2016 年 4-6 月期 グローバル・プロパティ・レビュー 本書はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグローバル上場不動産証券運用チームが作成したレポートを邦訳したものです グローバル市場 株式市場および不動産関連証券市場のパフォーマンス(米ドル・ベース、2016 年 6 月末現在) リターン 国/地域 グローバル 北米 米国 カナダ 欧州 株式市場 インデックス MSCI ワールド MSCI 北米 S&P500 S&Pトロント 総合指数 MSCI ヨーロッパ 当期 リターン 年初来 1.2 % 1.0 % 2.7 % 4.2 % 2.5 3.8 3.8 15.6 -2.3 % -4.6 % 英国 FTSE100 -1.8 -3.9 フランス CAC40 -3.3 -3.9 ドイツ DAX100 -5.5 -8.6 0.9 % -2.8 % アジア MSCI パシフィック 香港 ハンセン 2.3 -2.6 日本 日経平均 1.5 -3.4 1.2 4.0 オーストラリア S&P/ ASX 200 不動産関連証券 インデックス 当期 FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド FTSE EPRA/NAREIT 北米 FTSE NAREIT 米国 FTSE EPRA/NAREIT カナダ FTSE EPRA/NAREIT デベロップド゙欧州 FTSE EPRA/NAREIT 英国 FTSE EPRA/NAREIT フランス FTSE EPRA/NAREIT 10年債利回り 年初来 - - 6.5 % 13.1 % - - 6.4 12.3 1.47 % -30 bps 9.2 29.7 1.06 -16 bps -3.0 % - -21.4 -2.7 4.1 デベロップド・アジア FTSE EPRA/NAREIT 香港 FTSE EPRA/NAREIT 日本 FTSE EPRA/NAREIT オーストラリア 変化幅 9.4 % -13.4 FTSE EPRA/NAREIT 対前期比 6月末 3.7 % -5.0 % ドイツ 2016年 - 0.87 % -55 bps 7.3 0.19 -29 bps 17.0 -0.14 -29 bps 3.4 % 9.5 % - - 4.3 2.9 0.99 % 1.8 8.7 -0.24 -19 bps 5.7 19.5 1.99 -51 bps -23 bps 出所:FactSet、EcoWin *情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 巻末のディスクレーマーを必ずお読みください。 1 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 不動産関連証券市場のパフォーマンス*、米ドル・ベース (2016 年 6 月末現在) 50% 38.3% 30.1% 30% 10% 13.4% 9.4% 4.3% 15.9% 13.3% 3.2% 0.1% 28.7% 28.0% 18.1% 11.8% 4.4% 11.0% 2.5% 28.0% 20.4% 10.5% 14.3% 8.3% 15.9% 13.1% 11.3% 13.6%11.6% 12.6%11.5% 7.5%7.4% 9.8% 8.9% 8.9% 8.6% 5.0% -10% -6.5% -7.0% -15.7% -5.8% -16.9% -30% -37.7% -50% -47.7% -70% 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 過去3年 過去5年 過去10年 過去15年 年初来 FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド・リアル・エステート・インデックス FTSE NAREIT エクイティ・リート・インデックス(米国) NCREIF プロパティ・インデックス 出所:FTSE EPRA/NAREIT、FTSE NAREIT、NCREIF リターンは米ドル・ベースで算出されます。期間 1 年未満のものを除き年率にて表示しています。FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド・ リアル・エステート・インデックスは、時価総額加重で算出されるインデックスで、北米、欧州、アジア市場の不動産関連証券の株価を反映します。 FTSE NAREIT エクイティ・リート・インデックスは、時価総額加重で算出されるインデックスで、米国で投資適格商業用不動産を所有・管理・リー スする不動産関連証券全ての株価を反映します。NCREIF プロパティ・インデックスは、全米不動産投資受託者協議会が四半期ごとに公表する実物不 動産のインデックスで、個々の商業用不動産を集計したトータル・リターンを示し、不動産投資成果を評価する指標として普及しているものです。 *情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 2 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 概況 FTSE EPRA/NAREIT グローバル先進国リアル・エステート指数は 2016 年 4-6 月期に米ドル建 てで 3.7%値上がりし(現地通貨建てで 3.6%上昇)、年初来の上昇率は 9.4%に達した(現地 通貨建てで 7.3%上昇)。世界の不動産株は 4 月から 5 月にかけてほぼ横ばいで推移した後、6 月に 3.7%上昇した。6 月の不動産株の値上がりは、一段の低金利環境がさらに長期化する見通 しが強まり、上場不動産株の株価を押し上げたことに帰せられよう。とりわけディフェンシブ な性質が強いと見なされている市場セグメントの銘柄が値上がりし、こうしたセグメントの一 部銘柄の株価バリュエーションは大幅なプレミアムとなった。対照的に、国民投票により英国 の EU 離脱(Brexit:ブレグジット)が決定したのに伴い、英国の上場不動産株は強い下押し圧 力にさらされた。欧州の多数の不動産株も逆風を受けた。以上の結果、4-6 月期には北米市場 のリターンが 6.5%に達してグローバル平均をアウトパフォームした。アジアは 3.4%の上昇に とどまって小幅アンダーパフォームし、欧州は 5.0%下落して大幅にアンダーパフォームした。 今日の低リターン環境を踏まえて、不動産の期待利回りの低下を受け入れる投資家が増えるに つれ、優良不動産資産の投資価値は金融危機を底に大幅な値上がりを記録した。引き続き信用 へのアクセスが得られたうえ、借り入れコストが低下したことも、不動産株のパフォーマンス を支えた。不動産市場に極めて潤沢な資本が流入し、ほとんどの優良市場で資産価額が史上最 高値に押し上げられた。欧米市場の優良資産の投資価値は、2007 年に達成した天井をほぼ回復 したか、天井を凌いだ。キャッシュフローの伸びとキャップ・レートの改善が、ともに回復を 後押しした。米国の不動産会社は、大半のセクターで好業績を記録しているが、賃料の伸びは 減速傾向にある。ロンドンでも不動産会社の業績は堅調に推移してきたものの、英国の EU 離 脱決定に伴い、同国におけるテナント需要は軟化するとみられている。 アジア市場では、香港でキャッシュフローの改善とキャップ・レートの圧縮を主因に資産価額 が回復した。これに対して東京とオーストラリアでは、資産価額の改善はキャップ・レートの 圧縮が主体で、ファンダメンタルズ改善の寄与はごく僅かだった。2016 年初頭には多数の市場 で資産価額が天井をつけた可能性があるとの懸念が拡大、ここまでの大幅な値上がりを踏まえ れば、下落すら免れないとの不安も強まった。とはいえ、現在までのところ、実際には価格下 落を示す証拠は見られていない。4-6 月期には、一段の低金利のさらなる長期化見通しを背景 に、これらの懸念は幾分和らいだ。だが英国については、EU 離脱決定の影響で、資産価額の 下落は避けられないと予想されている。 