山形県水産振興実践計画

山形県水産振興実践計画
平成20年3月
山
形
県
目
次
1 本計画の趣旨・期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1) 趣
旨
(2) 期
間
2
山形県水産業の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
3
山形県水産業の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
【海面漁業】
(1) 漁業構造
(2) 生産基盤
(3) 水産資源
(4) 漁業生産
(5) 漁業経営
(6) 流通、加工及び他産業との連携
(7) 食の安全安心
(8) 自然や漁村文化とのふれあいを求める人々の増加
【内水面漁業】
(1) 漁業形態
(2) 漁場環境
(3) 水産資源
(4) 漁業生産
(5) 養
殖
(6) 疾
病
(7) 漁場管理
(8) 地域振興
(9) 遊漁の現状
4 山形県水産業の課題と成果目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(1) 良質な水産物の提供
(2) 水産物・水産加工品等の生産・販売、観光産業等への食材の提供等
(3) 豊かな水環境や地域文化とのふれあいの場の提供
5
具体的な施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
【海面漁業】
(1) 消費者が求める水産物の安定的な供給
(2) 漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
(3) 「ゆとりやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
(4) 水産業の振興施策を支える試験研究の推進
【内水面漁業】
(1) 消費者が求める水産物の安定的な供給
(2) 漁業者の収益向上及び関連産業の振興
(3) 「ゆとりやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
(4) 水産業の振興施策を支える試験研究の推進
6
参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
山形県水産振興実践計画
1
本計画の趣旨・期間
(1)趣旨
県では、平成18年3月に、「山形県農林水産業振興計画」を策定し、今後10年間の
本県農林水産業と農山漁村のあるべき姿を展望し、目指すべき方向と施策展開の方針等を
明らかにしました。
水産部門においては、山形県の恵まれた自然を活かして、漁場環境の保全と水産資源の
管理を行いながら、消費者が求める水産物を安定的に生産・供給していくとともに、水産
物の付加価値を高め、漁業者の収益向上や地域特産物の商品化を進めていくこととしてい
ます。
さらに、海面漁業においては、資源管理型漁業や栽培漁業の推進、新たな市場の開拓、
漁場や漁港等の整備を行い、内水面漁業においては、水産資源の造成・増産、遊漁者の増
大を図るとともに、これらの施策を支える水産資源の回復・維持のための試験研究等に取
り組んでいくこととしています。
本計画は、「山形県農林水産業振興計画」の水産分野における実践計画であり、本県水
産業の振興を図るための具体的な施策を提示するものです。
(2)期間
本計画は、概ね10年を計画期間とし、本県水産業を取り巻く環境の変化に、迅速かつ
的確に対応していくため、概ね5年を目途に見直しを行います。
2
山形県水産業の役割
山形県は、多様な水産資源を育む日本海や最上川等の豊かな自然環境に恵まれています。
本県水産業は、これらの豊かな自然を活かして、次のように「県民生活の向上や地域経
済の発展」に貢献していきます。
(1)県民への良質な水産物の提供を通じて、県民の健康で豊かな食生活に貢献していき
ます。
(2)水産物や水産加工品の生産・販売、観光産業への食材の提供等を通じて、地域産業
の活性化に貢献していきます。
(3)豊かな水環境や地域文化とふれあう場の提供を通じて、県民の充実した余暇活動に
貢献していきます。
1
3
山形県水産業の現状
【海面漁業】
(1)漁業構造
日本海北部に位置する本県は、冬期間北西の季節風にさらされる海域であるため、養
殖漁業は発展せず、従来から漁船漁業が中心でした。200 海里時代を迎えるまでは中型さ
けます流し網漁業等の沖合漁業が中心でしたが、現在は、いか釣り漁業以外の沖合漁業
はほとんど行われておらず、小型底びき網漁業、さし網漁業、はえなわ漁業等の沿岸漁
業が中心になっています。
漁業経営体数の推移をみると、昭和48年には 786 あった経営体が、平成17年には
430 経営体となっており、長期的な減少が続いています(出典;「平成17年山形県漁業
の動き」東北農政局山形農政事務所)。
漁船隻数の推移をみると、昭和48年には 904 隻あった隻数が、平成17年には 751
隻となっており、経営体数と同様に長期的な減少が続いています。トン数階層別にみる
と、特に 20 トン以上の漁船が 54 隻から 6 隻へと大きく減少しています(出典;同上)。
漁業就業者数の推移をみると、昭和48年に 2,292 人でしたが、平成15年には
778
人となっており、長期的な減少が続いています。また、年齢構成についても、男子の 60
才以上の割合が昭和48年の 15%から平成15年の 55%と高齢化が進んでいます。また、
就業者の中の自営者の割合では、昭和48年の 44%から平成15年に 70%となっており、
自営者の割合が高くなっています(出典;「第 11 次漁業センサス」農林水産統計部)。
なお、新規就業者数は、近年、数名から 10 数名で推移しており、年度や地域によって
ばらつきがあります。
(2)生産基盤
本県には 15 の漁港があり、種別は、第 1 種が 12 港、第 2 種が 2 港、第 4 種が 1 港と
