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ビケンワクチンニュース
【2002年11月号】
先天性風疹症候群:妊娠と風疹
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「三日はしか」とも呼ばれる風疹は,幼児や子供たちがかかりやすいウイルス性の疾患で,春から初夏に
かけて不規則に流行します.症状は,発疹,リンパ節腫脹,発熱等が主で,1~3日でおさまる比較的軽い
病気です.
ところが,妊婦が風疹にかかると「先天性風疹症候群」と呼ばれる先天性の病気を持つ子供が生まれる
確率が高くなります.風疹自体の症状は軽いのですが,妊婦にとっては実はとても怖い病気です.
妊娠初期~中期(4週~16週頃)は,胎児が様々な器官を形成している大事な期間です.この期間に風
疹にかかると,胎児 に 奇形を起こす可能性が生じ,妊娠初期であればあるほど,その影響は大きいと 言 わ
れています.主な疾患は,表1のようなものです.
よって,風疹に対する予防が大切です.抗体検査をして,もし免疫が無ければ妊娠の前に風疹ワクチン
の接種が必要でしょう.過去に風疹にかかったかどうか分からない場合も,ワクチン接種を受けても問題あ
りません.なお,妊娠中のワクチンの接種は出来ません.
最近の報告で,妊婦に対する全国調査を行ったところ,1995年に女子中学生の予防接種義務が廃止さ
れた以降の年代では風疹の抗体を持っていない割合が廃止前の約3倍に増加していることが分かりました
(表2).現在,風疹ワクチンは「定期一類疾病予防接種」に指定されており,対象年齢では無料で接種でき
ますが,平成15年10月1日から,対象年齢が変更になります.対象年齢外では有料の接種となります.
平成15年9月30日まで:生後12月以上90月未満及び*1979年(昭和54年)4月2日~1987年(昭和62
年)10月1日までの間に生まれた14才以上の者.
平成15年10月1日から :生後12月以上90月未満.
<表1>
*眼症状(白内障,緑内障など)
*聴力障害(感音性難聴など)
*先天性心疾患
*網膜症
*骨端発育障害
*低出産時体重
*血小板減少性紫斑病
*肝障害
<表2>
風しんの抗体を持っていない妊婦の割合
(2001年全国133医療機関にて妊婦8,204名回答 日本産婦人科医
会調査)
19 歳以下
20 歳以上
16%
5%
【参考資料】日本産婦人科医会報9月号(第54巻第9号No.630)
新平成6年政令附則第3条
★☆★☆★ 海外インフルエンザ流行情報(6月-9月期) ★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
★ブラジル:
A型,B型の感染が散発的に起
きている.9月現在も子供を中
心に患者の発生は続いている.
★チリ:
A型(H1N1)が集団発生を引き
起こし続けている.
★アルゼンチン:
6月から8月にかけて1-15歳を中心にB
型の地域的な流行がみられていたが,9
月に入り散発的なレベルになった.
★香港:
A型(H3N2)の散発的な発生が続い
ている.
★オーストラリア:
A型,B型ウイルスの集団感染
がみられるが,A型(H3N2)が
優勢である.
★マダガスカル:
7月4日から8月7日までに1291名の患者と156名の死亡が確認された.
(WHO:Weekly Epidemiological Record より)
企画編集
:財団法人阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp)
11月号担当 :藤田,福田,村木,白川,糸川,佐伯,西川,伊野木,片桐
発行
:財団法人阪大微生物病研究会/田辺製薬株式会社