ATC 分類および DDD 付与に関するガイド ライン 第 17 版 注意事項:翻訳の責任について 本内容は WHO が公開している「医薬品の使用状況調査の概要」を一部翻訳しています。 しかしながら、本内容はまだ、当該管理部局より正式な許可を受け取っていません。したが って、我々は任意の障害や、この翻訳された内容のアプリケーションからのトラブルの場合 は責任を負いかねます。本資料を使用したことによって生じたあらゆる結果、またはいかな る損害に対して、製作者は一切の責任を負わない事とさせていただきます。使用者個人の責 任において使用してください。 また、本資料は新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の支援のも とに作成されています。 既版: 1990:ATC 分類に関するガイドライン 1) 1991:DDD に関するガイドライン 1) 1993:ATC 分類に関するガイドライン 1993:DDD に関するガイドライン 1996:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 1998:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 1996:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2000:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2001:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2002:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2003:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2004:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2005:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2006:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2007:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2008:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2009:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2010:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2011:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2012:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 2013:ATC 分類および DDD 付与に関するガイドライン 研究代表者:村木 優一 目次 Ⅰ. 緒言 .............................................................................................................................. 3 II. 解剖治療化学(ATC)分類システム .......................................................................... 7 III. DDD(規定 1 日用量) ............................................................................................. 13 IV. ATC/DDD システムの使用および誤用................................................................... 21 V. ATC/DDD 付与および変更のための手順およびデータ要件 ..................................... 27 VI. ACT index with DDDs の概要 ................................................................................. 32 VII. その他の ATC 分類システム ..................................................................................... 33 VIII. ATC/DDD の解釈に関するガイドライン ........................................................... 34 Ⅰ. 緒言 A. ATC/DDD システムの歴史 医薬品使用状況調査の領域に対する関心は、それが 1960 年代に生まれて以降、年々高まっ ている。先駆的な研究を行ったのは WHO 欧州事務局の 2 人のコンサルタント、Engel お よび Siderius であった(医薬品の消費量:1966~1967 年の調査報告書。WHO 欧州事務 局、1968 年) 。彼らが実施した 1966~1967 年中の欧州 6 ヵ国における医薬品消費量の研究 から、医薬品の使用状況が国民間で大きく異なることが明らかとなった。この研究後、1969 年にオスロにおいて、 「医薬品の消費量」と題するシンポジウムが WHO 欧州事務局の主催 で開催された。このシンポジウムでは、医薬品使用状況調査のための、国際的に認められた 分類システムが必要であることで意見が一致した。医薬品使用状況調査グループ(DURG) もこのシンポジウムにおいて設立され、医薬品使用状況調査の国際的に利用可能な方法の 開発を任せられた。ノルウェーの研究者グループは、欧州医薬品市場調査協会(EphMRA) の分類システムを改変、拡大することによって、解剖治療化学(ATC)分類として知られる システムを作成した。医薬品の使用量を測定するためには、分類システムと測定単位の両方 を持っていることが重要である。従来の測定単位に対する反論に対処するために、医薬品使 用状況調査に用いるための規定 1 日用量(DDD)と呼ばれる専門的測定単位が作成された。 1975 年に設立された北欧医療審議会(NLN)はノルウェーの研究者と協力し、さらに ATC /DDD システムを開発した。NLN は ATC/DDD 法を用いた北欧医療統計(Nordic Statistics on Medicines)を、1976 年に初めて発表した。それ以来、ATC/DDD システム に対する関心は高まりつつある。 B. 現時点における各組織の ATC/DDD システムに対する責務 1. WHO 医薬品統計法共同研究センター 1981 年、WHO 欧州事務局は、国際的な医薬品使用状況調査に対して ATC/DDD システ ムを推奨した。このことに関連して、またこの手法の利用をさらに広げるために、ATC/ DDD システムの利用をコーディネートする中心組織が必要であった。そのため、WHO 医 薬品統計法共同研究センターが 1982 年、オスロにおいて設立された。センターは 2001 年 までは Norwegian Medicinal Depot(NMD)に位置していた。2002 年 1 月以降は、セン ターはノルウェー公衆衛生研究所に所属している。ノルウェー政府がセンターに資金援助 を行っている。1996 年、WHO は ATC/DDD システムの使用を医薬品使用状況調査の国 際標準として発展させることの必要性を認識した。そのため、センターはコペンハーゲンの WHO 欧州事務局ではなく、ジュネーブの WHO 本部に直接リンクされることとなった。こ のことは、各国の医薬品使用状況調査を徹底的に統合し、また必要な医薬品への全世界的ア クセスと、特に開発途上国における医薬品の合理的使用の達成を目指して WHO が主導権 を握るために、重要と見なされた。標準化され検証された医薬品の使用に関する情報へのア クセスは、医薬品使用パターンの監査、問題の同定、教育またはそれ以外の介入ならびに介 入のアウトカムのモニタリングを可能とするためには不可欠である。1996 年、WHO 本部 とノルウェー政府の間で初めての協定が結ばれた。WHO 医薬品統計法共同研究センターと してのノルウェー公衆衛生研究所、薬剤疫学部門の最新の指定変更は、2012 年 5 月に実施 された。この協定によって、ATC/DDD 分類法に関連した活動はすべて、WHO が決定し た方針に従って実行することとなった。センターの主な活動は、次の項目を含めた ATC/ DDD システムの開発と維持である: - 医薬品を ATC システムに従って分類する。 - ATC コードが付与された医薬品について DDD を確立する。 - ATC 分類システムおよび DDD を再検討し、必要に応じて改訂する。 - 医薬品使用状況分野の研究者と協力し、ATC システムの実用的な利用を促進し、 また利用に影響を及ぼす。 - ATC/DDD 法の研修コースを企画し、そのようなコースや他者が企画したセミナ ーを実施する。 - 各国に対し、国内の医薬品分類システムを設定し、医薬品消費の情報を利用する能 力の構築を技術的に援助する。 2. WHO 医薬品統計法国際ワーキンググループ ATC/DDD システムをグローバル化することが決定された 1996 年、WHO 医薬品管理・ 政策部は WHO 医薬品統計法国際ワーキンググループを設立した。