本文ダウンロード - 東京工業大学 大学院社会理工学研究科社会工学

重力モデルの一般化最小二乗法による
要因別推定に関する考察
A study of “robust” estimation of gravity models
島根 哲哉
by Tetsuya SHIMANE
March 31, 2004
Discussion Paper No.04-04
Abstract
Gravity models are very popular in analyzing economic phenomena related to the flow of goods,
services, telecommunications or populations. Some empirical studies have argued about the proper
econometric specification of a gravity model in recent years. Especially, on the studies of the trade
policy analysis, Polak(1996) pointed out that ambiguous bloc dummy variables may mislead the existence of trading blocs, and then Matyas(1997,98), Egger(2000), Egger and Pfaffermayr(2003) have
developed and improved the new specifications of a gravity model based on the panel data.
In this paper, we propose a “robust” estimator against omitted variables, which uses decomposition
matrices for decomposing the interaction data into the relation factors or the attribute factors. By use of
the separated equations of a gravity model, it was made possible that the bias of estimators derived from
the omitted variables are containerized into its factor category, and make the other estimator unbiased
and “robust” partially, the bias containment. The error decomposed by the decomposition matrices,
however, have the covariance each other, so we investigate its variance-covariance structure, and then
develop the proper GLSE.
重力モデルの一般化最小二乗法による
要因別推定に関する考察∗
島根 哲哉†
平成 16 年 3 月 31 日
1
はじめに
人口移動, 貿易, 交通, 通信といった地域間での空間的な遣り取り (行動) は, 社会・経済的な分析
の対象としてしばしば取り上げられ, 特にその空間的な特徴を生かした分析が試みられてきた. こ
れらの分析の一つに, 重力モデルを含めた空間的相互作用モデル族が上げられる. 空間的相互作用
モデルとは計量地理学を中心として精力的に開発が進められてきた一群の数理モデルを指す. これ
らのモデルでは, 人口移動や交通流といった空間的相互作用を, 出発・到着する地域の特性とこれら
の地域間の空間的位置づけを示す関係性 (分離性) によって説明しようというものである. 空間的相
互作用モデルとして用いられる重力モデルはそのもっとも原始的なものである. しかし, 重力モデ
ルは必ずしも理論モデルとの整合性に優れているとはいえないにもかかわらず, モデルの単純さに
由来する操作性の高さと, 実際の集計された相互作用に対する高い説明力によって, 依然として高
い有用性を持っており, 人口移動や国際貿易の計量分析に用いられている.
しかし, 対数化した重力モデルを回帰分析によって推定する場合, その分析の主眼が出発地の特性
に関するものであったり, 関係性に限られていたりしても, すべての属性について十分な情報を収
集し, 分析に取り込まなければ, 推定結果に除外変数の問題に由来する偏りが現れる可能性がある.
これに対して, 樋口によって提案されているオッズ比分解を応用すれば, 偏りの発生するパラメー
タを限定できる. しかしながら, 分解した「放出性」や「関係性」を回帰分析する場合には, 誤差の
均一性が保たれていないことに注意が必要であり, 通常最小二乗法では推定結果を適切に評価する
ことが困難であることが, 指摘されている. 本研究では, 樋口 (2003) 等で紹介されている, 分解の手
順を改めて整理し, 回帰分析の前処理として取り込み, このときの誤差項の分散共分散行列の構造
を検討し, 適切な一般化最小二乗推定量を提案する.
以下の構成としては, 2 章で対象とするモデルを説明し, 3 章でオッズ比分解の応用による要因別
回帰分析の枠組みを説明し, さらに放出性や吸収性に相当する部分のパラメータの推定を行うため
の要因別回帰分析の誤差項の検討とこれに基づいたパラメータの推定量及びその分散共分散行列を
示す. 4 章では関係性に関する部分のパラメータの推定を行うための要因別回帰分析について, 誤差
項を検討し, パラメータの推定量とその分散共分散行列を示す. 最後に 5 章で結論をまとめ, さらに
今後の展望について簡単に述べる.
∗ 本稿を作成するに当たり東京工業大学
樋口洋一郎教授から多くの示唆を頂いた. ここに記して謝意を表します.
助手
† 東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻
1
モデル
2
以下に本研究で対象とするモデルを示す. 本研究では社会・経済的な地域間の移動・通信を表す
数理モデルとして空間的相互作用モデルの一つである重力モデルの利用をする場合を想定する. こ
れら空間的相互作用の重力モデルは, そもそもは物理学からの援用に過ぎないが, 集計データに関
する数理モデルとしては高い説明力を持ち, 実証研究においては依然として高い有用性を持ってい
るといえる.
ここでは, 重力モデルを対数線形化して最小二乗法によって回帰分析することで, 関係性/分離性
のパラメータを推定しようとした場合に, その推定されたパラメータの分散共分散行列の推定にバ
イアスが発生することを示す. さらに, そのパラメータの分散共分散行列を示し, 一般化最小二乗法
を用いた解決策を示す.
2.1
2.1.1
重力モデル
単要素重力モデル
本研究で用いる重力モデルは, 地域 i から地域 j への [人口移動, 電話通話, 貨物輸送, 貿易輸出な
どの] 流動量 (interaction, traffic) T i j を, 出発地域 i の属性によって構成される放出性 Ai と, 到着地域
j の属性によって構成される吸収性 B j と, 出発地と到着地の組み合わせにより与えら得る特質 (関
係性, 分離性) Ri j との3つの要素によって説明するものである. 物理学のモデルを模した以下の形
式の定式化が最も原始的なものといえる.
A
Ti j =
(Ai )β (B j )β
B
(1)
(Ri j )−βR
ここでは, 説明する対象の性質から T i j , Ai , B j , Ri j はいずれも正値をとるものとする.
2.1.2
多要素重力モデル
前節の式 (1) で扱われる放出性, 吸収性, 関係性は, 物理モデルになぞらえて, 人口移動の例であれば
地域の人口 (規模) と地域間の距離を代理変数とする解釈ができる. その一方で, 社会科学における空
間的相互作用モデルの一つとしての重力モデルでは, 放出性, 吸収性, 関係性それぞれを (実際に観察さ
れる現象ではなく) 観念的な指標とみなすことができる.1 そこで, これらをそれぞれに対応する説明要
因を要素として持つ関数として再構成する. ここで改めて T i j = Ai B j Ri j と置き, 放出性 Ai であれば, 地
A
Am A
域 i において放出性を決定する mA 個の様々な (社会経済的) 要因 (MiA1 , MiA2 , MiA3 , . . . , Mi p , . . . , Mi
)
として表現され, 同様に吸収性, 関係性に
を用いて関数 Ai =
ついてもそれぞれ m 個, m 個の要因からなる関数, fB (M B1 , . . .), fR (M R1 , . . .) とする.
Q A A Ap
A A
A
さらに, それぞれの要因別関数を, A(MiA1 , MiA2 , MiA3 , . . . , Mi p , . . . , Mi m ) = mp (Mi p )β のように
fA (MiA1 , MiA2 ,
B
R
MiA3 , . . . ,
A
Mi p , . . . ,
A A
Mi m )
1 ここでは放出性, 吸収性を放出数, 吸収数そのものではないとする. 交通工学で用いられる 4(3) 段階推定法は放出性, 吸
収性をあくまでも実測されたトリップ数として処理することを目指している. そのため分離推定し, 暗に属性要因と関係性
要因の間の相関が無いものとしている.
2
積の形式で定義されるとしたとき,2 式 (1) は次のように表される.
T i j = Ai B j Ri j
A
B
R
= fA (MiA1 , . . . , Mi m ) fB (M Bj 1 , . . . , M j m ) fR (MiRj1 , . . . , Mi jm )
QmA A p βA p QmB Bq βBq
p (Mi )
q (M j )
=
QmR Rr −βRr
r (Mi j )
A
B
R
(2)
(3)
ここで, 式 (3) を両辺対数をとって線形化して整理を進める. これにあたり yi j = ln T i j , xiA = ln MiA =
B
A
(ln MiA1 , ln MiA2 , ln MiA3 , . . . , ln Mi p , . . .), xBj = ln M Bj = (ln M Bj 1 , ln M Bj 2 , ln M Bj 3 , . . . , ln M j p , . . .), xRij =
ln MiRj = (ln MiRj1 , ln MiRj2 , ln MiRj3 , . . . , ln MiRjr , . . .) の行ベクトルとして,
yi j = α + xiA βA + xBj βB + xRij βR
(4)
のように表される. ただし, α はスカラー, βA , βB , βR はそれぞれ mA × 1, mB × 1, mR × 1 の列ベクト
ルであり, パラメータを表すとする.
重力方程式の線形回帰モデル
2.2
2.2.1
単一誤差モデル
前節で取り上げた重力モデルは, 式 (4) のように, 対数をとることにより線型方程式として整理さ
れた. これのとき式中のパラメータは適切な誤差項を加えた上で回帰分析することにより, 統計的
な推定が可能である. 以下では簡潔な表記を行うため主に行列形式で議論を進める. また, n 地域間
の流動量 (interaction) を議論の対象とし, 各地域内の流動量 (T i j ) も含めて観察されたとする.
ここで, 地域ごと (及び地域の組み合わせごと) に定義されてた各説明変数ベクトルから, XA =
(x1A0 , x2A0 , x3A0 , . . . , xnA0 )0 となる n × mA 行列, XB = (x1B0 , x2B0 , x3B0 , . . . , xnB0 )0 となる n × mB 行列,
R0
R0
R0 0
R
0
(xR0
1,1 , x2,1 , x3,1 , . . . , xnn ) となる n(n + 1)/2 × m 行列, さらに y = (y1,1 , y1,2 , y1,3 , . . . , yn,n ) となる
XR =
n2 × 1
ベクトルとそれぞれ置き, 式 (4) を回帰方程式として行列表記を用いて整理すると以下のようになる.


