AUDIO ACTIVE SOUNDCRASH SLASH&MIX ADRIAN SHERWOOD BRC-148 ON-U SOUND / BEAT RECORDS MORE INFORMATION: ON-USOUND.COM / BEATINK.COM 01/02. Start Rec from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 03. Mammoth Galactica from『Happy Happer』BRC-86 (’95) 04. Idle Dragon featuring I-Roy from『Idle Dragon』THC-01 (’99) 05. Happy Shopper from 『Happy Happer』BRC-86 (’95) 06. Electric Bombardment from 『Happy Happer』BRC-86 (’95) 07. Weed Specialist from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 08. Return of The Space Ape(Metalic Remix) from『Weed Specialist』BRE-3 (’97) 09. Space Children from / Space Cowboys』BRC-85 (’94) 『Audio Active』(’93)『Tokyo 10. Sunset Doesn't Mean That We Lose The Sun from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 11. Citizen Zombie from 『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 12. Suckers from『Back to The Stoned Age』BRC-75 (’03) 13. Ala-Mecka-Bickally Dub from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 14. The Red Line District from『Back to The Stoned Age』BRC-75 (’03) 15. Wanna-na from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 16. Free The Marijuana featuring Bim Sherman from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 17. Kick The Bong Around from『Kick The Bong Around』THC-03 (’99) 18. Open The Gate from『Start Rec』ON-U DP37 (’96)『Apollo / Choco』BRC-88 (’97) 19. Weed Back from 『Back to The Stoned Age』BRC-75 (’03) 20. Robot War from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 21. Stiff Wheel from『Weed Specialist』BRE-3 (’97)『Robot / War』BRA-5 (’97) 22. U.G. from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 23. interlude 24. Coolness In My Foolishness from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 25. Burning Of The Midnight Lamp from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 26. Paint Your Face Red from『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 27. Audio Active Declaration from『Tokyo Space Cowboys』BRC-85 (’94) 28. Auditory Nerve Dub from / Space Cowboys』BRC-85 (’94) 『Audio Active』(’93)『Tokyo 29. Penalty Taker from / Choco』BRC-88 (’97) 『Start Rec』ON-U DP37 (’96) 『Apollo 30. Heart Of L-ion from 『Apollo Choco』BRC-88 (’97) 31. The Giants Garden from / Space Cowboys』BRC-85 (’94) 『Audio Active』(’93)『Tokyo オーディオ・アクティブが東京のシーンのなかで頭角を現しはじめた頃は、ちょうど〈ON-U SOUND〉が第三 同行したばかりか、同年のグラストンベリー・フェスティヴァルにも出演している。 の津波のように押し寄せてくるエネルギーがあり、エレクトロニック・サウンドがもっとも溌剌としていた時代で すると言い続けている。オーディオ・アクティブはときとして政治的だが、ある意味、メッセージそれ自体はい 期のピークを迎えているときでもあった。90 年代に入ったばかりの話だ。80 年代から続くヒップホップやハウス もあった。新しいサウンドがあり、新しいドラッグがあり、新しいムーヴメントがあった。1週間レコード屋に行 かなかったら時代遅れになってしまう。そんな暑い季節だった。 言うまでもなく、 〈ON-U SOUND〉はエイドリアン・シャーウッドによって 70 年代末に始動している。それはルー ツ・レゲエに深く共振するレゲエ・レーベルであり、あるいはまたポスト・パンクのレーベルでもあった。これがレー ベルの第一期だとしよう。レーベルの第二期を象徴するのはファッツ・コメットでありタックヘッドだ。すなわち ニューヨークのヒップホップ文化と接触した〈ON-U SOUND〉である。