2012年5月9日 講師: 大村 泉 題目: 藤野先生と魯迅

受講者の声
提出されたミニレポートで、ホームページへの掲載に同意のあったものからの抜粋です。
開講日:2012年5月9日
講師:大村 泉
題目:藤野先生と魯迅:東北大学における留学生教育の原点と現在
(課題) 今回の講演の概要と意見などを300字程度で記してください。
Write a summary of today’s class and your opinion in roughly 150 words.
1
私も日本にいる留学生の一員だ。留学の目的を言えば、自分の専門分野の知識を学ぶこ
とだ。しかし、専門知識を勉強する前に、この国の言語をある程度分からなければならな
い。しかし、日本語を分からない留学生が医学系研究科にもいる。確かに、医学の研究に
おいては英語だけで十分だが、日本に住んでいながら、なぜ日本語を勉強しないのだろう
か。私にとって、留学の目的はただ勉強するだけではなく、国民外交も一つの重要な責任
だ。学校にいる時に関わらず、日常生活すべての行為が自らの国を代表するものだ。もし、
日本語ができれば、私の周りの人々がもっと私の国”台湾”のことを理解できる。これは国
のイメージをアピールする一番の良いチャンスだと思う。学問は国境がない、真実を求める
というものだ。
2
現在、中国をはじめとする他の国に対して、日本が大きな偏見を持っているということはな
いので、当時の日本の偏見がどれほどのものかはいまいち分からない。しかし、授業中に
聞いた様々な事件についての話で、相当に強い民族的偏見があったのだと思った。そんな
中、理解を示し、懇切丁寧にノートの添削をして魯迅を一人の生徒として指導した藤野先生
の学問に対する真摯な態度に感銘を受けた。現在私が所属している研究室にも中国人の
方が一人いる。その方も研究に対する熱意や知識の多さなど、尊敬できるところを数多く
持っている。やはり、研究等学問に関しては、様々な素性に関係なく、皆で協力して発展さ
せていくべきなのだと思う。今後、学会などで、海外の優れた研究者たちの知識、考え方を
積極的に取り入れていきたい。
3
藤野先生と魯迅氏との関係は、1つの時代の1例でありながら、日本と外国とのかかわりに
おいて重要かつ普遍的な要素がいくつも含まれていると感じられた。グローバル化が進み
続けている中で、自分自身、海外に出たり、外国人との生活が必要になることも十分に考え
られる。そうした中で、二人の関係を心に留め、真に友好的なパートナーを得られるように
尽力していきたい。
4
今回の講演の後、私は不勉強にも読んでいなかった「藤野先生」を読んでみた、結局、手紙
を贈れなかったことへの後悔、写真を住居に書けてあることなど、確かに藤野先生を恩師と
して慕っている様子が短い文章からも感じた。しかし、講演の内容などを自分なりに整理し
てみると、やはり魯迅が文学へ転向した原因の一端を担っているのではないかと感じた。私
自身の経験だが、当時は嫌いだった先生の良さを数年後に理解するということがあった。そ
れは、同時に、なぜ自分はあの時期待を裏切ってしまったのかという後悔につながり、心の
中にずっと残ってしまう。あくまで自分の経験を重ねているだけなので、藤野先生の批判を
しているつもりは全くないが、これを美化するのは危険ではないかと思う。熱心な指導は受
け手によっては逆効果になりかねないのではないだろうか。魯迅がどうだったかは本人しか
わからないことであるが、私はそう感じた。
5
・・・・魯迅が藤野を偉大な恩師としていた理由は、以下の3つであると考えられる。第一に、
藤野が中国、中国文明に対する深い理解と弱者へのいたわりの精神を持っていたこと。第
二に、藤野が魯迅に対して妥協を許さない徹底した指導を行ったこと。第三に、藤野は魯迅
に対する教育を通して、中国のために中国に新しい医学を生み出し、学術のために中国に
新しい医学を伝えることを目的としていたことである。魯迅と藤野の関係は、学術と呼ばれ
る客観的で普遍的な真理探究は民族の利害を超えていることを示している。私は、この講
義を通し、多くの留学生が在籍しているという東北大学の特徴をこれからの研究に生かして
いきたいと思った。
6
・・・・In my personal pantheon, Lu Xun's articles is quite incisive and make one ponder.
Just like a knife, tear the epidermis and expose the ugly fact. So when I was young, I didn't
quite like his articles, but later I admire him for his brave and honest.・・・・When Lu xun was
young, China was before the revolution of 1911 which thoroughly destroyed the last
Chinese feudal dynasty Qing. Various of advanced thoughts and ideas from the western
countries and Japan entered into China by the intellectual. Every motivated young man
and woman went around to help the populace know what were happening around the
world.・・・・Just in that time, Lu Xun made up his mind to abandon medicine for literature.
He wrote papers to flay the corrupt customs and the venal administration at that
time.・・・・(I know Lu Xun as descrived above, but) For Pro. Fujino, this is the first time I
seriously realize this admirable person, both from the detail description and presious
historic photographs.
7
・・・・藤野は「客観的で普遍的な真理探究は民族の利害を超える。学問に国境はない。」と
いうことを示していた。今回のお話を聞いて、学問に対する考え方が変わった。今までは、
学問というものを特に意識して考えたことはなかったが、確かに学問は世界共通であり、国
境は存在しないと感じた。これからh、学問をもっと広い目で見て、自分の研究に関しても、
世界中の研究機関と見比べながら進めて行きたいと思った。
8
今回の講演で、初めて藤野先生が魯迅に対して添削指導したノートを見た。これを見ると、
藤野先生の添削は確かに「行き過ぎ」ではないかと感じてしまう。このことについて、実際に
研究室にいる留学生に、これほどの添削は負担にならないか聞いてみた。すると、意外に
も「これだけ添削してもらえるのは確かに負担になるけれども、大変助かる」と言っていた。
留学をするということは、ただ大学に通っている日本人の学生よりも意欲があり(一概には
言えないが)、中途半端な知識を得るよりも、大変でもきちんとした知識を身につけたいとい
うことなのだろうと考えた。藤野先生のように添削する方たちには当然感謝しなければなら
ないが、学生としては、魯迅や留学生のように、その添削指導をありがたいものとして真摯
に受け止める姿勢を見習うべきだと思う。
9
東北大に入りながら、魯迅と藤野先生の関係については無知であり、魯迅が毛沢東に次い
で中国で有名だということは非常に驚きであった。
講義の内容は、魯迅と藤野先生との関係を「藤野先生」という本と歴史的事実とを照らし合
わせ、その真偽のほどを確かめようとしている感じがした(少なくとも私はそう感じました)。
魯迅の藤野先生に対する見解がいくぶん過大評価されているという印象を感じました。しか
し、魯迅が藤野先生に対し尊敬の念を抱いているのは事実であるし、それがどこまで(歴史
的に)真実であるかを検証するというのは私にとって意義が見出せませんでした。・・・・
10
魯迅にとって藤野は偉大な恩師であった。周囲にはやりすぎだと思われるほどの妥協を許
さない徹底した指導の裏には、一人の弱者へのいたわりや異文明への理解、民族の利害
を超え、世界を見据えた学問の発展を願う意図があった。
留学先でこのような指導をしてくれたら、これほどうれしいことはない、という留学生の意見
や、そこまでやられたら自分ならやめてしまう、という日本人の考え方の違いに納得すると
ころがありました。僕もなぜそこまで魯迅は藤野さんを尊敬しているのか疑問でしたが、留
学生の立場で、しかも留学先で孤立した立場なら、藤野さんの指導は大変ありがたいもの
だったと思います。