中国経済週報(2016.3.1~3.7)

中国経済週報(2016.3.1~3.7)
在中国日本大使館経済部
1.全人代が開幕~2016 年の主要経済目標と第 13 次五カ年計画綱要(草案)の公表
李克強国務院総理による政府活動報告
●3 月 5 日、北京の人民大会堂にて第12期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が
開幕し、李克強総理が政府活動報告を行った。同報告において、2016 年の経済運営につ
いて昨年同様「安定を保ちつつ前進を求める」とし、具体的数値目標として、GDP 成長
率は 6.5~7%(昨年目標は 7%前後)、消費者物価上昇率は 3%前後(同 3%前後)、都市部
新規就業者数は 1000 万人以上(同 1000 万人以上)等の数値を示した。なお、輸出入伸
び率については、昨年6%前後との目標があったが、今年は「輸出入を安定・好転させ」
るとし、定量的な目標がなくなった。
●財政政策では、財政赤字額が対 GDP 比 3%(昨年は 2.3%)と大幅に拡大させているほか、
金融政策では、広義のマネーサプライ増加率の目標について 13%前後(同 12%前後)と若
干増やしている。また、人民元為替レートについて「人民元為替レートの合理的な水準
での基本的安定を保つ」として、昨年に比べ「基本的安定」との文言が追加されている。
●このほか、過剰生産能力解消を始めとする供給側の構造改革の推進、国有企業改革、
都市化、貧困対策等、今後政府が取り組む主要政策課題が列挙された。
第 13 次五カ年計画綱要(草案)の公表
●3 月 5 日、全人代開幕時における李克強総理の政府活動報告にあわせ、2016 年から 2020
年を計画期間とする第 13 次五カ年計画綱要(草案)が公表された。昨秋の五中全会にお
ける「建議」で示されていたとおり、第 13 次五カ年計画期を、小康社会の全面的な建設
において勝負を決する段階と位置付けた上で、中国経済を取り巻く内外のリスクに言及
し、5つの新たな発展理念(イノベーション、協調、グリーン、開放、共に享受)の樹
立・貫徹を要求。
●発展目標の章では、今後5年間の経済成長率を年平均 6.5%以上とする(第 12 次五カ
年計画では年平均 7%)、社会全体の研究開発費の対 GDP 比を 2.5%とする(同 2.2%)、
常住人口ベースの都市化率を 60%(同 51.5%)、戸籍人口ベースでの都市化率を 45%にす
る等の目標が示された。
●経済発展のニューノーマル(新常態)への対応のために、総需要の適度な拡大ととも
に、供給側の構造改革を推進する旨明記した。
財政部による 2016 年度中央・地方予算案
●3 月 5 日、財政部は「中央・地方予算報告」を発表し、2015 年度の予算執行状況及び
2016 年度の予算案についての報告を行った。2016 年度の全国(中央・地方)の予算案は
以下のとおり。財政収入は 15 兆 7,200 億元(前年比+3.0%)、財政支出は 18 兆 715 億元
(同+6.7%)である。財政赤字は前年度から 5,600 億元増加して 2 兆 1,800 億元、対 GDP
比では前年度に比べ 0.6%増の 3.0%へと拡大する。
●2016 年度の財政・税制改革の重点については、①減税と手数料・料金の引き下げ(営
改増(営業税から増値税への移行)の不動産・金融業などへの試行拡大、行政費用免除
枠の適用拡大)、②財政赤字の規模拡大(前述のとおり)、③支出構造の調整・適正化
(「三公経費予算の抑制、高い支出基準の削減など」)、④財政資金の統一的運用の4
項目を掲げている。
徐紹史国家発展改革委員会主任による記者会見(3/6)
●3 月 6 日、国家発展改革委員会の徐紹史主任が記者会見を行った。外国から中国経済
を不安視する声があることについて、徐主任は、「中国経済を完全に合理的範囲内に保
つ能力がある」として「ハードランディングすることは絶対にありえない」と強調した。
また、中国経済が世界経済の足を引っ張っているのではないかとの指摘についても、世
界の中で中国が引き続き高い成長率にあること等を示し、否定した。今年の成長目標率
を 6.5~7%と設定したことについて、「積極的に具体的な目標を示すことにより、市場や
社会を安心させることができ、また、この数値は現在の潜在的な成長能力にも符合し、
多くの専門家が予測している結果とも符合する」と述べた。
2.過剰生産問題への対策等の公表
●2 月 29 日、尹蔚民・人力資源・社会保障部長は記者会見を行い、過剰生産能力の解消
に当たっては、労働者のリストラや再就職支援が必要となるとして、その対象者は石炭
