景気循環研究所レポート インバウンド消費に復調の兆し 2016 年 11 月 22 日 外国人観光客の百貨店売 上高は依然として低迷 日本百貨店協会が 22 日に発表した、10 月の外国人観光客の売上高・来 店動向によると、同月の免税総売上高は前年比 13.2%減少した。購買客 数は引き続き前年同月を上回っているものの(前年比 8.6%増)、1 人当た りの購買単価が依然として前年比マイナス圏内にとどまっている(同 20.0%減)。為替レートが前年に比べ円高水準にあることから、訪日客の 実質購買力が低下し、百貨店での購買品目が一般物品から消耗品(化粧品 や食料品など)にシフトした影響が大きい。10 月の免税総売上高のうち、 消耗品の売上高が前年比 27.4%増加しているのに対し、一般物品の売上 高は同 24.7%減少している。 外国人観光客 1 人当たり ただ、為替レートの円安転換に足並みを揃えるかたちで、1 人当たり購 の購買単価は 3 ヵ月連続 買単価の落ち込みには歯止めがかかりつつある(図 1)。金額ベースでみ で上昇 ると、14 年の後半から 15 年の春頃にかけて 8 万円台だった 1 人当たり購 買単価は、その後、7 万円台で推移したものの、16 年に入ると 6 万円から 5 万円台へと一気に下落した。もっとも、足元にかけては 16 年 7 月(52,000 円)を底に 3 ヵ月連続で購買単価が上昇している(10 月は 59,000 円)。 10 月の国・地域別にみた訪日外客数をみると、1 人当たり旅行支出額が 嶋中 雄二 景気循環研究所長 最も多い高い中国からの訪日外国人の伸び率(前年比 13.6%増)は全体 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 トは足元、対円で上昇に転じており、中国人観光客の購買力も徐々に高ま シニアエコノミスト する(図 3)。インバウンド消費は復調しつあるといえよう。 宮嵜 の伸び(同 16.8%増)を下回っている(表 1、図 2)。しかし人民元レー ろう。円安は訪日外国人の購買単価のみならず、訪日客数の増加にも寄与 浩 図1. 外国人観光客の売上動向(全国百貨店) シニアエコノミスト 03-6627-5132 (前年比、%) miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 400 福田 圭亮 300 シニアエコノミスト 03-6627-5133 200 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp (前年比、%) ドル・円レート(右目盛) 購買客数(左目盛) 100 0 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。 -100 1人あたりの購買単価(右目盛) -200 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ -300 13 14 15 16 (年、月次) (資料)日本百貨店協会「外国人観光客の売上高・来店動向」などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 1 円 60 安 50 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 円 -40 高 2016 年 11 月 22 日 表 1. 国・地域別の訪日外客数 2016年10月 国・地域 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 図 2. 訪日外国人 1 人当たりの 旅行支出額(2016 年 7-9 月期) (人) 総数 韓国 中国 台湾 香港 タイ シンガポール マレーシア インドネシア フィリピン ベトナム インド 豪州 英国 フランス 米国 カナダ ドイツ イタリア スペイン ロシア その他 (前年比、%) 2,13 5,9 00 449,600 506,200 354,500 154,000 98,300 29,900 36,700 23,300 36,700 24,700 11,500 37,700 32,000 30,000 119,500 29,700 22,900 12,500 11,000 6,500 108,700 0 16 .8 21.2 13.6 3.2 19.3 14.3 18.6 28.8 39.1 42.9 15.5 18.3 27.3 22.0 25.7 24.2 35.6 21.5 22.6 31.2 24.3 10 20 全国籍・地域 30 (万円) 15.5 中国 22.8 ロシア 22.2 イタリア 21.5 ドイツ 20.4 スペイン 20.3 オーストラリア 20.0 イギリス 19.7 シンガポール 17.9 フランス 17.9 アメリカ 17.6 カナダ 16.6 ベトナム 16.2 インド 15.3 香港 14.7 インドネシア 14.6 フィリピン 14.1 タイ 12.3 台湾 12.0 マレーシア 11.8 韓国 6.8 その他 (注)2015年の数値はJNTO推計値。 16.3 (注)パッケージツアー参加費を含む。 (資料)日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数の動向」をもとに (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」 三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 3. 訪日外客数とドル・円レートの関係 80 60 訪日外客数-出国日本人数 (前年差、万人) 10月 26.1 40 20 0 -20 ドル円レート (前年比、%) -40 -13.5 -60 98 99 00 01 02 03 04 (資料)日本政府観光局、Bloomberg 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(年、月) (以 上) みやざき ひろし (16.11.22 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 11 月 22 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMUFG Securities EMEA plcが配布致します。また、米国においては、MUFG Securities Americas Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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