この国際ワーキンググ ループは、WHO 医薬品評価および医薬品政策・管理のための専門家諮問委員会から引き抜 かれた 12 名のメンバーで構成されている。国際ワーキンググループのメンバーは WHO 本 部が、広範にわたる地理的背景、また臨床薬理学、臨床医学、国際公衆衛生、医薬品使用状 況および医薬品規制を含む専門分野を網羅するように選出されている。国際ワーキンググ ループのメンバーは WHO の世界 6 地域を代表しており、ATC/DDD システムの様々なユ ーザーおよび様々な国民性を表している。WHO 医薬品統計法共同研究センターはワーキン ググループから専門的なアドバイスを受けている。ワーキンググループの付託条項は次の 通りである: - ATC/DDD システムの科学的な開発を続けること。 - 新たな ATC コード、DDD 付与および既存の ATC コードおよび DDD への変更の すべてを検討し、承認すること。 - ATC/DDD システムの医薬品使用状況調査の国際標準としての利用をさらに広 げること。 - ATC コードおよび DDD の付与および変更に関するガイドラインを必要に応じて 改訂すること。 - ATC コードおよび DDD を付与および変更するための申請に関する手順を必要に 応じて改訂し、それらの一貫性と透明性を確保すること。 - 国際的な医薬品の使用に関する統計の情報源および入手可能性を評価し、ATC/ DDD システムを国際標準として使用しているすべての国および地域において広範にわたる 医薬品使用統計の系統的な収集を助長する。 - 特に発展途上国において適用可能な、様々な設定における医薬品使用状況調査に おける ATC/DDD システムの実用的な適用と適切な使用に関する方法、マニュアルおよび ガイドラインを作成すること。 - 医薬品の合理的使用に取り組んでいる他のグループと協働し、医薬品使用の改善 を目指した介入の必要性とアウトカムを評価するために用いる医薬品使用量の測定方法を 一本化すること。 国際ワーキンググループは年 2 回、ミーティングを開いている。年 2 回のミーティングの うち 1 回を、電話会議に替えることもある。国際ワーキンググループのミーティングは非 公開であり、 メンバーはミーティングの前に WHO 利害関係申告書への記入が求められる。 WHO 国際医薬品モニタリング共同研究センター、WHO 医薬品使用状況調査および臨床薬 理学サービス共同研究センターおよび国際製薬団体連合会からのオブザーバーも、国際ワ ーキンググループのミーティングへの参加を要請される。いずれかのミーティングに先立 ってオープンセッションが開催され、関係者はミーティングに登録することができる。国際 ワーキンググループのミーティングの決議段階は、非公開で行われ続ける予定である。ATC 分類または DDD 付与に関する決定事項は WHO 医薬品統計法共同研究センターのウェブ サイト上および刊行物 WHO 医薬品情報の中で公表される。新たなまたは改訂された ATC 分類または DDD 付与に関する決定事項は、初めは暫定決定事項として公表される。この決 定に異議を唱えることを望む関係者はその公表後、特定の期日までに意見を述べるように 要請される。一時的な決定に異議がなければ、それは最終決定事項として公表され、次の ATC classification index with DDDs において実行される。異議がある場合には、決定事項 は国際ワーキンググループの次のミーティングで協議される。2 回目のミーディングで新た な決定がなされた場合には、新たな決定事項が暫定決定事項として公表され、初回の決定時 と同様に意見が受付けられる。WHO はすべての決定について最終的な責任を負い、この作 業を進める中で生じた議論は、WHO に問い合わせて最終的な決議を求めなければならな い。 オープンセッション オープンセッションは、WHO 医薬品統計法国際ワーキンググル-プのミーティングに合わ せて年 1 回開催される。オープンセッションは透明性を保つことを目的とし、非公開の決 議のための協議の前 1 時間半にわたり実施される。 このセッションには、解剖治療化学(ATC) 分類システムおよび規定 1 日用量(DDD)付与に正当な利益のあるすべての者が参加する ことができる。それには規制当局、製薬会社、学界および非政府組織が含まれる。セッショ ンでは、参加者は決議に役立つ補足情報を専門家へ提示する機会が与えられる。ワーキング グループの各国のメンバーはこのセッションで、関係者とアイデアや意見を交換すること ができる。セッションはワーキンググループの決定を批判するための仕組みとして利用す ることを意図したものではない。ATC 分類または DDD 付与を申請する、またそれらに意 見を提出するための手順は、このガイドラインの中で概説されている。関係者はこのセッシ ョンへの登録を、ミーティングの 14 日前までに WHO 本部へ申し出なければならず、また 参加する適切な理由を提示しなければならない。WHO 本部は、オープンセッションの長さ を 1.5 時間以内に収めるために、各プレゼンテーションに許される時間を制限する。これら のミーティングに関する情報は、WHO のウェブサイト(www.who.int/medicines)で入手 することができる。 C. ATC/DDD システムの目的 ATC/DDD システムの目的は、医薬品使用の質を改善するための医薬品使用状況調査のた めのツールとして役立てることである。このひとつのコンポーネントは国際的およびその 他のレベルで医薬品使用量の統計値を示し、比較することである。 センターとワーキンググループの主要な目的は、安定した ATC コードと DDD を長期間維 持し、システムの頻繁な変更の複雑さなしに、医薬品消費のトレンドを調査できるようにす ることである。分類または DDD を変更することには、そのような変更が医薬品消費量の調 査に直接関与しない理由によるものである場合には、強い抵抗がある。このような理由から、 ATC/DDD システム自体は、報酬、価格決定および代替薬に関する決定の指針としては不 適切である。 ある物質が ATC/DDD システムで分類されていることは、その使用を推奨するものではな く、また医薬品および医薬品グループの有効性または相対的有効性に関する判断を示すも のでもない。 II. 解剖治療化学(ATC)分類システム A. 構造および命名法 構造 ATC 分類システムでは、有効成分をそれが作用する臓器または系、治療的特性、薬理学的 特性および化学的特性に従って、異なるグループに分割する。医薬品は 5 つの異なるレベ ルに分類される。医薬品は薬理学/治療法サブグループ(第 2 レベル)を持った、14 のメ イングループ(第 1 レベル)に分類される。第 3 および第 4 レベルは化学/薬理学/治療 法サブグループであり、第 5 レベルは化学物質である。第 2、3 および 4 レベルは、薬理学 サブグループが治療法または化学サブグループより適切であると見なされた場合に、薬理 学サブグループを同定するためにしばしば利用される。メトホルミンの完全な分類は、この コードの構造の良い例である: A 消化管と代謝作用 (第 1 レベル、解剖学的部位に基づくメイングループ) A10 糖尿病用薬 (第 2 レベル、治療法サブグループ) A10B 血糖値降下薬、インスリンを除く (第 3 レベル、薬理学サブグループ) A10BA ビグアナイド (第 4 レベル、化学サブグループ) A10BA02 メトホルミン (第 5 レベル、化学物質) このように ATC システムでは、すべてのメトホルミンの単味製剤に A10BA02 というコー ドが付与される。 命名法 - 国際一般名 (INN) が好ましい。 INN 名が付与されていない場合には、 通常は USAN (米国一般名)または BAN(英国一般名)名を選択する。 - 異なる ATC レベルを命名する際には、WHO の医薬品用語リスト(医薬品の薬理 活性および治療的使用-用語リスト)が使用される。 B. 組入れおよび除外基準 WHO 共同研究センターは、システムのユーザーからの要請に応じて、ATC 分類法に新た な登録を実行する。ユーザーには製造業者、規制当局および研究者が含まれる。システムの 対象は広くない。ある物質がこのシステムに含まれていない場合、その主な理由は要請を受 けていないことである。以下の基準のいずれか 1 項目を満たす有効成分は、ATC システム に組入られるのが普通である: - 様々な国において認可申請が行われた新規の化学物質(有効成分)または生物学的 製剤である。新規化学物質は通常、1 ヵ国以上で市販認可の申請が出されるまでは ATC シ ステムに組入れない。 - 様々な国で使用されている既存の明確に定義された化学物質である。有効成分に ついては INN が決定されていることが好ましい。INN がない場合は、他の正式名、例えば USAN または BAN 名が入手可能でなければならない。 - 有効性、安全性および品質に関するデータを含む資料を基に規制当局が評価し、承 認した漢方薬である。 C. 分類の原則 1. 一般的原則 医薬品は各投与経路に対してただ 1 つの ATC コードを付与することを原則として、主要有 効成分の主要治療用途に従って分類する(すなわち、成分と力価が同じ製剤は同じ ATC コ ードを持つことになる) 。即放性および徐放性の錠剤は、通常は同じ ATC コードになる。明 らかに異なる治療用途で複数の力価または投与経路で市販されている場合には、1 つの医薬 品が複数の ATC コードを付与されることがある。以下にこの 2 つの例を示す: - ある剤型または力価の性ホルモンは、癌の治療にのみ用いられているため、L02- 内分泌療法に分類される。残りの剤型/力価は G03-性ホルモンと生殖器系モジュレータ に分類される。 - フィナステライドは 2 つの異なる力価で販売されている。