なっています。管理者別では、県管理の漁港が 6 港、市町管理の漁港が 9 港となってい
ます。毎年漁港機能の維持向上のために浚渫や防波堤改良等の整備が行われています。
また、漁港以外にも、重要港湾 1 港、地方港湾 2 港があります。
(3)水産資源
本県では、昭和30年代から魚礁及び増殖場等の造成による漁場の整備、昭和57年
からは、種苗放流事業を中心とした栽培漁業の実施、昭和61年には漁獲圧抑制のため
に底びき網漁船減船事業の実施、平成元年から始めた資源管理型漁業の推進、平成9年
から導入された漁獲可能量制度(TAC)及び平成15年から開始した漁獲努力量規制 制
度(TAE)等多くの施策が実施されています。これらの施策による相乗効果によって、沿
岸・沖合資源の多くの魚種で資源の回復が図られていますが、魚種によって資源回復の
度合いにはばらつきがあり、マダイ、ハタハタ、サケ等が増えていますが、マガレイ、
シロギス等は減少しているのが現状です。
(4)漁業生産
本県漁業者による生産量の推移をみると、昭和51年の 18,893 トンから、平成10年
2
に 7,005 トンまで減少した後、7,000 トン前後で増減を繰り返しており、平成17年の生
産量は 7,430 トンとなっています。また、生産額については、昭和51年の 5,144 百万
円から、昭和57年に 8,226 百万円まで増加した後、減少傾向が続いており、平成17
年の生産額は 2,838 百万円となっています(出典;同上、属人統計)。
また、本県へ水揚げされた漁獲量の推移をみると、昭和51年の 19,398 トンから、昭
和61年に 7,667 トンまで減少した後、やや回復傾向にありましたが、ここ数年は、8,000
トン前後で推移しており、平成18年の漁獲量は 8,236 トンとなっています。また、生
産額について昭和51年の 7,085 百万円から、平成12年に 3,195 百万円まで減少した
後、3,000 百万円前後で推移しており、平成18年の生産額は、3,185 百万円となってい
ます(県漁協調べ、属地統計)。
(5)漁業経営
本県漁業者の経営は、漁業収入の伸び悩みと漁業支出の増加により、厳しい状況が続
いています。
漁業収入に関しては、マダイ、ヒラメ、ホッコクアカエビ、アワビ等の高級魚を中心
として産地価格の長期的な低迷が続いています。原因としては、景気の低迷、魚離れ
による消費の減少、中食・外食の増加やスーパーの台頭による価格形成システムの変
化等が考えられます。これまでは、輸入水産物の増加も、魚価下落の大きな要因とな
っていましたが、近年、国外での水産物需要が増加してきており、国際的な水産物需
要の増加が魚価にどう影響してくるかは、不透明な状況です。
漁業支出の増加に関しては、原油価格の高値安定による燃料費、資材費等の負担増
が大きな要因となっています。加えて、更新時期が近づいている漁船も多く、今後、
代船建造経費の負担が漁業経営を圧迫することが懸念されます。
(6)流通、加工及び他産業との連携
本県の漁獲物のほとんどが、生鮮・冷凍品として産地市場に出荷されており、消費地
への流通については、仲買人を通じた流通となっています。また、飛島のツルアラメと
トビウオの乾燥製品を除けば、商業的な水産加工品の製造規模は小さいものとなってい
ます。出荷された漁獲物の概ね 50%以上が県外に流通しており、三陸、北陸、関東等に
出荷されています。また、内陸への流通は少なく、ここ数年の山形市中央卸売市場にお
ける県内産水産物の割合は、10%未満となっています。
庄内地域においては、庄内浜で獲れた魚介類が、多くの飲食店や旅館等で地元食材と
して活用されており、特に、厳寒期のマダラを使った「寒だら汁」は、庄内地域のみな
らず、山形県の観光の大きな目玉となっています。
なお、近年は、地産地消の活動が活発化してきており、水産物についても、県内消費
の増加に向けた取り組みが進められてきています。
(7)食の安全安心
食品の偽装表示問題やBSE、鳥インフルエンザの発生などを背景に、消費者の食の
安全安心に対する関心が高まっています。
消費者の安全安心志向の対応として船に海水冷却装置や海水殺菌装置を設置し、鮮度
保持と衛生管理を行うとともに、出荷する箱にステッカーを貼り差別化を図るなどの対
3
応が進んできています。また、ノロウイルス等の貝類の食中毒を防止するための出荷の
自主規制やモニタリング検査等の取り組みも行われています。
(8)自然や漁村文化とのふれあいを求める人々の増加
余暇時間の増加、趣味の多様化、自然志向といった傾向が強まるなか、海や川とのふ
れあいや遊漁などのレジャー、漁村文化とのふれあいを求める人々が増加しています。
これらに対応して、イベント・祭り等の漁村文化に触れる場も増加しています。また、
自然教育の一環として、児童生徒等による放流活動も各地で実施されています。平成1
8年には漁協や市町村が主催する 21 のイベントや放流活動が実施され、約 133,000 名の
参加者がありました。
一方で遊漁者の増加により、海面利用をめぐって漁業者と遊漁者の競合やあつれきも
生じてきています。
【内水面漁業】
(1)漁業形態
山形県には、最上川、赤川、荒川水系の一級河川をはじめとし、いくつかの二級河川
があります。また、湖沼として、タキタロウで有名な大鳥池や月山湖をはじめとするダ
ム湖や沼も多くあり、これらの水域を活動の場とする 17 の内水面漁業協同組合に、第五
種共同漁業権が免許されています。これら漁場において漁業並びに遊漁が行われていま
す。また、渓流釣り、アユ釣り、サクラマス釣りについては、県外からの遊漁者も多く
本県の魅力の一つとなっております。最近では、寒河江川、月光川においてサケの釣り
調査が行われており、将来、遊漁の対象としてサケを利用することができないか検討さ
れています。
内水面漁協の組合員数は、平成7年には 18,765 人いましたが、平成17年には 14,929
人になり、減少傾向を示しています(出典;山形の水産)。一方、遊漁者数は、平成5年、
