術に対する防衛術だったのだ。
その教室はフェリシアが大嫌いなニンニクの臭いでいっぱいだった。
食べることに害はないニンニクなのだが、臭いだけはどうにも苦手なのだ。
フェリシア的に寒気がするらしい。
﹁⋮⋮せ、先生⋮気分が大変よろしくないので授業を欠席させていただいても⋮⋮
あ、ああ⋮ニンニク⋮⋮ふへ⋮わ、わかりました。ど、どうぞ﹂
クィレル先生はおどおどした様子でフェリシアに言葉を返す。
﹁え
﹁な、なんなの⋮あの先生⋮⋮⋮私に対する嫌がらせかしら⋮⋮﹂
クィレル先生の言葉を最後まで聞かずにフェリシアは教室を出ていった。
?
?
66
特にすることもないのでフェリシアはクィレル先生のニンニクに対して文句を言い
ながら図書室へ向かう。
﹂
適当な本を取って太陽光の当たらない席へ向かったところ、そこには見たことのない
先客がいた。
﹁⋮⋮⋮あんた。ドラクルの娘
それにあなたは何者なの
腰まである毛先がカールした長いシルバーの髪。
一度見たら忘れられないようなエメラルドの瞳。
﹂
そう言うとシンシアは席から立ち上がりフェリシアと向かい合った。
?
その先客は本の上から目だけを出してフェリシアを見ていた。
?
﹁そう⋮だけど⋮⋮何か用かしら
?
﹁ふぅん、そうなんだ。ボクはシンシア・ゴーント﹂
8話 『帝王の血族』
67
素敵な名前じゃない⋮⋮でも、ゴーントってもしかしてあの御方の⋮⋮﹂
その髪は黒色のリボンでツーテールに結われていた。
﹁シンシア
ないよ。ボクの家は分家なんだ﹂
ところで貴女、新学期にスリザリン寮にいたかしら
?
﹁ご、ごめんなさい
シンシアはバツの悪そうな顔をして小さな声で呟いた。
!
?
﹁そうなの
﹂
今日からなんだ。﹂
﹁いや、その⋮気がついたら電車の時間に間に合わなくて⋮いろいろ手続きとかしてて
﹂
﹁ボクも自分の名前は好き。でも名字のせいで名前が嫌いなんだ。〝あいつ〟とは関係
フェリシアの言葉にシンシアの顔は曇った。
?
68
﹁うん。でも、遅刻して良かったかもしれない。ゴーントは目立つから⋮﹂
シンシアの言葉にフェリシアも納得した。
自分が名字で変な目立ち方をしたからだ。
⋮⋮あ、そうだ
﹂
﹁確かにそうね。私もかなり目立ったもの⋮⋮﹂
﹁やっぱり
!
ぎる事を言ったのだ。
﹂
よろしくフェリシア
﹂
!
﹁えっ⋮⋮⋮
?
!
そして、フェリシアの肩をがっしり掴み、最高の笑顔でフェリシアにとって衝撃的す
シンシアは何かを思い出したのか手を叩いた。
?
﹁寮の部屋が一緒なんだよな
8話 『帝王の血族』
69
﹂
フェリシアは驚きすぎて本を床に落とす。
﹁何そんなに驚いてるんだ
私、吸血鬼なのよ あ、貴女のこと、かぷって食べちゃうか
!?
﹂
﹁お、驚くに決まってるわ
もしれないのよ
?
﹁ぷっ⋮あっはは
大丈夫だよ、あんたはそんなことしない。目を見ればわかる。それ
まあ、ボクを恐れるのは死喰い人の子供だけだけで、誤解を解けばなんとかな
?
ホグワーツに来てから友達が全然出来なくて、皆に避けられてきたフェリシアはシン
シンシアの言葉を聞いたフェリシアの目には涙がたまっていた。
るかもしれいけど﹂
おうぜ
に、ボクもゴーントなんだから、恐れられているもの同士友達になって仲良くなっちま
!!!
フェリシアの言葉を聞いたシンシアは吹き出す。
!?
!
70
シアの言葉をただ純粋に嬉しいと感じたのだ。
今まで溜まっていた気持ちやら何やらが全て吹っ飛んでフェリシアはただただ泣い
﹂
!
た。
あり⋮がと⋮
!
なる⋮なりましょうシンシ⋮ア⋮⋮
!
の少し笑うと小さなフェリシアを抱きしめて背中を撫でてあげた。
事情がわからないシンシアは泣き続けるフェリシアを見て首を傾げるが、やがてほん
﹁う⋮ん
8話 『帝王の血族』
71
9話 ﹃一人じゃない部屋﹄
シンシアとフェリシアは図書室にずっといるわけにもいかないので、二人はとりあえ
ず寮の談話室へ向かうことにした。
フェリシアに許可をとるまでは荷物を入れるかどうか迷っていたらしく、シンシアの
荷物はまだ談話室にあるため、授業時間が終わるまで荷物整理をしたりすることになっ
た。
﹂
ちなみに部屋はダンブルドア校長先生やスネイプ先生によって更に拡張されている。
ここの寮の部屋って全部こんな感じなの
?
﹁わぁ⋮すごいねぇ
?
シンシアはフェリシアのペットの真っ白な仔猫を指差しながらフェリシアの方を振
﹁ほうほう。あ、あれはフィリィのペット
﹂
﹁そんなわけないわ。この部屋が特別なだけよ﹂
!
72
り返る。
ここまで来る道中にかなり仲が良くなった二人はお互いの名を気軽に呼び合うよう
になっていた。
よ﹂
ボクのペットも猫なんだーおいでハーデリア﹂
﹁そ う よ。ネ フ テ ィ ス っ て い う の。他 に も フ ク ロ ウ 便 で 使 う 梟 の ク レ セ ン ト も い る わ
﹁ほうほう。かーわいいなぁ⋮あ
この仔猫はダイアゴン横丁でネフティスと買おうか迷っていた時の猫だ。
間違いない。
スラリとしたフォルム。
しっとりとした漆黒の毛並み。
ネフティスと同じ蒼と翠のオッドアイ。
シンシアが名前を呼ぶと1つのカバンから小さな猫がすっと出てきた。
!
﹁ふふ、なんだか偶然な事が多過ぎて怖いわね、うふふ﹂
9話 『一人じゃない部屋』
73
﹁何か偶然な事があったのか
いた時の猫なのよ﹂
!
﹂
小さなテーブルにそれらを並べてシンシアを座らせた。
お皿に並べる。
そして、今日のアフタヌーンティー用に今朝焼いたスコーンやクッキーを取り出し、
フェリシアは手馴れた手つきで得意なミルクティーを淹れる。
﹁うん、頼むよ﹂
﹁あ、そうだシアン。お茶を入れるわ。一息いれましょう﹂
﹁それは凄い偶然だ
﹂
﹁えぇ、あなたのハーデリアはダイアゴン横丁でネフティスとどちらを買おうか迷って
?
74
﹁え、これ、全部フェリシアが
﹂
シンシアは驚いて目を丸くしていた。
わかったよ﹂
﹁ええ、そうよ。紅茶は温かいうちに飲んでね
﹁うんうん
冷めたら美味しくないもの﹂
?
?
﹂
お店に出せるレベルじゃないかな
一体どうしてこんなに料理がうまいんだ⋮﹂
全部フィリィの
?
手作りでしょ
﹁うん
?
!
﹁シアン美味しい
?
これすごいよ
!
!
たくさん食べるのはいいことだが英国淑女としてそこはどうなのだろうか⋮。
いった。
それからシンシアは紅茶をたくさん飲み、スコーンやクッキーもたくさんたいらげて
!
とっても
9話 『一人じゃない部屋』
75
﹁そんなに褒めても何も出ないわよ
んになるね
﹂
﹁ほうほう。なるほどね
⋮まあ、あれよ、うちのメイドがよくドジをやらか
いやぁ、フィリィはお嬢様なのに家庭的だし将来いいお嫁さ
こだけメイドに作ってもらっているのだけれど、他は2人で作っているわ。﹂
すの。心配で見てらんなくて手伝ってみたら凄く楽しくてね。私は朝は苦手だからそ
?
﹂
?
あ、授業が終わったみたいね﹂
愛 し の お 菓 子 ち ゃ ん ⋮⋮。ま あ、ま た 後 で 食 べ れ ば い い か
!
行きましょう
﹂
!
リィ
﹁え ぇ ぇ ぇ
!
行こうフィ
﹁ほら、シアン。授業受けに行くわよ。ここは階段が動いたりして大変なんだから、早く
ホグワーツに授業終了の鐘が鳴り響く。
﹁そ、そんなことないわよ
!
!
!
76
出て行った。
簡単な片付けをしてから教材を持ち、シンシアとフェリシアは仲良く手を繋いで扉を
﹁えぇ、もちろんよ﹂
9話 『一人じゃない部屋』
77
10話 ﹃変化﹄
﹁フェリシア。一体どういうことだ
﹂
全然怖くないしThe☆吸血鬼って感じもしないし襲ってこないしおまけに可愛い
今まで怖がって恐れて近寄らなかったフェリシアと話してみると優しいし頭いいし
それに伴って一緒に行動しているフェリシアの人気もあがっていった。
シンシアの絡みやすさはピカイチですっかりスリザリンの人気者になっていた。
ゴーント、という名字に反応したのは死喰い人の子供だけだった。
シンシア・ゴーントだ。
遅れてきたスリザリン生。
次の授業にやってきたフェリシアに突然ついて現れた少女。
フェリシアの傍らにはフェリシアと正反対の銀の少女。
﹁どうもこうもないわ。意気投合したから一緒にいるのよ﹂
?
78
しってことで大人気だ。
そうなるとフェリシアとドラコの時間は減っていく。
﹂
ただでさえ最近少ないのにシンシアがいるから尚更だ。
そこにドラコは不満を抱いていた。
﹁マルフォイ、フェリシアに用がないならもう行くけど
シンシアはにやにやしながらドラコを見る。
本当憎々しいやつだな、とドラコは思った。
一緒に行動してやろうとドラコは1人決意した。
こんなやつにフェリシアをとられるなんて気が気じゃない。
?