金融危機後の特徴として、世界中の市場で前例のない規模の政策導入が行われた点が挙げられ る。大半の市場で金融テコ入れ策が導入されて景気が浮揚、それに後押しされて資産価額が押 し上げられ、不動産の資産価額が大幅に改善した。最近では経済成長に対する懸念が台頭し、 債券利回りが低下するに伴い、世界中の政策当局に対し、さらに積極的な金融緩和措置を導入 するとの期待感が広がっている。国債利回りが極端な水準に低下、スプレッドが拡大している 状況下、キャップ・レートには一段の低下余地があるかとの議論が高まった。だがその結果、 一部の住宅用不動産市場で急速に資産価額が値上がりしていることに、政策当局は懸念を強め ている。香港、中国、シンガポールでは、こうした懸念を背景に、一連の規制措置が導入され た。 3 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド・リアル・エステート・インデックスの時価総額の推移 (2016 年 6 月末現在) (10 億米ドル) 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 北米 欧州 アジア 6月末 2016 地域 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 6月末 北米 15% 10% 22% 29% 31% 42% 41% 35% 40% 53% 56% 55% 53% 51% 45% 38% 43% 41% 45% 53% 50% 50% 56% 56% 58% 欧州 23% 21% 22% 20% 17% 20% 23% 22% 19% 17% 20% 20% 20% 19% 22% 19% 17% 18% 16% 14% 14% 15% 16% 17% 16% アジア 63% 70% 56% 51% 52% 39% 36% 44% 41% 30% 24% 25% 27% 31% 33% 43% 40% 42% 39% 33% 36% 35% 28% 26% 26% グローバル 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 4 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 不動産関連証券インデックス・パフォーマンス*(米ドル・ベース、2016 年 6 月末現在) インデックス・ウェイト グローバル FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド FTSE EPRA/NAREIT 北米 100.0 % - 年初来 3.7 % 9.4 % 6.5 % 13.1 % 5.0 9.2 29.7 55.3 95.0 6.4 12.3 賃貸アパート 7.2 12.4 -2.3 0.4 学生専用賃貸アパート 0.7 1.2 12.8 28.1 プレハブ住宅 0.7 1.3 9.5 18.2 ショッピング・センター 5.1 8.8 8.5 17.0 モール 7.8 13.5 4.8 11.0 中心地区オフィス 4.1 7.1 6.9 1.4 郊外オフィス 3.7 6.3 9.5 15.3 データセンター 1.7 2.9 22.7 45.1 産業施設 3.9 6.7 15.8 22.8 医療施設 7.3 12.5 12.0 16.2 ホテル/リゾート 2.9 5.0 -3.0 3.2 個人用倉庫 4.1 7.1 -5.8 4.3 分散投資型/ 金融 0.8 1.5 14.6 12.6 ネット・リース 5.2 8.9 13.9 31.5 FTSE EPRA/NAREIT米国 FTSE EPRA/NAREIT デベロップドEMEA -4.9 % -2.8 % 0.1 0.8 10.7 16.6 FTSE EPRA/NAREIT デベロップド欧州 15.4 99.2 -5.0 -3.0 ヨーロッパ大陸 10.8 69.3 -0.9 7.8 オーストリア 0.3 1.8 -1.5 2.1 ベルギー 0.5 3.1 2.4 13.1 フィンランド 0.2 1.1 -3.6 -1.0 フランス 1.5 10.0 -2.7 7.3 ドイツ 3.2 20.7 4.1 17.0 アイルランド 0.2 1.1 -2.0 -6.1 イタリア 0.1 0.4 -12.0 -14.1 オランダ 2.2 14.0 -6.9 1.6 ノルウェー 0.1 0.4 4.0 16.4 スペイン 0.5 3.3 -8.0 -10.6 スウェーデン 1.2 7.7 -0.5 4.9 スイス 0.9 5.6 4.0 15.5 英国 4.6 29.8 -13.4 -21.4 英国主要地区 2.3 15.0 -13.1 -19.5 英国その他 2.3 14.8 -13.7 -23.3 イスラエル FTSE EPRA/NAREIT デベロップド・アジア 15.5 % 100.0 % 当期 2.9 カナダ 58.2 % インデックス・パフォーマンス 地域別 26.3 % 100.0 % 100.0 % 3.4 % 9.5 % オーストラリア 6.1 23.2 5.7 19.5 香港 6.8 25.8 4.3 2.9 香港不動産事業会社 5.5 20.9 1.9 0.3 香港リート 1.3 4.9 16.5 16.4 日本 11.1 42.3 1.8 8.7 日本不動産事業会社 4.8 18.1 -5.1 -8.5 J-リート 6.4 24.2 7.6 27.4 ニュージーランド 0.1 0.4 8.3 17.6 シンガポール 2.2 8.4 2.2 11.2 シンガポール不動産事業会社 0.8 3.0 -3.0 -5.2 S-リート 1.4 5.4 5.1 19.9 出所:FTSE EPRA/NAREIT、FTSE NAREIT、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント 情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 5 グローバル・プロパティ・レビュー ご参考 2016 年 4-6 月期 ポートフォリオ・アロケーション (グローバル・ポートフォリオ、含む不動産関連証券) 香港の不動産事業会社を引き続きグローバル・ポートフォリオで大幅にオーバーウェイトする。 香港の不動産事業会社は株式市場の評価と実物不動産市場における評価が大幅に乖離している のみならず、他の上場不動産市場と比較しても、極めて魅力的な価値を提供していることが理 由である。4-6 月末時点で香港の不動産事業会社は NAV に対して平均 46%ディスカウントを付 けており、グローバル・ベースで最も割安な水準に放置されている。現在の株価は、事業ファ ンダメンタルズや資産価額にネガティブな影響を及ぼしかねない様々なリスクを十二分に織り 込んでいると判断できよう。現在の株価はまた、商業施設や住宅市場の低迷に対する投資家の 懸念と、投資家が香港および中国の住宅開発プロジェクトの将来的な開発価値を織り込むのに 消極的なことを反映している。だが実際の物件取引は、キャップ・レートが約 3%、価格が平方 フィート当たり 3 万香港ドル前後で取引が成約していることを示唆している。この水準は上場 不動産会社が公表 NAV の計算に使用している水準を大幅に上回っている。加えて、バリュエー ションが通常以上に割安になっていることを踏まえ、不動産各社は自社株買いや増配を通じて 株主への利益還元に焦点を合わせているようである。香港の不動産事業会社が極めて低いレバ レッジ水準を維持している事実も、バリュエーションの割安感を一段と募らせている。4-6 月期 にアジアでは香港の不動産事業会社のオーバーウェイトを維持した。 日本の不動産事業会社は 4-6 月期末に NAV に対し平均 35%ディスカウントとなった。株価低迷 は、急速な円高がインフレや経済に及ぼすネガティブな影響や、日銀によるマイナス金利政策 に対する懸念を反映している。