資料1 「フランシス・ベーコン展」 実績報告書 平成25年10月31日 1 事業概要 1-1 展覧会概要 アイルランドのダブリンに生まれ、英国のロンドンを拠点に活躍した画家フランシス・ベーコン (1909-92)。20世紀最大の、そしてもっとも謎めいた画家のひとりであるベーコンの絵画は、 テート、メトロポリタン、プラドなど世界の名だたる美術館での展覧会で熱狂をまきおこしてき ました。本展はそのベーコンの、「教皇」連作などから、最後の三幅対(三枚で一組の作品)ま で、30数点によって構成されています。ほとんどが代表作と言っても過言ではありません。 20世紀の人間像を鋭く、大胆に捉えたベーコンの絵画は、わたしたちの「美」の概念をも更 新するような力強さを備えています。その特異な身体表現には多くの表現者が影響を受けてきま した。今回はベーコンからの影響もうかがうことのできる土方巽とウィリアム・フォーサイスと いう、洋の東西を代表する振付家のダンスを紹介する映像なども交えて紹介します。ベーコン自 身の語る「あらゆる感情のバルブを開放する」強烈な絵画とはいかなるものか。ぜひ体感してく ださい。 [展覧会名] フランシス・ベーコン展 Francis Bacon [会 [会 期] 場] 2013 年 6 月 8 日[土]-9 月 1 日[日]【77 日間】 豊田市美術館 展示室 8 [主 催] 豊田市美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知 [後 援] ブリティッシュ・カウンシル、アイルランド大使館 [協 賛] 新日本有限責任監査法人、損保ジャパン、大伸社、トヨタ自動車、UBSグループ [協 力] 日本貨物航空、日本航空、フランシス・ベーコン・エステート [メンバーシップ] 小島プレス工業 [観 覧 料] 一般 1400 円[1200 円] 大学生 1000 円[800 円] 高校生 700 円[500 円] [ ]内は前売券及び 20 名以上の団体料金 中学生以下、市内高校生、障がい者及び市内 75 歳以上は無料(要証明) [出品点数] 33点 [関連事業] ■ ダンス・パフォーマンス「田中 泯 献上」 公演:田中 泯(ダンサー) 6 月 8 日(土) 午後 6:20-7:20 美術館エントランス(150 席) ■ 映画上映会(2回) 「愛の悪魔 フランシス・ベーコンの歪んだ肖像」(学芸員のミニレクチャーあり) ① 6 月 22 日(土) ② 6 月 23 日(日) ※ いずれも午後 2:30-4:30 美術館講堂(172 席) 1 ■ 舞踏公演&レクチャー「偏愛的肉体論」 舞踏公演 作・振付:和栗由紀夫(舞踏家) 出演:和栗由紀夫、十亀脩之介、江角由加、崎山莉奈 レクチャー 講師:森下隆(慶應義塾大学アート・センター) 7 月 28 日(日) 午後 2:00-3:30 美術館講堂(172 席) ■ 講演「ベーコンがいつもフレッシュで美味しい理由を考える」 講師:保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員・本展企画者) 8 月 3 日(土) 午後 2:00-3:30 美術館講堂(172 席) ■ 関連コンサート「ベーコンの故郷 アイルランドの昼下がり」 出演:ブライアン・カレン(アイルランド出身のシンガーソングライター) トーク・鈴木俊晴(当館学芸員・本展企画者) 8 月 11 日(日) 午後 2:00-3:30 美術館講堂(172 席) ■ スライドレクチャー 講師:鈴木俊晴(当館学芸員・本展企画者) 7 月 6 日(土)、7 月 14 日(日)、8 月 12 日(月) ※ いずれも午後 3:00-4:00 美術館講堂(172 席) ■ 作品ガイドボランティアによるギャラリーツアー 木曜日を除く午後 2 時より(イベント開催日は午前 11 時より) 土、日、祝日は午前 11 時と午後 2 時より [印 刷 物] ポスター:B 1、B2、B3 チラシ :A4変形 作品リスト:A3二つ折り 図録 :縦 298×横 228×厚み 15 mm 189 頁 2,500 円 [広告宣伝] ◇新聞広告 日本経済新聞(計 45 回) 社告 5/14 全 5 段 6/7 6/8 6/10 6/11 6/12 6/13 6/15 6/18 6/20 6/22 6/27 6/28 6/29 7/3 7/5 7/6 7/8 7/10 7/11 7/13 8/5 8/6 8/9 8/17 8/19 8/20 8/21 8/23 8/24 8/27 8/29 8/30 8/31 9/1 キャンペーン広告 7/20 7/26 7/27 7/30 8/1 8/2 8/3 2 中日新聞 7/19 全尾張版 7/28 市民版 (半 3 段カラー) 7/12 7/19 7/27 (半 3 段×2、半 3 段カラー×1) 読売新聞 7/17(三河エリア観光特集内) ◇新聞折込広告 中日・朝日・毎日・読売4紙にチラシ折込 7 月 19 日 ◇テレビCM テレビ愛知 15 秒CM(計 77 回) 6 月 29 日~8 月 31 日 イベント告知番組「美女のミニ枠」内で特集 7月 30 日・8 月 15 日 ◇交通広告 地下鉄鶴舞線窓ステッカー広告 6 月 8 日~9 月 1 日 地下鉄鶴舞線窓B3広告 6 月 8 日~9 月 1 日 豊田市駅駅貼広告 6 月 8 日~9 月 1 日 新豊田駅駅貼広告 6 月 8 日~9 月 1 日 豊田市内タクシーステッカー広告 6 月 8 日~9 月 1 日 リニモ 藤が丘駅駅貼広告 6 月 8 日~9 月 1 日 リニモ 愛地球博万博公園駅駅貼広告 6 月 8 日~9 月 1 日 名古屋駅コンコース列柱広告 8 月 13 日~8 月 19 日 名古屋地下街ほか(テレビ愛知の掲示) 6 月 8 日~9 月 1 日 ◇掲示広告 豊田市駅前通り列柱広告 6 月 7 日~9 月 1 日 豊田市駅ペデストリアンデッキ広告 6 月 7 日~9 月 1 日 おいでんビル掲示板 6 月 8 日~9 月 1 日 ◇広報誌 『広報とよた』 6 月 1 日号・8 月 1 日号 [学芸担当] 鈴木俊晴 [庶務担当] 橋本園美・阿部吉朗 [ホームページ] 鈴木俊晴 3 2 実績 2-1 入場者・参加者 ◆観覧者総数 区 分 「フランシス・ベーコン展」 ○有料観覧者数 25,226人 内訳/一般 22,351人 大学生 2,436人 高校生 439人 (うち友の会) (669人) ○無料観覧者数 8,525人 内訳/小・中学生(引率含む) 1,842人 市内高校生 122人 障がい・高齢者 1,013人 県芸学生・職員 228人 優待・招待等 4,613人 特別な15日間 937人 会期中観覧者合計 33,751人 ※1日あたり観覧者数 438人/日(会期77日) ○開会前日の式典観覧者数 230人 展覧会観覧者総合計 33,981人 ◆出版物売上(会期中) 図録『フランシス・ベーコン展』 3,029冊(購入率1冊/11人) ◆音声ガイド貸出数 有料貸出 2,240台(貸出率1台/15人) 無料貸出 171台(式典及び企業内覧会用) ◆「特別な15日間」の実施 ・政府による美術品補償制度の適用を受けたことに対する利益還元事業として、中学生以下 1名につき保護者1名の無料観覧を実施した。 