10年、15年の第 9 次、10 次、11 次漁業センサスによれば、いずれも 20 万人を超え、
昭和53年の第 6 次漁業センサスの値と比べおよそ 10 万人の増加となっており、内水面
における遊漁は重要な位置づけとなっています。
(2)漁場環境
主要な河川環境項目である水質、河川形態、生物環境については以下のとおりです。
内水面水産試験場で行っている付着藻類や底生生物の漁場環境モニタリング調査によ
ると最上川上流や中流域における市街化地域での水質汚濁は顕著ですが、下流へ向かう
に従って水質は改善されることが分かってきました。このように市街化地域を流れる河
川は、生活廃水や工場排水の影響を受けていることが考えられます。
自然が豊かと言われている本県の河川形態も、他地域と同様に河川工作物による有用
魚種のそ上阻害や護岸工事などによる淵、川岸の草木の消失、河川の直線化、河床の平
坦化など、本来の河川のあるべき姿が失われつつあります。
生物環境については、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚やカワウによる食害が問
題になっています。外来種によって貴重な在来種の生存が脅かされていることから、平成
16年6月に特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律が制定され、移
4
動の禁止や防除に関する事項が定められました。本県でも、内水面漁業調整規則に基づく
移植の禁止や、各地で駆除等の対策が実施されてきましたが、未だ十分とはいえません。
また、 カワウについては、平成14年に県南漁協管内で初めて確認されてから、ここ数
年で飛来数の大幅な増加や営巣が確認されており、アユ等重要資源の食害が危惧されてお
ります。
(3)水産資源
内水面における水産資源は、自然繁殖によるほか、漁業権魚種については内水面漁業
協同組合による放流や産卵場の造成等によって回復・維持が図られています。
アユ資源は、天然稚アユに依存するところが大きく、現在、産卵親魚を保護するため
に禁漁措置を講じながら、加えて、自県産稚アユの種苗放流を行って資源の維持を図っ
ています。
また、サクラマスについては、最上川の漁獲量を見る限り減少傾向にありますが、各
漁協による放流等が継続して行われています。
サケについては、これまでのふ化放流事業の継続によって、最近の漁獲量は良好に推
移しています。
モクズガニは平成16年から漁業権魚種となり、栽培漁業センターにおいて種苗生産
が行われるようになり、毎年 2 万尾弱の種苗が放流されています。
(4)漁業生産
漁業生産については、昭和63年~平成4年までは 1,000 トンを超える漁獲量があり
ましたが、その後は減少傾向になっていました。しかし、平成16年には約 1,200 トン、
平成17年も 1,000 トン近い漁獲量になっています。(出典;「平成17年度山形県漁業
の動き」東北農政局山形農政事務所)。
平成17年の漁獲量を魚種別に見ると、サケの漁獲量が最も多く約 576 トン、次いで
ウグイが 79 トン、アユが 78 トンとなっています。(出典;同上)。平成17年の生産額
については、アユが最も多く 260 百万円、ウグイ 64 百万円、サケは 60 百万円となって
います(生産技術課推計)。
(5)養殖
本県における養殖業は、江戸時代から行われている食用コイの養殖をはじめとして、
アユ、フナ、ニシキゴイ等の温水性魚類や、ニジマス、ヤマメ、イワナ等の冷水性魚類
の養殖が行われていますが、本県養殖業の特徴的なことは、ニジマスとコイの 2 魚種で
80%以上の生産量になることです
ニジマス生産量は、平成 12 年まで 300 トン以上ありましたが、世界的なサケ・マス類
の養殖生産量の増大を背景に、国内の輸入量の大幅な増加に伴い、生産量は減少し、平
成17年には 189 トンまで低下しました。
在来マス類の生産量は、平成10年前後には 90 トン程度でしたが、平成17年には 61
トンにまで減少しました。しかし、独自の販路や加工製品を持っている業者は生産量を
維持しております。
コイは、主に置賜地方を中心とした加工用の原魚として供給され、昭和40年代には
1,000 トン前後であった生産量は、昭和50年代に入り、他県産の安価なコイを原魚とす
5
る加工業者が増加し、年々生産量は減少していきました。このような背景の中で、平成
15年に全国的に発生したコイヘルペスウイルス(KHV)病のため、他県からの移入量が
激減し、加工用原魚を他県産に依存する加工業者は大きな影響を受けました。その後、
本疾病の発生地区外の生産地からの移入等により、加工用原魚が確保されてきており、
平成16年に 100 トン程度まで減少した県内生産量は、平成17年には 140 トン程度に
まで回復してきており、増加傾向にあります(出典;「平成17年山形県漁業の動き」東
北農政局山形農政事務所)。
(6)疾病
アユの冷水病は、全国的には養殖場だけでなく天然水域においても被害が大きいもの
となっていることから、感染防止策に力が注がれた結果、これまでのところ、県内での
発症による大量斃死は確認されていません。
また、ヤマメ・ギンザケ養殖や種苗生産によって本県に持ち込まれた細菌性腎臓病
(BKD)が、サクラマスの回帰率の低下と結びついている可能性があることが指摘されて
います。
さらに、平成15年からは、コイヘルペスウイルス病が霞ヶ浦をはじめ全国的にまん
延しています。本県においても平成16年に大発生し、17年、18年と発生件数は大
幅に減少しましたが、最上川、赤川、新井田川水系、並びにこれら河川から取水してい
る用水路等に生息しているコイが既に感染しているものと推察されます。
このように、これらの疾病はこれまでの魚病と違って天然水域におけるまん延が特徴
的といえます。そのため、漁業や遊漁にも影響を及ぼし漁協の経営上の問題ともなって
います。また、これらの疾病は養殖において、生産量が激減するほどの影響も及ぼして
います。
(7)漁場管理