居住用不動産市場における緩やかな改善、実物不動産市場にお ける物件取引が示唆する力強い兆候、貸し出し条件の緩和、不動産事業会社の調達コスト低下 の恩恵、といったポジティブな要因を、市場はほとんど無視したことになる。極めて対照的に、 J-REIT は引き続き NAV に対して 18%という大幅な割高水準で取引されている。投資家の高利 回り銘柄の模索の動きと、日銀の緩和策が引き続き J-REIT の株価の追い風となっていることに よる。注目すべきなのは、不動産事業会社の資産ポートフォリオは、主に東京都心部の優良オ フィス資産で構成されているため、事業ファンダメンタルズ改善の恩恵を享受している点であ る。これに対して J-REIT は概ね質の劣る資産ポートフォリオを抱えており、資産内容にもばら つきがある。以上のような状況を考えれば、日本の不動産事業会社のバリュエーションは JREIT の実勢バリュエーションと比較して、はるかに妙味が大きいと思われる。日本では、不動 産事業会社を引き続きオーバーウェイトする一方、J-REIT をアンダーウェイトする。最後に、 東京はキャッシュフローが依然サイクルの底近く、資産価額が 2007 年以降のピーク水準を今も 大幅に下回っている唯一の主要オフィス市場であることは、注目に値しよう。 オーストラリアでは、景気が減速するなか、全般的にオフィス不動産のファンダメンタルズは 依然冴えない。しかしながら、金利低下に支えられた消費支出の改善に後押しされ、商業施設 のファンダメンタルズは改善に向かっている。商業用資産に対する投資家の需要は依然旺盛だ。 他の大半の市場と比べて利回りが高く、しかも豪中銀による一段の利下げが予想されるなか更 なるキャップ・レートの圧縮が見込めるためで、これらの要因が資産価額を下支えしている。 4-6 月期末にオーストラリアの REIT は NAV に対し 15%プレミアムとなっており、アジア地域 の中では、香港や日本の不動産事業会社と比べ、依然としてはるかに魅力に乏しい。 米国では、4-6 月期に不動産価額が上昇した。REIT 各社の業績が減速しつつあるとはいえ好調 を維持しており、優良資産に対する投資家の需要が依然旺盛で、貸出環境が改善しているなど の要因が牽引役となった。今日の低利回り環境を背景に、投資家の間で期待収益率の低下を受 6 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 け入れる空気が強まったことも、不動産価額を引き続き下支えした。とはいえ、取引量や不動 産価額の上昇は過去数年のペースからは大幅に減速した。2016 年に入り、投資市場で不動産価 額が天井をつけた可能性があり、ここまでの大幅上昇を踏まえれば、下落が避けられない恐れ さえあるとの懸念が台頭した。しかしながら、英国民投票で EU 離脱が決定した後、一段の低金 利環境がさらに長期化するとの期待が高まっていることにより、上記の懸念が緩和し、キャッ プ・レートが改めて低下し始める可能性もある。REIT 市場はセクターによるバリュエーション の乖離が広がっており、NAV に対してプレミアムとなっているセクターも、ディスカウントと なっているセクターもあるが、全体としては 4-6 月期末に 11%プレミアムとなった。このよう に REIT 全体がプレミアム水準で評価されている最大の理由は、ディフェンシブだと見なされて いるセクターや、高い配当を提供しているセクター(ヘルスケア、ネットリース)が、NAV に 対して大幅なプレミアムで取引されていることによる。一方、景気敏感性が強いと受け止めら れているセクターについては、物件取引が引き続き資産価額の堅調さを示しているにもかかわ らず、株式市場は資産価値が下落するとの見通しを織り込んでいるもようだ。以上の結果、不 動産セクターの多くが魅力的なバリュエーションを付けており、とりわけホテル、優良 CBD オ フィス、モール、賃貸住宅は NAV に対して最も大幅なディスカウントで取引されている。期中 に大幅な株式発行が行われた一方、自社株買いも実施されたという状況からも、セクターによ る価格の乖離が明白である。北米市場では、米国のオーバーウェイトを維持する一方、カナダ を引き続きアンダーウェイトする。不動産各社のポートフォリオの質およびキャッシュフロー の伸長見通しと比較して、バリュエーションが魅力に欠けることによる。米国の多くの不動産 セクターとの比較でも、カナダ市場は妙味に乏しい。期中に相対的にアウトパフォームしたこ とを踏まえて、北米市場に対するオーバーウェイト幅を小幅引き下げた。 欧州では、4-6 月期末に英国の不動産株は公表 NAV に対し平均 16%のディスカウントとなった。 英国大手不動産株に至っては、公表 NAV に対し平均 25%のディスカウントとなった。英国不 動産株がこのように大幅な割安水準で取引されていることが、不動産価額の潜在的な下落リス クを十二分に打ち消していると思われる。これに対し、大陸欧州の不動産株は 4-6 月期末に公 表 NAV に対し 16%のプレミアムとなった。大陸欧州の大半の市場で賃料の伸びが穏やかな水 準にとどまったことからすれば、このように大陸欧州の不動産株がプレミアムで取引されてい るのは、QE 拡大以降の持続的な利回り圧縮と、国債利回りが過去最低水準を付けている事実を 反映している。一方英国では、EU 離脱決定を受けて、資産価額が下落すると予想されているが、 物件取引は落ち着いた水準にある。資産価格下落のリスクがあるにもかかわらず、英国の不動 産株は大陸欧州の不動産株よりも魅力的だと考える。とりわけ、英国の不動産株は大陸欧州の 不動産株と比較して 32%という 2007 年以来最大の割安水準で取引されていることを勘案すれ ば、尚更そのように言える。欧州の中では株価の相対的な低迷を踏まえて、大陸欧州に対する 英国のオーバーウェイト幅を引上げた。欧州全体に対しては、4-6 月期にアンダーウェイトを維 持した。 7 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 ポートフォリオ・アロケーション*(米ドル・ベース、2016 年 6 月末現在) 当期 地域 推奨配分 前期 ベンチマーク・ ウェイト 北米 57.9 % 58.2 % 欧州 13.7 15.5 アジア 28.4 26.3 合計 100.0 % 100.0 % リターン 6.5 % 推奨配分 ベンチマーク・ ウェイト 56.3 % 56.3 % -5.0 15.1 17.0 3.4 28.6 26.7 3.7 % 100.0 % 100.0 % 出所:FTSE EPRA/NAREIT *情報提供を目的としたものです。現在の市場環境によるもので、予告無しに変更される場合があります。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示 唆・保証するものではありません。 8 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 地域別市場 米国 概況 4-6 月期に米不動産セクターは 6.4%値上がりし、年初来のリターンは 12.3%となった。株価は 4 月に 2.6%下落したが、5 月には 2.1%反騰して 4 月の下落分をほぼ取り戻した。6 月は株式市 場全体が横ばいとなる中で、米不動産セクターは 6.9%値上がりした。FRB が引き締め計画を先 送りし、予想以上に長期にわたり一段の低金利環境が続くとの思惑が強まり、不動産株の株価 上昇を支えたもようだ。10 年債利回りは 1-3 月期に 50bp 低下した後、4-6 月期を通じてほぼ一 貫して下押し圧力がかかるなか、さらに 30bp 低下し(6 月に 37bp 低下)、4-6 月期末には 1.47%をつけた。 中核不動産の資産価額は完全に回復し、平均的に見て今や 2007 年に達成した天井を 20%程度 上回っている。不動産各社の業績が減速傾向にあるとはいえ好調を維持し、優良資産に対する 投資家の旺盛な需要が衰えず、有利な借り入れ環境が続き、現在の低金利環境で期待リターン の低下が幅広く受け入れられている、といった状況が、依然として不動産価額を後押ししてい る。