男性型脱毛症を治療す るための低力価錠は、D11AX-その他の皮膚科用製剤に分類される。良性前立腺肥大症 (BPH)の治療に用いられる高力価錠は、G04C-BPH 用薬として分類される。 局所および全身用の異なる剤型についても、別々の ATC コードが付与される。 例: 単味製剤のプレドニゾロンには、治療用途が様々であり、また国ごとに適用される処方が 様々であるために、複数の ATC コードが付与されている。 A07EA01 腸内抗炎症薬剤 (浣腸剤およびフォーム剤) C05AA04 局所用抗痔疾薬 (坐薬) D07AA03 皮膚科用製剤 H02AB06 全身用副腎皮質ステロイド R01AD02 鼻充血除去薬 (鼻腔用スプレー/点鼻薬) S01BA04 眼科用薬 (点眼薬) (クリーム、軟膏およびローション) (錠剤、注射剤) S02BA03 耳科用薬 (点耳薬) 医薬品は複数の同等に重要な適応症に対して用いられることがあり、また 1 つの医薬品の 主要な治療用途が国によって異なることもある。そのために、しばしば分類に複数の選択肢 が生じることになる。そのような医薬品には、入手した文献を基に主要な適応症を決定し、 コードを 1 つだけ付与するのが普通である。問題は WHO 医薬品統計法国際ワーキンググ ループが協議し、最終的な分類を決定する。そのような医薬品の様々な用途を示すために、 ガイドラインにクロスレファレンスを設定する。ATC システムは、厳密には治療法の分類 システムではない。医薬品の薬理学に従って、すべての ATC レベルで ATC コードを付与 することができる。しかし、作用機序の区分が細かすぎると 1 サブグループに 1 化学物質 のみという結果を招くため、それを可能な限り回避するために、作用機序に基づいた分割は ある程度は幅が広いものになることが多い(例えば抗うつ薬)。いくつかの ATC グループ は化学と薬理学の両方のグループに区分されている(例えば ATC グループ J05A-直接作 用型抗ウイルス薬) 。通常、立体異性体には別々の ATC コードが付与される。各 ATC グル ープについて、例外がガイドライン中に記載されている。関連物質の既存の ATC 第 4 レベ ルグループに属することが明らかではない新規医薬品は、原則として X グループ(「その他」 のグループ)に分類する。それぞれに化学物質が 1 つのみ属する第 4 レベルが複数あると いう状況を避けるために、一般的原則として、新たな第 4 レベルは 2 種類以上の市販薬が そのグループに適合する場合に限り作成する。さらに、新しい第 4 レベルは、医薬品使用状 況調査にとって有用と見なされるものでなければならない。したがって、新規の革新的な医 薬品はしばしば X グループに分類され、そのようなグループがただ 1 つの化学物質に対し て作成されることがある。プロドラッグには、使用される用量および/または一般名がプロ ドラッグと実薬との間で異なる場合には、別の ATC コードを付与するのが普通である。 例: J01CA08 ピブメシリナム J01CA11 メシリナム 2. 単味製剤の分類 単味製剤は、以下のように定義する: - 1 種類の有効成分(立体異性体混合物)を含有する製剤 - 1 種類の有効成分に加えて、製剤の安定性を高めるため(例えば少量の抗菌剤を含 有するワクチン) 、作用期間を延長するため(例えばデポー製剤)および/または吸収率を 高めるため(様々な皮膚科用薬の異なる溶剤)の補助物質を含有する医薬品も、単味製剤と 見なす。 3. 配合剤の分類 複数の有効成分を含有する製剤は、配合剤と見なされる。配合剤は 3 つの主要原則に従っ て分類される。 a) 同じ第 4 レベルに属する複数の有効成分を含有する配合剤は、通常は第 5 レベル コード 20 または 30 を用いて分類する。 例: N01BB02 リドカイン N01BB04 プリロカイン N01BB20 配合物(例えばリドカインとプリロカイン) b) 同じ第 4 レベルに属さない複数の有効成分を含有する配合剤は、50 番台を用いて 分類する。 例: R06AA02 ジフェンヒドラミン R06AA52 ジフェンヒドラミン、配合 同じ主要有効成分を共有する異なる配合剤には、通常は同じ ATC コードが付与される。し たがって、フェニルプロパノールアミン+ブロムフェニラミンを含有する製剤とフェニル プロパノールアミン+シンナリジンを含有する製剤は、いずれもコード R01BA51 フェニ ルプロパノールアミン、配合を付与される。一般的な製品名で市販されている複数の異なる 医薬品で構成されたパッケージも、配合剤と見なされる。例えば、ソタロール錠とアスピリ ン錠の両方が入った配合パッケージは、C07AA57 ソタロール、配合に分類される。 c) N05-精神安定薬または N06-精神賦活薬に分類されない精神安定薬を含む配合 剤は、70 番台を用いた、別の第 5 レベルで分類される。 例: N02BA71-アセチルサリチル酸、精神安定薬配合(精神安定薬に加えて他の物質を含有す る製剤も、ここに分類される) 。精神安定薬を含むいくつかの配合剤は、別の第 3 または第 4 レベルに分類されている(例えば A03C-鎮痙薬、精神安定薬配合) 。主要な規則にはいく つかの例外があり、ガイドラインの中で説明されている。いくつかの重要な配合剤、例えば β-遮断薬と利尿薬の配合剤には別の ATC 第 3 または第 4 レベルが付与されている。ある 種の配合剤をどこに分類するかを決定するのは難しいことがある。分類は主要な治療用途 によって決定する。鎮痛薬と鎮静薬を含有し、主に疼痛の緩和に用いられる医薬品は、鎮痛 薬として分類しなければならない。同様に、鎮痛薬と鎮痙薬の配合剤は、その製剤の鎮痙作 用がもっとも重要と見なされる場合には、A03-機能的胃腸疾患用薬に分類するものとする。 同様の例は、ガイドラインの中で、関連する医薬品グループについて詳述されている。いく つかの ATC グループでは、配合剤を分類する一助としてランキングが導入されている(例 えば、異なる降圧薬の配合剤および異なる鎮痛薬の配合剤) 。このランキングには、分類を 決定する際にどの医薬品を他の医薬品に優先させるかが示されている。このランキングは ガイドラインの中で、関連する医薬品グループについて詳述されている。 D. ATC 分類の変更に関する原則 医薬品が市販されると、その用途は絶えず変化と拡大を続けることから、ATC システムの 定期的な改訂が常に必要となる。ATC 分類の変更は、最小限に留めるべきである。変更を 行う前に、ATC システムのユーザーが負う苦労を考慮し、その変更によって達成される利 益と関連づけて考えなければならない。ATC 分類の変更は、医薬品の主要な用途が明らか に変わった場合、新規化学物質を受け入れるために新しいグループが必要な場合、またはグ ループ分けの特異性を改善するために実行可能である。変更を決定した場合は、次の原則を 用いる: - 将来起こりうる ATC グループの拡大のために余裕をもたせる。 - 配合剤に付与される ATC コードは、可能な限り問題となっている単独の物質の分 類に対応させなければならない。 - 削除した ATC コードは、新規化学物質に再利用しない。 - もう使われていない、または市場から撤退した医薬品は、ATC システムから除外 するとシステムのユーザーが過去のデータを考慮する際に不便が生じる可能性があるため、 ATC システムに留めておく。 - 現時点で有効なコードの変更は最小限に留める。配列に隙間があることは、コード を変更することよりも好ましい。 E. EphMRA 分類システム 当初、ATP 分類システムは、欧州医薬品市場調査協会(EphMRA)および米国医薬品市場 調査団体(PBIRG)が作成した解剖分類(AC-システム)と同じ原則に基づいていた。 EphMRA システムでは、医薬品は 3 または 4 つの異なるレベルに分類される。ATC 分類シ ステムは第 4 レベルとして治療法/薬理学/化学グループを、また第 5 レベルとして化学 物質を追加することによって、EphMRA を改変し、拡大したものである。1991 年以降、 EphMRA 分類委員会と WHO 医薬品統計法共同研究センターの間で、2 つのシステムのよ り良好な調和を目指した協議が行われた。この調和化の目的は、可能な場合には ATC 第 3 レベルまで両システムを一致させ、調和化が達成されない場合には、グループの相違点(す なわちブリッジを提示することによって違いを示す)と類似点を説明することであった。調 和化は、2 つのきわめて類似した分類システムの混同を最小限に抑えるために始められたも のである。EphMRA 分類法と ATC 分類法の間には多くの相違点があることを重視しなけ ればならない。このことは、ATC 分類法を用いて作成したデータを、EphMRA システムを 用いて作成したデータと直接比較できないことを意味している。残念なことに、EphMRA 分類法にも ATC という略語が用いられており、それが混乱を招くことがある。EphMRA 分 類システムは、IMS(Intercontinental Medical Statistics)が、医薬品業界向けの市場調査 統計を作成するために世界全域で利用している。 III. DDD(規定 1 日用量) A. 定義および一般的考慮事項 この単位の基本的定義: DDD は、ある医薬品をその主要適応症のために成人において使用する場合に推定される、 1 日当たりの平均維持用量である。 DDD は、すでに ATC コードを有する医薬品に対してのみ付与される。規定 1 日用量は測 定単位であり、必ずしも推奨 1 日用量または処方 1 日用量(31 ページを参照)を示すもの でないことを重視しなければならない。各患者および患者群のための投与量は DDD と異な ることが多く、また必ず個々の特性(例えば年齢や体重)および薬物動態を基準としたもの でなければならない。