環境資源工学科 - 早稲田大学 創造理工学部・研究科

Department of Resources and
Environmental Engineering
School of Creative Science and Engineering,
Waseda University
Outline
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
01_02
概要
環境資源工学科
Department of Resources and Environmental Engineering
かつて地球は人類にとって無限の大きさをもっていましたが、今や人類は地球に深刻な影響を与える存在へと大きく変貌しま
した。現代の都市生活を支えているエネルギー・鉱物資源は、地球46億年の歴史の中で地殻に濃縮・生成されたものですが、こ
のままのペースで人類が消費し続ければ、近い将来、天然資源の枯渇問題に直面することは疑う余地がありません。また、人類
活動の結果として、地球は温暖化、砂漠化、海水面上昇、異常気象、森林破壊、生物種の絶滅、オゾン層破壊、有害物質による
汚染など多くの環境問題にみまわれることになりました。
迫り来る資源・環境問題に関する危機を回避するための技術・方策を確立することは、人類に課せられた緊急かつ重大なテー
マです。自然からの恩恵である有限な資源を適切かつ効率的に利用するには、資源の消費を削減するとともに、人工的な資源循
環システムを構築することが不可欠です。そして、そのシステムは自然環境と調和した持続的なものでなくてはなりません。環
境資源工学科は、「自然環境と調和した循環システム」の創造を目指しています。
学科の特色
全のためには、地殻環境の実態解明および継続的なモニタ
環境資源工学科は、旧理工学部14学科のうち、機械、電
リングが重要です。天然資源の探査・開発技術、地震や軟
気の両学科についで採鉱冶金学科として1909年に創設され
弱地盤などに起因する災害防止、廃棄物の地層処分や二酸
ました。当学科も時代とともに変遷を重ね、1998年に資源
化炭素地下固定に関わる技術、地下水汚染対策など地圏環
工学科から環境資源工学科に改称して現在に至っています。
境の保全と修復を、おもな研究対象としています。
この間,当学科は鉱業、石油、素材などの関連企業に多く
の優秀な人材を送り出し、高い評価を受けてきました。
開発環境工学分野:環境破壊を最小にするには、クリーン
2007年4月から、旧理工学部は「基幹理工学部」
、
「創造理
なエネルギーを使用することです。本部門は、石油、二酸
工学部」、「先進理工学部」の3つの学部に再編され、環境
化炭素排出量の少ない天然ガス、再生可能な地熱、メタン
資源工学科は「創造理工学部」の一員として新たな第一歩
ハイドレートの開発などの研究を行います。さらに、こうし
を踏み出しました。
た化石燃料から発生する二酸化炭素の地下固定、原子力エ
環境資源工学科では、21世紀の人類に課せられた最重要
ネルギーがもたらす放射性物質の地下処理法を研究します。
課題である「環境問題」と「資源問題」の解決を目指して、
先端的な教育・研究活動に取り組んでいます。例えば、大
資源循環工学分野:天然資源や廃棄物の有効活用には、有
気・水・土壌・森林の環境診断と保全対策、作業環境の評
用成分と不用成分の分離と効率的な輸送が必要です。こう
価と対策技術の開発、廃水・排ガス処理、環境調和型資源
した分離・輸送技術の高度化をベースに、資源の流れの最
リサイクリング、天然資源・廃棄物資源からの新素材開発、
適化と、資源有効利用における環境負荷の最小化(環境調
石油・天然ガス・地熱などのエネルギー資源・鉱物資源の
和型リサイクリング)が本分野の主テーマです。
探査・開発、地下構造の解明による自然災害の予測と軽減、
地下空間の有効利用,石造文化財の保存・修復などです。
素材プロセス工学分野:素材製造工程の研究に“移動速度
地球の有限な資源量や環境容量を考えると、これからは地
論”や“化学反応工学”的な手法を用いて、工程の解析と
球を一つの有限なシステムとして理解し、地球環境と調和
改善を行っています。主としてコンピュータによるシミュ
した資源循環システムを創造することが重要です。環境資
レーションを行いますが、要となる反応速度に関する情報
源工学科では、資源工学を基盤としながら、資源循環型社
は実験により求めます。具体的には、熱化学蒸着反応の解
会の構築と地域・地球規模での環境保全を視野に入れた教
析、塩化反応の解析、断熱膨張における凝縮の解析、溶鉱
育・研究を展開しています。
炉内解析、量子化学による反応速度論等を研究します。
■専門分野
環境保全工学分野:大気環境工学分野と大気・水圏環境化
環境資源工学科には、次の6つの専門分野があります。
学分野からなります。大気環境工学分野では、NOx、エア
資源科学分野:資源の探査・開発、鉱物資源の処理・加工