しかしながら、取引高や不動産価額の値上がりペースは、過去数年間のペースからは大幅 にスローダウンした。事実、今年に入って不動産価値は天井に達した可能性があり、ここまで の大幅な上昇を踏まえれば下落を免れないとの不安さえ台頭している。とはいえ、英国の EU 離 脱決定後、低金利環境がさらに長期化するとの期待感が高まるにつれ、こうした不安は緩和す る可能性があり、場合によってはキャップ・レートの圧縮が再開することも考えられる。 4-6 月期には引き続き活発な自社株買い活動が行われたことが目立った。主に資産売却が自社株 買いの原資となった。実物不動産市場が堅調な推移を続けたことや、中核セクターにおける株 価の割安感が、自社株買いの原動力となった。企業はバランスシートに中立な形での自社株買 いに焦点を当てた。とりわけ自社株買いを積極的に行なったのはモールおよびホテル REIT。46 月期の自社株買い活動(5 月および 6 月については一部の開示データのみを含む)は 4 億ドル となり、1-3 月期の自社株買い 8 億ドル、および 2015 年の 29 億ドルのペースを下回った。 伝統的なセクターを中心に、多くの REIT が買収から開発・再開発活動に焦点をシフトした。こ の背景には、開発プロジェクトが卓越したリターンを生み出していることがある。加えて、株 価が割安で、株式未公開企業が買収攻勢を強めたことも、開発・再開発活動への焦点のシフト を促した。開発・再開発活動は賃貸住宅部門で最も広範に行われているが、他のほとんどの分 野でも REIT の一部が活動を活発化させている。全体として見れば開発活動は依然低水準ながら、 優れた資本アクセスや開発能力を映して、REIT が開発パイプラインの圧倒的な部分を握ってい る。対照的に、ディフェンシブと見なされているセクターや高い配当を提供しているセクター (ヘルスケア、ネットリース)、および一部の専門セクターは、これまで通り積極的な買収活 動を繰り広げている。この最大の要因として、株価がプレミアム水準をつけていることと、こ れらの非中核資産を巡る機関投資家の争奪戦はさほど激しくない事実が挙げられる。資産売却 に加えて、REIT は今も魅力的な資本に容易にアクセスできる恵まれた立場を利用して、引き続 き外部活動に関わる資金の多くを、起債や株式発行により調達している。4-6 月期の株式発行額 は 71 億ドルに上り、1-3 月期の発行額 66 億ドルおよび、2015 年のすべての四半期の水準を上 回った。2015 年には株式発行額は 1-6 月期の 100 億ドルから 7-12 月期には 50 億ドルに減少し ていた。2016 年 4-6 月期に最も大幅なエクイティ・ファイナンスを行ったのは、ネットリース (14 億ドル)、データセンター(14 億ドル)、ショッピング・センター(14 億ドル)、ヘル 9 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 スケア(12 億ドル)、倉庫(9 億ドル)の各セクター。4-6 月期には 120 億ドルの無担保社債 の起債が行われ、起債額が 80 億ドルにとどまった 1-3 月期のペースから加速した。1-3 月期の 起債ペースは、過去 2 年間の四半期における水準とほぼ同じだった。調達資金は買収を通じた 外部成長に向けられたほか、低金利の恩恵を享受するとともに満期を先送りする目的で、満期 の近づいた債券の借換えに充てられた。 4-6 月期、FTSE EPRA/NAREIT 米国インデックスは 6.4%上昇した。主要セクターでは、オフ ィス・セクターがアウトパフォームし、賃貸住宅およびが商業施設セクターが指数をアンダー パフォームした。賃貸住宅セクターは、主にニューヨークと北カリフォルニア市場の売上低迷 に対する投資家の懸念を映して下落した。これらの市場は現在、高水準の供給を消化する必要 に迫られている。賃貸住宅 REIT は 2016 年の既存店ベース営業純利益(SS NOI)の伸びを 5% 台前半から半ばとみているが、これは前期の会社予想を小幅下回る水準。オフィス・セクター では、主に中心商業地区(CBD)に立地する優良資産にエクスポージャーを有する REIT と、二 番手 CBD/郊外型 REIT がアウトパフォームした。商業施設 REIT は小幅アンダーパフォームし た。ショッピング・センターREIT が指数をアウトパフォームし、モール REIT がアンダーパフ ォームした。ヘルスケア REIT は指数をアウトパフォームした。同セクターは典型的には景気に 対する懸念が高まっている時や、10 年債利回りが低下する時にアウトパフォームする傾向があ る。投資家は、ヘルスケア REIT はディフェンシブ性が強いとの年初の懸念をほぼ無視したよう である。投資家は高齢者住宅セクターにおける供給増加が、すでにプレミアム・バリュエーシ ョンを付けている同セクターのキャッシュフローの減速につながると懸念していた。加えて、 特に技術を要する老人ホームを中心に、ヘルスケア施設運用者の業績に対する不安から、ネッ トリース・ヘルスケア資産の賃料が減少しかねないとの懸念が強まっていた。中小セクターで は、データセンター、ネットリース、産業施設株がいずれも 4-6 月期に極めて力強いリターン を上げた。データセンターは、テクノロジーに牽引された需要好調を投資家が好感しているこ とを映して、高いリターンを記録しているもようである。ネットリース株は、よりディフェン シブなキャッシュフローが見込まれる銘柄を模索する投資家を引き付けたとみられる。産業施 設株は堅調な事業ファンダメンタルズを反映して、力強いパフォーマンスを上げた。ホテル株 と倉庫株のリターンはマイナスとなった。ホテル株は経済成長に対する懸念が逆風となった。 倉庫株は数四半期にわたって大幅なアウトパフォーマンスを記録し、バリュエーションが割高 になったところに、成長減速に対する懸念が重なって、値下がりしたとみられる。 主な投資戦略 ・ ホテル、都心部のプライム・オフィス、アパート、モール等のオーバーウェイト ・ ネット・リース、ヘルスケア、倉庫等のアンダーウェイト 不動産関連証券のバリュエーション 優良資産の資産価額は完全に回復し、今や平均で 2007 年に達成した過去最高水準を 20%程度 上回っている。4-6 月期末に REIT 市場全体で評価水準は NAV に対して約 11%のプレミアムと なった。REIT 市場はセクターによるバリュエーションの乖離が広がっており、NAV に対してプ レミアムとなっているセクターもディスカウントとなっているセクターもあるが、全体として はプレミアムとなった。REIT が全体としてプレミアムで評価されている最大の理由は、ディフ ェンシブだと見なされているセクターや、高い配当を提供しているセクター(ヘルスケア、ネ ットリース)が、NAV に対して大幅なプレミアムで取引されていることによる。一方、より景 10 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 気敏感性が高いと受け止められているセクターについては、物件取引が引き続き資産価額の堅 調さを示しているにもかかわらず、株式市場は資産価値が下落するとの見通しを織り込んでい るもようだ。その結果、ホテル、優良 CBD オフィス、モール、賃貸住宅など、幾つかの主要不 動産セクターは、4-6 月期末に NAV に対してディスカウントとなった。期中に大幅な株式発行 と自社株買いが同時に実施されたことも、REIT セクター間の価格乖離が広がっていることを明 瞭に物語っている。 米国:市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* (2016 年 6 月末現在) 40 30 20 (%) 10 0 -10 -20 -30 -40 1992年 1994年 1996年 1998年 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 株価/NAVプレミアム(ディスカウント)% 期間平均 出所:Green Street Advisors、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント *情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。 