みんなが幸せになるために 私たちは「中小企業憲章」の 考え方を推進します 中小企業憲章とは、日本の経済、社会、文化および国民 生活における中小企業・ 自営業の役割を明確にし、豊か な国づくりの柱にすえることをめざして、2010年6月に閣 議決定されました。その中には「中小企業は、経済を牽引 する力であり、社会の主役である。」と明記されています。 この憲章の精神を実現するために、現行の中小企業基本 法をはじめ諸法令の整備・充実する道筋を示すものです。 私たちが納めた税金は、国民の「健康で豊かな生活」 を実現するために、国や地方公 共団体が行う活動の財源になります。私たちは一人では生きていけません。税金は、私 たちが社会で生活していくための、 いわば「会費」 といえるでしょう。 税金は、 「富の再分配」 「景気調整」 「経済政策の推進」 「国内産業の保護」の機能を持っ ていると言われています。 このような税金を誰がどのように負担し、何に使われるのか。私たち中小企業経営 者とそこで働く社員のみなさん一人ひとりが、 むずかしい問題といわずに、税金や財政 についてしっかり考える必要があるのではないでしょうか。 中小企業家同友会全国協議会 中小企業経営者 のみなさん、 中小企業で働く社員 のみなさん、 ご家族 のみなさん、 ぜひ この資料をもとに話しあってみましょう ! 学習討議用資料 1 税金の大原則は公平性、 「能力に応じた負担」 ~日本国憲法に基づいた「平等」の考え方で~ 企業の社会的使命、役割の根幹は「納税」 と 「雇用」で べて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社 す。私たち中小企業家同友会は、 「よい会社をつくろう、 よ 会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関 い経営者になろう、 よい経営環境をつくろう」 という目的 係において、差別されない。」 とあります。税金について の実現のために、 「 人を生かす経営」 を通じた企業づくり は、形式的な平等ではなく実質的な平等のことをいって を進めています。雇用を守り、適正な利益を得て納税し、 います。 また、 「第25条 すべて国民は、健康で文化的な 企業活動を通じて社会に貢献していこうと考えています。 最低限度の生活を営む権利を有する。」 には、最低限度の だからこそ、税制は公平であってほしいと願っていま 生活費には課税してはならないという意味があります。 す。 この間、税制について学習をすすめる中で、税制本来 このような実質的な税の平等についての考え方はフラ のあり方は、 「能力に応じた負担」が原則であること、 その ンスの人権宣言やドイツのワイマール憲法から継承され 根源は、 日本国憲法にもとづいていることを学びました。 たもので、 「 支払い能力に応じた負担」が原則です。 しか 日本国民の納税の義務については日本国憲法の第30 し、現在の日本では、 この憲法に反して大金持ちや大企業 条に定められていますが、 その前提として第14条には 「す を優遇した税制となってしまっています。 2 個人でみても ~所得税も累進課税のはずなのに…~ 累進課税とは「所得が増えるほど高い税率をかけ 所得に占める株式譲渡所得・配当所得の比率(右目盛)と国税負担率(左目盛) る」 という考え方です。高所得者の所得への税率を高 (%) 30 くし、低所得者の税率を低くすることで、富の再分配 25.3 を端的に実現する税制です。 アメリカの法人税率も累 25 進課税になっています。 国税負担率 15 に所得が上がると、実際の税負担率は下がるように 10 なっています。 これは、証券優遇税制の影響といわれ ており、2000万円の売却益で10%の200万円(所得 5 税・住民税、分離課税) しかかかりません(2014年よ り20%に変更)。高額所得者層では所得の多くを右 0 図のように、株式売却益と配当所得が占めています。 6.2 7.6 8.8 10.4 (%) 90 80.7 21.3 18.2 80 74.7 70 18.8 53.2 60 16.7 42.0 12.4 14.9 14.2 26.8 50 40 30 16.0 4.7 100 20 所得に占める株式譲渡所得・配当所得の比率 3.5 2.7 3.0 2.3 9.2 2.0 1.3 1.7 2.5 2.8 3.3 4.5 6.1 0.8 0.7 0.5 0.4 0.5 0.6 0.8 1.1 1.4 1.6 1.7 2.1 10 ~70 ~100 ~150 ~200 ~250 ~300 ~400 ~500 ~600 ~700 ~800 ~1000 ~1200 ~1500 ~2000 ~3000 ~5000 ~1億 ~2憶 ~5億 ~10憶~20憶 ~50憶 ~100憶100憶~ 0 出典:国税庁「申告所得税標本調査」 (2007年分) より作成 企業でみても ~現実は、巨大企業より中小企業の方が高い負担率です~ 資本金別に比べてみると、法人税負担 率が一番高いのは資本金1億円以上5億 (%) 30 円未満の企業(負担率27%) です。