CPUの科学 その2 - So-net

CPUとパワー半導体
インテルに学ぶ
CPUの科学
その2
CPUとパワー半導体
CPUとパワー半導体
●パワー半導体とは
電力用半導体ともよばれる。パワー半導体(デ
バイス)とは何か?はっきりした定義がないようだ
が電流にしては0.5A以上、電力にしては1W以上
のように大きな電力をを扱える半導体である。古
くはGe、新しいところでは GaAs、GaN、SiCなどを
素材とするものもあるが大多数はシリコンを素材
としている。数10Aの電流が流れ、損失は数10W
のCPUは典型的なパワー半導体といえる。
パワー半導体と小信号用半導体との役割の違
いを説明したい。例としてオペアンプとパワーオ
ペアンプを取り上げる。
信号用オペアンプとパワーオペアンプ
信号用オペアンプ
パワーMOSFET
パワーオペアンプ
信号用オペアンプとパワーオペアンプ
オペアンプは例えばセンサ信号の増幅に多数
使用されている。温度センサを例として取り上げ
る。温度を情報を伝達したり、温度を表示させるだ
けなら電流としてはミリアンペアしか流れないの
で信号用オペアンプで十分である。しかし、温度
でファン回転をコントロールしようとすればもっと
大きな電流が流れることにもなる。そのためには
信号用オペアンプに電力増幅部を追加して上
のような回路を構成する必要がある。出力部の回
路次第で幅広い出力電流・電圧に対応できる。も
し、部品点数を減らし、小型にまとめることができ
るし使うにも便利である。このような用途に向けて
パワー半導体の一種であるパワーオペアンプが
ある。
シリコンなどのダイ(チップともよばれる)に多数
のトランジスタを形成したのICである。CPUもICの
1種でペンティアム3のダイ写真例を示す。
ペンティアム3のダイ
CPUは直接モータを回すような働きをすること
はない。しかし一般的なパワー半導体の動作周
波数はせいぜいMHzであるのに対してCPUは
GHzといった高い周波数で動くので、それに伴う
電力が大きくなるのである。
ICの個別ダイの大きさは1mm2 から200mm2 位
で、CPUはICとしては大きな部類である。生産効
率を上げて価格を引き下げるためにCPUは直径
200mm、または、300mmのシリコンウエファ上に
多数同時に形成され、切り分けられたうえでパッ
ケージに組み込まれる。
シリコンは大変もろいもので厚さが1mm以下と
薄いことと相まって割れやすい。また裸のICは水
分による特性劣化を起こしやすい。そしてパワー
半導体はさらに大きな発熱があるのでこれが適
切に逃がしてやらなければならない。この大電力
による発熱が大きいことがパワー半導体の特質
であり、ダイを保護して放熱をつかさどるパッケー
11+1
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
CPUとパワー半導体
マザーボード上のパワー半導体その2
Dpak外形パワーMOSFET
マザーボード上のパワー半導体その1
TO-263外形パワーMOSFET
マザーボード上のパワー半導体その3
SMA外形ショットキーダイオード
ジの役割は大変重要である。それと同時にパ
ワー半導体の使いこなしでは、熱を適切に逃がし
てダイ温度を所定の温度以下に保つことが大事
な課題となる。
●CPU熱設計電力TDP
パワー半導体の電力損失の大きさは冷却条件
が同じならその温度上昇に比例する。どのくらい
の損失があって冷却との兼ね合いで温度上昇を
どの程度に収めるかが熱設計である。この熱設
計時にいくらの電力損失を見込むかがCPU毎に
提示されていて、これが熱設計電力(以下TDP)
である。TDPは同一CPUであれば動作周波数を
f、電源電圧 をVcore とすると
f×Vcore2
比例する。電圧の2乗に比例する理由は、抵抗分
Rでの電力損失はV2/Rに、キャパシタンスCを充
放電する電力損失はCV2に各々比例するからで
ある。この式から周波数を上げてもVcoreを下げ
ることでTDPの増加を抑えらえることが理解でき
る。
TDPの歴史を振り返ってみたのが下表である。
処理速度を上げるためにCPUの動作周波数を
上げる。デザインルール(パターンの細かさ)を向
上させ、より低いVcoreで動かすことができるよう
にする。これを繰り返してきたが、それでもTDPは
増えつづけている。その例を挙げると、同じペン
TDP
Icc
最高Tcase
Vcore2×f÷
(W)
(A)
TDP
