著作権管理のための匿名通信

平成 20 年度 卒業論文
論文題目
著作権管理のための匿名通信
神奈川大学 工学部 電気電子情報工学科
学籍番号
200402898
遠山 真一朗
指導担当者
木下宏揚
教授
1
目次
第1章
序論
5
第2章
基礎知識
7
DRM(ディジタル著作権管理) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
2.2 既存の匿名通信方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
2.2.1
匿名 proxy サーバ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
2.2.2
オニオンルーティング . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
2.2.3
Mix-net . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
2.1
2.3 カプセル化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
2.4 エージェント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
第3章
2.4.1
エージェントとは . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
2.4.2
エージェントの分類 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
2.4.3
モバイルエージェント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
提案ネットワーク
17
3.1 情報カプセル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
3.2 エージェント間の交渉 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
3.3
3.2.1
情報カプセルエージェント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
3.2.2
アクセス制御エージェント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19
Dublin Core . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20
3.3.1
拡張 Dublin Core モデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22
3.4 提案するネットワーク . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23
3.4.1
コンテンツの二次利用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24
3.4.2
コンテンツの二次配布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25
2
第4章
結論
28
謝辞
29
参考文献
30
質疑応答
32
3
図目次
2.1 オニオンルーティング . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
2.2
Mix-net . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
2.3 カプセル化コンテンツ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
2.4 エージェントの分類 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
3.1 情報カプセル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
3.2
Dublin Core モデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 26
3.3 提案するネットワーク . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27
4
表目次
第1章
序論
5
第1章
序論
近 年,PC の 高 機 能 化 や ネット ワ ー ク の 高 速 化 に よ り, 音 楽, 動 画, 画 像 な ど の
ディジタルコンテンツの流通が盛んになってきている.[8] ディジタルコンテン
ツの最大の特徴として, 無劣化で複製が容易であるということがあげられる.[9]
一方, P2P ネットワークなどを介し, 無断送信が禁止されている映像や音楽ファ
イ ル の 不 正 流 通 が 社 会 問 題 と なって お り, DRM( ディジ タ ル 著 作 権 管 理 )と
いったコピ ー制 御機 構の 確立 が 緊 急課 題 と なって き て い る. DRM に 関 し て も
恒久的な再生が保障されていない、消費者の権利に対する不当な制限など改
善 す べ き 点 が 多 い. ま た 著 作 権 だ け で は な く 個 人 情 報 に 関 す る 権 利 の 保 護 を
求める声も高まっており情報セキュリティの対策が必要不可欠なものとなって
い る.[5] ま た 一 方 で オ ー プ ン ソ ー ス 等 の 配 布 や 改 変 を 認 め て い る と い う 流 れ
も あ る. 従って 著 作 権 の 所 有 者 と そ れ を 利 用 す る ユ ー ザ の 間 に は 様々な 権 限
に 対 す る 要 求 に 柔 軟 に 対 応 可 能 な シ ス テ ム が 求 め ら れ る.[3] そ こ で ディジ タ
ルコンテンツの流通に暗号化されたディジタルコンテンツとそれに対する暗
号 鍵, 著 作 権 情 報, 管 理 エ ー ジェン ト な ど を パッケ ー ジ 化 し た 情 報 カ プ セ ル を
導 入 し こ の カ プ セ ル 内 の 情 報 カ プ セ ル エ ー ジェン ト と ア ク セ ス 制 御 エ ー ジェ
ン ト が 交 渉 を 行 う こ と に よ り コ ン テ ン ツ を 管 理 す る と い う 考 え も あ る [4] し
かしエージェント間で通信を行う際に流通後のコンテンツの位置の把握が困
難ということや利用者などのプライバシーを保護する必要が出てくる.そこ
で 著 作 物 を デ ー タ ベ ー ス 側 で 管 理 す る ツ ー ル と し て Dublin Core に 着 目 す る.
第1章
序論
6
Dublin Core は, 簡潔なメタデータを定義してネットワークを介した情報源への
アクセスを促進する事を目的に作られたものである.メタデータはデータに
関する構造化されたデータであり,それを使う事によってデータベースへのア
クセスの相互操作性,柔軟性,拡張性を向上させる効果がある.また,Dublin
Core は メ タ デ ー タ の コ ア 要 素 の 1 つ と し て「 権 利 管 理 」が 定 義 さ れ て い る .
