35.「低く座し、高く考える」

35.「低く座し、高く考える」
(1)掃除をする。
「社長自ら掃除ですか」「気合いが入ってますね」と声をかけれれた。
舞浜の一戸建てのオープンルームをやっていた時である。 中古住宅の販売を頼まれたら、
自分で掃除をするのは当たり前のことなので、「あっ、人からは、そう見えるのか」「他
社ではそうじゃないのかな」「そう言えば、我が社の社員もあんまり掃除には熱心ではな
いなあ」と思った。
その家は、舞浜3丁目のメインストリートの東南西の角地にあり、買った時は¥2億2,00
0万もした家なので、さすがに素晴らしい部材を使い、建物の傷みも少なく、未だにしっ
かりしているが、10年位住んでいなかったので、家中の汚れを取るためにプロの掃除屋さ
んにハウスクリーニングを依頼した。
オープン前日の夕方、見に行くと、家の内部は綺麗になっていたが、なんと玄関ドアー
の取手が錆びたままである。
となく生気が失せている。
合いそうもない。
きだした。
生け垣は不揃いで、車庫や家の周辺が薄汚れた感じで、何
担当者にダメ出しの連絡はしたが、明日のオープンには間に
そこで、車を飛ばしてボンスターを買ってきて、自分でドアノブを磨
ドアが綺麗になったら、玄関周りや車庫の汚れが気になって仕方がない。
後ろの水道からホースを引き延ばして、水洗いを始めた。
辺の汚れが気になる。
一カ所綺麗になると、その周
結局、よく見えなくなる7時頃まで、家の周囲の外壁と床の全部
の掃除をすることになってしまった。
そして、オープン当日の朝、現地に行ったら、室
内はコーディネーターの社員が絵と家具と花で飾り付けをしてくれて見違えるようにいい
部屋になった。
い。
生垣も剪定して、花を植えてくれた。
家全体が眠っていて、生きている気がしない。
でも、まだなんだか物足りな
どうしようか?
今できることは、もう掃除しかない。 そう思って、また昨日やり残した掃除を始めた。
裏の勝手口が埃だらけだ。
外水道の周りにぼろ雑巾がカビのように積み重なっている。
ホースが泥カビだらけで汚い。
で汚い。
車庫の奥には腐った本箱があり、車庫の壁が埃とカビ
門柱の横の郵便箱が泥カビだらけ。
門柱はカビで黒ずんでいる。
昨日植え
た花が枯れそうだ。・・・小さな汚れが次々に出てくること、出てくること。
ボンスターとホースの水で洗い流し、ようやく玄関前に散水し始めた頃、オープンハウ
スに来たお客様に声を掛けられたのだった。
夢中で掃除していた自分に気がついて、「どうぞ見て下さい」と内に入って頂いた。
このオープンハウスは、有難いことに、3日間で60人程のお客様に見て頂き、5人の購入希
望者が出て、どなたに買って頂くか悩む程だった。
この家が売れたのは、この家が舞浜3丁目という人気のある街の中でも一番良い条件の
場所にあり、築14年の割には建物の状態が良かったからである。
減だったら、こんなに上手く行っただろうか。
しかし、掃除がいい加
「あの家が売れたのは、私が気合いを入
れて掃除をしたからだ!」と密かに思っている。 掃除にはそれだけの力があるからです。
(2)我が社では毎朝、店舗周辺100m以内を掃除することになっている。
今年4月に入社した大卒の新入社員にも、8時からの研修教育の前に10分間、「ディズニ
-1-
ーランドの社員のように、かっこよく掃除してこい!」と店舗周辺の掃除をさせた。
道や交差点の掃除をしていると、「ご苦労さん!」と声がかかることがある。
れだけで世の中の役に立ったようないい気持ちになる。
歩
たったそ
若い社員が、お客様をお迎えす
る大切な店舗とその周辺を清掃して、気持ちのいい場所にするのは、社会人としての基本
だ、と判ってくれることを願っている。
が多い。
ところで、拾うゴミはタバコの吸い殻と空き缶
タバコを吸う人は、どうして平気で交叉点に吸い殻を捨てるのだろうか?
空き缶はどうして植え込みの中に投げ込むのだろうか?
そんな人が仕事ができるとは
思えないし、いい社会人になれるとは思えないが、どうしてだろうか?
その人も少なく
とも、自分の店舗や自宅の前には捨てないだろうから、ゴミを道路に捨てた人には、罰と
して道路の掃除をやらせたら、自分が社会を汚していることが判るかも。
そんな条令か
法律でも作るといいですね。
(3)掃除、たかが掃除と言うな!
あの経営の神様と言われた松下幸之助さんは、成績の上がらない工場に行く時は、黙っ
て便所掃除をするのだそうです。
それに気が付いた工場長は慌てますね。
それから工
場中を綺麗に掃除をするようになり、1年もするとその工場の成績が上がるのだそうです。
掃除をするとどうして仕事が上手く行くようになるのでしょうか?
①
掃除とは、自分と周りの人を気持ち良くするものである。
考えてみました。
だから、掃除をするこ
とは喜びにつながることなのである。
②
掃除とは、お金を掛けずに、家やその周辺を気持ち良くするものである。
どんな
に高価で素晴らしい家に住んでも、掃除をしなければゴミ置場になってしまう。
③
掃除とは、何かの準備作業であると同時に完成作業である。
何かを開始する時は、
整理、整頓、清掃して準備して、終わった時にもまた、片づけ、整理、整頓、清掃し
て終わるものです。
④
掃除とは、全ての始まりであり、終わりである。
掃除とは、点検し、予防するものである。
売ろうとする家の壁が汚れている、水道
が止まらない、風呂の栓が閉まらない、窓が開かない、網戸が破れている、建具に隙
間がある、フスマが閉まらない・・・等々と丁寧に掃除することで、問題点や無駄を
発見できて、それを予防できる。不良品がでない、良いサービスができる。
⑤
掃除とは、質を表すバロメーターである。
汚い工場では不良品が出る。
汚い売場では商品は輝かない。
汚い店舗では、だらしない応対しかできないし、い
いコミニュケーションは期待できない。
掃除も満足にできない販売員に、仕事の
質は期待できないので、これから永く住む家を紹介してもらいたいと思う人は居な
いでしょう。
⑥
掃除とは、商品や職場に対する愛情を生み出すものである。
自分の働く職場や商品
(売家)を、熱心に掃除すると、その良さがよく判るし、短所さえも好きになります。
職場や商品に愛情が持てるから、良い仕事が、良い人生が送れるのです。
⑦
掃除とは、世間一般では軽く見られる雑仕事かも知れないが、心を込めてひたすら行
えば、上記のような人間としての基本的な生き方を学べるものである。
「掃除のよ
うな縁の下の力持ちの仕事が、この世の中の実際を支えていることを理解し、それを
自分で実行することをいとわず、これに従事する人を尊敬できる人こそが、世の中の
リーダーたり得る人です」と松下幸之助さんは言っておられます。
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我が社でも、人
より早く来てしっかりと掃除する人、便所掃除を率先してやる人は、必ず仕事のでき
る・頼られる人になっています。
掃除とは自分を磨く凄いものですね。
座し、高く考える」良い生き方の訓練になるからでしょうか。
2005年
9月
-3-
21日
記
「低く