(℃)
Pentium Pro 166MHz
3.3
85
27.5
0.066
11.2
Pentium2 300MHz (Klamath)
2.8
75
43.0
0.055
14.2
Pentium3 600MHz (Katmai)
2.05
85
34.5
0.073
17.0
Pentium3 600MHz (Coppermine)
1.65
82
15.8
0.103
12.0
Pentium4 2GHz (Willamette)
1.75
76
75.3
0.081
57.4
Pentium4 2GHz (Northwood)
1.50
68
52.4
0.086
44.3
Pentium4 3.2GHz (Northwood)
70
82
0.088
67.4
1.475∼1.55
Pentium 4 3.4EGHz Socket478
73.2
103
91
1.25∼1.4
0.0515∼649
Pentium4 560 (3.6GHz) LGA775
72.8
115
119
1.25∼1.4
0.0489∼613
Pentium D840 (3.2GHz) LGA775
69.8
130
125
1.2∼1.4
0.0368∼501
Core 2 Duo E6700(2.66GHz) LGA775 0.85∼1.3625
60.1
65
75
0.0256∼658
Athlon64 3500+ Socket 939*1 2.2GHz
1.5
70
89
0.0556
57.4
Athlon64 3800+ Socket 939*2 2.4GHz
1.5
70
89
0.0606
57.4
*1は 69/50/22/2.9W、*2は72/53/39/22/.2.9Wと、それぞれ動作状態に応じて変えることができる
CPU
Vcore
(V)
11+2
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
パワー半導体の内部構造と冷却
ティアム4 2GHzであってもWillametteは0.18µm、
Northwoodは0.13µmルールとデザインルールは
進歩している。このおかげでVcoreは1.75Vから
1.5Vに引き下げられ、75.3WだったTDPは52.4W
と小さくなっている。TDPはVcore2×fに比例する
はずなので、これをTDPで割った数字を表にくわ
えた。ペンティアム3以降では似たような数字に
なっている。この値が大きくなってきているのは
Vcore2×f以外の要素で電力の削減が図られた
めである。
●CPUの内部構造と冷却
ペンティアム4 (North-wood)のダイサイズは
131mm2 でµPGA478とよばれるパッケージに収
められている。名前のとおりピン数は478本であ
る。
ペンティアム4外観
同裏面
組み立て工程は次のとおりである。
シ リ コ ン ダ イ は FRP(Fiber Reinforced
Plastics:繊維強化プラスチック)基板にはんだ
付けされたうえに樹脂で保護されている。この
上に放熱をよくするためにニッケルメッキ銅製
ヒートスプレッダ(IHS)が取り付けられている。こ
の構造は実装と放熱の面で100Wクラスのパ
ワー半導体としてみた場合には革命的である。
実装面では、はやい話プリント基板に大きなシ
リコンダイを直接半田づけして金属のふたを
被せたとだけと言ったら怒られるだろうか。TDP
が1桁のワットから徐々に増えてきたからこそで
きた構造でだろう。ただし後述するように寿命
には現実的な一定の線引きをしていて、一部
半導体のような煮ても焼いても壊れないといっ
た極端な信頼性を目指しているわけではな
い。そして、肝心なことはCPUは後述のように、
ほぼ完璧に温度面の保護がなされているから
こそ、このような構造がとれるともいれる。
CPUで発生した熱のほとんどはソケット側には
流れず、スプレッダを介してヒートシンクから放熱
される。自冷ヒートシンクでは80Wもの熱量は処
理できず、ファンによる強制空冷がおこなわれて
いる。パワー半導体をソケットに取り付け、これに
ワンタッチ装着可能なファンつきヒートシンクを亀
の子よろしく背負わしてしまう発想は驚異である。
インテルのWebに掲載されたセットアップ法は次
の と お り で あ る。(http://support.intel.co.jp/jp/
support/processors/pentium4/
intnotes478.htm#Retention)
