テーブルウェアの分類の仕方

92 食空間をつくる
7–1 テーブルウェア・食器とは
テーブルウェア(食器)の基本 93
というものを、「器」という狭い範囲でしめすのか、「テーブルウェア」
という広い範囲を示すのか、の違いとなって表れています。
「食器」とは字の如く「食べる時に使う器」という意味と、「食べる事
に必要な、食卓まわり全ての物」という意味があります。前者の場合は、
食器(ここではテーブルウェア)の中の一番中心は、食べる時に使う
「器」と考えて、「食事を盛る容器」に限られますが、後者の場合は、ス
食器としての器、食べる手の役割のカトラリー、そしてテーブルリネン
プーン・フォークや箸などのカトラリー、テーブルクロス、ナプキンや
です。(テーブルリネンは西洋スタイルの食卓に存在するもので、日本
ランチョンマットなどのクロス類、食卓の上に置く小物類、花器や壷な
の従来の食卓にはほぼ存在しません。しかし、日本の食生活の変化によっ
どのインテリア用品、キッチン用品なども、食器の一部として考えます。
て、現在では必要なものになっています) これらには、様々な素材や
(デパートの食器売り場を思い浮かべてください。)
食器の事を英語では「テーブルウェア Tablewear」と言いますが、
まさに後者の意味であり、食卓の上の世界全てをトータルに食空間とし
て考える、西洋(ヨーロッパ)の食生活文化を表現した言葉です。
日本の一般家庭生活では、長い間、「食住同一」という生活が基本に
特徴、役割があり、現在に至るまでの歴史があります。それを知ること
や興味を持つことが、「楽しい食卓」を作り出す第一歩になります。
テーブルウェアの分類の仕方
テーブルウェアの分類の仕方は、「素材や作り方」によるものと、「用途別」の 2 つが
組み合わされています。この『第2編 食卓を楽しむ』では、少し判りにくいテーブルウェ
アの分類を下記のようにしました。
なっていました。一つの部屋で、食堂、居間さらには寝室までを兼ねる。
テーブルウェア
食空間に必要な全てのもの
という住空間の使い方です。「何人かで一つの食卓を囲む」という事が
一般的になってきたのも、現代になってからの事です。食卓が一般的に
なる以前の日本は、「一人用の膳」を食卓として、各自が各自のスペー
食器・器
陶磁器・やきもの
土物・石物
スで食事をする形態でした。一方、西洋の食卓スタイルは、食事専用の
グラス
世に入ってからで、それまでは、センターの大皿に料理が盛られている
ガラス製品
置かれていました。このような日本と西洋の生活様式の違いは、「食器」
「木瓜(もっこう)形」 楕円が 4 つにくびれたような形。おめでたい形(吉祥)です。
きゅうりの断面に似ているから木瓜という説も。
銀・金属製品
テーブルリネン
するというものです。ひとりひとりにサービスするようになったのは近
かに美しく、いかに豪華に大きくテーブルを飾るか、という事に重点が
カトラリー
シルバー・メタル
食べる時に手の
代わりになる道具
部屋(ダイニングルーム)で、一つの大きなテーブルを皆で囲み食事を
ものでした。そのスタイルは王侯貴族たちの会食のスタイルですが、い
料理や飲み物を
盛るもの全般
食卓に登場する
布類全般
その他の小物類
食卓に登場する
小物類
その他の素材
天然・化学製品
「割山椒(わりざんしょう)」 山椒の実が弾けた様を図案化した鉢の形。
昔は秋の器でしたが最近では通年使われます。溝が正面にきます。
リネン
布製品
94 食卓を楽しむ
テーブルウェア(食器)の基本 95
7–2 やきもの・陶磁器とは
食器に触れる時の注意
日頃よく目にする、お皿やお茶碗、マグカッ
プなどのいわゆる食器は、土や石を砕いて成型
して焼いたもので、総称して「やきもの(焼き
物)」「陶器」「陶磁器」と言われています。ま
せ
と もの
た和食器では、大きな産地名で、「瀬 戸 物 」と
も言われます。この名称の使い方に決まりはあ