ロゾル、ディーゼル排出粒子および有害大気汚染物質など
に関連して鉱物や岩石に関する基礎研究を行っています。
大気環境に関連した有害因子の計測と評価について研究し
また、岩石学・鉱物学の応用として、石造文化財をはじめ
ています。大気・水圏環境化学分野では、環境汚染物質の
とする石材の劣化機構の解明と劣化評価法に関する研究、
地球表層における循環過程と環境影響評価,森林生態系の
未利用原料鉱物や産業廃棄物・副次生成物の改質と新規素
化学健康診断、太陽光を利用した環境保全技術の開発など、
材化に関する研究を行っています。
大気・水・森林環境の診断と保全対策に関する研究に取り
組んでいます。また、地球大気の化学的恒常性調整システ
地殻情報工学分野:天然資源の効率的な利用や地圏環境保
ムの解明も目指しています。
地球・環境資源理工学専攻
Major in Earth Science, Resources and Environmental Engineering
大学院創造理工学研究科地球・環境資源理工学専攻は、様々な資源・環境問題を地球的視点から教育・研究する専攻です。そ
の内容は、大気・水・森林に関する環境問題、作業環境の評価と対策、環境調和型リサイクリング、廃棄物の処理・適正処分・
管理、新規素材開発、海洋地熱を含む天然資源開発と地下空間利用、各種資源の自然界における存在量の把握、地殻環境保全、
自然災害の予測・軽減、遺跡など人工物の保全など広範囲にわたっています。
個別の専門性を高めるとともに、幅広い専門知識を身につけ、資源・環境問題にグローバルな視点から対応できる人材育成を
目指しています。
■専門分野
地質学部門:構造地質学、構造岩石学、古生物学の3分野
資源科学部門
から構成され、堆積盆地の環境・古地理・変遷およびその
岩石学部門
後の変動過程を解明する研究、断層帯の岩石から断層の運
地質学部門
動学的解析、形成過程、形成時期の解明、中央構造線及び
地殻情報工学部門
西日本の構造発達史とテクトニクスの研究、中生代軟体動
開発環境工学部門
物の進化、化石層序学、新しい地質年代尺度の確立などに
資源循環工学部門
関する研究を行っています。
素材プロセス工学部門
■修士課程
環境保全工学部門
修士の学位を取得するには、1年以上(通常は2年間)在
学科と同じ6専門分野のほかに、岩石学部門と地質学部
学し、30単位以上を取得した上で、修士論文の審査に合格
門が設置されています。これら2部門は、地球・環境資源
することが必要です。
理工学専攻の基盤となる地球科学の分野を担っています。
■博士後期課程
岩石学部門:岩石学、同位体地球化学の2分野から構成さ
博士の学位を取得するには、第1年度のはじめに自己の所
れ、地球深部での岩石・流体環境の進化の解明、隕石中の
属する部門の中から一つの研究指導を選び、1年以上(通常
同位体分析による太陽系の起源と進化および銀河系宇宙の
は3年間)在学して必要な研究指導を受けて所定数量の業績
物質循環の解明や、地表岩石の変質過程などの研究を行っ
を上げた後、博士論文を提出して最終試験に合格すること
ています。
が必要です。
環境調和型資源循環システムの創造
資源循環工学
環境保全工学
素材プロセス工学
大気
温暖化・汚染・
オゾン層破壊
地球
システム
宇宙
資源問題
太陽
水
環境問題
資源循環システム
生物
熱
生物絶滅・
森林破壊
汚染・海面
上昇・異常
気象
鉱物・エネル
ギー資源
資源枯渇・
汚染・砂漠化
岩石・土壌
地殻情報工学
開発環境工学
資源科学
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
Curriculum
カリキュラム
03
り立ちとその構成物質(地球物質)についての基礎
知識を習得します。
(学部合併)
応用地球物理学
環境界面工学特論
資源分離シミュレーション
地球物理情報工学
地球化学情報工学
素材工学特論
金属生産工学(学部合併)
素材精製プロセス工学特論
掘削工学特論
探査工学特論
同位体環境学(学部合併)
地震探査工学
海洋地球環境学
地圏物理探査工学
金属材料学
同位体環境学
環境界面工学
実務研修
化学統計力学
FORTRANプログラミング入門
FORTRANプログラミング
鉱物資源開発技術の最先端
石油・天然ガス開発技術の最先端
*環境資源と社会
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
04
研究環境
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
Interview
インタビュー
05_06
ジオポリマーを、
低コスト・短時間で合成するために
山崎研究室
修士1年
古根莉香子
石炭火力発電から排出される石炭スラグを用いて、耐酸性、耐熱性に優れ、コ
ンクリート以上に高強度といった特徴を持つジオポリマー硬化体の研究をしてい
