日中韓三国協力国際フォーラム2015

「日中韓三国協力国際フォーラム2015」出席メモ
2015年4月3日
公益財団法人日本国際フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局
さる2015年4月3日(金)、日中韓三国協力事務局(Trilateral Cooperation Secretariat:TCS)
の主催により、東京・京王プラザホテル(新宿)にて開催された「日中韓三国協力国際フォーラ
ム2015(International Forum for Trilateral Cooperation 2015 : IFTC 2015)」において、当フォーラ
ム伊藤憲一理事長(東アジア共同体評議会会長)が発表者として招かれたところ、その概要は下
記の通りであった。
なお、本フォーラムは、日中韓の政府高官や有識者が一同に会して議論を行う場として、TCS
主催のもとで 2011 年より毎年ソウルで開催されていたが、今回初めて東京で行われたものである。
1.日時:2015年4月3日(金)10時より17時20分まで
2.場所:東京・京王プラザホテル(新宿)Concord Ballroom
3.出席者:約350名
4.プログラム:
詳細は別添「日中韓三国協力国際フォーラム2015プログラム」のとおりであるが、本フォ
ーラムは「三国協力の新たな段階を迎えて:諸課題と克服への道」を総合テーマに、オープニン
グの他、4つのセッションにて開催された。
5.伊藤憲一理事長のスピーチ:
伊藤理事長は、セッション2「平和と協力に向けた北東アジア:共通安全保障に関する三国対
話メカニズムの模索」の発表者としてスピーチ(10分)を行ったところ、その全文は以下のと
おりである。
皆さん、今日は。日本国際フォーラム理事長および東アジア共同体評議会会長の伊藤憲一でご
ざいます。この度は、日中韓三国協力事務局主催による「日中韓三国協力国際フォーラム201
5」にお招きいただき、大変光栄に思っております。このフォーラムは、2011年より毎年ソ
ウルで開催され、4回目にして初めて東京にお迎えするわけですが、過去3回のフォーラムは、
いずれも日中韓三国間の貴重な対話の機会となっていたと伺っております。そのような重要なフ
ォーラムにお招きいただきたましたことにつき、改めて主催者である日中韓三国協力事務局、特
に本セッションの司会を担当される岩谷滋雄事務局長様に、感謝申し上げる次第です。
この度のフォーラムでは、
「三国協力の新たな段階を迎えて:諸課題と克服への道」が総合テー
マ、
「平和と協力に向けた北東アジア:共通安全保障に関する三国対話メカニズムの模索」が本セ
ッションのテーマとして設定されておりますが、さる3月21日に4年ぶりに「日中韓外相会議」
が開催され、今後首脳同士による「日中韓サミット」も開催される気運が高まっていることを考
えれば、これらのテーマの設定はまさに時宜を得たものであるといえます。
さて、東アジアにおいては、APT(ASEAN plus Three)、EAS(East Asian Summit) などの枠組
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みを中心に、経済、金融、防災、エネルギーなど、様々な機能的協力および統合を進展させてい
る一方で、安全保障分野においてはARF(ASEAN Regional Forum) や6者会合(Six Party Talk) な
どがあるとはいえ、欧州安全保障協力機構(OSCE)のように、常設の事務局が設置され、大使級
の理事会が定期的に協議を行っているような確固たる安全保障メカニズムは未だ確立されており
ません。東アジアでは、東シナ海、南シナ海をはじめとする海域での国家間の対立に加え、海賊
やテロリズムなどの新たな脅威、そして感染症などの非伝統的安全保障上の脅威などの、広範囲
にわたる安全保障上の摩擦や衝突が顕在化しつつあり、包括的な安全保障協力メカニズムの構築
が強く求められております。そうした中、日中韓においては、2010 年の第3回日中韓サミットで
採択された「日中韓三国間協力ビジョン2020」で、三国間防衛対話設立の可能性を探究すべ
きことが合意されておりますが、その実現には程遠い現状にあったのがこの4年間でありました。
では、このように安全保障問題の分野における政府レベルの協議が進まない中で、今後東アジ
ア、とくに日中韓三国は、どのようにして安全保障協力のメカニズムを構築していくことが可能
でしょうか。私は、その突破口を開く可能性を持っているのは半官半民のトラック1.5や民間
のトラック2による対話と共同作業であると考えます。そこで、ご参考までに紹介したいと考え
ますのは、APT におけるNEAT(Network of East Asian Think Tanks) の活動状況です。
APTにおいては、首脳会議の傘下に、NEATと呼ばれるトラック2のシンクタンクの連合
体が組織されております。APTを構成する13カ国から1つずつのシンクタンクが参加してお
り、日本からは日本国際フォーラム(およびその姉妹団体である東アジア共同体評議会)が参加
しております。そもそもの話をすれば、NEATは、APT首脳会議の要請を受けて組織された
EAVG(East Asia Vision Group)という賢人会議が提出した報告書の中で提案されたものであり、
2003年のAPT外相会議で設立が承認された政府公認のシンクタンク・ネットワークです。
東アジア地域協力に知的支援を与えることを目的とするトラック2の国際組織ですが、その活動
は各国政府の要請に応えることを出発点にしていますから、トラック1とのリンケージを保持し
たトラック2です。NEATは年に一度総会を開催しておりますが、その総会で採択される政策
提言はAPT首脳会議に提出され、毎年必ず議長声明において留意、言及されています。その政
策提言には、様々な分野における具体的かつ実質的な方策が提起されているのですが、これらの
提言は、総会の前に組織されたテーマ別の複数の作業部会において専門家によって議論を重ね、
その成果を反映しています。これまで、防災、食糧安全保障、環境、金融などの様々な分野にお
いてAPT諸国の地域協力の強化を提言し、それらは実際の政府レベルの政策にも活用されてき
ました。
この機会に特記しておきたいのは、NEATの政策提言が、東アジア共同体構築の基礎となる
べき原則としてグッド・ガバナンス、法の支配、民主主義、人権、国際法などの普遍的価値の重
要性を指摘していることです。この指摘は、NEATにおいて日本が各国を粘り強く説得して、
最終的に同意を得られたものです。政府レベルでも、2007 年にシンガポールで開催された第10
回APT首脳会議で採択された「東アジア協力に関する第二共同声明」において「国際的に共有
された価値を支持」することが言及されるなど、東アジアの規範の醸成に寄与してきました。こ
のように、NEATの活動は、責任ある民間が先んじて、地域の規範や具体的な政策を打ち出し、
政府レベルの政策にも影響を与えてきた成功例であるといえるでしょう。
日中韓三国関係は、APTの不可分の一部を構成する関係ですから、APTにおけるNEAT
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の成功は、日中韓三国関係の将来にとって大きな励ましとなるものだと考えます。日中韓三国協
力においても、このようなトラック2やトラック1.5の対話を促進させることができれば、安
全保障メカニズムの構築に貢献することができると思います。今後、日中韓三国の協力がますま
す重要になる中で、シンクタンク・ネットワークをはじめとして様々なレベルで対話が実現し、
官民一丸となった三国協力の進展を図ることが重要であると考えます。ご清聴ありがとうござい
ました。
以上
文責事務局
別添.「日中韓三国協力国際フォーラム2015プログラム」
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