期間:7 月 20 日(土)~8 月 4 日(日) 利用者(保護者):937人 ◆姉妹都市提携記念事業との連携 ・今年は豊田市とイギリス・ダービーシャー市の姉妹都市提携15周年であり、フランシ ス・ベーコン展も記念事業「チーム英国」の一環と位置づけられた。 ・7月7日(日)午後 2:00 より、TIA(豊田市国際交流協会)とよたグローバルスクエ アで、「ナショナルデー『英国』~フランシス・ベーコンとイギリス美術~」を開催し、 担当学芸員が出張レクチャーを行った。 4 ◆地域連携 ・ベーコンタクシー 利用回数延べ 985回 ※ 市内タクシー会社3社と提携、 ベーコン作品のステッカーを貼ったタクシーを使用 し、名鉄豊田市駅・愛知環状鉄道新豊田駅より美術館特設タクシー乗場まで、料金 ワンメーター(680円)で運行した。 ・「豊田市中心市街地まちなか宣伝会議」と連携 ※ 開催日前夜と当日の夜、豊田市駅ペデストリアンデッキで、ベーコンの故郷アイル ランドにちなんだウェルカムイベント 「DECK PUB(デッキ・パブ)」 を開催、 音楽演奏や飲食販売を行い、美術館からは学芸員トークとチケット販売を行った。 ※ 「とよたまちなかサポーター店」で、チケット半券提示による割引・粗品進呈等の サービス「チケット de 得ベーコン」を実施 ※ ホテルトヨタキャッスルで観覧券付宿泊プラン及び食事プランを実施 ※ 豊田おいでんまつりの翌日7月29日(月)に特別開館。おいでん踊り連リストバ ンド又はおいでん花火桟敷の半券提示で割引を行った。 (割引は全開催期間中実施) ・「とよたクールシェア」に参加 ※ 市環境政策課の企画「とよたクールシェア」に市内協力店と共に参加、クーポン持 参者への観覧料割引を行った。 2-2 関連事業参加人数 合 計 855人 ・ダンス・パフォーマンス「田中 泯 献上」6 月 8 日(土) 150人(応募者210人から抽選) ・映画上映会「愛の悪魔 フランシス・ベーコンの歪んだ肖像」 ① 6 月 22 日(土) 130人 ② 6 月 23 日(日) 115人 ・舞踏公演&レクチャー「偏愛的肉体論」 7 月 28 日(日) 120人 ・講演:保坂健二朗 8 月 3 日(土) 120人 ・コンサート「アイルランドの昼下がり」 8 月 11 日(日) 110人 ・スライドレクチャー ① 7 月 6 日(土) 65人 ② 7 月 14 日(日) 90人 ③ 8 月 12 日(月) 65人 2-3 教育機関、団体、視察受け入れ 合 計 月 日 6月9日 6月9日 6 月 12 日 6 月 12 日 6 月 12 日 曜 日 日 水 水 水 58団体 2,183人 団 体 名 河合塾名古屋美術研究所(高校3) 日本経済新聞社内覧会 NHK 文化センター 名古屋大学美学美術史研究室 ルネサンス豊田高等学校 5 人 数 6 人 22 人 33 人 20 人 10 人 月 日 6 月 14 日 6 月 16 日 6 月 18 日 6 月 19 日 6 月 21 日 6 月 22 日 6 月 22 日 6 月 22 日 6 月 23 日 6 月 24 日 6 月 27 日 6 月 28 日 6 月 29 日 6 月 29 日 7月4日 7月5日 7月5日 7月6日 7月9日 7月9日 7 月 10 日 7 月 13 日 7 月 18 日 7 月 19 日 7 月 19 日 7 月 20 日 7 月 23 日 7 月 24 日 7 月 24 日 7 月 25 日 7 月 26 日 7 月 26 日 7 月 27 日 7 月 28 日 7 月 30 日 7 月 31 日 8月1日 8月4日 8月6日 8月7日 8月7日 8月7日 8月9日 8 月 15 日 8 月 21 日 曜 金 日 火 水 金 土 土 土 日 火 木 金 土 土 木 金 金 土 火 火 水 土 木 金 金 土 火 水 水 木 金 金 土 日 火 水 木 日 火 水 水 水 金 木 水 団 体 名 京都造形芸術大学環境デザイン学科 名古屋市美術館協力会 河合塾美術研究所(日本画本科クラス) 欅の会(三重県立美術館ボランティア) プレミアムナイトツアー(個人団体) 名古屋造形大学 河合塾美術研究所 名古屋校(1) 愛知産業大学 造形学部デザイン学科 河合塾美術研究所 名古屋校(2) 豊田工業高等専門学校 建築学科 毎日新聞旅行 愛知県立芸術大学博物館展示論ゼミ チョイジャパンツアー(韓国人団体) 名古屋芸術大学 名古屋大学留学センター ナイトツアー 富山県民会館 文化友の会 芸術鑑賞旅行 日本経済新聞夜間特別鑑賞会 日本経済新聞夜間特別鑑賞会 名古屋市立工芸高等学校デザイン科 知立市西岡町老人クラブ 名古屋大学文学部 愛知日英協会 瀬戸消費生活クラブ JFG 中部 市民フォーラム ナイトツアー 名古屋造形大学 豊田市立益富中学校美術部 蒲郡市形原中学校芸術部 浜松中日文化センター デトロイト市交換留学生 豊田市立美里中学美術部 田原市立田原中学美術部 個人団体 JTB 花火ツアー ルネサンス豊田高等学校 豊田市教育センター 豊田市立朝日丘中学校美術部 和南会 岐阜市立女子短期大学 豊田市立豊南中学校美術部 豊田市教員夏期研修 亀山市教研図工美術部会 日本大学学生 全国中学校体育大会出場者市長表敬訪問 NHK文化教室 6 人 数 58 人 30 人 36 人 34 人 11 人 90 人 20 人 43 人 34 人 32 人 25 人 26 人 34 人 62 人 14 人 20 人 80 人 123 人 42 人 20 人 18 人 15 人 28 人 31 人 13 人 38 人 27 人 10 人 20 人 16 人 22 人 35 人 21 人 44 人 10 人 77 人 24 人 16 人 79 人 35 人 140 人 17 人 14 人 115 人 19 人 月 日 8 月 21 日 8 月 21 日 8 月 22 日 8 月 22 日 8 月 23 日 8 月 24 日 8 月 27 日 8 月 28 日 曜 水 水 木 木 金 土 火 水 団 体 名 愛知県高等学校文化連盟 豊田市立中学校(小原地区) 美術館学習 豊田市立高岡中学校 美術館学習 ルネサンス豊田高等学校 藤枝順心高等学校美術造形デザイン科 朝日カルチャーセンター 愛知教育大学 諏訪市教育委員会 男のおもしろ倶楽部 人 数 43 人 27 人 142 人 5 人 64 人 20 人 28 人 45 人 2-4 マスコミ等 ◇新聞(展評・紹介記事) 日本経済新聞 12 月 16 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 1 月 13 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 2 月 17 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 2 月 17 日(朝刊 <美の美>評論:窪田直子) 日本経済新聞 2 月 18 日(朝刊 一面) 日本経済新聞 2 月 18 日(日経からのお知らせ) 日本経済新聞 2 月 24 日(朝刊 <美の美>評論:窪田直子) 日本経済新聞 3 月 8 日(朝刊 社会面) 日本経済新聞 3 月 17 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 4 月 2 日(夕刊 一面) 日本経済新聞 4 月 3 日(夕刊 一面) 日本経済新聞 4 月 4 日(夕刊 一面) 日本経済新聞 4 月 11 日(<平野啓一郎が見た美術展>) 日本経済新聞 4 月 21 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 4 月 29 日(朝刊 特集面 評論:勅使河原純) 日本経済新聞 5 月 19 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 5 月 20 日(夕刊 日経からのお知らせ) 日本経済新聞 5 月 30 日(朝刊 広告企画) 日本経済新聞 6 月 8 日(朝刊 社会面) 日本経済新聞 7 月 11 日(夕刊 文化面 評論:千葉真智子) 日本経済新聞 7 月 21 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 8 月 18 日(アート・ライフ面) 日本経済新聞 8 月 30 日(朝刊 社会面) 中日新聞 6 月 4 日(豊田版) 中日新聞 6 月 8 日(豊田版) 中日新聞 6 月 25 日(文化面 評論:山脇一夫) 朝日新聞 6 月 8 日(三河版) 朝日新聞 8 月 9 日(朝日カルチャーセンター特集) 読売新聞 4 月 18 日(文化面 評論:井上晋治) 毎日新聞 7 月 3 日(<芸術食堂>評論:山田泰生) 7 矢作新報 6 月 14 日 矢作新報 9月6日 とよたみよしホームニュース 7 月 13 日 ◇美術専門誌 美術手帖 3 月号 芸術新潮 4 月号 月刊ギャラリー 6 月号 芸術新潮 7 月号 美術手帖 9 月号 あいちトリエンナーレ公式ガイドブック(周辺美術館紹介ページ) ◇雑誌・地域誌 洋泉社ムック「現代アートがわかる本」 8 月 5 日発行 日テレムック「ぶらぶら美術・博物館 おさんぽアートブック」2012-2013 日経おとなの OFF 1 月号 大人の名古屋/都心脱出計画号 6 月 28 日号 愛知の建築 6 月号 月刊ぴあ東海版 5 月号(プレゼント告知) 月刊ぴあ東海版 6 月号(展覧会紹介) 夏ぴあ東海版 5 月 28 日号 ぴあ×STARCAT 8 月号 とよた身障だより(美へのいざない)5 月 1 日号 まち宣 PRESS 2013 Summer vol.06 まちなか PRESS 8 月号(創刊準備号) まちなかカレンダー 6 月号・7 月号 月刊サプリ 8 月号 月刊ケリー 8 月号 Nagoya Calendar 8 月号 Calendario de Nagoya 6 月号 東海じゃらん 7 月 1 日号 東海デートスペシャルなび 2013.6-11 月刊なごや 6 月号 ミスター・パートナー 7 月号 まんまる 7 月号 月刊なごやか 7 月号 My Story(ミッドランドスクエア会員誌) 2013 夏号 DEPARTURES 日本版 6 月号 EYESCREAM 9 月号 8 大人組 7-8 月号 感覚をひらく 7|8 乗鯨神来(福井県の文化団体季刊誌)2013 夏号 muto(福岡市のフリーマガジン) 6 月 20 日号 ◇テレビ・ラジオ テレビ愛知 「NEWSアンサー」(ローカルニュース)内で開会式と展示内容を紹介 6月7日(金)16:54~17:20 NHK(Eテレ) 「新日曜美術館 恐ろしいのに美しい フランシス・ベーコン」 5 月 5 日(日)9:00~10:00 再放送 5 月 12 日(日)20:00~21:00 「ETV特集 人を動かす絵 田中泯 画家ベーコンを踊る」 8 月 3 日(土)23:00~23;59 再放送 8 月 10 日(土)深夜 0:45~1:44 FMとよた ひまわりネットワーク ◇ウェブ フランシス・ベーコン展公式ホームページ テレビ愛知サイト内フランシス・ベーコン展紹介ページ インターネットミュージアム(丹青社) CJキューブ(アートライフ共有SNS) Opi・rina(中日新聞ウェブ) TAB(TOKYO ART BEAT) 30min(サンゼロミニッツ) 豊田市観光協会「とよた夏のおすすめスポット」 るるぶ公式サイト じゃらん観光ガイド 2-5 観覧者アンケート(来館者満足度 主な項目 回答数353) (満足+やや満足)(普通)(やや不満+不満)(無回答) 展示内容 75 % 12 % 9 % 4 % 展示空間 76 % 11 % 8 % 5 % ポスター、チラシ デザイン 70 % 23 % 2 % 5 % 観覧料金 42 % 36 % 15 % 7 % 図録の内容 40 % 37 % 5 % 17 % 図録の価格 22 % 46 % 11 % 21 % 感銘や刺激 87 % 5 % 2 % 6 % 他者に薦めたい 75 % 14 % 3 % 8 % 9 3 検 証 (学芸担当者) 「フランシス・ベーコン展」は、東京国立近代美術館、日本経済新聞社との共同企画として 開催した。「共同」ということについて具体的に記しておけば、東京国立近代美術館の研究員 であり、ベーコン研究者である保坂主任研究員が中心となり、日本経済新聞社と数年前から暖 めていた企画に、同じくベーコンを所蔵する館として豊田が参画することによって、企画とし て実現の目処を立て、企画コンセプト、構成、借用依頼、カタログや制作や解説類の執筆など を、保坂氏、桝田研究員(東近美)、当館の鈴木が分担し、広報活動や著作権処理等、企画の 運営や庶務を日本経済新聞社が担当することで展覧会を立ち上げていった。 はじめに、学芸的な観点から企画を振り返ってみる。フランシス・ベーコンの個展は世界各 地の著名な美術館が続けて開催してきているなか、日本での回顧展は1983年(東京国立近代美 術館、愛知県文化会館ほか)以来開催されなかった。ちなみに83年の展覧会は画家の生前とい うこともあり、 計45点の今日でも代表作と目される作品が多く来日する大規模なものであった。 