資本金 25 100億円を超える大企業の法人税負担率 20 は19.6%、国内の子会社と合算して申告 15 する連結納税法人では負担率13.3%で す。右図を見てもわかるように、巨大企業 22.6 22.3 22.4 24.8 25.3 26.3 26.4 27.0 26.6 24.8 23.1 19.6 13.3 10 5 憶円超 1 0 0 連結法人 50 憶円 万円超 1 0 0 憶円超 10 憶円超 50 〜 5 憶円超 10 〜 憶円 1 憶円超 憶円 5 〜 憶円 〜 5 1 0 0 0 憶円 万円 万円超 2 5 0 0 0 0 0 0 〜 〜 万円 1 2 0 0 0 0 0 0 万円超 万円 万円超 5 1 0 0 0 0 0 〜 〜 万円 2 5 0 0 0 0 万円超 万円 1 2 0 0 0 0 万円超 1 0 0 〜 0 〜 ~26%)の半分の税率でしか負担してい 資本金階級別の法人税負担率(2012年度) 万円以下 は資本金1億円以下の中小企業(税率22 ません。 23.5 15.1 億円の税率26.5%がピークになっていて、それ以上 3 25.2 21.5 20 一方、現在の日本の税制では、右図のように所得1 99.8 26.5 出典:富岡幸雄「税金を払わない大企業リストの公表-法人税制改革の方向を誤るな-」 商学論纂(中央大学)第56巻第3-4号(2014年11月)を参考に国税庁資料より作成 4 「中小企業は赤字企業が多く、税金を納めていない」 という声がありますが… 中小企業が支える雇用 全体の雇用:約4,570万人 ●中小企業の黒字企業数は約74万社(黒字企業全体の 大企業 98%) もあります。 21% 976万人 中堅企業 ●地域経済を支えている、利益800万円を超える中小企業 8% 368万人 は約19万社です。 全体の7割 (約3,200万人) 小規模企業 28% 1,283万人 中小企業 43% 1,944万人 ●赤字企業も地方税(均等割) を納めています。 また中小企 小規模企業:個人事業主および資本金1千万未満 中小企業:資本金1千万以上1億円未満 中堅企業:資本金1億円以上10億円未満 大 企 業:資本金10億円以上 業は雇用を通じて国民生活を担い、地域のインフラとして 出典: 「経済センサス」 (平成24年) の機能も果たしています。 社会保険料の負担 ●中小企業は、雇用数全体の約7割にあたる3200万人を雇 用し、社会保険料の5割にあたる12兆円を負担し、社員の 公務員共済組合等 負担金 給与から発生する所得税として法人全体の約4割にあた 17% 5兆円 る3兆円を納めています。 黒字法人数の推移(平成24年度利益計 上法人数:75万社) 100 80 2 2 2 2 2 2 2 2 1 1.5 74 78 79 77 79 83 83 85 83 72 69 68 70 74 2 2 2 2 60 40 中小企業:従業員300名未満 大 企 業:従業員300名超 出典:国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付集計表」 (平成23年) (平成25年) より推計 厚労省「厚生年金保険業態別規模別適用状況調」 従業員への給与から発生する所得税 従業員給与から発生する所得税:約8兆円 その他法人 23% 1.8兆円 20 28% 2.2兆円 年度分 平成 24 年度分 平成 23 年度分 平成 22 年度分 平成 21 年度分 平成 20 年度分 平成 19 年度分 平成 18 年度分 平成 17 年度分 平成 16 年度分 平成 15 年度分 平成 14 年度分 平成 13 年度分 平成 12 年度分 平成 11 全体の約4割 (約3兆円) 中小企業 38% 3兆円 大企業 0 (約12 兆円) 42% 12兆円 41% 12兆円 大企業(資本金1億円超) 中小企業(資本金1億円以下) 民間事業主 拠出分の5割 中小企業負担分 大企業負担分 (万社) 社会保険料事業主拠出分:約29兆円 11% 0.9兆円 中小企業:個人事業主、資本金1億円以下(有限会社除く) 中堅企業:資本金1億円超10億円以下 大 企 業:10億円超 その他法人:有限・特殊法人等 中堅企業 出典:国税庁「民間給与実態調査」 (平成24年) 出典:国税庁「会社標本調査」 (平成24年) 〈 日本商工会議所作成資料より 〉 5 日本の法人税って高いのでしょうか? 法人税を引き下げることが産業活性化の最 重要課題と言われていますが、果たして日本の 法人税率って、他国と比較して、高いのでしょ うか? ■ 租税特別措置によるさまざまな優遇税制 の損金算入 ●株式発行差金への非課税 ●受取配当金益金不算入 ●連結納税 主要大企業の実際の税率は、様々な優遇税 制により低くなっています。更に法人税率を引 き下げても設備投資や賃金に回らないのが現 50 40 企業が日本に進出すると思いますか? 