11 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 カナダ 概況 カナダの不動産株は 4-6 月期に米ドル建てで 9.2%上昇し(カナダ・ドル建てでは 9.6%上昇)、 年初来のリターンは 29.7%に達した(カナダ・ドル建てでは 21・3%上昇)。力強いパフォー マンスの最大の牽引役となったのは、低金利環境が一段と長期化するとの見通し。期中のカナ ダ 10 年債利回りは 1-3 月期末の 1.22%から 4-6 月期末に 1.06%に低下した。カナダ経済は引き 続きコモディティ価格低迷が影を落としており、大半のオフィス市場の事業ファンダメンタル ズ低迷、とりわけカルガリーのオフィス市場の大幅な不振を招いている。小売り店舗の閉店が 増加するなど、小売り環境も引き続き厳しい。しかしながら、商業施設 REIT の入居水準は依然 高く、オーナーは小売企業の倒産に伴って空いたスペースを埋めたり、開発・再開発パイプラ インを実行することに焦点を合わせている。質の高い資産に対する投資取引からは、引き続き 投資家の需要が旺盛で、価格も高止まりしていることが明らかだ。4-6 月期のカナダの上場不動 産会社の株式発行額は合計 11 億カナダ・ドルに達し、1-3 月期のわずか 2300 万カナダ・ドル から急増した。2015 年通年の株式発行額 19 億カナダ・ドルのペースも上回った。REIT が株価 上昇を捉えて積極的なエクイティ・ファイナンスを行った結果である。それでも、株式発行額 は過去数年の水準を依然大幅に下回っている。このように株式発行額が伸び悩んでいる背景に は、株価バリュエーションが低く、買収機会が一層限定的になっており、企業が資本リサイク ルに一段と前向きになっている等の要因がある。4-6 月期のカナダの上場不動産会社の無担保社 債の起債額は 8 億 7500 万カナダ・ドルとなり、1-3 月期の 3 億 5000 万カナダ・ドルから増加 した。資本市場でのセンチメント回復が牽引役となった。4-6 月期の堅調な株価パフォーマンス を受けて、4-6 月期末にカナダの不動産株は NAV に対し平均 8%プレミアムとなった。カナダ の不動産会社の場合、NAV はキャップ・レートの圧縮を牽引役とする資産価値の力強い改善を すでに反映している事実を銘記したい。しかも、キャッシュフローの成長見通しは、依然とし て相対的に冴えない。 12 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 欧州 概況 欧州不動産株は 4-6 月期に米ドル建てで 5.0%下落した(現地通貨建てで 1.2%下落)。欧州不 動産株は 4 月に 0.7%値上がりし、5 月も 0.5%続伸したが、6 月に 6.2%反落した。4-6 月期に は主要市場の中でドイツ、スイス、ベルギーがそれぞれ米ドル建てで 4.1%、4.2%、2.4%値上 がりし、欧州平均をアウトパフォームした。英国、イタリア、スペインはそれぞれ 13.4%、 12.0%、8.0%下落し、アンダーパフォームした。期中にユーロは対米ドルで 2.5%値下がりし た。英ポンドは対米ドルで 7.0%下落した。 4-6 月期に上場欧州不動産会社の資本調達活動は加速した。とりわけ大陸欧州の不動産会社によ る株式発行額は 36 億ユーロに達し、1-3 月期の 11 億ユーロから急増した。ECB による最近の 景気テコ入れ策を受けて債券利回りが低下、クレジット・スプレッドが縮小したことが追い風 となり、起債活動も加速した。無担保債の発行額は 60 億ユーロに増加して、1-3 月期の 21 億ユ ーロを凌いだ。 4-6 月期には大半の欧州市場で、商業用不動産投資市場は引き続き堅調に推移した。2016 年 4-6 月期の商業用不動産の投資活動は合計 540 億ユーロに上り、1-3 月期の水準から 3%増加したと はいえ、2015 年 4-6 月期の 666 億ユーロを 19%下回った。欧州の 2 大投資市場、英国とドイ ツの落ち込みが響いた。予想通り、EU 離脱を問う国民投票を前に、投資家が投資判断を先送り したのに伴い、英国市場の投資活動は冷え込んだ。英国市場の投資額はわずか 60 億ユーロにと どまり、2015 年 4-6 月期の水準を 65%下回った。4-6 月期はドイツ市場における取引活動も低 調に終わった。対照となる物件の不足が投資の足枷となった。とりわけ中核市場や中核市場の 周辺でこの傾向が顕著だった。 4-6 月期には欧州数都市で優良物件の利回りが一段と低下した。欧州の優良オフィス物件の利回 りは平均 8bp 下落した。期中に欧州の債券利回りは大幅に低下、欧州全体で平均利回りは 30bp 下がった。特に大幅に低下したのが英国(-55bp)とドイツ(-30bp)。その結果、欧州優良オ フィスの利回りと国債利回りの平均スプレッドは 22bp 拡大し、6 月末にはスプレッドは 351bp に達して過去最高の 371bp に接近し、過去 10 年間の平均 122bp の 3 倍近い水準となった。こ のため、債券利回りが引き続き低位にとどまり、賃料の伸びが続くならば、優良物件について はさらなる利回り圧縮もあり得る。しかしながら、経済と政治的な見通しが不透明感を増すな か、投資需要の焦点は一段と優良資産に向けられる公算が大きい。以上により、優良物件と二 番手物件の利回りスプレッドがさらに縮小するとはみていない。 4-6 月期に英国上場不動産株は米ドル建てで 13.4%値下がりし(現地通貨建てで 6.9%下落)、 欧州平均をアンダーパフォームした。4-6 月期に英国市場はパフォーマンスが最も低迷した。国 民投票で英国の EU 離脱が決定されるという予想外の結果に、投資家がネガティブな反応を示し たためだ。英国不動産株は 4-6 月期末に公表 NAV に対し平均 16%ディスカウントとなった。英 国の大手不動産株に至っては、平均 25%ディスカウント水準で取引されている。 英国の EU 離脱が決定した後の 1 週間に、英国不動産株はすべての市場の中で最も大幅な株価 下落を経験した。投資家が資産価額がどの程度下落するか思いを巡らす間、株価は 20%以上下 落し、4-6 月期前半の値上がりを帳消しにした。ポンド安が株価下落の影響を増幅した。当初の 市場コメントによれば、ブレグジットの影響にまつわる不透明感ゆえに、英国の物件取引は当 面減少するとの見方が強い。不透明感は賃貸市場も冷え込ませると予想されており、とりわけ 13 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 厳しい影響が見込まれているのがロンドンのオフィス市場。同市場ではテナントがスペース拡 張の判断を先送りし、雇用判断を棚上げしている。テナントが一斉に逃げ出すような事態は予 想されないものの、ブレグジット決定の全面的な影響がより明白になるにつれ、今後 2 年にわ たり、国際テナントや金融サービス企業は、事業を他の地域に移すべきかを評価することにな るだろう。国民投票直後の株価の反応からすれば、キャップ・レートの拡大と賃貸水準の低下 を受けて、資産価額は 10-20%低下する恐れがある。中でも最も急速な下落が予想されるのがロ ンドンのオフィス市場で、商業施設資産の下落はより穏やかなペースになりそうだ。 7 月初旬、投資家からの解約請求が殺到し、多数の英国オープンエンド不動産ファンドが解約停 止に追い込まれた。こうした状況下、これらのファンドが解約資金を捻出するために資産の売 却を迫られ、資産価値下落の引き金を引くとの不安が高まった。不動産価額下落の明確な兆候 があったわけではないが、国民投票後の 1 週間に、ファンド・マネジャーはオープンエンド不 動産ファンドの評価額を 5-10%引き下げた。