ます。より機能性の高いジオポリマーを低コスト、短時間で合成することが目標
です。思うような結果が得られなかったり、失敗することも多く、その度に研究
の難しさを痛感しますが、一方で自分で考え試行錯誤しながらより良い成果を目
指すことのやりがいと達成感があります。
最終処分場の逼迫や資源の有限性を考えると廃棄物を資源へ転換し再利用する
ことは必要不可欠です。資源、エネルギー開発だけでなく環境問題にも目を向け、
自然環境と調和した持続的な社会を目指すことが環境資源工学科のテーマです。
1年次から専門科目を学ぶことで幅広く知識を身につけることができ、学科全体
の人数も70名ほどで一体感があるのも特徴です。また、文系キャンパスとは少し
離れていますが、サークル活動や学園祭などで他学部とも交流が持てたり、早稲
田大学の文化や雰囲気に触れることができ、とても楽しい日々を送っています。
今後は、研究を通して学んだことを活かし、将来社会で活躍できるようにさら
に成長していきたいと思っています。
修士1年
ひかる
松本 星
環境資源工学科の一番の魅力は、環境問題や資源問題など「今一番、日本や世
界が抱えている問題」を扱えることです。ありがちなことを言っていそうですが、
教授の講義や環境問題に関するニュースを聞いていると、そのことを実感します。
私は中学生の時に環境問題に興味を持ち、環境問題を知りたいという「ふわっ」
とした思いでこの学科に進学しました。しかし研究室では国との共同研究や将来
実用化されるであろう技術の検証などを行い、
「自分の研究が世の中のためにな
る」ことを体で感じることができ、はっきりした目的をもって勉強しています。
私が所属している研究室でも、火山灰土壌を使った水の浄化作用の検証を行って
おり、日々研究に尽力しています。
注目されている問題を、
仲間とともに
香村研究室
また、本学科の魅力は「仲間」です。生徒は1学年70人前後と少人数ですから、
同期皆と語り合うようになります。研究室では研究試料を採取するためにフィー
ルドにでかけることも多く、先輩や後輩との縦のつながりも強くなります。
さらに、本学科には多様なテーマがあり一人一人の興味も違います。卒業し10
年・20年経た後に、様々な方面に行った仲間と協力して、世の中に対して意義あ
る仕事をすることを今から楽しみしています。
安全、安定した
石油生産技術を提案する
古井研究室
学部4年
金沢 駿
私たちの研究室では石油やガスの生産や坑井掘削における地層の応力変化や安
定性を調べる「岩盤工学」と坑井の産出能力向上を目指す「生産工学」を主軸と
して、岩石の破壊実験や数値シミュレーションモデルの構築などを行っています。
研究により石油生産コスト低減と安全性向上を実現し、安定したエネルギー供給
に貢献することが私たちの目的です。
環境資源工学科は、資源開発、物質開発、環境浄化という異なる分野を併せ持
つ点が特徴的です。そのため、1、2年では鉱物学、熱力学、電磁気学、構造力学、
機器分析化学、冶金工学など幅広い分野を教わり、様々な分野から3、4年で専門
的に学びたい分野を選ぶことができるという利点があります。
私は中学・高校時代には化学分野に興味がありましたが、本学科の授業を受け
るなかで徐々に資源開発分野に興味が湧きました。そして、石油資源を扱うこと
に加え、丁寧にご指導下さる教授方と、複雑な方程式が解けてしまうプログラミ
ングの不思議さに惹かれて、この分野を選びました。まだ研究室生活は始まって
いませんが、先ずは岩盤工学の基礎理論と、それに対して具体的な解を与えてく
れるプログラミングの両方の力をつけることが目標です。
より効率的な
銅イオンの浸出を
三谷友梧
所研究室
修士1年
私たちは「資源・環境に関わる技術の確立やプロセスの最適化」を目的とし、
実験やシミュレーションを用いてアプローチしています。当研究室でのテーマは
社会的ニーズに沿ったものが多いことが特徴の1つです。
私自身の研究は、黄銅鉱からの銅イオン浸出の効率化です。近年、銅鉱石の品
位は減少傾向にあり、既存のプロセスでの処理が難しくなってきているのが現状
です。そこで銅鉱石を硫酸で溶かし、銅イオンを回収するプロセスが導入されつ
つありますが、その効率はまだ高くありません。私の研究ではこの化学的なアプ
ローチだけではなく、鉱石を粉砕する物理的なアプローチを同時に行うことによ
って、1+1を2以上にするような、より効率的な銅イオンの浸出に取り組んでい
ます。
このテーマは所研究室では私が初めて取り組み始めました。そのため手探りで
実験を始めたのですが、当初はなかなか結果が出ず実験の難しさを感じました。
しかし一方で、実験方法を初めから模索していくプロセスが非常に面白いと感じ
ました。今後は多くの国内外での学会発表を予定しています。学会を通じて自身
の研究をわかりやすく伝える勉強ができることを楽しみにしています。
修士1年
野田魁人
日常生活で使っている電子製品にはシリコン半導体素子が使われているものが