30 ■ 国・地方をあわせた法人税率 国名 (2015年4月現在) 29.6 24.6 14.1 7.9 20.6 20.4 17.7 4.5 4.1 2.2 S自動車 I自動車 K社 A製薬 K製作所 I商事 D社 N自動車 (注)法人3税(国税の法人税、地方税の住民税、事業税)の負担率 5年間の税負担額を5年間の税引前当期純利益で割って負担率を掲載 20.1 14.2 14.4 10.1 0.7 H工業 0 21.2 15.2 15.7 10 30.2 24.9 21.5 M物産 32.11% 40.75% 33.33% 29.66% 25.00% 28.7 C社 中国 37.6 34.8 M商事 ドイツ 49.6 40.5 T自動車 実効税率 アメリカ フランス 20 2005~09年度の負担率 2010~14年度の負担率 主要大企業の税負担率 (%) 実です。 また、法人税率を引き下げれば海外の 日本 ●海外投資等損失準備金など ●試験研修費の税額控除 資料:各企業の個別損益計算書による。単位:億円、 % 出典:菅隆徳 税理士が作成した資料より 6 法人税率引き下げの代替財源に「外形標準課税」 ? 従業員給与に課税する外形標準課税は現在、 「資本金1億円を超 労働分配率 (%) 90 える」企業に課せられています。 この外形標準課税の中小企業への 適用拡大は「雇用の維持を困難」にし、 「賃金引き上げ」を抑制し ます。政府が取り組んでいる、賃金引き上げの流れにも逆行です。 80 法人税を引き下げた場合の税収減を、 この外形標準課税の中小企 70 業への適用拡大によって補おうとしているという指摘もあります 60 が、公平な税制に戻せば、5兆円の財源がうまれます。 50 ※労働分配率とは、 「人件費÷付加価値」、つまり企業の儲けの内、人件費の配分比率のことです。 小規模な企業ほど、 労働分配率 (=人件費の割合)が高い 84% 78% 69% 56% 小規模企業 中小企業 中堅企業 大企業 (2013年) 出典:財務省「法人企業統計」 より作成 7 消費税率を10%以上に? ~直接税(所得税・法人税) と間接税(消費税) のあり方も考えましょう~ ■ 消費税の実質負担 私たち消費者は、買い物のたびに8%の消費税を支払っ ています。 お店や会社はその消費税を一旦預かり、後日まと 主要税目の税収の推移 (%) 30 消費税3%導入 消費税5%増税 めて納めることになっています。 しかし市場の力関係の中で は、 たとえ消費税率が上がっても、販売価格に全て転嫁でき 25 ないこともあります。 その場合は、転嫁できなかった分の消 費税を、 お店や会社が負担することになってしまいます。 ■ 消費税増税は必要でしょうか? 消費税は広く、薄く、 「 公平」に負担する税といわれます 20 21.4兆円(所得税) 所得税 19.0兆円(法人税) 15.3兆円(消費税) 15 が、実際には低所得者ほど負担が重くなります。 デフレ経済脱却をめざして実行されたアベノミクスは、 そ の成果が一部の大企業や大都市部などに限定され、中小企 業や地方ではむしろ状況は厳しくなっています。 このような 中で、既定路線のように、税率アップを実行すれば、デフレ 14.8兆円(所得税) 10 5 3.3兆円(消費税) 克服はおろか、 ますます国民の生活は厳しく、地域経済は疲 弊することが予想されます。 また、軽減税率を導入すれば、 企業の負担も多くなります。 消費税 0 10.0兆円(法人税) 法人税 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (注)2012年度以前は決算額、13年度は補正後予算額、14年度は予算額 出典:財務省「財務統計」 より作成 中小企業憲章(2010年6月18日閣議決定) 中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。 (中略)政府が中核となり、国の総力を挙げ て、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、 自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支 え、 そして、 どんな問題も中小企業の立場で考えていく。 これにより、中小企業が光り輝き、 もって、安定的 (前文より一部抜粋) で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、 ここに中小企業憲章を定める。 中小企業家同友会全国協議会 〒102-0074 東京都千代田区九段南4-7-16 市ヶ谷KTビル3F TEL 03-5215-0877 FAX 03-5215-0878 http://www.doyu.jp/ http://www.doyu.jp/ 中同協 各都道府県に中小企業家同友会があります。各連絡先は ウェブサイトに掲載しています。 アクセスしてください。
© Copyright 2024 Paperzz