投資家がファンドの解約に殺到した結果、不動産 ファンドが保有していた 250 億ポンドの資産の半分以上の解約が制限され、流動性危機が発生 した。だがその後、一部のファンドが予想以上の価格で資産を売却することができて以降、懸 念は和らぎ、解約違約金は引き下げられた。ゲート条項(解約停止など様々な解約制限を課す こと)を発動していたファンドの中で最も規模の大きいファンドが取引を再開したため、投資 家は再び資金を引き揚げることができた。 オープン・エンド・ファンド危機が緩和するに伴い、政治環境が多少なりとも落ち着きを取り 戻し、投資市場と居住用市場のいずれからも心強い兆候が浮上した。そして 7 月第 1 週には資 産価額の下落は当初予想された 10-20%より、もっと小幅にとどまる可能性があるとの楽観的な 空気が強まった。Cushman & Wakefield によれば、EU 離脱の是非を問う国民投票が行われる際 に進行中だった投資案件 80 億ポンドのうち 64%前後が通常通り成約され、成約に至らなかっ た案件と、今なお交渉中の案件は 3 分の 1 にとどまった。最も脆弱だったのは、優良とは言え ない立地における賃貸契約期間の短い物件で、これらの物件は投資家のリスク選好のシフトを うかがわせる形になった。一方、高水準の契約率を達成している英国の優良不動産に対しては、 投資家は引き続き関心を示している。特筆される案件の一つが、7 月第 1 週に実施された British Land によるオックスフォード・ストリートの Debenhams デパートの売却。同資産は当初利回 りが 2.75%で、外国人投資家に 4 億ポンドで売却された。価格交渉は国民投票の前に行われた が、竣工時に値下げ調整は行われなかった。CoStar によれば、国民投票以降、ロンドン・シテ ィでは合計 52,500 ㎡の取引が行われた。このことは、ロンドンの長期的な見通しに対する信頼 感の重要な証であると見なされている。シティにおけるこの成約水準は前年の実績(7-9 月期全 体に成約した物件は合計 140,000 ㎡)を上回っている。加えて、中央銀行の措置により、ブレ グジットが資産価額に及ぼす影響が和らげられることも考えられる。事実、イングランド銀行 は金利をゼロに引き下げるとともに、資産買い入れプログラムを再開するとみられている。さ らに、ポンドの大幅な下落が海外からの投資需要を誘引する可能性があり、国債利回りが史上 最低水準に低下していることと合わせて、今後の利回り上昇に歯止めがかかることもあり得る。 3 月末に年度末を迎える英国の上場不動産会社の通期決算では、公表 NAV の伸びが明らかに減 速した。英国不動産各社では 2016 年 3 月までの 6 ヶ月間の NAV の伸びが加重平均ベースで 4.4%にとどまり、2015 年 9 月までの 6 ヶ月間の 8.0%増からスローダウンした。上場不動産会 社は 2016 年 3 月までの 6 ヶ月間に公表資本価値が平均 2.3%上昇、同じ時期に資産価額が 1.5%上昇した IPD 指数を上回った。これは、上場不動産会社の方が IPD 指数に組み込まれてい るよりも質の高い資産を抱えていることによる。 14 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 大陸欧州の不動産株は 4-6 月期に米ドル建てで 0.9%下落した(現地通貨建てで 1.8%値上が り)。4-6 月期末に大陸欧州の不動産株のバリュエーションは公表 NAV に対し、平均で 16%プ レミアムとなった。現在の割高なバリュエーションは、一段の量的緩和を背景とする利回り圧 縮の持続を牽引役とする資産価額改善の期待と過去最低水準の国債利回りを反映していると思 われる。大陸欧州の大半の市場で、賃料の伸びはまだ穏やかな水準にとどまっていることが、 そのように判断する理由である。対照的に英国は、EU 離脱を受けて資産価値が減少するとみら れているものの、投資取引活動は依然落ち着いた水準にある。資産価値には下落リスクがある にせよ、英国の不動産株のバリュエーションは、大陸欧州の不動産株と比較して魅力的だと思 われる。とりわけ、両者のバリュエーション格差は 32%に達して 2007 年 6 月以来の水準に広 がっていることを考慮すれば、尚更そのように言える。 主な投資戦略 ・ 英国、ノルウェー、フィンランド、アイルランドのオーバーウェイト ・ ベルギー、スペイン、ドイツ、スウェーデン等のアンダーウェイト 15 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 欧州主要オフィス市場賃貸料騰落率* 都市 2013年 ロンドン・シティ地区 2014年 5.3 % 2015年 2.5 % 2016年 2016年 1-3月 4-6月 11.1 % 0.0 % 0.0 % ロンドン・ウェストエンド地区 10.5 9.6 4.3 0.0 0.0 パリ中心地区 -7.8 4.9 -2.0 1.4 3.4 6.1 0.0 1.4 2.8 0.0 -10.0 4.4 2.1 2.1 2.0 ストックホルム 0.0 2.3 8.3 8.7 9.4 マドリッド 0.0 5.2 6.9 0.9 0.9 バルセロナ -4.2 2.9 12.7 1.3 3.7 アムステルダム 0.0 3.0 0.0 0.0 0.0 ブリュッセル 0.0 -3.5 0.0 0.0 0.0 欧州全域 0.1 % 2.0 % 2.2 % 0.6 % 1.8 % フランクフルト ミラノ ・ 2016 年 4-6 月期、欧州のプライムオフィス賃料は前期比+1.8%の上昇と、2016 年 1-3 月 期の+0.6%から上昇 ・ 主要都市の賃料では、パリ(+3.4%)、ミラノ(+2.0%)、ストックホルム(+9.4%)、 バルセロナ(+3.7%)、ベルリン(+6.3%)等で大幅に上昇 ・ 一方、ロンドンの賃料は横ばい 欧州主要オフィス利回りと 10 年債利回りの比較* 主要オフィス利回り 都市 2016年 3月末 2016年 6月末 (a) 10年債利回り(ご参考) 当期 変化幅 2016年 6月末 (b) 当期 変化幅 2016年6月末 スプレッド (a)-(b) ロンドン・シティ地区 4.00 % 4.00 % 0.00 % 0.87 % -0.55 % 3.13 % ロンドン・ウェストエンド地区 3.50 3.50 0.00 0.87 -0.55 2.63 パリ中心地区 3.25 3.25 0.00 0.18 -0.30 3.07 フランクフルト 4.35 4.15 -0.20 -0.13 -0.28 4.28 ミラノ 4.40 4.35 -0.05 1.26 0.04 3.09 ストックホルム 3.75 3.75 0.00 0.26 -0.27 3.49 マドリッド 4.00 4.00 0.00 1.16 -0.27 2.84 バルセロナ 4.50 4.50 0.00 1.16 -0.27 3.34 アムステルダム 4.75 4.75 0.00 0.09 -0.27 4.66 ブリュッセル 平均 5.25 4.18 % 4.75 4.10 % -0.50 -0.08 % 0.23 0.59 % -0.28 -0.30 % 4.52 3.51 % ・ 当期不動産利回りは 4.10%(対前期比-0.08%)であり、10 年債利回りに対するスプレッド は過去 10 年間の平均スプレッドである 1.22%を引き続き大きく上回る水準である 3.51% (対前期比+0.37%)。 出所:Jones Lang LaSalle、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント *情報提供を目的としたものです。現在の市場環境によるもので、予告無しに変更される場合があります。過去の実績は、必ずしも将 来の成果等を示唆・保証するものではありません。 