 α 
 A 
h
i  β 
y = 1n2 , (1n ⊗ In )XA , (In ⊗ 1n )XB , Dn XR  B  + εT
 β 
 R 
β
= α1n2 + (1n ⊗ In )XA βA + (In ⊗ 1n )XB βB + Dn XR βR + εT
T
ε ∼
(5)
(6)
N(0, σ2T In2 )
ただし, εT は誤差ベクトルとする. さらに ⊗ はクロネッカー積を, 0 は行列の転置を, In は n × n の単
位行列を, 1n は n × 1 のすべての要素が 1 のベクトルを Dn は n × n の対称行列に関する duplication
matirx (Magnus, 1988, Chapter 4) を表すとする.
2 この関数の特定化自体はもっとも頻繁に用いられるものの一つといえるが, 他の関数形が採用される場合もしばしばあ
る. たとえば, 計量地理学 (石川, 1988, p.46) や交通計画 (竹内・本多・青島・磯部, 2000, p.88) の分野では関係性の関数 (距
離減衰関数, 分布抵抗関数) について, 指数関数: fR (MiRj ) = exp(−bMiRj ), タナー関数 fR (M A ) = a exp(−bMiRj ) · MiRj , ガウス関数
2
fR (M A ) = exp(−bMiRj ) といった様々な形式のものを当てはめている.
3
除外変数, 要因別推定, 有効性
この回帰分析を通じて, 流動量の重力モデルによる検証を行う場合,
その興味の中心となるパラメータは分析の対象により βA であったり, βR であったりと (つまり, 式
(2) の関数 fA であったり, fR であったりと) まちまちである. また, 分析に必要とされるデータの形
式も XA , XB のように地域に対応するものと, XR のように地域の組み合わせに対応するものとがあ
り, その収集の難易 (容易さ) も一様ではない.
回帰分析を行う際, 必要な説明変数が回帰方程式に含まれていない場合 (特にその変数が方程式
に取り込まれた説明変数と相関を持つ場合), 最小二乗法による推定結果は偏りを持つことが除外変
数の問題として知られている. この問題に根本的に対処するためには被説明変数及び説明変数と相
関を持つすべての変数を方程式に導入する必要があるといえる. しかしながら, 一般にこのような
データの収集は無理であり, ましてデータの形式の異なる XA , XB も XR も余すところ無く収集する
ということは, 必ずしもすべてのパラメータの推定に同程度の精度を求めない重力モデルのような
問題については, 効果的なアプローチとはいいがたい. そこで, 方程式の形式に注目し, 式 (6) の第 2,
3, 4 項をそれぞれ別個に推定する (つまり, 式 (2) の関数 fA , fB , fR を別々に推定する) 可能性を検討
したい. この場合検討する必要があるのは, 提案された推定手順が, どのような条件下で推定量の不
偏性 (一致性) が得られるのか, 有効性はどのようになるのか, といった問題である.
2.2.2
Error Component Model
2.1.2 ので示したように, 放出性, 吸収性, 関係性がそれぞれ何らかの属性変数の関数として表され
るとしたとき, これらは観念的な定義をされた各特質の代理変数とみなされる. これらが代理変数
であることをかんがみれば, そもそもの放出性, 吸収性, 関係性にも誤差 (誤差項) が含まれていると
考えることは自然といえよう.
そこで, 発生時点に各要因に対応する誤差がある場合を考えると, 次のような Error Component
Model として定式化できる.
y = α1n ⊗ 1n + (1n ⊗ In )(XA βA + εA ) + (In ⊗ 1n )(XB βB + εB ) + Dn (XR βR + εR ) + εT
εA ∼ N(0, σ2A In ),
εB ∼ N(0, σ2B In ), εR ∼ N(0, σ2R I n(n−1) ),
εT ∼ N(0, σ2T In2 ),
Cov(εA , εR ) = 0,
Cov(εA , εT ) = 0,
Cov(εB , εT ) = 0,
2
Cov(εB , εR ) = 0,
(7)
Cov(εR , εT ) = 0,
要因別の除外変数の存在に関する吟味や, その際により有効な推定量を詳細に検討する場合はこの
ようなモデルが有用であると考えられる.
対象とするモデルとデータ特性
以下の議論では簡単のため式 (5) で示した単一誤差モデルについ
て検討を行う. これは通常の重力モデルの推定の場合に想定されるモデルに対応し, 従来の推定量
と比較する場合に有用であると考えられる.
また, 説明変数 (デザイン行列) については, 1n2 , (1n ⊗ In )XA , (In ⊗ 1n )XB , XR を構成する各列ベクト
ルは互いに線形独立であり, X の列のランクは 1 + mA + mB + mR であるとする. さらに, XR につい
ては, 内々の関係性を構成する xRkk が皆同じ, つまり xRkk = xRll , (k , l) とする. これは, 距離によって
関係性を説明する場合であれば, 地域内で発生する空間的相互作用の平均的距離に相当するものと
いえる. このような関係性 (及びこれを構成する要因) を, 地域間と同等に, 地域内に一義的に定義す
ることは難しく適当な特徴づけはなかなかできないが, 一つの方法として, 地域内の関係性がすべ
ての地域について一定の値をとる場合について吟味した.
4
放出性と吸収性の要因別回帰分析
3
3.1
分解行列 F̄n , 要因別回帰分析
オッズ比分解, 線形化重力モデル, 行列表現
樋口等は, 重力モデルの推定について, そのデータの形
式, 発生過程に注目して, 適切な交差積比を用いることによって, 除外変数の影響を一定の部分に閉
じ込めるように推定量の改良し, さらに実際の社会経済データへの適用を行ってきた. 樋口 (2003)
では, これまで最尤法に基づく多次元尺度構成法のアイデアを多く取り込んできた関係性に関する
定式化に関して単純化 (線形化) したものを採用することで, より多くの解析的な知見を得るに至っ
た. 特に, 線形化することにより, モデルとその推定手順の多くを行列表現のみを使って表現できる
ようになったことが解析的な考察を行ううえで重要な進歩であった. オッズ比分解法では, 観察さ
れた流動量 (トラフィック) データから, 放出性, 吸収性, 関係性を数値的に分解して導出し, これに
ついて必要に応じて回帰分析を行う. この数値的な分解法をオッズ比分解(ORDEC) としている.
そこでは観察された i- j 地点間の流動量 T i j を, 放出性については T i j T ii /T ji T j j , 吸収性については
T ji T ii /T i j T j j , 関係性については T i j T ji /T ii T j j とした交差積比をとれば, それぞれが放出性, 吸収性, 関
係性のみの交差積比になることを用いている.
樋口 (2003) ではモデル全体を対数化により線形モデルにしたことから, この交差積比の作成を行
列の操作によってできることを紹介している. つまり対数化した流動量の n × n 行列 {ln T i j } を vec
オペレータにより n2 × 1 のベクトルに変形したものを y とすれば, この y の前方から次のような行
列 F̄n をそれぞれ前方より掛けることで, 対数化された交差積比がそれぞれ得られる. (F̄n はそれぞ
れ樋口 (2003) で定義されている Fn に基づき, F̄n = L̄n Fn として表記した)
F̄nA ≡ L̄n (In2 − Knn ) In2 + (1n ⊗ In )W0n
F̄nB ≡ L̄n (Knn − In2 ) In2 − (1n ⊗ In )W0n
F̄Rn ≡ L̄n (In2 + Knn ) In2 − (1n ⊗ In )W0n
(8)
(9)
(10)
ただし, Knn は commutation matirx, L̄n は, elimination matirx, Wn は n × n の正方行列から対角要素
をベクトルとして取り出す行列とする. (詳細は数学的付録及び Magnus (1988); Turkington (2002)
を参照)
要因別回帰分析
樋口 (2003) では, この分解を通じて個々の放出性 {Ai }, 吸収性 {B j }, 関係性 {Ri j } を
不偏分解することが一つの目標となっている. しかしながら, 目的が式 (3) の各パラメータの挙動を
調べることなのであれば, これらの不偏分解は目的ではなく, 回帰分析をした際のパラメータの推
定が不偏であるかまた有効であるかが問題である. ここで, 2.1.2 で考えたような分析を行う背景を
鑑みれば, 注目する要因別 (パラメータ別) に, 除外変数の問題に対峙して推定を行うことが有用で
あるといえる. つまり, (3) の関数形 (一般的特質) に興味があるのであれば, これを対数化し線形モ
デルとした式 (6) の要因別の推定を行えばよい. たとえば放出性に関して次のように (6) の前方か
ら, F̄nA を掛け, 整理すると次のようになる. (A.2 参照)
F̄nA y = F̄nA Xβ + F̄nA εT
(11)


