国際協力への取組概要 - 一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構

11-11-25
USEF成果報告会
国際協力への取組概要
USEF 技術本部 グループマネージャ
国際協力事業担当
五百木
財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)
誠
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<目 次>
1.海外協力案件への取り組みの現状
1.1 全体概要
1.2 インフラパッケージ輸出に向けた調査(ケニア、アンゴラ、ペルー)
1.3 コンポーネント輸出拡大に向けた調査
2. 先行事例としてのベトナムODA案件
2.1
2.2
2.3
経緯
計画概要
人材育成
3. 諸外国のトピック
3.1 欧州企業による観測衛星コンステレーション
3.2 アフリカ諸国での営業活動
3.3 中国の進出
4. 今後の活動の方向性
5. まとめ
財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)
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1.海外協力案件への取り組みの現状 1.1全体概要
FY08
METI
海外貿易
会議
ベトナム
ODA関連
USEF
単独
訪問調査
FY09
エジプト・
南アフリカ
JETRO
F/S
IAA学会@
ナイジェリア
FY10
FY11
9月:ペルー・ブラジル・
アルゼンチン
2月:モンゴル・カンボジア
JICA協力準備調査
JICA作業(人材育成カリキュラム検討)
IAA50周年記念大会@
ワシントンDC
09月:ケニア
10月:アンゴラ・ケニア
11月:ペルー
12月:欧州宇宙企業調査
01月:ペルー・エクアドル・ボリビア
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(ケニア)
(1)ケニア訪問の意図
-干ばつ・洪水等の災害や農業分野など、観測衛星ニーズが数多くあると想定
-宇宙開発の歴史が長く、かつ宇宙機関設立の動きがあるが、衛星保有の動きがない
(2)全般
-国の中は経済的・政治的に安定しており、人口・経済も順調に伸びている
-東アフリカ共同体(EAC)のリーダとして域内で強い影響力を発揮
→情報・物流のHUB
-国全体が教育熱心で、小学生から長時間、熱心に勉強することが当たり前になっている
-親日国であり、日本に対しては「ハイテク技術の国」という良い印象を持っている
(3)調査の方針
-ニーズ把握のため、ユーザ機関をなるべく多く訪問する
-ケニアの宇宙開発の中心的存在と思われる機関を訪問する
-「面識が無い相手にいきなり衛星を売り込むことは難しい」
との認識から、まずは信頼感を得るため「What can I do
for you?」という態度で臨んだ
-地球観測ニーズ・各機関の考え方を知るため、ケニアで開催
される学会2件に参加した
(1件には展示を出展し、もう1件では講演を実施して
ASNARO/HISUI等をPR)
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(ケニア)
(4)訪問先
ユーザ機関
(7ヶ所)
環境鉱物資源省 資源探査リモセン局、気象局
農業省
水資源管理局
野生動物保護局
海洋漁業研究所
資源探査開発 地域センター(国際機関)
宇宙開発推進機関
その他 政府機関
(4ヶ所)
ケニア宇宙機関設立委員会(防衛省内に設置)
高等教育省 国家科学技術委員会
情報通信省
工業化省
大学(2ヶ所)
ナイロビ大学 工学部
モンバサ工科大学
その他(3ヶ所)
日本大使館
JICAケニア事務所
JETROナイロビ事務所
多様なニーズ、人材育成への強い希望を確認
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(ケニア)
(5)現地での反応・成果
-衛星データがタイムリーに入手できないフラストレーションが大きく、衛星及びデータ
受信局自国保有へのニーズが強い。
-ケニアは曇りが多いらしく、天気・時刻に左右されにくいSAR衛星へのニーズも強い。
-多様なニーズが存在するが、国としての集約(一本化)には困難を伴う。
-大学には、リモセン・GIS関連のコースはあるが、衛星技術を教える講座はほとんど無い
ため、この分野に関する日本への期待大(カリキュラム編成支援も)。
