ス イス WHO本部 - 放射線遺伝学教室

WHO 本部でのインターンシップ報告書
京都大学医学部医学科
山崎
友寿里
実施期間:8月20日∼9月28日(六週間)
部署:Neglected Tropical Diseases (顧みられない感染症)
1. 経緯
小学生のころ読んでいたマザーテレサの伝記で、フィールドで実際に人々を助ける
NGO などの発展途上国の医療活動に興味を持ち、その後、全世界的な広い視野から問題
を捉える重要性を感じていた。
京都大学に進学した理由としても社会医学の講義が充実しており、また人類全体のため
の医学知識の創造という研究面も充実していることが挙げられた。入学当初は医学研究者
としての新たな知識の創造にも興味があり、二年生の時にイギリスの研究室に2ヶ月留学
した。その後、行政面からのアプローチに対する興味が強くなっていった。行政面から保
健医療に関わる医師としては、国内では厚生労働省の医系技官、国立感染症研究所など政
府機関の職員、国際的に見ると、WHO など国際機関の職員が挙げられる。
各国、各 NGO の協調を図りながら人々の健康を推進するための道筋を示していく WHO
の役割に強い魅力を感じ、インターンについてもネット上で調べていた。しかし、基本的
には大学院生以上が対象であり、実務経験があったほうがよいということ、またコネクシ
ョンがあったほうがよいということで、卒業後機会を得たいと考えていた。
今回、特殊感染の講義でインターンの話が少しあり、川崎市衛生研究所長の岡部信彦先
生にお願いし、インターンの機会を得ることができた。願っているところに来たまたとな
い機会であり、インターンの可能性が見えた時の興奮は忘れがたいものであった。発展途
上国の医療に興味があること、また医学部の講義で感染症に興味を持っていたことから
NTD に受け入れて頂くこととなった。また NTD にてリンパ系フィラリア症制圧のための
世界プログラムに取り組んでいらっしゃる一盛和世氏、矢島綾氏のもとでインターンが決
定した。
2. 準備
社会疫学教室の木原正博教授にご指導をお願いした。研究室では社会疫学の基礎につい
て学び、各国からの大学院生から感染症の状況・研究について伺い、WHO 神戸センター
でインターン経験のある大学院生からインターンについてお話を聞くことができた。また
Global Fund で働く先生に講演いただいたり、東南アジア研究所の西渕正昭教授から東南ア
ジアにおける感染症の動向について伺ったりすることができた。
また、岡部先生の計らいで、国立感染症研究所情報センターにて研修を行えることとな
った。日本国内での感染症の動向や、それをコントロールするための機構、国際協力への
取り組みを学び、また WHO に出向しておられた方から事前に話しを伺うことができた。
リンパ系フィラリア症や他の NTD 疾患について理解を深めるため、WHO の web site 上
の文献や、図書館の熱帯医学の教科書を読んだ。
WHO の感染症における働きをしる目的で尾身茂先生の執筆された『WHO をゆく‐感染
症との闘いを超えて』ではポリオ、SARS、新型インフルエンザに対する尾身先生の活動
内容であり、非常に参考になった。
英語については、イギリスでの滞在経験や、留学生のホームステイ受け入れ体験から、
一対一の日常会話についてあまり不安はなかった。集団での会話やディスカッションにな
ると難しいと自覚していたので TED というサークルに参加したり TOEFL の勉強をしたり、
なるべく英語にふれるようにした。
フランス語については、将来役立つ可能性をみこして一年前に勉強を始めていた。
WHO 内でもジュネーブで暮らすにも、フランス語が話せた方がよいということで、今年
に入ってから勉強を加速した。
それから事務的な準備として、書類として CV, Cover letter を書いた。その作成に際して
は、図書館の本や友人による添削が助けとなった。
3. 目的
1) WHO 内部で働くことで WHO についての理解を深める
(1) WHO の具体的な仕事
(2) WHO 職員の生活
(3) WHO 職員の素質
2)自分のキャリアパスについて考える
(1) 大学院への進学、臨床医としての経験
(2) 国際機関で働くということ