そこでこの要素を著作権,利用の権限のために拡張する.本稿が着目するシ
ステム構成は,
“ 拡張 Dublin Core とアクセス制御リストによりデータベース
を管理するエージェント ”,
“ 著作権や利用の権限を制御するエージェントを
伴うコンテンツのカプセル ”,
“ ユーザ側のエージェント ”である.データベー
スに は著作者が作成した著作物が格納される .データベース の管理エージェ
ントは,データベース内部のデータの読み書きに関しては従来のアクセス制
御技術が適用される.[10] しかし,一度データベース内部のコンテンツがネッ
ト上に流通すると,一般には制御不能になってしまう.本稿では既存の情報カ
プセルに Take-Grant と情報フィルタ,エージェントを導入し,コンテンツ利用
の 利 便性 を向 上す る方法 を提 案 する .この シ ス テ ム に よ り,コ ン テ ン ツ の 利
用の利便性の向上が期待される.本稿ではプライバシーを保護しつつ流通後
の コ ン テ ン ツ の エ ー ジェン ト と 権 利 者 の エ ー ジェン ト が 通 信 可 能 な 匿 名 経 路
制御を提案する.
第2章
基礎知識
7
第2章
基礎知識
2.1
DRM(ディジタル著作権管理)
デジタルデータとして表現されたコンテンツの著作権を保護しその利用や
複 製 を 制 御・制 限 す る 技 術 .主 な 技 術 と し て は 音 楽・映 像 ファイ ル に か け ら
れ る 複 製 の 制 限 や 電 子 透 か し,itunes に お け る FairPlay,Adobe LifeCycle な ど が
あげられる.デジタル化されたコンテンツは何回でもコピーしても品質が劣
化しないため P2P など違法な配布・交換が増えているこれに対抗するために
コ ン テ ン ツ の 流 通・再 生 に 制 限 を 加 え る DRM 技 術 が 注 目 を 集 め て い る .[1]
DRM はコンテンツ利用者の利便性を損なうことなく著作権および所有者に適
切な対価を還元することを目標としている. DRM を実現する仕組みにはさま
ざまなものがあり, その機構はコンテンツの形式や利用形態によって異なるが,
ユーザが特定の再生ソフトウェア(iTunes や Windows Media Player など)を使
い, 暗号化されたコンテンツを復号しながら再生する方式が一般的である. 暗
号化に使われる鍵(キー)は再生ソフトウェア内に隠されているか、あるいは
ネットワーク上からダウンロードされることが多い. この再生ソフトウェアが
ユーザのコンテンツ用を管理するため, 利用期間の切れた後には再生不能にす
るなどの処置が可能になる.
2.1
DRM( ディジ タ ル 著 作 権 管 理 )
8
DRM システム(ディジタル著作権管理)の必要条件としては以下に示す
1・著作権の所有者は処理情報の条件を設定可能
2・分配された情報の完全性は保障されなければならない
3・所有者は使用者側での処理情報の妥当性をチェック可能
4・所有者は情報を使用するための条件を変更することが可能
5・所有者は分配された情報を最新のものにすることが可能
しかし DRM にも欠点がある [5]
• 恒久的な再生が保障されていない
DRM 技術のほとんどが特定のメーカーによって定められ, その技術的詳
細 が 一 般 に 公 開 され て いな い こ と か ら, そ の メ ー カ ー や サ ー ビ ス が 活動
を 停 止 し た 際 に, 購 入 し た コ ン テ ン ツ が 将 来 に わ たって も 利 用 可 能 な の
かが必ずしも担保されていない.
• 消費者の権利に対する不当な制限
DRM はその技術的特性により, 通常, 複製以外の利用 (著作権法によって
認められている範囲での抜粋や, 他人への譲渡など) も制限することが多
い. このため, DRM は購入した製品を自由に使う消費者の権利を奪ってい
るとの主張もある.
