ケベック州の舞台芸術教育 藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授) ケベック州にある主要な舞台芸術教育機関 ・カナダ国立演劇学校(モントリオール) ・ケベック州立コンセルヴァトワール(モントリオール校、ケベック校) ・ケベック州立大学モントリオール校 演劇高等学校 ・ケベック州バレエ高等学校(モントリオール) ・モントリオール現代ダンス学校 オールド・モントリオール CEGEP に附属 ・国立サーカス学校(モントリオール) ・大半はケベック州で人口が最大であり、文化の中心でもある都市モントリオールに位置する ・プロフェッショナルを養成する専門教育機関として少人数制を採る ・相応の税金が投入されており、学費はアメリカ合衆国ほど高額ではないが、大陸ヨーロッパ諸国に 比べると高い水準 ・日本と比較できる水準にあるといえる カナダ国立演劇学校(Ecole nationale de théâtre du Canada) ・1960 年、モントリオールに創設 ・演技(4 年、言語ごとに定員 12 名) ・演出(2 年半、言語ごとに定員 2 名) ・劇作(3 年、言語ごと に定員 2 名) ・制作(3 年、言語ごとに定員 8 名) ・セノグラフィ(3 年、定員 8 名)の学科を擁する ・英語圏と仏語圏で実践されている演劇、そこで求められる質が大きく異なることを反映して、英語 セクションとフランス語セクションとでは完全に別個の教育を実施している (セノグラフィのみ共通) ・授業の多くは非常勤講師によるもので、専任教員は少ない ・2014 年 3 月から約 20 年ぶりの大規模改修が始まる ・創設 50 周年を迎えるのを機会に始めたキャンペーンによって 1400 万ドルの協賛金を獲得 銀行を はじめとする民間企業が中心だが、シルク・デュ・ソレイユも 100 万ドルを寄付 ケベック州芸術人 文評議会(CALQ)のプラスマン・キュルチュール(マッチング・ファンド)による支援も加算 ・基金化してこれからの活動の収入源に 学生のコミュニティ向け活動の支援やデジタル・アートと の融合にあてる ・学費:4600 ドル(カナダ人および永住者)9200 ドル(外国人) ・予算:780 万ドル ・運営主体は NPO 法人だが、連邦政府(カナダ遺産省)が約 6 割、オンタリオ州とケベック州が残 りの大半を負担 ほかの州(ノヴァ・スコシア、ニュー・ファウンドランド、アルバータを除く)は 象徴的水準にとどまる ・作品制作にはプロの公演と同様の費用をかけるので、フランスの同等の演劇学校と比べても予算が 大きくなる ケベック州音楽・演劇コンセルヴァトワール(モントリオール校) ・ヨーロッパ(特にフランス)の制度に倣って 1954 年創設 ・ケベック州立コンセルヴァトワールのネットワークの一翼を担う 演劇教育はモントリオールとケ ベック・シティ、音楽教育はより多くの都市で実施 ・演劇については、国立演劇学校とはちがって、俳優養成のみを行う ・旧市街(市庁舎前)から、カナダ国立演劇学校の近くに移転 2005 年の火災を機に州政府は 4600 万ドルを支出して、設備を改修 学費:1 単位につき 200 ドル(カナダ人および永住者) 、450 ドル(外国人) 予算:文化コミュニケーション省によるケベック州立音楽・演劇コンセルヴァトワールの全体に対す る助成 2851 万ドル(2012-3) ケベック州立大学モントリオール校(UQAM) 演劇高等学校 ・大学は 1969 年、演劇学科は 1985 年に創設 ・ケベックにおける演劇研究はヨーロッパ、特にフランスの動向の影響を強く受けてきたが、現在で はアメリカの大学によく見られる実践中心の演劇教育も、研究者養成と並行して行う ・ある程度の経験を積んできたアーティストが、ちがった角度からより自分の実践に対する見識を深 めるために大学院に進学してくる場合が多い ・日本で見られるような学科と進路の乖離はあまり見られない ・大学院博士課程まで設置されており、研究と実践を融合させたかたちで博士学位を取得することが 可能 ・学費 約 3000 ドル(学年によらず同額、ケベック在住者の場合) 学費は大陸ヨーロッパ諸国に 比べると安くはないが、不満もあまりない 本調査は以下の聞き取り調査および独自調査に基づく ・シモン・ブロー(カナダ国立演劇学校総長、カナダ芸術評議会副議長、キュルチュール・モンレアル会長) 2014 年 3 月 12 日 ・ジルベール・ダヴィッド(モントリオール大学名誉教授) 2014 年 3 月 12 日 ・イヴ・ジュバンヴィル(ケベック州立大学モントリオール校教授) 2014 年 3 月 14 日
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