大手生保4社の格付を維持、方向性は安定的

NEWS RELEASE
2016年3月4日
【格付維持】
大手生保4社の格付を維持、方向性は安定的
格付投資情報センター(R&I)は上記の格付を公表しました。
<格付見直し結果> *格付対象は後記をご参照下さい。
発行者(証券コード)
保険金支払能力
日本生命保険
AA(維持)
三井生命保険
AA-(維持)
明治安田生命保険
AA-(維持)
第一生命保険(8750)
A+(維持)
第一フロンティア生命保険
A+(維持)
住友生命保険
A+(維持)
メディケア生命保険
A+(維持)
格付の方向性
安定的
安定的
安定的
安定的
安定的
安定的
安定的
CP
a-1+(維持)
-
-
a-1+(維持)
-
-
-
【格付理由】
R&Iは、日本生命保険と子会社の三井生命保険、明治安田生命保険、第一生命保険と子会社の第一フロ
ンティア生命保険、住友生命保険と子会社のメディケア生命保険の格付を見直し、いずれも維持した。
格付の方向性は全て安定的。
大手生保は、程度の差こそあれ株式保有リスクやALM(資産・負債の総合管理)リスクなど、大きな資
産運用リスクを依然として抱え、株価や金利の変動によって、リスク耐久力は変動しやすい。2016年1
月の日本銀行によるマイナス金利導入の発表以降、国内の金利は一段と低下、株価も乱高下を続けてお
り、リスク耐久力への影響は無視できない。もっとも、各社ともここ数年の内部留保の蓄積が寄与し、
資本基盤が強化されている。そのため、2015年度に相次いだ大型買収の影響を勘案しても、リスク耐久
力は格付に照らして遜色ない水準を保っている。
金利低下に対応して、貯蓄性商品を中心に保険料の値上げや販売抑制・停止の動きが出始めているが、
各保険グループの営業基盤や収益力の評価への影響は大きくない。貯蓄性商品は収益性が低いうえ、銀
行など販売会社のスタンスにより販売量が変動するため、安定した収益基盤とはこれまでも評価してい
ない。大手各社は厚い危険差益を確保できる保障性商品の販売を主力としている。特に収益性の高い第3
分野の保有契約ANP(年換算保険料)は緩やかながら拡大しており、格付に見合った収益を確保していけ
よう。
安定した営業基盤も維持できている。ここ数年は各社とも海外での大型の買収を実施しており、収益
に占める海外の比率は高まっている。とはいえ、なお収益基盤の大半は国内生命保険事業が占める。国
内の銀行窓販や代理店チャネルは中長期的に成長が期待できる半面、価格競争が厳しく、販売の安定性
も高くない。このため営業基盤の評価では引き続き営業職員チャネルを重視している。懸案の営業職員
のターン・オーバー問題(大量採用、大量脱落)は、育成期間の長期化などで徐々に改善に向かってい
る。各社とも契約のアフターフォローに注力してきた結果、解約・失効率は低下傾向にあり、収益の安
定感は高まっている。国内の死亡保障市場は今後も緩やかな縮小が続く見通しだが、既存顧客のライフ
ステージの変化に合わせて医療保険や介護保険などの第3分野や年金保険を提供することで、顧客基盤を
一定水準に維持することは十分可能とみている。
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格付投資情報センター 〒103-0027東京都中央区日本橋1-4-1
E-mail. [email protected]
日本橋一丁目三井ビルディング
http://www.r-i.co.jp
信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見であり、事実の表明ではありません。また、R&Iは、信
用リスク以外のリスクにつき意見を表明するものではなく、投資判断や財務に関する助言や、投資の是非等の推奨をするものではありません。R&Iは、信用格付に際し関連情報の正確性等につき独自の
検証を行っておらず、これに関し何ら表明も保証もいたしません。R&Iは、信用格付(変更・取り下げ等を含む)に関連して発生する損害等につき、何ら責任を負いません。信用格付は、原則として発
行体から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につきhttp://www.r-i.co.jp/jpn/policy/policy.html をご覧下さい。
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浸透度に差はあるものの、各社ともERM(統合的リスク管理)の強化が進んでいる。経済価値ベースで
の健全性を経営目標にして、リスクの削減や資本の充実を目指すなど経営への活用度合いが高まりつつ
ある。ERMの強化を資産運用リスクの削減やリスク・リターンの向上といった具体的な成果に結び付けて
いくことが重要になろう。
【個別企業の評価】
○日本生命保険/三井生命保険
総合保険グループとして国内生保事業のほか、資産運用事業や海外保険事業を展開している。保有契
約高ベースでみた生命保険市場でのシェアは、かんぽ生命保険を除いて国内トップ。新中期経営計画で
は「最大・最優」をテーマに掲げ、営業職員チャネルに比べてシェアの低い銀行窓販や代理店チャネル
でもシェア拡大を目指す。また、2017年度までに、日本生命以外のグループ事業純利益を300億円にする
ことを目標とし、2015年度には三井生命や豪MLCの買収を発表するなど、グループの収益基盤の強化を進
めている。
リスクプロフィールはALMリスクに加え、株式リスクが非常に大きい。内部留保の蓄積が進んでいるも
のの、金融・資本市場の変動の影響を受けやすく、リスク耐久力はAAゾーン下位と評価している。強化
しつつある経済価値ベースのERMを定着させ市場リスクを抑制したリスクプロフィールを構築し、リスク
耐久力の水準・安定性を高めていくことが、AAという極めて高い格付を維持していくうえで重要である。