多く、それは鋳造したシリコン単結晶を薄く切断したシリコンウェーハから作ら
れます。半導体素子の技術は日々急速に進歩しており、その多様な用途に適合す
るウェーハの製造が重要になってきています。ウェーハの品質向上のために行わ
れる特殊加工技術の一つにエピタキシャル成長法があり、これは主にトリクロロ
シランを介して単結晶シリコン薄膜をウェーハ表面に成長させる方法です。その
成長機構は未だ解明されておらず、現行の方法が最善かどうか分かっていません。
私は量子化学と反応速度論に基づく反応成長シミュレーションによりこの機構を
研究しています。
研究がどれだけ進むかは
自分のやる気次第
不破研究室
研究は自分のやる気次第でいくらでも進められます。特にシミュレーションは
実験と違って何度でも失敗できるので思いついたことを何でも試すことができま
す。何度失敗しても、試行錯誤の末にようやく成功したときは多くのことを学べ
るだけではなく、その達成感は他では得がたいものです。大学院に進学しても研
究に打ち込んで、自分なりの研究を完成させたいです。そのことがきっとこれか
らの人生において大きな自信につながると思います。
放射性物質の
効率的な除染のために
大河内研究室
修士1年
金野俊太郎
2011年3月の原発事故は、広範囲に渡って放射性物質による汚染をもたらしま
した。平成27年現在でも、福島県内に住んでいた約8万人の方々が避難を余儀な
くされています。
私の研究では、福島県の森林内における放射性物質の動態解明と、それを活か
した新しい除染方法の開発を目指しています。動態解明では、毎月福島県の汚染
地域に立ち入り、現地の水や土壌、落葉などをサンプリングして放射能を測定し
ています。継続的に観測を続けることによって、放射性物質の動きが見えてくる
のです。今後、ますます多くの地域で除染が行われていくことを考えると、除染
に伴って発生する汚染廃棄物の量を最小限に抑えなくてはなりません。放射性物
質の動きを把握して、その知見を活かした効率の良い除染を行っていくことが重
要です。
研究室はまさに家族といった雰囲気です。毎日顔を合わせるメンバーと濃密な
日々を送っています。それぞれの学生が自分の研究テーマを持って取り組んでい
ますが、互いが互いの研究についてよく知っているので、学生の間でも日常会話
のように議論が飛び交います。結束が固く、助け合いながら日々活動しているの
が本研究室の特色と言えるでしょう。
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
Future
進路
07
卒業生の進路
主な就職先
ンメント、三菱重工環境科学エンジニアリング、日
本学科・専攻の卒業・修了生は、石油・エネルギ
日本電気、NTT、京セラ、電気化学工業、YKK、
立プラントテクノロジー、長谷川香料、ヤクルト、
ー、鉄鋼・金属・鉱業、機械・プラント、環境・リ
日本たばこ産業、旭硝子、日本板硝子、INAX、TOTO、
ライオン、パロマ、大日本印刷、信越化学工業、旭
サイクル、材料・素材などの環境と資源に関わる各
ノリタケカンパニー、岩谷産業、ニチアス、荏原製
化成、日清フーズ、日立製作所、新菱冷熱工業、ダ
種製造業など本学科の教育・研究内容と密接に関わ
作所、日本リーバ、キリンビール、島津製作所、東
イキン工業、海洋研究開発機構、JICA、NTTコミュ
る企業に就職しています。また、化学・食品・製薬、
洋エンジニアリング、三菱マテリアル、同和鉱業、
ニケーションズ、日本エアーテック、日本IBM、IHI、
情報通信、商社、官公庁、各種行政法人など様々な
住友金属工業、太平洋セメント、JX日鉱日石開発、
栗田工業、水ing、JAL、アクセンチュア、CRC総合
分野でも活躍しています。
三井金属資源開発、吉澤石灰工業、アジア航測、石
研究所、大和総研、日本総合研究所、日本銀行、日
就職希望者の就職率は100%で、学科卒業生の80
油天然ガス・金属鉱物資源機構、JX日鉱日石エネル
本原子力研究所、東京電力、中部電力、東京ガス、
%以上が大学院に進学しています。大学院進学者の
ギー、出光興産、石油資源開発、国際石油開発帝石、
三菱商事、三井物産、コスモ石油、日本オイルエン
大部分が本専攻に進学しますが、他専攻や他大学に
地熱技術開発、日本海洋掘削、応用地質、ENEOS
ジニアリング、三井石油開発、住友商事、伊藤忠商
進学する例もあります。2011年度には基幹理工学
グローブ、新キャタピラー三菱、日産自動車、本田
事、JR東日本、経済産業省、東京都
研究科に1名、東京大学大学院に1名、東京工業大学
技研工業、ヤマハ、ブリヂストン、富士フイルム、
大学院に1名が進学しました。
東芝、コマツ、王子製紙,住友重機工業エンバイロ
未定
学部卒業生(2011年度)
1%
学部・修士・就職先(2011年度)
未定
就職
6%
16%
石油・エネルギー
20%
その他
16%
大学院進学
83%
情報通信
鉄鋼・金属・鉱業
