県立長崎シーボルト大学 情報メディア学科 ソムチャイ研究室 平成18年度 卒業論文の要約 顧客とのコミュニケーションを実現できる Web ベースの地域商店街情報案内システム 脇園 あらまし 敦子 本研究では地域商店街の空洞化につながる「店舗の広告機会の減少や双方向からのコミュニケーション不足」問題の 解決を図る為、店舗情報や顧客との意見情報を国際的標準である XML 文書化した。これを XSLT プログラム等で加工し文字や 画像、動画、Google の地図情報と連携させることでマルチメディア技術を応用した魅力的な店舗案内や、案内されている店舗 の情報検索、また、店舗と顧客、そして顧客同士が双方向からコミュニケーションを取れる掲示板等を Web ページとして提供 する地域商店街情報案内システムの開発を行った。 キーワード XML、店舗情報、情報検索、マルチメディア、地図情報 1.研究背景と目的 させた。そして XML という統一したフォーマットを利用す 近年郊外型の大型商業施設の出店により地域商店街全体の ることでスムーズに近隣地域との商店街情報案内システムを 空洞化が顕著になっており、日本商工会議所が行った調査で 集結することができ、拡張性のあるシステムを実現できた。 は日本の商店街の 4 割で空洞化を示す空き店舗率が 10%を超 またこの拡張性の高さを用いることで将来的には全国規模 えている。この空洞化の進行により商店街全体の売り上げ減 の大きなネットワークを作ることも可能であり、地域商店街 少、それに伴う広告費の制限、また地域での買い物機会の減 を活性化させるシステムとして本システムの普及性にも期待 少から地域コミュニティとの関係性の希薄が問題視されてい ができる。 る[1]。そこで今や世帯浸透率 85.4%[2]と家庭での情報収集ツ ここで XML の他に本システムを開発する上で用いた IIS、 ールとして確立しているインターネットを活用しこれらの問 ASP、VBScript、XSLT について触れておきたい。IIS[4]とは、 題を解決していきたいと考えた。そしてこれらの問題を解決 マイクロソフト社が提供するインターネットサーバー用ソフ するため、「顧客とのコミュニケーションを実現できる Web トウェアのことであり、Internet Information Services の略称で ベースの地域商店街情報案内システムの開発」を本研究の目 ある。ASP を利用して Web サーバーを構築するための機能を 的とした。 備えている。その ASP とは Active Server Page の略称でサーバ ーサイトの技術である。この技術を用いることで XML 文書 2.解決案と開発方針 空洞化を進行させる問題の解決案として、 「店舗紹介や商店 の最新情報の提供機会の減少問題」に対しては、 「文字、画像、 動画、地図情報を組み込んだ魅力的な店舗情報の案内、案内 されている店舗を顧客が簡単に選択して閲覧できるようにす るための検索機能の設置」を、また、 「双方向からのコミュニ ケーション不足問題」に対しては「店舗と顧客、また顧客同 の生成や訂正が可能になる。この ASP を記述する言語が Visual Basic をベースにして作られた VBScript であり、クライ アントサイトでエラー処理やデータチェックを行うスクリプ ト言語である。そして、XSLT とは XML 文書の構造を別の形 式に変形するための変換ルールを記述する拡張可能なマーク アップ言語である。本システムでも XSLT[3]により XML を HTML 表示させている。 士でコミュニケーションをとれる掲示板機能の設置、第三者 に知られたくない場合など、店舗と直接コンタクトをとれる 3.システム仕様と特徴 よう電子メールや電話番号の案内」を掲げた。 システム開発にあたっては、①開発費用の抑制、②マルチ メディア技術の応用による魅力的な店舗情報の案内、③拡張 性のあるシステムを掲げた。これら 3 つの開発方針をすべて 満たすため、インターネットで交換可能な汎用性と柔軟性と いう特性を持つデータ記述言語の XML[5]を利用した。 店舗情報などを国際的標準の XML を使用し、電子文書と して保存することで商業データベースを使用する必要がない 為、開発費用の抑制ができ、また XML の柔軟性から文字、 画像、動画、音声や Google の地図情報と連携させることがで き、マルチメディア技術を応用した魅力的な店舗案内を実現 上図はシステムの全体像である。まずは店舗情報、掲示板 県立長崎シーボルト大学 情報メディア学科 による顧客との意見情報をインターネットを通じて ASP 技術 を用い、XML 文書として登録することから始まり、そのデー タを VBScript や XSLT 等で加工することにより検索プログラ ム等、様々な Web ページとして提供している。