webサイト用陶磁器コンテンツの研究(PDF: 85.2 KB)

研究論文
webサイト用陶磁器コンテンツの研究
倉地辰幸 *1 、長 谷川恵子 *1
R es ea rch of t he web si te contents for pott ery i ndus t ry
Tatsuyuk i K URACHI and Ke iko HASEG AW A
*1
Seto Ce ra mi c Re se a rc h Ce nte r, AI TE C
インター ネットの 普及に伴 い、消費 者とメー カーが直 接に繋が る方式の 流通形態 が急速に 伸びてい る。
一般消費者 向けの陶 磁器につ いても事 情は同じ であり、 今後産地 の産業振 興を図る 場合、イ ンターネ ット
販売を充実 させるこ とがきわ めて重要 である。 本研究で は、この ようにイ ンターネ ットを流 通のコア とし
て捉え、ネ ット販売 用のサイ トデザイ ンとコン テンツモ デルを産 地メーカ ーに提案 すること により、 特に
経営規模の 小さい陶 磁器メー カーにつ いても有 益なネッ トビジネ スの具体 像を提示 した。
1.はじめに
昨 今のイン ターネ ット通販 の伸張は めざま しく、5年
そ もサ イト間 の移 動が肉 体移 動のよ うな コスト 、時 間、
労 力を多大 に要す る活動で なく 、非常に 容易であ ること 、
間 で約20倍 という 高い伸び を見せて いる 。これは 働く女
ま た、ひ とつの サイトで 多くの 利用者の 様々なニ ーズに
性 の増加に 伴う利 便性の追 及、消費者個 々人が自 身の嗜
は 到底応え 切れな いことか ら、結 局、検 索エンジ ンをサ
好 に忠実に なり 、種々の ニッチ 商品を求 めるよう になっ
イ トに設置 して併 用せざる を得ない 現状で ある。言い換
た こと、さらに 既存の流 通シス テム側の 都合によ り供給
え るなら 、イン ターネッ トは極 めて解放 的で自由 な空間
阻 害から 、消費者 に存在 すら知ら れなかっ た、ロ ングテ
で あり、囲い込 みという ような 設計思想 を強く打 ち出す
ー ル製品を 容易に 購入でき るように なった など、種々の
こ とは、かえって 不利で あるため 、検索 エンジン 型のビ
条 件が結び ついて 生まれて きた状況 である 。こう した傾
ジ ネスモデ ルが現 在の主流 となった わけで ある。
向 は ネッ ト 利用 者の 増 加と ブ ロー ドバ ン ドの 普及 によ
2.2 検索エ ンジン 型のマー ケティ ングモデ ル
り 今後さら に加速 されるこ とが予測 される 。やき ものと
検索エン ジンに は、人 力で分 類作業を するディ レクト
い う製品ジ ャンル について 言えば 、やき ものは一 個一個
リ 型と呼ば れるタ イプと 、ロボ ットと呼 ばれるプ ログラ
の 製品個性 が本質 的にニッ チ性を有 してい ること 、また
ム による自 動巡回 型の二種 類ある 。検索 エンジン として
消 費 者個 々 人が 運ぶ 場 合に ネ ック にな る 重量 の問 題が
多 く活 用され てい る、「 グー グル」 以前 には SEOスパム
宅 配便流通 に乗る ことによ り解消す ること など、ネット
と 評される 最適化 テクニッ クによっ て、ロボット 型は検
販 売と陶磁 器製品 とが結び つきやす い状況 となった 。
索 者 の意 に 沿わ ない 結 果を 出 力す るよ う な状 況と なっ
こ のた め、当 セン ターで はネ ット販 売用 の陶磁 器 web
た 。また 、サイ ト数の爆 発的な インフレ ーション による
サ イトデザ インと コンテン ツを作成 し、産地メー カーに
大 量の 収集漏 れも 問題で あっ た。こ うい った状 況下 に、
提 案し、それをフ ィード バックす ることに よって 、陶磁
分 散 モデ ル によ って サ イト の イン フレ ー ショ ンに 対応
器 企 業に と って 即戦 力 とな り うる 商用 コ ンテ ンツ の開
し 、ペ ージラ ンク テクノ ロジ ー等に よっ てSEOス パムに
発 研究を行 った。
対 応したグ ーグル の登場を 契機とし て、検索シス テムは
非 常に洗練 された ものにな り、そもそも 利益追求 が非常
2.ウェブマーケティングの歴史と現状
2.1 ポータ ルサイ トと検索 エンジ ン
ウェ ブビジ ネス モデル は、 大きく 二つ に分類 され る。
に 難しいと いわれ たネット 業界にお いて 、検索エ ンジン
型 の マー ケ ティ ング モ デル と 呼ば れる 高 収益 のビ ジネ
ス モデルが 確立さ れた。