漁場ついては、内水面漁業協同組合が種苗放流、産卵場の保護・造成などを行い管理
していますが、組合員の減少や高齢化の進行と同時に漁協間における収入面での格差が
生じています。そのため、増殖事業や漁場管理が充分に行えず、漁場の荒廃が危惧され
ています。
(8)地域振興
白鷹町、大江町、最上町のアユやな場における観光客の賑わいや西川町大井沢の管理
釣り場と連携した民宿の人気にみられるように、アユや渓流魚等を利用した産業が活性
化する等、地域振興に果たす内水面漁業の役割は大きいものがあります。その結果とし
て、イベント・祭り等を通じて都市との交流の場も増加し、また、自然教育の一環とし
て、児童生徒等による稚魚の放流活動も各地で実施されています。平成18年には内水
面漁協や市町村が主催する 61 のイベントや放流活動が実施され、約 75,000 名の参加者
がありました。
(9)遊漁の現状
遊漁者の増加とともに遊漁証の発行枚数も増加傾向にありましたが、平成14、15
年のアユ漁業の不振にともない大幅に遊漁証の発行枚数が減少しました。しかし、アユ
6
資源の回復とともに遊漁証の発行枚数も回復する傾向にあります。
平成16年に内水面水産試験場がまとめた「渓流と渓流魚に関する一般県民の意識」
では、多様化する釣りブームの中で、期待する釣果が得られないなど、遊漁者の満足度
はまだまだ低いことが示されています。
遊漁者、漁協、研究者、行政関係者が参画した釣りフォーラム等を通じて放流やゾー
ニング等、漁場管理のあり方についての課題を共有し、着実な課題解決に向けた対策が
必要となっています。
4
山形県水産業の課題と成果目標
(1)良質な水産物の提供
ア
漁業の担い手の確保・育成
漁業就業者の減少や高齢化が進んでいます。良質な水産物を安定的に県民に供給し
ていくために、担い手の確保・育成を図り、漁業者の円滑な世代交代を推進していく
ことが必要です。
イ
水産資源の回復・維持
水産資源の回復の度合いは、魚種によってバラツキがみられます。有用魚種の資源
を回復し、維持するため保護増殖対策や生息環境の改善を行うとともに、限りある水
産資源を持続的に活用していくための体制の構築が必要です。
ウ
安全安心な水産物の供給
食の安全安心に対する消費者の意識が高まっています。水産物に対する消費者の信
頼確保のために、鮮度保持や衛生管理を強化する必要があります。また、養殖業にお
いては、水産用医薬品の適正使用を徹底し、さらに医薬品の使用に頼らない生産体制
を整備していくことが必要です。
成果目標
漁業生産量
成果目標達成の
ための指標
海面漁業
現況
8,360 トン
(平成 13~17 年平均)
現況
7,077 トン
(平成 13~17 年平均)
内水面漁業
1,283 トン
(養殖業を含む)
(平成 13~17 年平均)
新規就業者数
3 人/年(平成 18 年)
7
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
8,400 トン
8,400 トン
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
7,100 トン
7,100 トン
1,300 トン
1,300 トン
5 人/年
7 人/年
資源管理対象魚種数
4 種(平成 18 年)
6種
7種
海面養殖生産量
0 トン(平成 18 年)
2 トン
5 トン
(2)水産物・水産加工品等の生産・販売、観光産業等への食材の提供等
ア
漁業経営の改善
魚価の低迷等による収入の伸び悩みや原油価格の高値安定等による支出の増加に
より、漁業者の経営は厳しい状況が続いています。需要の拡大・ブランド化による魚
価アップや生産コストの削減を進める必要があります。
イ
関連産業との連携
他産業との結びつきを強めることにより、より一層の水産業の振興が期待されま
す。漁業を核として地域経済を活性化していくために、観光業や加工業等の関連産業
との連携を強化していくことが必要です。
成果目標
漁業生産額
成果目標達成の
ための指標
海面漁業生産額
内水面漁業生産額
山形中央卸売市場での
県内産の割合(金額ベ
ース)
庄内浜文化伝道師
認定数
現況
40 億円
(平成 13~17 年平均)
現況
28 億円
(平成 13~17 年平均)
12 億円
(平成 13~17 年平均)
8%
(平成 13~17 年平均)
0 名(平成 18 年)
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
44 億円
44 億円
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
30 億円
30 億円
14 億円
14 億円
12%
15%
60 名
60 名
(3)豊かな水環境や地域文化とのふれあいの場の提供
ア
都市と漁村の交流環境の整備
川や海などの自然や漁村文化とのふれあいを求める人々が増えています。これらの
ニーズに応えるため、都市と漁村等との交流がさらに促進される環境を整備していく
ことが必要です。
8
イ
漁業者と遊漁者との共存
遊漁者の増加に伴い、資源や漁場における競合も生じてきています。漁業者と遊漁
者が共存できるように、両者の相互理解を深め、水面利用のルールづくりを進めてい
くことが必要です。
成果目標
漁村との交流人口
現況
21 万人
(平成 18 年)
成果目標達成の
現況
ための指標
遊漁証発行枚数
2 万 6 千枚
(平成 13~17 年平均)
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
23 万人
25 万人
平成 22 年
平成 27 年
中間年
目標年
2 万 8 千枚
3 万枚
5 具体的な施策
4で述べた本県水産業の課題を解決し、成果目標を達成するため、施策を体系化して、
本県水産業の振興施策を実施していきます。
【施策体系】
(1)消費者が求める水産物の安定的な供給
ア
漁業の担い手の確保・育成