地域商店街情 ソムチャイ研究室 平成18年度 卒業論文の要約 者など変更できる人を特定させ、特定のパソコンで統括 して行う。 • 魅力的な店舗案内:店舗詳細では基本情報の他、画像や 報 案 内 シ ス テ ム の URL: http://infomedia.sun.ac.jp/wakisono/ 動画を組み込み、Google の地図情報と連携させることで sotsu_wakizono/program/totalmenu.htm 店舗の位置を正確に確認できるようになっている。 本システムは県立長崎シーボルト大学西棟 4 階学科研究室に 設置しているパソコンのサーバーに保存しており、学内のパ • 掲示板の活用:掲示板プログラムでは投稿機能の他、投 ソコンからのみアクセス可能である。開発環境と実行環境は 稿を促す機能としてタイトル一覧機能、投稿検索機能を 以下の表の通りである。 設けた。タイトル一覧機能ではタイトルの他、同じタイ トルでの投稿数も表示させており、話題になっている投 環境 開発 実行 サーバー側 クライアント側 稿がすぐに確認できるようになっている。 ・WindowsServer 2003 ・WindowsXP ・IIS6.0 ・IE6.0 以上 ・サーバー版の Team ・クライアント版 Team Remote ASP Debugger Remote ASP Debugger ョンの面からみていく。今までの広告ツール(テレビ CM、 [6] ・Altova XMLSpy 2006 折込チラシ等)では「提供機会の限定、一方的な情報提供」 ・WindowsServer 2003 ・IE6.0 以上 ・IIS6.0 ・Windows Media Player11 4.導入効果 本システムの導入効果について広告機会とコミュニケーシ といった問題を抱えていた。しかし、本システムを導入する ことによりインターネット上でいつでも簡単に魅力的な店舗 案内や検索ができ、今まで一方的に情報を受け取るだけであ った顧客が掲示板機能の設置により受け取った情報に対して の反応を反映できるようになった。今までの広告機会に補足 トップメニュー して本システムを導入することで今まで以上の魅力的な広告 展開が期待できる。 ログイン画面 5.まとめと今後の課題 管理者用 一般利用者用 本研究では空洞化進行の問題である「店舗紹介の提供機会 の減少」 「双方向からのコミュニケーション不足」を解決する 店舗登録 情報訂正 店舗検索 掲示板 為、 「顧客とのコミュニケーションを実現できる地域商店街情 報案内システム」を開発した。 上図はシステム構成である。システム入り口で管理者用メ ニューと一般利用者用メニューに分かれており、管理者用メ ニューを選択すると ID とパスワードを求めるログイン画面 になる。ログイン後、管理者用メニューが表示され、登録、 今後の課題としては店舗登録プログラム、掲示板プログラ ムに削除機能を加えることでよりシステムの利便性を高め、 XML の柔軟性を生かし携帯電話や携帯端末と対応させ、シス テムの実現化を図りたい。 店舗情報訂正プログラムが利用できる。また、一般利用者メ ニューを選択すると店舗検索、掲示板プログラムが利用でき 参考文献 る。また、本システムの特徴は以下の通りである。 [1] 日本商工会議所 • 検索機能の充実:店舗検索では店舗名、ふりがな、業種、 エリア、電話番号、開店時間、閉店時間で検索できるこ とから利用者がすばやく希望の店舗を見つけ出すことが できる。 • セキュリティの管理:店舗情報の登録、訂正ができる管 理者用メニューに入る際に ID とパスワードを求めるロ グイン画面を設けることでセキュリティを高めている。 尚、これら店舗登録、店舗情報訂正は商店街の情報担当 地域産業空洞化問題特別委員会作成「地 域産業空洞化の実態調査」(1997) [2] インターネット白書 2006 http://www.iajapan.org/ [3] 「XML+XSLT 実用スーパーサンプル集」 (2002)PROJECT KySS 著 CQ 出版株式会社発行 [4] 「ひと目でわかる IIS6.0」 (2004)E-Creator 著 日経 BP ソ フトプレス発行 [5] Extensible Markup Language (XML) 1.0 (Fourth Edition) http://www.w3.org/TR/2006/REC-xml-20060816/ [6] Team Remote ASP Debugger, http://www.aspdebugger.com
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