関節リウマチ患者の術前・術後の管理のポイント

Welcome to Adobe GoLive 4
関節リウマチ患者の術前・術後の管理のポイント
センター用増補版 (2003年)
1. 術前管理
(1) 全身状態
(2) 使用薬物
(3) 局所評価
(4) 麻酔管理
2. 術後管理
(1) 疼痛
(2) 出血
(3) 感染
(4) 深部静脈血栓
(5) リハビリテーションの基本姿勢
関節リウマチ患者の手術を行う場合、その前後の管理は、原疾患そのものが手術に対するリスクであることを十分に認識して行わなけ
ればならない。一般的に行われている、滑膜切除術、関節形成術、人工関節置換術、あるいは腱形成術などのいずれも、生命予後に優
先されるものではない。従って、手術療法の適応を考慮する場合、全身および局所の状態を注意深く評価し無理の無い治療計画を進
め、問題が解決するまで手術を急いではいけない。
近年、医師の患者に対する説明責任(informed and consent)は、より一層重くなっている。患者に手術の利点・欠点や手術を行わない場
合の予後などを十分に説明し、理解してもらわなければならない。リウマチの手術は、骨の質が不良であり、かつ手術後にも進行・再
発の可能性があり、手術の最善の結果が最良の結果とは限らないことに、留意すべきである。
1. 術前管理
全身状態と手術部位の局所症状を明確に把握することから、手術準備が始まる。
近年、在院日数を短縮し医療の効率化が求められており、リウマチ治療においても例外ではない。そのため、外来で行える評価は可能
なかぎり外来で済ませ、入院後は体調のチェック程度*のみとすることが望ましい。全身麻酔の必要のない滑膜切除術、上肢の手術など
に関しては、手術当日の入院**も可能である。術後のリハビリテーションについても、あらかじめ目標設定を明確にし、達成できない場
合の選択肢も用意する。従って、定型的な手術においては、クリティカル・パスの導入は意味深い。
* 入院時検査 : 外来では入院時一式というセット項目が設定してあり、汎用検査依頼書のコメント欄に術前一式と記入すれば、末梢血・
生化学・出血凝固・血液型・感染症が調べられる。手術日程が2週間以内にある場合には、コメントに手術予定日を追加記入する。感染
症検査は3ヶ月間の結果を有効とし、特にHIV(AIDS)に関しては、同意書を取った上で検査する。血液以外には、心電図・胸部レントゲ
ンは必須であり、できれば頚椎レントゲンも追加する。その他に、各種合併症に対しても、必要なら外来で診療依頼で対応する。消化
器・循環器に関しては、できれば成人病センターへ依頼すれば、入院後がスムースである。入院後は、通常は末梢血・生化学の再検と
青山病院用に患部のレントゲン検査を行う程度である。
**当日入院 : 便宜上、day surgeryと称するが、厳密には当センターで行っているものは一泊(またはそれ以上)入院である。複数手指の滑
膜切除、手関節形成術、手の腱形成術、肘関節形成術、肘滑膜切除術、膝関節鏡などが対象となる。下肢の場合は、退院は数日後とす
る方が無難である。
患者側の条件として、高齢者ではない、病院に朝早くに来院できる首都圏に在住、退院時に付き添いが来れる、合併症があっても経口
薬で良好にコントロールされているなどを満たすこととしている。
入院予約時には、予約票にDS(あるいは一泊)とはっきり明記し、患者には手術の予定される前の週に青山病院に一度来院し、事前の
チェックとオリエンテーションを受けなければならないことを説明する。この術前外来で、検査結果などで問題があれば、主治医に
フィードバックされる。
(1) 全身状態
リウマチのコントロールは良好であることが望まれるが、場合によってはコントロールがつかないために手術を行うこともある。コン
トロール不良例は、術後のリハビリテーションなどに影響することがあるので、通常は、最近数ヶ月間のCRP、血沈、リウマチ反応な
どの推移を把握しておくことが重要である。リウマチそのものによる不調を除いて、上気道炎などにより体調が悪い場合には、けっし
て無理せずに手術は延期すべきである。
リウマチ以外の合併症については、一般的に手術の禁忌となるものは少ないが、現在何らかの感染症状を全身あるいは局所に発症して
いる場合は、原則として手術(特に人工関節置換術)を延期する。リウマチの炎症と感染の炎症は、早期に明確に区別することは困難であ