2013年の日本での展覧会は、画家の没後約20年にして、30年ぶりに日本でこの20世紀の巨匠 を紹介する機会となった。そのため、企画のコンセプトをたてるにあたって、ひとつにはベー コンの半世紀を超える画業を伝えられる内容にすることを前提とした。 その一方で、ベーコンの作品が世界各地の美術館や個人所蔵家のもとに収まっていること、 そして、作品の評価額が画家の没後とりわけ2000年代より高騰していることを考慮し、同じ回 顧展でも、点数を増やした総覧的なものよりも、あえて点数を絞りながらも、粒ぞろいの作品 を選び、通底するテーマを設けることとした。 そこで、今回はベーコンの「身体表現」をサブテーマとして掲げ、実際の展覧会にもベーコ ンからの影響をはっきりとうかがうことのできるダンサーの作品(ヴェルツ+フォーサイス、 土方巽)を映像や資料、そしてインスタレーションとして加えることを、企画の初期段階で決 定した。結果的にこの選択が作品の出品交渉を大いに助けてくれることとなった。 出品交渉の結果33点のベーコン作品が展覧会に並ぶこととなった。この点数についてはアン ケートなどでは少ないとの指摘もあったが、数年前まで国内での大規模展開催の大きな障害と なっていた高額な保険料を「政府による美術品補償制度」によって低減できていなければ展覧 会の開催自体不可能であったことに鑑みれば、これ以上の点数での開催は日本国内では非現実 的であり、点数を絞るという選択は間違っていなかった。実際に展示室に並べてみても、通常 の企画展示室では収まらず、展示室6と7を加えたことからも、数字だけでは測ることのでき ないボリュームであったと言える。 企画構成としては、ベーコンの作品を1940-50年代、60年代、70年から92年と三章に分け、ベー コンからの影響をみることのできるダンサーの作品や資料をエピローグとして添えた。実際の 豊田市美術館での展覧会会場では、40年代から50年代初頭の作品を展示室6と7からはじめ、 50年代半ばの「教皇シリーズ」あたりから展示室8へ入る構成をとった。そのあいだにはベー コンのインタヴュー映像を流し、早い段階で鑑賞の手引きを提供することを心がけた。展示室 8で順路が折り返すあたりで第二章と土方巽の資料や映像を紹介し、その後第三章、ヴェルツ +フォーサイスのインスタレーションと続く構成をとった。建築や集客の都合で「直線的」な 10 構成をとった東京会場に比べると、天井が高く、「空間的」「立体的」に構成しやすい豊田会 場は作品も見やすく、ベーコン作品の魅力をより伝えるものであったと、おおむね好評であっ た。 しかしながら会場を大きく二分する構成は、 展示にメリハリをつけることができたものの、 チケットカウンターでの口頭での案内があったにもかかわらず、会場の入口がわかりづらかっ たようだ。 関連企画としては、2本の本格的なダンス・パフォーマンス、映画鑑賞会、専門的なレクチ ャー、伝統音楽のコンサートなど、多角的に開催し、いずれも盛況であった。とりわけ、開幕 を飾ったダンサーの田中泯による当館企画のパフォーマンスは、ベーコンの影響が現代日本を 代表するダンサーにまで続いていることを伝えた。これはNHKのETV特集として全国放映 され、展覧会自体の集客にも大きく寄与してくれた。 集客については、設定された目標には及ばなかったものの、東京会場の会期にあわせて『芸 術新潮』や「新日曜美術館(NHK)」などさまざまな媒体で特集が組まれ、熱狂的な話題と なった勢いのままに、豊田にも3万を優に超す多くの来場者が訪れたのは幸いであった。もち ろんそこまでの積み上げには、詳しくは庶務担当者の報告に譲るが、庶務担当の独自の種々大 小の広報宣伝活動に依るところも大きい。アンケートを含め、ツイッターなどのSNSでも好 意的な感想が多く、口コミなども有効に機能していた感がある。 当館のベーコン作品(《スフィンクス》1954年)はコレクションのなかでもとりわけ価値の 高いものの一つである。そうした画家の個展を、次回は数十年後とも考えうるなかで開催でき たことは将来の美術館活動にとっても意義のあることで、評判やブランド力を含めて当館の存 在価値を高めるものであったと思う。展示室にはこの機会に熱心に作品をみつめる鑑賞者がほ とんどで、展覧会への期待の高さを伺わせるとともに、不用意に作品に触れたり、雑談などで 他の鑑賞者に迷惑をかけるような客が比較的少なく、その意味でも、幸運な展覧会であったと いえよう。私見ではあるが、週末の一日あたり1,000人程度の来場者というのが、当館の施設的 にも、展示室の雰囲気的にもちょうど良いように感じた。今後もこのような、集客だけにとら われない意義のある展覧会を開催できるよう努めていきたい。 (庶務担当者) フランシス・ベーコンは 20 世紀最大の画家のひとりといわれ、「ピカソと並ぶ美の巨匠」と 謳われている。しかしその名前は、一般社会にピカソほど浸透しているとは言い難い。同名の 哲学者のほうが有名である。恥ずかしながら私も画家ベーコンを知らなかった。 平成 23 年度に開催したシュテーデル展は、 フェルメールという空前の大ブーム中の有名画家 の作品が出たことで、当館開館以来の入館者数を記録した。一方、昨年度のアンソール展は、 充実した内容にもかかわらず多くの観覧者を集められなかった。マスコミによる露出が不十分 で、まちなかとの連携もできなかったという事情はあったものの、アンソールという画家の一 般的な知名度の低さが大きな要因であったことは否定できない。 フランシス・ベーコンは現在世界的に人気が高く、作品の価格も年々高騰しているという。 金額が高ければよいというわけではないが、それほど評価の高い画家なのに日本では一般に知 11 られていない。その展覧会をどうすれば多くの人々に見てもらえるのか。庶務担当としては、 過去の経験に学んで知恵を絞るしかなかった。 今回は広報及び中心市街地との連携活動を精一杯行うこととし、 シュテーデル展の時と同様、 豊田市駅前通りの列柱全てに著名人のコメントポスターを貼るなど、 「フランシス・ベーコン」 の名前とキャッチフレーズ「目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。」の露出と浸透をはかった。 ただ、著作権上の制約が厳しく、列柱ポスターに作品画像が使えなかったのは残念だった。もっ と毎日そこを通る人の視覚に訴えることができれば、かなり効果的だったと思う。その他、展 覧会後半にも名古屋駅コンコースに追加の広告を打つなど、継続的な広報活動を行った。 豊田市中心市街地まちなか宣伝会議にも全面的に協力していただき、 ウェルカムイベント 「D ECK PUB」では、利用客にアイルランド・ビールなど飲食を楽しみながら学芸員のトーク を聞いてもらったり、特設売場であっせんチケットを販売してもらった。こうした気軽に参加 できる催しで展覧会をPRできたことは、非常に有効で意義があったと思う。 