本文は - 化学と生物

セミナー室
広がるオートファジーの世界-5
オートファジーによる細胞内侵入性細菌の認識機構
前島郁子 *1, 3,吉森
保 *1, 2, 3
*1 大阪大学大学院医学系研究科,*2 大阪大学大学院生命機能研究科,*3 科学技術振興機構 CREST
入性細菌の感染経路と,細菌感染におけるオートファ
はじめに
ジーの誘導メカニズムについて解説する.
病原性細菌がマクロファージなどの貪食細胞によって
ファゴサイトーシスによって捕らえられ排除されること
はよく知られているが,上皮細胞などの非貪食細胞にお
細胞内侵入性細菌に対するオートファジー
いても細胞内に侵入した細菌を排除する仕組みが備わっ
エンドサイトーシス/ファゴサイトーシス経路を介し
ている.一つはエンドサイトーシス経路であり,上皮細
て侵入してきた細胞内侵入性細菌は,オートファジーに
胞にエンドサイトーシスを介して侵入しようとした細菌
よる捕獲・分解,オートファジーの回避,もしくはオー
は最終的にエンドソームによってリソソームへ運ばれて
トファジーを利用して増殖する,の 3 つの運命のどれか
分解されることになる.しかし,ある種の細胞内侵入性
をたどることになる.オートファジーを回避する細菌と
細菌はエンドソーム膜を破って細胞質中に脱出するなど
してはリステリア(
細胞内での生き残りを図ろうとすることが知られてい
菌(
た.2004 年 に 細 胞 質 中 に 逃 れ た 溶 血 性 A 群 連 鎖 球 菌
殖するものとしては歯周病菌(
(Group A
)がオートファジーによって捕
獲・分解されることが発見されたことにより,細胞には
エンドサイトーシス経路以外にも細胞内侵入性細菌に対
(1)
抗する術が備わっていることが明らかとなった .この
(2, 3)
)
や赤痢
(4)
)
,オートファジーを利用して増
(5)
)
,レジオネラ(
)
,腸炎ビ
ブリオ(
)やペスト菌(
)などが挙げられるが,ここでは主にオートファ
ジーによって捕獲・分解されるものについて述べる.
発見により,それまで主に栄養飢餓時の恒常性維持に重
細胞内侵入性細菌のオートファジーによる分解経路
要であると考えられてきたオートファジーに,生体防御
は,1)細胞質内での捕獲・分解,2)エンドソームごと
機能という新たな一面が付け加えられることになった.
の捕獲・分解,3)ファゴソーム内で捕獲・分解,の 3
このような細胞内に侵入した病原体に対する選択的オー
つのパターンに分類される.
トファジーはゼノファジー(xenophagy)と命名され,
細胞質内で捕獲・分解される細菌としては,上述の溶
現在までにオートファジーは細菌,ウイルス,原虫など
血性 A 群連鎖球菌に加え,黄色ブドウ球菌が存在する.
を標的とし,それらを分解もしくは増殖抑制する能力を
A 群連鎖球菌はヒトに急性咽頭炎などを引き起こすグラ
もつことが明らかになりつつある.本稿では,細胞内侵
ム陰性球菌で,上皮細胞にエンドサイトーシス経路を介
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化学と生物 Vol. 52, No. 10, 2014
サルモネラ産生タンパク質を注入する.エフェクター分
子は,宿主タンパク質の機能を真似ることで細胞骨格を
構成するアクチンを再構成させ,サルモネラ菌付着周囲
の細胞膜の変形を促し,エンドサイトーシスによる菌の
取り込みを促進する(8, 9).サルモネラ菌を含むエンド
ソームは SCV(
-containing vacuole)と呼ば
れ,通常のエンドソームと同様に成熟していくが,リソ
図1
■
ソームとの融合は回避するので菌は分解を逃れる.サル
A 群連鎖球菌を隔離するオートファゴソーム
(a)オートファゴソームマーカーである LC3 によって取り囲まれ
ている A 群連鎖球菌.飢餓誘導で見られるオートファゴソーム
(通常直径 1 μm)よりも巨大なオートファゴソームが形成される.
スケールバー:2 μm.(b)細胞質中に脱出した A 群連鎖球菌の菌
塊を隔離しているオートファゴソームの電子顕微鏡像.スケール
バー:1 μm.
