「動き」がよく見えるシステム

リンガーズ・スポーツラウンジ
「動き」がよく見えるシステム
ROGER MAYCOCK, PRO AV, MARCH 2002
リンガーズ・スポーツラウンジは試合を見落と
させないよう高解像度の映像と音声を導入
課題 : 約 700 平方メートルの倉庫を、最新の映像
音響システムを導入したハイテクスポーツラウンジ
に変身させること。
解決法 : 24 台の高解像度ディスプレイ、アンビエン
トノイズセンシングの音響システム、無線 LAN を備
えてスポンサーの意向をすべての座席に提供。
テキサス州オースチンの歴史的な倉庫エリアにあるリンガーズ・スポーツラウンジは、友人との待ち合わせ、飲食を楽しむス
ペース、そして最新のスポーツ情報を入手するための名所になった。2004 年 9 月に築 100 年の建物にオープンしたこの店は、
高解像度の映像ディスプレイ、アンビエントノイズを感知する音響システム、照明、空調、セキュリティといったすべてのシステ
ムで全自動制御の恩恵を受けている。
このスペースは以前音楽クラブだったが、新しいオーナーはできるだけ短い工事期間で新しいスポーツラウンジとしての個
性を持たせたいと希望していた。オースチンを中心にシステムデザイナー / インテグレーターとして活動しているネクスト社は、
AV システムの青図を描いた。
「古い設備を壊して設計して、オープンするまでに 3 ヶ月ちょうどという仕事でした」こう語るのはネクストの社長、ダン・マク
ラフリンだ。
オーナーはリンガーをハイエンドのスポーツバーにして、高品質の映像をスペース中のどの場所へも提供したいと考えてい
た。リンガーズのゼネラルパートナー、ボブ・ギレットは言う。
「最大の課題は入ってきた人たちの目をいかにくらませるか、ということでした。お客様の注意を引きつけておくためにはほとん
どの家庭で見られる以上の映像を提供しなければなりません。特にスポーツ観戦には重要なことです」
スペースをマッピングする
このラウンジは 13.5m × 50m と比較的細長いため、ドラマチックな J 字型のバーカウンターが客席エリアを渡るように備えら
れた。このカウンターは店の中央を対角線上に横たわっており、ちょうどカーブしている部分が入り口に向いていて来店者を出
迎えている。左側の壁に沿ってブース型の客席が並び、反対側にその他の設備が並んでいる。バーの両側に広がるスペース
にもテーブルが並んでいる。このフロアプランではバーと一連のディスプレイがアイキャッチャーとしての役割を果たしており、
前方右側と後方の壁には店内最大のディスプレイが 2 台かかっている。
このプロジェクトで建築と内装を担当したオースチンのデザイナー、ティム・カペットはこう言う。
「店内での視線を定義するのはとても大変な課題でした。この店のテーマはすべてスポーツの動きです。オーナーは常に高解
像度の映像を流しておきたがっていました。他はすべてそれに付随する事柄だったのです。目標はこうした方法ですべてのスク
リーンの位置を決めることで、最もインパクトがあってどの席からも見えるという条件をクリアすることでした。
」
高解像度の映像
来店者を前方、後方、両側のエリアにとどめておくため、NEC の 50 インチプラズマディスプレイ PX50XM4A が 11 台、42
インチプラズマディスプレイ PX42VR4A が 9 台、さまざまな角度から画面が見えるように設置された。いずれも A ピッチの天
リンガーズ・スポーツラウンジ
井から特別に切って黒く塗装したパイプで吊り下げられている。
夜になって照明が落とされると Chief 社製のディスプレイ金具と
特注のブラケットで取り付けられたディスプレイがまるで空間に
浮かんでいるように見える。パイプを通して配線しているため外
からケーブルが見えることもない。
リンガーのオーナーはもともとプラズマを埋め込んだときのコ
ストや故障する確率を気にしていた。この点を解決するためマク
ラフリンは広範囲な調査を行い、( 米国では )3 年保証で半減期
が 6 万時間、さらに故障率が低いという NEC の PX シリーズを
選んだ。