μPGA478用ソケット
μPGA478の組立工程と内部構造
日経WinPC PC最新テクノロジー2003より
ソケットにCPUを装着する
11+3
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
パワー半導体の内部構造と冷却
る。これを避けるのが写真のXeonデータシート
にあるダクトつきCPUクーラーである。CPU冷却
用に外気が直接取り込まれ、ヒートシンクを取り
囲むように風洞が形成されている。他の熱源の
影響を受けずに外気があまねく冷却に向けら
れることになる。これを見ると風を吹かせて冷や
すというやり方が、もはや限界に近いと感じさせ
られる。なお先の実験に使ったBadongのダクト
は風洞まではいかなないまでも外気で冷やす
ファンつきヒートシンクの取り付け
ファンはヒートシンクに風が当たる向きに取り
付けられている。CPUの発熱はケース内に拡散
されることになり、ケース内の温度は上昇する。
暖められた空気は外部から取り入れられた空
気と混ざり合い、外部へ排出されるわけだが、温
まった空気で再度冷却するという好ましくない
ことになる。Xeonというペンティアム4と兄弟関
係のサーバー用CPUがある。3.06GHzのTDPは
ペンティアム4より大きく85Wであるうえに、これ
を複数同時に動かす使い方をされることがあ
る。この場合にはケース内温度上昇がより大き
くなりCPUの冷却効率が一段と落ちることにな
XeonのProcessor Wind Tunnel(PWT)
Intel® Xeon™ Processor DP Thermal Design
Guidelinesより
FC-PGA
PPGA
µBGA2
ソケット370版ペンティアム3/セレロンの3種類のパッケージ
PPGAはプラスチック製パッケージでずっしりて重みがある。残りの2種は軽くて持った感じはプリント基
板である。FC-PGAでは青い部分がCPUダイで、薄い保護層はあるがダイが剥き出しの感じである。
11+4
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
パワー半導体の内部構造と冷却
という考え方は同じである。XeonにはCPUクー
ラーとしてダクトはないもののプラスチック製風洞
が実際に添付されている。
µPGA478パッケージはピン数が478本あること
から名づけられており、ピンの材質は金メッキニッ
ケルである。Vccピン数は84本で電流として70A
を流すので1ピンあたりは1A程度の勘定となる。
ソケットが取り付けられているマザーボードは4
層、または、6層基板で、このうち電源(Vcc)とグラ
ンド(Vss)が各1層である。ピンアサインをみると
VccとGNDが隣接して配置されている。電流を分
散させたうえでフラックスを打ち消すように配慮さ
れている。
クリップによる取り付けは簡便ではあるがバネ
圧が適切に維持されないと放熱が悪くなる危険
がある。CPUの冷却はこのクリップ取り付けの一
種と考えられる。
構造をCPUと比較してみるとダイを半田付けす
るフレームはCPUでは1種のプリント基板、このパ
ワー半導体では銅である。そして、ダイを保護す
る樹脂はFCPGAペンティアム3では申し訳程度
なのに対して、パワー半導体では分厚いもので
ある。その樹脂もヤスリで削ろうとしても歯が立た
ないし、ドリルで穴を開けようとも特殊な歯でない
と無理である。要求される信頼性がずっと厳しい
からである。取り付けも、ネジ止めと端子半田付け
と手間がかかる。CPUの取り付けが別世界のもの
だということがお分かりいただけるだろう。
ヒートシンク
µPGA478のVcc●とVss● (Top View)
●パワー半導体の内部構造
一般的なパワー半導体の内部構造を見てみた
い。代表的プラスティックパッケージであるTO220、あるいは、TO-247の内部構造は次のように
なっている。
代表的取り付け方 その1—ネジ止め
ダイ
ヒートシンク
銅フレーム
TO-220、あるいは、TO-247の内部構造
代表的取り付け方 その2—クリップによる
図はモールド樹脂を取り去った状態である。ダ
イは銅製フレームに半田づけされ、ダイと外部端
子間はワイヤあるいはリードで接続されている。
熱のほとんどはフレームを通じてヒートシンクに
流れ、図では下向きである。
代表的な取り付け方はネジ止めと簡便なクリッ
プを利用する方法がある。
11+5