-「日本として役に立てる分野があれば是非活用して欲しい」とのスタンスは、極めて好
意的に受け入れられた。
-面会したケニア関係者の中に、日本への留学経験者・JICA支援事業の関係者が多く含ま
れており、特に親身になって対応いただいた。地道な人材交流の重要性を痛感した。
-ケニアの宇宙開発を組織的にリードすると思われるキーパーソン2名とは、複数回の面会
を重ね、関係を構築することができた(在ケニア日本大使館の支援)。
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(アンゴラ)
(1)訪問の意図
-資源国で経済発展著しい(5年間で年平均18%以上の経済成長)
-衛星保有に関して、欧米諸国も未進出
(2)全般
-内戦が終結して10年経っておらず、国内には影響も残る
-資源のおかげで経済は急拡大中(GDPの6割が石油関連)
→都市部では建築ラッシュが続く
依然高いインフレ率(世界一物価の高い街)
-両国政府間で、投資協定が大筋で合意済み
-中国の進出が目立つ
局長級との会合(1日目)
(3)地質鉱山工業省での打合せ
-局長級との会合でニーズ調査を試みたが、ほとんど情報得られず
-大臣との会合で、「鉱物資源探査」という用途に大臣が乗り気に
なり、衛星調達に向けてアンゴラ政府内での取りまとめを宣言
→大臣が事前にマスコミを呼んでいて、意図的にPRを実施
地質鉱山工業省 大臣との会合(2日目)
ASNAROプラットフォーム活用による資源探査衛星 調達の可能性
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(アンゴラ)
(4)掲載された新聞記事
工業省大臣が日本企業
の代表団を受け入れ
●会合後,David大臣は取材に
応え,「日本の衛星技術は従来
のものより優れ,アンゴラの地
下,沖合に埋まる資源を正確に
検出することが可能となる。同
事案を早急に大統領に提出し,
判断を仰ぐ。」と発言
●大統領の承認後,アンゴラ政
府内にチームを構成し,同事案
に取り組む
ニーズ調査に基づくボトムアップのアプローチより、大臣のトップダウンの推進力に期待
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1.2インフラパッケージ輸出に向けた調査(ペルー)
(1)ペルー訪問の意図
-宇宙機関が設立されてから歴史が長く、衛星調達の具体的な動きがある
-昨年のMETI貿易会議でも訪問しており、日本からの協力についての期待が大きい
(2)全般
-国の中は経済的・政治的に安定しており、人口・経済も順調に伸びている
(3)調査の方針
-ニーズ把握のため、ユーザと思われる省・機関をなるべく多く訪問する
-2度目の訪問時に、両国関係者でWorkshop開催を予定
-昨年の貿易会議で訪問しているが、依然として初訪問の機関が多く「いきなり衛星を売り込むことは
難しい」ため、まずは信頼感を得るため「What can I do for you?」という態度で接した
(ケニア訪問調査時のKnow-howを活用)
(4)訪問先
-ユーザ機関・政府機関14ヶ所、宇宙機関1ヶ所、大学5ヶ所に加え、大使館・JICA・JETROを訪
問する予定で、現地調査実施中(11/21から2週間)
(5)現地の反応
-実際に衛星データを利用しているユーザが多く、質疑も専門的であり、利用者のポテンシャルは高い
-持続的な人材育成への関心が高い
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1.3 コンポーネント輸出拡大に向けた企業調査
宇宙産業振興のため、国内外の企業を訪問し、課題抽出・成功事例調査を実施中
(1)調査項目
-国内コンポーネントの海外輸出成功事例の調査
-国内外の衛星システムメーカへのヒアリング
(2)目的
-国産コンポーネントの海外での受注実現への課題等の分析
-コンポーネントの海外展開が成功するための対策・公的支援策を検討
(3)訪問先企業
-国内
-国外
システムメーカ:
コンポメーカ:
中小企業:
システムメーカ:
コンポメーカ:
NEC、MELCO、アクセルスペース
IA、MPC
ASNAROコンソーシアム会員企業等 多数
Astrium、Thales Alenia Space、SSTL、OHB
RUAG 他 中小企業数社
◆欧州企業訪問時、併せてASNAROコンソーシアム活動として、企業からのコンポ売り込みを実施
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2.先行事例としてのベトナムODA案件