る。糖尿病は、創治癒遅延・易感染性などのリスクを伴うので、術前に適切にコントロールされているべきであり、十分な注意が必要
である。悪性関節リウマチや他の膠原病を合併していると、皮膚の状態が不良な場合があり、注意が必要である。
(2) 使用薬物
a. 抗リウマチ薬
ほとんどの抗リウマチ薬は、多くの副作用を持っている。肝腎機能、骨髄抑制、間質性肺炎などの有無は、術前にチェックされるべき
項目であり、一般生化学・末梢血検査・尿検査・胸部単純レントゲン検査は必須である。間質性肺炎が疑われる場合には、積極的に胸
部CT検査を追加する。
file:///F|/ホームページ/あすなろ整形外科クリニックホームページ...ent/5_FunClub/funclub1/RA_manage.html (1/4) [2005/10/23 6:58:59]
Welcome to Adobe GoLive 4
抗リウマチ薬そのものを術前に中止すべきかどうかは、いまだ議論が分かれ、一定の結論は出ていない。我々は、明らかな副作用を呈
していない場合には、術直前まで通常通りに服用させているが、これまでに明らかな問題には遭遇していない。
b. ステロイド*
一般には、リウマチ患者のステロイド使用量は一日に数mg(Predonisolone)であり、あまり問題とはならない。一日量5mg以上を使用し
ている場合には、できるなら減量することが望ましいが、実際には疼痛のため困難なことが多い。使用量・使用期間によっては、手術
に際してステロイドカバー(ステロイド補充療法)が必要となる。
内服によりステロイドホルモン産生能の低下をきたしている患者は、手術時の禁飲食に伴う内服の停止および手術ストレスによる消費
増大により、ステロイドホルモン不足から急性副腎不全を生じる可能性がある。一般的には、一度ステロイドの投与を5日間以上行う
と、自己産生能の抑制が1年間は継続するとされ、本来は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)テストを行った上で補充投与を検討すべきであ
る。しかし、テストが煩雑で実際に行うことは困難であるため、我々は術前にステロイドを使用している患者に対しては、安全性を考
慮して全例術直前にhydrocortisone* 100mgを点滴投与している。術前の使用量がPredonisolone 5mg/日以上かあるいは手術侵襲の大き
い場合には、術後にも同量を使用する。手術翌日以降は、内服再開が可能であれば特に補充の必要は無い。補充療法による大量投与
は、消化管出血、易感染性の招来や創治癒遅延などの問題を発生させる可能性があるので、必要以上に補充することは慎むべきであ
る。
*ステロイド : hydrocortisoneは副腎から分泌される生理的なステロイド・ホルモン(ソルコーテフ、ソルメドロール)で、抗炎症作用は弱
いが、半減期が短く主としてショックなどの緊急時に使用される。Predonisoloneは内服薬として、最も一般的に使用されてい
る。Dexamethazoneは関節内・腱鞘内などの注射薬として用いられ、作用が最も長い。ステロイドは抗炎症・抗免疫作用により感染防
御機能を低下させ、骨形成細胞を抑制するため骨粗鬆症を引き起こす。消化性潰瘍・動脈硬化・血管炎・精神障害などにも注意する。
また長管骨骨端部の骨壊死もしばしば起こすので、特に大腿骨頭は注意が必要である。
(3) 局所評価
リウマチでは、手術を検討している関節の近隣にも病変が存在することが多い。従って、下肢関節手術では少なくとも下肢全体、上肢
関節手術では上肢全体、手指や足趾の場合には手あるいは足部全体の評価をする。各関節に対して炎症の状態、不安定性、可動域(自動
・他動)を評価し、またできれば関連する筋力テストも行う。JOA(日整会) scoreのような一般的な評価方法は必ず行うようにする。関節
によっては単独の関節機能を評価することは困難であるが、代表的な生活動作について可能か不可能か、あるいは装具や介助が必要か
は手術前に確認しておく。
(4) 麻酔管理
個々の麻酔方法の詳細については成書に譲るが、いずれの麻酔方法を選択するにせよ、前述の各評価とともに、胸部単純レントゲン、
頚椎単純レントゲン、出血・凝固能、感染症の有無、薬物アレルギーの有無などは必須のチェック項目であり、可能であればなるべ麻