まりなく、耳に馴染んだ言い方を各自が使っているのが一般的です。こ
の「やきもの」には大まかに 2 種類あり、土から作るものを「土もの
食器は硬くても傷つき易いもの。お店に買い物に行く時や、よそのお宅へ伺った時は、
下記の点を注意して取り扱いましょう。
■アクセサリーを付けて器に触ると、硬い部分があたってキズ付けることがあります。
指環、ブレスレット、ペンダントは要注意です。
■ポットなどの蓋のあるものは、蓋をおさえるか外して触りましょう。つい裏側を見た
くなってしまう時によく事故が起こります。
■他の器の上に置いてはいけません。どうしても重ねる必要がある場合は、クッション
になるものを挟みましょう。グラス、薄作り、絵付の器は要注意です。
■陶器を漆器と重ねてはいけません。特に新品の漆器は、あっという間に傷が付きます。
■上絵付は扱いによっては傷ついたり剥離してしまう事があります。マット釉、鉄釉は、
手の汗や汚れが器に移ります。金彩銀彩は黒ずんだら磨きましょう。
せっ き
→陶器・土器・炻器など」、石から作るものを「石もの→磁器・ボーンチャ
イナなど」と言います。ここで挙げた、陶器、磁器、炻器、土器、ボー
ンチャイナは、「やきもの」の種類で、成分の違いはもちろん、作り方、
扱い方、特徴が全て違います。
「やきもの」と「陶磁器」という名称の使い方には、
特に基準はありません。どちらか一つに統一して使う場
合もありますし、それぞれに意味を持たせて両方を使い
分ける場合もあります。本書でも、この二つの言い方を
その時の状況により使い分けています。また「やきもの」
は、「焼き物」「焼物」と書かれている書籍なども多くあ
ります。どれも間違いでは
英語でもややっこしいね。
陶磁器 ceramics.crockery.pottery and porcelin
陶 器 pottery.ceramics.
磁 器 chinaware.china.porcelin
土 器 earthenware
炻 器 stoneware
なく、決まりもありません。
ただし本書では、料理の調
理法の「焼物」「焼き物」と
紛らわしくなるので、「やき
もの」で統一します。
「片口(かたくち)」 昔は液体を甕から器や瓶に移すときに使いましたが今はデザインになっています。
口が左に向くように置きます。コレクターもいるほど人気のデザインです。
茶碗の部分名称
(みこみ)
見込
口縁
(こうえん)
器の名称は、茶の湯の茶碗が基本になってい
口造り
腰
ます。日常食器には必要がない部分もあります
(くちつくり)
(こし)
が、日本文化の知識としてまとめて覚えておき
胴
(ちゃだまり)
高台脇
(どう)
茶溜り
ましょう。抹茶碗の部分名称ですが、鉢や皿も (こうだいわき)
高台
(こうだい)
ここに挙げた名称と殆んど共通しています。
■口縁(口造り) 器の口の周りをいいます。
高台内
高台畳付・糸切り
仕上げの仕方は、玉縁、反り、寄せ口などがあ
(こうだいうち)
(こうだいたたみつき)
ります。
■見込 器の内側全体を言います。赤絵の時は「見込み赤絵」と表現します。
■茶溜り 器の見込みの底に最後にお茶が溜る景色のことです。
■胴 器の外側の中央部分です。 ■腰 胴下部より、高台または底部までを言います。
■高台 底に付けられた台の部分。
■高台脇 腰から高台の間の部分です。ここで釉薬の流れが止まり(釉際)ます。
■高台畳付 他の器では「糸切り」といいます。テーブルやお膳に接触する、釉薬がかかっ
ていない部分です。置き場所を傷つけないように、綺麗に研がれているもの、安定した
ものを選びましょう。
■高台内 高台の内側。うっかり洗い残したり、拭き忘れたりしやすい場所なので、カ
ビや汚れに注意しましょう。
「足付(あしつき)」 器に足が付いたもの。どんな形でも足があれば足付です。三つ足の場合は、
手前に 1 本足が見えるようにおきます。持っているとちょっと嬉しい器です。