また、「チケット de 得ベーコン」もコンサートホール及び能楽堂との連携企画として推進し た結果、とよたまちなかサポーター店 48 店が参加する大規模なものとなった。松坂屋豊田店1 階の惣菜店8店舗も参加し、連日店内でベーコン展半券による割引案内のアナウンスが流れて いた。シュテーデル展で好評だったタクシー会社との提携運行も実施した。 期間中にとよたおいでんまつりがあったため、踊り連参加者や花火桟敷利用者も割引対象と し、まつり翌日の月曜日は美術館を特別開館した。まちなか宣伝会議及び商業観光課の協力を 得て、事前のチラシ配布及びまつり当日の会場PRも行った。ただ、翌日は不運にも大変な悪 天候で、残念ながら来館者は少なかった。 実行委員会を組んだ日本経済新聞社及びテレビ愛知は積極的な広報活動を行った。特に3回 の特別内覧会の開催、ウェブによる広報や割引サービスは情報の拡散に役立ったと思う。マス コミのもつ発信力と同時に企業同士のネットワークの力も感じた。 展覧会は約3万4千人の観覧者を集め、当館としてはシュテーデル展以来の盛況となった。 もちろんこれはフランシス・ベーコンという稀有な画家がもつエネルギーに負うところが大き い。本年初頭から美術雑誌等で「今年必見の展覧会」として紹介され、ファンの間では開催が 渇望されていたのだ。会場が東京と豊田のみで、東京国立近代美術館で盛況となり、ウェブ等 でも大いに拡散してから豊田にやってきたことは非常に効果的だった。 私事で恐縮だが、初めて見たベーコンの作品は、予想したほど「恐ろしく」なかった。むし ろ残像のように走る犬や、原初的な踊りのような動きを見せる人物や、どこかへ出て行こうと する、あるいは入って来ようとする裸体の男の姿は、なんともいえず魅力的だった。テーマを 「身体表現」に絞ったことは、この作家の新しい表現を求める試みの数々をたどりながら見て いくことができて非常によかったと思う。そして、ポスターになった「ジョージ・ダイアの三 習作」の三幅対は、やはりすばらしかった。ベーコンが最も愛した男の恋人―ちょっと無頼で 洒落者で、温かいような酷薄なようなこの男の人間性そのものを、ベーコンが三方から深い愛 情をもって描き出していることがまざまざと伝わってきて、いつまでも見飽きなかった。 しかしながらそこまでの印象をもてたのは、作品自体のもつ迫力のみならず、事前にNHK 「新日曜美術館」 で画家の生涯を知り、 ジョージ・ダイアの実際の映像も見ていたからである。 12 この番組は美術に興味をもつ一般の人々の間でも非常に影響力があり、ここで大江健三郎氏や デビッド・リンチ氏の賛辞が放送されたことも注目度を高めたと思う。 NHKはETV特集で田中泯氏がイギリスにベーコン作品を訪ね、当館でダンス・パフォー マンスを行うまでを密着した番組も放送したが、こちらも反響が大きかった。 ダンスに関して、展覧会場でベーコンに影響を受けた土方巽とウィリアム・フォーサイスの 映像を展示したことは特徴的だった。ダンスに興味のない観覧者からは「作品点数の不足を映 像で埋めていた。」などという感想もあったが、少なくともベーコンが名だたるダンサーたち に影響を与えているという事実は理解されたであろう。もちろんダンスに興味のある人は映像 展示も真剣に見ていたし、前述の田中泯氏と和栗由紀夫氏の2回の関連企画公演は大盛況で あった。後でアンケートや鑑賞者のブログ等で感想を見るにつけ、美術館で作品を見るだけで はない特別な体験ができるということは非常に貴重で、新たな付加価値となると感じた。 会期後半は巡回展のない関西方面からの来館者が増加した。 来館方法の問合せがあったので、 初来館の方も多かったようだ。シュテーデル展と異なり旅行会社の一般募集ツアーは少なく、 個人客がほとんどだった。ホテルの観覧券付き宿泊プランが好評だったそうで、好きな作家を 泊まってでも見に行きたいというコアなファンも多かったようである。本当にベーコンを求め て来たファンが作品を味わいつつじっくりと見ていて、人が多いにもかかわらず、会場は静粛 だった。 以下はアンケートに寄せられた意見について述べる。 展示構成については、東京と豊田と両方の会場を見た人もいて、どちらがよかったかは賛否 両論であった。これはある意味各人の鑑賞習慣や好みによるものと思われる。 私見では、豊田市美術館の天井が高く広い展示室を囲むように三幅対の作品が配されている 光景は、その描かれたものがグロテスクに分裂した肉片であるにもかかわらず、どこか宗教的 なおごそかな雰囲気さえ感じられて、他所ではなかなか見られない格別の展示空間を現出でき たのではないかと思う。 しかし、エントランス裏手の展示室6から展示が始まり、一度エントランスに戻って展示室 8に入るという動線は不評だった。展示室6・7の暗い空間に浮かぶベーコン作品は非常によ い雰囲気だったが、確かに順路はわかりにくかった。当館は構造上、順路の難解さは毎回指摘 されるところであるが、今回は特に通路や案内表示を考えるべきだっただろう。 ガラスの反射で絵が見にくいという苦情が複数あったが、これはベーコン自身が意図して作 品をガラスで覆ったからである。そのことは解説等で説明してあったが、周知されなかったよ うなので、前説のあたりにもっと明確な掲示を出すべきだったかも知れない。 また、作品保護のため場内の温度を 24 度に設定したため、寒いという苦情も多かった。ホー ムページ等で告知はしていたが、期間が真夏で薄着の方がほとんどだったため、特に寒く感じ られたようだ。 名古屋ボストン美術館のように肩掛けの貸出サービスをすればよかったと思う。 フランシス・ベーコン展は、真に作家・作品との邂逅を求める人々に貴重な経験の場を提供 することができたと思う。今後も改善を重ねつつ、充実した展覧会の開催に努力したい。 13 (総 括) 同展は今年度の当館が最も力を傾注した展観といっていい。口当たりのいい美術作品が巷間 に受けている中、決して一般には周知の作家では無い、きついデフォルメが掛かった強烈なイ ンパクトを残す作品は、決して表面的な大衆化を許すものではないだろう。しかしそのような 中で、作家の代表作にして国内最優良作品の一つを所蔵する当館としては、今回を逃したら得 がたいとおもわれる回顧的な展示に組み込み、作家の全体像をうかがう機会をここに作ったこ とになる。 かつての 1983 年(東京国立近代美術館、愛知県文化会館ほか)の唯一のまとまったフランシ ス・ベーコン生前の展観は充実したもので美術界では静かな興奮が広がっていたにもかかわら ず、入場者は芳しくなく、一般的な鑑賞者の話題も今ひとつであった記憶がある。それから 30 年が経ち、今回はマスコミ等の話題づくりがあったにせよ、むしろフラットな時代の中での深 い希求とどこかでシンクロしたということであろうか? 