酔科管理とすることが望まれる。
全身麻酔であれば、さらに肺機能、心電図、血液ガス、場合によっては心エコーなども必要となってくる。
患者が覚醒している状態での麻酔手技は、患者の不安を十分に考慮し、ひとつひとつの操作を説明しながら行うことが重要である。特
に疼痛を伴う姿勢を強制する場合があるので、ひの必要性を患者に知ってもらうことが大事である。
関節リウマチ患者においてはリスクを軽減するため、必要以上の麻酔は控えることが望ましい。ほとんどの四肢の手術においては駆血
帯を用いるため、手術部位の疼痛とともに、駆血帯による絞扼痛・阻血痛も十分とる必要がある。
なお、麻酔剤特に局所麻酔剤*のアレルギーの既往があるかどうかは、必ず問診しておかねばならない。歯科への通院歴を尋ねることが
参考になる。
*局所麻酔剤 : 皮下の浸潤麻酔として一般的に用いられているのは、キシロカインあるいはカルボカインである。
a. 局所麻酔
手指の滑膜切除術や腱鞘切開術などの、外来手術レベルで好んで用いられる。駆血帯を使用する場合には、駆血時間は15分程度にとど
めるべきである。
b. 腋窩ブロック
駆血帯による疼痛をある程度軽減することが可能であり、手関節から遠位部の手術に有効であるが、関節内局所麻酔剤注入を同時に行
えば、簡単な肘関節手術も可能である。しかし、麻酔範囲は不安定であり、始めは局所麻酔を使いながら手術をしたほうがよい。20?30
分後には阻血によるしびれが加わり、局所麻酔は必要なくなる。腋窩ブロックによる麻酔は、駆血による阻血痛を緩和することが目的
と考えてもよい。肘・肩関節の拘縮や疼痛のため肢位がとりずらく、手技を困難にする場合がある。キシロカインを使用する場合、通
常手術時間は1時間程度を目安にする。それ以上の時間を要する見込みであれば、マーカインを用いる。この場合、駆血帯の絞扼痛を防
ぐために駆血帯の直下の皮膚に局所麻酔を用いておくと有効である。駆血は、長くても1時間30分程度とすべきであり、それ以上手術時
間がかかるか、広範囲に骨形成を伴う手術の場合には全身麻酔を考慮する。
c. 脊椎麻酔・硬膜外麻酔
脊椎麻酔は、股関節から遠位のほとんどの手術において有用な麻酔方法であり、下肢の人工関節置換術でも好んで用いられる。呼吸気
合併症がある場合にも比較的安全であるが、血圧が低下しやすく、腎血流を低下させやすいため循環器合併症あるいは腎機能低下例で
は注意を要する。腰椎穿刺の安全のため、あらかじめ腰椎のレントゲンをチェックしておく。しばしば穿刺部位を変えてもなかなか髄
液の流出が無いことがあるが、この場合はdry tapと判断し全身麻酔を考慮するか、あるいは「手を変える(医者を交代する)」方がよい。
また手術中の音が患者に不快感を与えやすいので、静脈麻酔薬や鎮静剤などの投与を考慮する。硬膜外麻酔は、限定した麻酔部位の実
現、全身麻酔との併用で浅い麻酔深度、術後の疼痛管理への応用などの利点が多い。
d. 全身麻酔
関節リウマチ患者は、高率に頚椎の不安定性を伴っており、これ自体挿管困難の麻酔科的リスクとなる。挿管の場合には、様々な状況
に対応できる準備をあらかじめしておくことが重要である。頚椎レントゲンで明らかな異常が無くても、負担をかけないように注意し
ながら挿管する。比較的手術侵襲の少ない仰臥位の場合には、挿管の不要なラリンゲル・マスクを使用も有用である。
file:///F|/ホームページ/あすなろ整形外科クリニックホームページ...ent/5_FunClub/funclub1/RA_manage.html (2/4) [2005/10/23 6:58:59]
Welcome to Adobe GoLive 4
顎関節にリウマチ病変を有する場合も少なくなく、この場合には開口障害となり挿管困難となる。
2. 術後管理
リウマチは、術後に心肺機能・肝腎機能・貧血・消化管などの全身にわたって、異常を来たすことがあり、注意深い観察が必要であ
る。既知の合併症はもちろんのこと、術前には不明であった新たな問題が生じることもあることを念頭に置くことが重要であり、他の
膠原病の合併例などではなおさらである。
(1) 疼痛
手術に伴う疼痛管理は基本であるが、関節リウマチのために消炎鎮痛剤を大量に使用していることが多いので、その使用量には十分注