4. WHO での業務
1)NTD 疾患一覧の表アップデート
NTD に関する WHO のホームページ、出版物から情報を集め、アップデートした。
今までなかった reference を付け加え、NTD における主な戦略に基づいて表の形式を
整え、なるべく最新の情報を集めてアップデートした。対策が少しずつ変化し、統合さ
れていく様子を捉えることができ、興味深いものであった。
こうして一枚の表にまとめることで、NTD に含まれる疾患について理解を広められ
ることに役立てたことを嬉しく思った。
2) 本棚整理
フィラリアプログラムの今までの出版物の整理を行った。
年代ごと、種類ごとにすっきりとまとめることができたこ
の作業を通して、毎年 Annual Report を出版してプログラム
を振り返っていることや、TDR という熱帯病についての研
究・トレーニングに関するプログラムによる会議が開かれ
ていること、啓発のための出版物やトレーニング用の出版
物など、様々な活動・出版によってフィラリアプログラム
が形作られていることが分った。またフィラリア制圧のた
めの世界プログラムが始まる以前の各国の資料、非公式議
の資料から、次第に注目が高まりプログラムとして結集さ
れていく様子を見ることができた。そういった動向を捉え、
プログラムの必要性と有用性を示し、推進していった WHO
の努力も知ることができた。
3)文献の日本語訳
①「リンパ系フィラリア症制圧のための世界戦略(要約)」の翻訳
②「マラリアとフィラリアに対するベクター対策の統合」の翻訳
日本語のネイティブとして役に立てる、一番成果の出しやすい仕事だった。いずれ論
文として学会誌に掲載か、一般向けの配布物に使用されるとのことであった。
4)historical review の資料作り
WHO 創設当初からのフィラリア対策の歴史
を出版物としてまとめる計画があり、このため
に集められた資料から必要な情報を取り出して、
表にまとめた。
執筆にあったっておられるウィーンの女医さ
ん、スーパーバイザーのお二人と、意見をまと
めていく難しさを感じた。これには自分の意見
を持って、しっかりと伝えていく必要がある。
インターンの意見も同等に尊重されることに、
責任感を覚え、また喜びを感じた。
5)スーパーバイザーである一盛先生の出席会議一覧作り
2010 年秋から 2012 年夏までの会議を一覧にまとめた。先生の世界を飛び回る慌し
い生活を実感した。これにより WHO という国際機関で働くこと、またプログラムを推
進していく一歩一歩を感じとることができた。
5. WHO の仕事について
1)具体的な仕事について
プログラム推進のための戦略作り、出版物の編集、会議の主催・取りまとめ、ガイド
ラインの設定などが行われていた。必要な対策の基盤を作り、各国・NGO・研究機関・
民間企業などの活動を調和させ触媒していくのは、人々の健康を確保していく上で重要
であり、挑戦的な仕事だと感じた。
2)WHO 職員の生活について
多くの職員が朝九時ごろ出勤、五時ごろ帰宅である。しかしこれはその人の働き方のス
タイルにもよるし、その時期の忙しさにもよるようだった。昼休みも二時間ほどあり、コ
ーヒーブレイクをとる職員も多かった。昼休みに近くの公園にいくとランニングをしてい
る職員をよく見かけた。昼休み、コーヒーは仕事上の相談を兼ねることも多く、純粋な休
憩というわけではなさそうだった。常にベストコンディションで仕事をするためのセルフ
マネジメントが大切なのだろうと思った。
3)WHO 職員の素質
WHO の目的は、人類全体に最高水準の健康を確保するという、ダイナミックなもので
ある。しかし、それに向けての努力は地道なものであった。着実にその努力は進められ、
少しずつうねるような進歩をみせている。向上を目指して、多くの人々を巻き込み、風を
起こしていく、創造的な面白みがあると思った。また、後に振り返り甲斐のある、やりが
いの大きい仕事だと思った。
働く職員の専門性が高く、特に NTD では一つの疾患に一人の責任者が担当するので、
この疾患対策に人生を捧げているという凄味を感じた。
WHO で仕事をしていくには、自分なりのパッション、芯の強さ、地道な努力、世界の
動向を捉える力、他人に訴えかける説得力など、様々な素質を身につける必要があると感
