多職種連携による 感染症診療支援病棟ラウンドの7年 京都市立病院 感染症科 清水恒広 臨床検査技術科 林 彰彦 薬剤科 村田龍宣 2014年10月31日 第53回全国自治体病院学会 in 宮崎 目的 • 2005年12月から開始した,医師,薬剤 師,細菌検査技師の3職種による,多職 種連携感染症診療支援病棟ラウンドが もたらした,7年間の成果と影響につい て検証する 活動内容(1) • 抗菌薬の整理:医師,薬剤師 – 品目の削減 – 超広域抗菌薬や特定抗菌薬の届出制・許可制 • バンコマイシンのTDM:薬剤師 – 血中濃度は24時間測定可 • 培養検査結果の迅速な報告:検査技師 – 電話ないしメールで情報共有 – Antibiogramの作成:半年毎,年2回 TDM:Therapeutic Drug Monitoring 活動内容(2) • 感染症診療支援ラウンド:医師主導 – 週2回,約3時間の病棟ラウンド – 対象は,血液培養陽性症例,コンサルト症例, 指定抗菌薬使用全症例など – 必要に応じて診察 – 検査,治療,感染対策などの提案 – 提案内容を医師がカルテ記載 方法 • 血液培養 – 年間提出本数,陽性率,汚染率の算定 • 指定抗菌薬 – カルバペネム,第4世代セファロスポリン,抗MRSA薬 の使用量(AUD) • 緑膿菌のカルバペネム感受性率 • 黄色ブドウ球菌 – 年間検出件数とMRSA分離頻度 • 他の耐性菌検出状況 血液培養検査のボトル本数 (1検体は好気・嫌気の2本) 13,314本 13,314本 15000 12000 9000 ラウンド開始 処理限界 4台の器械, 5日間培養で 14,000本/年間 6000 3000 0 血液培養検査ボトル本数はこの7年で約4倍に増加 患者あたりの培養回数 のべ人数 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 100% ラウンド開始 80% 60% 40% 20% 0% 複数セット 1セット 複数セット率 複数セット提出率は小児を含め80%以上を維持 血液培養陽性率と汚染率 20% ラウンド開始 16.4% 13.5% 15% 10% 14.6% 14.4% 14.3% 12.9% 11.8% 9.1% 6.3% 5.2% 5.4% 4.7% 1.3% 1.4% 2011 2012年 2012年 5% 0% 2005 1.0% 1.3% 1.1% 1.1% 2006 2007 2008 2009 1セット 複数セット 1.0% 全体 2010 3% 汚染率 陽性率は13~14%台,汚染率は1~1.4%(3%以内)を維持 届出が必要な指定抗菌薬 • メロペネム • セフェピム,セフピロム • バンコマイシン,ムピロシン • リネゾリド,ダプトマイシン:許可制 • ペントシリン/タゾバクタムは未採用 Antibiotic Usage Density(AUD) • 抗菌薬総使用量を合計入院日数・標準的な一日使 用量(DDD)で補正したもの • 施設間での抗菌薬の使用量の比較を簡易に行う 抗菌薬月(年)間使用量(g 抗菌薬月(年)間使用量(g) AUD = DDD× DDD×月(年)間入院患者延べ日数 ×1000 • DDD:defined daily dose – 世界保健機関(以下,WHO)が定めた1日標準維持量を用いた – WHOによる設定がない抗菌薬:添付文書の1日最大量を算出 AUD年間比較 -カルバペネム- AUD 16.0 14.0 ラウンド開始 大部分メロペネム 13.2 12.0 10.0 8.0 5.7 3.7 6.0 4.0 2.0 2.0 2.5 1.2 0.8 1.2 0.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年 一旦1/10以下に減少するも2011年より軽度増加 AUD年間比較 -第4世代セファロスポリン- AUD ラウンド開始 大部分セフェピム 14.0 12.0 10.6 7.8 10.0 8.0 5.6 6.9 6.6 6.0 4.2 5.0 4.6 2009 2010 4.0 2.0 0.0 2005 2006 2007 2008 2011 2012 一旦半減するも2011年より増加傾向 年 AUD年間比較 -抗MRSA薬/抗VRE薬- ほぼすべてバンコマイシン AUD ラウンド開始 8.0 6.0 6.9 4.6 4.2 4.4 4.3 3.1 4.0 5.5 3.6 2.0 0.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年 しばらく著変はなかったが2011年より増加傾向 緑膿菌のカルバペネム感受性率 100 感受性率 感受性率(%) (%) 95 90 ラウンド開始 メロペネム イミペネム/シラスタチン イミペネム シラスタチン 85 80 75 70 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年 両薬剤とも85%前後から95%以上に感受性率は回復 黄色ブ菌件数とMRSA分離頻度 1000 800 黄色ブドウ球菌検出件数 40 30 20 10 0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 ラウンド開始 MRSA分離頻度(%) 分離頻度(%) 600 400 200 0 MRSA検出件数 検出件数 年 全黄色ブ菌,MRSA数は減少,MRSA分離頻度は30%を維持 その他の耐性菌状況 • ESBL産生大腸菌 – 数年前から全大腸菌の約10%を占める – 市中からの持ち込みが多い • 多剤耐性緑膿菌,VREなど – 4から5年に1件の持ち込みのみで,ゼロを維持 その他の成果 • 抗菌薬の狭域化 – 菌血症症例などで可能ならほぼすべて狭域化 • コンサルト症例の増加 • 各職種が資格を取得 – – – – 感染症専門医,暫定指導医:2010年1人(演者) 認定臨床微生物検査技師:2010年1人 感染制御認定臨床微生物検査技師:2011年1人 日本病院薬剤師会 感染制御認定薬剤師: • 2010年1人,2012年1人 – 日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師:2011年1人 – 日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師: • 2012年1人,2013年1人 感染症科としての実績 • 日本感染症学会専門医連携研修施設 – 2010年~ • スタッフ・専攻医の増加 – 2010年~ • 入院患者数の増加 – 2011年~ – HIV感染症,輸入感染症だけでなく,一般感染症が増加 • 内科外来枠の増設 – 2013年~ • 「感染症内科」として保険診療開始 – 2013年4月~ 感染症科入院患者数の推移 スタッフ・専攻医数 300 2 2 (人) 3 3 250 5人 257 200 150 Pandemic 132 100 99 98 2009年 2009年 2010年 2010年 50 0 36 2008年 2008年 2011年 2011年 2012年 2012年 各年1月1日から12月31日までの集計 感染症科の変遷 2001 2003 炭疽菌 テロ 2005 2007 SARS 京都 京都 鳥H5N1 VRE 2009 2013 年 2011 Flu A Pandemic A(H7N9) MERS 2種感染症指定医療機関として,新興・再興感染症対策 輸入感染症 感染対策 中心 さらに 小児科医/ 消化器内科医 が担当 2005年12月~ 感染症診療 支援ラウンド開始 2006年4月~ 感染症科で HIV/AIDS診療 2010年1月~ 感染症専門医 暫定指導医 連携研修施設 感染症内科で 保険診療開始 外来枠 入院数 スタッフ数 2(兼任) 専攻医数 0 1(専任) 1 2(専任) 1 3 2(専任) 2 結論 • 医師,検査技師,薬剤師が中心となった感染診療 支援ラウンドを継続することで – 抗菌薬適正使用を含む適切な感染症診療 を行いうる – 感染対策を遵守しつつ,薬剤耐性菌の定 着ならびに伝播を抑制しうる – 各職種の知識技量の向上につながる – 真の「感染症科」として発展できる
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