 α 
 A 
h
i  β 
= F̄nA 1n2 , (1n ⊗ In )XA , (In ⊗ 1n )XB , Dn XR  B  + F̄nA εT
 β 
 R 
β
5


 α 
 A 
h
i  β 
= F̄nA 1n2 , F̄nA (1n ⊗ In )XA , F̄nA (In ⊗ 1n )XB , F̄nA Dn XR  B  + F̄nA εT
 β 
 R 
β


 α 


h
i  βA 

A
A
B
A
R 
= 0, F̄n (1n ⊗ In )X , 0X , F̄n Dn X  B  + F̄nA εT ∵ (50), (52)
 β 
 R 
β
= F̄nA (1 ⊗ In )XA βA + F̄nA Dn XR βR + F̄nA εT
(12)
この変換することで, XB を用いない要因別回帰分析が可能である事がわかる. さらに, XR について
は内々の関係性を一定としたことから, F̄nA Dn XR = 0 となり,
F̄nA y = F̄nA (1 ⊗ In )XA βA + F̄nA εT
(13)
となる. ただし, この回帰式を最小二乗法で推定した場合, 誤差に相関が発生するため, 分散の評価
が不適切になる. そこでモデルの形式を考慮した一般化最小二乗推定を検討する必要がある.
同様に, 式 (6) の前方から F̄nB をかけると,
F̄nB y = F̄nB Xβ + F̄nB εT
(14)


 α 


h
i  βA 
= F̄nB 1n2 , (1n ⊗ In )XA , (In ⊗ 1n )XB , Dn XR  B  + F̄nB εT
 β 
 R 
β


 α 
 A 
h
i  β 
= F̄nB 1n2 , F̄nB (1n ⊗ In )XA , F̄nB (In ⊗ 1n )XB , F̄nB Dn XR  B  + F̄nB εT
 β 
 R 
β