6%
14%
商社
7%
機械・プラント
化学・食品・製薬
9%
環境・リサイクル
10 %
奨学金制度
を通して、環境資源工学科の現役学生部会(資友会)
学部・学科共通の奨学金制度の他に、環境資源工
の活動を支援しています。
学科独自の2つの奨学金制度があります。
吉澤兵左奨学金
環境資源工学会奨学金
吉澤兵左氏(現吉澤石灰工業株式会社会長)は、
環境資源工学会は、当学科の卒業生を正会員とす
昭和25年に本学採鉱冶金学科(現環境資源工学科の
る団体です。この会は会員相互の親睦を図り、併せ
前身)を卒業されましたが、母校特に出身学科の教
て早稲田大学理工学部環境資源工学科の後援を目的
育の発展を願われ、平成元年に学生育英資金を寄贈
として設立されました。主な活動としては、定期総
されました。大学は平成2年、同氏に名誉賛助員の
会の開催、環境資源工学会報の発行、会員名簿の発
称号を贈呈するとともに、この資金を基に奨学基金
行の他、「環境資源工学会奨学基金」により当学科
を設立して、本専攻大学院生に奨学金を給付し、勉
学生の勉学を支援しております。さらに様々な行事
学を支援しています。
13%
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
学科主任
斎藤 章
Research Activities
09_13
挨拶
SAITO, Akira
教授
■ 探査工学研究室
人類の持続的発展に寄与する人材を育てる
人類が農耕・牧畜などの生産活動をはじめてからお
たのもこの頃からである。それ以後、資源ナショナリ
よそ1万年が経過する。しかし、人間社会の進歩や地
ズムの台頭、開発途上であった国々の発展等で、国際
球の環境に大きな影響を与える起点となった産業革命
的な資源争奪戦が繰り広げられるようになり、資源の
からはわずか200年が経過したにすぎない。この間に、
獲得はわが国の重要な外交課題の一つとなってきた。
鉱業・工業等の産業は発展・多様化し、その副産物と
それに伴い、有限である資源の再利用といった考えの
して鉱害・公害・各種環境汚染が生じ、現在では地球
重要性も認識され始めた。廃棄された物質から有用な
環境の破壊も懸念されている。また、人間の果てしな
資源をリサイクルする技術の開発である。さらに、昨
い欲求から、社会は資源多消費型へと変化し、多量か
今の環境問題は、ローカルな視点ばかりではなく、グ
つ多種類の廃棄物が排出されているのが現状である。
ローバルな視点からの取り組みも必要であることを示
このような状況のもとで、環境資源工学科は2009
唆している。換言すると、資源・環境問題は、「人と
年度に100周年を迎えた。この間、学科名称も種々変
自然との関わり合い」に加えて「人と人との関わり合
更されたが、これも資源の開発から、その利用・循環・
い」といった面も含むようになり、より複雑化してき
廃棄、そしてそれらの活動から生ずる環境問題までに
たと言えよう。
教育・研究範囲を広げた結果である。ここで資源・環
わが学科はこのような動きに対応できる人材を100
境における変遷を時系列的に概観してみたい。学科創
余年に亘って適宜輩出してきた。今後は、「地球・環
立初期から中期にかけては、国内の金属鉱山・炭鉱等
境・資源」をキ-ワードとして、人類の持続的発展に
が盛んに開発・稼業された。しかし、1960年代を境
寄与できる人材の育成に力を注ぎたい。
に、これらの国内資源は国際競争力を失い、資源開発
以後のページに各教員が取り組んでいる研究内容お
の目は海外へと向けられるようになった。即ち、海外
よびその姿勢が記されている。熟読し、文章のなかに
の鉱床や油田の探査・開発が活発となり、日本の近海
含まれる創造性・先進性を感じ取って戴ければ望外の
では海底油田も開発され始めた。その一方、産業の発
喜びである。
展とともに、鉱害・公害・労働災害等が社会問題化し
環境資源工学科の分野と教員
資源科学分野 ̶̶̶̶̶ 内田悦生、山﨑淳司
地殻情報工学分野 ̶̶̶ 斉藤 章、香村一夫
開発環境工学分野 ̶̶̶ 栗原正典、古井健二
資源循環工学分野 ̶̶̶ 大和田秀二、所 千晴
環境保全工学分野 ̶̶̶ 名古屋俊士、大河内 博
素材プロセス工学分野 ̶ 不破章雄
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
UCHIDA, Etsuo
YAMAZAKI, Atsushi
未利用の資源鉱物や原料となりえる無機廃棄物の産状と性状を明
らかにし、それらを高機能性と環境制御性を兼ね備えた素材・材料
へ転換する最適な技術を開発しています。そのための基礎研究(鉱
物科学、資源物質科学、結晶物理化学)として、資源鉱物の記載と
キャラクタリゼーション、新しい機能性素材物質への転換合成、そ
れら対象物質の結晶構造解析および物性発現機構の解明と制御、さ
らに高精度物性測定法の開発、などを行っています。また、応用研