モネラは SCV 内で増殖するが,一部の菌は感染初期に
して取り込まれ,エンドソーム膜に結合して孔をあける
る(10).一方,オートファジー能を欠損させたマウス線
溶血毒素ストレプトリジン O(SLO)を分泌することに
維芽細胞では細胞内でのサルモネラの過剰増殖が起こる
より,エンドソーム膜を破壊し,細胞質中へと脱出す
ことから,オートファジーがサルモネラの増殖抑制に重
る.オートファゴソーム形成に必須のオートファジー関
要であることがわかる.サルモネラは SCV を抜け出し
連遺伝子(autophagy-related gene)Atg5 を欠損した細
て細胞質中に脱出することがあるため,連鎖球菌や黄色
胞に A 群連鎖球菌を感染させたところ,正常細胞では
ブドウ球菌のように,そのような菌がオートファジーの
多数観察された巨大なオートファゴソームに包まれた菌
標的になっていると考えられていた.しかし,光‒電子
が全く観察されず,また細胞内での菌の増殖が抑制され
相関顕微鏡法(CLEM)を用いた解析によって,オート
なかったことから,細胞質中に脱出した A 群連鎖球菌
ファゴソームマーカーである LC3 に包まれているサル
はオートファジーによる分解を受けていることが示され
モネラを電子顕微鏡で観察したところ,ほとんどのサル
た(1)
(図 1).
モネラは一重膜の SCV に包まれたままの状態で,二重
SCV を破って細胞質中へ抜け出し,そこで増殖するこ
ともある.マウス繊維芽細胞を用いた実験では,感染後
1 時間で細胞内に侵入したサルモネラの約 40% がオート
ファゴソームによって包み込まれることが報告されてい
)は,ヒトの
膜構造体であるオートファゴソームによって捕獲されて
皮膚表面などに存在する常在菌で,通常は無害であるが
いることが判明した(11).さらに,オートファゴソーム
化膿症や重篤化した場合には髄膜炎や敗血症を引き起こ
の標的になるのは,損傷した膜のマーカーとなる Galec-
すことが知られている.この黄色ブドウ球菌も A 群連
tin-3(後ほど説明)が集積した SCV のみであることが
鎖球菌と同様に,細胞内で巨大なオートファゴソームに
判明した.つまり,エンドソーム内に取り込まれたサル
黄色ブドウ球菌(
(6)
包み込まれ,分解されることが報告されている .興味
モネラは III 型分泌装置を突き刺すことでエンドソーム
深いことに,A 群連鎖球菌や黄色ブドウ球菌を捕獲する
膜を損傷させ,それが引き金となって(サルモネラの細
ために形成されるオートファゴソームは飢餓時に誘導さ
胞質中への脱出を待たずに)オートファジーを誘導して
れるもの(通常直径約 1 μm)よりもはるかに巨大なも
いると考えられる.
のとなる.この A 群連鎖球菌の感染で誘導される巨大
3 つ目のグループであるファゴソームごと分解される
なオートファゴソームは,通常サイズのオートファゴ
細 菌 と し て は, 結 核 菌(
ソーム同士が次々と融合することで形成され,その融合
があげられる.結核菌はマクロファージなどのファゴ
のステップには飢餓誘導性のオートファゴソームの形成
ソーム内に取り込まれた後,通常はファゴソームとリソ
には必要でない Rab7 が関与していることが示されてい
ソームの融合を阻害することで分解を免れ,増殖する.
(7)
)
マクロファージが結核菌を取り込んだだけではオート
る .
次に損傷したエンドソームごと捕獲・分解される細菌
としては,食中毒の原因菌であるサルモネラ(
serovar. Typhimurium)が挙げられる.サ
ルモネラはグラム陰性桿菌の一種で,腸管粘膜上皮に付
ファジーは誘導されないが,飢餓条件下に置かれた場合
に,飢餓によって誘導されたオートファジーがファゴ
ソームを包み込み,結核菌を分解することが報告されて
いる(12).