本展は開催前から美術界を超えて話題 となっていたもので、作家の重要性は認識しているものの、評価額が死後に異常に高騰し、不 況下の日本ではまとまって実見する機会の得難い作家の一人であった。そのようなほぼ不可能 と考えられていた中での日本経済新聞社他の英断を業界的には驚きをもって見守っていたよう である。 内容はベーコン作品 33 点(ちなみに’83 年展は 45 点)、若干少ないとはいえそこには三連作 が6点含まれる。また今回は決定的な代表作を若干欠くとはいえ、今回のセレクションは作家 公認の初期の代表作から晩年までの代表作がそろい、作家の展開を比較検討しながら追うこと が出来る展示となったことは貴重な機会となったのである。さらに今回は土方巽、ペーター・ ヴェルツの映像作品を通してのフォーサイスという、全く対照的な東西のダンサーにしてコレ オグラファーである作家への二様のベーコンイメージの伝播と展開が確認されたことは、興味 深かったし、日本での開催の意味も出ていよう。 関連企画も田中 泯のダンスを中心に毎回盛況で、 特に学芸担当のレクチャーも意欲的であっ たが、さらに独自のチラシ・資料も用意されるならさらによかっただろう。 カタログも共同企画者の東京国立近代美術館の学芸員(二者ともにベーコンを専門とする)と の分担執筆で、欧米の研究を踏まえた比較的若い世代による意欲的な内容であった。 先に触れたように、美術界では高名で教科書に載る作家であるにせよ、ほぼ一般には無名で はあったベーコンであったが、同展のために館の学芸・庶務は一体的に出来うることはほぼ全 てやったというほどに入場者の動員に務めた。詳しくは庶務等の報告に記載されているが、先 のフェルメールを含んだシュテーデル美術館展の際の当館の経験と財産をベースにして、「豊 田市中心市街地まちなか宣伝会議」との連携をはじめとして、タクシー、ホテル、そして街中 の飲食店等とのご協力・連携を元に多種のイベント、宣伝活動を行った。また豊田市とイギリ ス・ダービーシャー市の姉妹都市提携 15 周年であり、フランシス・ベーコン展も記念事業 「チーム英国」の一環として市全体としても宣伝された。 また開催前から中京圏の美術大学を中心に学芸員・館長が事前にレクチャーに行くなどして、 その後の団体動員のきっかけとした。事実、大学をはじめとして、中学校の美術部、各種カル チャーセンター、さらには旅行社のツアーも組まれた。また、日本経済新聞夜間特別鑑賞会も 含めナイトツアーも実施され、多様なニーズを開拓できたことは意義深い。 14 本展は日本経済新聞社、テレビ愛知との共催になるもので、日本経済新聞には連日のように 45 回もの広告を掲載していただいたほか、テレビ愛知では 15 秒CMを計 77 回も放映していた だくなど、全面的な協力を仰いだ。 また本展は高額な保険が掛かる海外展等のための「政府による美術品補償制度」を利用した もので、当館としても初のこととなり、利益還元事業として、中学生以下1名につき保護者1 名の無料観覧を実施し 1,000 人近い入場者に繋がった。 今回は東京会場でのマスコミでの話題の後に開催したもので、 前半の出足は悪かったものの、 東京と豊田の二館だけの開催のために、平日は地元の中京圏、そして土日は関西、北陸方面を はじめとして西日本からの車での来館が目立った。後半になるにつれ入場者は増加して、期間 末には連日盛況で、総入場者数は 33,981 人となった。追加の広報をはじめとして内部的にさら に努力にしたが、目標として設定した 40,000 人には届かなかったものの、目標の8割方は達成 し、健闘したと考えている。 アンケートに見るように、「感銘や刺激を受けた」が 87%、「他者に薦めたい」が 75%と高 く好評であったことが分かるし、カタログの購買率も 11 人に 1 人と高く、熱心な関心を持って いる鑑賞者の多さが伺える。また、音声ガイド(ダンサー・熊川哲也氏による)も 15 人に 1 人の 利用者であった。 今回は美術関係の雑誌をはじめとして、各誌、新聞も数多く取り上げ、さらにはNHKがテ レビ番組にまでするという波及の状況は、主催者側の努力もあるものの、それ以上のひとつの 時代の波を感じざるを得なかった。デジタル化の渦中で、 その人間存在に迫る重厚な存在感がむ しろリアリティを回復させる契機となったのだろうか。さらに実物でしか確認でき得ない多様 な絵画操作を実見でき、あらためて絵画の豊かさを確認するとともに、現代の絵画表現にもつ ながる刺激ともなった貴重な機会であったとおもう次第である。 また、協賛として新日本有限責任監査法人、損保ジャパン、大伸社、トヨタ自動車、UBS グループを仰ぐと共に、今回初の企業のメンバーシップとしては小島プレス工業が入っていた だいた。この場を借りて感謝したい。 15 資料2 夏休み子どものプログラム 2013 「高橋匡太-ぼくとひかりと夏休み」報告書 平成25年10月31日 1 事業概要 1-1 展覧会概要 「高橋匡太-ぼくとひかりと夏休み」は、2013 年夏に豊田市美術館で開催された、 美術家・高橋匡太(キョウタ)による子どもを対象としたアートプロジェクトです。 90 年代後半より光と映像を用いた作品を国内外で数多く発表してきた高橋匡太。屋 内空間でのインスタレーションや建築物への大規模なプロジェクションなど、映像と色 彩を自在に組み合わせ、見慣れている光景を再解釈してダイナミックに変容させるその 作品は、常に大きな話題を呼んできました。また近年、高橋が特に力を入れているのが 参加型のアートプロジェクトです。「光」をテーマに開かれた場/プラットフォームを つくり、そこに集まった人々がまさに当事者として主体的に関わる行為のひろがりによ って、作家ひとりでは実現しえない圧倒的な美しさや夢のような光景を生み出す可能性 に挑戦しつづけているのです。 豊田市美術館において高橋が試みたのは、「粘土」と「光」を重要な要素とする、 子どもを主体とした参加型のワークショッププロジェクトでした。このワークショップ のために準備された油粘土の量は 10 トン。220 ㎡の床全面にリノリウムのカーペット が張り込まれた真っ白な展示室に、これまで見たこともない物量の白い粘土が運び込ま れました。また、天井に設置された約 50 機の LED 照明は、高橋による特別なプログ ラミングによって、空間全体あるいは部分的に色彩を変化させたり、粘土の凹凸を際立 たせたりと、変幻自在に展示室内の色光を調整することができるよう設定されたのです。 ワークショップの会場には、自分たちの思い通りになる山積みの「粘土」と、それを不 思議な美しい色彩で照らし出す「光」が、子どもたちの自発的な創造を促す環境として 用意されたのです。 このワークショップが興味深いのは、粘土と光によるワクワクするような環境設定 だけではありません。この場で「何をつくるのか」という目標がすべて子どもたちに委 ねられていることも大きな特徴のひとつでしょう。