意する。術後の短期間は、非麻薬性鎮痛剤を中心に使用するとよい。Pentazocine(Pentagin, Sosegonなど)にhydroxyzine (Atarax P)を併
用して筋注・点滴・静注すると作用が増強し有用である。下肢の手術では、硬膜外カテーテルを留置しておけば、疼痛管理が容易とな
る。カテーテルは、感染の危険があるので、長くても1週間程度をめどに抜去する。
(2) 出血
一般に四肢の手術においては、駆血帯を使用して術中の出血を最小限に抑えることができるが、駆血により深部静脈血栓の危険性を高
め、出血の有無の確認が不十分となりやすい。たとえ駆血していても、骨切り部からの出血は止められず、術後の出血を抑えきること
はできない。膝関節や股関節の人工関節置換術、あるいは脊椎の手術では輸血の準備は不可欠である。最近の保存血の諸問題により、
術中・術後の輸血として積極的に自己血をあらかじめ貯血しておくことが一般的である。
リウマチ患者は貧血を伴うことが多いので、術前自己血採血の可否の基準としては、通常のヘモグロビン濃度11mg/dl以上より低め
の10mg/dlを採用している。採血量は人工膝関節置換術に対しては400g、人工股関節置換術に対しては800gを目標とし、1回採血量
は200?400gとしている。貧血の程度によって、1回から数回に分けて採血し、必要に応じて鉄剤の内服を行い、800g以上の採血ではエ
リスロポイエチン製剤*を使用する。
保存方法は、全血保存(3週間)の場合と濃厚赤血球液と血漿に分ける場合(6週間)とがある。濃厚赤血球液のみを使用すると、血漿中の凝
固因子が欠除するので出血量が増加する一方、血栓形成傾向は抑えられる傾向があり、一長一短である。
術中回収血は、準備が煩雑**なためわれわれは行っていない。術後回収血の場合は手技が容易で(通常のドレナージチューブの設置と同
じ)、比較的安全に200?300g程度から最大1000gまでの返血が見込めるので(平均的には500g前後)、術前貯血量が少ない場合には有用で
ある。
重要なことは、余裕を持った貯血の日程を計画し、貯血により貧血を進行させないことである。また、自己血だけで輸血が不足するこ
ともあり、一般の保存血を使用することもありうる事を患者に説明しておかねばならない。
*Erythropoietin : エスポーまたはエポジンS 6000IUを、初回採血1週間前から最終採血まで週に1回筋注する。
**術中回収血 : メーカーを呼んで器械を操作するため、問題がある。また駆血をしていると、術中はあまり回収できない。
(3) 感染
手術における感染は不可避の問題であり、リウマチ患者では皮膚が脆弱、感染性を高めやすい薬剤の使用、人工関節置換術のように大
きな異物の設置などにより、感染に対しては特に慎重な扱いが必要である。
手術部位の清潔のために、入室前に手洗いや足浴などを行い、麻酔後にはスポンジのような柔らかいもので皮膚表面を傷つけないよう
に洗浄する。手術操作では軟部組織を愛護的に扱うことが、局所の血流を保護し感染や創治癒に有利となることを忘れてはならない。
創の洗浄は、十分におこなう。
抗生物質の予防的投与には、広域をカバーできるセフェム系第1・2世代が用いられることが多い。しかし、近年メチシリン耐性黄色ブ
ドウ球菌(MRSA)の問題があり、むしろ黄色ブドウ球菌を目標に絞ったペニシリン系配合剤を選択することが推奨される。手術中に十分
な血中濃度となるように開始することが重要で、駆血時には局所に抗生物質が到達していないことを忘れてはならない。投与期間は、
肝腎機能への負担とならないように必要最低限とする。通常5日間程度で創は癒合しているので、それ以後は感染の危険性は低くなる。
従って、静注あるいは内服をあわせて数日間、長くても5日間の投与を行えばよい。
創部の自発痛、創の発赤、浸出液の増加などは感染の初期兆候として重要であり注意を要する。血液検査は、手術の影響やリウマチの
状態を反映し当てにならない場合が多く、特に股関節は術野が深く表面からは判断しずらい。感染が疑われる場合には抗生物質投与
や、場合によっては積極的に創を開放することを検討する。関節穿刺をやむを得ず行う場合には、清潔操作を心がけることを忘れては
ならない。
(4) 深部静脈血栓
下肢人工関節置換術の術後合併症として、深部静脈血栓症は近年最も注目されている。術野周辺の血行不良と出血による凝固亢進のた