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
ダイ・ケース・周囲温度、熱抵抗
●ジャンクション(CPUダイ、コア)温度
CPUダイ温度は均一ではない。写真は動作時
CPUダイ温度例である。
ケース温度
ヒートシンク
IHS
ダイ
ソケット
CPUダイ温度分布例
Intel : Thermal Performance Challenges
from Silicon to Systemsより
ここで高温部が赤で、低温側に行くに従ってが
青に変わっている。この写真がシミュレーションに
よるものか実測によるものか定かではない。実測
ならばダイをパッケージに入れないシリコン剥き
出しの特別の測定用サンプルを使っている。熱
設計でいうダイ温度は本来その最高温度であ
る。しかし、実際にはそれより低い平均的な温度
をもってジャンクション温度といっている。またダ
イ上のサーマルダイオードの位置もはっきりしな
いがダイの最高温度よりは低い温度をモニタし
ていると考えられる。熱設計の計算では理論的
に計算しにくい部分的な高温部を対象とすること
はできない。
● ケース温度
Pentium4の最高ケース温度(プレート温度、また
は、シャシ内最高温度と表現されることもある)は
70℃程度に規定されている。このケース温度とは
ヒートスプレッダ中心部の温度である。
本来重要なのはダイ(ジャンクション)温度だが、こ
れを実際の製品では測ることができない。そこで
ユーザが測ることができて温度差を足せばダイ温
度が計算(推定)できるのがケース温度である。ケー
ス温度測定点は外部(冷却)の影響を受けにくく、安
定した結果が得られる場所が選ばれる。CPUと比較
のためにTO-220やTO-247などのケース温度測定
例を示す。ここではダイの載った銅フレームのダイ
に近い点の温度がケース温度である。もしケース温
度を測るなら、どこを、何で、必要ならどのような加工
をして、測るかを確認しないと思わぬ間違いを犯す
危険がある。
ペンティアム4のケース温度
パワー半導体のケース温度例 (断面図)
(TO-220外形品の例)
CPUのケース温度測定はIHSとヒートシンクとの間
に温度センサを挟み込めばいいなどと勘違いして
はいけない。IHSとヒートシンク表面はともにµm単位
の平面度で加工されているところに薄く見えるセン
サでもあっても本来の熱の流れを乱すからである。
Intel Pentium® 4 Processor with 512-KB L2 Cache
on 0.13 Micron Process Thermal Design Guidelines
Design Guide Document Number: 252161-001には
ヒートシンクに熱伝導が乱れないようにセンサ用溝
を設けた加工例が載せられている。アマチュアに
とっては難しい加工である。
最近のインテル製CPUの最高ダイ温度とケース
11+6
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
ダイ・ケース・周囲温度、熱抵抗
周囲温度は系により異なり、どの系を対象とする
かで異なる。別の周囲温度の例をあげれば筐体全
体の発熱・放熱を考える場合には図のように筐体
が吸い入れる空気の温度となる。この周囲温度は
室温そのものだが、先のCPU冷却を考える場合に
は、これが暖められたのがCPU放熱系の周囲温度
となる。
電源の排出ファン
ケース温度測定用として温度センサのための溝
が設けられたヒートシンク
排出ファン
温度を表にした。ダイ温度は478ピン ペンティアム4
では規定されていない。ペンティアムMでは最高ダ
イ温度はわざわざオンダイ サーマルダイオードに
よる測定値とされている。他のCPUについてもこの
ダイオードの役割は重要である。
最高ダイ
温度
最高ケース
温度
ペンティアム3
1.13∼1.4GHz
77∼78℃
69℃
0.13µmプロセス
ペンティアム4
−
68∼73℃
ペンティアムM
100℃
−
CPU
吸入ファン
筐体(ケース)全体としての周囲温度
●最高吸気口温度(周囲温度)
ここでの周囲温度とは発熱・放熱系のベースと
なる(最も低い)温度である。
周囲温度
ファンから0.3インチ上
ファン
ヒートシンク
IHS
ダイ
ソケット
ファン吸気口温度(周囲温度)
周囲温度
●なぜペンティアム4は最高ダイ温度を80∼
85℃以下でないといけないのか?
