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● フローチャート 2: 乳がんの治療
診断確定
手術
術前
化学療法
乳房
温存術
術中・
術後の
病理診断
乳房
切除術
術中・
術後の
病理診断
しこりの
診
断
確
定
がんの
進行度の
検討
大きさや位置・
転移・浸潤・放射
線治療の可否・
患者の希望など
の検討
手
術
方
法
を
選
択
薬物療法
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術後療法
状況に応じ
て行います。
経過観察
だけで良い
場合もあり
ます。
残っ た 乳房内部
のがんを治療・
予防す る た め の
処置を 行う 場合
があります。
放射線
療法
放射線療法
経過観察
ホルモン
療法
追加切除
化学
療法
分子標的
治療
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乳がんの進行度
乳房のしこりの大きさ、リンパ節転移の程度、他の臓
器への転移の有無から、乳がんの進行度を評価しま
す。ステージ(病期)は、表 1 のように分類されます。
表 1. 乳がんのステージ(病期)分類
ステージ
しこりの大きさ
0期
非浸潤がん
リンパ節転移
遠隔転移
乳管内外にとどまっている段階(しこりとして触れない)
Ⅰ期
2 ㎝以下
なし
なし
ⅡA 期
ない、あるいは
疑いがある
なし
2.1~5 ㎝
なし
なし
ⅡB 期
2.1~5 ㎝
疑いがある
なし
ⅢA 期
2 ㎝以下
わきの下のリンパ節への転移が癒着していたり、周辺の組織に固
なし
2 ㎝以下
着している。
または、わきの下への転移はなく、胸骨の周囲のリンパ節がはれて
いる。
ⅢB 期
しこりの大きさ、リンパ節転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁に固着している。
なし
あるいは、しこりが皮膚に顔をだしたり、皮膚がくずれたりしている。炎症性乳がん。
ⅢC 期
しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の周囲のリンパ節の両方に
なし
転移している。あるいは鎖骨の上下のリンパ節に転移している。
Ⅳ期
しこりやリンパ節の状態にかかわらず、骨、肺、肝臓、脳など、遠隔転移がある。
乳がんの治療
がんの進み具合や性質によって、治療法を検討しま
最近では、手術だけではなく、薬物療法、放射線療
す。
法を組み合わせた集学的治療が行われるようになり
治療は、局所療法と全身療法に分けられ、局所療法
ました。
には、手術療法と放射線療法があります。診断時に、
他の部位に転移している場合は、全身療法である薬
物療法が主に行われます。
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(1) 手術方法
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体どちらか
があれば 、ホルモ ン療法の効果 が期 待できます 。
手術の方法は、『乳房温存術』(乳房を部分的に切
HER-2 の検査は、「ハーセプチン®」(分子標的治療薬)
除する方法)と『乳房切除術』(乳房を全部切除する
を使うかどうか検討するために必要です。
方法)の 2 つに大きく分けられます。がんの大きさや
位置、広がり、患者さんの希望などから、どちらの手術
リンパ節転移の程度、がんの大きさ、がん細胞の性
方法を選択するか検討しますが、温存乳房内再発の
質、ホルモン受容体の有無、HER-2 の有無、年齢、閉
可能性、乳房の変形の程度を考慮して決定すること
経前か後かなどを総合的に検討し、術後療法を決定
が重要と言われています。
します。
『乳房温存術』では、残存乳房での再発を防ぐため、
術後に、切除した乳房に放射線療法を行います。乳房
温存術と乳房の放射線療法を合わせて、乳房温存療
経過観察
法と呼びます。術前に化学(抗がん剤)療法を行なっ
て、がんが小さくなれば、乳房温存術ができるように
治療が終わったら、外来で定期的な経過観察を行い
なることもあります。一方、手術で残った乳房の内部
ます。問診、触診などの診察や年 1 回のマンモグラフ
にがんがあった場合には、追加切除が必要になる場
ィの検診は再発の早期発見に役立ちます。また、血液
合もあります。
検査、腫瘍マーカー、画像検査などは必要に応じて組
『乳房切除術』は、がんが大きい場合などに行われま
み合わせて行います。治療後しばらくすると外来の受
す。希望どおりに乳房を温存することが難しい場合、
診は、3~6 か月に 1 回と間隔が空いてきます。ただし
乳房切除術と同時、または術後しばらく経ってから、
検査内容やこれまでの経過により、受診の間隔は異
乳房再建をするという方法もあります。
なります。
定期検診の期間について、他の部位のがんは一般に
5 年ですが、乳がんの場合は比較的ゆっくり進行する
(2) 術後療法
ことが多いため、術後 10 年と言われています。
患者さんの中には、長い経過観察の間に、手術した
手術で切除した組織は、詳しく顕微鏡で調べて(病
乳房や反対側の乳房、他の臓器にがんが発見される
理検査)、手術後の治療方針を決定します。経過観察
ことがあります。状況に応じて、必要な検査を行い、適
だけで良い場合もありますが、多くの場合は、術後療
切な治療を検討します。
法として『放射線療法』、『ホルモン療法』、『化学(抗
がん剤)療法』、『分子標的治療』が行われます。術後、
目には見えないが体に残っている可能性のあるがん
細胞をたたくことを『術後療法』と言います。
また、乳がんの発生や増殖には、女性ホルモンであ
るエストロゲンが関係している場合が多いため、女性
ホルモンの反応性や、HER-2(ハーツー)というタンパクが
あるかどうかの検査をして、治療の選択に役立てます。
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