ひ とつはポ ータル サイト型 のモデル 、も うひとつ は検索
この背景 には 、インタ ーネッ ト利用者 の行動が 検索エ
エ ンジン型 のモデ ルである 。この うち、ポータル サイト
ン ジ ンを ベ ース とし て 行わ れ るよ うに な った とい う現
に よって利 用者を 囲い込み 、彼 らの消費 活動を捉 えてい
実 がある 。特に プログラ ミング の経験の 無い一般 ユーザ
こ うという ポータ ルサイト 型のビジ ネスモ デルは 、そも
ー にと って、 URLをブ ラウ ザのア ドレ スバー に直 接入力
*
1瀬戸窯業技術センタ−
応用技術室
す ることは 煩わし い作業で あり 、勢い検 索エンジ ンから
で 販売でき るよう になった ことに起 因する 。この 状況は
目 的の サイト へ飛 ぶとい う作 業を繰 り返 すこと にな る。
今 後もさら に加速 されてい くと考え られる が、焼 物とい
つ まり、検索エ ンジンこ そが真 のポータ ルである と言い
う ジャンル に絞っ て検討す ると 、このカ テゴリー は本質
換 えること ができ るような 状況が生 まれた 。
的 にニッチ 性を有 しており 、ま た購入の 上でネッ クとな
こういっ た状況 下では 、検索 エンジン を広告に 使うと
る 商品の重 さが通 販では解 消される ことか ら、陶 磁器製
い うビジネ スが極 めて有効 で需要も 多いこ とになる 。検
品 全 般に と って ネッ ト 通販 は 非常 に魅 力 的で 有望 な販
索 エ ンジ ン マー ケテ ィ ング も 大き く2 種 類に 分類 する
路 であると いえる 。
こ とが できる が、 ひとつ は SEOで あり 、もう ひと つはキ
3.2 コンセ プト
ー ワー ド広告 であ る。 SEOは、検 索エ ンジン のア ルゴリ
イ ンタ ー ネッ ト上 に 種々 見 られ る既 存 の商 用陶 磁器
ズ ムを解析 して自 社サイト を上位表 示させ 、消費 者を呼
サ イトのコ ンテン ツを分析 し、魅力ある 販売サイ トの構
び 込む最適 化戦略 であり 、検索 エンジン を提供す る事業
成 要 素を図 1 の よう に 整理 し て開 発用 コ ンセ プト シー
者 自体の利 益とは 無関係で ある。しかし 、キーワ ード広
ト とした。
告 は検索エ ンジン を提供す る会社が 、自 社の検索 エンジ
ン にスポン サーの サイトを 上位表示 したり 、スポ ンサー
サ イ トと し て別 枠表 示 する な どに より 料 金を 徴収 する
シ ステムで あり 、検索エ ンジン を提供す る会社が 積極的
に 利潤を追 求する 広告モデ ルである 。こ のビジネ スはオ
ー バーチュ アが 1999年には じめたも ので 、グーグ ルも提
供 している 。
2.3 デスク トップ 検索と商 品検索
検 索 エン ジ ンこ そ がネ ット の ポー タ ルで ある と いう
現 状を踏ま え、検索シス テムの 機能拡張 が進展し つつあ
図1
る 。その ひとつ が利用者 個々の PCやロー カルネッ トワー
コン セプト シート
ク を検索す るデス クトップ 検索であ り、もうひと つがネ
ッ ト 上の さ まざ まな シ ョッ ピ ング サイ ト に分 散す る商
3.3 取扱商 品
品 を検索し て、その写真 や価格 を表示す る商品検 索であ
今 回作 成した webシ ョップ で取 り扱う 商品 は、愛 知県
る 。特に この商品 検索は 利用者の 期待も大 きく、ダイレ
陶 磁器工業 協同組 合の取扱 商品で 、メー カーから 組合に
ク トに消費 活動に 繋がるシ ステムで あるた め、ネ ットビ
販 売委託さ れてい る製品の うち 、ネット 販売を可 とした
ジ ネス上極 めて重 要である 。
も の、および組 合の企 画商品で ある 。また 、当サ イト限
定 の特色あ る商品 として 、平成 16年度に 開発した キャラ
3.商用陶磁器サイトデザインの開発
3.1 商用陶 磁器サ イトの分 析
最 初にも述 べたが 、ネッ ト型の 消費活動 の今後 の流れ
ク ター食 器 1)を消 費者に 魅力 ある子 供用食 器セッ ト「お
や つタ イムセ ット 」に構 成し 、ライ ンナ ップに 加え た。
商 品点数は 、webショ ップ開 設段階で 14社約 160ア イテム
を 示唆する 注目す べき傾向 は、これまで 市場で言 われて
と なった。
き た2割の メジャ ー商品が 8割を売 り上げ 、残り の8割
3.4 サイト 構成
の 商品は2 割の売 り上げに とどまる という いわゆる「パ
サイトの 構成は 、視覚 的、感 覚的に商 品に誘導 するシ
レ ートの法 則」が 通用し なくなり 、ロン グテール と呼ば