イ 水産資源の回復・維持
ウ
水産物の安全安心の確保
(2)漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
(3)「ゆとりとやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
(4)水産業の振興施策を支える試験研究の推進
【海面漁業】
(1)消費者が求める水産物の安定的な供給
ア
漁業の担い手の確保・育成
本県漁業就業者の世代交代と新規就業者の確保を促進するとともに、これまでに培わ
れた漁労技術や資源管理の方法等を確実に伝承して行くとともに、担い手の経営能力の
向上を図り、安定した生産体制を作ります。
9
・山形県漁業就業者確保育成協議会の設置
県、市町及び漁協等関係機関による協議会を設置し、現状の分析を行い、今後必要
とされる担い手の確保策を検討します。
・新規就業者の確保
雇われ漁業就業者の独立自営を促進することで、新たな経営体と新規就業者を同時
に増やすため、各種の研修制度の充実を図ります。また、制度資金については、既存
の融資制度の利用促進に努めるとともに、より利用しやすくかつ実際の需要に応えら
れる制度の検討を行います。
また、「就業者確保育成センター」を引き続き設置し、新規就業希望者に対する情報
提供を随時行っていきます。
・漁業士活動に対する支援
県の認定する指導漁業士及び青年漁業士で組織する「山形県漁業士会」が行う、青
年漁業者や青少年に対する各種の指導活動の充実を図るため、漁業士の資質向上に必
要な研修や他県漁業士との技術交流等に対する支援を継続して実施します。
・中堅漁業者への支援
将来の本県沿岸漁業の中核を担う意欲と能力のある青年漁業者グループ等が行う、
鮮度保持対策技術、活魚出荷技術の習得などの高付加価値化の取り組みや、ダイビン
グ案内、観光漁業など経営の多角化の取り組み等に対し継続して支援していきます。
・青少年の漁業(海)に親しむ機会の拡充
水産高校との連携で県内中学生を対象とした水産業への理解を深めるための少年水
産教室を実施し、水産高校生に対しては底びき網、定置網の各漁業体験と漁業者との
交流会を開催し、就労体験の機会を提供します。また、「親子科学教室」等の小中学生
を対象にした活動についても積極的に展開していきます。
イ
水産資源の回復・維持
乱獲を防止し、限りある資源を有効に利用するとともに、有用魚種の種苗を放流し、
幼稚魚の育成場の確保・整備を行い、水産資源の積極的な回復・維持を図ります。
・資源管理型漁業の推進
TAC や TAE 制度等を着実に運用することにより、資源管理型漁業の推進体制を堅持
するとともに、ハタハタ、マガレイ、シロギス、ヒラメの魚種別資源回復計画や、底び
き網における魚種を限定しない包括的な資源回復計画を策定・実践し、有用魚種の資源
回復を図ります。
・栽培漁業の推進
「第 5 次栽培漁業基本計画」に基づき、山形県における有用魚貝類のうち種苗生産技
術が確立しているアワビ、ヒラメ、クロダイの種苗を生産し、放流することによって、
これら水産資源の回復・維持を図ります。また、新たな栽培漁業や養殖の対象魚種とし
て有望な魚種について検討します。
・漁場の整備
種苗の放流ができないイワガキ等については着定基質や産卵礁等の増殖施設を整備
します。また藻場造成を行い、沿岸域の環境保全と基礎生産力を向上させます。
・漁業調整・取締
10
各種漁業者間の調整を図り、資源と漁場の有効利用を推進するとともに、漁業監視調
査船「月峯」等による監視を機動的に実施し、漁業秩序の維持と県益の確保を図ります。
ウ
水産物の安全安心の確保
食品の品質や安全性に対する消費者意識の向上により、生産者が食品の品質や安全性を
保証することは当然のことになりました。さらに、水産物は鮮魚として流通し、刺身など
生で食されることが多いので、鮮度の保持や衛生管理については、より一層の対策強化を
図ります。
・衛生管理及び鮮度保持対策の推進
鮮度保持、衛生管理対策は魚貝類の漁獲時から始まることを漁業関係者に対して意
識付けするとともに、漁船に海水殺菌装置や冷却装置を装備する漁業者に対して、制
度資金による財政的な支援を行います。
・産地市場の高度衛生管理対策の推進
漁業者や漁協職員並びに仲買人等の漁港施設(荷さばき場)利用者に対して、衛生
管理のための講習会開催や出荷体制のルールづくりを進め、高度な衛生管理体制を構
築するほか、トレーサビリティシステムの導入も視野に入れた高度な衛生管理対策に
ついて検討を進めます。
・貝類の安全対策及び増養殖水産物の安全性確保
生食されるイワガキについては、衛生基準を満たし、かつノロウィルスや貝毒等によ
る食中毒の発生を防ぐために、衛生対策について生産者に対する指導を行うとともに、
各種検査が円滑に行われるようその実施について支援します。
また、放流用種苗や養殖水産物について飼育技術の向上や水産用医薬品の適正使用に
ついて指導・啓発に努め、安全性の確保を図ります。
(2)漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
地場の水産物の消費拡大により漁業者の収益向上を図り、他産業との連携を積極的に
展開して流通ルートを拡大するとともに、生産性向上のための基盤施設の整備を図りま
す。
・地場水産物の消費拡大
一般県民が地元産の水産物のおいしさを再認識するとともに、おいしく食べるため
の技術(料理方法)を習得してもらうために地魚料理教室を開催します。
また、「庄内浜文化伝道師」の認定を行い、伝統料理やおいしい料理作りの技術を普
及し、地元産魚貝類の「食」に関する知識や「食」を選ぶ力を養うことにより、地産
地消を推進します。
・県産水産物のブランド化
県漁協が計画しているマダイ、ズワイガニ、トラフグ等の東京築地市場への直送ル
ート開拓事業を支援し、庄内浜魚貝類の首都圏への浸透を図り、「庄内浜」ブランドイ
メージの構築を推進します。
また、「寒ダラ」のように、県産水産物が新たな地域観光の目玉になるようにPRを