前方左と背面の壁には店内最大の HD ディスプレイが取り付
けられている。Stewart Flimscreen 社の 135 インチ、アスペクト比 16:9 のディスプレイが壁面を飾っているが、店内最大の画
面はプロジェクター対応の Goo Systems 社製 Screen Goo で作られた 16:9 の 160 インチだ。シーリングマウントの 2 灯式プロ
ジェクター NEC GT6000 が 6000ANSI ルーメンの画像を両方のスクリーンに映し出している。
このプロジェクターは日中たいていエコモード (1 灯の 3000ANSI ルーメン ) で動作しているが、店が忙しくなる夜間は 2 灯
とも点けてより鮮やかな映像を提供する 6000ANSI ルーメンになる。マクラフリンはこう言っている。
「すべて AMX の NetLinx インテグレートコントローラー NI-3000 で操作しています。夜になるとデュアルモードになるようプログ
ラムしてあります。しかし日中でも AMX のタッチパネル NTX-CV12(12 インチ ) と MVP-8400(8.4 インチ )、またはワイヤレスの
Modero ViewPoint にある『GAME』というボタンを押すと、日中でも大事な試合のときはデュアルモードに切り替えることがで
きます」AMX システムはまた店内の照明、音声、セキュリティもコントロールしている。
ソースはハイビジョン衛星放送とケーブルテレビ、それに Marantz の DVD プレイヤー PMD970 だ。映像ソースはすべて
AutoPatch のハイバンドワイズコンポーネントスイッチャー Modula シリーズに接続されていて、16 のソースがここから店内 24
の行き先に送られている。RCA コンポーネントの映像信号はこの Modula で RGB に変換され、1080i HD コンポーネントで
ディスプレイに直接送られている。このアレンジで唯一の例外は、ビデオ用にダウンコンバートされた信号のプレビュー機能を
AMX NTX-CV12 タッチパネルと DVD プレイヤーが提供していることだ。
一般的にマネージャーはプレビュープログラムを AMX のタッチパネルで選択して、それから各ディスプレイに送るようルー
ティングする。この店ではカスタムのスポーツ番組チャンネルを契約しているので、システムの柔軟性から最大限のメリットを
引き出している。
「NFL のサンデーチケットをプログラミングしたパッケージを流すと、この店でアメリカンフットボールの試合を観ることがどれ
ほどすばらしいかわかります。10 本の番組を簡単に、同時に観られるんですよ」とマクラフリンは言う。
来店者がリンガーズで試合中のシーンをかけらほども見逃さないようにするため、化粧室の洗面台の上にある 2 ウェイミラー
の後ろには Zenith の 20 インチ液晶モニター L20V36 が付いていて、160 インチのディスプレイと同じ映像が流れている。
オーディオ
音声信号は Radio Design Labs のオーディオフォーマットコンバーター TX シリーズで店中に供給されているが、システムに
ハムやノイズが載りにくいようすべてバランスになっている。次に AutoPatch のスイッチャー Modula に入り、そこから BIAMP
の Nexia CS プロセッサーに送られ、ラウンジにある 4 つのオーディオゾーンに送る信号がイコライジングされている。BIAMP
の Nexia はまたアンビエントノイズを感知している。このテクノロジーを採用したため、店が混んでいないときは音量を下げ、
混んでくると補うように自動的にシステムのレベルを調整してくれるのだ。
Nexia からの信号は QSC のパワーアンプ CX シリーズに入り、最終的な目的地に送られる。JBL のスピーカー Control 25T
が 30 本、28-T-60 が 6 本、店中の天井に配置されている。さらに Bag End のパワードサブウーファー Infra-18 が 2 本設置され、
店の前方と後方をそれぞれカバーしている。
リンガーズ・スポーツラウンジ