め、手術中から多かれ少なかれ血栓が形成されることは不可避であり、骨切りを伴う下肢の手術は手術そのものがリスクである。術前
に血栓の危険因子(高齢・肥満・静脈瘤・血栓の既往など)をチェックし、発生の可能性を検討しておくことが重要である。
ほとんどの血栓は、発生の予測は困難で、発生しても無症候性である。局所の血栓は、手術部位の血流を悪化させ、創治癒を遅延させ
感染を生じやすくする。また浮腫により、可動域訓練に支障を来たすこともある。超音波検査はスクリーニングとして有用であり、診
断確定のためには静脈造影を行う。最も問題となるのは、肺塞栓を発症した場合である。初期症状は発熱・頻脈・胸痛・呼吸苦といっ
た非特異的なものであり、また一般検査結果にも特徴が少ない。確定診断には肺シンチグラフィ*が必要であるが、症状の極期には施行
が困難である。
全ての患者に対する対策として、術前から(術後も可能であれば)患側・健側ともに弾力ストッキングを着用させ、術直後より間欠的空気
圧迫装置(フットポンプ)を用いて患肢の血流を改善する。術前後に下肢超音波検査と血液ガス検査を行い、エコーで新たな血栓形成が発
見された場合やや血液ガスでPaO2 10mmHg以上の低下の場合には注意を要する。術前に血栓が確認された場合、あるいは血栓の既往が
ある場合には、駆血帯を使用せずに手術を行い、術後の観察はより注意深く行う。
血栓症による症状が発生した場合には、新たな血栓の発生を防止するためにただちに抗凝固療法を開始する。通常1?2万単位/日のヘパリ
ンを 1週間程度の間持続点滴する。この際、活性部分トロンボプラスチン時間(APTT)を基準値の2倍以下に抑えるように調節する。最近
file:///F|/ホームページ/あすなろ整形外科クリニックホームページ...ent/5_FunClub/funclub1/RA_manage.html (3/4) [2005/10/23 6:58:59]
Welcome to Adobe GoLive 4
はAPTTが延長しにくく、出血が増加しにくい低分子ヘパリン**が注目されている。ヘパリン中止48時間前からはワーファリンを開始
し、プロトロンビン時間を20?30%の範囲で調節し、1?4mg/日の内服を続けさせる。肺塞栓症状に対しては、酸素投与を行い、ウロキ
ナーゼあるいはt-PA (tissue-type plasminogen activator)を用いた血栓溶解療法を開始するが、呼吸器の専門医にすみやかにコンサルト
すべきであろう。
*肺シンチグラフィー : 換気スキャンで異常が無い部位に、血流スキャンの欠損が生じていれば確定である。
**低分子ヘパリン : delteparin (Fragmin) が一般的であるが、本来は透析かDICの適応しかない。
(5) リハビリテーションの基本姿勢
リハビリテーションは手術前から始まっているべきものであり、理学療法士にはあらかじめ、機能評価と生活動作の評価を行ってもら
うことが重要である。さらに患者には、手術による安静や各種の制限がないうちに訓練の概要を理解しイメージしておいてもらえば、
術後スムースである。
下肢の荷重関節の手術においては、反対側や上肢の障害のために部分加重訓練が困難であり、術式は可能なかぎり早期荷重を実現でき
るものを選択すべきである。また、手術前後で筋力低下を極力避けるため、患者には関節を動かさなくても可能な等尺性訓練を理解さ
せる。可動域訓練は、器具を利用した他動運動(CPM)を早期から開始し、これらをサポートできる装具があれば積極的に使用する。
上肢の手術の場合、歩行が可能であれば通院でのリハビリテーションになることが多い。しかし頻回の通院が困難な場合が多いため、
自主的な訓練が必要である。従って、機能訓練の方法を患者に理解してもらうことが重要であり、場合によってはダイナミック・スプ
リントを用意する。
術後の安静期間が長くなると、関節の拘縮や筋力低下に結びつき、全体の機能がむしろ低下することがあるので、術前から一貫した計
画によって、少しでも運動できる環境を用意することが重要である。
file:///F|/ホームページ/あすなろ整形外科クリニックホームページ...ent/5_FunClub/funclub1/RA_manage.html (4/4) [2005/10/23 6:58:59]