医薬品の最適利用のためには、民族の違いに起因する遺伝的多様性に よって医薬品の体内動態に差が出る可能性があることの認識が重要である。しかし、1 つの ATC コードおよび投与経路(例えば経口製剤)に対してただ 1 つの DDD が付与される。 DDD は遺伝的多様性と関わりなく、世界的に用いられている用量を反映したものでなけれ ばならない。DDD で示した医薬品消費量のデータは消費量の概算に過ぎず、実際の使用量 を正確に示すものではない。DDD は研究者が医薬品消費量のトレンドを評価し、人口集団 間の比較を行うことを可能にする、価格、通貨、パッケージサイズおよび力価とは無関係の 固定された測定単位である。DDD は局所用製剤、血清、ワクチン、抗癌剤、アレルゲン抽 出物、全身および局所麻酔薬および造影剤については確立されていない。 B. DDD 付与の原則 基本的原則は、1 つの ATC コードの中では投与経路ごとにただ 1 つの DDD を付与するこ とである。1 つの化学物質に対する DDD は、通常は単独療法に基づいている。この規則に 対する例外は、ガイドラインの中で説明されている。医薬品が 1 ヵ国以上で市販が承認さ れるまでは、その化学物質に対して DDD は付与されないのが普通である。個別に用量が決 定される稀少疾患に適応の化学物質については、ワーキンググループは DDD を付与しない 判断をすることがある。漢方薬に対する DDD は、ATC index に含まれない。これらの DDD は、ウェブサイト(www.whocc.no)上の ATC 分類リストの中で公表されている。 1. 単味製剤 単味製剤にはただ 1 つの有効成分(立体異性体の混合物を含む)が含まれている。18 ペー ジを参照。新たに DDD を付与する際には、その化学物質の実際の、または予測される使用 量について概観を十分把握するために、様々な情報源を利用する。付与された DDD は、以 下の原則に基づいている: - ATC コードによって表された主要な適応症のために用いられる、成人の平均用量。 推奨用量が体重に照らしたものである場合は、成人は体重 70 kg と考える。小児を主な対象 とした特殊な剤型(例えば混合剤、坐薬)であっても、成人に対する DDD が付与されるこ とを重視しなければならない。小児のみに用いられる医薬品、例えば成長ホルモンおよびフ ッ化物の錠剤など、いつくかの医薬品は例外である。 - DDD を確定する際には、維持用量(長期的治療用量)が優先されるのが普通であ る。初期用量は維持用量と異なることがあるが、そのことは DDD には反映されない。承認 された投与量の推奨事項に維持用量に関する情報が少ない場合には、DDD は維持用量域の 平均値とするのが普通である。承認された投与量設定の推奨事項の解釈の例: - 「認容性が認められれば高用量まで漸増する」:通常は高用量を DDD として選択 する。 - 「初期用量では効果が不十分な場合にのみ増量を考慮する」 :通常は初期用量を基 に DDD を決定する。 - 医薬品のいくつかのグループについては、DDD 付与のための特殊な原則が作成さ れている(例えば片頭痛治療における選択的セロトニン作動薬の DDD は、承認された初期 用量に基づいている) 。このような原則はガイドラインの中で説明されている。 - 通常は投与量を用いる。ただし、予防が主要な適応症である場合、例えばフッ化物 の錠剤(A01AA01)および一部の抗マラリア薬については、その用量を用いる。 - DDD は医薬品の申告された含有量(力価)に従って決定するのが普通である。1 つの物質の様々な塩には通常異なる DDD は付与されない。例外はガイドラインの中で、 様々な ATC グループについて説明されている。例えば、抗マラリア薬の DDD は、塩基と して表示されている。 - 通常、異なる立体異性体には別々の DDD および ATC コードが付与される。立体 異性体の DDD は、それぞれの ATC グループの中で説明されている。 - 別の ATC コードを付与されていないプロドラッグは、別の DDD を付与されない のが普通である。 - DDD は、同じ医薬品の様々な剤型について同じであることが多い。様々な投与経 路でバイオアベイラビリティが大きく異なる場合(例えばモルヒネの経口投与および非経 口投与) 、または剤型が異なる適応症に用いられる場合には、異なる DDD が決定されるこ とがある。非経口製剤の使用が特定の適応症に対する総使用量のごく一部に過ぎないので あれば、バイオアベイラビリティが経口製剤と大きく異なる場合でも、そのような製剤に別 の DDD は付与しない。 - る。 様々な投与経路(例えば静脈内および筋肉内)を持つ非経口製剤は同じ DDD とす DDD はそのほぼ全てが、それが得られた時点での各国における投与量も含めた情報の審査 に基づく、妥協の産物である。DDD は一般に用いられている複数の用量の平均値であるた め、処方されるとしても、それが極めて稀な用量となることがある。 2. 配合剤 配合剤に付与される DDD は、その配合剤中に含まれる有効成分の数に関わらず、配合剤を 1 つの 1 日用量としてカウントするという原則に基づいている。ある患者の投与スケジュー ルに例えば 2 種類の単味製剤が含まれていれば、消費量は各単味製剤の DDD を別々にカウ ントすることによって測定する。しかし、投与スケジュールに 2 種類の有効成分を含有す る配合剤が含まれている場合には、配合剤の DDD がカウントされるため、DDD で測定さ れる計算上の消費量は低い値となるのが普通である。 例 I: それぞれ 1 種類の有効成分を含有する 2 つの製剤による治療: 製剤 A:20 mg の物質 X を含有する錠剤(DDD= 20 mg) 製剤 B:25 mg の物質 Y を含有する錠剤(DDD= 25 mg) A を 1 錠+B を 1 錠を 1 日 1 回投与する投与スケジュールでは、消費量は 2DDD として算 出される。 例 II: 2 種類の有効成分を含有する配合剤による治療: 製剤 C:20 mg の物質 X と 12.5 mg の物質 Y を含有する錠剤。この配合剤の DDD は、1 UD= 1 錠として付与されている。 C を 1 日 1 回 1 錠投与する投与スケジュールは、 (単独の有効成分の 1.5 DDD に等しくな るに関わらず)1DDD として算出される。 配合剤への DDD の付与については以下の原則が適用される: 1. ATC コードで主成分が同定されている配合剤(すなわち 50 番台および 70 番台の 配合剤および一部の第 4 レベルの配合剤)については(高血圧における配合剤の使用を除 く、後述のポイント 2 を参照) 、配合剤の DDD は主要な有効成分の DDD と等しくなくて はならない。 2. 高血圧の治療に用いられる配合剤(例えば ATC グループ C02、C03、C07、C08 および C09)については、DDD は 1 日当たりの平均投与回数を基に決定する。すなわち: 1 錠は 1 日 1 回投与される配合剤の DDD であるのに対し、2 錠は 1 日 2 回投与される配合 剤の DDD、また 3 錠は 1 日 3 回投与される配合剤の DDD となる。この原則は、付与され た DDD が単独の有効成分に付与された DDD(ATC コードによる)と異なる可能性がある ことを意味している。付与された DDD が上述の原則から逸脱したすべての配合剤につい て、DDD のリストをセンターから入手することができる(ウェブサイト www.whocc.no 上 で公表されている) 。 3. その他の要因 a) 固定用量群 製剤のいくつかの群、例えば ATC グループ R05 の咳抑制配合剤や ATC グループ A11 の総 合ビタミン剤については、各製剤について正確な用量を決定する代わりにグループ内での 製剤の平均使用量を推定するのがもっとも適切と考えられてきた。総合ビタミン剤につい ては、様々な製剤で成分が異なる可能性があるが、平均推奨用量は通常は同じである。その ような DDD は「固定用量」と呼ばれている。いくつかの ATC 群では、力価を問わず例え ば錠剤数で投与されるすべての配合剤について固定 DDD を用いることが決定されている。 これらの規則は、本刊行物中の各 ATC レベルの章の中で明確に説明されている(例えば ATC グループ A02AD、A02BD および A02BX) 。緑内障の治療に用いられる点眼薬(S01E) は様々なサブグループにおいて、力価を問わず固定用量が決定されている。このことは、力 価を問わず、1 回の点眼で各眼に 1 滴のみ投与されるという前提に基づいている。固定用量 を付与する場合には、様々な ATC グループに関するガイドラインの中で詳しく説明するも のとする。 b) デポー製剤 デポー製剤(例えば徐放製剤)は、通常の剤型と同じ DDD を付与されるのが普通である。 この主要原則の例外は、様々な ATC グループに関するガイドラインの中で詳しく説明され ている。 c) 間欠投与 ある種の治療薬群、例えばホルモン剤では、製剤の多くが間欠投与される。そのような場合、 投与された量を投与間隔の日数で除し、平均の 1 日用量を算出する。これは、治療コース間 の休薬期間が、投与期間に含まれることを示している。このことは間欠的に投与される、例 えば抗精神病薬(N05A)のデポー製剤および経口避妊薬(G03A)に当てはまる。 d) 投与期間 投与期間は、医薬品が主に短期間使用されるものであっても、DDD を付与する際には考慮 しないのが普通である。 この主要規則の例外は、各 ATC グループにおいて説明されている。 4. 単位の選択 単味製剤については、DDD は可能な限り有効成分の量で、次の単位を用いて付与される: g(グラム) 、mg(ミリグラム) 、mcg(マイクログラム)、mmol(ミリモル)、U(単位)、 TU(1000 単位)および MU(100 万単位)。