量子力学 II(2008 年度後期)レポート問題 10 12 月 12 日出題 問題 1. (a) 関数 f (r0 ) = e2 9~2 − 2 8r0 M 4π²0 r0 の最小値と、最小値を与える r0 の値を求めよ。 (b) 上の結果を使って、水素原子の基底状態のエネルギーと半径を単位入りで求めよ。 (エネルギーの単位は eV(電子ボルト)、長さの単位Å(オングストローム) で) 2. 2 { M̂ = − 1 ∂ sin θ ∂θ ( ∂ sin θ ∂θ ) 1 ∂2 + sin2 θ ∂φ2 } となることを示せ。 解答 1. (a) f 0 (r0 ) = − e2 9~2 + 4r03 M 4π²0 r02 だから、f 0 (r0 ) = 0 とおくと、 r0 = 9~2 π²0 . M e2 この値を関数 f に代入すると、 ( )2 9~2 M e2 e2 M e2 = − 4M 9~2 π²0 4π²0 9~2 π²0 4 4 Me Me − = 2 2 2 72π ~ ²0 36π 2 ~2 ²20 M e4 = − . 72π 2 ~2 ²20 f (r0 ) 4 よって、最小値は − 72πM2e~2 ²2 で、この時 r0 = 0 9~2 π²0 M e2 。 h (b) ディラック定数 ~ = 2π ' 1.05 × 10−34 J · s、真空の誘電率 ²0 = 8.85 × 10−12 C · −1 −1 V · m 、単位電荷 e = 1.60 × 10−19 C、電子の質量 M = 9.11 × 10−31 Kg を代 入すると、 9~2 π²0 M e2 M e4 72π 2 ~2 ²20 = 1.19 × 10−10 m = 1.19Å, = 9.69 × 10−19 J = 6.05eV. 1 ここで、1J = 6.24 × 1018 eV, 10−10 m = 1Å を使った。よって、基底エネルギーは −6.05eV、半径は 1.19Å。 2. 演算を受ける関数を f とする。 2 M̂ = M̂− M̂+ + M̂z + M̂z2 と、 ( ) ∂ ∂ ∂ + i cot θ M̂± = e±iφ ± , M̂z = −i ∂θ ∂φ ∂φ を使うと、 2 M̂ f ) ( ) ( ∂ ∂f ∂f ∂f ∂2f ∂ + i cot θ eiφ + i cot θ −i − = e−iφ − ∂θ ∂φ ∂θ ∂φ ∂φ ∂φ2 { ( ) ∂2f ∂2f ∂f ∂f 1 ∂f = e−iφ −eiφ 2 + ieiφ 2 − ieiφ cot θ − cot θeiφ + i cot θ ∂θ ∂θ∂φ ∂θ ∂φ sin θ ∂φ ( 2 )} 2 2 ∂ f ∂ f ∂f ∂ f +i cot θeiφ + i cot θ 2 −i − ∂φ∂θ ∂φ ∂φ ∂φ2 ∂2f i ∂f ∂f ∂f ∂2f ∂f ∂2f = − 2 + − cot θ − i cot2 θ − cot2 θ 2 − i − 2 ∂θ ∂θ ∂φ ∂φ ∂φ ∂φ2 sin θ ∂φ 2 2 ∂ f ∂f 1 ∂ f = − 2 − cot θ − . ∂θ ∂θ sin2 θ ∂φ2 ∂ ここで、 ∂θ cot θ = − sin12 θ , 1 sin2 θ = 1 + cot2 θ 等の関係を用いた。よって、 ( 2 ) 2 ∂ ∂ 1 ∂2 M̂ = − + cot θ + . ∂θ2 ∂θ sin2 θ ∂φ2 また、 1 ∂ sin θ ∂θ ( ) ∂ sin θ ∂θ だから、 2 M̂ = − { 1 ∂ sin θ ∂θ ( ) ∂ ∂2 = cos θ + sin θ 2 ∂θ ∂θ ∂ ∂2 = cot θ + ∂θ ∂θ2 1 sin θ ( ) } ∂ 1 ∂2 sin θ + . ∂θ sin2 θ ∂φ2 コメント • 問題 1 は、不確定性原理に基づいて水素原子の基底エネルギーを見積もる問題。シュレー ディンガー方程式を厳密に解くと、水素原子の基底エネルギーは − M e4 ' −13.6eV, 32π 2 ~2 ²20 基底状態の半径は、 4~2 π²0 ' 0.53Å M e2 2 で、これはボーア半径と呼ばれている。(ただし、原子中の電子は確率的に分布してい るので、半径は定義の仕方によって多少変わる。)不確定性関係を使った見積りは、そ れほど厳密な答から外れていないことが分かる。 • 原子の世界では、エネルギーは大体 eV(電子ボルト) 程度、長さは 10−10 m = 1Å(オング ストローム) 程度であることを憶えておこう。 • 授業中にも言ったが、単位の入った計算をするには Google を使うのが便利である。例 4 M e4 えば、水素原子の基底エネルギー 32πM2e~2 ²2 = 8h 「電子質 2 ²2 を単位 eV で求めるには、 0 0 量*単位電荷**4/(8*プランク定数**2*真空の誘電率**2)を eV で」と入力すればよい。 (ディラック定数 ~ は登録されていないようなので、プランク定数 h を使って計算した。) • 通常の MKSA 単位系で計算すると、エネルギーの単位は J(ジュール)=Kg · m2 · s−2 に なる。これを eV(電子ボルト) に変換するには、1J = 6.24 × 1018 eV の関係を使う。単 位の変換がちゃんとできていない人が結構多かった。 2 2 • 問題 2 の M̂ の計算は、M̂ = M̂x2 + M̂y2 + M̂z2 を使って計算してもよいが、解答にあ るように M̂+ , M̂− を使うと少し計算が楽になる。 • 問題2の計算で、なぜか M̂− M̂+ ( ) ( ) ∂ ∂ ∂ ∂ = e−iφ − + i cot θ eiφ + i cot θ ∂θ ∂φ ∂θ ∂φ ( )( ) ∂ ∂ ∂ ∂ = − + i cot θ + i cot θ ∂θ ∂φ ∂θ ∂φ としている人が多かったが、この 1 行目から 2 行目への変形はもちろん間違いである。 積と微分の順序は勝手に入れ替えられないので、eiφ を前に出すことはできない。 3
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