行い、ブランド化を推進します。
11
・県産水産物の新たな販路の開拓
海外向け出荷や大消費地への供給ルート等に関する情報提供や関連産業との連携を
強化することにより、県漁協等が進める水産物の販路拡大を支援します。
また、地魚料理教室の参加者等の新たなユーザーに新鮮な県産水産物を確実に提供
できるような供給ルートの構築を支援します。
・加工品開発への支援
伝統的水産加工品の掘り起こしとブラッシュアップを進めるとともに、低価格魚の
付加価値向上を図るために関連産業との連携を深めます。また、水産高校と漁協女性
部との連携を強化するとともに、海洋深層水を活用した特産品の開発・付加価値創出
等を支援し、漁業者等の加工品の開発・販売促進活動の活性化を図ります。
・「海業」等の振興
魚貝類の直販店やシーフードレストラン、宿泊施設、遊漁船業、マリンスポーツ案
内業など海という資源を多角的に有効利用するいわゆる「海業」の展開を促進します。
これにより、交流人口の増加、
「ゆとりとやすらぎ」を与える漁村の魅力をアップし、
関連産業の振興を図ります。
・漁港・漁場の整備
漁港を時化の際にも漁船が安全に航行・係留でき、また漁獲物を安全かつ効率的に
水揚げできる施設として、漁港内の静穏性と航路を確保するため、圏域別の「総合水
産基盤整備事業計画」に基づき、防波堤等の改良や浚渫を行います。
また、増殖された水産資源を効率的に漁獲する方策として、上記計画に基づき、増
殖施設と連携した魚礁施設の整備を行います。
・離島漁業の再生支援
漁獲物の輸送や漁業資材の搬入等で不利な条件にある飛島では、離島漁業再生支援
交付金等を活用して、漁場の生産力の向上や特産品の開発等の漁業者の活動を支援し
ます。
・漁業生産における省エネ・省力化と安全性確保
漁業生産におけるコストダウンを図るため、省エネ・省力機器の導入や省エネ・省
力型漁船への代船建造を促すとともに、救命胴衣の着用や漁業無線の活用促進等によ
り漁労の安全性を確保し、海難事故の防止を図ります。
また、新たな漁場・資源の開拓や、漁具・漁法の改良を促進し、漁業収益の向上と
漁労の省エネ・省力化を図ります。
・漁業協同組合の機能強化
資源管理型漁業や栽培漁業の推進による水産資源の回復・維持や水産物の販路拡大
に大きな役割を担う漁業協同組合の機能を強化させるための助言・指導を行っていき
ます。
(3)「ゆとりとやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
漁村の持つ豊かな自然と風土や文化をアピ-ルし、交流人口を増やすことにより、県
民にゆとりとやすらぎの場を提供するとともに、漁村の活性化を図ります。
12
・漁村、漁港の安全性の確保
漁港や漁村は魚貝類の生産流通拠点としての役割だけでなく、親水性レクレーショ
ンの場でもあるので、漁港区域の安全性を高める必要があります。特に、防潮堤の設
置等により津波対策を強化します。
・都市と漁村の交流促進
沿岸市町が各地で行う各種イベントや交流活動に対して助成し、都市と漁村の交流
を促進し、交流人口の増加による漁村の活性化を図ります。
また、交流センターの設置等の事業と連携して、緑地・駐車場等の漁港環境を整備
します。
・漁業と遊漁の共存
資源や漁場における競合を調整するため、漁業者と遊漁者の話し合いの場を提供し、
相互理解を促進します。また、特に火光釣りについて、漁業者と遊漁者の合意形成に
向け行政の働きかけを強化します。
・環境保全活動への支援
各種基金等を通じ、沿岸地区住民が参加する海浜クリーン活動を支援するとともに、
NPO や漁業者が行う魚の森づくりや藻場回復事業等の環境保全活動に協力し、民間主導
の環境保全活動の充実を図ります。
(4)水産業の振興施策を支える試験研究の推進
試験研究の推進にあたっては庄内浜の地域性を活かし、これまでの生産者の視点に
立った研究開発に加え、安全安心で良質な水産物の安定供給を期待する消費者等のニ
ーズに応える研究開発を強化します。また、漁業生産活動への指導・支援を一層充実
させるとともに、庄内浜を中心とした水産関連情報を積極的に発信していきます。
ア 消費者が求める水産物の安定的な供給
(ア)水産資源の回復・維持
・資源管理型漁業の推進
漁業試験調査船「最上丸」等による調査で、重要魚種の資源動向をモニタリン
グするとともに、他の有用種について、漁獲実態や資源分布・生態調査等を行い
資源評価・管理手法を確立します。
また、漁業試験調査船「最上丸」と漁業監視調査船「月峯」が、沿岸域の水温・
塩分の観測やプランクトン・ベントスの採集を行い、漁場環境や基礎生産力を把握
します。
・栽培漁業の推進
アワビ、ヒラメ等放流対象種のモニタリングを継続するとともに、新たな増・養
殖の対象として有望な魚貝類について種苗生産、放流方法、養殖手法等の技術開発
を行います。
また、サケ・サクラマス、アユについて資源の維持・増大を図るため、海域での
分布、回遊生態等の調査を行います。
13
・漁場の整備
魚貝類の産卵・育成場として重要な藻場や砂浜域あるいは増殖場の保全や新規造
成のための環境調査・生物調査等を行い、本県沿岸に適した造成・管理方法を確立
します。
(イ)水産物の安全安心の確保
・衛生管理及び鮮度保持対策の推進
主要魚種の適切な保冷水温やマダラの簡易雌雄判別方法の検討など、生産現場に
おける鮮度保持・商品価値判定等の技術開発を行います。
・貝類の安全対策及び増・養殖水産物の安全性確保
増・養殖の生産現場において、水産用医薬品の使用を必要最小限に抑えるため
の技術改良や開発を行います。
また、良好な漁場環境を維持するため、底生生物や底質調査によるモニタリング
を行います。
イ 漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
・県産水産物のブランド化
カニ類の陸上養殖など本県沿岸の環境条件を考慮した新たな養殖技術の開発を行
います。また、漁業者や漁協の取り組みと連携し魚種に応じた効率的な蓄養・活魚