2015年12月に日本生命の子会社となった三井生命は、営業面を中心に当面は独立した営業体制を維持
するが、商品の相互供給や販売チャネルの相互活用などを通じシナジーを追求していく。日本生命のグ
ループ戦略における重要性は高く、格付は日本生命の1ノッチ下にしている。
○明治安田生命保険
契約者数は600万人を超え、団体保険の保有契約高で業界トップの地位を占める。解約・失効率の継続
的な低下や、第3分野の拡大により、保有契約ANPは増加が続いている。これまで、海外保険事業はマイ
ナー出資中心だったが、2015年度に米StanCorp Financial Groupの買収に踏み切った。海外事業の貢献
度は保険料ベースで13%程度に高まる見通しだ。買収でリスク耐久力は低下するものの、なおAAゾーン
に見合う水準にある。もっとも、株式保有リスクとALMリスクが大きく、金融・資本市場の変動の影響を
受ける点には注意が必要だ。経済価値ベースのERMに基づいて、リスクを適切にコントロールできるか注
目している。
○第一生命保険/第一フロンティア生命保険
第一生命は国内第2位の顧客基盤を持つ大手生保。2010年に株式会社に改編し上場した。ビジネスモデ
ルの再構築を加速させており、第一フロンティア生命やネオファースト生命保険での窓販・代理店事業
拡大や、買収による海外保険事業強化など成長市場への投資も積極化している。海外事業の利益貢献度
が高く、収益の分散化・多様化が進んでいる。
かつてに比べ削減が進んでいるとはいえ、株式保有リスクやALMリスクはなお大きい。リスク耐久力は
格付に見合う水準にあるが、金融・資本市場の変動の影響を受けやすい。国内生保の中でも取り組みが
進んでいるERMをベースに、内部留保を積み上げつつ、資産運用リスクを削減し、リスク耐久力の水準・
安定性を高めていくことができれば、格上げの公算が高まってこよう。
第一フロンティア生命は第一生命の連結子会社。金融機関窓販専門会社として2007年に開業した。個
人年金保険などの貯蓄性商品に特化しているため、現状の低金利下では収益性は高くないが、外貨建等
商品を中心とした取扱商品の多様化で収益の確保を図っている。金融機関を通じた保険・年金事業の重要
性は高く、グループとの一体性は極めて強い。格付は第一生命と同じにしている。
○住友生命保険/メディケア生命保険
住友生命は住友グループの主要メンバー。契約者数は約700万人で大手4社の一角を占める。死亡保障
に加え、早くから収益性の高い介護・医療といった第3分野に力を入れてきた。大手生保の中では、抱え
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信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見であり、事実の表明ではありません。また、R&Iは、信
用リスク以外のリスクにつき意見を表明するものではなく、投資判断や財務に関する助言や、投資の是非等の推奨をするものではありません。R&Iは、信用格付に際し関連情報の正確性等につき独自の
検証を行っておらず、これに関し何ら表明も保証もいたしません。R&Iは、信用格付(変更・取り下げ等を含む)に関連して発生する損害等につき、何ら責任を負いません。信用格付は、原則として発
行体から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につきhttp://www.r-i.co.jp/jpn/policy/policy.html をご覧下さい。
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るリスクに占める株式保有リスクのウエートが低い。一方で、ALMリスクは依然として大きい。これまで
マイナー出資中心だった海外保険事業は、2015年度に米Symetra Financial Corporationを完全子会社化
したことで、保険料収入がグループ全体の14%程度まで高まる見通しだ。この買収でリスク耐久力は低
下したが、格付に見合う水準を維持している。内部留保の蓄積を進め、リスク耐久力の水準・安定性が
向上していけば格上げの公算が高まってこよう。
メディケア生命は2014年7月に住友生命の完全子会社になった。保険ショップなどの代理店チャネルを
通じて第3分野商品を提供している。保有契約や利益面でグループへの貢献は限定的だが、「マルチチャ
ネル・マルチプロダクト戦略」を進める住友生命グループにとって極めて重要な存在で、格付は住友生
命と同格にしている。
【格付対象】
発行者:日本生命保険
名 称
保険金支払能力
名
称
基金
(2017年8月3日償還)
基金
(2018年8月1日償還)
基金
(2019年8月1日償還)
第1回利払繰延条項・期限
前償還条項付無担保社債
(劣後特約付)
名
格 付
AA(維持)
発行総額
(億円)
1,000
発行日
償還日
2011年08月05日
2017年08月03日
AA-(維持)
500
2012年08月03日
2018年08月01日
AA-(維持)
500
2015年08月05日
2019年08月01日
AA-(維持)
750
2015年04月30日
2045年04月30日
A+(維持)
称
発行限度額
(億円)
3,000
コマーシャルペーパー
発行者:三井生命保険
名 称
保険金支払能力
称
基金
(2016年8月2日償還)
基金
(2017年8月4日償還)
基金
(2018年8月3日償還)
基金
(2019年8月2日償還)
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株式
会社
担保・保証
保証会社等
無担保
格 付
AA-(維持)
発行者:明治安田生命保険
名 称
保険金支払能力
名
格付の方向性
安定的
格
格
付
付
a-1+(維持)
格付の方向性
安定的
格 付
AA-(維持)
格付の方向性
安定的
発行総額
(億円)
500
発行日