 α 


h
i  βA 
A
B
B
B
R 
= 0, 0X , F̄n (In ⊗ 1n )X , F̄n Dn X  B  + F̄nB εT ∵ (54), (55)
 β 
 R 
β
= F̄nB (In ⊗ 1n )XB βB + F̄nB Dn XR βR + F̄nB εT
=
F̄nB (In
B B
⊗ 1n )X β +
F̄nB εT
∵
F̄nB Dn XR
(15)
=0
(16)
が得られる (A.3 参照). データの形式からもわかるように, 放出性と吸収性のパラメータに関しては
その形式が非常に似通ったものであり, 以下の議論も重複するところが多い. そこでまず放出性の
パラメータについてその推定手順などについて吟味し, 吸収性のパラメータに関してはこれと比較
しながら簡単に紹介する.
3.2
誤差項の分散共分散 ΣA , ΣB
式 (13) の誤差項に注目すると, 前方から F̄nA がかけられることにより, 独立ではなくなっているこ
とがわかる. この場合, 通常の最小二乗法による推定では, 誤差の分散の評価が不適切であり, 推定
6
結果について検定を行ううえで効率性が損なわれる. このような場合事前に誤差項の分散共分散行
列の構造があらかじめわかるのであれば, この情報に基づいて一般化最小二乗推定をすることで適
切な統計的判断をすることができるようになる. そこで, 以下に放出性のパラメータ βA を推定する
回帰式 (13) の誤差項の分散共分散行列 ΣA の構造について整理する.
ΣA = Var(F̄nA εT )
= E({F̄nA εT }{F̄nA εT }0 )
0
= E(F̄nA εT εT F̄nA0 )
0
= F̄nA E(εT εT )F̄nA0
= σ2T F̄nA F̄nA0
(17)
= σ2T L̄n (In2 − Knn ){In2 + (1n ⊗ In )W0n }{In2 + Wn (10n ⊗ In )}(In2 − Knn )L̄0n
= σ2T L̄n (In2 − Knn ){In2 + (1n ⊗ In )W0n + Wn (10n ⊗ In ) + (1n ⊗ In )W0n Wn (10n ⊗ In )}(In2 − Knn )L̄0n
= σ2T L̄n {(In2 − Knn )(In2 − Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n (In2 − Knn )
+ (In2 − Knn )Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn )}L̄0n
= σ2T L̄n {(In2 − Knn )(In2 − Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn )}L̄0n
∵ (In2 − Knn )Wn = Wn − Knn Wn = Wn − Wn = 0
= σ2T L̄n {2(In2 − Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )}L̄0n
= σ2T {2In(n−1)/2 + L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
∵ L̄n L̄0n = In(n−1)/2 ,
(18)
L̄n Knn L̄0n = 0
同様に, 吸収性のパラメータ βB 推定を行う要因別回帰式 (16) の誤差項の分散共分散行列 ΣB を
整理すると,
ΣB = Var(F̄nB εT )
= E(F̄nB εT εT 0 F̄nB0 )
= σ2T F̄nB F̄nB0
(19)
=
σ2T L̄n (Knn
=
σ2T L̄n {2(In2
− In2 ){In2 − (1n ⊗
In )W0n }{In2
− Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗
−
Wn (10n
In )(10n
0
⊗ In )} (Knn − In2 )
L̄0n
⊗ In )(In2 − Knn )}L̄0n
= σ2T {2In(n−1)/2 + L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
= ΣA
0
(20)
∵ (18)=(20)
のように, ΣA と一致することがわかる.
また, ΣA の逆行列は (樋口, 2003, p.32) において,
Σ−1
A =
1
1
{(n + 4)I n(n−1) − 2 ΣA }
2
2
2(n + 2)σT
σT
(21)
として紹介されている.3 これに (18) を代入して, 展開し整理すると,
Σ−1
A = (21)
3 証明については,
A.5 を参照
7
1
=
2(n + 2)σ2T
1
=
2(n + 2)σ2T




1 2
0
0
(n + 4)I n(n−1) − 2 σT {2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(1n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄n }
2
2
σT
(n + 2)I n(n−1) − L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
(22)
2
A
のようになる. さらに, 分散共分散の検討の際に現れる Σ−1
A と F̄n (1 ⊗ In ) の積について, 以下に整理
しておく.
A
(10 ⊗ In )F̄nA0 Σ−1
A F̄n (1 ⊗ In )
1
0
0
n(n−1) − L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(1 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄
F̄nA (1 ⊗ In ) ∵ (22)
(n
+
2)I
n
n
2
2(n + 2)σ2T
1
1
=
(10 ⊗ In )F̄nA0 F̄nA (1 ⊗ In ) −
(10 ⊗ In )F̄nA0 L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n F̄nA (1 ⊗ In )
2σ2T
2(n + 2)σ2T
1
1
=
4nJn −
2(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n 2L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )
2
2σT
2(n + 2)σ2T
2
2n
(10 ⊗ In )(In2 − Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 − Knn )(1 ⊗ In )
= 2 Jn −
σT
(n + 2)σ2T
= (10 ⊗ In )F̄nA0
2n
2n2
J −
Jn Jn
2 n
σT
(n + 2)σ2T
n 2n Jn
= 2 1−
n+2
σT
4n
=
Jn
(n + 2)σ2T
=
(23)
ここで, En はすべての要素が 1 の n × n の正方行列 (En = 1n 10n ), Jn は Jn = In − n1 En と置く. さらに,
D0n F̄nA0 F̄nA Dn = D0n (In2 − Knn ) + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n
+Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
= D0n (In2 − Knn )Dn + D0n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
+ D0n Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn )Dn + D0n Wn (10n ⊗ In )(In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
ここで Knn Dn = Dn より (In2 − Knn )Dn = 0
= nD0n Wn Jn W0n Dn
3.3
(24)
βA の一般化最小二乗推定量
前節で整理した ΣA を用いて βA の一般化最小二乗推定量は次のようになる.
h
i
A
A
A −1
A
{F̄nA (1n ⊗ In )XA }0 Σ−1
β̂GLS = {F̄nA (1n ⊗ In )XA }0 Σ−1
A {F̄n (1n ⊗ In )X }
A F̄n y
h
i−1
A
A
A
= XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 Σ−1
XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 Σ−1
A F̄n (1n ⊗ In )X
A F̄n y

−1


4n
1
= 
XA0 Jn XA  XA0
{(1n0 ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n }y
2
(n + 2)σT
(n + 2)σ2T
i−1
1 h A0
=
X Jn XA XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n y
2n
∵ (10n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA = 2 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n
8
(25)
このとき推定量の偏りを見ると,
n
o
i−1
1 h A0
X Jn XA XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA (1n ⊗ In )XA βA + (In ⊗ 1n )XB βB + Dn XR βR + εT
4n
o
i−1 n
1 h A0
=
X Jn XA
XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA (1n ⊗ In )XA βA + XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA Dn XR βR + XA0 (10n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA εT
4n
i−1 h
n
o i
1 h A0
=
X Jn XA
4nXA0 Jn XA βA + 2nXA0 Jn W0n Dn XR βR + 2 XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n εT
4n
i−1 h
n
o i
1 h A0
= βA +
X Jn XA
2nXA0 Jn W0n Dn XR βR + 2 XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n εT
(26)
4n
A
β̂GLS =
となるが, 仮定により Jn W0n Dn XR = 0n なので,
4
右辺第 2 項中の右側の大括弧内の第 1 項が 0 で
あり,
A
β̂GLS = βA +
i−1
1 h A0
X Jn XA XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n εT
2n
(27)
のように整理される. ここで期待値をとれば,
A
E(β̂GLS ) = βA +
i−1
1 h A0
X Jn XA XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n E(εT )
2n
= βA
(28)
A
となり, β̂GLS が不偏推定量であることがわかる.
3.4
βA の分散共分散行列
A
の分散共分散行列を以下に示す.
次に, 前節で得た推定量 βGLS
A
Var(β̂GLS )
A
A
= E (β̂GLS − βA )(β̂GLS − βA )0
"
#
1 A0
A0
A −10
0 0 A
0 T T0 0
A −1 A0 0
X Jn X
X (1n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn Wn ε ε (1n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn Wn X X Jn X
=E
4n2
−10
−1
1 = 2 XA0 Jn XA XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n E εT εT 0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n 0 XA XA0 Jn XA
4n
−10
−1
σ2 = T2 XA0 Jn XA XA0 (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n (10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + nJn W0n 0 XA XA0 Jn XA
4n
−1
−10
σ2 = T2 XA0 Jn XA XA0 {n(n + 2)Jn } XA XA0 Jn XA
4n
−1
−1
n(n + 2)σ2T A0
=
X Jn XA XA0 Jn XA XA0 Jn XA
2
4n
−1
(n + 2)σ2T A0
X Jn X A
(29)
=
4n
3.5
βB の一般化最小二乗推定量
吸収性のパラメータ βB についても, 同様の推定量を示すことが以下のようにできる.
h
i
B
B
B −1
B
(F̄nB (In ⊗ 1n )XB )0 Σ−1
β̂GLS = (F̄nB (In ⊗ 1n )XB )0 Σ−1
B (F̄n (In ⊗ 1n )X )
B F̄n y
4 これは関係性の変数
XR が対角要素 (内々トラフィックに対応する要素) においてすべて同じ値をとることを意味する.
9