業界において約 130 万人、鉄鋼業界において約 50 万人に上るとの推計結果を明らかにし
た。
●これに先立ち、馮飛・工業・信息化部副部長は、企業が市場から撤退・整理する際に
生じる失業者への技能訓練や転職支援などを行うための基金として、「工業企業構造調
整専用奨励補助資金」を新たに設け、向こう2年間で 1,000 億元の拠出を見込んでいる
ことを明らかにした。
●このほか、29 日の尹部長の会見では、退職年齢の引上げ計画に関しても説明がなされ
るとともに、具体的なプランについては、年内に公表される見通しであることを明らか
にした。尹部長は、退職年齢引上げの基本方針として、①毎年数ヶ月ずつ退職年齢引き
上げ、長期間をかけた目標退職年齢への到達、②実情に則した異なる対象ごとの実施、
③事前公示の三点を指摘した。
3.預金準備率の引き下げ
●2 月 29 日、人民銀行は預金準備率を 0.5 ポイント引き下げ、3 月 1 日より施行するこ
とを公表した。引き下げの目的は、経済減速圧力の緩和や、春節前に供給した短期資金
の満期が到来するため、流動性への対応と見られている。引き続き人民元安圧力は存在
するものの、足元人民元が安定しているため、引き下げに踏み切ったとの見方もある。
3 月 3 日、中国外為取引所(CFETS)は、2 月末のバスケット通貨に対する人民元レート
(CFETS 人民元指数)は 1 月末比▲0.52%とし、人民元レートはバスケット通貨に対し
て安定していることを強調した。
4.李克強総理がルー・米財務長官と会見
●2 月 29 日、李克強総理はルー・米財務長官と北京で会談し、中国の経済情勢について、
「中国は、更に積極的に財政政策を実施するとともに、サプライサイド改革を力強く推
進していく」と強調。また、人民元レートについて、「中国は、通貨バスケットを参考
にし、管理された変動相場制を実行し、人民元為替レートを合理的でバランスのとれた
水準に基本的に安定させる」と述べた。また、ルー財務長官は、「米国側は、中国側と
意思疎通を強化し、新たな米中戦略・経済対話を着実に開催し、二国間投資協定交渉な
どのプロセスが早期に実質的な進展を収めるよう推進したい」と述べた。
5.2 月製造業 PMI
●3 月 1 日、国家統計局及び中国物流購買連合会は、2 月の製造業購買者担当指数(PMI)
を発表。2 月の製造業 PMI は 49.0 となり、前月を 0.4 ポイント下回った。
●3 月 1 日、財新伝媒は、2 月の製造業購買担当者指数(PMI)を発表。2 月の財新 PMI
は 48.0 となり、前月を 0.4 ポイント下回った。
■ :日本関連記事
1.概況・マクロ経済政策
□5 日、北京の人民大会堂において、第 12 期全国人民代表大会第 4 回会議が開幕し、李克強総理が政府
活動報告を行った。
2.財政
□財政部、科学技術部、国有資産監督管理委員会は 29 日、3 月 1 日から一定の条件を満たす国有の科学
技術企業で従業員持株制度を認めると発表した。(3/1 経済日報p5)
3.金融・為替
□国家為替管理局によると、1 月の中国の外国為替市場の取引額は 10 兆 3,900 億元に達した。(2/29 経済
日報p6)
□中国人民銀行によると、1 月の中国債券市場の発行額は 2 兆 1,000 億元で、前年同期比 117.3%増加した。
(2/29 経済日報p6)
□中国人民銀行は 29 日、3 月 1 日から金融機関の人民元建て預金準備率を 0.5 ポイント引き下げると発表し
た。(3/1 国際商報p1)
□陳雨露・中国人民銀行副総裁は 1 日、「2016 年中米中央銀行ハイレベル対話」で、人民元が大幅に下が
る余地はなく、人民元安による輸出刺激作用は限定的との見方を示した。(3/2 国際商報p1)
4.貿易・海外直接投資
□農業部によると、これまでに、中国の国内投資機関 551 社が世界 80 カ国・地域に農業投資を行い、企業
1,157 社を設置し、中国の海外企業全体の 4.5%を占めた。対外農業投資額は 71 億 7,900 万ドルに達し、全
国の対外直接投資総額の 10.9%を占めた。(2/29 経済日報p11)
□中国社会科学院地域安全研究センター、中国海外政治・経済研究センターは 28 日、「海外投資環境報告
(2015-2016)」を発表し、海外の新興産業やハイテク産業が中国企業による海外買収の重要なターゲットとな
るとの見解を示した。(2/29 人民日報p22)
□EUが中国製固定具に対するアンチダンピング調査の取消を決定したことをうけ、商務部は、歓迎の意を表