そしてこの時代のマーク・スチュワート &マフィアのサウンドがそうであったように、レーベルがレゲエというカテゴリーから大胆にはみ出そうとし、 シャーウッドもアインシュツルテンデ・ノイバウテンのリミックスを手がけたりしたのが第二期にあたる 80 年代 半ばの動きだ(もちろんどの時代でもこのレーベルはレゲエとの繋がりを絶ったことはない)。 僕が第三期と呼ばせてもらっているのは、80 年代半ば以降から 90 年代初前半にかけての、レーベルからは 白 い U- ロイ なる異名をもったゲイリー・クレイルのエレクトロニック・ダブが脚光を浴び、UK ナショナル・チャー トに食い込むほどのヒットを放った時代であり、デビュー間もないコールドカットにシャーウッドがリミキサーと して参加した時代。そのいっぽうでダブ・シンジケートをはじめ、女性コーラス・グループのアカブー、ルーツ・ シンガーのビム・シャーマンといった人たちが〈ON-U SOUND〉のルーツ・サウンドを深く磨いていた時代、そ れはレーベルが火花を散らしそうな勢いでいろんなものを吸収し続けている時代だった。 この頃〈ON-U SOUND〉は何度か来日しているので僕も彼らが来るたびにそのステージを目の当たりにしてい るのだけれど、ダブ・シンジケートとタックヘッドの演奏力にはほんとうにど肝を抜かれたものだった。リー・ペリー、 マーク・スチュワート、ゲイリー・クレイル、アカブー、ビム・シャーマン等々、そうそうたるシンガーたちの顔 ぶれが表向きには話題を呼んでいたものの、実際あの頃のライヴを観た多くの人たちに激しい衝撃を与えたのは、 バンドの演奏とシャーウッドのミキシングが叩き出す迫力満点の 音 だった。そしてあの当時の、泣く子も黙ら せるような〈ON-U SOUND〉ファミリーのいち員となったのが、オーディオ・アクティブだった。 ダブ・シンジケートは 1992 年に、あの冒険心に溢れた季節の成果ともいえる『ストーン・イマキュレート』を 出しているわけだが、その翌年にあたる 1993 年には、当時〈ON-U SOUND〉の日本盤をリリースしていた〈ア ルファ・レコード〉からオーディオ・アクティブがデビュー・アルバム『Audio Active』を発表している。プロデュー サーはもちろんシャーウッドだった。 そしてオーディオ・アクティブは 1994 年には初期の代表的シングル「Free The Marijuana」、あるいはデビュー・ アルバムのヨーロッパ版として『Tokyo Space Cowboys』を、こんどは〈ON-U SOUND〉からリリースする。 「Free The Marijuana」は英 NME 紙の DJ チャートで第1位を獲得し、『Tokyo Space Cowboys』はインディー ズ・チャートで 14 位まで上がるヒットとなった。バンドはそのままダブ・シンジケートのヨーロッパ・ツアーに 有名な話だが、オーディオ・アクティブはその初期からいろんな表現を使って、ハッパを禁止することを禁止 たってシンプルだ。それはそれでほんとうに面白いし、頼もしい限りだけれど、しかしそれはある種の洒落でも あり、むしろこのバンドの本質が音楽性にあるのは明白である。 オーディオ・アクティブの原型が始動したのは 1987 年だというが、ドラマーのナナオが加入し、マサ、2DD の3人を主軸とした現在のオーディオ・アクティブの骨格ができあがったのは 1991 年のことだ(のちにギター のカサイが参加)。彼らはその頃には、ターンテーブルやサンプラーなどを積極的に導入し、自分たちのダブ・ サウンドの創造を進めていた。彼らのバックボーンにはジャマイカの音楽やアメリカのブラック・ミュージック、 とりわけP・ファンクやジミ・ヘンドリックスからの影響があるけれど、バンドはそれらの模倣を拒否し、ジャ ンル・ミュージックに収まることを忌避した。彼らはコピーで満足するバンドではなかった。オーディオ・アク ティブとは、最初から独自性を目指すほど音楽というのものに意識的なバンドだった。その姿は、同じ時期の 〈ON-U SOUND〉やシャーウッドとたしかに重なる。 僕はオーディオ・アクティブというと、あの時代に聴いたタックヘッドとダブ・シンジケートによるど迫力の 演奏を同時に思い出す。たとえば、キース・ルブランやダグ・ウィンビッシュやスキップ・マクドナルドといっ たすご腕のミュージシャンたちによるヘヴィー級の音楽がここにある、そしてオーディオ・アクティブは電子機 材を効果的に使うことでそれと比肩しうる重量級の音楽性を捻り出そうとしている、僕にはそのように思える。 そして放り込めるものは何でも放り込んでしまう彼らの折衷主義は、現在にいたるまで継続されている。デ ヴィッド・ハロウも参加した 1995 年のセカンド『Happy Happer』、黒人マルチ奏者ララージとのコラボ・ア ルバム『The Way Out Is The Way』、ダンス・カルチャーからの影響を反映した 1997 年の『Apollo Choco』、 エイジアン・ダブ・ファウンデーションや I-ROY も参加した 1999 年の『Return of The Red I』、ダブ・サウ ンドに磨きをかけた『Spaced Dolls』、その折衷主義がよりスペイシーに展開された 2003 年の『Back To The Stoned Age』、あるいは実験色の強い最近の『Melt』シリーズ等々、彼らの作品はそのどれもが妥協のない冒 険心による産物だ。そしてまた、どの作品にも力強さというものがある。風に飛ばされてしまいそうななよなよ した音楽は、彼らのもっとも嫌悪するところだろう。ダブの影響を受けているからには、どっしりと重いことが 大前提なのだ。シャーウッドが選曲し、ミックスした『Audio Active Sound Crash』を聴いているとあらため てそんなことを思う。 この 31 曲には、ダブ、ファンク、テクノ、ヒップホップ、いろんなものが火花を散らしそうな勢いで混入さ れている。それは不思議なほど古さを感じない。というか、さすがバンドをよく知るシャーウッドのミックスだ けあって、彼らの 音 の魅力を実にうまく捕まえている。そして僕はオーディオ・アクティブというバンドが 独自に展開するコズミック・ダブ・ファンク・ロックの凄味に、いまあらためて驚いてしまうわけである。 野田努
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