= 
−1

4n
2
B0
B
 XB0
X
J
X
(In ⊗ 10n )(In2 − Knn ) − nJn W0n y
n
2
(n + 2)σT
(n + 2)σ2T
−1
1 B0
X Jn XB XB0 (In ⊗ 10n )(In2 − Knn ) − nJn W0n y
=
2n
3.6
(30)
βB の分散共分散
B
B
B
Var(β̂GLS ) = E (β̂GLS − βB )(β̂GLS − βB )0
=
−1
(n + 2)σ2T B0
X Jn XB
4n
(31)
関係性の要因別回帰分析
4
4.1
誤差項の分散共分散行列 ΣR
式 (13) と同様に前方から関係性の分解行列 F̄Rn を掛けた回帰式では
F̄Rn y = F̄Rn Xβ + F̄Rn εT


 α 


h
i  βA 

R
A
B
R 

= F̄n 1n2 , (1n ⊗ In )X , (In ⊗ 1n )X , Dn X  B  + F̄Rn εT
 β 
 R 
β


 α 


h
i  βA 

R
R
A
R
B
R
R 

= F̄n 1n2 , F̄n (1n ⊗ In )X , F̄n (In ⊗ 1n )X , F̄n Dn X  B  + F̄Rn εT
 β 
 R 
β


 α 


h
i  βA 
A
B
R
R 

= 0, 0X , 0X , F̄n Dn X  B  + F̄Rn εT ∵ (58), (59), (60)
 β 
 R 
β
= F̄Rn Dn XR βR + F̄Rn εT
(32)
α, βA , βB は消去され βB に関する要因別回帰式となる. そこで以下では (32) に絞って議論を進める.
この誤差の分散共分散行列 ΣR を考える.
ΣR = E({F̄Rn εT }{F̄Rn εT }0 )
= E(F̄Rn εT εT 0 F̄R0
n )
= F̄Rn E(εT εT 0 )F̄R0
n
= σ2T F̄Rn F̄R0
n
= σ2T [L̄n (In2 + Knn ){In2 − (1n ⊗ In )W0n }][L̄n (In2 + Knn ){In2 − (1n ⊗ In )W0n }]0
= σ2T L̄n (In2 + Knn ){In2 − (1n ⊗ In )W0n }{In2 − (1n ⊗ In )W0n }0 (In2 + Knn )0 L̄0n
10
= σ2T L̄n (In2 + Knn ){In2 − (1n ⊗ In )W0n }{In2 − Wn (10n ⊗ In )}0 (In2 + Knn )L̄0n
= σ2T {L̄n (In2 + Knn )(In2 + Knn )L̄0n − L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )W0n (In2 + Knn )L̄0n
− L̄n (In2 + Knn )Wn (10n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n + L̄n (In2 + Knn )(In2 + Knn )L̄0n }
= σ2T {2L̄n (In2 + Knn )L̄0n − 2L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )W0n L̄0n
− 2L̄n Wn (10n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n + L̄n (In2 + Knn )(In2 + Knn )L̄0n }
= σ2T {2L̄n (In2 + Knn )L̄0n + L̄n (In2 + Knn )(In2 + Knn )L̄0n }
= σ2T {2I n(n−1) + L̄n (In2 + Knn )(In2 + Knn )L̄0n }
2
=
σ2T {2I n(n−1)
2
+ L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n }
5
ここで樋口 (2003) で示された ΣR を使った Σ−1
R の結果