着すると注射針のような III 型分泌装置を突き刺し,宿
主細胞内に Sop, Sip などのエフェクター分子と呼ばれる
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モネラを包む SCV がユビキチン化されていることが明
オートファジーによる細胞内細菌の認識機構
らかとなった.また,ユビキチン活性化酵素である E1
飢餓によって誘導されるオートファジーが非選択的に
酵素阻害剤によって,細胞内のユビキチン化反応を阻害
細胞内成分を隔離・分解するのに対し,細菌感染で誘導
したところ,Galectin-3 陽性のエンドソーム膜上へのユ
されるオートファジーは細胞内に侵入した菌のみを特異
ビキチンとオートファゴソーム形成に必須の 6 つの Atg
的に標的として隔離する選択的なものである.では,こ
複合体の局在化が抑制されたことから,ユビキチン化は
の選択性はどのようにして獲得されているのだろうか?
オートファジーのマシナリーを細菌へリクルートするた
オートファジーが選択的に隔離する対象は細菌だけでは
めに重要な役割を果たしていると考えられる.トランス
なく,ミトコンドリアやペルオキシソームといった細胞
フェクション試薬によってエンドソーム膜が損傷するメ
内小器官や凝集性タンパク質も標的に含まれる.これら
カニズムは明らかにはなっていないが,サルモネラの場
がオートファゴソームマーカーである LC3 に取り囲ま
合は III 型分泌装置によってエンドソーム膜を損傷させ
れるときにはユビキチン化されていることから,ユビキ
るため,その膜がユビキチン化されることでオートファ
チンは選択的オートファジー全般における重要なタグの
ジーによる認識を受けていると考えられる.サルモネラ
一つであるとみなされ,ユビキチン化された対象物にユ
だけでなく,A 群連鎖球菌や黄色ブドウ球菌のように細
ビキチンと LC3 の両方に結合可能な p62, NBR1, NDP52
胞質中に脱出するような菌の場合,脱出した菌体自身が
やオプティニューリンなどのアダプター分子が結合する
認識されている可能性と菌周囲に付着した脱出したエン
ことで LC3 がリクルートされ,オートファゴソームが
ドソーム膜の残骸が認識されている可能性が考えられ
(13〜17)
る.また,宿主の膜成分を認識するという点から,エン
しかし,ユビキチンが細胞内侵入性細菌に対するオート
ドサイトーシス経路を利用する菌だけでなく,ファゴサ
ファジーにおいてどのような役割を果たしているのか,
イトーシスを利用する菌でも同様のことが起こっている
ユビキチン化されている基質が何なのかは不明のままで
のかもしれない.
形成されるアダプターモデルが提唱されている
.
(18)
あったが,これらの疑問に対して藤田ら
はサルモネ
では,オートファジーはどのようにしてユビキチン化
ラとラテックスビースの系を用いて一つの解答を示し
された基質を認識しているのだろうか?
た.
デルでは基質上のユビキチンに,p62 などのアダプター
アダプターモ
上述のようにサルモネラの一部は細胞質中に脱出する
分子が結合すると LC3 のリクルートが起きると考えら
ため,むき出しになった菌表層タンパク質が直接ユビキ
れ て い る.し か し, オ ー ト フ ァ ジ ー 能 に 必 須 であ る
チン化されるか,あるいはユビキチン化タンパク質が菌
Atg7 欠損細胞では LC3 の局在は起こらないにもかかわ
に付着することでオートファジーの標的になると考えら
らず,ほかの Atg タンパク質のリクルートと隔離膜の部
れてきた.しかし,トランスフェクション試薬でコー
分的な形成が観察された(11).このことから,アダプ
ティングし,エンドサイトーシスで取り込まれるように
ターモデルだけでは基質の認識機構の説明は不十分であ
したラテックスビースを細胞に取り込ませたところ,エ
ることが示唆される.オートファジーに必須の 6 つの機能的
ンドソーム膜に包まれたビース周囲にユビキチンと p62,
Atg 複 合 体;1)Uncoordinated 51-like kinase 1(ULK1)
LC3 が局在する様子が観察され,さらにこの LC3 陽性の
複合体,2)ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ複
エンドソーム膜は Galectin-3 陽性であることが明らかと
合体,3)Atg9L,4)WIPI 複合体,5)Atg5-12-16L1 複
なった(18).Galectin-3 は細胞質中に存在するβ-ガラクト
合体,そして,6)LC3 結合系の各因子を欠損させた細
シド結合性のレクチンの一種で,エンドソーム膜が損傷
胞を用いて,菌感染による損傷エンドソーム膜への Atg
した場合にのみ膜内腔側に存在する糖鎖と結合するた
の局在化の階層構造を網羅的に解析したところ,ULK1
め,膜損傷のマーカーとされている.ラテックスビーズ
複合体,Atg9L,Atg5-12-16L 複合体はそれぞれ独立に
にはタンパク質成分は存在しないため,ビーズ周囲で起
ユビキチン化された損傷エンドソームに局在すること,
きたユビキチン化は損傷したエンドソーム膜上で起きて
Atg5 欠損細胞では損傷エンドソームへの LC3 の局在化
いるものであることが示唆される.実際,ビーズを単離
が有意に減少したことから,LC3 のリクルートは Atg5-
すると周囲のエンドソーム膜上のトランスフェリンレセ
12-16L1 複合体に依存していることが明らかとなった.