作家とスタッフは、ほぼ毎日展示室 に滞在し、コミュニケーションをとりながら、子どもたちの「~をつくりたい」という 思いを尊重して造形活動をサポートしました。子どもたちは会場で、思う存分に粘土を 用い、自分たちの作りたいものを個々に、時にみんなで協力し合いながら、全身で造形 活動に取り組んだのです。ここでは、子どもたちがつくりだす粘土の「かたち」と作家 が差し出す「光」が相互にひびきあう、夢のような空間が毎日生み出されていきました。 子どもたちの底知れぬエネルギーと創造力によって日々刻々と変化する展示室。その風 景が変貌していく様子は、特設されたホームページ上で毎日配信されました。 1 夏休み子どものプログラム 2013 [展覧会名] 「高橋匡太-ぼくとひかりと夏休み」 [会 期] 2013 年 7 月 20 日[土]-8 月 18 日[日]【28 日間】 [会 場] 展示室 9 [主 催] 豊田市美術館 [観 覧 料] 無 料 [関連イベント] ねんどとひかりのウルトラ・ワークショップ 粘土と光と身体をテーマにした特別なワークショップを3回開催した。 ①ねんどで巨大ロールケーキをつくろう! 内容: みんなで踏み延ばし展示室の床いっぱいにひろがった粘土に切れ目を入れ、くるくる 丸めて巨大なロールケーキをつくるワークショップ。 講師: 高橋匡太、美術館教育担当 協力: 豊田市美術館ガイドボランティア 日時: 7 月 27 日(日) 午後2時~3時 対象: 年長~小学生と保護者 ②まっくらやみでねんど遊びをしよう! 内容: 真っ暗闇のなかで粘土の不思議な感触を体感した後、グループごとに大きな粘土の 輪を作り、闇のなかで“数珠まわし”のように輪をまわすゲームをおこなった。 ファシリテーター: 京都造形芸術大学ウルトラファクトリー高橋匡太クラス 日時: 8 月 4 日(日) 午後2時~3時 対象: 年長~小学生と保護者 ③集まれ!ねんど音楽隊 内容: 粘土で音の鳴る楽器を個々につくり、みんなで演奏するワークショップ。 ファシリテーター: 京都造形芸術大学ウルトラファクトリー高橋匡太クラス 日時: 8 月 11 日(日) 午後2時~3時 対象: 年長~小学生 [印 刷 物] チラシ:A4 小冊子:A4版 18 頁 [学芸担当] 都筑正敏、西崎紀衣 [庶務担当] 平尾祐未 2 2 実績 2-1 入場者・参加者 ◆観覧者総数 12,295人 ※ 1日あたり観覧者数 439人/日(会期28日) 2-2 関連イベント参加人数 合計 185人 ①ねんどで巨大ロールケーキをつくろう! 参加者: 親子 80 名 ②まっくらやみでねんど遊びをしよう! 参加者: 親子 70 名 ③集まれ!ねんど音楽隊 参加者:親子 70 名 2-3 マスコミ等 ◇新聞(展評ほか) 中日新聞 7月16日(金)中日新聞社から 中日新聞 7月19日(金)豊田版 中日新聞 7月21 日(日)豊田版 中日新聞 8月 中日新聞 8月13日(火)豊田版 おすすめ おしらせ おたのしみ 明日から 「粘土で形作って登って」 6日(火)あいちトリエンナーレ告知 「粘土で楽器作れた!」 ◇その他 新聞折込広告(中日・朝日・毎日・読売) 半3段 全三河版 7月12日(金) 、7月19日(金) 、7月27日(土) 半3段 全尾張版 7月18日(木) 、市民版 7月28日(日) 新聞折込チラシ(中日・朝日・毎日・読売)7月19日(金) ◇ラジオ・テレビ ZIP・FM おでかけ情報 8月14日(日) ◇ウェブ artscape レビュー 2013 年 7 月 27 日 3 酒井千穂 2-4 観覧者アンケート(来館者満足度 主な項目 回答数282人 ) (満足+やや満足) (普通) (やや不満+不満) (無回答) 企画内容 昨年(小沢剛展)に参加したか また参加したい 93 % 6 % (はい) (いいえ) 39% 60% (はい) (いいえ) 100% 0% 1 % 0 % (無回答) 1% (無回答) 0% 3 検証 (学芸担当者) 夏休み期間中、親子を対象とした参加・体験型のプログラムとして、今年度は美術家、 高橋匡太によるプロジェクトを開催した。高橋氏は、光と映像を都市建造物などに投影す る手法によって国内外で活躍する作家であり、近年は観客が参加・体験することで成立す るアートプロジェクトも数多く手掛けている。今回の作家選定については、①子どもたち の感覚にダイレクトに働きかける「光」を扱う作家であること、②参加体験型のプロジェ クトやワークショップを実施した多くの実績があること、が決め手となった。美術館サイ ドは、プログラムの方向性について作家とじっくり協議し、過去に実施した企画の焼き直 しではない、新しいアートプロジェクトを一から立ち上げることで合意した。こうして、 幾つかのプランの中から、「粘土」と「光」を重要な要素とするワークショップの案が採用 されることになった。 会場づくりの点では、やはり「10 トンの油粘土」というわれわれの想像を超えた物量と、 取り扱いにおいて配慮の要るこの独特の素材を、いかにして子どもたちに触れてもらい、 展示室内で展開させるかということに最も苦慮した。搬入作業はじめ、床、壁の養生、手 洗い場…など、幾つかの問題が浮上したが、それらの課題をひとつずつ解決していった。 また、高橋のプロジェクトの見せ場ともいえる会場を照らす照明計画は、主に複数の光の 色を組み合わせて投射し、空間や造形物にカラーシャドウが現れるようにするものであっ た。このためプログラミングによって自在に色彩をつくることができる特別な LED ライト が 51 機必要となった。このライトについては、LED 企業の協力によって特別価格にてレ ンタルすることができた。これは予算面において大きなバックアップとなった。 今回のプロジェクトでは、子どもたちが大量の粘土で何をつくるのか、あらかじめ決め られていない。何をつくるのか、ファシリテーターがきっかけを与えることはあっても主 導することなく、子どもたちの自由な発想を尊重することとした。彼らの「~をつくりた い」という思いを後押しすることがプロジェクトの要となる。こうした方針を実現するた めには、会場に必ずサポートスタッフが常駐していなければならない。高橋氏は当初より、 4 会期を通じて豊田市に滞在し、毎日会場に足を運ぶことを決めていた。彼は美術館の近く にアパートを借り受け、毎日子どもたちと対話しながら一緒に造形活動をおこなった。こ うした作家の全面的な協力なくしては、今回のプロジェクトは成り立たなかっただろう。 また、高橋氏が京都造形芸術大学ウルトラファクトリーの専任講師を勤めていることから、 京都から連日、多くの大学生たちが会場のサポートスタッフとして参加してくれた。会期 中には、高橋氏の指導のもと、こうした学生らが中心になって魅力あるワークショップが 開催されるなど、充実した関連事業も展開することができた。 昨年の「小沢剛」展に引き続き、今回のプログラムには当初の予想を上回る多くの親子 連れが来場した。