他と同様、単位については国際的に略語 U を 用いる。配合剤または種々の理由から DDD を有効成分の量で付与できない医薬品について は、単位として UD(単位用量)を用いる: - 錠剤、坐薬、ペッサリーなど: 1 UD は 1 錠、坐薬 1 本、ペッサリー1 枚などに等しい。 - 経口用パウダー: 1 UD はパウダー1 グラムに等しい。経口パウダーの DDD がグラム数で示されている場合 は、それは有効成分の量を示している。 - 経口用の単容量型パウダー: 1 UD は 1 単位用量のパウダーに等しい。 - 注射用パウダー: 1 UD はパウダー1 グラムに等しい。注射用パウダーの DDD がグラム数で示されている場 合は、それは有効成分の量を示している。 - 吸入用パウダー: 1 UD は 1 単位用量、例えば 1 カプセルのパウダーに等しい。 - 経口用の液体製剤(混合液、シロップなど) : 1 UD は 5 ml の製剤に等しい。 - 非経口用の液体製剤(注射剤) : 1 UD は 1 ml の製剤に等しい。 - 直腸用の液体製剤: 1 UD は 1 ml の製剤に等しい。 - 吸入用の液体製剤: 1 UD は 1 ml の製剤に等しい。 - 吸入用の単位用量型液体製剤(単位用量): 1 UD は 1 単位用量の吸入溶液に等しい。 - 浣腸: 1 UD は浣腸 1 本に等しい。 - 経皮投与用の貼付剤: 1 UD は貼付剤 1 枚に等しい。 - 膣用クリーム: 1 UD は 1 回用量、1 回貼布量に等しい。 投与経路 投与経路は以下のコードによって示される: Inhal =吸入 R =直腸 N =経鼻 SL =舌下/口腔/口腔粘膜 O =経口 TD =経皮 P =非経口 V =膣 C. 小児の DDD DDD は、通常は成人における使用量を基に付与されている(22 ページを参照)。小児への 使用が承認された医薬品に関しては、用量に関する推奨事項は年齢および体重によって異 なるものになる。小児に用いられている医薬品はそのような使用法さえ承認されていない ものが多く、投与法に関する報告は得られていない。したがって、WHO 医薬品統計法国際 ワーキンググループは小児の DDD を付与することは不可能であり、小児における医薬品使 用状況調査に関連した問題はこの方法では解決できないと結論した。小児における医薬品 の使用の普及率を、DDD で示されたおおまかな売上データから推定することは不可能であ る。入手可能であれば小児群における処方 1 日用量および適応症を用い、DDD 値と比較す るべきである。小児のサブグループの同定が難しい場合には、全体を比較する替わりに一般 的 DDD を測定手段として利用しなければならない。 D. DDD の再検討および変更に関する原則 使用される用量は時間とともに変化する可能性があるため、若干の変更は常に必要となる。 医薬品統計法国際ワーキンググループは、それが適切と判明する毎に DDD を再検討するこ とができる。DDD の変更は最小限に留め、可能な限り避けるべきである。変更が多すぎる ことは、医薬品使用状況の長期的調査のためには必ず有害である。変更を実行する前に、ユ ーザーが負うことになる不便さを、変更によって達成される利益と比較検討しなければな らない。 - DDD を再検討する際には、新しい DDD の付与時と同じ原則を用いる。 - 一般に、DDD の差が 50%以上に達しない限り、変更は実行しない。この規則は小 規模の変更が許される DDD の 3 年時点の再検討には用いない。また、頻繁に使用される重 要な医薬品については、小規模な変更が許される。 3 年後の DDD の再検討 新たに付与された DDD すべてを、ATC index with DDDs への組入れ後 3 年目の間に再検 討する。DDD は最初に行われる半期に 1 度の医薬品統計法国際ワーキンググループのミー ティングで再検討する。以下の点を考慮する: - 様々な国の医薬品カタログの中に記載されたおよび/または論文審査のある科学 雑誌もしくは主要な国際的テキストブックの中で公表された推奨用量。 - 様々な国から入手した処方 1 日用量(PDD)に関するデータ。付与された DDD を 再検討する際には、処方 1 日用量(PDD)を示す数値が重要である。市販開始時よりもそ の 3 年後のほうが、PDD に関してより多くのデータが得られるのが普通である。 - 確立された主要な適応症および製剤の治療プロファイル(すなわち、主要な適応症 に変更はあったか?) 。 - ATC グループにおける既存の DDD。 - 受領した DDD に対する異議申し立て書。 配合剤を再検討する際には、様々な有効成分に対する DDD の変更が重要な考慮事項であ る。 DDD の更なる検討 最初の 3 年が経過後、 WHO ワーキンググループが ATC グループに付与された全ての DDD を全面的に再検討する決断をしない限り、DDD は 5 年間以上不変であり続けるのが普通で ある。システムのユーザーから新たな情報を基に提案された DDD の変更は必ず、ただし 3 年目の再検討の実施後に考慮する。 E. その他の医薬品使用状況評価基準の概要 コスト 医薬品の使用量は、コスト(例えば国の通貨)を単位として表すことができる。コストの数 値は、薬剤費の総合的なコスト分析に適している。コストパラメータを基準とした国内およ び国家間の比較は誤解を招くことが多く、医薬品使用量の評価においては価値が低い。代替 製剤間の価格の差および国による価格水準の差が、評価を難しくする。通貨変動および価格 の変更のために、長期的な調査も困難である。コストのデータを利用する際には、より安価 な医薬品の使用量の増加は全体の水準にほとんど影響を及ぼさないと考えられるのに対し、 より高価な医薬品への移行は容易に顕在化する。一般的な物理単位(例えばグラム、キロ、 リットル) 、パッケージまたは錠剤の数および処方件数も、医薬品消費量の定量に利用され る。これらの単位は 1 種類の医薬品または明確な医薬品を評価する場合にのみ適用するこ とができる。ただし、医薬品のグループ全体の消費量を考慮する場合には問題が生じる。消 費量が有効成分のグラム数で示されている場合、低力価の医薬品が全体に占める割合は、高 力価の医薬品よりも大きくなる。配合剤には単味製剤とは異なる量の有効成分が含まれて いることもあるが、それは数値には表れない。錠剤数の計測にも短所がある。錠剤の力価は 様々であり、低力価の製剤が相対的に高力価の製剤よりも大きな割合を占めているからで ある。また、短時間作用型の製剤は、長時間作用型の製剤よりも大きな割合を占めることが 多い。処方 1 件当たりの医薬品の総量も考慮しない限り、処方件数は総使用量を正しく表 わさない。ただし、処方件数は処方頻度の測定および医薬品の臨床での使用状況(例えば診 断および投与量)の評価にはきわめて有用である。 処方 1 日用量 処方 1 日用量(PDD)は処方せんの調査、カルテまたは薬局の記録および患者への聞き取 りから決定することができる。PDD を投与量の基準となった診断と関連付けて考えること が重要である。PDD は実際に処方された平均の 1 日量を示すものである。PDD と規定 1 日 用量(DDD)との間に大きな不一致がある場合には、医薬品消費量の数値を評価し読み取 る際にその点を考慮することが重要である。推奨用量が適応症によって異なる医薬品(例え ば抗精神病薬)については、診断を示された処方 1 日用量と結び付けて考えることが重要 である。PDD を解釈するためには、薬剤疫学に関する情報(例えば性別、年齢および単独 /併用療法)も重要である。PDD は治療する疾患および国の治療慣習によって異なること がある。例えば抗感染症薬については、PDD は感染症の重症度によって異なる。PDD は 様々な国によっても異なり、その差は 4~5 倍の範囲に達する。東洋人における PDD は、 白人の PDD よりも低値であることが多い。国家間で比較を行う際には、PDD が国によっ て異なり得るという事実を常に考慮しなければならない。処方 1 日用量が、実際に消費さ れた用量を示すとは限らないことに注意しなければならない。 IV. ATC/DDD システムの使用および誤用 ATC/DDD システムの主要な目的は、医薬品使用の改善を目的とした医薬品使用状況統計 を提示するためのツールとすることである。これがシステムを作成した目的であり、この目 的をふまえて ATC/DDD 分類に関するすべての決定が行われている。したがって、システ ムを他の目的に用いることは不適切と考えられる。このシステムは 1970 年代の初期から医 薬品使用状況調査に利用されてきたが、その中で医薬品使用状況の国内および国家間の比 較、医薬品使用の長期的トレンドの評価、ある種のイベントが医薬品の使用に及ぼす影響の 評価および医薬品の安全性の調査における母集団データの提供に適していることが実証さ れている。 ATC/DDD 法の国内での実施 医薬品の使用量を国家間でモニタリングし、比較するためには、捕捉されたデータが比較可 能であることの確認が重要である。データ収集を促進するために、全国医薬品レジストリを 確立することが推奨される。このようなレジストリは共通の構造を有することが好ましい。 ATC コードおよび DDD を、各医薬品にパッケージレベルでリンクするべきである。全国 レジストリには、少なくとも以下の変数を含めるべきである: ・固有の識別子(登録番号) ・医薬品名(製品名/商標) ・剤型 ・力価 ・パッケージサイズ ・ATC コード ・有効成分 ・DDD ・投与経路 ・1 パック中の DDD 数 ATC コードを各医薬品パッケージに正確にリンクすることがきわめて重要である。1 パッ ケージ当たりの DDD 数を、各医薬品パッケージについて算出しなければならない。