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
▲
日本への要請
▲
▲
国家宇宙戦略 宇宙技術研究所
設立
策定
▲
ホアラック
宇宙センター
構想への協力依頼
(to JAXA)
2.1経緯
▲
ホアラック
宇宙センター
計画策定
FY11
FY12
▲
ベトナム国家
衛星センター
設立
▲
正式調印
(L/A)
JICAによる審査
JETRO F/S
▲JAXA機関間協定締結
JICA協力準備調査
JICA詳細設計
(計画)
▲APRSAF-15@ハノイ
▲STARプロジェクト始動
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2.2 計画概要
JICAプロジェクト「衛星情報の活用による災害・気候変動対策事業」
■ 地球観測衛星(SAR衛星)2機(1機目は日本で、2機目はベトナムで組立・試験)
■ ホアラックハイテクパークにベトナム国家衛星センターのための施設建設(本部棟、
小型衛星組立試験棟、アンテナ、衛星管制・運用棟等)
■ 施設内に入る機材
■ 人材育成(マネジメント、データ利用、衛星開発)
ベトナム国家衛星センター
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現地写真(11年9月撮影)
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2.3 人材育成
これまでの作業を通して把握したベトナム側の要請に基づき、下記の人材育成を計画
(1)ベトナム国家衛星センターの運営・管理を担当する人材
-技術系のみならず事務系も含めた衛星センター上級管理職の養成を目標
-事前学習の後、宇宙開発戦略本部・経済産業省・宇宙機関・システム/部品メーカなどを訪問し
て関連知識を習得
(2)衛星開発を担当する人材
-2機目の衛星のAIT(組立・試験)を、ベトナム国内で実施可能な技術レベルを得ることが目標
-基礎コース(2クルー、計30名を想定)
→日本の大学・企業および研究機関と連携し、2年間で修士号取得を目指す
50kg級小型衛星を実際に開発
-応用コース
→衛星センターで実施する、2機目の衛星AITを主体的に実施することを目指す
日本で行われる1機目の開発に参加してレベルアップ
(3)データ利用を担当する人材
-衛星の管制、受信した画像データの処理・解析を行う技術を習得
-特にSAR画像の取り扱い技術に力を入れる
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3.諸外国の事例
(1)英国SSTL社
3.1 欧州企業による観測衛星コンステレーション
DMC(Disaster Monitoring Constellation)概要
■システムの特徴
-同一軌道上で運用する小型衛星コンステレーション
5機の衛星により、ほぼ1日1回のRevisitを確保
-搭載センサの特徴は「光学・広い撮像幅・中程度の分解能」
-衛星を次々とリプレースしており、継続的サービスを実現
■衛星諸元
- 第二世代: SSTL-100、300シリーズ
マルチスペクトラム 22mGSD、660km幅、Landsatからの継続性
- 次世代DMC-3シリーズ:13年に分解能1mの光学衛星を3機同時に投入する計画あり
<名称>
Alsat-1
Nigeriasat-1
UK-DMC
Beijin-1
Deimos-1
UK-DMC2
Nigeriasat-X
Nigeriasat-2
<国>
アルジェリア
ナイジェリア
英国(DMC社)
中国
スペイン
英国(DMC社)
ナイジェリア
ナイジェリア
<ミッション(解像度)>
32mMulti
32mMulti
32mMulti
32mMulti/4mPan
22mMulti
22mMulti
22mMulti
5mMulti/2. 5mPan
Nigeriasat-2
・商用観測コンステとして、安価かつ付加価値の高いサービスを継続的に提供
・衛星保有国の拡大に寄与(人材育成も含めて実施)
◆図・写真はSSTL社Webサイトから引用
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3.1 欧州企業による観測衛星コンステレーション
(2)Astrium社 コンステレーション計画の概要
■システムの特徴
-高分解能光学衛星Pleiadesシリーズと中分解能衛星SPOT6,7を組み合わせたコンステレーション