明するとともに、EUが WTO の裁決に従ったことは正確な行動であるとの認識を示した。(3/1 国際商報p1)
5.産業・企業(国有企業を含む)
□第 6 回中国家電インターネットショッピングサミットフォーラムが発表した分析報告によると、2015 年の中国B
2B家電市場(モバイル末端を含む)の規模は 3,007 億元に達し、前年同期比 49%増加した。(2/29 国際商報
p1)
□中国料理協会が 29 日発表した「2015 年中国外食市場分析報告」によると、2015 年に中国外食産業の収
入は前年比 11.7%増の 3 兆 2,310 億元に達し、初めて 3 兆元の大台を突破した。(3/1 経済日報p8)
□中国食品工業協会によると、2015 年一定規模以上の食品企業 3 万 9,647 社の収入は 11 兆 3,500 億元で、
前年比 4.6%増加した。(3/1 国際商報p1)
□国家食品薬品監督管理総局によると、同局は 2015 年に全国で計 17 万 2,310 ロットの食品に対してサンプ
ル安全検査を実施し、前年比 21%増加した。サンプル検査の合格率は 96.8%で、前年比 2.1 ポイント上昇し
た。うち乳製品のサンプル検査合格率は 99.5%に達した。(3/1 経済日報p3)
□国家統計局、中国物流購買連合会によると、2 月の中国製造業購買担当者指数(PMI)は 49%で、前月を
0.4 ポイント下回った。2 月の非製造業ビジネス活動指数は 52.7%で、前月比 0.8 ポイント減少した。(3/2 経
済日報p4)
□国家海洋局が 2 日発表した「2015 年中国海洋経済統計公報」によると、2015 年の中国の海洋総生産は 6
兆 4,669 億元で、前年比 7%増加し、同期GDPの 9.6%を占めた。(3/3 経済日報p3)
□沈丹陽・商務部報道官は 2 日、合併買収を通じた外資による国有企業改革への参与を支持すると表明。
(3/3 経済日報p3)
□国家観光局によると、2015 年の中国の国内観光客数は延べ 40 億人に達し、前年比 10.5%増加した。国内
観光収入は 3 兆 4,195 億元で、前年比 13.1%増加した。(3/1 国際商報p1)
6.農業・農村
□曾衍徳・農業部種子栽培司司長はこのほど、今後 5 年間、化学肥料や農薬の使用量の伸び率を 1%以内
に抑え、2020 年までには使用量の伸び率をゼロとする方針を明らかにした。(2/29 人民日報p7)
7.労働・社会保障
□29 日、尹蔚民・人力資源社会保障部部長は、国務院新聞弁公室で記者会見し、生産過剰の解消に向け、
石炭業界で 130 万人、鉄鋼業界で 50 万人の計 180 万人が人員整理の対象となる見通しを示した。(3/1 経
済日報p3、国際商報p1)
8.環境・エネルギー
□国家発展改革委員会、商務部などの部門はこのほど、「グリーン消費の促進に関する指導意見」を発表し、
2020 年に省エネ家電製品の市場シェアが 50%以上になる目標を掲げた。(3/2 国際商報p3)
9.主要国との経済関係
□中国政府経済・貿易代表団団長の高虎城・商務部長とジェイビッド・英国商務・革新・技能大臣は 26 日、バ
ーミンガム市で中英経済貿易協力連合委員会第 12 回会議を主宰した。双方は、①中国の「一帯一路」戦略
と英国の「イングランド北部振興計画」「中部エンジン計画」との連結、②両国の地方・インフラ・サービス貿易・
第三者市場をめぐる両国の実務協力の強化、③貿易投資の円滑化推進、④多国間事務協力の強化につい
て意見交換を行った。(2/27 国際商報p1)
□高虎城・商務部長を団長とする中国政府経済・貿易代表団はこのほど、ドイツを訪問し、中欧貿易摩擦や
中欧投資協定についてドイツ側と意見交換を行ったほか、双方が「中国―ドイツ持続可能発展センター」の
共同設置について一致したことを確認した。(2/29 国際商報p1)
□「中国・米国観光年」の開幕式が 29 日に北京で開催された。(2/29 経済日報p8)
□李克強・国務院総理は 29 日、米大統領特使のルー・財務長官と北京で会談した。李総理は、中国の経済
情勢について、「中国は、更に積極的に財政政策を実施し、サプライサイド改革を力強く推進していく」と強調
したほか、人民元相場について、「中国は、通貨バスケットを参考にし、管理された変動相場制を実行し、人
民元為替レートを合理的でバランスのとれた水準に基本的に安定させる」とあらためて述べた。(3/1 経済日
報p2)
10.その他
□特になし
※本紙の出典は『人民日報』
、
『経済日報』、
『国際商報』、
『中国経済時報』、
『China Daily』他。