究(鉱物工学、無機材料工学)として、対象物質の分布・排出状況
の調査と予測、各種無機廃棄物の機能性素材への転換プロセスの開
発、高機能性素材・材料の創製・開発などを行っています。
VOCガスの吸着特性をもった室内建材の研究・開発を行
っています。
物理探査のセンサとして、磁気抵抗素子、磁気インピー
ダンス(MI)素子、超電導素子(SQUID)などの適用を研
究している。従来の誘導コイルよりも高性能で、小型軽
量の実用性が高いセンサの開発を行っている。特に低い
地下の情報を得るための総合科学
周波数で感度が高くなるために、海底資源や石油・金属
探査工学は、電磁場・弾性波・磁気・重力などの物理現象を利用して、
資源・地熱などの比較的深度の大きい調査への適用を考
地下の情報を得るための技術で、エネルギー・金属・地下水などの地下
えている。
資源や環境・防災・土木建設などの調査に広く応用されている。原理的
には医学分野で用いられる超音波エコーやCTスキャン・MRIなどと同様
水なしでは人間は1週間も生きられない。汚染された水
の技術であるが、地下が極めて複雑で深度も大きいために克服すべき課
でも飲まざるを得ない人々が世界では非常に多く、乳幼
題が多い。特に電磁場を使った探査を中心として、新しいセンサや測定
児の死亡率を高くしている大きな原因となっている。き
装置の開発、数値シミュレーション技術の開発などを行っている。最近
れいな水を供給する地下水の探査技術は極めて重要で、
は海底熱水鉱床に対する総合的な探査技術の研究も進めている。
日本は国際貢献できる高い技術を持っている。こうした
技術に対してさらに研究開発を進め、国際的に活躍でき
る人材の育成も当研究室の取り組みの一つである。
近年は、海底熱水鉱床が日本の広い排他的経済水域内で
発見されつつあり、その実用レベルでの開発は将来の資
源問題を考えた場合に極めて重要である。3次元の数値
シミュレーションや、水槽モデル実験、海域での実験な
どを行いながら、近い将来の海底電磁探査技術の実用化
を目指す研究に取り組んでいる。
海底熱水鉱床の電磁探査
KAMURA, Kazuo
環境破壊の履歴とメカニズムの解明:産業革命以後、人
間活動は自然環境に強烈なインパクトを与えてきた。こ
の影響は地下の堆積物に情報として記録されている。地
質科学および地球物理学的手法を駆使して、それらの情
報を抽出・解析し、これからの地球環境保全に役立てる
ことを目的とした研究である。
(写真:ため池の底質サン
プル採取風景)
環境修復材料の開発:日本は火山国である。そして国土
の多くは火山灰土壌に覆われている。この火山灰土壌は
粘土鉱物を多く含み、重金属や有機物を吸着・捕捉する
特性を有している。このような自然起源の土壌の有効利
用をめざして、各土壌の基礎性状のデータベース化およ
び汚染水浄化資材としての開発をめざした研究である。
(写真:汚染水浄化実験試料の採取風景)
地下に埋められた廃棄資源の有効利用:リサイクル法制
定以前に埋め立てられた最終処分場には多種・多量なメ
タル類が賦存している可能性が高い。これらの埋立層を
鉱床として捉え、埋立層内におけるメタル類濃集メカニ
ズムを解明するとともに、その濃集ゾーンを推定するた
めに有効な探査・解析法を開発する研究である。
(写真:
土槽を用いた比抵抗探査実験)
廃棄物埋立層の3次元的な可視化
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
Research Activities
11_12
■石油工学研究室
栗原正典 研究室
KURIHARA, Masanori
貯留層の数値モデリング・シミュレーション─油ガス田
開発、地下水汚染処理、二酸化炭素地下貯留、放射性廃
棄物地中隔離など、地下流体資源の開発や環境保全のた
めの地下利用では、対象となる地下貯留層がどのような
特性を持っているか、流体はどのように流れるか、どれ
くらいのエネルギーが産出可能か、などを厳密に推定・
予測することが重要な課題となります。そのために、地
質統計学などの高度な手法を駆使して貯留層を数値モデ
ル化したり、流体流動を記述した数値シミュレータを開
発・応用したりする研究を行っています。
環境と調和した石油・天然ガス、非在来型資源、新エネルギーの開発
東日本大震災、とりわけ福島第一原子力発電所の事故によって、オイルショッ
ク以来と言っても良いくらいにエネルギーに再び関心が集まっています。原子力
発電からの脱却や再生可能(自然)エネルギーの開発が叫ばれていますが、実践
的な観点からは、石油・天然ガスが短期~中期的にエネルギーの主役を担わざ
るを得ず、その重要性が再認識されていると考えられます。それだけに、少しでも
多くの石油・天然ガス資源を発見・開発・生産できるよう、各種の研究・技術開
発が続けられています。石油工学、とりわけ油層工学はその中心的役割を果たす
ものですが、本研究室ではこの石油工学・油層工学を主題として、