4機の衛星により1日1回のRevisitを確保
-11年から次々と打ち上げられる計画で、4機が揃うのは13年の予定
■衛星諸元
- Pleiades1,2:0.5m分解能、20km swath、位置決め精度4.5m(CE90)
- SPOT6,7: 1.5m分解能、60km swath、 位置決め精度10m(CE90)
衛星投入計画
現在の計画では
P1が11年、P2が12年
打ち上げ
運用イメージ
・高性能衛星による極めて高付加価値のコンステレーション計画
・4機配備完了後のサービス継続性を強く意識
◆図は[SPOT Magazine #48](2010年9月)から引用
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3.2 欧州企業の営業活動
アフリカにおけるSSTLの活動
■ 専属のアフリカ担当をアサインして営業活動を継続
■ 主要なアフリカ域内の学会にスポンサーとして参加し、
プレゼンス向上
■ DMC(Disaster Monitoring Constellation)のメン
バーとして、アルジェリア及びナイジェリアには衛星納
入済み
■ ナイジェリアでは、単に衛星を購入するのみならず、自
国技術者を約20名をSSTL(英国)に派遣して、設計・
組み立て・試験を担当した衛星を打ち上げ済み
(Nigeriasat-X)
アフリカでの学会(ALC2011)
におけるSSTL展示
→この衛星を「SSTL製のNigeriasat-X」と表現したところ、
即座に「これはNigeria製の衛星だ!」と反論を受けた。ナイジェ
リア人は、誇りを持って自国製の衛星であると認識している。
■ ケニアで、宇宙機関準備委員会の責任者と話したところ、
既にSSTLから直接の売込みを受けていた
・技術的な競争優位性だけでなく、営業および人材育成の観点でもきめ細かい対応を継続
・途上国が「自国製の衛星」を保有できる、ということの魅力をよく理解している
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3.3 中国のアフリカ進出
アフリカにおける中国の活動とその評価
■ALC(African Leadership Conf)2011への参加
-ALC(参加は主としてアフリカ諸国のみ)に13名ものメンバーを
派遣(上海航天技術研究院)
-展示ブースも入り口に一番近い最も目立つ場所を確保し、プレゼンス
向上を図る
-09年にナイジェリアで開催されたIAAの学会に8名派遣していたが、
今回は更に上回る人数が参加(日本は前回1名→4名)
■アフリカ諸国での支援活動
-11年10月18日付け日経新聞 記事
“アフリカ、中国へ反感拡大 「ひも付き」投資 現地潤わず”
“中国流 労働者を大量派遣、進出モデルに不満募る”
-アンゴラ・ケニアでも中国企業による大規模な建設工事が目立って
おり、現地の人も注目
-アフリカの天然資源確保のため、経済進出を強めている
アフリカでの学会(ALC2011)
における展示
中国の進出はめざましいが、「日本的」支援での巻き返しの可能性
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4.今後の活動の方向性
相手国の国内事情
キーパーソン
の熱意
国レベル
の意思決定
日本側活動
キーパーソンを
見定めて直接対話
Top
Down
資金的支援
Bottom
Up
個別
ニーズ把握
ニーズの
全体像整理
国内
コンセンサス形成
経験に基づき
課題解決を支援
地道な人材交流
持続的な人材育成
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5.まとめ
◆USEFがこの数年で手掛けてきた国際協力案件への関与を
通して得られた情報について、その概要を紹介
インフラ輸出:ケニア・アンゴラ・ペルー調査
コンポ輸出促進:欧州企業調査
◆海外協力案件として正式にスタートした、ODAによるベトナムで
の宇宙センター建設/衛星製造等 の概要を紹介
案件成立までの長い道筋
多角的な人材育成の必要性
◆諸外国、特に欧州企業のアプローチにつき、その概要を紹介
技術的側面:SSTL社・Astrium社 コンステレーション
営業的側面:相手国に密着した継続的な活動
◆中長期的な展望に立った関係構築/案件の早期具体化に向けた活動
を継続
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