償還日
2011年08月05日
2016年08月02日
A+(維持)
1,000
2012年08月09日
2017年08月04日
A+(維持)
500
2013年08月08日
2018年08月03日
A+(維持)
600
2014年08月07日
2019年08月02日
A+(維持)
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格
付
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発行者:第一生命保険 (証券コード:8750)
名 称
格 付
保険金支払能力
A+(維持)
名
称
コマーシャルペーパー
担保・保証
保証会社等
無担保
格
付
a-1+(維持)
発行者:第一フロンティア生命保険
名 称
格 付
保険金支払能力
A+(維持)
格付の方向性
安定的
発行者:住友生命保険
名 称
保険金支払能力
格付の方向性
安定的
名
称
基金
(2016年8月4日償還)
基金
(2018年8月3日償還)
第1回利払繰延条項・期限
前償還条項付無担保社債
(劣後特約付)
発行者:メディケア生命保険
名 称
保険金支払能力
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株式
会社
発行限度額
(億円)
1,000
格付の方向性
安定的
格 付
A+(維持)
発行総額
(億円)
300
発行日
償還日
2011年08月09日
2016年08月04日
A(維持)
500
2012年08月08日
2018年08月03日
A(維持)
500
2014年11月20日
2074年11月20日
A-(維持)
格 付
A+(維持)
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付
格付の方向性
安定的
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格
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信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見であり、事実の表明ではありません。また、R&Iは、信
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信用格付に関わる事項
信用格付業者
登録番号
株式会社格付投資情報センター
金融庁長官(格付)第6号
直近一年以内に講じられた監督上の措置は、ありません。
主任格付アナリスト
信用格付の付与について
代表して責任を有する者
若松 裕太
神林 尚
信用格付を付与した日
主要な格付方法
2016年02月26日
事業法人等の信用格付の基本的な考え方 [2015.05.01]
金融機関等に共通する格付の考え方 [2014.03.13]
生命保険 [2013.10.31]
金融グループの格付の考え方 [2013.07.31]
規制資本商品と金融機関等の格付の考え方 [2014.04.21]
ハイブリッド証券の資本性の評価と格付の視点 [2015.05.08]
上記格付方法は、格付を行うにあたり考慮した他の格付方法とともに以下のウェブサイトに掲載
しています。http://www.r-i.co.jp/jpn/cfp/about/methodology/index.html
評価の前提は、以下のウェブサイトの格付付与方針に掲載しています。
http://www.r-i.co.jp/jpn/ratingpolicy/index.html
格付符号とその定義は、以下のウェブサイトに掲載しています。
http://www.r-i.co.jp/jpn/cfp/about/definition/index.html
格付関係者
日本生命保険、三井生命保険、明治安田生命保険、第一生命保険、
第一フロンティア生命保険、住友生命保険、メディケア生命保険
注
格付関係者は、金融商品取引業等に関する内閣府令第三百七条に基づいて、R&Iが判断したものです。
利用した主要な情報
品質確保のための措置
情報提供者
決算書類、開示情報
公認会計士の監査済みである、またはそれに準じた信頼性が確保され
ている決算書類であること。一般に開示された、またはそれに準じた
信頼性が確保されている情報であること。
格付関係者
信用格付の前提、意義及び限界
R&Iの信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約
定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見です。R&Iは信用格付によって、個々の債
務等の流動性リスク、市場価値リスク、価格変動リスク等、信用リスク以外のリスクについて、何
ら意見を表明するものではありません。信用格付は、いかなる意味においても、現在・過去・将来
の事実の表明ではありません。また、R&Iは、明示・黙示を問わず、提供する信用格付、又はその
他の意見についての正確性、適時性、完全性、商品性、及び特定目的への適合性その他一切の事項
について、いかなる保証もしていません。
R&Iは、信用格付を行うに際して用いた情報に対し、品質確保の措置を講じていますが、これら
の情報の正確性等について独自に検証しているわけではありません。R&Iは、必要と判断した場合
には、信用格付を変更することがあります。また、資料・情報の不足や、その他の状況により、信
用格付を保留したり、取り下げたりすることがあります。
利息・配当の繰り延べ、元本の返済猶予、債務免除等の条項がある債務等の格付は、その蓋然性
が高まったとR&Iが判断した場合、発行体格付又は保険金支払能力とのノッチ差を拡大することが
あります。
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