0.13µmプロセスペンティアム4の最高ダイ温度
は規定されてはいないがケース温度が70℃に抑
えれば、このときのダイ温度80℃程度と考えられ
る。シリコンを素材とする半導体では最高ダイ
(ジャンクション)温度は150℃が普通で、低いもの
で100℃、高いものでは200℃の範囲に規定され
ている。ペンティアム4でも135℃でシャットダウン
がかかる旨がデータシートに書かれているので、
この温度でも動作することが当然想定されてい
る。ではなぜ最高ダイ温度を80℃∼85℃程度に
抑えなければないのか?答えはシリコンダイは
大丈夫だがそれ以外に温度を抑えなければなら
ない理由があるからである。主な理由は2つであ
る。
1つはCPUが「FlipチップのCPUダイを プラス
チック基板にはんだ付けしている」ことにある。
さらに、これがマザーボードにはんだ付けされた
ソケットに装着されることにもある。ダイ温度が
150℃まで動作するパワー半導体は銅製フレー
ムにはんだ付けされているのである。そしてヒート
シンクへの取り付けの多くはネジ止めである。
Intel® Pentium® 4 Processor 478-Pin Socket
(mPGA478) Design Guidelines Order Number:
249890-002 にはデスクトッププロセッサの設計
寿命は7から10年であること、そして、これに見
11+7
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
ダイ・ケース・周囲温度、熱抵抗
合った環境試験として温度差40℃の温度サイク
ル試験1,500ないし2,150サイクルであると書かれ
ている。また、周囲温度(吸入口温度)は最高40℃
(または38℃)に抑えなけばいと規定されている。
すなわち40℃プラス40℃で最高温度は80℃な
のである。
この図は大げさすぎるかもしれない。しかしこ
のようなことが起きたら極めて具合が悪いこと
は容易に想像できる。ここではソケットが反れ
ヒートシンク
IHS
ダイ
●熱抵抗とは
温度上昇ΔTは電力損失P(発生熱量)と比例
関係にあり、この比例定数が熱抵抗Rthである。
1Wあたり何℃温度が上がるかなので単位は℃/
Wである。
∆T=Rth×P
電位差Vに対して閉回路を形成すると電位の
高いほうから低いほう電位に比例した電流Iが流
れる。抵抗Rは電位に対する電流の比例定数で
ある。
V=R×I
温度上昇(温度差)と電位差、電力(温度差を生
じさせる元)と電流(電位差を生じさせる元)とを対
比させれば熱抵抗を理解しやすい。
説 明 の た め に ペ ン テ ィ ア ム 4 の 2.4GHz と
3.06GHzを取り上げる。データシートでは次のよう
に規定されている。
ペンティアム4 2.4GHzと3.06GHzのケース・周
TDP
(W)
最高Tc
(℃)
最高Ta
(℃)
P4 2.4BGHz
57.8
70
40
P4 3.06GHz
81.8
69
38
ソケット
温度が上がってもしソケットが
ばCPUとソケット間の接触に悪影響があること
を表しているがCPU基板の反りがダイに及ぼ
す影響はより深刻である。シリコンダイはもろい
もので割れてしまう恐れもある。温度が上がっ
てもケース温度で70℃程度、ダイ温度で80℃
まであれば大丈夫な設計になっているという
訳である。
パワー半導体としてみるとCPUが想定した信
頼性は低めである。しかし、必要にして十分な
現実的な線引きをした結果である。ここで説明
している仕組みはインテルによれば低価格で
大量生産にむく一般的工業用とされている。
ケース温度を制限していると思われるもうひ
とつの要素であるサーマルランナウェイ(熱暴
走)については説明の都合上、熱抵抗を説明
してからにしたい。
囲間の熱抵抗Rth c-aは各々
(70-40)/57.8=0.519(℃/W)