16 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* (2016 年 6 月末現在) 50 40 30 20 10 (%) 0 -10 -20 -30 -40 -50 1992年 1994年 1996年 1998年 2000年 汎欧州 2002年 2004年 欧州大陸 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 英国 出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント 汎欧州:英国、フランス、スペイン、スウェーデン、フィンランド、オランダ、イタリア、オーストリア、ドイツ、スイス、ベルギ ーを含みます。ヨーロッパ大陸には英国を含みません。 *情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。 17 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 アジア 概況 アジアの不動産株は 4-6 月期に米ドル建てで 3.4%値上がりした(現地通貨建てで 0.2%値上が り)。マクロ経済と政治の不透明感が強まるなか、アジアの REIT はディフェンシブな性質を持 つと見なされて、アジアの REIT はまたもや力強い上昇を記録した。4-6 月期には安全資産に対 する需要が強まり、円が対米ドルで 9.6%値上がりしたことが注目される。 各国の不動産市場の動向 日本 日本の不動産事業会社は 4-6 月期に米ドル建てで 5.1%下落した(円建てでは-13.4%)。当期は、 急速な円高がインフレや経済に及ぼす悪影響が嫌気され、日本の株式市場全体が大幅に売られ るなか、不動産セクターも歩調を合わせてほぼ同様の値下がりを記録した。日銀のマイナス金 利政策もネガティブに作用した。日本の REIT(J-REIT)は米ドル建てで 7.6%値上がりし(円 建てで 1.8%下落) 、不動産事業会社をアウトパフォームした結果、J-REIT と不動産事業会社の 株価の乖離が一段と広がった。J-REIT セクターは 1-3 月期に大幅な上昇を記録した後(米ドル 建てで+18.4%、円建てで+10.6%)、小幅減速したものの、資本市場のボラティリティの高まり を受けて高利回り銘柄にマネーが流入するに伴い、底堅い推移を続けた。年初来では、日本の 不動産事業会社は株式市場全体とともに 8.5%下落(円建てで 22.0%下落)したのに対し、JREIT は 27.4%値上がりした(円建てで 8.6%値上がり)。投資家の利回り模索の動きと、日銀に よるさらなる政策導入期待が株価上昇を後押しした。 東京では、オフィス賃貸活動はグレード A 資産およびその他の新築ビルに集中した。テナント 需要の原動力となったのが、様々な業種における事業計画の一環としての企業のオフィス拡大 と、アップグレードへの動き。新築ビルは現在の環境が追い風となっている。オフィス市場に おける空室率の低下を背景に、既存のビルではテナントがスペースを拡大するのが難しくなっ ているからである。CBRE オフィス調査によれば、4-6 月期末に東京のグレード A オフィス全体 の空室率は 1-3 月期末の 2.9%から 4-6 月期末には 1.9%に低下し、2008 年以来初めて、空室率 が 2%を切った。2 件のグレード A オフィスの竣工が予想されている 10-12 月期まで、空室率は 低水準にとどまる見通しである。空室率が今サイクルの底に低下するなか、一部のテナントは 2017 年以降に移転スケジュールを先送りした。2017 年には新規供給の拡大が見込まれている。 CBRE の推定で、4-6 月期に東京都心部のグレード A オフィスの賃料は前期比約 1.4%増と安定 した上昇を記録した。 4-6 月期末に、日本の不動産事業会社は NAV に対し平均 35%のディスカウント水準で取引され た。居住用不動産市場における緩やかな改善、実物不動産市場における物件取引が示唆する力 強い兆候、貸し出し条件の緩和、不動産事業会社の調達コスト低下の恩恵、といったポジティ ブな要因を、市場はほとんど無視したことになる。ここで注視したいのは、主要なオフィス市 場の中で、キャッシュフローが今もサイクルの底近辺にあり、資産価額が 2007 年以降の天井か ら依然大幅なディスカウントをつけているのは東京だけだという点だ。極めて対照的に、JREIT は引き続き NAV に対して 18%もの大幅プレミアムを付けている。このように大幅なプレ ミアムで取引されているのは、投資家の高利回り銘柄の模索の動きと、日銀の緩和策が J-REIT の株価を引き続き下支えしているためである。 18 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 香港 香港の不動産事業会社は 4-6 月期に米ドル建てで 1.9%値上がりした。低金利の一段の長期化期 待と米ドル資産への需要が株価を穏やかに支えた。香港の不動産市場全体の空室率は4-6月期 に 0.8%上昇して 4.0%になったが、グレード A オフィス市場では引き続き空室率が極めて低か った。中環地区ではグレード A オフィスのスペースの吸収が引き続き好調で、4-6 月期の空室率 は 1.4%と横ばいだった。4-6 月期には主に中国本土の金融関連企業が賃貸需要を支えた。その 他のオフィス・サブ市場の空室率は同様に低かった。例外は九龍東で、空室率は 2.1%上昇して 7.3%に達した。新規供給とテナントの移転が背景にある。4-6 月期には香港のグレード A オフ ィス全体で賃料は 1.3%、年初来では 2.3%上昇した。中環地区の賃料は 2.3%上昇した。他の オフィス・サブ市場でも賃料が 0.2~1.0%値上がりした。例外的に九龍東では賃料が 1.1%下落 した。投資市場は減速し、4-6 月期の取引額は 55 億香港ドルにとどまって、287 億香港ドルと 異例の活況を見せた 1-3 月期の水準を下回った。これは、中国経済に対する懸念と資本規制が 敷かれたことが一因。ただ、価格環境は引き続き堅調で、キャップ・レートが 3%前後、価格が 3 万香港ドル/平方フィート前後で取引が成約した。これらの価格は上場企業の公表 NAV で使 用されている水準を大幅に上回っていることに注目したい。中国本土企業が海外への分散化を 図るにつれ、これらの企業による香港不動産の一括買いは増加を続けるものと予想される。実 物不動産取引市場では、居住用物件に対する需要と、キャップ・レートの低下見通しをさして 懸念していないとみられる投資家が、引き続き取引価額を牽引した。 香港の小売売上高は 4-6 月期に前年比 12.5%減少し、年初来では 10.8%の下落となった。中国 からの旅行客の減少と、国内支出の低迷が響いた。4-6 月期には高級品の売上高(売上高全体の ほぼ 15%を占める)が前年比 23.2%減少、年初来では 21.3%減少した。汎用品の売上高(売上 高全体のほぼ 85%を占める)も 4-6 月期に同 10.1%、年初来では 8.5%、それぞれ落ち込んだ。 4-6 月期にハイストリートの小売店舗の賃料は前期比 4.0%減少、年初来では 8.2%減少した。 ショッピング・モールの賃料は 4-6 月期に前期比 0.1%減少、年初来では 0.5%増加した。小売 売上高の減少にもかかわらず、小売部門の賃貸活動は引き続き活発だった。小売部門の投資取 引は 4-6 月期に大幅に減速し、1-3 月期の 65 億香港ドルから 20 億香港ドルに落ち込んだ。これ らの案件の価格は引き続き堅調で、上場企業が NAV の計算に使用する水準を大幅に凌いだ。例 えば、Link REIT は 7 つの小売り店舗向け不動産を総額 19 億 6000 万香港ドルで 5 人の異なる 投資家に売却した。売却価格は当該不動産の最近の評価額を大幅に上回った。当初利回りは 24%だった。 香港の優良住宅の取引は 4-6 月期に 236%増加したが、年初来では依然 13%落ち込んだ水準に ある。デベロッパーが大幅なディスカウントやインセンティブを提供し、地元の銀行が住宅ロ ーン金利を引き下げたことに後押しされ、4-6 月期には買い手が戻った。