全国レ ジストリを新しい ATC コード/DDD および代替薬で更新するための優れた手順を確立し なければならない。全国レジストリの品質保証および検証の責務は、各国の国家機関が担当 することが推奨される。この作業は、ATC/DDD 法に精通した有能な人物が実行するべき である。ATC/DDD Index の最新版は、毎年 1 月に発行される。様々な国からの、また様々 な期間に得られた医薬品使用状況に関するデータを比較できるためには、どの ATC コード および DDD が使用されているかを知ることがきわめて重要である。ATC コードおよび DDD には毎年、最小限の変更が施される。したがって、医薬品消費量の数値を示す際には、 使用された ATC/DDD のバージョンを正しく参照することが重要である。 A. 医薬品の使用状況 ATC/DDD システムは、様々な設定で様々な情報源から医薬品使用状況統計を収集するた めに利用することができる。例を挙げると: - 全国、地域または地方レベルでの卸売データなどの、売上データ - 全体またはサンプルによる調剤データ。コンピュータ化した薬局では、調剤した医 薬品に関するデータを容易に収集することができる。これに替わる方法として、サンプルデ ータを手動で収集することができる。多くの国において全国レベルで実行されている医療 費償還制度は、償還のためにすべての処方が提出され、記録されているため、広範にわたる 調剤データを個別の処方レベルまで掘り下げて提供する。これは、一般に「請求」データと 呼ばれている。健康保険または健康維持機関を通じて類似のデータを入手できることが多 い。これらのデータベースでは、患者についての人口統計学的情報、また投与量、投与期間 および同時処方に関する情報の収集が可能なことがある。頻度は低いが、病院および医学デ ータベースとのつながりによって適応症、また入院、特殊な医療サービスの利用および副作 用などのアウトカムに関する情報が得られることがある。 - 患者とのやりとりに基づくデータ。これは、市場調査団体によって実施されるよう な特別にデザインされたサンプリング調査によって収集されるのが普通である。しかし、診 療レベルでの情報技術の利用の増加によって、近い将来にそのようなデータがより広く利 用可能となるであろう。これらの方法には、処方 1 日用量、患者の人口統計学、治療期間、 同時処方、適応症、有病率ならびに随伴疾患、また時としてアウトカムに関する正確な情報 が提示され得るという利点がある。 - 患者を対象とした調査のデータ。患者レベルでのデータ収集によって、実際の医薬 品消費量に関する情報が得られ、また処方せんの保存と処方通りの服薬に関するコンプラ イアンスを検討することができる。また、処方、信念および医薬品の使用に対する姿勢に関 する質的情報も得られる、 - 医療機関のデータ。上記のすべてのレベルでの医薬品の使用に関するデータが、病 院および地方、地区または群落レベルの医療センターにおいて入手可能であることが多い。 ATC/DDD システムの使用は医薬品のグループ分けの標準化を可能とし、また安定した医 薬品使用状況評価基準による医薬品使用の国家間、地域間および他の医療環境間での比較、 ならびに長期的および様々な設定での医薬品使用のトレンドの評価を可能とする。医薬品 消費量の数値は、可能であれば DDD/住民 1000 人/日の値、または病院内での医薬品の使用 について考える場合は、DDD/100 床・日として表すことが好ましい。DDD/住民 1000 人/ 日で示された売上高または処方のデータは、規定された地域内の住民中の、特定の医薬品を 毎日投与されている患者の割合の推定値を提供する。例えば、10 DDD/住民 1000 人/日とい う値は、平均で住民の 1%が特定の投薬を毎日受けていることを示している。このことは、 処方された用量が DDD に対応している場合にのみ当てはまる。抗感染薬(または通常短期 間使用される他の医薬品)については、数値を各住民が 1 年の間に投薬される平均の日数 の推定値を示す、DDD/住民/年で表すのが適切と見なされることが多い。例えば、5 DDD/ 住民/年は消費量が、すべての住民に対して 1 年の間に 5 日間投薬した量に等しいことを示 している。これに替わる方法として、標準的な治療期間が既知であれば、DDD の総数を治 療コースの回数として算出し、治療コースの回数を総人口に関連付けることが可能である。 DDD が確立されていないいくつかの医薬品グループについては、それに替わるデータの表 示法が推奨される。例えば、皮膚科用製剤の消費量は軟膏やクリームなどのグラム数として、 また ATC グループ L01 に属する抗癌剤は有効成分のグラム数で表すことができる。処方 1 日用量(PDD)と DDD との間に既知の不一致がある場合には、医薬品消費量の数値を解釈 する際にこの点を考慮しなければならない。推奨用量が適応症によって(例えば抗精神病 薬) 、また疾患が重症か軽度かによって(例えば抗菌薬)異なる状況下、および PDD が集 団間で(例えば性別、年齢、民族または地理的な位置によって)異なる場合には、注意が必 要である。最後に、処方された医薬品の中には調剤されないものがあること、また患者が調 剤されたすべての医薬品を服用するとは限らないことも考慮しなければならない。患者レ ベルで実際の医薬品服用量を測定するためには、特別にデザインされた調査が必要である。 ATC/DDD には変更が発生するため、特に長期的なデータを比較する場合および国家間で 比較を行う場合には、どの版の ATC index が用いられたかを知っておくことが重要である。 最新版の ATC index を用いて、データを更新(再計算)することが推奨される。 B. 医薬品使用の改善 医薬品使用状況統計の収集および公表は、医薬品の処方および調剤を改善するプロセスの 中できわめて重要な要素である。医薬品使用状況統計が医薬品の使用に対して最良の影響 を及ぼすためには、それらが重点を絞った積極的な方法で用いられることが必要である。 ATC および DDD に基づいた医薬品使用状況統計が用いられてきた、また医薬品の使用を 改善するために用いることができる方法には以下のものが含まれる: - 臨床医、薬剤師およびその他の人物にその国の医薬品消費量のプロファイルを提 示する(国家間または国内の地域間の比較を含む、または含まない) 、全国的な刊行物。 - 個人的な医療施設、医療サービス機関または個人的な医療従事者に健康サービス 内のフィードバックを提示する刊行物。 - 起こりうる各医薬品または治療薬グループの過剰使用、過少使用または誤用の同 定を目的とした、全国的健康システム、大学、医薬品情報センターなどによる医薬品使用状 況統計の利用。状況に応じ、この情報を用いて特殊な調査または特殊な教育的介入を開始す ることができる。教育的介入には医薬品に関する広報、科学雑誌の論文、臨床医宛てのレタ ーなどが含まれる。 C. 医薬品安全性評価 特定の集団について有害反応が疑われた症例の自発的報告頻度のトレンドの推定値は、 ATC/DDD システムを用いて医薬品消費量のトレンドと結び付けることができる。医薬品 使用状況の基準としての DDD/住民 1000 人/日を分母として使用し、有害反応の頻度を分子 とすれば、有害反応の報告頻度のトレンドを、医薬品使用状況のトレンドと比較検討するこ とができる。医薬品間の比較には、PDD による検証が必要となる。スウェーデンの WHO 国際医薬品モニタリング共同研究センター(ウプサラ・モニタリング・センター)は、国営 のセンター(このプログラムには 111 の正式加盟国が含まれている、2012 年 10 月)から 有害反応が疑われる症例の自発的報告を受付けている。これらの報告に記載されているす べての医薬品に関する情報を医薬品登録リストに保存し、報告データベースにリンクする。 すべての単味および配合製剤に化学物質レベルで ATC コードが付与されており、それによ って様々な医薬品カテゴリーまたは医薬品グループを含めた柔軟な研究が可能となってい る。ATC システムは、生産量記録中の医薬品のグループ分けにも利用されている。 D. 「重複投薬」および「偽重複投薬」 ATC 分類法は、 「重複投薬」および「偽重複投薬」のスクリーニングのためのツールとして 用いることができる。「重複投薬」は、2 つの同じ医薬品を同時に用いることとして定義さ れるのに対し(例えば 2 つの異なるジアゼパム製剤)、「偽重複投薬」は化学的には異なる が、同じ薬力学的特性を持つ 2 つの医薬品を同時に用いること(例えばジアゼパム製剤+ オキサゼパム製剤)として定義することができる。医師または薬局の患者のコンピュータ記 録を用いてこのような状況を確認する目的は、副作用のリスクを高め得る、不必要な投薬を 防止することである。単味製剤の場合、ATC 第 5 レベルのコードを用いることができる; ただし、モニタリングをどのレベルで行う必要があるかは、問題となっている ATC グルー プによって異なる。配合剤については、ATC 第 5 レベルのコードがすべての有効成分を同 定するために十分であるとは限らない。したがって、有効成分それぞれに対して付与された すべての ATC コードを、各配合剤に結び付けることが好ましい。 E. 医薬品カタログ ATC コードは、いくつかの国際的な医薬品カタログ(例えば Martindale)および複数の国 内医薬品カタログに含まれている。ATC コードは WHO 必須医薬品リストにも含まれてい る。 F. 医療費、価格決定ならびに償還および費用抑制 付与された ATC および DDD を基準とした詳細な償還、治療薬グループの参考価格決定お よびその他の特殊な価格決定は、システムの誤った利用法である。それは ATC および DDD の付与が、医薬品使用状況のトレンドを追跡し、治療薬グループ内およびグループ間で比較 することが可能な、安定した医薬品消費量測定システムの維持のみを目的としてデザイン されているためである。