シア
﹂
ああ、うん。3人仲良く行動、しましょう
?
?
?
﹁え
﹂
﹁ああ、勝手にしてくれ。だが、僕も今までどおりフェリシアと行動する。いいなフェリ
10話 『変化』
79
﹁もちろんさ﹂
ドラコはどうだとばかりの笑みを浮かべシンシアを見る。
シンシアは不満を持った顔でドラコを見る。
その二人の間でフェリシアはこの先の心配をしていた。
数日後フェリシアの心配は見事的中してしまった。
シンシアとドラコは授業がある度に何かとバトルをし、火花を散らし合う。
食事のときは必ずフェリシアを間にして二人同時に話しをする。
フェリシアはなんとか聞き取って返事をするが、スリザリン生からも質問などをされ
て手一杯になっていた。
そんな日々が続き、フェリシアの顔には疲労の色が浮かび始めていた。
﹂
二人をまき図書室の隅で考え事をしていると、突然誰かに話しかけられ、考えること
を中断させられる。
フィリィ
!
﹁どうかしたの
?
80
友達でしょ
顔をあげると、そこには心配そうな顔でフェリシアを見つめるレイシア。
﹁レイ⋮⋮うーん⋮その、なんでもないのよ、うん﹂
何かあったなら教えてよ
そしてぽつぽつと出来事を語っていく。
﹂
今のフィリィは疲れた色も見えるけど前より
﹁うーん、そっかー⋮それは大変だねー。でもそれってフィリィを取り巻く環境がよく
?
﹁それ、絶対なんでもなくないよね
!
レイシアの言葉は今のフェリシアの胸にじんわりと広がった。
?
?
この成果はきっと、私には出来ない事だから⋮﹂
なったと思うからいいことだと思うよ
も表情が柔らかくなった
!
確かにそうかもしれない⋮⋮。今までこんなことなかったから戸惑いもある
!!
のかも⋮⋮⋮﹂
﹁
10話 『変化』
81
それとね、とレイシアは悪戯を企むような子供の表情になり、フェリシアにとある事
を内緒話で伝えた。
﹄
!
よく出来た子だ、とフェリシアは思った。
たとえ嘘でも親友になれると言われたら悪い気もしない。
レイシアに相談して結構気持ちも軽くなったような気がする。
フェリシアはふわりと笑って﹁ありがとう﹂とレイシアに伝えた。
きっといい親友になれるよ⋮
﹃こ れ は 〝 予 知 夢 〟 な ん だ け ど、フ ィ リ ィ と シ ン シ ア さ ん と マ ル フ ォ イ く ん の 三 人 は
82
フェリシアの相談が終わって図書室を出るレイシア。
彼女の額には玉のような汗が浮かんでいた。
めていた。
汗をハンカチで拭き取ったレイシアはグリフィンドールの談話室に向かって歩き始
﹁無理に使うのはよくないかな⋮⋮⋮⋮﹂
10話 『変化』
83
11話 ﹃Halloween﹄
フェリシアとドラコとシンシアはあれからすっかりいつものメンバーに定着してい
た。
それでもドラコとシンシアはあまり馬が合わないのか、たまに火花を散らしあってい
る。
まあそんなことよりハロウィンである。
ハロウィン
﹂
うふふふふ﹂
今日のフェリシアはどこかウキウキした様子でテンションが高めになっていた。
﹁うふふ、ハロウィンよ
﹁フィリィちょっと気持ち悪い。大丈夫
!
ハロウィンがよほど楽しいのか廊下を踊りながら歩いているくらいだ。
シンシアは苦笑しながらフェリシアを見る。
?
!
84
なんの問題もないわ
﹂
おかげで周囲から変な目で見られている。
﹁大丈夫よ
!
を赤くした。
フェリシアは一旦辺りを見回すとだいぶ注目されていることに気がついて一気に顔
﹁いや、問題大ありだよ周りを見てみろフェリシア﹂
!
!
﹁あ
ごめんちょっと忘れ物したみたい。寮に戻ってから広間に行くから二人は先行っ
今は夕食で行われるハロウィンパーティーのために大広間へ向かっているところだ。
そしてそのまま硬直してしまった。
﹁うぅ⋮⋮ぅ⋮あぅ⋮⋮⋮⋮﹂
11話 『Halloween』
85
てて
た。
﹂
﹁このスープすっごく美味しいし、こっちのサラダも⋮ああ、ハロウィンって最高ね
幸せそうな表情をしながらフェリシアは一つ一つの料理を味わう。
﹂
大広間へ入ったフェリシアとドラコは席につきハロウィンの料理に舌鼓をうってい
たい。
フェリシアはそのときドラコがとても嬉しそうな表情をしたのを見間違いだと信じ
シンシアは早口で用件を伝えると寮へと走っていってしまった。
!!
ドラコはフェリシアにかぼちゃの味が濃厚なタルトをすすめた。
﹁フェリシア、このタルトもなかなかいける。食べてみろよ﹂
非常に認めたくないことだがドラコもそこは認めている。
フェリシアはシンシアが来て皆と絡み始めてから表情や言葉がかなり豊かになった。
!
86
﹁本当
頂戴﹂
そしてフェリシアはドラコに向けて小さい口を開ける。
吸血鬼の象徴であるキバもきちんと見えている。
そこがまた可愛らし⋮ってそうじゃなくて、口をあけた
﹂
をあんぐりとあけてしまった。
﹁どうしたの
今やる
﹂
!
ドラコは衝撃的な一言に口
タルトを口に含んだフェリシアは花のような笑顔を浮かべた。
に運んだ。
やけになったドラコは覚悟を決めてタルトを素早く小さく切り分けフェリシアの口
!
フェリシアはドラコに向けて不思議そうな顔をする。
?
!?
?
﹁な、なんでもない
11話 『Halloween』
87
﹁うふふ⋮おいしーい、ありがとードラコ﹂
﹁あ、ああ⋮もっと欲しかったら言ってくれ﹂
ドラコは照れを隠すようにそっぽを向いて答える。
ち、地下室にィッ⋮
フェリシアはドラコの照れを目敏く気づき、弄ろうと思ってドラコの近くによった瞬
間、大広間の扉が勢い良く開かれた。
お、お知らせしなけれb⋮⋮﹂
﹁トトト、トロールがぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁ
?
﹁⋮トロール⋮⋮地下⋮
﹂
それを合図にしたかのように生徒達は大絶叫した。
言いたかった言葉は最後まで紡がれる事はなく、ばたりと床に倒れる。
扉を開いた人物は闇の魔術に対する防衛術の授業を担当するクィレル先生だった。
!
88
ドラコが噛み締めるように呟く。
フェリシアはその単語を意識した途端大変な事に気づいてしまった。
ていった。
ドラコとフェリシアは顔を見合わせ頷き合うと地下室に向かって一目散に駆け出し
シンシアは地下室に忘れ物を取りに行ったっきりまだ戻って来ていないのだ。
﹁シアンが危ないわね⋮﹂
11話 『Halloween』
89
12話 ﹃トロール、そして覚醒﹄
一刻も早く地下室に向かうため、生徒を避けて人の少ない通りをフェリシアとドラコ
は駆け抜ける。
そして一階のトイレの辺りでその戦闘音は聞こえた。
今加勢したところで、味方の呪文が当たる可能性があると判断したフェリシアは〝目
成績優秀な2人だが、トロールに押されているようだ。
ル2頭と必死に戦っていた。
何か重そうな荷物を抱え込むシンシアと完全に取り乱したハーマイオニーがトロー
廊下の角からトイレの前の辺りを覗きこむ。
素直に従ったドラコを振り向いて確認。
フェリシアは腕を横に伸ばしてドラコの行こうとする進路を封じる。
﹁ドラコ、ストップよ﹂
90
〟を見た。
あのままだと殺されちゃうかもしれないだろ
﹂
僕達だけ逃げるなんてこと今更出来
人間状態では少し厳しい〝目〟だと判断したフェリシアは近くの空き教室にドラコ
を引きずり込む。
﹂
今は助けるのが先決じゃないのか
?
そしてフェリシアは重々しく口を開いた。
ドラコとシンシアの間に一瞬の間が空く。
?
フェリシアは戦況などを手短にわかりやすく簡単に説明する。
﹁ええ、そうね。でも、よく聞いてドラコ。﹂
るわけないだろ
﹁何するんだ
!?
﹁⋮⋮ち⋮⋮⋮⋮ば⋮⋮⋮⋮るわ⋮﹂
?
!
﹁じゃあどうすればいいんだ
12話 『トロール、そして覚醒』
91
﹁何だって
?
﹂
﹁シンシアは気に食わないときはあるけどフェリシアの大事な友達だ。それに⋮ようや
﹁え
﹂
フェリシアは自分の耳を疑った。
﹁⋮⋮いいよ﹂
⋮⋮許されな⋮﹂
﹁ドラコを吸血鬼にはさせない。吸血鬼になるには手順が必要なの。でも⋮そんなのは
ドラコはフェリシアの一言に息を呑んだ。
﹁ドラコの⋮血を⋮⋮私にくれれば状況を打開できるわ﹂
?
92
く最近いい奴だと⋮気づいたんだ。⋮魔法でどうこうするのも出来ないのならフェリ
シアを頼るしかない。僕はフェリシアを信じてる。頼んだ﹂
ドラコはフェリシアにそう告げるとローブを外し、ネクタイやシャツを緩めた。
﹁⋮⋮ありがと⋮それと、ごめんなさいドラコ⋮﹂
フェリシアはドラコの首に自身の牙をあて、舌で一回舐めたあとに牙を首に埋めた。
⋮ぅ⋮⋮⋮なん⋮だ⋮⋮こ⋮⋮れっ⋮﹂
!?
まっていた。
充 分 す ぎ る 程 の 血 を 飲 ん だ フ ェ リ シ ア の 瞳 は 紅 く 紅 く ど こ ま で も 紅 い 深 紅 色 に 染
するとドラコは意識をなくし、全身の力が全て抜ける。
の前に持っていきひと振りする。
11歳の少年には刺激的すぎたかもしれないとフェリシアは思い、手のひらをドラコ
ドラコは焼けるような暑さとありえない程の快感を感じていた。
﹁っ⋮⋮
12話 『トロール、そして覚醒』
93
フェリシアは自分のローブを脱ぎ、横たわらせたドラコの上にふわりとかける。
七色の翼はoffの状態。
頭下げてっ⋮
﹂
そして、急いでトイレ前へと向かっていった。
☆
ハーマイオニー
!!