会期を通して、普段、美術館を訪れることのない年中~年長の園児とそ の家族が来場する姿を多く目にした。こうした状況を導いたのは、何よりも子どもたちを 惹きつける不思議な効力を備えた大量の「粘土」と、高橋氏による魔法のような「光」と のコラボレーションの魅力によるところが大きい。事業終了後、作家およびスタッフのも とには、プログラムに参加した子どもたちから感想文や絵日記が多く寄せられた。そこに 綴られた内容は、このプログラムの子どもたちに与えたインパクトの大きさを実感できる ものであった。 広報の面においては、昨年度の経験を活かし、子どもと親に焦点をしぼったチラシを作 成して市内こども園の年中・年長、小学校低学年に焦点を絞って配布したことも功を奏し たと考えている。これまで来館したことの無い人々も含め、予想を上回る数の入場者を呼 び寄せ、特に親子を対象に美術館の事業をアピールすることができたという点においても、 成功を収めたと考えている。 (庶務担当者) 今夏も昨年同様クールシェアが実施される中、本展覧会は開催された。 本展覧会は、無料かつ親子で楽しめるということから、連日大勢の参加者が訪れた。 ターゲットを絞ったチラシの作成配布により、アンケート結果をみても、チラシによ って本展覧会を知ったとの回答が多数あり、チラシの効果は大きかったことがわかる。 また、友人家族と参加される方も多く、口コミでの情報拡散も親子企画の特徴ではな いだろうか。さらに、1度のみの参加ではなく2度3度と参加されるリピーターの方々 も少なくなかったことから、大量の粘土とひかりのコラボレーションは親子ともに夢中 になることができる魅力のある企画であったのではないかと思う。 今回は、子どもの保護者を対象に、負担にならない程度の簡単なアンケートを実施し た。設問内容をコンパクトにしたアンケートであったため、比較的協力しやすい形であ ったと思う。今後は、保護者だけでなく主体である子どもを対象にしたアンケート方法 も考えていくことが課題である。 5 (総括) これは昨年の小沢剛のふとん山のプロジェクトに引き続き、夏休み子どものプログラ ム 2013 親子として、小学生以下の子どもと親にターゲットを絞った展覧会としては第2回 目の試みとなるものである。実際、当館では開館以来、市内の中高生の見学が継続的に行 われていたものの、経費的、カリキュラム的な実情で中止となった。それを補うために 4 年前から当館の教育普及担当が中心となって、学校教育の中ではなく、親子に直接アッピ ールする企画として検討し実現してきたものである。 今回は光りによる様々なプロジェクトを行っている高橋匡太氏を選び、氏と検討し、最 終的に巨大な粘土の塊りという、高橋氏の普段使っていない素材での展開となった。油粘 土 10 トンが長さ 40cmの円筒形の形で無数に積まれていた初期段階ではどのようにこの 塊りから子どもでも扱える可塑性を引き出すのかと危惧したが、小槌やヘラをはじめとし た様々な道具も整い、子ども達は、係りのサポートを受けながら様々にそれを叩き、積み、 切ることで通常の細かな造形ではなく、からだ全体を使った制作と成っていった。 この展観は本質的にワークショップ的な環境になるもので、初めからある何らかの作家 の造形物を鑑賞するものではない。全ては子どもの自発的な造形性に掛かっている。われ われと高橋氏はその場を設定し、サポートする役割となる。 はじめは重なっていた粘土はすぐに当館のテーブルが登場したことで、さらに立体的な 切っ掛けを得たようで、それを作業台としながらも、そのテーブル自体が、生き物の骨格 になり、また洞窟的な場となるなど、会期中、何度も変転していった。 ロールケーキ状の造形や、楽器のの形を作ったりした他、真っ暗闇のなかで粘土を触って制作 したりとまさに光りを意識させる高橋氏らしい特別なワークショップを3回開催したのだが、そ の時々で、大王イカを作ったり、城のようなものを作ったりと、その時々の子どもの自発 的な造形に会せるように展開していった。それは一日の中で今日のみんなで作る造形を黒 板に書いていったのだが、結局、目的論的ではない、暗中模索の造形の場を目指していた のであろう。 その日々刻々と変化する展示室の様子は、特設されたホームページ上で毎日配信され、 また定点観測的に写真を撮影し記録していった。 酷暑の中での展観であったことから、その熱さを避ける遊び場として多くの親子が手袋 などを様々に用意しながらリピーターとして何度も来ていることが分かった。他の報告 にもあるようにこれまでの当館の来館者層とは異なる園児や小学生低学年に照準を合 わせチラシを配布した意義も生きていただろう。また中日新聞他にも報道された力も多 としなければならない。しかし何よりもお母さんのネットワークに乗って口コミで会期 中に来館者が増えていったらしいことは強く実感できた。 親子は何度も来ては、様々に展開しているみんなで作る粘土の造形に参加したり、あ るいは親子で黙々と作っている姿が見られた。そのように二極化しながら、園児から小 学生までの様々の子どもが全体でひとつの広場的な造形の場を自由に展開していたの 6 である。 無料の企画とは言え、結果的に12,295人の入場者にのぼり、予想以上の入館者で、 またアンケートによれば企画内容について93%が高評価をしていることはうれしい 限りである。 作家は会期中滞在して張り付いての対応となった。作家も意義も感じてくれたが、その ことと高橋匡太という作家性とは別の話しである。人々も粘土遊びに徹して、光りの効 果は BGV として機能していたのだろうか? 確かに造形の影の色彩が変化するのを味わ うと言うよりは、環境全体を光りによって変えた今回の試みは、その場自体の印象を変 化させる方向として機能していた。作家性の顕在化としては今回の試みは成功していた のかどうかは、参加者・鑑賞者も含め検証してみたい事柄である。 ただし、高橋匡太の個人プロジェクトは引き続きライティング・プロジェクションと して 10/12-27 まで閉館後の池周辺で展開する。 ちなみにちょうど重厚なフランシス・ベーコン展の会期と全く重なっていたが、観客層 がずれていてあまり重層的な効果は不明である。ただし中学生以下1名につき保護者1名 の無料観覧を実施したところ<7 月 20 日(土)~8 月 4 日(日)>、利用者(保護者)は 937人にのぼっている。むしろ静かに鑑賞したいというベーコンへの観客からは、子ど もがうるさいという苦情もあった。しかし会場は館の中で最も離れた場所にあり避けよう がなかったが、それだけ鑑賞者の意識・層が異なっていたことの指標と捉えることが出来 るかもしれない。 なお、記録の本展小冊子は 11 月中に発刊の予定である。 7
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