プターなどのタンパク質がユビキチン化されていること
また,リクルートのタイミングを見ると,LC3 より先に
が確認されている.サルモネラを感染させた場合でも同
すべての Atg タンパク質が局在化していた(18).つまり,
様の結果が得られたことから,菌体表面ではなく,サル
エンドソーム膜が損傷によってユビキチン化されると,
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細胞膜
WIPI1
菌
LC3
図 2 ■ オートファジーによる細胞内
侵入性細菌の認識モデル
Atg14L
エンドサイトーシス/ファゴサイトーシス
Atg16L
ULK1
Atg9L1
ユビキチン
エンドソーム膜の損傷
(a)
(b)
LC3
p62
p62
Ub
Ub
p62
LC3
Ub
p62
LC3
Ub
p62
Ub
p62
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
Ub
(a)従来のアダプターモデル.エン
ドソーム/ファゴソーム膜から脱出
した細菌がユビキチン化されると,
そこに p62 などのアダプター分子が
結合することで LC3 がリクルートさ
れ,菌周囲にオートファゴソームが
形成されると考えられてきた.しか
し,最近の研究により,細菌によっ
て損傷を受けたエンドソーム膜のユ
ビ キ チ ン 化 が 引 き 金 と な っ て,Atg16L 複合体,ULK1 複合体,Atg9L1
がそれぞれ独立にリクルートされる
ことでオートファゴソーム形成が起
こることが判明した(b).
ア ダ プ タ ー 分 子 に よ る LC3 の リ ク ル ー ト よ り も 先 に
ULK1 複合体,Atg9L,Atg5-12-16L1 複合体のリクルー
トが起こっていることが示唆される(図 2)
.これらの
因子が基質にリクルートされるメカニズムだが,少なく
とも Atg5-12-16L 複合体については,変異体を用いた実
験の結果より,Atg16L1 が C 末端側の WD リピートドメ
インでユビキチンと,さらに N 末端側の coiled-coil ドメ
インで ULK1 複合体の構成因子である FIP200 とそれぞ
れ直接結合することによってユビキチン化された基質に
リクルートされているものと思われる.
損傷したリソソームに対するオートファジー
図 3 ■ オートファゴソームによって隔離される損傷リソソーム
尿酸を投与した正常マウスの腎臓(尿細管)細胞内では,一重膜の
リソソームが二重膜のオートファゴソームによって隔離されている
様子が多数観察された.矢頭:オートファゴソーム,アスタリス
ク:リソソーム,Mt:ミトコンドリア.スケールバー:1 μm.
細菌感染/ビースのトランスフェクションによって損
傷したエンドソーム膜だけでなく,リソソーム膜も損傷
れている像が多数観察された(図 3)
.腎尿細管特異的
時にはオートファジーの標的となることが報告され,リ
に Atg5 を欠損させたマウスではリソソームのユビキチ
ソファジー(lysophagy)と命名された(19, 20).リソソー
ン化は見られたもののオートファゴソームによる隔離は
ムをシリカや薬剤,光刺激などを用いて実験的に損傷さ
観察されず,腎組織の傷害が悪化したことから,オート
せたところ,Galectin-3 で標識された損傷リソソームに
ファジーによる損傷リソソームの除去は高尿酸血症によ
ユビキチン,p62,Atg タンパク質が集積し,リソソー
る腎障害の病態悪化を抑制するのに重要であることが示
ム膜周囲にオートファゴソームが形成されている様子が
されている.