﹁シアン
!
爆破させた主⋮フェリシアは片手を何かを握り締めているような形にしていた。
二人は爆破させた主の方を見つめる。
からだ。
上級生になれば無言呪文というものがあるが、1年生では難しすぎてできないはずだ
呪文が聞こえなかったのに爆発するという現象に二人は困惑する。
その後すぐに二匹のトロールの棍棒が爆ぜた。
シアンとハーマイオニーはその声が誰のものか一瞬で理解し同時に頭を下げた。
!
94
﹁フィリィ
今の何
﹂
!?
﹂
!!!
﹁シアン
よけて
一体のトロールがシンシアに向かって拳を振り上げていたのだ。
だが、それが仇となった。
シンシアは思わず立ち上がってしまう。
!?
マイオニーがそれを防いだ。
!!!
だが、もう一体のトロールがハーマイオニーを狙っていた。
する。
ハーマイオニーの杖から青い閃光が迸り、見事シンシアを狙っていたトロールに命中
﹂
シンシアは突然の事に立ち止まってしまい、次に来る衝撃に耐えようとした、が、ハー
!
﹁〝ペトリフィカス・トルタス│石になれ〟
12話 『トロール、そして覚醒』
95
フェリシアは先回りし腕から手の周りに紅い魔法陣を何重にも出現させ、ドラクル家
の女性のみが扱える神剣〝レーヴァテイン〟を取り出す。
﹂
火に驚いたトロールは汚い声をあげながら後ずさる。
﹁友人を狙った罪は重いのよ
さようならしてしまったトロールと呆然とつったっているハーマイオニーとシンシア
フェリシアがレーヴァテインをしまうと辺りは肩からぶった斬られて上下が別れて
全て。
もちろん呆然としているシンシアとハーマイオニーについたトロールの血液なども
辺りの惨状をみたフェリシアはスコージファイを使い、周辺を清める。
散らせる。
フェリシアが手を握り締めた瞬間にトロールの体は爆ぜ、肉片や血液をあたりに飛び
出し、手を握り締めた。
迫っていたが、フェリシアはチラリとトロールを見やると、トロールに向けて手を突き
そのとき、ハーマイオニーの呪文から抜け出したもう一体のトロールがフェリシアに
フェリシアは不敵に笑いつつ、トロールを肩から思い切りぶった斬る。
?
96
12話 『トロール、そして覚醒』
97
のみになった。
ハーマイオニーがフェリシアに何か言おうとするのをフェリシアは目で制しそのま
まその場を立ち去ってしまった。
フェリシアが颯爽と立ち去った後にレイシア、ハリー、ロンがトロールを一匹連れて
ハーマイオニーを救出に来たのだがそれはまた今度。
その3人が現れた頃にはシンシアもどこかへ行ってしまっていた。
☆
現場を立ち去ったフェリシアは一目散にドラコのもとへと向かう。
フェリシアが戻ってきた時にちょうど目を覚ましたドラコにフェリシアは戦いの内
容と精一杯の感謝を話した。
﹁ドラコの血、美味しかったわ。本当にありがとう⋮。貴方のおかげでシンシア達も救
うことが出来たわ﹂
そのときドラコが少し紅くなりつつも微笑んだのをフェリシアはしっかり見た。
早く行こう。﹂
﹁そうか⋮それならよかった。あ、寮に早く戻らないと抜け出した事がバレてしまうな。
98
13話 ﹃明かされる秘密﹄
トロールとの戦闘後、フェリシアとドラコはハロウィンパーティーの続きが行われて
いるスリザリンの談話室になに食わぬ顔で混ざった。
それから少しして戻ってきたシンシアに何を持っていたのか聞くと、あの重そうな荷
無言呪文はまだ使えないは
物はスネイプ先生からの魔法薬学の宿題らしく、ハロウィンパーティーで大広間に来る
ときに提出しろと言われていたものらしい。
シンシアは魔法薬学だけは苦手なのだ。
フィリィのあの力⋮どういうことだ
?
ほとんどの確率で魔法薬を爆発させている。
﹂
無言呪文を使ったのかフェリシアは﹂
!
﹁なんだって
?
?
ずじゃないの
﹁そんなことよりだ
13話 『明かされる秘密』
99
フェリシアはかぼちゃジュースを一口飲んで、周りに人がいないことを確認すると2
人に話をし始めた。
﹁おkおk。無言呪文に特化したものなんだね
シンシアが自慢気に言うがもちろん違う。
?
﹂
あるチカラの部分を壊されたモノは粉々になる⋮というわけよ。人間状態だとはっき
て、私はそれを手の上に移動させることが出来るの。それを握り締めるとモノの要でも
違ってなんでも壊すことができるわ。モノには目⋮そう、チカラの集まる部分があっ
﹁そういうこと、コンフリンゴの完全上位版みたいなものね。でも、コンフリンゴとは
﹁ふむ⋮コンフリンゴみたいなものか
﹂
﹁違うわシアン。あれは、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力よ﹂
?
﹁あの力は⋮私の家系の最初の吸血鬼、フランドール・スカーレット様の能力なのよ﹂
100
り見えなくて小さなモノしか壊すことが出来ないの﹂
﹁なるほど、だから僕の血を吸った訳だな﹂
﹁そういうことよドラコ﹂
じゃあマルフォイ吸血鬼になったのか
﹂
話を聞いていたシンシアは目を丸くしてドラコとフェリシアの顔を交互に見ていた。
﹂
?
どんな手順なの
﹁なってないわよ。吸血鬼になるにはちゃんとした手順が必要なの﹂
﹁そうなのか
?
?
おまけに口もぱくぱくしていてまるで水揚げされたばかりの魚みたいだ。
マルフォイの血を吸ったの
?
?
シンシアは訝しげな目線でドラコを見つめる。
﹁え、え
13話 『明かされる秘密』
101
﹁吸血鬼ってそういうふうに仲間を増やしていくわけか、なるほどな⋮﹂
と、そして、その後契約のキスをすることよ。﹂
﹁でも、一つだけ下僕にならずに済む方法があるの。それは、私の血を一定以上飲むこ
ごくり、と二人が唾を飲む音が聞こえる。
いわ。﹂
出来ないの。禁じられた呪文の一つでもある服従の呪文よりも強力で一生抜け出せな
の。そうすると相手は吸血鬼になり、主⋮私に忠実な下僕となる。決して逆らうことは
﹁最初は私が相手の血を吸うの。そのあとに私の血液を相手に一滴でもいいから与える
二人とも吸血鬼化のことがやっぱり気になるのだろう。
ドラコとシンシアは真面目な顔でフェリシアの話を聞き逃すまいとしている。
﹁そうね⋮二人なら言っても大丈夫かしら⋮﹂
102
﹁じゃ、じゃあフィリィ
あの焔の剣みたいなのは
﹂
?
ないの。﹂
そういうことだったのか。とにかく、トロールの時はありがと
﹂
から召喚して使うのよ。あ、ちなみに能力も剣もドラクル家の女性しか使うことが出来
﹁あれもフランドール様のものよ。フランドール様が愛用なさっていた神剣。神の世界
シンシアはフェリシアの吸血鬼の力に興味津々なのかついには目を輝かせている。
!
﹁フェリシアさん。シンシアさん。マルフォイさん。いつまでと話をしているのですか
そっぽを向いていた。
フ ェ リ シ ア は シ ン シ ア に 感 謝 さ れ る た の が よ ほ ど 嬉 し か っ た の か 少 し 頬 を 染 め て
!
﹁なるなる
!
﹁別にいいのよ。と、友達の為なんだから﹂
13話 『明かされる秘密』
103
104
こっちに来て皆とハロウィンを楽しみませんか
﹂
?
い、スリザリンの仲間達と楽しいハロウィンナイトを過ごした。
フェリシアとシンシアとドラコは顔を見合わせて微笑を浮かべると、皆のもとへ向か
ダフネの後ろにはたくさんの今年のスリザリン生。
声をかけてきたのはダフネ・グリーングラスだ。
?
14話 ﹃手紙﹄
ハロウィンの事件から数日後⋮
フェリシアの元に一通の手紙が届いた。
それはミレーユからの手紙だった。
フェリシアがホグワーツに通い始めてから毎日毎日ミレーユからの手紙は来るが今
回は少し違った。
ドラクル家の紋章が入った正式な紅い手紙。
ながらフェリシアの足元へやって来て、すりすりと擦り寄ってくる。
フェリシアが柔らかなベッドに腰掛けるとネフティスが短い手足をぽてぽて動かし
今がちょうど読むチャンスだ。
シンシアが談話室にいる今、フェリシアは1人。
この手紙が来るということは余程重大な案件ということだ。
︵吠えメールとよく間違えられるがもちろん違う︶
14話 『手紙』
105
ネフティスを抱っこし、ベッドの上に置くと、ネフティスは自分の定位置であるフェ
リシアの太ももの上に乗り寝転んだ。
その様子をひととおり観察したあとに、フェリシアは紅い手紙の封をゆっくりと開け
た。
なので、マルフォイ家の方に
ありません。
一人でとどまることなんて私はさせたく
クリスマス休暇や夏休み、ホグワーツに
絶対に。何があってもです。
お戻りになられてはいけません。
貴女は今ドラクル家の邸宅に
ということなのです。
ですが、それほどまでに重大な案件
ごめんなさい。
このようなお手紙を送り付けて本当に
﹃親愛なるフェリシア様へ
106
14話 『手紙』
107
フェリシア様を預かってもらうことに
しました。
マルフォイ家での滞在についての詳しい
お話はマルフォイ家の方...ドラコ様に
お聞きになってください。
何故ドラクル家の邸宅に戻ってきては
いけないのか、その理由は今はまだ
言うことは出来ません。
賢いフェリシア様なら私の言葉を
聞き入れて下さる筈です。
ごめんなさいフェリシア様。
本当に⋮許してください。
マルフォイ家の方にどうか宜しく
お願いいたしますとお伝えください。
フェリシア様の荷物はマルフォイ家に
運んでおいたので大丈夫です。
﹂
出来の悪いメイド ミレーユ﹄
﹁なにこれ⋮⋮どういうことなの⋮⋮⋮⋮
?