(a)油層工学
諸現象の解明、
(b)油ガス層評価(キャラクタリゼーション、油層モデリング)技
術の向上、
(c)石油増進回収(IOR/EOR)技術の開発をテーマに研究を行って
います。さらには石油工学の発展形として、
(d)非在来型炭化水素資源・新エネ
ルギー開発技術に関する研究、石油工学の応用形として、
(e)環境と調和したエ
ネルギー開発技術に関する研究をもテーマとしています。これら5つの研究テー
マの柱に対して、
(1)情報収集・整理・分析、
(2)基礎理論の確立、
(3)実験に
よる検証、
(4)数値シミュレータの開発、
(5)数値シミュレーションによる検証、
の5種類のアプローチ手法を適用して、個々の研究を行っています。
非在来型炭化水素資源の開発─エネルギー需要の増加や
通常の石油・天然ガスの生産量減退を補完するエネルギ
ー源として、重質油、シェールガス・オイル、メタンハ
イドレートなどの非在来型の炭化水素資源が注目されて
います。これらは通常の石油・天然ガスよりも遥かに大
きな賦存量を持つと期待されていますが、特殊な性状で
あるために、生産するには高度な技術が必要です。実験
や数値計算によって、地下燃焼・改質などを含むこれら
の資源の生産技術の開発に取り組んでいます。
石油増進回収技術・環境保全技術の開発─通常の生産手
法では、油層に胚胎する石油のせいぜい30%くらいしか
回収することができません。そこで、油層に二酸化炭素
や化学薬品を圧入して石油の回収量を増加させる増進
回収技術が盛んに研究されています。微生物を油層に圧
入・増殖して地下で化学薬品を生成させたり、油の性質
を変えたりする手法もその1つですが、ある種の微生物
は油を分解するため、油汚濁の浄化などに利用できます。
二酸化炭素地下貯留技術なども含め、環境を保全しつつ
エネルギーを開発する研究も行っています。
Schlumberger社
Oilfield Review
January 1992より
抜粋・編集
■岩盤・石油生産工学研究室
古井健二 研究室
研究室
FURUI, Kenji
ジオメカニクス(岩盤工学)
:地上、海上から地下深く掘
削する、また環境負荷を最小限に抑えながらガス・油を
効率よく生産するには、地層圧力や岩石の諸性質を正確
近年深海での石油・天然ガスの開発やシェールガス・オイルやコール
ベットメタンなどの非在来型エネルギー資源の開発が急速に進められて
います。しかしながら、深海での探鉱・開発や非在来型資源の開発は難
に知る必要があります。研究室では小型の三軸実験装置
やフィールドデータで岩石の破壊、歪を測定して物理的
挙動を把握したり、様々な地層圧力測定方法に関する研
究に取り組んでいます。
易度が高く、環境負荷の増大も懸念されています。世界各国で地球温暖
化対策の温室効果ガスの削減が議論される今日、石油掘削技術や天然ガ
スの地下貯蔵で蓄積された技術は二酸化炭素圧入・貯留に応用できる最
数値計算モデルの開発:間隙流体の影響、岩石の非線形
性や破壊を取り扱うといった実際に見られる複雑な問題
も実用的な技術として期待されています。当研究室ではエネルギー資源
を解くには数値シミュレーションによる解析が不可欠と
開発プロジェクトの掘削・生産(圧入)
・貯留における操業の最適化を研
なります。主に有限要素法、境界要素法、有限差分法と
究目的とし、ジオメカニクスの知見から地球環境と調和したエネルギー
いった数値計算手法を用いたジオメカニクス及び間隙流
生産技術の開発を目指しています。
体の流動モデルの開発・応用研究を行っています。
石油生産工学:シェールのような低浸透率層の開発では
水圧破砕法(フラクチャリング)の最適化が重要となり
ます。石油、天然ガスの生産や二酸化炭素や廃棄物の地
下圧入・貯留では帽岩及び油層内の応力変化により地盤
沈下、鋼管破壊や周辺の断層の安定性を考慮する必要が
あります。研究室では数値ジオメカニクスモデルを適用
して資源開発の経済性、安全性の向上に貢献する研究を
行っています。
■石油工学研究室/栗原正典 研究室
■資源循環工学研究室/大和田秀二 研究室
■岩盤・石油生産工学研究室/古井健二 研究室
■資源循環工学研究室/所 千晴 研究室
■資源循環工学研究室
大和田秀二 研究室
OWADA, Shuji
破砕・粉砕研究:当研究室における破砕・粉砕の目的は、
選別の前処理として、複合成分の単体分離促進,粒度調
整、選択粉砕、減容化等です。したがって、無闇に微粉
化するのではなく、粗粒段階での各種成分間境界面での
資源循環の適正化に関して、成分分離の高度化という技術的アプロー
優先破壊や多成分系での各成分の選択粉砕等の挙動を研
チを行っています。分離技術は大別して、ソフトセパレーションとハー
究対象としています。左図は、電気パルス粉砕により生
ドセパレーションの2種類に分類されます。それぞれの特徴を表1に示し
成した異相境界面での亀裂(赤色部分)です。
