交通水道消防委員会資料 平成28年12月 交 通 局 地下鉄烏丸線で発生した輸送障害におけるコンプレッサー故障の原因について 平成28年8月10日(水) ,地下鉄烏丸線北大路駅停車中の列車の2台のコンプレッサ ーが故障して発生した輸送障害事案につきましては,8月12日(金)の交通水道消防委員 会で御報告したところでありますが,両コンプレッサーの故障原因が判明しましたので,改 めて御報告いたします。 1 コンプレッサーの故障原因 (1)整備事業者(三菱電機株式会社)が故障した2台のコンプレッサーを詳細に調査した ところ,両コンプレッサーともにモーター部分に焼けた跡がありました。モーターを調 査すると,2台ともモーターが焼き付いており,ブラシという部品(別紙1参照)が異 常に摩耗するという事象が生じていたことが分かりました。 (2)事象発生の原因について整備事業者が様々な検証を行った結果,10月13日付けで 次のとおり報告がありました。 ア 報告によると,要因として次の3点があげられています。(別紙2参照) ① ブラシと接触して電流を受ける整流子という部分の整備において,ブラシとの接触 を円滑にするために接点の角の面取りを行っているが,ほとんどの整流子の接点が基 準の標準値(0.5mm)より0.1mm大きく削られ,0.6mmとなっていた。 このため,接点の面積が小さくなり,ブラシから受ける電流密度が大きく,火花が飛 びやすい状態となっていた。 ② ブラシを固定するブラシ保持器箱とブラシとの間の隙間が,通常0.15mmのと ころ,先端部においては摩耗により0.5mmとなっていたためブラシに僅かにガタ つきがあり,火花が飛びやすい状態となっていた。 ③ ブラシを整流子面に正しく接触させるためにブラシを押えているコンタクトチッ プという部品の表面に1mmの僅かな磨耗があったため,ブラシを押さえる方向に偏 りがあった。 イ いずれも,整備事業者における整備基準の範囲内であり,単独または2つ重なっても 異常は起こらないが,3つの要因全てが重なった上に走行時の振動が加わることによっ て,整流子とブラシの間に大きな火花が連続して発生することを確認したということで した。 ウ よって,整備事業者は,同時期に整備した2台のコンプレッサーの故障原因について, ① 両コンプレッサーともに,3つの要因が重なったことでモーター内に連続発生した 大きな火花の熱によって,ブラシが徐々に磨耗していった。 ② その後,摩耗が限界まで達してブラシが整流子面に接しなくなった結果,電流がモ ーター内の広い範囲に放電して正常な回路に流れなくなり,モーターが停止した。 という結論に至りました。 1 エ なお,整備事業者によると,輸送障害事案発生前に分解検査後の最終動作試験を行っ ているが,コンプレッサーを地上に据えて行っていたため,振動の要素がなく火花が発 生しなかったことから,不具合が判明しなかったとのことです。 (3)交通局では,この報告を受け,報告内容を点検,確認した結果,今回の事案は整備事 業者の整備基準に問題があったと判断し,再発防止に向け,整備基準の見直しを整備事 業者に指示しました。 2 対策 (1)整備事業者に対し,同様の不具合が二度と起こらないように次のとおり整備基準の見 直しを行わせ,本年11月以降は新たな整備基準の下でコンプレッサーの整備を実施さ せています。 ○整備基準の変更内容 項 目 旧整備基準 新整備基準 標準0.5mm 標準0.4mm 最大0.6mm 最大0.5mm ブラシ保持器箱の先端部のブラシとの隙間 基準無し 0.4mm以下 コンタクトチップの摩耗 基準無し 0.8mm以下 整流子の接点の面取り 地上に据え置いて コンプレッサーの最終動作試験 実施 振動を考慮し,車両 に搭載したのと同 じ状態で実施 (2)今回の原因特定後,交通局では整備事業者に指示して,故障したコンプレッサーと同 型機種(9編成分)のモーターの整流子面を詳細に点検しており,接点の角の面取りが 基準の標準値(0.5mm)にあることを確認しています。また,コンタクトチップ及 びブラシ保持器についても,目視及び手で触って摩耗やガタつきなどの異常がないこと を確認しています。このことから,同型機種において同様の故障は起こらないものと判 断しております。 念のため,事案発生直後より,10日ごとの列車検査において,これまで実施してい なかったモーターのブラシ摩耗状態の確認を追加して行っておりますが,摩耗などの異 常は全くなく正常に稼働しています。 (3)同型機種のコンプレッサーのモーターは,現状で問題はありませんが,今後相当期間 使用することを考慮して,今回事案の要因となったブラシ保持器及びコンタクトチップ を新しいものに交換し,安全運行に万全を期してまいります。 なお,当該部品はモーターの形式が古く,製造元に在庫がないことから,現在一から 製造に取り掛かっており,平成29年9月頃までに交換してまいります。 2 (参考)8月10日(水)発生の輸送障害事案の概要 ○ 平成28年8月10日(水)12時14分頃,地下鉄烏丸線北大路駅に停車中の竹田行き列 車のブレーキが解除できず走行不能となったことから,烏丸線全線の運転を見合わせることと なりました。その後,当該列車を後続列車の駆動力を利用して竹田車両基地まで運搬し,1時 間13分後の13時27分に運転を再開しました。 ○ 走行不能となった原因は,空気圧を利用した列車のブレーキの空気タンクに圧縮空気を送り 込むコンプレッサー(空気圧縮機)が故障した結果,空気ブレーキに十分な圧縮空気を供給で きなくなったため,安全装置が働いて非常ブレーキが解除できなくなったことです。コンプレ ッサーは当該車両に2台ありましたが,2台とも故障しておりました。 ○ 事案発生後,コンプレッサーの製造元かつ整備事業者である三菱電機株式会社と連携し,烏 丸線の全列車のコンプレッサーを緊急点検し,他の全てのコンプレッサーに異常がないことを 確認しました。その後,整備事業者において故障した2台のコンプレッサーの故障原因を究明 していたものです。 3 (別紙1) 10 系 車 両 姿 写 真 電動機部 メッシュカバー コンプレッサー(電動空気圧縮機)本体 ブラシ押さえの コンタクトチップ 電動機 整流子部 ブラシ ブラシ保持器箱 整流子 メッシュカバーを外したところ 拡大(整流子部) (別紙2) モーターのブラシ周辺の模式図 ③ ブラシ押えのコンタクトチップの 僅かな磨耗(約1.0㎜) ② ブラシ保持器箱とブラシ間の 僅かな隙間(約0.5㎜) ① 整流子面の 僅かな面取り不良 整流子面幅:2.0㎜ 面取標準値:0.5㎜ 面取最大値:0.6㎜ 【モーターが回る仕組】 ・モーターの回る仕組は,ブラシから整流子に電気を流すことで周囲にある電磁石の 磁界の中で反発する力が発生し,接触している整流子が移動します。次々と接触して いる整流子が入れ替わることで回転する動きとなります。 ・ブラシと整流子が適切に接触しないと火花が飛びやすくなります。
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