その後ベッドにうずくまり、考え事をしていたが、シンシアが戻ってくる頃にはすっ
フェリシアは、仕方なくマルフォイ家に行くことを決めた。
だ。
ミレーユが拒否しているのなら絶対に館を見つけることも、入ることも不可能なの
フェリシアがいない今、館の主はミレーユだ。
な探知不可結界〟それと館の主である者からの許可から成り立っている。
ドラクル家の結界は〝非常に強い時の結界〟と〝非常に珍しい魔法媒介による強力
事をすぐに思い出した。
フェリシアは、クリスマス休暇のときに館に戻ろうと思ったが、それについて大事な
﹁何か⋮起きているの⋮⋮
ミレーユ⋮⋮貴女がこんな手紙を送ってくるなんて⋮⋮﹂
フェリシアの胸の中はたくさんの疑問と不安でいっぱいだった。
?
108
109
14話 『手紙』
かり夢の中だった。
15話 ﹃マルフォイ家に帰るよ﹄
﹂
フェリシア、ドラコ、シンシアの3人はクリスマス休暇で家に帰るため列車内のコン
パートメントにいた。
﹁クリスマスかぁ⋮二人はクリスマス周辺どんな予定があるの
﹁あんたの予定は正直どうでもいい﹂
適当に聞き流していたシンシアはあまりにもドラコが喋り続けてイライラしたのか、
ドラコはその他にもたくさんの予定を話し続けた。
仕立てに行ったりするかな﹂
﹁僕は家で開かれるクリスマスパーティーに出るね。あとは、演劇を見に行ったり服を
?
110
と、途中でドラコの話をきり、ジト目でドラコを見る。
マルフォイ﹂
僕の予定はフェリシアの予定でもあるんだぞ
今なんて言った
﹂
?
﹁なんだって
﹁⋮⋮⋮どういうことだ
?
えた。
ドラコは得意気な顔になり、シンシアによく聞かせるようにゆっくりと大きな声で答
?
?
﹁なっ⋮⋮⋮
!
るシンシア。
!
﹁く、ずるいぞドラコ・マルフォイ
﹂
どうだとばかりの表情をするドラコに、まるでこの世が終わったかのような表情をす
﹂
﹁フェリシアはこれからしばらくの休暇中僕の家に滞在する予定なんだよ﹂
15話 『マルフォイ家に帰るよ』
111
いうんだ
シンシア・ゴーント﹂
ドラコは黒いシャツとそれにあったカーディガン、そしてパンツに黒いコート。全体
主に黒系で纏められていてスタイリッシュな感じだ。
シンシアはフェリシアをま逆にしたようなコーディネートだった。
フェリシアの綺麗な金髪が引き立つようなコーディネートだ。
ト。
フェリシアは紺色のラインがワンポイントになっている白いワンピースに白いコー
キングス・クロス駅に近くなってきたところで3人は私服に着替えた。
その数現在48
たすら食べ続けていた。
火花を散らしあう二人はよそに、フェリシアは車内販売で購入したカエルチョコをひ
!
?
﹁うぬぬぬぬぬぬ⋮﹂﹁ふはははははははは
﹂
﹁これはフェリシアの家のメイドから直々に依頼されたものなんだ。どこがずるいって
112
的にシンシアと似ている。
のに⋮﹂
そんなに髪が長くてふわふわで綺麗な銀髪な
?
﹂
女の子みたいなのなんて⋮恥ずかしいし⋮⋮本当は着てみ
何か言った
これで
﹁シンシアは女の子っぽい格好しないの
﹁ボクはいいんだ
たいけど⋮﹂
?
!
途中で話を遮られたシンシアはドラコにつっかかる。
二人も外に出る準備をした方がいい﹂おいこらマルフォイこのやろう
﹂
﹁な、なな、なんでもない⋮そう、なんでもないんだ⋮⋮べ、別に着たi﹁もうつくぞ、
トを出る準備をしている音でうまく聞き取ることができなかった。
フェリシアはシンシアが最後に本音をポツリと言ったのをドラコがコンパートメン
?
!
﹁もったいない⋮⋮⋮ん
15話 『マルフォイ家に帰るよ』
113
!
﹂
なんだとゴーント貴様ァ﹂
今日数回目の二人の喧嘩に呆れたフェリシアは60個目のカエルチョコを食し始め
ていた。
﹁このやろ⋮
僕はそんなこと知らないぞ﹂
﹁さっきから人の話を遮るのはわざとか
﹁なんのことだ
﹁ボクがフェリシアとはなs...﹂
?
!
﹁だああああああああああああああああああああ
﹁⋮⋮⋮行こうかフェリシア﹂
﹂
またもシンシアの話の途中に今度は列車の音で遮られる。
!?
!?
114
﹁う、うん、また後日ねシアン﹂
フェリシアはシンシアに手を振ってから列車を降りたのだが、発狂したシンシアがき
ちんと見ていたかはわからない。
☆
9と4分の3番線に降りるやいなやドラコは素早く両親を見つけ走って行く。
﹁お久しぶりですわ。ルシウスさん、ナルシッサさん。理由は良くわからないのですけ
わせる。
フェリシアは乱れた呼吸を整えるように一呼吸おいてからマルフォイ夫妻と目を合
の元へ駆け寄った。
小さなトランクとネフティスの入った籠に急いで浮遊呪文をかけてマルフォイ一家
﹁え、あっ、ちょ、待って⋮﹂
15話 『マルフォイ家に帰るよ』
115
れど休暇中宜しくお願いいたしますわ﹂
コートの裾をちょこんと持ってぺこりと挨拶をする。
﹁⋮⋮⋮お願いします﹂
﹁だがそれは⋮⋮⋮﹂
⋮⋮それに、会話も普通で⋮⋮⋮﹂
﹁あ、あの、ドラコのいる前で様をつけられるのは⋮普通に呼んでもらって結構ですから
理由はきっとフェリシアの両親の事だ。
だ。
ナルシッサはまるで愛しの娘と会ったような目をしてから、その後すぐ少し涙ぐん
たけれど、今もそれは変わりないようですわね⋮⋮﹂
﹁お久しぶりですわフェリシア様⋮こんなに大きくなられて⋮⋮昔からしっかりしてい
116
﹁ではそうするとしよう﹂
フェリシアが2人に〝お願い〟をしたら、すぐに聞いてくれた。
〝お願い〟の力って素晴らしい。
﹁それではフェリシア、我が家へと案内しよう﹂
☆
マルフォイ家はフェリシアの家と大体同じくらいの広さを持っていた。
﹂
?
!
フェリシアが来たことでテンションがあがっているのか、ドラコはいつもより元気め
﹁任せてください母上、こっちだフェリシア
﹂
﹁それじゃあドラコ、フェリシアちゃんをお部屋に案内してあげてくださる
15話 『マルフォイ家に帰るよ』
117
だ。
ドラコはフェリシアの手首を持って屋敷内を駆け出す。 案内されたのは2階の北西の角部屋だった。
ドラコが扉を開けてフェリシアを中に入れる。
部屋の光景を見た瞬間フェリシアは既視感を覚えた。
何もかも同じなのだ。
2階の北西の角部屋も、紅で統一した家具のひとつひとつも、部屋の広さも。
﹂
フェリシアの所のメイドがフェリシア様が安心して過ごせるように、
﹁これ⋮⋮私の部屋とまるっきり同じ⋮⋮⋮
﹁気づいたかい
と気遣ってのこの部屋らしい﹂
?
窓辺からさす夕暮れの色と光を浴びてキラキラと輝く紅を基調とした家具。
その優しさに思わず涙ぐむ。
これは帰れないフェリシアへのミレーユなりの精一杯の配慮なのだ。
どうりで、と、フェリシアは納得出来た。
?
118
15話 『マルフォイ家に帰るよ』
119
その中に佇み切なげな微笑みを浮かべる白くて小さなヴァンパイア。
これは間違いなく絵画におさめられるような光景だった。
ドラコはこの光景を一生忘れないだろう。
16話 ﹃present﹄
フェリシアがマルフォイ家に滞在し始めてから数日。
はい、プレゼントよ﹂
あっという間にクリスマス当日になった。
﹁メリークリスマス。フェリシア﹂
﹁あ、ドラコおはよう。メリークリスマス
?
﹁開けてもいいか
﹁もちろんよ﹂
﹂
フェリシアはドラコに長方形の箱を手渡す。
!
120
フェリシアがドラコにプレゼントしたものは魔法界で一番の時計メーカーが作って
いる高級腕時計だった。
ふふ﹂
フェリシア曰く、ドラコは授業に遅れ気味だから、だそうだ。
﹁ありがとう⋮⋮一生大事にするよ﹂
﹁大事にしすぎてしまっちゃう、なんてことはやめてよね
﹁う⋮わかった。そうだ、僕からもあるんだ。そこの箱を開けてごらん﹂
?
ドラコが示した箱はそこらへんに置いてある恐らくドラコ宛てのたくさんのプレゼ
ントのさらに奥に置いてある一番大きい箱だ。
﹂
?
﹁早く開けてみてきっと喜ぶと思う﹂
﹁えっ⋮ちょっとサイズが⋮⋮⋮えっ⋮
16話 『present』
121
フェリシアは何が入っているのか全く予想がつかないためゆっくりと包装を解いて
いく。
そうっと開けるとそこには緋色の美しいドレスが入っていた。
ドレスだけじゃなく、靴やアクセサリーなども全て揃っていた。
﹂
ありがとうドラコ
﹂
﹁ああ、フェリシアにきっと似合うと思って購入したんだ。どうだ
﹁嬉しい⋮すっごく嬉しいわ⋮⋮
!
その瞬間に顔を赤く染めるドラコ。
こんなにすぐ赤くなるのは本当に一体どういう原理なのだろうか。
?
?