(69-38)/81.8=0.379(℃/W)
と計算でき、ファンつきヒートシンクの熱抵抗はこ
れより低いことが要求されている。
仮にジャンクション・ケース間の熱抵抗Rthj-cが
周囲温度
40℃/38℃
ファン
ヒートシンク熱抵抗 0.38/0.52 ℃/W(計算
ケース温度
70℃/69℃
IHS
ダイ
熱抵抗
ソケット
電力損失
57.8W/81.8W
熱抵抗の考え方
分かればこの場合のジャンクション(ダイ)温度Tj
は次のように計算できる。
11+8
Copy Right 橋詰伸一 2004.8
ダイ・ケース・周囲温度、熱抵抗
P4 2.4GHz Tj=81.8(W)×Rthj-c+69(℃)
P4 3.06GHz Tj=57.8(W)×Rthj-c+70(℃)
インテルCPUがどれ位の熱抵抗のヒートシンク
を要求するように変わって来たかを表にした。
166MHz ペンティアムプロに較べてペンティアム
4の3GHzクラスは熱抵抗が1/3以下、言い換えれ
ば3倍冷却効率の高いヒートシンクが必要になっ
た。
熱抵抗で2倍以上差があるペンティアム3世代
用と同4 世代用の2つのリテールヒートシンクを並
べてみた。前者を持った後で後者を手にすると
ずっしりした重みを感じる。
て12Vを供給して所定の熱抵抗が得られる。これ
らのヒートシンクは押し出しの一般的な作りだが
3GHz以上としては、より熱抵抗が低くなくてはい
けないのでこれに対応できる64フィンのラジアル
ヒートシンクが添付されている。材質も単純なア
ルミではなくCPUのIHS接触部には銅が埋め込
まれている。
ラジアル
ヒートシンク
ペンティアム3用(左)と4用(右)ヒートシンク
インテルコンセプトデザインスケッチ
Intel® Pentium® 4 Processor with 512-KB L2
Cache on 0.13 Micron Process Thermal Design
Guidelines : Document Number: 252161-001Rより
フ ァ ン 型 番 は 左 が Sanyo 109X7612H1166
DC12V 0.1A、右はNIDEC F08G-12B2S1 05AC1
DC12V 0.28Aである。当然ながらファン電圧とし
最高ケース温度 最高周囲温度
(℃)
(℃)
CPU
Pentium Pro 166MHz
Pentium2 300MHz (Klamath)
Pentium3 600MHz (Katmai)
Celeron 533MHz (Mendocino)
Pentium3 600MHz (Coppermine)
Celeron 1.4GHz (Coppermine)
Pentium4 2GHz (Willamette)
Pentium4 2GHz (Northwood)
Pentium4 2.4BGHz (Northwood)
Pentium4 3.0GHz (Northwood)
Pentium4 3.2GHz (Northwood)
Pentium4 560 (3.6GHz) LGA775
85
75
85
70
82
72
76
68
70
70
70
72.8
TDP
(W)
Rthc-a
(℃/W)
27.5
43.0
34.5
28.3
15.8
34.8
75.3
52.4
57.8
81.9
82
115
(1.45)
(0.70)
1.16
(0.88)
2.15
(0.78)
0.48
0.53
0.52
0.39
0.39
0.30
(45)
(45)
45
(45)
48
(45)
40
40
40
38
38
38
インテルCPUの変遷とヒートシンク熱抵抗 Rthc-a
(最高周囲温度が不明のものは45℃として計算した)
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Copy Right 橋詰伸一 2004.8