じた。
6. その他
1)インターン同士との出会い
インターンランチ、インターン飲み会が
毎週あり、また寮にも国連機関のインター
ンが多く、話す機会に恵まれていた。イン
テリジェンスの高い集団であり、トリリン
ガル・テトラリンガルも多く、刺激的だっ
た。彼らとは、身近な雑談から、国際問題
などの高度な話まで様々な会話を交わした。
寮の人たちは姉妹のように打ち解け、出会
えたことに感謝している。日本人のインタ
ーンの人たちとも出会い、色々とお話を聞けて参考にもなった。また、基本的に私よりも
三つ四つ年長の人が多く、三年後・四年後という身近な理想像を持つこともできた。イン
ターンの中でも年少で経験不足な面はあったが、十分得るものは多かった。
7. 謝辞
ジュネーブにて親身になってご指導いただいた一盛和世先生、矢島綾先生、また、中谷
比呂樹先生、橘薫子先生、江副聡先生、進藤奈保子先生、また国立感染症研究所情報セン
ター長大石和徳先生はじめ情報センターの方々、川崎市衛生研究所岡部信彦先生、京都大
学社会疫学教室木原正博教授はじめ社会疫学教室の方々、京都大学医学部付属病院副病院
長一山智教授、京都大学放射腺遺伝学教室武田俊一教授、船場森野クリニック病院長森野
高晴先生、京都大学医学部芝蘭会、ならびにお世話になった方々皆様に深く御礼申し上げ
ます。
WHO インターン
実用編
山﨑
友寿里
① 応募方法
インターンに来ている人のうちコネクションできている人が半分、正式に応募してき
ている人が半分ぐらいです。私の場合は、特殊感染症の講義でお会いした岡部先生にお
願いして WHO の進藤奈保子先生に紹介して頂きました。
おそらくマイコースで WHO のインターンというのは初めてだと思います。人脈をつ
かむのも自分からですし、本当に幸運に恵まれたという気持ちでいます。後輩の方で興
味がある人がいれば、あきらめずに自分でチャンスを是非つかみにいってもらいたいで
す。ただし、WHO のインターンは一人一回までと決まっています。また基本的に大学
院生対象であり、即戦力が求められるというものなので、条件の詳細については HP を
参照してみてください。日本の医学生が申し込む場合、公式に応募しても First Degree
がないため条件を満たしていません。なんらかのコネクションが必要となるので受け入
れてもらえる部署は限られると思います。何か質問があればお気軽に連絡ください。
② WHO インターンの仕事
勤務時間:9:00~12:00, 14:00~17:30 が基本です。
インターンに任される仕事はインターン自身のスキル、部署、スーパーバイザーによ
って大きく変わります。文献を集めたり、文献から必要な情報をレビューしたり、会議
の調節をしたりといったお手伝いから、本当にスタッフと変わらない仕事をしている人
もいます。インターンであっても、WHO 内で職員と同じ権利を持ち、責任があること
が印象的でした。
③ インターン委員会
WHO のインターンコミュニティは大規模で流動的です。どこの部署にも大抵インタ
ーンがいて、私のいた期間で最大 80 人ほどいました。期間は六週間から六カ月まで人
により様々です。インターンを取りまとめるためインターン委員会が組織されており、
毎週月曜日に会議が開かれ、委員会のメンバーの決定や今週の予定の話し合いが行われ
ます。またインターンに対するアンケートも実施しています。Face Book のグループ、
インターン専用の HP、メーリングリストによって情報が公開、交換されています。
イベント
・インターンミーティング
・ランチョンセミナー
・UN ランチ(UN 関連機関のインターン同士で色々な UN 機関のカフェに行ってラン
チする)
・UN ドリンク(ジュネーブ市内の Bar での飲み会。インターンバッチを持っていると
割引がある)
・ヨガ・ズンバのレッスン(仕事の終わる 17:30 頃から WHO 内のジムにて開催)
・サッカーの試合、ランニング(17:30 頃から)
などのアクティビティがあります。他にも週末のピクニックなど自由参加のイベントが
色々あります。
④ ジュネーブの生活
(写真:朝やけのレマン湖)
・治安
基本的に治安は良いですが、コルナバン駅の周辺とプランパレという広場の周辺など