1 
n


−1
ΣR = 2 2 
2E n(n−1) + n(n + 2)I n(n−1) − 2 ΣR 

2
2
2n σT
σT 
(33)
(34)
に (33) を代入し, 整理する.
Σ−1
R = (34)
(
)
1
n(n + 2)
1 1
0
0
n(n−1) +
n(n−1) −
n(n−1) + L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(1 ⊗ In )(In2 + Knn )L̄
= 2
E
I
∵ (33)
2I
n
n
2
2
2
2n
2n2
σT n2
(
)
1
1
1
1
0
0
= 2
E n(n−1) + I n(n−1) − L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(1n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄n
(35)
2
2 2
2n
σT n2
ここで逆行列を展開するに当たって, この逆行列と分解行列などとのいくつかの積についてあらか
じめ展開する. これらは, 逆行列の展開を進める上でも有用であるし, 後に分散共分散行列の展開の
際にも現れる.
−1 R
F̄R0
n ΣR F̄n
(
1
1
1
0
0
2
2
{I
−
W
(1
⊗
I
)}(I
+
K
)
L̄
En(n−1)/2 + In(n−1)/2
n n
n
nn
n
n
n
2
n2
σ2T
)
1
− L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n L̄n (In2 + Knn ){In2 − (In ⊗ In )W0n } (35) を代入
2n
1
= 2 2 {In2 − Wn (10n ⊗ In )}(In2 + Knn )L̄0n En(n−1)/2 L̄n (In2 + Knn ){In2 − (In ⊗ In )W0n }
n σT
1
+ {In2 − Wn (10n ⊗ In )}(In2 + Knn )L̄0n In(n−1)/2 L̄n (In2 + Knn ){In2 − (In ⊗ In )W0n }
2
n
o
1
− {In2 − Wn (10n ⊗ In )}(In2 + Knn )L̄0n L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n
2n
L̄n (In2 + Knn ){In2 − (In ⊗ In )W0n }
=
1
{In2 − Wn (10n ⊗ In )}(In2 + Knn )L̄0n En(n−1)/2 L̄n (In2 + Knn ){In2 − (In ⊗ In )W0n }
n2 σ2T
2
1
1
1
+ { In2 − (1n ⊗ In )(10n ⊗ In ) + (1n ⊗ In )1n 10n W0n + Wn 1n 10n (1n ⊗ In ) − Wn 1n 10n W0n }
2(
n
n
n
)
1
1
1
1
0
= 2
En2 + (In2 + Knn ) − (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(1n ⊗ In )(In2 + Knn )
2
2n
σT n2
=
5 樋口
(2003) では ΣO = FO FO と定義したため, ここでは ΣR の定義にあわせて変形した.
11
(36)
1
= 2
σT
=
=
=
=
(
1
2
Nn En2 Nn + Nn In2 Nn − Nn (1n ⊗ In )(10n ⊗ In )Nn
n
n2
(
)
1
1
2
0
2 + In2 −
N
E
(1
⊗
I
)(1
⊗
I
)
Nn
n
n
n
n
n
n
n
n2
σ2T
1
1
1
1
N ( E ⊗ En + In ⊗ In − 2( En ) ⊗ In )Nn
2 n n n
n
n
σT
1
1
1
Nn ( En − I) ⊗ ( En − I)Nn
n
n
σ2T
1
Nn (Jn ⊗ Jn )Nn
σ2T
)
(37)
ここで, Nn = 21 (In2 + Knn ) とする. さらに, これに前方から D0n , 後方から Dn をかけたものについて
も考えれば,
1 0
Dn Nn (Jn ⊗ Jn )Nn Dn
σ2T
1
= 2 D0n (Jn ⊗ Jn )Dn
σT
−1 R
D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn =
(38)
こうして整理した成果を用いて, Σ−1
R についてさらに展開すれば,
Σ−1
R = (35)
)
(
1
1
1
1
1
0
0
0
0
0
2
2
2
2
= 2
L̄
E
L̄
+
L̄
I
L̄
+
L̄
K
L̄
−
L̄
(I
+
K
)(1
⊗
I
)(1
⊗
I
)(I
+
K
)
L̄
n n n
n n n
n nn n
n n
nn
n
n
n
nn
n
n
n
2
2
2n
σT n2
∵ L̄n En2 L̄0n = E n(n−1) , L̄n In2 L̄0n = I n(n−1) , L̄n Knn L̄0n = 0
2
2
(
)
1
1
1
1
0
2
2
2
2
= 2 L̄n 2 En + (In + Knn ) − (In + Knn )(1n ⊗ In )(1n ⊗ In )(In + Knn ) L̄0n
2
2n
n
σT
1
−1 R 0
= 2 L̄n {F̄R0
∵ (36)
n ΣR F̄n }L̄n
σT
1
= 2 L̄n {Nn (Jn ⊗ Jn )Nn }L̄0n
σT
1
= 2 L̄n Nn (Jn ⊗ Jn )(Jn ⊗ Jn )Nn L̄0n
σT
(
)0 (
)
1
1
(Jn ⊗ Jn )Nn L̄0n
(Jn ⊗ Jn )Nn L̄0n
=
σT
σT
(39)
(40)
(41)
が得られる.
4.2
βR の一般化最小二乗推定量
前節にて整理した結果を用いて, βR の一般化最小二乗推定量は以下のようになる.
o
n
R
R −1 R0 0 R0 −1 R
−1 R
X Dn F̄n ΣR F̄n y
β̂GLS = XR0 D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n
o−1
= XR0 D0n (Jn ⊗ Jn )Dn XR XR0 D0n Nn (Jn ⊗ Jn )Nn y
12
∵ (37), (38)
(42)
この推定量の各要因との関係を整理すると,
n
o
n
o
R
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
β̂GLS = XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n (1n ⊗ In )XA βA + (In ⊗ 1n )XB βB + Dn XR βR + εT
n ΣR F̄n Dn X
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
= XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n (1n ⊗ In )XA βA
n ΣR F̄n Dn X
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
+ XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n (In ⊗ 1n )XB βB
n ΣR F̄n Dn X
n
o−1
−1 R
R
−1 R
R R
+ XR0 D0n F̄R0
XR0 D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n ΣR F̄n Dn X β
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R T
+ XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n ε
n ΣR F̄n Dn X
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R T
= βR + XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n ε
(43)
n ΣR F̄n Dn X
∵ F̄Rn (1n ⊗ In ) = F̄Rn (In ⊗ 1n ) = 0
このとき,
n
o
R
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
E(β̂GLS ) = βR + XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n E(εT )
n ΣR F̄n Dn X
= βR
(44)
R
であることから, β̂GLS が不偏推定量であることがわかる.
また, (41) から, PR = (Jn ⊗ Jn )Nn L̄0n と置けば P0R PR = Σ−1
R であることから, (42) は
PR F̄Rn y = PR F̄Rn Xβ + PR F̄Rn ε
(45)
の最小二乗推定量として表すことができる.
4.3
βRGLS の分散共分散行列
前節で導出した推定量の分散共分散行列を調べると, 以下のようになる.
R
R
R
R
R
Var(β̂GLS ) = E (β̂GLS − E(β̂GLS ))(β̂GLS − E(β̂GLS ))0
R
R
= E (β̂GLS − βR )(β̂GLS − βR )0
n
o o
n
−1 R
R −1
R −1 R0 0 R0 −1 R T T 0 R0 −1 R
−1 R
= E XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n ε ε F̄n ΣR F̄n Dn XR XR0 D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n ΣR F̄n Dn X
n
o
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
−1 R
R
R0 0 R0 −1 R
R −1
= XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n E(εT εT 0 )F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n ΣR F̄n Dn X X Dn F̄n ΣR F̄n Dn X
n
o
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1 R
−1 R
R
R0 0 R0 −1 R
R −1
= XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR F̄n (σT2 In2 )F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n ΣR F̄n Dn X X Dn F̄n ΣR F̄n Dn X
n
o
n
o
−1 R
R −1 R0 0 R0 −1
−1 R
R
R0 0 R0 −1 R
R −1
= XR0 D0n F̄R0
X Dn F̄n ΣR (σ2T F̄Rn F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n )ΣR F̄n Dn X X Dn F̄n ΣR F̄n Dn X
o
n
o
n
R −1
R
R
R0 0 R0 −1 R
R −1 R0 0 R0 −1
−1 R
X Dn F̄n ΣR ΣR Σ−1
= XR0 D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
R F̄n Dn X X Dn F̄n ΣR F̄n Dn X
o
n
R −1
−1 R
= XR0 D0n F̄R0
n ΣR F̄n Dn X
n
o−1
= σ2T XR0 D0n (Jn ⊗ Jn )Dn XR
(46)
4.4
σ2T の推定量
(45) について y∗ = PR F̄Rn y, X∗ = PR F̄Rn X, ε∗ = PR F̄Rn ε と置く.
y∗ = X∗ β + ε∗
(47)
13
このとき残差 e∗R は
e∗R = y∗ − ŷ∗
= {I n(n−1) − X∗ (X∗0 X∗ )−1 X∗0 }y∗
2
= M∗ y∗
ここで M∗ = I n(n−1) − X∗ (X∗0 X∗ )−1 X∗0 とおき, さらに (47) を代入すると
2
e∗R = M∗ ε∗
よって, (47) の残差平方和の期待値は
E(e∗0 e∗ ) = E[(M∗ ε∗ )0 (M∗ ε∗ )]
= E[tr(ε∗0 M∗ ε∗ )]
∵ M∗ はべき等行列
0
∗
R
= E[tr(ε0 F̄R0
n PR M PR F̄n ε)]
0
∗
R
= E[tr(εε0 F̄R0
n PR M PR F̄n )]
0
∗
R
= tr[E(εε0 )F̄R0
n PR M PR F̄n ]
∗
R
0
= tr[σ2T In2 F̄R0
n PR M PR F̄n ]
0
∗
R
= σ2T tr[F̄R0
n PR M PR F̄n ]
0
∗
= σ2T tr[PR F̄Rn F̄R0
n PR M ]
0
∗
∗0 ∗ −1 ∗0
= σ2T tr[PR F̄Rn F̄R0
n PR (I n(n−1) − X (X X ) X )]
2
=
σ2T
0
tr[PR F̄Rn F̄R0
n PR (I n(n−1)
2
R
−1 0 R0 0
0
− PR F̄Rn X(X0 F̄R0
n PR PR F̄n X) X F̄n PR )]
−1 0 R0 0
R
0 R0 0
R
0
R R0 0
= σ2T [tr{PR F̄Rn F̄R0
n PR } − tr{PR F̄n F̄n PR PR F̄n X(X F̄n PR PR F̄n X) X F̄n PR }]
0 R0 0
R
0 R0 0
R
−1
= σ2T [tr{P0R PR F̄Rn F̄R0
n } − tr{X F̄n PR PR F̄n X(X F̄n PR PR F̄n X) }]