ス テムを目 指した 。具体 的には図 2 に示すような トップ
れ る残り8 割のマ イナー商 品群 、つまり ニッチの 売り上
ペ ー ジと図 3 に 示す よ うな イ ンデ ック ス ペー ジに 商品
げ 集 計が メ ガヒ ット 商 品の 売 り上 げを 上 回る とい う現
名 やイメー ジコピ ーを添え た商品写 真バナ ーを配し 、ワ
象 が起きて いる点 である。
ン ク リッ ク で個 別商 品 ペー ジ に移 動で き るよ うな シン
こ れ は 働く 女性 の 増加 に よる 利便 性 の追 求 とネ ット
プ ルなリン ク構成 とした 。また 、トッ プペー ジ左には「瀬
検 索システ ムが消 費嗜好の 多様化傾 向を加 速させ 、ロン
戸 逸品回廊 」と 銘打った 消費者 の興味を 喚起する 高級志
グ テ ール 部 分の 需要 を 喚起 し たと いう 観 点か ら捉 える
向 のメニュ ーを配 し、こ ちらも またワン クリック で商品
こ とができ るが、同時に 、ネッ ト販売シ ステムが コンピ
ペ ージに移 動でき るような 構造とし た。
ュ ータによ る自動 処理を多 用するこ とで 、今まで 扱いに
く く流通に 乗る機 会がなか ったニッ チ商品 を、低 コスト
こ のよ うに、 理解 しやす く利 便性 の高い 構成 にして 、
消 費者の利 用を促 進し、コンバ ージョン レートの 向上を
目 指した。
品 説明は女 性購買 層を意識 し、キャッチ コピーと 分かり
易 く上品な 文章と で構成し 、和洋 を取り混 ぜ、美 しくス
マ ートなレ イアウ トとした 。同 一シリー ズの商品 でペー
ジ が分かれ る場合 は、ペ ージ右 上にリン ク用の小 画像を
配 し、そ こから 関連商品 のペー ジにワン クリック で移動
で きるよう にした 。
図4
商品 ページ
3.6 オリジ ナルキ ャラクタ ーの活 用
キ ャラクタ ーを使 った商品 やコンテ ンツを 作成、公開
し て、キ ャラク ターに興 味を持 った消費 者の好奇 心に対
図2
トッ プペー ジ
応 できるよ うにし た。
具 体的には 、既に 記した ように、平成 16年度に開 発し
た キャラ クター 食器 1)を 消費 者に魅 力ある 子供用 セット
に 構成 、「おや つタイ ムセット 」と して 、当サイ ト限定
の 特色ある 商品と して商品 ラインナ ップに 加えた 。また 、
キ ャラクタ ー画像 のバナー により 、女性 好みのか わいく
親 しみやす い雰囲 気を出し た。さ らに、消費者が 楽しみ
な がら、焼物の魅 力を理 解できる 、焼物 プロモー ション
コ ンテンツ として 、キャ ラクタ ーを活用 したスト ーリー
性 のあるデ ジタル スライド ショーを 製作し 、サイ ト内に
配 した。
4.結び
本 研 究で は イン タ ーネ ット 上 に見 ら れる 陶磁 器 コン
図3
イン デック スページ
テ ンツを分 析し 、特に デザイン 面から 、視覚 的、感覚的
に 一般 の消費 者に 受け入 れら れやす い魅 力的な 商用 web
3.5 商品ペ ージ構 成
サ イト のモデ ルを 提示し 、産 地組合 が webシ ョッ プ陶磁
個別商品 ページ は、商 品の魅 力や用途 を視覚的 に伝達
王 の名 前で 2006年 2月から 実際に 運用 を開始 する 極めて
す ることを 主眼と した。具体 的には、図 4 に示すよう に、
実 践的なシ ステム を構築し た。サイトの 作成に当 たって
消 費 者の ラ イフ スタ イ ルに 合 った 商品 の 使用 シー ンな
は 、オリ ジナルキ ャラク ターを 、プロモ ーション コンテ
ど を 美し く コー ディ ネ ート し た大 きめ の メイ ン画 像を
ン ツと販売 用キャ ラクター 商品の二 面から 活用し 、特に
中 央に 配置し 、そ れを補 足す る形で 詳細 な商品 情報 と、
女 性消費者 にとっ て楽しく 親しみや すく 、安心で きるよ
必 要に応じ て説明 用の画像 を添えて 上品に 構成した 。商
う 工夫を凝 らした 構成を心 がけた。
終 わりに 、産地 と公設試 一丸とな っての 販売に対 する
の 悪化など を拭い 去る日が 来ること を期待 したい。
こ のような 努力が 、嘗て 一世を 風靡した 大量生産 方式に
文献
よ る コス ト ダウ ンと い うビ ジ ネス モデ ル がも たら した
数 々の弊害 、例 えば製品 に対す る思い入 れの希薄 化が招
い た技術力 の低下 や、価 格低下 によるブ ランドイ メージ
1 )倉地 ほか : 愛知 県産 業技 術研究 所研 究報 告,4 ,120
(2004)