フェリシアは感激のあまりドラコに思い切り抱きつく。
!
﹂
素敵だけれどなによりもこの私好みのデザイン⋮素晴らしいわ⋮⋮⋮これ、ドラコが⋮
﹁綺麗⋮⋮⋮とっても綺麗な緋色ね⋮⋮⋮⋮見たところサイズもぴったりだし⋮⋮色も
122
﹁ドラコったらフェリシアちゃんに合うものを一日中探し回ってやっとみつけたものな
のよ。うふふ、気に入ってもらえてよかったわねドラコ﹂
それはいっちゃだめだって言っただろ
﹂
ナルシッサが上機嫌で微笑みながら朝の紅茶を運んでくる。
﹁母上
ふ ふ。あ あ、そ う そ う 手 前 の 荷 物 の 奥 に あ る プ レ ゼ ン ト は 全 て
!?
その多さはほぼドラコと同じくらいだった。
フェリシアはまさか、と思ってプレゼントを確認する。
フェリシアちゃん宛てよ﹂
﹁そ う だ っ た か し ら
?
!?
いからね。マルフォイ家に滞在しているとわかれば今まで送れなかった者たちはフェ
﹁皆君を探してたんだよ。ドラクル邸は特別な魔法がかかっていて場所がよくわからな
﹁え⋮何この量⋮﹂
16話 『present』
123
リシアに送ってくる、というわけだ。それほどまでに君は我々にとって尊い姫のような
存在なのだよ﹂ 声をかけてきたのはルシウスだった。
その大事なフェリシアを自分の家に置いているのがいい気分なのかかなり上機嫌だ。
﹁フェリシア
!
﹁これは丁重に供養した方がいいな⋮⋮。母上手配をしておいて﹂
﹁ふふ、うふふっ⋮ブードゥー人形って⋮ふふふ、シアンったら⋮﹂
そして、ドラコから渡されたものは呪いのブードゥー人形だった。
フェリシアはドラコのもとへ駆け寄る。
これ見てみろよ。ゴーントから僕宛てのプレゼント﹂
﹁そうだったんですか⋮⋮知らなかったです﹂
124
その後はたくさんのプレゼントを開けて中身を見て二人で笑いあったりと楽しい時
間を過ごした。
フェリシアに届いたシンシアのプレゼントは紅いもふもふなマフラーとフェリシア
がドラコにプレゼントしたメーカーの目覚まし時計だった。
朝が弱いフェリシアを思ってのことだろう。
レイシアからのプレゼントはペアリングらしい。
レイシアはダイアゴン横丁で数ある羽ペンの中から同じ羽ペンを選ぶくらいセンス
が似通っているためフェリシア好みの素敵なデザインだった。
しで思わず笑ってしまった。
ただ、一緒に届いたクリスマスカードは単語のspellは違うし涎の跡がついてる
緋色の美しい髪留めで、あのドジメイドが作ったとは思えない出来だった。
ミレーユからはやっぱり自作アクセサリー。
︵レイシアのプレゼントだけ何故か窓から届いた︶
16話 『present』
125
ドラコからも何の為にドレスをプレゼントしたと思っているんだ
まった。
新雪のように白く、星空のように蒼く。
ホールの騒がしさが一気にしんと静まる。
そんな時、一人の人物がホールに足を踏み入れた。
そう、まるで組分けの時と同じ状態だ。
しかけることができず、遠くから見つめていることしかしていない。
と呆れられてし
フェリシアがマルフォイ家にいるということを知ってやってきた者も、恐れ多くて話
いるだけだ。
そんなこんなで出席したわけだが、やっぱりどうにも落ち着かず、壁際に1人立って
?
ルシウスから出席するようにと言いつけられてしまったのだ。
フェリシアは自分には関係ないと思い自室でゆっくり過ごそうと思っていたところ、
クリスマスの夜はマルフォイ家でパーティーが行われることになっていた。
17話 ﹃純血のblood﹄
126
二種類の布が歩くたびにふわりふわりと舞う。
絹のように滑らかで細い銀色の髪。
翡翠色の美しい瞳。
それは、紛うことなきシンシア・ゴーントだった。
シンシアは会場に入ってからすぐにフェリシアを探した。
フェリシアの習性上壁際にいるはずだと思い視線を巡らせていると⋮見つけた。
壁際に佇む孤高の緋色の華。
齢11歳にもかかわらず、とんでもない色香を醸し出している。
流石吸血鬼といったところだろうか。
フェリシアを見つけた喜びにここがマルフォイ家のパーティー会場ということを忘
れ思いっきり手を振る。
周りのことは構わずシンシアはフェリシアの元へ一直線に向かった。
﹂
!!
﹁フィリィ
17話 『純血のblood』
127
﹁シアン
だめよ﹂
ここパーティー会場よ
おもいっきり手を振るなんてはしたないことしちゃ
?
それを見たフェリシアはなんだかもう泣きたくなってくる。
はバイキングの方へ行き、たくさんの料理を抱えてフェリシアの元に戻ってきた。
フェリシアが英国淑女のなんたるかを説明している間にお腹がすいてきたシンシア
!
!
一応お嬢様なのにこんなんでいいのかゴーント家は⋮。
また来るよフィリィ
!
﹁あ、あっちにも美味しいそうなものが
﹂
シンシアの男勝りっぷりにもフェリシアはそろそろ頭痛がしそうだ。
いよ︶﹂
﹁ほわいえおなははすふもほはし、しはららいお︵とはいえ、お腹はすくものだし仕方な
送ったドレスやお洋服が腐っちゃうわよ⋮﹂
﹁貴女ね⋮⋮登場したときは皆の目線を集めていたのに⋮⋮⋮⋮。その有様じゃあ私が
128
新たな獲物を捉えたシンシアはそこに向かって一目散に駆けていった。
シンシアと入れ替わりにやってきたのはドラコだ。
ドラコから貰ったドレスに身を包んでいるフェリシアを見て、﹁その⋮とても、綺麗
だ﹂と一言言うといつものように頬が赤くなった。
﹂
本当にこういうところ、可愛いと思う。
﹁ねえ、ドラコ1曲踊る
そのときのフェリシアは小悪魔的なとても魅惑的な笑みを浮かべていた。
?
本当に、ちょっと、とフェリシアは思った。
皆に注目されながらも堂々とエスコートするドラコはちょっとかっこよかったかな
ドラコは若干頬を染めつつフェリシアをダンスの輪までエスコートし、踊り始める。
﹁あ、ああ。そうだな、行こう﹂
17話 『純血のblood』
129
?
﹁あら意外ね⋮ドラコったら意外と踊れるのね﹂
ボクも本当は男に生まれてフィリィと踊りたかったとかそんな
!
﹂
怒ってないし
んじゃないし
﹁別に
!
!
﹁エ、ナニオコッテルンデスカシンシアサン﹂
ドラコと別れるとフェリシアの前にしかめっ面をしたシンシアがいた。
﹁ふふ、上手だったわ。また機会が会ったら踊りましょう﹂
事はある。
踊りやすいようなリードに相手の事を考えた体勢、ステップなど、流石は言うだけの
ドラコと踊るのは意外と楽しくて、フェリシアは、続けて2.3曲踊り続けた。
﹁あたりまえだ。僕はマルフォイ家の長男だ﹂
130
それめちゃめちゃバラしてるぞ⋮と内心ツッコミつつフェリシアはシンシアの両手
を握りしめ、語る。
﹁シアンが女の子じゃなかったら一緒の部屋じゃなかったかもしれないわ。一緒にベッ
ドに入って朝まで語ることも、一緒にお菓子を作ることも、もしかしたら最悪友達じゃ
なかったかもしれないのよ。私はシアンが女の子でよかったと思ってる。私⋮女の子
﹂
の友達⋮いえ、こんなに仲のいい親友になったのは初めてだもの⋮﹂
﹁フィリィ⋮⋮
りながらも、ハンカチでシンシアの涙を拭う。
ちょっとメイクが落ちちゃってるみたいよ
?
今すぐに直してきた方がいいわシアン﹂
?
泣くときに抱きしめるなんてまるでミレーユみたいね⋮とフェリシアは想い出に浸
ついに涙が溢れた頃、シンシアはフェリシアに抱きついてた。
シンシアの目元には涙が浮かんでいた。
!!
﹁パーティー会場で泣くなんて⋮⋮あら
17話 『純血のblood』
131
英国淑女として⋮﹂
﹁メイクとかどうでもいいから私はフィリィといたいの
﹁だーめ
走ったらだめなのに⋮。
く出ていったシンシア。
﹂
フェリシアが説教を始めた瞬間に﹁はいぃ 直してきますうううううう
!
では、ルシウスは
ナルシッサも客人と仲良さそうに談笑をしている。
ドラコはミリセントやパンジー、クラッブとゴイル達と話をしている。
フェリシアがこめかみを押さえたときあることに気がついた。
!
!
﹁ごめんなさいシンシア。私ちょっと抜けるわね﹂
﹂と勢いよ
シンシアが戻ってきて2.30分話をしていても全く戻ってくる気配はない。
会場内のどこを見ても見当たらない。
?
!!!!
132
﹁えええええええ、なんで
﹂
!?
書斎に近づくにつれフェリシアは感じとっていた。
フェリシアは迷いなく書斎へ向かう。
音のした方はルシウスの書斎。
微かだがフェリシアは確かに聞き取った。
何かが倒れる音。
トサ...
見当たらない。
その後も一つ一つの部屋を確認していくが、マルフォイ家の屋敷は広いのでなかなか
まず手始めに1階を全て探すが全てハズレ。
心配になったフェリシアはルシウスを探しに行くことにした。
けどゆっくりと楽しんでいってね。それじゃあ﹂
﹁本当にごめんなさい。パーティーもあと1時間程で終わりだわ。私が言うのもなんだ
17話 『純血のblood』
133
書斎から溢れてくる臭いは血臭だと。
書斎の扉には僅かに隙間が空いていたのでそこをそーっと覗く。
数人の倒れた女性。
中心に1人佇む長身の男性。
長いプラチナブロンドの髪にこの間マルフォイ家に届いたオーダーメイドのスーツ。
間違いないルシウスだ。
﹁誰だッ
﹂
何故ここに
﹂
?