 0 0 0 0 


 0 0 0 0 
2
= σT [tr(I n(n−1) ) − tr(
)]
2
 0 0 0 0 


0 0 0 ImR
= σ2T (
n(n − 1)
− mR )
2
(48)
である. これより, σ2T の不偏推定量は
σ̂2T = (
n(n − 1)
− mR )−1 e∗0 e∗
2
(49)
である.
5
結論と今後の課題
重力モデルのパラメータについて, 放出性, 吸収性, 関係性それぞれの要因別に回帰分析を行って
も, 不偏性が保たれる推定の条件と手続きを示した. これによって, 重力モデルの推定に当たって分
析の対象となる部分についてのみ必要なデータを収集しこれを回帰分析しても, 除外変数による影
14
響を排除できることがわかった. そして, 各パラメータの推定量だけではなく, その分散共分散行列
についても示した. これによりそれぞれのパラメータの適切な評価が可能となる. さらに, 分解する
ことで, (他の要因での除外変数問題に対して) 頑健な推定量とその分散共分散行列を得られたとい
うことは, 一括で回帰した場合と結果を比較することで, 除外変数の問題が残っているか (特定化の
問題があるか) を検定できるようになる.
今後の課題としては, まず特定化の問題に関する検定の手続きを開発することが挙がる. さらに
は, 放出性・吸収性の推定量に見られた関係性の影響を回避する手段として, 時系列方向のデータの
集積による手続きの開発が挙げられる.
数学的付録
A
A.1
vec, vech, Duplication 行列 Dn , Elimination 行列 Ln , Commutation 行列 Knn ,
Wn , Nn , Hadamard 積など
Magnus (1988); Harville (1997); Magnus and Neudecker (1999); Turkington (2002) を参考に使用し
た主な行列および演算子を説明する.
⊗: クロネッカー積 A ⊗ B = {ai j B}
: アダマール積 A B = {ai j bi j }
vec A: m × n 行列 A = {ai j } について列方向に mn × 1 ベクトル化する
vec A = (a11 , a21 , . . . , am1 , a12 , . . . , amn )0
vech A: n × n 正方行列 A = {ai j } の下三角行列を列方向に n(n + 1)/2 × 1 ベクトル化する
vech A = (a11 , a21 , . . . , am1 , a22 , . . . , ann )0
v̄(A): n × n 正方行列 A = {ai j } の対角要素を除いた下三角行列を列方向に n(n − 1)/2 × 1 ベクトル
化した
v̄(A) = (a21 , a31 , . . . , am1 , a32 , . . . , an,n−1 )0
w(A): n × n 正方行列 A の対角要素を n × 1 ベクトル化したもの 1n = w(In )
Kmn : m × n 行列について, vec A0 = Kmn vec A
Dn : n × n 対称行列について vec A = Dn vech A
Ln : n × n 正方行列について vech A = Ln vec A
L̄n : n × n 正方行列について v̄(A) = L̄n vec A
Nn : Nn ≡ 21 (In + Knn ),
Nn vec A =
1
2
vec(A + A0 )
W0n : n × n 正方行列について W0n vec A = w(A) 6
6 (?,
p.109) では, Ψn (= W0n ) として紹介されている.
15
A.2
分解行列 F̄nA
F̄nA 1n2 = L̄n (In2 − Knn ) In2 + (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (In2 − Knn ) In2 1n2 + (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (In2 − Knn ) {1n2 + 1n2 }
= L̄n (In2 − Knn )21n2
= 2L̄n (1n2 − 1n2 )
=0
(n(n − 1)/2 × 1)
(50)
F̄nA (1n ⊗ In ) = L̄n (In2 − Knn ) In2 + (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
= L̄n (In2 − Knn ) (1n ⊗ In ) + (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
∵ (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In ) = (1n ⊗ In )
= L̄n (In2 − Knn ) {(1n ⊗ In ) + (1n ⊗ In )}
= 2L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )
(51)
F̄nA (In ⊗ 1n ) = L̄n (In2 − Knn ) In2 + (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
= L̄n (In2 − Knn ) (In ⊗ 1n ) + (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
∵ (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n ) = (1n ⊗ In )
= L̄n (In2 − Knn ) {(In ⊗ 1n ) + (1n ⊗ In )}
= L̄n (In2 − Knn )(In2 + Knn )(In ⊗ 1n )
= L̄n (In2 + Knn − Knn − In2 )(In ⊗ 1n )
=0
(n(n − 1)/2 × n)
(52)
F̄nA Dn = L̄n (In2 − Knn ) In2 + (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (In2 − Knn ) Dn + (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (In2 − Knn )Dn + (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
∵ (In2 − Knn )Dn = 0
A.3
(53)
(n(n − 1)/2 × mR )
分解行列 F̄nB
F̄nB 1n2 = L̄n (Knn − In2 ) In2 − (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (Knn − In2 ) In2 1n2 − (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (Knn − In2 ) {1n2 − 1n2 }
=0
(54)
16
F̄nB (1n ⊗ In ) = L̄n (Knn − In2 ) In2 − (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
= L̄n (Knn − In2 ) (1n ⊗ In ) − (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
= L̄n (Knn − In2 ) {(1n ⊗ In ) − (1n ⊗ In )}
=0
(55)
F̄nB (In ⊗ 1n ) = L̄n (Knn − In2 ) In2 − (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
= L̄n (Knn − In2 ) (In ⊗ 1n ) − (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
= L̄n (Knn − In2 ) {(In ⊗ 1n ) − (1n ⊗ In )}
= L̄n (Knn − In2 ) {Knn (1n ⊗ In ) − (1n ⊗ In )}
= L̄n (Knn − In2 )(Knn − In2 )(1n ⊗ In )
= 2L̄n (Knn − In2 )(1n ⊗ In )
(56)
F̄nB Dn = L̄n (Knn − In2 ) In2 − (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (Knn − In2 ) Dn − (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (Knn − In2 )Dn − (Knn − In2 )(1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (−1)(Knn − In2 )(1n ⊗ In )W0n Dn
∵ (Knn − In2 )Dn = 0
= L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
A.4
(57)
分解行列 F̄Rn
F̄Rn 1n2 = L̄n (In2 + Knn ) In2 − (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (In2 + Knn ) In2 1n2 − (1n ⊗ In )W0n 1n2
= L̄n (In2 + Knn ) {1n2 − 1n2 }
=0
(58)
F̄Rn (1n ⊗ In ) = L̄n (In2 + Knn ) In2 − (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
= L̄n (In2 + Knn ) (1n ⊗ In ) − (1n ⊗ In )W0n (1n ⊗ In )
= L̄n (In2 + Knn ) {(1n ⊗ In ) − (1n ⊗ In ))}
=0
(59)
F̄Rn (In ⊗ 1n ) = L̄n (In2 + Knn ) In2 − (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
= L̄n (In2 + Knn ) (In ⊗ 1n ) − (1n ⊗ In )W0n (In ⊗ 1n )
= L̄n (In2 + Knn ) {(In ⊗ 1n ) − (1n ⊗ In )}
= L̄n (In2 + Knn ) {(In ⊗ 1n ) − Knn (In ⊗ 1n )}
= L̄n (In2 + Knn )(In2 − Knn )(In ⊗ 1n )
=0
(60)
17
F̄Rn Dn = L̄n (In2 + Knn ) In2 − (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (In2 + Knn ) Dn − (1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n (In2 + Knn )Dn − (In2 + Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
= L̄n 2Dn − (In2 + Knn )(1n ⊗ In )W0n Dn
A.5
(61)
−1
−1
Σ−1
A , Σ B , ΣR の証明
まず, Σ−1
A について考える. ここで ΣA = Σ B より, Σ B についても, 同じ結果が得られることに注意
せよ.
Σ−1
A ΣA =
=
=
=
=
1
1
{(n + 4)I n(n−1) − 2 ΣA }ΣA
2
2(n + 2)σ2T
σT
n+4
1
ΣA −
ΣA ΣA
2(n + 2)σ2T
2(n + 2)(σ2T )2
1
n+4
σ2 F̄nA F̄nA0 −
σ2 F̄nA F̄nA0 σ2T F̄nA F̄nA0
2(n + 2)σ2T T
2(n + 2)(σ2T )2 T
n + 4 A A0
1
F̄ F̄ −
F̄A F̄A0 F̄A F̄A0
2(n + 2) n n
2(n + 2) n n n n
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
−
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
× {2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
n+4
=
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
−
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
2
2(n + 2)
+ L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
=
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
−
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
2
2(n + 2)
+ L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )(L0n Ln − L0n Ln Knn L0n Ln )(In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
=
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
−
2
2(n + 2)
+ L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L0n Ln (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
− L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L0n Ln Knn L0n Ln (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
=
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
−
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
2
2(n + 2)
+ L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
18
=
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
−
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
2
2(n + 2)
+ L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )nJn (10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
=
n+4
{2I n(n−1) + L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
2(n + 2)
1
{4I n(n−1) + 4L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
−
2
2(n + 2)
+ nL̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
=
1
{2(n + 4)I n(n−1) + (n + 4)L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n
2
2(n + 2)
− 4I n(n−1) − (n + 4)L̄n (In2 − Knn )(1 ⊗ In )(10 ⊗ In )(In2 − Knn )L̄0n }
2
1
(2n + 4)I n(n−1)
=
2
2(n + 2)
= I n(n−1)
2
Σ−1
R については,