輸送技術の開発を行い県産水産物のブランド化を進めます。
・漁業生産における省エネ・省力化と安全性確保
計画的な営漁活動と効率的な操業を支援するため、重要魚類の漁況予測技術の確
立・精度向上を図るとともに、「最上丸」や「月峯」の海洋観測情報を始めとする県
内外の漁海況情報の収集、解析、提供体制を充実させます。特に、「最上丸」につい
ては、試験操業を行うことで、より実用性の高い漁況予測情報を提供していきます。
また、効率的な漁具・漁法の開発・改良や大型クラゲの来遊など操業の障害とな
っている事象を回避するための技術開発、および未利用資源・未利用漁場の調査を
行います。
ウ「ゆとりとやすらぎ」をあたえる漁村・漁場環境の整備
・漁業と遊漁の共存
漁業と遊漁の相互理解を促進するための調査・研究を行います。
【内水面漁業】
(1)消費者が求める水産物の安定的な供給
ア 水産資源の回復・維持
有用魚種の放流・産卵場の管理などを実施し、水産資源の積極的な回復・維持を図り
ます。
14
・有用魚種の資源造成
a.サクラマス
サクラマスの資源造成については「山形県におけるサクラマス増殖事業の現
状・今後の取り組み方向」に基づき推進していくこととし、その第 1 歩として
より効果的な資源造成を行うため、そ上系親魚を由来とする放流種苗への転換を
図ります。そのため、サクラマス親魚を効率的に確保する必要があることから採
捕期間の検討を行います。また、降海するサクラマスを保護するため、ヤマメの
解禁日についても検討していきます。同時に、自然再生産が可能な河川について
は、サクラマスの種川として全面禁漁の設定や禁漁区域等の設定についても検討
していきます。
細菌性腎臓病については、大学等関係機関からの指導を得ながら細菌性腎臓病
フリーの放流種苗の生産を目指し、撲滅に向けて取り組んでいきます。
b.サケ
サケ資源の維持を図るため、現状を踏まえたサケ資源造成に関する計画を立案
し、現在のふ化放流数を維持できるよう、経費負担の見直しを行うとともにふ化
事業に必要な財源の確保対策について検討します。沿岸来遊群は定置網の他にさ
し網で漁獲することを認め、さし網漁業者から新たに協力金を徴収することや余
剰卵の利用によるサケのふ化事業の財源とすることを考えていきます。
c.アユ
安定した天然稚アユ資源の造成のため、適切な親魚の禁漁措置とともに産卵場
の整備・管理を推進します。
アユの冷水病対策としては、取りまとめられた感染の実態や防疫の方策に基づ
いて、冷水病フリー種苗の生産・放流を行うとともに、感染原因と考えられる県
外からのオトリアユの持ち込み禁止や漁具の消毒等、防疫体制を徹底していきま
す。
・生息環境の整備
魚類のそ上を手助けする魚道の整備や維持・管理について関係機関に働きかけ、
さらに、河川工作物の設置や改良に対して具体的な方策を提言していきます。
・外来魚、カワウ対策
外来魚については、隣県、漁協、市町村、NPO 等と連携し、継続して駆除対策に
取り組み、密放流対策についても徹底した指導を行っていきます。
カワウについては、外来魚と同様に関係団体との連携を持ちながら、防除対策に
取り組んで行きます。
・漁業協同組合の経営安定化
漁業権魚種の種苗放流や産卵場の造成を行うなど、水産資源の回復・維持に大き
な役割を担う漁業協同組合の経営を安定化させるための助言、指導を行っていきま
す。
イ 水産物の安全安心の確保
食品の品質や安全性に対する消費者意識の向上により、生産者が食品の品質や安全性
を保証することは当然のことになりました。そのため、養殖魚生産における医薬品の使
用については、より一層の指導強化を図ります。
15
・医薬品使用の低減
養殖魚や放流種苗に対する医薬品の使用については、厳重な医薬品の管理および
適正使用の指導を徹底します。さらに、魚病の発生を予防し、医薬品そのものの使
用を低減するような生産・管理法について指導していきます。
・コイヘルペスウイルス病のまん延防止
コイヘルペスウイルス病は養殖場だけでなく天然水域においても発症し、有効な
治療法もなく甚大な被害をもたらすため、発症した養殖場においては、持続的養殖
生産確保法に基づいて移動禁止や処分措置命令の措置を行い、河川等公共水面にお
ける発症については、まん延防止のため漁場管理委員会指示によりコイの持ち出し
禁止区域の設定を行います。
(2)漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
サクラマス、アユ等の有用魚種やコイ、マス類等の養殖魚を活用し、観光産業等と
の連携を積極的に展開することにより、地域振興の資源として活用していきます。
・養殖業の振興
コイ養殖については、成長促進による養殖期間の短縮化や先端技術による雌だけ
の養殖技術の開発等による効率化を図り、さらなる養殖生産の拡大を目指します。
マス類等については、養殖生産量の維持・増大に向けて、養殖魚の新たな販路の
拡大や甘露煮に代わる新たな加工製品の掘り起こしの検討を行います。
また、アユやモクズガニ等、新たな養殖種の普及についても検討していきます。
・有用魚種のブランド化
有用魚種の中でも、サクラマスは高級魚のイメージが強く、山形県庄内発のブラ
ンド魚として、さらに全国へ情報発信します。アユなど他の魚種についても、ブラ
ンドイメージの確立のため、全国へ情報発信を行っていきます。また、有用魚種を
利用した加工品の PR を行うとともに、新たな加工品の掘り起こしにも取り組んで行
きます。
(3)「ゆとりとやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
本県が持つ豊かな自然と風土や文化を県民に対して PR し、遊漁の振興を図ることに
より交流人口を増やし、県民に対してゆとりとやすらぎの場を提供していきます。
・遊漁の振興
本県には赤川を始めとする有数のサクラマスの釣り河川があり、
「サクラマス釣り
フォーラム」などの開催を通じて、本県におけるサクラマス釣りの振興を図ってい