ましたが、循環型社会の構築にはこれらを適正に組み合わせることが肝
要です。特にソフトセパレーション技術は、環境負荷の発生が少ないが、
その理論的背景が薄弱で未解決の問題も多く、本研究室でのメイントピ
高度選別・水処理研究:各種選別・水処理技術の高度化
ックとなっています。具体的には、固体の粒度、形状、密度、電気的・
磁気的特性、光学的特性、表面ぬれ性、化学組成、等々の差を利用して
を目的として、各種現象の解明を行っています。最近は
低濃度
室でモデル化したプラスチック表面への界面活性剤(湿
類に分類でき、それぞれに固有の特徴を持つことになります。また、成
分分離を行うための前処理として破砕・粉砕の段階も重要であり、この
静電選別・浮選の高度化、高精度廃水処理を目指した新
手法開発などがテーマとなっています。図は、わが研究
各主成分を分離します。こうした特性は、バルク物性と表面物性の2種
高濃度
潤剤)の吸着機構を示しています。
操作において分離の限界が決定するといっても過言でなく、この分野も
本研究室での主たる研究対象です。
実廃棄物適用研究:自動車、家電製品等を構成する各種
ソフト・ハードセパレーション技術の比較
比較項目
ソフト・セパレーション(選別技術) ハード・セパレーション(化学処理技術)
特徴
結晶構造を破壊せずに分離
不均質系の分離(固体の分離)
低(省物質・エネルギー的)
各操作に関する基礎理論のみ存在
低
そのまま
環境負荷
理論的背景
分離の信頼性
有(無)害物質
結晶構造を破壊して分離
均一系の分離(イオンの分離)
高(高物質・エネルギー消費的)
各操作・イオンに対して理論あり
高
無(有)害化の可能性
■資源循環工学研究室
所 千晴 研究室
素材の解体・分離技術や、廃棄物資源であるシュレッダ
ーダスト、アルミドロス、赤泥、石膏ボード、土壌、廃水
等の循環系への適正回帰、有価物回収、有害物除去等を
目的として研究を進めています。左図は、当研究室が参
画しているグリーン水素モデル社会構築プロジェクトに
おけるアルミドロスからの水素製造の実証プラントです。
TOKORO, Chiharu
廃水処理メカニズムの解明─廃水処理技術の更なる高度
化を目指し、溶液内の重金属有害元素が固体へ吸着また
は沈殿生成する機構の解明やモデリングを行っています。
図は、種々の重金属有害元素に優れた吸着能を持ち、廃
資源循環・環境浄化のための粉体プロセッシング
地球環境との調和を図りながら廃棄物の処理や再生を行う「循環型社
会」の構築に向けて、技術的に貢献するための粉体プロセッシングに関
する研究を行っています。粉体プロセッシングという観点から資源循環
水処理の分野で重要視されている水酸化第二鉄(α-FeO
OH)へのヒ素(As
(V)
)の種々の吸着形態を示したもの
です。
や環境浄化に必要な技術をとらえたとき、「廃棄物」または「環境汚染」
と総称される多種多様な粒子が気体または液体中に入り混じった状態か
固液界面特性を利用した廃水処理─廃水中に存在する微
ら、有用な粒子または有害な粒子を分離するという操作にほかなりませ
粒の有害物や細菌は、沈降速度が極めて遅いため従来の
ん。私たちはそれらの技術の中でも環境負荷が小さいと考えられる固体
沈降法による固液分離は困難ですが、微粒子特有の界面
表面または固液界面の特性を利用した技術の研究に取り組んでいます。
特性を利用することで環境負荷の小さい固液分離が可能
粉体プロセッシングは最も古い産業技術の1つですが、その理論は奥深
く、未だに多くの現象が解明されていません。近年は、コンピュータの
となります。図は、廃水中の細菌を繊維で捕捉した様子
を走査型電子顕微鏡で観察したものです。
発達から粉体シミュレーション分野も目覚しい発展をとげており、我々
も種々の現象解明や予測に役立てています。
粉体シミュレーションの応用─粒子1つ1つの運動方程式
循環型社会の構築に向けて
を解きながら粉体全体の挙動を解析する離散要素シミュ
レーションによって、粉体の連続的挙動のみならず、分
資源
粉体プロセッシング
粉砕・固固分離・固液分離
廃棄物
離や閉塞などの離散的な挙動をも解析できるようになり
つつあります。図は、比重のわずかに異なる2つの粒子
(●と◯)が乾式流動層によって分離される様子を離散要
素シミュレーションにより解析した結果です。
Department of
Resources and Environmental Engineering
Department of Earth Sciences,
Resources and Environmental Engineering
Department of Resources and
Environmental Engineering
School of Creative Science and Engineering,
Waseda University
ⒸVGL / a.collectionRF/ amanaimages
D
E
S
W