夜になると危ない所もあります。現地の方からなるべく情報を早く聞いておくとよいで
す。スリも増えてきたとのことです。
・物価
物価はすぐそばのフランスと比較するととても高いです。日本と比較すると物によ
ります。野菜・乳製品・穀類・チーズ・ワイン・チョコレートなどは日本よりも安い
です。お肉・お魚・加工食品はかなり高いです。それから、市中のスーパーで 1.2 フラ
ンのコカコーラが、駅のスーパーでは 1.8 フラン、駅の売店では 2.9 フラン、空港の売
店では 4.8 フラン(!!) というように、場所によって値段がかなり変わってしまいます。
タクシーは日本とあまり変わりません。バスは定期券(ユース料金)がお得です。
・観光
ジュネーブは交通アクセスが良いです。空港も駅もすぐ近くです。
私は土日にハードなことをするのは避けていたので、電車で行ける範囲で観光して
いました。スイスの鉄道は結構値段がするので切符を買う時にびっくりすることもあ
りました。(一時間ぐらいの距離で片道 50 フラン。)電車をよく利用する人には
Half fare card がおすすめです。詳しくは SBB の HP で調べてみてください。
それから TGV という特急でフランスのパリ、リヨンに行ってきました。現地で間近
にチケットを取ると平日に Rail Europe のオフィスに行かないといけないので、事前
に取っておくことをお勧めします。バスでもフランスのアヌシーやシャモニに直通バ
スがあり、一時間半ほどで可愛らしい観光地に到着します。
・スーパー、デパート
Manor(コルナバン駅近くのデパート)
Coop、Migros(スーパー)
私は帰り道に Manor によく行っていました。
お肉・お魚は量り売りですが店員さんはほとんど
フランス語なのでご注意を。数字は紙に書くなど
工夫するとよいです
(写真:近くの Coop)
⑤ 家探しについて
ジュネーブで家を探すのは大変です。ジュネーブ大学の学生の休みと重なれば、彼ら
のいない間の寮が空いているはずなので、そこからあたってみるのがいいと思います。
ジュネーブ大学の HP にいくつか寮が紹介されています。
自分で部屋を確保する際、事前にデポジットを払うように要求されることが多いです。
インターネットだけの情報だと、そのアパートが実在しておらず詐欺にあう危険もあり
ます。デポジットが無駄になるだけでなく住居もなくなってしまうので現地の方に確認
してもらうなど対策を考えておきましょう。
⑥ 日本から持って行くと便利なもの
・日本食品
濃口醤油、みりん、ごま油などは結構スーパーやアジア食品店で手に入ります。
① 味噌汁のもと:小分けですぐに作れて便利。調味料にも。
② だしぱっく、だし醤油:煮物用に。だしパックは軽くて便利
③ 高野豆腐:調味料つきのものが便利
④ おもち:もちもち食感のものはなかなかありません
(ジュネーブで発見したこと)
リゾット用のお米は日本のお米と似ています。スーパーですぐ手に入ります。
リゾット用のお米も洗って、お鍋で炊けばかなり白米に近くなります!
お鍋に冷たい水とお米と 1:1 ぐらいいれて強火で沸かしてから、ふたをして弱火から中
火で水がなくなるまで煮て、火をとめて 10 分くらいむらします。水は足りなければ適
宜足してください。お米の硬さも煮ながら調節できます。
・カード類
ほとんどのお店で VISA を使うことができました。キャッシュカードは新生銀行を利
用していました。こちらも市内各所で使うことができとても便利でした。
・プラグ変換機、変圧機
二年前イギリスに行った時に忘れていて日本から送ってもらうはめになりました。
ないとかなり不便なので気をつけましょう。今回は二日目に変圧機を壊しましたが、
最近のパソコン、携帯、カメラは変圧機なしで使えることが多いようです。
⑦ 事前にしらべておくとよいこと
・最寄のバス停、駅の地図、時刻表:プリントアウトしておくとよいです
・最寄のスーパーと営業時間:プリントアウトしておくとよいです
・緊急時の連絡先:救急時、消防、警察などの情報や日本大使館の情報は携帯にあらか
じめ登録しておくと安心です
・キャッシュ ATM の所在地
・携帯電話会社の場所:もし必要になったらプリペイド携帯が便利です。WHO 内のポ
ストオフィスでも購入できます。