母豚のボディコンディションと飼養管理 繁殖豚の管理は農場成績の要 繁殖豚の成績が農場成績の基本であることは間違いありません。近年では母豚回転が高い農場ほど理想的なボ ディコンディションを示すようになってきました。育成豚の導入から繁殖豚に至る管理の結果が生産性にあわられると 同時にPRRS対策の効果が徐々にではじめます。母豚の更新率が40%としても2年かからなければ母豚の入れ替え ができないことに着目し、すぐに成果が上がらないことを十分周知の上で、じっくり取り組む必要があるでしょう。 一貫経営農場における離乳~肥育部分は農場の立地条件や疾病状況など子豚を取り巻く環境条件が大きく作用 するため、AI/AOや適正ピッグフローなどのシステム改善などハードの部分の作用が大きな生産部分と言えます。 農場の経営に果たす重要度の相対的な見方 * 農場の成績を上げるには:繁殖成績(>肥育成績)がまず重要です! * 繁殖の成績を上げるには:更新豚の育成・馴致の管理(適正なボディコン)を優先します (>繁殖豚のボディコン) 更新豚(繁殖豚)のボディコンが適正になる 分娩舎の食い込みが良くなる * 安定した肥育成績を得るには:健康な離乳子豚が必要ですし、その継続には 分娩母豚(繁殖豚)の健康サイクルが条件です!! 一方、子豚の育成で最も重要な子豚離乳、もっと言えば固形飼料を順調に食べるまでの間は、分娩舎の母豚の状 況をそのまま反映したといっても過言ではありません。この部分がより完璧に近いほど実は繁殖豚の問題は尐ないの です。逆にいえば離乳子豚の状況が余りよくない場合は、分娩舎だけでなく母豚や更新豚の健康状態に問題がある 場合が尐なくないのです。分娩・離乳・種付け・妊娠というサイクルをいかに遊ばせない様に効率よく回転させるかは、 細かな管理レベルに結びつくところが多く、養豚生産の核心であるソフトの部分なのです。 その中核をなすボディコンディション管理を今一度おさらいしてもらいましょう。リーンメーター(背脂肪厚計)を用いた 細かい管理を導入することによって、管理者によるバラツキやブレも尐なくなり、多くの農場で客観的に母豚が管理で きるようになって成績面でも安定化しつつあるのは単なる偶然ではありません。 ボディコンディション管理の重要性 繁殖豚の給餌プログラムが最近の研究により見直されています(次の図)。離乳後からフラッシングをして種付け直後 の給餌量を低く抑えられる(1.8~2.0kg)ところは、ほとんどの農場で基本とされている管理ですが、ボディーコンディ ション(背脂肪厚)に応じて妊娠鑑定時期以降の給餌量の別表に応じて勘案することで、種豚飼料の総使用量を抑え、 かつ結果的に生産成績が向上させることが分かってきました。 一般に妊娠期のコンディションをうまく整えると、分娩 舎でなんとか無理して食べさせる事もなく、労せずどんどん食べて、また自身はそれほど痩せることなく良い離乳成績 を出すことが出来ます(事故率も抑え、離乳体重も大きくなる)。 種豚給餌プログラム (kg/日) 7 ⑥6.5~8.0 6 5 ① 3.5~4.0 4 ④ +0.5~1.0 ②1.8~2.5 ③1.8~3.5(確定後) 3 2 2.0 ⑤ 1 2.0 種付後3~4日 25日(画像式鑑定) 4~7日 離 乳 種 付 妊 鑑 112 B C 授乳用 離乳 分娩 分 娩 種豚用 プログラム プログラム2 100 種豚用 授乳用 授乳 授乳用 生時体重を大きくしようとするあまり、早くから増飼いすることは逆効果といわれています。生時体重が大きくなるどこ ろか、ばらつきや母豚自体のオーバーコンディションを生じます。この目的の増し飼いは、種付け100日以降の12日 間だけで十分です。グループの中には常時適正なコンディション作りができていて、十分な栄養と細かな飼養管理を 施すことで、特に増し飼いを必要としないほどに完成される農場もあるほどです。 また産子数を増やすためには、種付け以降の適切な飼養管理が欠かせません。種付直後から鑑定までの管理は特 に重要ですので、問題が指摘されている農場は確認作業を行いましょう。また種付後に給餌量をベースに戻すと記述 しましたが、更新豚はベースが低くなりすぎないように注意する必要があります。体を維持するほかに自分自身も育っ ているからです。そのために初産豚は特に入念に背脂肪と給餌量のチェックする必要があります。 背脂肪測定のポイントと注意 多尐の育種的な差異よりも豚群内での背脂肪厚のばらつきが尐ないことのほうが重要です。均一適正なボディコン ディションになってくれれば、分娩も軽くなりその結果として母豚に課せられた子豚を大きく育てる本能にかなって、必 要なエネルギーやミネラルアミノ酸を十分摂取し大仕事をこなすことができるのです。そのための分娩舎導入時の母 豚背脂肪厚の目標は、更新豚、経産母豚問わず、P2 点で 19mm です(更新豚の場合には最大 21mm まで許容範囲)。 