● フローチャート 2: 乳がんの治療 診断確定 手術 術前 化学療法 乳房 温存術 術中・ 術後の 病理診断 乳房 切除術 術中・ 術後の 病理診断 しこりの 診 断 確 定 がんの 進行度の 検討 大きさや位置・ 転移・浸潤・放射 線治療の可否・ 患者の希望など の検討 手 術 方 法 を 選 択 薬物療法 20 術後療法 状況に応じ て行います。 経過観察 だけで良い 場合もあり ます。 残っ た 乳房内部 のがんを治療・ 予防す る た め の 処置を 行う 場合 があります。 放射線 療法 放射線療法 経過観察 ホルモン 療法 追加切除 化学 療法 分子標的 治療 21 乳がんの進行度 乳房のしこりの大きさ、リンパ節転移の程度、他の臓 器への転移の有無から、乳がんの進行度を評価しま す。ステージ(病期)は、表 1 のように分類されます。 表 1. 乳がんのステージ(病期)分類 ステージ しこりの大きさ 0期 非浸潤がん リンパ節転移 遠隔転移 乳管内外にとどまっている段階(しこりとして触れない) Ⅰ期 2 ㎝以下 なし なし ⅡA 期 ない、あるいは 疑いがある なし 2.1~5 ㎝ なし なし ⅡB 期 2.1~5 ㎝ 疑いがある なし ⅢA 期 2 ㎝以下 わきの下のリンパ節への転移が癒着していたり、周辺の組織に固 なし 2 ㎝以下 着している。 または、わきの下への転移はなく、胸骨の周囲のリンパ節がはれて いる。 ⅢB 期 しこりの大きさ、リンパ節転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁に固着している。 なし あるいは、しこりが皮膚に顔をだしたり、皮膚がくずれたりしている。炎症性乳がん。 ⅢC 期 しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の周囲のリンパ節の両方に なし 転移している。あるいは鎖骨の上下のリンパ節に転移している。 Ⅳ期 しこりやリンパ節の状態にかかわらず、骨、肺、肝臓、脳など、遠隔転移がある。 乳がんの治療 がんの進み具合や性質によって、治療法を検討しま 最近では、手術だけではなく、薬物療法、放射線療 す。 法を組み合わせた集学的治療が行われるようになり 治療は、局所療法と全身療法に分けられ、局所療法 ました。 には、手術療法と放射線療法があります。診断時に、 他の部位に転移している場合は、全身療法である薬 物療法が主に行われます。 22 (1) 手術方法 エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体どちらか があれば 、ホルモ ン療法の効果 が期 待できます 。 手術の方法は、『乳房温存術』(乳房を部分的に切 HER-2 の検査は、「ハーセプチン®」(分子標的治療薬) 除する方法)と『乳房切除術』(乳房を全部切除する を使うかどうか検討するために必要です。 方法)の 2 つに大きく分けられます。がんの大きさや 位置、広がり、患者さんの希望などから、どちらの手術 リンパ節転移の程度、がんの大きさ、がん細胞の性 方法を選択するか検討しますが、温存乳房内再発の 質、ホルモン受容体の有無、HER-2 の有無、年齢、閉 可能性、乳房の変形の程度を考慮して決定すること 経前か後かなどを総合的に検討し、術後療法を決定 が重要と言われています。 します。 『乳房温存術』では、残存乳房での再発を防ぐため、 術後に、切除した乳房に放射線療法を行います。乳房 温存術と乳房の放射線療法を合わせて、乳房温存療 経過観察 法と呼びます。術前に化学(抗がん剤)療法を行なっ て、がんが小さくなれば、乳房温存術ができるように 治療が終わったら、外来で定期的な経過観察を行い なることもあります。一方、手術で残った乳房の内部 ます。問診、触診などの診察や年 1 回のマンモグラフ にがんがあった場合には、追加切除が必要になる場 ィの検診は再発の早期発見に役立ちます。また、血液 合もあります。 検査、腫瘍マーカー、画像検査などは必要に応じて組 『乳房切除術』は、がんが大きい場合などに行われま み合わせて行います。治療後しばらくすると外来の受 す。希望どおりに乳房を温存することが難しい場合、 診は、3~6 か月に 1 回と間隔が空いてきます。ただし 乳房切除術と同時、または術後しばらく経ってから、 検査内容やこれまでの経過により、受診の間隔は異 乳房再建をするという方法もあります。 なります。 定期検診の期間について、他の部位のがんは一般に 5 年ですが、乳がんの場合は比較的ゆっくり進行する (2) 術後療法 ことが多いため、術後 10 年と言われています。 患者さんの中には、長い経過観察の間に、手術した 手術で切除した組織は、詳しく顕微鏡で調べて(病 乳房や反対側の乳房、他の臓器にがんが発見される 理検査)、手術後の治療方針を決定します。経過観察 ことがあります。状況に応じて、必要な検査を行い、適 だけで良い場合もありますが、多くの場合は、術後療 切な治療を検討します。 法として『放射線療法』、『ホルモン療法』、『化学(抗 がん剤)療法』、『分子標的治療』が行われます。術後、 目には見えないが体に残っている可能性のあるがん 細胞をたたくことを『術後療法』と言います。 また、乳がんの発生や増殖には、女性ホルモンであ るエストロゲンが関係している場合が多いため、女性 ホルモンの反応性や、HER-2(ハーツー)というタンパクが あるかどうかの検査をして、治療の選択に役立てます。 23
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