﹁フェリシア⋮
?
書斎に入ってきたのは血の香りに酔いでもしたのか瞳が紅く輝く緋色の少女。
!
ルシウスの背後で扉の開く音がした。
⋮⋮﹂
﹁や は り 何 か が 足 り な い。だ め だ。こ ん な の で は だ め だ。あ の 方 々 の 血 で な け れ ば
134
いくらたっても返事をしないフェリシアに疑問を感じたルシウスは、フェリシアが見
つめているものを見ることにする。
フェリシア⋮これは、これはなんでもないんだ⋮﹂
それは足元に転がっている女達。
﹁ち、違う
ルシウスが下手な理由を述べたところで、フェリシアはやっと口を開いた。
!
﹁っ⋮
﹂
と貴方達は妖力で繋がっている。貴方が無意識で様付けしないように〝お願い〟をし
﹁両親が吸血鬼に変えた者達の支配権は私に移ったの。両親が死んだ時に。私という主
!!
貴方を怪物に変えてしまった﹂
り。言い逃れは出来ないわ。私は貴方が吸血鬼だという事を知っている。私の母親が
﹁妖しく輝く紅い瞳。唇から溢れる血。倒れる女性達。そして、周囲に漂う濃い血の香
17話 『純血のblood』
135
た。それが上手くいったということは貴方はとっくに私の支配下﹂
フェリシアは少しずつルシウスの元へ歩く。
七色の翼を揺らし、光らせながら。
﹂
恐怖心が煽られたのかルシウスは少しずつ後ろへ下がる。
﹁ふふ、ところで貴方。これが欲しいんでしょう
フェリシアは床を軽く蹴って飛ぶ。
襲いかかる。
そして極上の血の香りに我慢出来なくなったルシウスはフェリシアを捕まえようと
普通の吸血鬼にはたまらないだろう。
それはそれは極上の血液だ。
しかもあのスカーレット家の子孫の血液。
純血の吸血鬼。
そして、親指の爪で人差し指の皮を切り、出てきた血の滴をルシウスの顔に垂らす。
ルシウスよりも少し上に留まり指をルシウスの顔の近くへ持っていく。
?
136
喉が焼けるように熱くて、渇いて、潤したくて。それは
だがフェリシアはそれを完全に見切り、軽々と避ける。
欲しいのね
吸血鬼になったものの運命よ
﹂
貴方は裕福で権力もあって餌はいくらでも用意出来る。
我慢なんてしたことないんでしょう
その顔は満面の笑みだった。
フェリシアはダンスでも踊るように軽やかに避け続ける。
ルシウスは爪を長く伸ばし、フェリシアに向かって攻撃し続ける。
?
﹁ふふ。欲しいの
?
?
?
ふふ﹂
ああ、本当にいい表情をするわ。お母様はこ
ルシウスの長く鋭い爪がフェリシアを捉える。
フェリシアは突然回避をやめ完全に停止した。
んなにいいペットを残してくれた。なんて素敵なの
!
そして、フェリシアの白く瑞々しく美しい肌に爪が食い込み、肌を切り裂いた。
?
出来ない⋮悔しがる貴方の顔を見るのは
﹁あはッ。最高ね、欲しくて欲しくてたまらないものを目の前にして手に入れることが
17話 『純血のblood』
137
太腿を裂かれたため、大量の血が宙に舞う。
ルシウスは降り注ぐ血に歓喜し、顔などについたフェリシアの血液の舐める。
フェリシアの傷はすぐに消えた。
まあ美味しいでしょうね。良いものを見せてくれたお礼に血を直接
もちろん傷の跡も綺麗さっぱり。
﹁ふふ、美味しい
た。
その後、威厳のあったルシウスの姿はもうなく、ただの血に飢えた化け物になってい
を委ねる。
回答に満足したフェリシアはルシウスに向けて微笑むとその後は全てルシウスに身
﹁ありがとうございます⋮フェリシア様⋮⋮﹂
フェリシアは髪の毛をかきあげ細い首を見せつける。
首から吸ってもいいわよ、ほら﹂
?
138
パーティー終了後、学友を玄関ホールで見送ったドラコはフェリシアと話そうと思っ
たがフェリシアがいないことに気づいた。
あろうことか父のルシウスもいないようだ。
﹂
﹁困ったわね⋮。ドラコ、きっとあの人の事だから書斎か寝室にいるはずよ。ちょっと
呼んできてくれないかしら
皆何か異臭がしたが気のせいだろうか
やっと父の書斎にたどり着く。
?
父の書斎に向かう途中、女性と何人かすれ違う。
﹁あ、ああ。わかったよ⋮母上﹂
?
玄関ホールから少し遠いからここまでつくのに結構かかる。
﹁失礼します父上﹂
17話 『純血のblood』
139
﹁ド、ドラコ⋮
﹂
﹂
あの少女は、あのドレスは、あの滑らかで柔らかそうなプラチナブロンドは
﹁なんで⋮フェリシアがここに⋮⋮
!!
父の膝の上に乗り大事に抱きかかえられている、アンティークドールのように美しい
扉を開けると血に染まった書斎と、あきらかに慌てた表情の父。
!?
にルシウスが話しかけた。
ドラコの顔が青くなり、周囲の血の匂いを意識しはじめ気分が悪くなってきたところ
ドラコの脳内には嫌な予感がよぎる。
飛び散っている血液。
少し乱れたドレスや髪型。
目を開けないフェリシア。
る。
フェリシアをよく見れば緋色のドレスでなかなか気がつきにくいが血に染まってい
?
140
﹁彼女は死んではいない。少し意識を失っているだけだ。彼女を部屋に運んでおいてく
れ。私はここを片付ける﹂
そういって父はフェリシアを大事にドラコに渡した。
﹁父上⋮でも、これ⋮⋮一体どうしたんですか⋮⋮﹂
ドラコは疑問を素直にぶつけるとルシウスはドラコを睨み、去れと一言。
怯えたドラコはフェリシアを抱きかかえてその部屋を後にした。
ドラコはフェリシアをベッドに寝かせ、目覚めるのを待った。
とにかく事情を聞かなければ。
﹂
?
案外フェリシアは早く目覚めた。
ドラコ⋮
?
﹁⋮んぅ⋮⋮⋮え⋮⋮⋮⋮⋮あれ
17話 『純血のblood』
141
﹁フェリシア
⋮⋮よかった﹂
﹁あの時何があったんだ
父上の書斎で﹂
ドラコはフェリシアが起き上がろうとするのを制し、再び寝かせる。
!
?
父親が吸血鬼だったなんて。
ドラコは頭が殴られたような感覚がした。
ていた気もするけれど⋮⋮﹂
量の血を吸われて意識を失ってしまった⋮気がするわ。そのとき私がいろいろと言っ
﹁⋮わからないわ。⋮⋮⋮ただね、聞いて欲しいの。貴方のお父様は吸血鬼よ。私は大
﹁そんなことってあるのか
﹂
何か⋮もう一人の誰かに主導権をとられたような⋮﹂
﹁ぅ⋮私も詳しいことはあんまり覚えていないの⋮⋮。
?
142
そ、そんなことよりも大量の血を吸われたって⋮大丈夫なのか
この愛らしい小さな吸血鬼の。
なんでもいいんだ。
君の餌でもそばにいられれば。
シャツを緩めつつ寝ているフェリシアに迫る。
﹂
?
﹁っ⋮⋮⋮
﹁え⋮
﹂
﹁僕の血を飲めフェリシア﹂
﹁大丈夫じゃないわね。今物凄く足りないわ﹂
!
何か力になりたい。
?
﹁遠慮なく飲めフェリシア﹂
17話 『純血のblood』
143
傍からみたらやばい構図な気がするが今は非常時だしシカタナイシカタナイ。
あのときの人格は一体なんだったのだろうか。
こうして少し大変なクリスマス休暇は幕を閉じた。
フェリシアもつられて微笑んだ。
そういってドラコは微笑む。
﹁欲しかったらいつでも言ってくれ。力になる﹂
﹁ぷは⋮ありがと⋮ドラコ⋮⋮﹂
一滴もたらさず、優しく。
フェリシアは遠慮がちに、それでもしっかりとドラコの美味しい血を啜った。
﹁え、う⋮はい﹂
144
17話 『純血のblood』
145
シンシアとドラコの二人のせいで騒がしいコンパートメント内。
フェリシアはカエルチョコレート片手にそんなことを考えていた。
行きも合わせれば現在の数ちょうど100だ。
18話 ﹃ニコラス・フラメル﹄
クリスマス休暇明けのホグワーツ。
皆の話題はもちろんクリスマス休暇にあった出来事についてだ。
そんな浮かれた時期から2週間。
いつもどおりのホグワーツ。
静かな図書室でシンシアはうんうんと唸っていた。
この間の魔法薬学でもまた失敗をし、薬の材料から、それを使ってできた薬の効果ま
でを事細かにレポートをしてこいと、スネイプ先生に言われたのだ。
余りにも量が多いためフェリシアにも手伝ってもらっているがなかなか進まない。
そう言ってフェリシアが席をたつ。
﹁うーん⋮この本じゃだめね⋮他のを探してくるわ﹂
146
﹁行ってらっしゃい⋮⋮﹂
シンシアはハイライトの消えた瞳で言葉を紡いだ。
﹂
フェリシアが材料が細かく書かれている本を探していると聞いたことのある声が耳
に入った。
!
?
﹁どうかしたの
なんだか悩んでいるみたいだけど﹂
たくさんの本に囲まれながらうんうんとシンシアのように唸っていた。
気になって声の聞こえた方へ向かうと、レイシア、ハーマイオニー、ハリー、ロンが
何かに悩むレイシアの声だ。
﹁だめだぁぁぁぁ⋮こんなんじゃスネイプ先生に先に取られちゃうよ
18話 『ニコラス・フラメル』
147
﹁フィリィ
﹂
﹁誰かを探しているの
﹂
そこには魔法界の偉人がずらーっと乗っていた。
フェリシアはレイシアが開いている本を覗く。
!
今度教えて欲しいわ。でも、ハ
?