離乳時は、17~19mm の範囲を目標としますが、コンディションが整ってくると極端に太ったり痩せたりする豚は尐なく なります。 どうしても管理者の好みが出てしまうのが触診によるボディコンです。数字によるスコア付けもいいですが、リーンメー ターを利用した客観的な数字の方が、初心者や若い管理者には向いているかもしれません。規模が小さくても、繁殖 豚の成績を安定させる目標は同じです。当初は無駄な飼料が妊娠舎で節約できるのではないかと考えましたが、そう いった農場も一部にはありますが、むしろ母豚の状態が改善すると分娩舎での食い込みが増し、それが子豚の育成 にプラスの影響を与えることの方が大きな効果として実感できました。更新豚についてはできるだけ太らせないで種付 けしますが、自身もまだ成長期ですから、よりこまめなチェックが必要です。 リーンメーターによるP2背脂肪厚測定部位の写真 最後肋骨部位の正中線(背骨の上)から左右に6~7cm離れた部位 正中線(背骨の真上) やや内側にロースに 対し真っ直ぐに * 当てる位置が後ろよりになりがちなので最後肋骨に赤線を引いて行うと数値が安定する。 * プローブをやや内側(センターより)に向けることも隠れた秘密です。 また、数年来グループで実際に実施してきた結果、体型はそろうが若干やせ気味に揃う傾向があることもわかってき ました。これにはいろいろな要因がありますが、目標の背脂肪厚を微調整しながら、適切なコンディションを群として安 定的に捉えていく必要があるようです。 体重 180kg で背脂肪 14mm の場合の給餌量: 妊娠中に目標となる体重増加重量は約 25kg です。背脂肪厚に換算して 5mm の増加を達成するために妊娠中は一日 2.3kg 与えなければなりません。妊娠 100 日以降は+1kg 増量で 3.3kg になります。 これはあくまでもコーン大豆ミールをベースとしたアメリカの指標ですが、使用育種能力、環境要因などを勘案して解釈には注 意してください その他のヒント(給餌量の補正) 母豚の状態や豚舎の環境等で若干の調整は不可欠です。以下のワンポイントを参考に管理に役立てましょう。 ●スコップの実測 手ぐれの農場ではスコップの1杯が何kgかを調べておくべきです。知らず知らずに与える無駄なえさが悲惨な勘 違いにつながります。 自動給餌器には、重量計のついたものもありますが、目盛りがあろうがなかろうがかならずしかるべき量が重量ベ ースで把握できるように適宜チェックが必要です。 ●妊娠中増体重量 初産の種付から分娩までの増体目標はおよそ 30kg、経産豚については 25~50 kg を目標とします。 ●母豚産次 4・5 産の豚は妊娠中・後期に給餌量が不足すると、産子数は多くても産子体重が小さくなる事があります。あまりや せ過ぎると弊害が大きいので補正が必要です。母豚の体重を測定する習慣や測りがないので大きくなった母豚の 真の体重は推測でしかわからないので見誤るのです。つまり背脂肪厚はわかっても正しい給餌量が表から読み取 れない恐れがあるのです。 ●フィーダーの構造 ストール豚舎の母豚飼槽の仕切りが破損していると隣の母豚へ餌を送ってしまう母豚や横取りする母豚が現わ れます。これでは適正な飼養管理ができませんので、飼料の無駄に大きくつながります。両隣の母豚のコンディショ ンがその指標となりますので、良く観察してできるだけ早く修理しましょう。 ●温度補正 舎内温度が平均 18℃より1℃低下するに伴い餌の量は 50~60 グラム増やします。たとえば室温 18℃で 3.0kg 与 えるところを、室温 13℃(基本より-5℃)になれば 3.3kg 給餌しなければなりません。特に冬期の気温の低い地区、 豚舎では注意しましょう。育種によっても違いますが、増飼いをしないと母豚コンディションが狂ってくるばかりか、免 疫力も低下します。 ●便秘予防 分娩舎導入後(分娩前4~7 日)はフスマを 20~25%添加することで便秘を自然に防ぎます。あるいは硫酸ナトリウ ム(硫酸マグネシウムよりも良い)を一日量 40g(糞の状態により増減)を目安に餌に混ぜても効果がありますが、腹 痛を伴う副作用の危険もあります。これを用いる際は完全に飼料に混ぜ、塊ができないように注意することが必要で す。分娩後も糞が固い場合にはさらに 3~4 日続ける必要もあります。 見事にボディコンが揃った 分娩を待つ母豚たち。大勢の 見学者たちにもおとなしい 豚は成績もよい。 f ややオーバー気味な母豚(左)と痩せすぎの母豚(妊娠中期)。 背脂肪厚(P2)は左が23mm、右が12mmであった。どちらのタイプも共存する場合は繁殖成績が不安定になる ・/ 2008 年 6 月 グローバルピッグファーム㈱ 。
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