電子顕微鏡レベルで観察された.正常な NIH3T3 細胞で
は Galectin-3 陽性の損傷リソソーム数が経時的に減少し
24 時間以内に消失したのに対し,オートファジー能欠
今後の展望
損細胞では損傷リソソームの減少はほとんど見られな
宿主細胞は日々侵入を試みてくる多種多様な細菌から
かったことから,損傷リソソームの隔離・排除にオート
オートファジーを利用してその身を守っている.この
ファジーが重要な役割を果たしていることが示唆され
オートファジーを介した宿主細胞対細菌の攻防の機構解
た.また,野生型マウスにリソソーム膜を損傷する尿酸
明は,2004 年に発見されて以来活発な研究の対象であ
結晶の形成を引き起こす高尿酸血症を誘発させたとこ
り続けている.これまでの研究では,細胞質中に脱出し
ろ,腎臓の尿細管細胞においてリソソーム膜がユビキチ
た細菌がユビキチン化されているとする説が有力であっ
ン化され,選択的にオートファゴソームによって隔離さ
たが,損傷されたエンドソーム膜ごとオートファジーの
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標的になっている証拠が示されつつある.この場合,
オートファジーは菌の有無とは関係なく,ただ損傷した
エンドソーム膜を処理しようとして発動し,結果的に菌
の除去にも貢献しているだけなのかもしれない.さまざ
まな細菌がエンドソーム膜を損傷する機能をもっている
こと,そのような菌体表面の分子には共通性が乏しいこ
と,エンドソームだけでなくリソソーム膜も損傷時には
オートファジーの標的になることもこの説を支持するの
ではないだろうか.最新の研究によって,従来のアダプ
ターモデルにかわるオートファジーの基質認識機構の一
部も解明されてきており,その全容の解明が待たれる.
生体内において,リソソーム膜の損傷は尿酸結晶だけ
でなくコレステロール結晶や 2 型糖尿病を引き起こすヒ
ト IAPP,アミロイドタンパク質,活性酸素種などに
よっても起こることが知られている.このことから,リ
ソファジーが糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病や炎症
性疾患の抑制に広範に機能している可能性が示唆されて
おり,リソファジーの分子メカニズムおよびこれら疾患
との関連について解析が進むことで新たな予防治療法の
開発につながることが期待される.
文献
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プロフィル
前島 郁子(Ikuko MAEJIMA)
<略歴> 2007 年日本獣医生命科学大学獣
医学部獣医学科卒業/獣医師免許取得後一
年間動物病院に勤務した後,吉森研に博士
課程の学生として弟子入りさせていただき
一から鍛えてもらう.学位取得後,半年間
ポスドクとして在籍の後,4 月からは群馬
大生体調節研細胞構造分野(佐藤研)で新
しいテーマに取り組む予定です<研究テー
マと抱負>リソファジーの分子メカニズム
と 2 型糖尿病などの生活習慣病との関連に
ついて研究中です<趣味>読書,映画鑑賞
吉 森 保(Tamotsu YOSHIMORI)
<略歴>大阪生まれだが東京都立竹早高
校卒で,東京弁と大阪弁のバイリンガル.
1981 年大阪大学理学部生物学科卒業/同
大学院医学研究科に進み,細胞工学セン
ター初代センター長の岡田善雄先生に師
事.関西医科大学の助手となり,その間
にドイツハイデルベルクの EMBL に 2 年間
留学.一貫してメンブレントラフィックの
細胞生物学的研究に従事(2013 年のノー
ベル医学生理学賞はこの分野の大御所に).
オートファジー研究のパイオニアである大
隅良典先生(現東工大)が,1996 年に基
礎生物学研究所にて研究室を立ち上げられ
たときに助教授として招かれ,オートファ
ジー研究を開始した.2002 年後国立遺伝
学研究所教授として独立,大阪大学微生物
病研究所教授を経て現在,同大学院医学系
研究科教授と生命機能研究科教授を兼任.
あちこちを転々としてきた流浪の人生.別
名 Prof. A. Hill.
Copyright © 2014 公益社団法人日本農芸化学会
化学と生物 Vol. 52, No. 10, 2014