とロンの活躍とレイシアの機転のおかげでなんとか倒すことができたわ。それで、誰を
リー達がやってきたときにもう一体やってきて、今度こそ駄目だと思ったけれどハリー
助かったわ。でもあれってどういう魔法を使ったの
﹁ちょっと人を探しているの。あと、ハロウィンのときはありがとう。貴方のおかげで
みかねたハーマイオニーがハリーの代わりに代弁をした。
ハリーがしどろもどろに答える。
﹁いや、これは、その⋮⋮﹂
?
148
探しているのかというとニコラス・フラメルという人について探しているのよ。私何か
で読んだ気がするんだけど肝心な事を思い出せなくて⋮⋮﹂
フェリシアはハーマイオニーのやたらと長い話を適当に聞きながら重要な部分、最後
のニコラス・フラメルという部分だけ抜きとり、脳内検索をかける。
レイシア達四人は何かを期待するような目でフェリシアを見つめる。
少し考えるとすぐに見つかった。
﹁ニコラス・フラメルさんね。フラメルさんは賢者の石を作ったということで錬金術界
﹂
でかなり有名な方よ。昨年665歳の誕生日を迎えていて、今はフラメル夫人とお二人
で暮らしているはずよ。それがどうしたの
助かったぁぁ⋮⋮﹂
!
フィリィ凄い
!
?
レイシアは意外と力が強いから少し痛い。
レイシアはフェリシアの手を掴みぶんぶん振り回す。
﹁おお
18話 『ニコラス・フラメル』
149
﹁痛い痛い、落ち着いて、ね
﹂
﹂
﹁ところでさ、賢者の石って何
ハーマイオニーは信じられない
説明を始めた。
という顔をしてから賢者の石についての長い長い
賢者
私もフェリシアさんの言葉で何をした人だったか思い
出したわ。前にニコラス・フラメルについて記載してある本を読んだのよ。いい
﹁貴方達ちゃんと勉強してるの
!
ドラコがシンシアに勉強を教えていた。
その後無事に本を見つけたフェリシアが席に戻ると、そこにはさっきまでいなかった
うに去った。
フェリシアはシンシアを待たせていることを思い出し、そーっとその場から逃げるよ
生み出し...﹂
の石というのはね、錬金術で最も難易度が高いと言われている代物で、その石は黄金を
?
?
ハリーとロンが首を傾げてハーマイオニー達を見る。
?
?
150
﹂
私の時はあんなにぐだぐだして死んだ目をしていたシンシアが今は真面目に勉強を
しているではないか。
ドラコに何か言われでもしたのだろうか。
﹁お待たせ、はい、よさそうな本。ドラコ使う
ゴーントの課題は終わるまで僕が見るよ﹂
﹁ありがとうフェリシア。僕の知識がたりなかったときに活用させてもらうよ。あと、
?
フェリシア自身もたまにドラコに教わるが、とてもわかりやすかった。
ドラコの方が教え方が上手いのは当たり前だろう。
それに、魔法薬学だけはドラコの方が成績がいい。
フェリシアは人に教えるのは少し苦手なのだ。
⋮⋮﹂
﹁こんなやつに教わるなんて⋮くっ⋮ていうか悔しいけどフィリィより教え方が上手い
18話 『ニコラス・フラメル』
151
﹁何か言ったかゴーント﹂
そんな二人の様子を見ていたフェリシアには笑みが浮かんでいた。
﹁イエ、ナニモイッテマセン﹂
152
19話 ﹃テストと学期末﹄
あれからフェリシア達3人は自分自身が得意な教科を教えあって苦手な部分を潰し
ていった。
壊滅的なシンシアの魔法薬学もマルフォイ先生のおかげでだいぶマシになった。
﹁だいぶ出来るようになってきたじゃないか、これでテストはなんとかなるだろう﹂
てる感じだ。
嫌悪感の中に意外と素直に勉強を教わる相手に対して好印象を持ってしまい、戸惑っ
この2人、会話だけは前より仲が良くなったが表情が凄いことになっている。
たじゃん﹂
﹁ふん⋮一応⋮ありがとうと言っておくよ。マルフォイだって魔法史なんとかなってき
19話 『テストと学期末』
153
154
おかげで物凄く微妙な空気があたりに漂っている。
でも、この2人がいる空間が1番心地よく、なによりも楽しいとフェリシアはミルク
ティーを淹れながらふとそんなことを思った。
そして、今日も明日もフェリシアのミルクティーを飲みながら、3人はテストまで仲
良くお勉強タイムだ。
そしてテスト後⋮
あまり苦手教科のないフェリシアは全ての教科で高得点を叩き出し、見事学年1位を
とった。
100点超えの点数ばかりとっている時点で、苦手も何もないと思うのだが。
ドラコもシンシアの魔法史指導のおかげで高順位をとり、シンシアもなかなかの高順
位をとることができた。
ちなみにフェリシアは1位をとることが出来なかったハーマイオニーに物凄い形相
で睨まれたそうな。
それから、ダンブルドア校長がハリー・ポッター達が賢者の石を守護したという説明
をし、スリザリン以外の生徒達は大盛り上がり。
フェリシアは、レイシア達がニコラス・フラメルについての情報を探していたのはそ
ういうことだったのかと納得。
ドラコは﹁僕に教えてくれていたら僕が守護していたのに⋮ポッターの奴め⋮⋮⋮。
いい所を奪いやがって⋮﹂と、訳の分からない愚痴をこぼしている。
シンシアはぐっすり睡眠をしていて、全く聞いていなかった。
テストに向けて連日深夜まで勉強していたからだろうか。
それぞれ三者三様の反応を見せた。
学期末の寮杯もグリフィンドールがとり、スリザリン以外の生徒達が喜び...ほぼ同
じ反応だったので割愛。
結構メンタルが弱いドラコには充分なケアをしないといけないのだ。
フェリシアは隣に座るドラコの愚痴を聞きながら慰める。
﹁ドラコ、そんなこと言っても後の祭りよ。それにもう列車は出発してしまっているわ﹂
﹁ああ⋮寮杯をとれなかったなんて父上が知ったら⋮⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
19話 『テストと学期末』
155
﹂
?
﹂
﹁むー⋮⋮試しに家に戻るとかしないの
にくればいいのに﹂
﹁こんなの⋮だって
?
そして、一つ目のカエルチョコに手を伸ばした。
フェリシアは喧嘩が始まる予感しかしない二人を見て溜息をつく。
﹁⋮⋮ふん⋮マルフォイなんか〝こんなの〟で充分さ﹂
?
ていうかこんなのの家じゃなくて、ボクの所
フェリシアの言葉を聞いたシンシアは明らかに不満気な表情をした。
しないと⋮⋮﹂
﹁ええ、そうね。あれから家からの手紙⋮一切届かなくて⋮。とりあえずは手紙通りに
﹁それでフィリィはまたマルフォイ家に行くわけ
156
シンシアは別れ際、
﹁絶対夏休み行くし フィリィ独占とか許さないし
去っていった。
﹂と言い残し
!
!!!
何そんなところで悶えてるんだ。父上と母上が待っているから行こう﹂
シンシアはうふふふふといいながら手を振り返した。
︶
暫く離れたところでもう1度振り向き、頬を染めながら手を振ってくれた。
ンピース姿。
そのときのシンシアの服はクリスマスにフェリシアがあげた夏用の紺色の上品なワ
!
︵最高に似合ってるよ照れることないよ可愛いよシンシアちゃん
!?
事をした。
ドラコの言葉で現実に引き戻されたフェリシアは若干引き攣った笑みを浮かべて返
﹁え
?
あ、ああ、そうね⋮﹂
﹁フェリシア
19話 『テストと学期末』
157
夏休みに淡い期待をのせて...
フェリシアは誰にも聞こえない声で呟いた。
ふふ﹂
﹁シアンがマルフォイ家に遊びに来るなら静かなマルフォイ家が騒がしくなりそうね、
158
怪しさ漂う秘密の部屋編
20話 ﹃血にまみれた契約﹄
夏休みが始まって数日。
今日はドラコと2人で夏休みの課題を消化していた。
﹂
ルシウスは仕事、ナルシッサはお茶会で家に居ない。
流石に集中力が続かなくなってきて効率が下がってくる頃合だ。
勉強をし始めてからかれこれ数時間。
?
﹁ああ、構わない。ところでフェリシア。クディッチというものを知っているかい
﹂
?
﹁ねえ、ドラコ一旦休憩をいれない
20話 『血にまみれた契約』
159
﹁もちろん知ってるわよ。魔法界で最もホットなスポーツ。でもまあ箒に乗れない私に
は関係ないわね﹂
﹂ ?
だから
?
﹁ええ、頑張ってドラコ﹂
﹁そうか、そうだよな。やってみることにするよ﹂
﹁いいと思うわ。何事もチャレンジすることが大事っていうくらいだし﹂
きっと、あとひと押しの勇気を誰かに分けてもらいたいんだと思う。
見つめる。
ドラコは自分の夢を本当に真剣に追いかけているのか真摯な眼差しでフェリシアを
僕、シーカーの枠を狙って見ようかと思うんだけどどう思う
チの選手になりたいんだ。それでだ、2年生から箒の所持が許可されるだろう
﹁ああいや⋮そういう意味で言ったんじゃないんだ、すまない。⋮僕は学校のクディッ
160
そのとき、窓の外に一羽の梟が飛んできた。
フェリシアは窓辺に行き梟を捕まえて手紙をとる。
トラクル家の紋章と思われる封蝋と薄い桃色の手紙。
﹂
名前を見るとやはりレイシアからのものだった。
誰からのものだ
?
﹁手紙か
?
そして、手紙の中に手を入れた瞬間何かが手に突き刺さった。
封を開ける。
フェリシアはポケットに入れっぱなしにしてあったペーパーナイフを使って手紙の
だがドラコはフェリシアとの友好関係を崩したくないためか、何も言わなかった。
レイシアの名前を聞いて少し顔をしかめるドラコ。
あとからいざこざになっても困るからだ。
飛行訓練のときのドラコの反応を見て言うか迷ったが隠さず言うことにした。
﹁⋮⋮レイシアからのものよ﹂
20話 『血にまみれた契約』
161
﹁っ⋮
﹂
﹁どうしたんだ
!?