1 
n


−1
ΣR ΣR = 2 2 
ΣR
2E n(n−1) + n(n + 2)I n(n−1) − 2 ΣR 

2
2
2n σT
σT 



n
1 


n(n−1) + n(n + 2)I n(n−1) −
2E
ΣR
= 2 2 
Σ
R

2
2
2
2n σT
σT 


1 
n 2 R R0 

 2 R R0
= 2 2 
2E n(n−1) + n(n + 2)I n(n−1) − 2 σT F̄n F̄n 

 σT F̄n F̄n
2
2
2n σT
σT
1 R R0
= 2 2E n(n−1) + n(n + 2)I n(n−1) − nF̄Rn F̄R0
n F̄n F̄n
2
2
2n
1 R R0
R R0 R R0
n(n−1) F̄ F̄
= 2 2E n(n−1) F̄Rn F̄R0
+
n(n
+
2)I
−
n
F̄
F̄
F̄
F̄
n
n n
n n n n
2
2
2n
1 R R0 R R0
= 2 2nE n(n−1) + n(n + 2)F̄Rn F̄R0
−
n
F̄
F̄
F̄
F̄
n
n n n n
2
2n
1
(n + 2)
= E n(n−1) +
2I n(n−1) + L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n
2
n 2
2n
1 −
4I n(n−1) + (n + 2)L̄n (In2 + Knn )(1n ⊗ In )(10n ⊗ In )(In2 + Knn )L̄0n + 4E n(n−1)
2
2
2n
!
n+2 2
−
I n(n−1)
=
2
n
n
= I n(n−1)
(62)
2
A.6
そのほかの有用な結果
(1n ⊗ In )F̄nA0 Σ−1
A =
1
(10n ⊗ In )F̄nA0
(n + 2)σ2T
(63)
(1n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA = 2(10n ⊗ In )(In2 − Knn ) + 2nJn W0n
(1n ⊗ In )F̄nA0 F̄nA Dn = 2nJn W0n Dn
(64)
(65)
19
Knn Dn = Dn
(66)
0
L̄L̄ = I n(n−1)
(67)
L̄Knn L̄0 = 0 n(n−1)
(68)
2
2
(In2 − Knn )L̄0n L̄n (In2 − Knn ) = (In2 − Knn )
(69)
(10 ⊗ In )(In2 − Knn )(1 ⊗ In ) = nJn
(70)
(10n
⊗
In )F̄nA0 F̄nA (1n
⊗ In ) = 4nJn
(71)
L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )Jn = L̄n (In2 − Knn )(1n ⊗ In )
(72)
参考文献
樋口洋一郎 (2003)「線形化重力モデルの不偏分解」Discussion paper 03-02 東京工業大学 社会工学科.
石川義孝 (1988)『空間的相互作用モデル: その系譜と体系』地人書房.
竹内伝史・本多義明・青島縮次郎・磯部友彦 (2000)『新版交̃通工学』鹿島出版会.
Harville, David A. (1997) Matrix Algebra From a Statistician’s Perspective. Springer-Verlag.
Magnus, Jan R. and Heinz Neudecker (1999) Matrix Differential Calculus with Applications in Statistics
and Economics. Wiley Series in Probability and Statistics John Wiley & Sons reviced. edition.
Magnus, Jan R. (1988) Linear Structures. Oxford University Press.
Turkington, Darrell A. (2002) Matrix Calculus and Zero-One Matrices: Statistical and Econometric
Applications. Cambrige University Press.
20