ネットワークの能力
すばらしいフットボールの試合やインターネットで提供されるスポーツ情報を楽しみたいファンのために、リンガーズは各テー
ブルに AC 電源コンセントを用意した。店内でサービスしている WiFi 無線 LAN を使えるよう来店者がノートパソコンを持ち込
んだときのことを考えている。
さらに無線 LAN でリンガーズのサーバに接続して POS システムを使うこともできる。このサーバは優先のプライベートネッ
トワークで販売端末に接続されている。このネットワークシステムは D-Link のルーター DSA-3100、Netgear のファイヤーウォー
ル FR328、さらに AMX の無線アクセスポイント WAP-200g、Netgear のスイッチングハブ FS108 で構成されている。
内部の機器予算 25 万ドルでリンガーが揃えた高解像度のディスプレイと接続無料のインターネットアクセス、高品質の音響
システムは大きな成功を収めた。AV システムの能力を誇示するため、オーナーはガラスで仕切られた機材室に特別に照明を
当て、店に導入したテクノロジーのショーウインドウにしている。
「私が気に入っている賛辞は、
初めて店に入ってきたお客様が『こりゃ女房も連れてこなくちゃ』と言ったときです。
『どうして ?』
と私が尋ねると『うちにもこんなシステムが欲しいからさ』ですって」
予算内でディスプレイを作る
予算内で入手した圧倒的な量のプラズマディスプレイ、音声システム、制御システムの機器の他に、AV 設備チームは店の
前面の壁に取り付けるための高品質でリーズナブルな 16:9 の 160 インチでディスプレイを作らなければならなかった。そこで
見つけた解決法が Goo System の Screen Goo だ。
Screen Goo は特殊なかなり反射の強いアクリル製の塗料で、映像を投射するために特化した商品だ。商業用にも家庭用に
も使われているこのアクリル製ペイントが塗装された表面を投写用スクリーンに変えてくれるのだ。Screen Goo にはブラウン管
タイプの白、デジタルグレー、デジタルグレートップコートなどさまざまな種類がある。ダン・マクラフリンはこう言う。
「私たちの投写表面は実際には石膏の壁で、
木製の枠を付けて 2 つの手間をかけて Screen Goo を塗っただけです。スクリー
ンはおよそ 500 ドルですけど安すぎますよね。記事には 4000 ドルくらいだと書いてくださいね」
アンビエントノイズ感知というソリューション
BIAMP の Nexia CS にはアンビエントノイズコンペンセーター (ANC) があり、リンガーズの音響システムでは自動レ
ベル調整のために使われている。この機能を使うためにネクストのチームは SHURE のマイク SM58 を 2 本、それぞ
れ客席エリアの前方と後方をカバーするよう店内の天井に取り付けた。室内のノイズレベルの変化を検知するためだ。
マクラフリンはこう言う。
「実験とミスをくり返して最終的にこの店では 4 つの設定が機能することがわかりました。4 つの設定とは、まずオー
プン ( 店内にほとんど客がいない状態 ) とランチ ( 中程度に店が混んでいる状態 )、ディナー ( 夜の営業時間帯で最も
混んでいるとき )、それからクローズ ( システムがミュートされて無音の状態 ) です。
設定中には室内のアンビエントノイズレベルに近いものとしてホワイトノイズを使い、店が営業を始めてから実際のお
客様をノイズソースにしてさらに測定しました。それぞれの設定で音響システムは 4 種類のスレッショルドより 20dB 高
いところで動作するよう設定されています。
Nexia では最小と最大のゲイン、反応時間長、スレッショルド、ゲインレシオを設定しました。また Nexia のコントロー
ルダイアログボックスを最小化しておくとカスタムユーザーコントロールサーフェスを作ることもできます。このシステム
を正確に動作させるためには Nexia はシグナルパスの最後に入れなければなりませんでした。その出力はもちろんア
ンプやスピーカーでも音量調整はしていません」