﹂
?
﹁そんなことより手だ﹂
﹁⋮これ。純銀のナイフね。確か一人だけ⋮﹂
フェリシアは指先の怪我も気にせず床に座り、ナイフを手にとって調べ始めた。
﹁これ⋮細工じゃないか⋮⋮
なんてやつなんだトラクルは⋮﹂
そして足元にある手紙とナイフ。
いつもならすぐ再生するはずなのに全く再生し始めない傷。
すると、フェリシアの指先からは指先とは思えないほどの血の量が流れていた。
小さなフェリシアの声に振り向くドラコ。
!?
162
ドラコはフェリシアの腕を掴み、自分の口元へと引き寄せる。
飲んじゃだめ
﹂
そこでフェリシアは我に返った。
﹁⋮⋮だめよ
!!
﹂
!
その瞬間ドラコの足元から紅い魔法陣が広がる。
そう、吸血鬼化の条件を揃えてしまった。
まったのだ。
ドラコはフェリシアの指先をくわえていて、フェリシアの血液を体内に取り込んでし
だがフェリシアが叫んだ時にはもう遅い。
!
﹁なん⋮だ、これ⋮
20話 『血にまみれた契約』
163
﹂
どうするの
﹂
!
貴方はもう人には戻れない。長い長い時を過ごすこと
﹁貴方は吸血鬼化の条件を満たしてしまったの
﹁あっ⋮⋮﹂
になるのよ⋮
﹁あっ⋮じゃない
!?
そして光はドラコの細胞を一つ一つ吸血鬼細胞に変えていく。
る。
フェリシアの血をもらった魔法陣は血色に鈍く光り始め、その光をドラコに纏わせ
今だに流血していた指先から流れる血の滴を魔法陣に一滴垂らす。
フェリシアは仕方なく吸血鬼化を進めることにした。
途中で吸血鬼化を解除することは不可能。
直径5m程になったとき、魔法陣は発光し始めた。
そうこう話している間にも魔法陣はさらに大きくなる。
ドラコがごくりと唾を飲み込む。
?
!
164
﹁ぐ⋮⋮ぅ⋮⋮⋮いっ⋮⋮⋮﹂
ドラコはあまりの痛さに顔をしかめる。
細胞を一つ一つ強制的に書き換えているのだから仕方のないことだが、この痛さに耐
えられた者じゃないと吸血鬼にはなれない。
さらに、意識のある状態で細胞を書き換えなければいけないのだ。
大抵が耐えられずに途中で逃げ出して轢かれたり、飛び降りたりで死んでいる。
ドラコはなろうとしてなった訳ではないので死ぬ可能性の方が極めて高い。
これはフランドール様がよく使っていたものだ。
スペルカード、だ。
目を開けて確認すると予想どうりのものだった。
とがわかる。
そして、目を瞑ってから手に特殊な力を込めると、手には何かのカードが出現したこ
フェリシアは意を決したように顔をあげ、深く深呼吸をする。
﹁⋮逃げないでね⋮ドラコ。⋮⋮⋮いえ、逃がさないわ﹂
20話 『血にまみれた契約』
165
幻想郷というところではこれを使って決闘をしたり、遊んだりするのが一般的だった
らしい。
だが、フェリシアのはそんな生易しいものではない。
フランドール様の子孫が研究を重ねて作り上げたものだからだ。
殺傷能力や捕獲能力など、様々な能力を付与することも出来る。
書き換えられ、吸血鬼になってしまった。
れ、逃げ出そうとしたがカゴメカゴメのおかげで逃げ出すことは出来ず、無事に細胞は
それから数分後、ドラコは細胞変化の苦痛に耐えきる事ができなかったのか暴れに暴
とするからそのときは光弾を操作してドラコを捕縛する。
初めては人間の時の感覚で血をあんまり受け入れない人が多く、これまた逃げ出そう
吸血鬼化が進んだら支配から解放するために大量の血液を渡さなければいけない。
して光弾にぶつかったらドラコを真ん中に押し返すという優しい設定にしてある。
フランドール様のように大きな光弾をぶつけて壊しはしないが、ドラコが逃げようと
緑色の光弾をドラコを中心に四角くなるようライン状に設置する。
﹁⋮⋮禁忌[カゴメカゴメ]捕縛﹂
166
﹂
﹁⋮⋮吸血鬼のなり方が酷い⋮⋮うっかり舐めて変化とか酷いわ⋮⋮⋮貴方は本当にそ
れでよかったの⋮
フェリシアは素直に思ったことを口に出した。
数十分間の間の出来事の内容が濃すぎる。
?
光弾の操作をめんどくさがったフェリシアは、違う方法を使うことにした。
うので飲めなかったり受け入れられないことが多い。
だが、先程説明した通り元人間の吸血鬼には人間の時の事を本能的に思い出してしま
これからその下僕化を解放させるために大量の血液を与えなければならない。
主の忠実な下僕だ。
フェリシアの血によって吸血鬼化したドラコは、今はただフェリシアという絶対的な
その瞳には光はなく、虚ろな目をしている。
フェリシアの何気ない一言に返事をするドラコ。
﹁ハイ、ソウデスネ﹂
20話 『血にまみれた契約』
167
懐から杖を取り出し、構える。
そうすることで比較的少ない血液の量で下僕状態を解除できる。
フェリシアのとても濃いヴァンパイアの血液をドラコの心臓へ直接流し込む。
へ突き刺した。
そして右手で持ったデュランダルでドラコの心臓の上にある自分の手とその奥、心臓
フェリシアは自身の左手をドラコの心臓の上へと置き、デュランダルを鞘から抜く。
まあそれは今はどうでもいい。
デュランダルは岩もを断ち切る威力と強さを持っている剣だ。
そして、レーヴァテインを召喚した時のように神界からデュランダルを召喚した。
フェリシアは倒れたドラコの上に馬乗りをする。
出来るだけ急がなければいけない。
吸血鬼になった為、魔法もすぐに効果が切れてしまう。
杖の先端から赤い光が迸り、真っ直ぐにドラコの元へ向かい、直撃する。
﹁ごめんなさいドラコ。少し我慢していてね。〝ステューピファイ│失神せよ〟﹂
168
20話 『血にまみれた契約』
169
ある程度流し込んだのでデュランダルを鞘へと戻す。
後はドラコが目覚めてから、いつも通りのドラコでいるように、と〝お願い〟をしな
ければ。
フィリィ、ボクだよ
21話 ﹃再会﹄
﹁久しぶり
﹂
!
﹁って⋮なにこれ⋮部屋、暗すぎない
﹂
﹁あらシアン。予定より少し早いわね。いらっしゃい、私の家じゃないけれど﹂
場所よりも少しばかり気温が低い気がする。
普通こんな分厚いカーテンを閉めきっていたら暑い気がするのだが、この部屋は他の
その部屋は日中なのにカーテンを閉めきっていたからだ。
?
シンシア・ゴーントがマルフォイ家のとある扉を開く。
!
170
そういってシンシアの方を振り返ったのはフェリシア・スカーレット・ドラクル。
眩いばかりの白金の髪を今日はツインテールに結っている。
﹁本当は来て欲しくなかったけれどようこそ。マルフォイ家へ﹂
フェリシアの奥でソファーにゆったり座っているのはマルフォイ家の一人息子のド
ラコ・マルフォイだ。
なかったんだー
﹂
シアン。私が貧血を起こしちゃって⋮﹂
﹁ふん、ボクだってフィリィがいなかったら来なかったよ。それよりも何故出迎えに来
﹁え、えっと、ごめんね
日にちずらした方がよかったかな
?
﹂
フェリシアが苦笑しながらシンシアをソファーに座らせる。
?
!
大丈夫
?
﹁そうなの
?
21話 『再会』
171
⋮それまで耐えればよし、なの。眠ればさらに頑丈になるから﹂
そう言いながらフェリシアはアイスコーヒーを作り、皆に出す。
﹂
﹁とりあえずゴーントは新学期が始まるまでここに滞在するんだろう
﹁そうだけど、何か文句でもあるのかい
?
﹁とりあえず皆揃ったことですし、新学期の買い物にでも行きましょうか﹂
嫌味の一つや二つ来ると思っていたからだ。
シンシアはドラコの言葉に目を丸くした。
内してくれるだろう﹂
﹁⋮いや、今更文句なんてない。部屋は二階のフェリシアの隣だ。後でフェリシアが案
?
﹂
﹁ううん気にしないで。それに、そろそろ初めての眠りの時期もやってくるだろうから
172
﹁そ、そうだね
じゃあ荷物置きたいから部屋教えてフィリィ﹂
﹂
﹂
ネイビー系の家具で整えられた部屋は夜空のようだ。
そう言ってフェリシアは扉を開く。
﹁はい、シアン。ここがシアンの部屋よ﹂
◇
﹁じゃあ10分後に暖炉前に来てくれ。僕は先に行って待ってる﹂
!
何かしら
?
﹁⋮⋮
?
シンシアは荷物を中に入れながらフェリシアに問う。
?
﹁ありがとうフィリィ。⋮⋮⋮あのさ、少しいい
21話 『再会』
173
﹁この夏休み中⋮ボクがいない間⋮⋮2人とも何か会ったの
ギクリ。とした。
﹂
フェリシアの背中に冷たい汗が流れる。
﹁なん、で
?
﹁そ、そう
﹂
⋮⋮⋮⋮気のせいなら﹂
!
じゃあドラコも待ってるから下、行きましょうか﹂
わからないや。気のせいならいいんだ
﹁いつもと纏う空気が違う気がした、とでも言えばいいのかな。⋮⋮正直、ボクにもよく
揺で少し震えていたかもしれない。
まさかシンシアからそんな言葉が来るとは思ってなかった為に、フェリシアの声は動
?
?
174
﹁そうだね
よーし、ダイアゴン横丁で何食べようかな∼﹂
!
シアンったら、食べ物じゃなくて新学期で使うものをちゃんと買うのよ
﹂
?
!
こうして二年生直前の3人は少し不穏な空気を漂わせながら始まった。
﹁もう
21話 『再会』
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