きます。また、「渓流と渓流魚に関する一般県民の意識」に基づいて、ゾーニングな
どの新しい資源管理手法を取り入れ、多様化した渓流釣りに対応できるよう取り組
んでいきます。
さらに、調査釣り段階にあるサケ釣りを本格的な釣りへと働きかけをします。
・川や魚と親しむ機会の拡充
16
子どもや女性に対して釣り講習会や魚とふれあう場を提供し、釣りや河川流域の
自然の魅力を伝えていきます。
・漁協と遊漁者の相互理解の促進
漁協の適正な増殖事業の実施を指導していきます。また、漁協と遊漁者間の遊漁
料に関するトラブルや外来魚釣りの問題などの解決のため、話し合いの場を提供し、
相互理解を促進します。
(4)水産業の振興施策を支える試験研究の推進
自然豊かな本県の特性を活かした資源の回復・維持や安全な食材の生産等、県民の
ニーズに応えるため地域を含めた収益の向上や環境の保全のための試験研究を推進し
ます。
ア 消費者が求める水産物の安定的な供給
(ア)水産資源の回復・維持
・有用水族の資源造成
a. サクラマス
自然水域での発育段階ごとの生育環境を明らかにするとともに、減耗要因を調
査し、各河川に適した放流等の増殖技術を開発します。また、禁漁措置等を含め
た効果的な資源管理技術を開発します。さらに、地域ごとの遺伝的多様性を調査
し、ゾーニング管理を取り入れた効果的な地域資源の保護及び漁業資源の管理手
法を開発します。
細菌性腎臓病については、天然水域での保菌状況を調査するとともに、細菌性
腎臓病フリー種苗の生産技術を開発し、放流種苗の県内無菌化に向けた技術開発
を行います。
b. サケ
健全な放流種苗の生産のため、県内サケふ化場において卵管理・ふ化仔魚の飼
育管理・放流などの技術指導を行います。
c. アユ
最上川を中心とした産卵生態を調査し、資源保護に向けた効果的な禁漁方法を
提案します。また、禁漁後はモニタリング調査など効果の検証を行うとともに、
本県河川に適した産卵場の造成技術の開発及び検証を行います。また、県内のア
ユ漁場の特徴と課題を調査し、効果的な放流方法を指導します。
アユの冷水病について、防除のために必要な放流種苗検査、漁場における発病
監視を継続します。
・生息環境の整備
最上川におけるモニタリング調査や良好な漁場環境の維持に向けた調査を継続
し、最上川の水質について監視を強化します。
・外来魚、カワウ対策
ブラックバス等の外来害魚、カワウなどによる漁業被害の調査、防除・駆除技
術の開発を進めていきます。
(イ)水産物の安全安心の確保
17
・医薬品使用の低減
マス類養殖においては、消毒剤の使用量を低減した卵消毒法や医薬品を使用し
ない卵管理技術の指導を徹底し、疾病の発生を未然に抑制する飼育方法について
の研究を進めていきます。
・コイヘルペスウイルス病のまん延防止
新たな水域への被害拡散防止のため、迅速かつ正確な検査体制を築きます。ま
た、コイヘルペスウイルス病の指定地域の解除に向けた調査を進めていきます。
イ 漁業者の収益向上及び観光業・加工業等関連産業の振興
・養殖業の振興
養殖業者や加工業者からの要望が強いコイ全雌生産については、より効率的に行
われる性コントロール技術の開発を行います。また、サクラマス(ヤマメ)につい
ては、選抜育種を行い、本県の養殖環境に適した種苗の開発を行います。
ウ 「ゆとりとやすらぎ」を与える漁村・漁場環境の整備
・川や魚と親しむ機会の拡充
「親子科学教室」等で魚や河川に棲む生物に親しむ機会を作り、アユ、サケ、サ
クラマスの放流現場では、それらの生態等について講習する機会を増やしていきま
す。
18
海面漁業参考資料
900
800
700
経営体数
600
500
400
300
200
100
0
48 50 52 54 56 58 60 62 元
3
5
7
9
11 13 15 17
年
海面漁業経営体数の推移
1200
20~トン
10~20トン
5~10トン
3~5トン
1~3トン
1トン未満
船外機等
漁船隻数(隻)
1000
800
600
400
200
0
48 50 52 54 56 58 60 62 元
年
3
5
漁船規模別漁船隻数
19
7
9
11 13 15 17
60
2500
就業者数
60才以上の割合
50
40
1500
30
1000
60才以上の割合
就業者数(人)
2000
20
500
10
0
0
48
50 52 54
56 58 60
62 元
3
5
7
9
11 13 15
年
海面漁業就業者数と就業者数に対する60才以上の割合
25000
10000
漁獲量
生産額
20000
9000
漁獲量(トン)
7000
15000
6000
5000
10000
4000
3000
5000
2000
1000
0
0
51 53
55
57 59 61
63
2
4
6
8
10
年
海面漁業の漁獲量と生産額(属人)
20
12
14 16
生産額(百万円)
8000
内水面漁業参考資料
25
組合員数(千人)
20
15
10
5
0
53
55
57
59
61
63
2
4
6
8
10
12
14
16
年
山形県内水面漁業協同組合の組合員数
1200
1800
漁獲量
生産額
1000
1600
1200
800
1000
600
800
400
600
400
200
200
0
0
53
55
57
59
61
63
2
4
6
8
年
内水面漁業の漁獲量と生産額
21
10
12
14
16
生産額(百万円)
漁獲量(トン)
1400
2000
コイ
マス類
その他
1800
1600
生産量(トン)
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
53
55
57
59
61
63
2
4
6
8
10
12
14
16
年
魚種別養殖生産量
40
35
発行枚数(千枚)
30
25
20
15
10
5
0
63 元 2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
年
遊漁証の発行枚数の推移
22