ベトナム国際家具&ハンドクラフトフェア訪問・取材報告書 訪問期間:10月4日~7日 株式会社 アイク ホームリビング 代表取締役 長島貴好 <ベトナム国際家具&ハンドクラフトフェア> ホーチミンで行われた同フェア並びに家具産業の状況を見ると、基本的には 経済発展が著しく見受けられた。2009年のGDP924億3900万㌦は インドネシア、シンガポールに次ぎ10カ国中6位で、2010年は推定93 1億㌦に達した、と思われる。ホーチミンの街並み、自転車からオートバイ、 車、バスへの交通手段が多くなり、アオザイ姿も消えて、合理的生活スタイル と同時に一般的に生活が向上してきた感じを受けた。宿泊したルネッサンス・ リバーサイドの裏通りに、家具でデンマークのボーコンセプトが2階建ての独 立したショールームを構えていた。近く隣接してシェラトンホテルがあり、こ の中に欧州の著名なブランドのショールームが連なっていた。観光客が対象と もみられるが、後、対談したヴィゴー・モルホルム社長は「人口900万人の 人口と今後非常に高い成長率が見込めるマーケットだ」と語った。 ショーの内容と日本市場への可能性 ショーは会場面積1万2000㎡、出展450企業(約500ブース)。内容 的には家具は少なくて数社に止まり、ほとんどがハンドクラフトの生活用品、 インテリア装飾品、玩具、土産物の手工芸品(木彫、竹細工ほか)で占め、一 部にテキスタイル、身飾品、鞄、財布類などの雑貨でまさにベトナムのドメス ティックな産品を総集した感じであった。 フェアの冠にした「家具」は、2011年9月の日本の通関統計でべトナム が中国に次いで2位の231億1638万円で、前年同期比3・8%増だった。 対して1位の中国は1521億6665万円、同1・2%減と縮小、3位台湾 が160億1638万円、同7・7%増と伸ばした。この背景に中国のコスト インフレ(原材料、人件費の高騰)、製品のリスク負担から、トータルでのコス トが多少高くても製品に安心感が持てる台湾、日系企業の著しい躍進を見せ、 中国よりコストが安いベトナムが、日本の流通・販売企業、メーカーの委託生 産(OEM)を増加させたとみられる。また、2011年6月、ホーチミンで フランスベッドホールディングスが日本の販売企業30数社を招いた家具の仕 入れ会を開催するなど、従来タイで行っていた仕入れ会からシフトするという ベトナム重視の動きが出てきたことも、対日輸出を伸ばした理由に挙げられる。 勤勉、手先技術の器用さといったベトナム人への評価を日本の家具業界が持っ ていることもプラスとなっている。 セミナーと出展製品の評価 10月6日午前10時からフェア会場内会議室で約70人が集まり、長島が 講師となって日本市場の現況とフェア出展製品の日本での販売について①可能 性②製品を販売するための手法③何が売れるかなど、3時間半に渡りスピーチ した。同時に東京インテリア家具(本社・東京)、安井家具(本社・名古屋)、 村内ファニチャーアクセス(八王子)ほか日本を代表する販売店の売り場、店 舗構造などの写真をスクリーンに映し、売り場、商品を説明した。 まず、初日の10月5日、会場を回った感想から次の前提で話した。 1、専門家として招かれた時、フェアの主催者 VIETRADE(ベトナム貿易促進 局)から、素材的にべトナム産の竹と籐を使用した家具の日本市場での 可能性について問われていたこと。 2、日本の家具販売店のビジネススタイルが、新業態の追求といった課題を 抱えて、チェーン展開または地場商圏販売に展開していること。 3、日本には現在、4つの主要ルートがあること。 以上の説明の中で、竹家具については日本の新旧のライフスタイルからみて、 素材のままでの活用はホームユースでは見込めない。台湾では竹を原料に床材、 テーブル材、アパレル、靴、バッグなど技術革新によって幅広く製品用途に使 用している現実を話した。したがってフェアにも竹家具の企業が一社出展して いたが、太いベトナム産の青竹をそのまま使用した家具はコントラクト(業務 用)として日本では限定されると指摘した。