それにも関わらず、医薬品使用状況のデータはケアサイクルの質に おいて中心的な役割を果たしており、ATC および DDD の方法はコストのトレンドを追跡 し比較するためには有用と考えられるが、慎重に使用することが必要である。DDD は、技 術的な医薬品使用量の測定基準である。DDD は様々な医薬品の治療上同等な用量を表すと は限らないため、同じ ATC カテゴリー内のすべての医薬品について同様の治療アウトカム をもたらす 1 日用量を示すと考えることはできない。そのような治療的同等性の推定値を、 特に価格設定に通常必要な精度で確立することはきわめて難しい。DDD は、注意して用い れば、例えば同じ医薬品の 2 つの製剤のコストの比較に用いることができる。しかし、この 測定基準を異なる医薬品または医薬品グループのコストの比較に用いることは適切でない のが普通である。治療上同等の用量、実際の処方1日用量(PDD)および DDD の間の関係 は医薬品間で異なること、また同じ医薬品については国家間で異なることが普通である。更 に、PDD は一般に時間と共に変化するが、DDD の変更は医薬品使用状況調査を複雑なも のとするため、DDD の変更については抵抗がある。PDD の変化が大きいというエビデン ス、または主要な適応症の変更のような特別な理由がない限り、DDD の変更は行わない。 このような理由から DDD は医薬品を特殊な細かい価格、償還および費用抑制を決定するた めの医薬品の比較には不適切である。同様に、償還および価格決定の比較を ATC グループ への医薬品の組入れに基づいて実行することは推奨されない。医薬品の主要な適応症(ATC 付与の基準となる)は国家間で大きく異なることが多く、また PDD と同様、時間とともに 変化することが考えられる。しかし、ATC 分類は、例えばある治療薬グループの長期的な 使用量の増加が、コストの増加にどの程度寄与しているかを明らかにするために、コストを 医薬品グループまたは治療領域に集約する必要がある場合には有用と考えられる。 G. 医薬品マーケティング目的 ATC 分類が、あらゆる点で推奨される治療薬の使用を示すとは限らないことを重視するこ とが重要である。したがって、有効性、作用機序または治療薬プロファイルの他の医薬品と の比較に関しては、ATC システムをマーケティング目的のツールとして用いるべきではな い。異なる ATC グループへ割付けられていることが、治療効果の違いを意味するものでは ないこと、また同じ ATC グループに割付けられていることが、治療効果が等しいことを示 すものでないことを重視しなければならない。マーケティング目的での価格の比較の利用 については、上述のポイント F を参照。 V. ATC/DDD 付与および変更のための手順およびデータ要件 A. ATC 分類の申請 1. 手順および時期 ATC 分類システムへの新たな登録はすべて、ユーザーからの申請を受けて実施する。医薬 品の ATC 分類の申請は、WHO 医薬品統計法共同研究センター宛てに提出しなければなら ない。新しい ATC コード付与のための申請用紙を付録 I に示すが、ウェブサイト www.whocc.no 上でも入手可能である。ATC/DDD の申請は無料である。センターの公式 言語は英語である。したがって、申請書および資料は英語で提出しなければならない。ある 国で市販されている医薬品が年1回更新される ATC classification index の最新版に含まれ ていない場合は、原則としてシステムのいずれのユーザーでも ATC コードの申請を提出す ることができる(例えば規制当局、製造業者、研究者およびその他のユーザー)。通常は、 申請に必要な情報をもっとも入手しやすいのは製造業者である。製造業者は、特にそれが新 規医薬品である場合には、自社製品の ATC 分類および/または DDD 付与の申請について 知り、または関わることを望むのが普通である。したがって、システムの他のユーザーは製 造業者を通じて申請書の提出を行うことが勧められる。可能であれば、各国内で市販されて いる国内製品への ATC コード付与を担当する国立のセンターを設立するべきである。 新規化学物質は、市販承認の申請が1ヵ国以上で提出されるまでは、ATC システムに組入 れられないのが普通である。一部のケースでは、新規医薬品が1ヵ国以上で承認されるまで 待つことが必要となる(特に新しい第 5 レベルの作成が困難と考えられる化学物質)。この ような条件は、市販に至ることのない多くの化学物質を ATC システムに組入れることを避 けるために設定されている。配合剤をこれらのガイドラインに示された原則に基づいて分 類する作業は、国内の ATC システムのユーザーに任されている。ガイドラインはこの作業 を助長し、ATC システムの異なるユーザーが確実に一貫した方法で分類を行うことを目的 として作成されている。ガイドラインの内容が特殊な配合剤の分類を決定するために不十 分な場合、または新しい ATC 項目が必要な場合には、そのような問題をオスロの WHO セ ンターに通知しなければならない。センターは、それらの作業を国内レベルのシステムで実 行する一助として、定期的な研修コースも提供している。WHO 医薬品統計法国際ワーキン ググループが、すべての新規 ATC コードを正式に承認する。このグループは年 2 回、通常 は 3 月と 10 月にミーティングを開催している。新規 ATC コードの承認手順の各段階は、 通常は以下の通りである: - 申請の受領を確認する標準のレターを、センターから申請者へ返送する。 - 新しいコードの付与が容易な場合は、センターが付与した予備的な ATC コードを 6~8 週以内に申請者へ返送し、ATC コードは次のミーティングでワーキンググループから 正式承認されなければならないことを伝える。 - 複数の代替分類法を持つ物質および既存の分類法での分類が難しい物質について は、暫定的な ATC コードを付与する前にワーキンググループで申請について協議する。申 請者は申請受領後 6~8 週間以内にこの情報を受け取る。ワーキンググループのミーティン グの議事録が承認された後、各 ATC コードに関する決定がセンターから申請者へ送付され る。 - ワーキンググループのミーティングの議事録が承認された後、ミーティングで承 認された新しい ATC コードがウェブサイト www.whocc.no 上および刊行物 WHO Drug Infromation の次号の中で公表される。関係者の決定に対する意見または異議を受け付ける 期限を設定する。 - 提出されたエビデンスによって正当化される異議を受け取った場合には、ワーキ ンググループの次のミーティングで ATC 分類を再度協議する。決定が維持されれば、決定 はそのミ-ティング後は確定したものと見なす。ワーキンググループによって新たな決定 が下された場合は、その新しい ATC がウェブサイト www.whocc.no 上および刊行物 WHO Drug Infromation の次号の中で公表される。関係者の決定に対する意見または異議を受け 付ける期限を設定する。 - 異議を受領しなかった場合には、新しい ATC コードは確定したものと見なし ATC classification index の次号に掲載する。確定した新しい ATC コードのリストも年に 2 回、 ウェブサイト www.whocc.no 上および WHO Drug Information の中で公表される。 2. 提出のためのデータの要件 化学物質に対して ATC コードを申請する際には、 以下のデータを提出しなければならない: - 化学構造および類似の医薬品との関係 - 受容体結合プロファイルおよび類似の医薬品との関係も含めた薬理学および作用 機序 - 承認済みまたは承認申請中の主要国において製品情報に示された主要な適応症 - 承認済みまたは今後承認が申請されるその他の適応症 - 提出したエビデンスによって正当化される、ATC 分類の案 - 市販認可に関する状況 - あれば、治療用途に関する情報 これらのデータの有用な情報源となるのは、主要な規制国に由来する承認済みの製品情報 資料、もしくはまだ承認されていないことを記載した、製品情報資料の草案である。上記物 質に関する主要な規制当局への提出物または規制当局からの評価の概要は、主要適応症に 対する使用比率を示した市場調査データと同様に有用である。 B. ATC 分類の変更のための要件 1. 手順および時期 ATC 分類の変更は書面で提案および説明し、WHO 医薬品統計法共同研究センターに提出 しなければならない。原則として、すべてのユーザーが ATC 分類の変更を提案することが できる。ATC の変更については、申請用紙はない。変更の提案はすべて WHO 医薬品統計 法国際ワーキンググループが協議する。ATC 分類の変更に関する評価手順の各段階は、以 下の通りである: - センターが変更の提案を受領し、ワーキンググループのミーティングでの協議の スケジュールについての情報を提示する。 - ワーキンググループのミーティングの議事録の承認後、提案された変更に関する ミーティングの決定をセンターから変更を申請した人物(申請者)へ送付する。変更の是非 に関わらず、申請者の決定に対する意見または異議を受け付ける期限を設定する。 - 変更が決定された場合には、この変更の通知をウェブサイト www.whocc.no 上お よび WHO Drug Information の次号の中で公表する。関係者の変更に対する意見または異 議を受け付ける期限を設定する。 - 提出されたエビデンスによって正当化される異議を受け取った場合には、ワーキ ンググループの次のミーティングで ATC の変更を再度協議し、最終的な決定を下す。 - 異議を受領しなかった場合には ATC 分類の変更を ATC classification index の次 号で実行する。 2. 提出のためのデータの要件 ATC 分類の変更を申請する際のデータの要件は、新しい ATC コードを申請する場合と同じ である。ATC/DDD システムにとって重要な原則は、医薬品消費量調査のために安定した データベースを維持することである。この理由から、ATC コードの変更には説得力のある 根拠が必要である。そのため、提案した変更を正当化するデータを提出することが重要であ る。主要治療用途の変更が提案された変更の理由であれば、提出されたデータには、その変 更が明確に示されていなければならない(例えば、様々な国における様々な適応症での使用 比率を示した市場調査のデータ) 。薬理学または作用機序の新たな知見が提案された変更の 理由であれば、適切なエビデンスを提出しなければならない。提案された変更が既に別のグ ループ(通常は種々のグループ)に分類されている 1 種類以上の物質について特異的 ATC 群を作成するためのものであれば、変更が有益であり、また医薬品消費量統計のための ATC 分類の改善を示すものであることを証明するデータを提出しなければならない。償還、価格 設定またはマーケティングに関する理由に基づいた正当化は考慮されない。 C. DDD 付与の申請 1. 手順および時期 新しい DDD の付与はすべて、ユーザーからの申請を受けて実施する。新しい DDD の申請 は、WHO 医薬品統計法共同研究センター宛てに提出しなければならない。新しい DDD 付 与のための申請用紙を付録 I に示すが、センター(www.whocc.no)からコピーが入手可能で ある。原則としていずれのユーザーでも新しい DDD の申請を提出することができる(例え ば規制当局、製造業者、研究者およびその他のユーザー)。しかし、ATC コードの付与と同 様、新規医薬品に必要な情報をもっとも入手しやすいのは製造業者である。DDD は ATC コ ードを付与されている化学物質、または ATC が DDD と関連づけて付与可能な場合にのみ 付与される。DDD は、1 ヵ国以上で市販が承認されるまでは付与されない。WHO 医薬品 統計法国際ワーキンググループがすべての新しい DDD について協議し、承認する。 - センターが新しい DDD の申請を受領し、次のワーキンググループのミーティング での協議のスケジュールについての情報を、DDD を申請した人物(申請者)に提供する。 - ワーキンググループのミーティングの議事録の承認後、DDD に関するミーティン グの決定をセンターから申請者へ送付する。 - 新しい DDD はウェブサイト www.whocc.no 上および WHO 刊行物:WHO Drug Information の次号の中で公表する。関係者の新しい DDD に対する意見または異議を受け 付ける期限を設定する。 - 提出されたエビデンスによって正当化される異議を受け取った場合には、ワーキ ンググループの次のミーティングで DDD を再度協議する。決定が維持されれば、決定はそ のミ-ティング後は確定したものと見なす。ワーキンググループによって新たな決定が下 された場合は、その新しい DDD の通知がウェブサイト www.whocc.no 上および刊行物 WHO Drug Information の次号の中で公表される。関係者の決定に対する意見または異議 を受け付ける期限を設定する。 - 異議を受領しなかった場合には、新しい DDD は確定したものと見なし ATC classification index の次号に掲載する(41 ページを参照) 。確定した新しい DDD のリスト も年に 2 回、ウェブサイト www.whocc.no 上および WHO Drug Information の中で公表さ れる。 2. 提出のためのデータの要件 新しい DDD を申請する際には、以下の情報を提出しなければならない: - 1 ヵ国以上の主要な規制当局によって承認された製品情報に記載された各適応症 についての用量範囲および投与方法 - 市販化を裏付けるための臨床試験で用いられた用量 - 様々な国において診療に用いられている用量に関する市場調査データ(可能であ れば先進国および開発途上国) 。平均の使用量を明記しなければならない。 - 医薬品が既存の ATC 分類に適合する場合は、可能であれば投与量の比較に関する 情報を提示しなければならない。しばしば求められる精度で治療上同等の用量を決定する ことは困難であるため、その治療薬グループ内の DDD が治療上同等な用量を示していると は限らない。 - 提出されたデータによって正当化される DDD 提案 - 市販承認に関する状況 D. DDD 変更の申請 1. 手順および時期 DDD の変更は書面で提案および説明し、WHO 医薬品統計法共同研究センターに提出しな ければならない。原則として、すべてのユーザーが DDD の変更を提案することができる。 変更の提案はすべて WHO 医薬品統計法国際ワーキンググループが協議する。 2. 提出のためのデータの要件 DDD の変更を申請する際のデータの要件は、新しい DDD を申請するためのデータの要件 と同じである。ATC/DDD システムにとって重要な原則は、医薬品消費量調査のために安 定したシステムを維持することである。この理由から、DDD の変更には説得力のある根拠 が必要である。決定的な根拠は: - 主要な適応症の変更によって、用いられる平均用量が変化した。 - 使用される平均用量に大きな変化(50%台の変化)があった(23 ページも参照)。 このことは、開発途上国も含めた様々な国における詳細な市場調査データによって裏付け られなければならない。しかし、3 年目の再検討においては、小さい変更は容認される(29 ページを参照) 。 償還、価格決定またはマーケティングを目的とした DDD の小さい変更は考慮しないことと する。 VI. ACT index with DDDs の概要 WHO 医薬品統計法共同研究センターは年に 1 回、完全な ACT index with DDDs の最新版 を発行している。完全な ATC index は、ATC コードにしたがって分類され、単味製剤に対 して確立されたすべての ATC コードおよび DDD を含む 1 つのリストと、一般医薬品名に 従ってアルファベット順に分類され、すべての ATC 第 5 レベルを含む 1 つのリストで構成 されている。この index の検索可能なバージョンは、ウェブサイト www.whocc.no 上で閲 覧可能である。検索オプションによって、ユーザーは物質名または ATC レベルから ATC コ ードおよび DDD を見出すことができる。ATC レベルにリンクした ATC 分類および DDD 付与に関するガイドラインの本文も閲覧可能である。この本文には ATC および DDD 付与 の背景に関する情報が記載されている。完全な ATC index もハードコピーとして、または 電子版で、センターから取り寄せることができる。ガイドラインの pdf 版は当方のウェブサ イトで閲覧することができる。ATC index では、年内に再審査される DDD に星印が付けら れている。年 1 回の ATC/DDD 変更および新しい ATC/DDD に関するリストは、毎年 12 月に、ウェブサイト www.whocc.no 上で閲覧可能である。リストはセンターのメーリン グリストに登録している ATC/DDD システムのユーザーには、電子メールで無料配布され る 。 1982 年 以 来 作 成 さ れ て い る ATC / DDD 変 更 の 累 積 リ ス ト は 、 ウ ェ ブ サ イ ト www.whocc.no 上で閲覧可能である。付与された DDD が一般原則から逸脱した複合製剤の DDD リストは、ウェブサイト www.whocc.no 上で閲覧可能である。 VII. その他の ATC 分類システム A. ATCVet 分類 動物用薬のための解剖治療法化学分類である ATCvet は人用医薬品のための ATC システム と同じ主要原則に基づいている。ATCVet 分類は可能な限り人用のシステムに近いものに維 持されているが、動物用薬に適したものとするための特別な調節が施されている。ATCVet 分類は北欧医療協議会が作成し、WHO 医薬品統計法共同研究センターが 2001 年 1 月に引 き継いだものである。ATCVet 分類に関する詳しい情報は、ウェブサイト www.whocc.no 上 で閲覧することができる。 B. ATC 漢方薬分類 漢方薬の ATC 分類の枠組みは、オランダの Dr. Peter De Smet が 1998 年に作成した。こ の分類法は構造的には正式な ATC システムと同じであるが、漢方薬の分類は WHO によっ て採用されていない。ウプサラ・モニタリング・センターが ATC 漢方薬分類を担当し、薬 物辞典の中で利用している。ウプサラ・モニタリング・センターは漢方薬 ATC(HATC)分 類に関するガイドラインと Herbal ATC index を発行した。Herbal ATC index には承認さ れた学名と HATC コードのリストが含まれているのに対し、ガイドラインは漢方薬に HATC コードを付与する一助となることを目的としている。 VIII. ATC/DDD の解釈に関するガイドライン ATC/DDD システムを医薬品使用状況調査に用いる際には、必ず解釈に関するガイドライ ンを参照するべきである。ガイドラインには ATC/DDD の作成を計画中にワーキンググル ープが協議し、合意によって解決した特別な問題が説明されている。そのプロセス中に特別 な困難や問題が起こらなかった場合は、コメントは記載されていない。
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