超高級住宅市場は、中 国本土の買い手が牽引役を果たし、堅調に推移した。二番手市場の取引はセンチメントの改善 を受けて 4-6 月期に 90%増加した。CCL 住宅価格指数は 4-6 月期に 1.6%上昇した。年初来で は 4.7%下落となった。 4-6 月期末に香港の不動産事業会社は NAV に対して平均 46%ディスカウント水準となり、引き 続きアジアで最も高い価値を提供している。香港の不動産事業会社はグローバル・ベースで最 も大幅なディスカウントで取引されているのみならず、事業ファンダメンタルズや資産価額に ネガティブな影響を及ぼしかねない様々なリスクは、すでに株価に実態以上に織り込まれてい ると思われる。株価はまた、商業施設や住宅市場の低迷に対する投資家の懸念と、投資家が香 港および中国の住宅開発プロジェクトの将来的な開発価値を織り込むのに消極的なことを反映 19 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 している。香港の不動産事業会社は依然としてレバレッジ水準が極めて低い事実が、バリュエ ーションの割安感を一層募らせている。 オーストラリア オーストラリアの REIT(A-REIT)は 4-6 月期に米ドル建てで 5.7%値上がりした(豪ドル建て では 9.2%値上がり)。高利回り資産に対する旺盛な需要が株価を牽引した。オフィス市場では、 賃貸活動が改善し、スペースの取得は概ね良好だった。シドニーの CBD は 4-6 月期にスペース の取得がネットでプラスとなったものの、新規供給を映して、空室率は 6.8%から 7.1%に小幅 上昇した。メルボルンの CBD も 4-6 月期にスペースの取得がネットでプラスとなり、空室率が 9.2%から 8.0%に改善した。しかしながら、空室率が高水準でテナントのインセンティブも高 止まりするなか、賃貸の伸びは引き続き見られなかった。小売部門については、オーストラリ ア準備銀行(RBA)による利下げに支えられ、4-6 月期にオーストラリアの小売売上高は年率約 4.0%増と、引き続き相対的に安定的な伸びを記録した。国際的な小売企業が引き続き賃貸活動 の牽引役となっており、小売りスペースの新規供給は今も穏やかな水準にとどまっている。投 資市場の見通しは引き続き明るく、金利低下を受けてキャップ・レートが一段と低下するとの 楽観的な空気が強い。4-6 月期のオーストラリア REIT の株式発行額は 2 億 6000 万豪ドルとな った。年初来の発行額は 3 億 8000 万豪ドルにとどまり、2015 年の発行額 14 億豪ドルのペース から減速した。オーストラリアの REIT は NAV に対し 15%プレミアムで 4-6 月期を終えた。 主な投資戦略 ・ 香港、日本の不動産事業会社等のオーバーウェイト等 ・ J-REIT、シンガポール、オーストラリア等のアンダーウェイト等 20 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* (2016 年 6 月末現在) 香港 80 40 40 20 20 (%) 60 (%) 60 0 -20 -40 -40 -60 -60 -80 -80 1996年 2000年 2004年 香港不動産事業会社 2008年 1992年 2012年 40 20 20 10 (%) 30 -10 -40 -20 -60 -30 -80 -40 2000年 2004年 2008年 2012年 2008年 2012年 J-REIT 0 -20 1996年 2004年 オーストラリア 40 0 2000年 日本不動産事業会社 60 1992年 1996年 香港REIT シンガポール 80 (%) 0 -20 1992年 日本 80 1992年 シンガポール不動産事業会社 1996年 2000年 2004年 2008年 2012年 オーストラリア 出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント *情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。 ・ 香港の不動産事業会社は当該地域における実物不動産市場のファンダメンタルズおよび NAV の 評価水準を勘案すると、非常に割安感が強いと思われる。 ・ 日本の不動産事業会社は J-REIT に対して引続き割安感が強く投資妙味が高いと思われる。東 京・主要五区の優良物件は、今後も賃料及び空室率の改善傾向が続くと推察される。 21 グローバル・プロパティ・レビュー 2016 年 4-6 月期 当資料の複製、公衆への提示・引用および販売用資料への利用はご遠慮ください。当資料はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネ ジメントが海外で発行したレポートを邦訳したもので、すべてのデータはモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグロー バル上場不動産証券運用チームから入手したものです。邦訳に際してその解釈や表現に細心の注意を払っておりますが、邦訳による解釈や表 現の違いが生じる場合は英文が優先し、当社は一切の責任を負いません。当資料に含まれる情報等の著作権その他のあらゆる知的財産権は当 社に帰属します。当社からの事前の書面による承諾なしに、当該情報を商業目的に利用することを禁止します。 当資料の予想や見解は、必ずしもモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの会社としての予想や見解ではありません。また 予想や見解が実際に実現するとは限らず、将来のパフォーマンスを示唆するものではないことにご留意ください。当資料の情報はモルガン・ スタンレーの金融商品にかかわるものではなく、また商品を推奨するものでもありません。当資料で表明された見解は原書執筆時点の筆者の 見解であり、市場や経済、その他の状況による変化を免れません。これらの見解は推奨意見ではなく、広範な経済テーマの説明としてご理解 ください。 当資料は情報提供のみを目的としたものであり、金融商品取引法、投資信託及び投資法人に関する法律に基づく開示資料ではありません。ま た、商品の売買の助言もしくは勧誘または当社が提供するサービスに関する勧誘を意図するものではありません。当資料に含まれる情報は信 頼できる公開情報に基づいて作成されたものですが、その情報の正確性あるいは完全性を保証するものではありません。当資料で表示してい る過去の実績は、必ずしも将来の結果を保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り原書執 筆時点現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り原書執筆時点の見解を示すものです。当資料で表示した分析は、一 定の仮定に基づくものであり、その結果の確実性を表明するものではありません。分析の際の仮定は変更されることもあり、それに伴い当初 の分析の結果と重要な差異が生じる可能性があります。 当社およびモルガン・スタンレーは、当資料に含まれる情報を利用し、信頼しまたは利用できなかったことに起因する一切の直接および間接 の損害に対する責任を負いません。 お問い合わせ先 モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社 〒100–8109 東京都千代田区大手町 1-9-7 大手町フィナンシャルシティ サウスタワー tel: 03-6836-5100 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 410 号 一般社団法人投資信託協会会員、一般社団法人日本投資顧問業協会会員 一般社団法人第二種金融商品取引業協会会員 © 2016 Morgan Stanley. All rights reserved. CRC1587214 Exp. 9/9/2017 22
© Copyright 2024 Paperzz