植物育成を指向した多孔性ハイドロゲルの開発

平成27年度共同研究
材料分野
植物育成を指向した多孔性ハイドロゲルの開発
担当部所
: 栃木県産業技術センター 材料技術部
共同研究者 : 株式会社イングス
背景
壁面緑化施工時の垂直壁面における土壌の保水性向上を目的に、
吸水性ポリマー(ハイドロゲル)が利用されている。しかしながら、土
壌とハイドロゲル間で水分の引き合いが生じ、土壌側が乾燥気味に
なる事例も見受けられる。加えて植物の根はハイドロゲルに進入せ
ず、土壌側に張り出していることから、土壌側を保水するために灌
水装置を用いた連続的な散水が必要となっており、装置の維持管
理費や散水量の低減が課題となっている。そのため植物の根の生
育を阻害せず、かつ優れた保水性能を有する植物育成材料が求め
られている。
図1 壁面緑化(垂直植栽)の一例
研究目標と結果
研究目標
●多孔性ゲルの含水率は40%以上を目標とする。
●慣行土壌に対する多孔性ゲルの保水性と保肥性を調べ、その具体的性能を明らかにする。
実施内容
① 多孔性HECゲルの合成
② 多孔性HECゲルの保肥性評価
図3 多孔性HECゲルの保肥性
多孔構造導入*)
( * 多孔構造の導入は独自技術による)
多孔性ゲルのNO3- , PO43-の溶出は緩やか
図2 多孔性HECゲルの合成
③ 多孔性HECゲルの保水性評価
試験環境:20℃恒温室
④ 多孔性HECゲルを用いた白菜の育苗試験
表1 育苗試験結果
5日間の潅水抑制条件にて育苗
した結果、気孔径2.40mm、気孔
率10%ゲル培地が最も苗の生
育に優れた。
図4 多孔性HECゲルの保水性評価
吸水能力(膨潤度)は慣行土壌の7~12倍
含水率の減少は240時間で2%程度
生育に適した気孔径や気孔率の
バランスが重要と考えられる。
まとめ
●HECを用いて含水率95%以上の多孔性HECゲルを合成できた。
●多孔性ゲルからの肥料成分溶出はNO3-、PO43-で緩やかであり、K+、NH4+では4、5回の潅水で慣行土
壌を上回った。
●気孔径2.40mm、気孔率10%ゲルを用いた培地が最も苗の生育に優れた。
ご来場の皆様へ
問い合わせ先:栃木県産業技術センター 材料技術部 TEL 028(670)3397
植物の節水・節肥栽培への利用が期待されます。
土を使用しない植物栽培への利用が期待されます。
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