ホームユースには台湾同様、繊維 状か平板に接ぎ、エコ、グリーンをキーワードにデザインを生かした、新しい モデルを開発する必要がある。 また籐は世界的にPU(樹脂)が台頭、パリのメゾン・エ・オブジェでタイ のYOTHAKA社が、ワダアサシン(ウオーター・ヒヤシンス)の素材を使 った王室ご用達の製品以外に、PU使用の製品を出展していた。これが象徴す るように籐もアジア(中国)、アセアン、欧州でもPUが代替、市場価格への適 応や、加工上でのデザインの可能性を高めてきた。見た目は変わらないが、肌 触りでは感触が粗く、本来の籐、葦の持つきめの細かさ、フィット感に値いす るものはない。しかし、デザイン価値などの向上、生産効率など、ビジネス上 の採算メリットは望めるため、コントラクト、ニューインテリアショップルー トを通じた日本市場での販売は可能性がある。結論的には山川ラタンのインド ネシアへのシフト、日本での新法人による展開程度で一般的に家具店チャンネ ルでの扱いは無い。かって夏場の季節家具からニューインテリア商品へと矛先 を向けながら、今一つの感が否めない。これは、籐素材の原産国インドネシア、 またフィリピンに共通した課題でもある。 日本市場への進出について 今回のショーで出展した製品について、具体的に日本市場に進出できる製品 分野は「ホームファッション」 「ホームデコ」 「テーブルウェア」 「アクセサリー」 など、コーディネートした括りで既存の家具チェーン店、新業態のニューイン テリアショップを対象に、幾つかの日本商社または VIETRADE が主となった日本 向け商社を設立するなど、日本という独自市場への輸出体制が求められる。 家具とはまったく違った展開で、小物・雑貨商=インテリア商社(例えば名 古屋の藤栄、小倉の不二貿易ほか)のチャンネルがまずは具体的だ。家具イン テリア販売店の場合、小物、インテリアデコのコンテナ取り引きリスクを好ま ない。従って専門商社のルートがもっとも現実的なものとなっている。 一方、数十店をリージョナルまたはナショナル展開する家具インテリア販売 店は、自前で20,40フィートコンテナを取ることも可能だ。例えばフラン チャイズ展開するアクタスなど、貿易商社が間にはいるとはいえ、自社オリジ ナルでベトナムから商品を輸入販売する力はある。さらに加えれば、ジェフサ セントラルという会社がある。これは日本優良家具販売協同組合という日本を 代表するボランタリーチェーンの中核会社で、70店舗以上のショップを全国 に展開している。 整理すると①ホームファッション②ホームファニシング③インテリアデコ④ テーブルウェアに日本向け製品を括る。 チャンネル①は日本の特定の商社と組む②は VIETRADE などを主とした官民共 同の日本、アジア向け貿易商社を設立する③は日本のインテリアショップのフ ランチャイズ展開する企業と組む④は日本の有力な家具インテリアのボランタ リーチェーンと組む。 現商品で可能性があるのは①竹材、MDF、樹脂などを使用した華やかなデ ザイン、柄の花瓶、壺。②コントラクトを主とした青竹材使用のテーブル、チ ェア、水牛の角などを使用した身装品。③シルクに刺繍を施した繊維製品をイ ンテリア向けに(例えばホームウェア、壁面装飾品、ピロー、ベッドリネン用 など)の活用開発する。 最後にー 家具の日本市場進出について 今回のフェア訪問で数社の出展をみたが、ベトナムではまったく別の産業形 成をしている印象を感じた。実態として日本を始め欧米、アジア市場へのOE M生産であり、その産業の伸展である。日系企業もシギヤマ家具工業(福岡県 大川市)をはじめとして数を増し、日本市場への輸出は冒頭に挙げたように中 国に次いで2位の実績をあげるまでに至った。フランスベッドの仕入れ会など、 VIETRADE としても今後、支援、協力すべきだろう。 しかし、3年から5年のスパンで、メイドイン・ベトナムのオリジナルブラ ンドを創出し、ブランディングし、日本市場で独自のショップ展開をするに至 ることが望まれる。 以上
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