2.2
既存の匿名通信方法
2.2
2.2.1
9
既存の匿名通信方法
匿名 proxy サーバ
proxy サーバを使用しないでホームページにアクセスした場合は,ユーザの
コンピュータが接続先に直接アクセスするため,ユーザの個人情報がWWW
サーバと接続先ページに残る. 一方で proxy サーバという仕組みがあり,proxy
サ ー バ を 介 し て W e b ペ ー ジ を 閲 覧 す る 場 合 は,proxy サ ー バ が ユ ー ザ の 代 わ
りにアクセスしてくれるので, アクセスされたWWWサーバには proxy サーバ
の IP アドレスしか残らないので、クライアントマシンの IP アドレスは知られ
な い .し か し ,proxy サ ー バ に は ク ラ イ ア ン ト の 情 報 が 残って い る の で proxy
サーバの記録を調べられるとアクセスした個人の情報が漏れてしまう
2.2
10
既存の匿名通信方法
2.2.2
オニオンルーティング
AnonymousProxy(匿名プロキシ)の一種で仮想回線接続により, 通信を複数
のノードを経由させることにより, 匿名性を高めている. 暗号化が, あたかもタ
マネギの皮のように 1 ホップごとに積み重ねられることが名前の由来である.
現実装においては TCP での通信を行うことができるが UDP や ICMP などのプ
ロトコルは使用することができない.[5]
図 2.1
オニオンルーティング
2.2
11
既存の匿名通信方法
2.2.3
Mix-net
接続元端末はまず各MIXサーバから公開鍵をもらう. MIXサーバ毎に公
開鍵は異なり, また接続先サーバからも公開鍵をもらう. まず, 端末は通信した
い内容を次のように暗号化
通信内容⇒サーバ公開鍵で暗号⇒公開鍵2で暗号化⇒公開鍵1で暗号化⇒
暗号化通信内容
ま ず, 暗 号 化 通 信 内 容 を M I X サ ー バ 1 に 渡 す . M I X サ ー バ 1 は 公 開 鍵 1
のペアである秘密鍵1で復号化.(復号化した内容を暗号化通信内容1と呼ぶ.
次にMIXサーバ1は暗号化通信内容をMIXサーバ2に渡す. MIXサーバ
2はMIXサーバ1と同様, 秘密鍵2で復号化.(暗号化通信内容2と呼ぶ)M
IXサーバ2は暗号化通信内容2を接続先サーバに渡す. 接続先サーバは秘密
鍵 で 復 号 化 し て 通 信 内 容 を 把 握 で き る.MIX サ ー バ 1,MIX サ ー バ 2 は 通 信 内
容を知る事はできない.
図 2.2
Mix-net
MIX サーバ で はまず, 多く の人か ら来た 通信 内 容を 一 旦蓄 積す る. ある 程 度
溜まると, それをランダムに次の MIX サーバに渡す. また, 通信内容の長さを揃
えるために, わざと情報内容に「詰め物」をする. このようにすれば,MIX サー
バの前後で通信を盗聴されても「だれの通信がいつ MIX サーバから送出され
たか」わからなくなる.
2.2
既存の匿名通信方法
12
欠点としては
・通信をサーバで一旦蓄積するために即時性にかける・端末側が複数回通信
内 容 を 暗 号 化 す る た め に か な り の ス ペック が 必 要・サ ー バ を 全 て 調 べ 上 げ る
と接続元が判明してしまう
2.3
2.3
13
カプセル化
カプセル化
カプセル化とは, オブジェクト指向プログラミングが持つ特徴の一つであり,
データとそれを操作する手続きを一体化して「オブジェクト」として定義し,
オブジェクト内の細かい仕様や構造を外部から隠蔽することである. [1] 外部
からは公開された手続きを利用することでしかデータを操作できないように
することで, 個々のオブジェクトの独立性が高まる. カプセル化の利点としては
以下のようなものが挙げられる.[2]
• 不正な操作からの保護
• 複雑さの隠蔽
• 部品化/再利用性の向上
• 修正/変更に対する影響範囲の極小化
• バグの影響範囲の極小化
P2P ネットワークの普及などによるコンテンツの不正流通が社会問題となっ
て い る 中, カ プ セ ル 化 は コ ン テ ン ツ を 保 護 す る 手 段 と し て 非 常 に 有 効 で あ る .
カプセル化コンテンツ自体は超流通的に自由にコピー・転送され, 電子鍵と組
み合わせることによって, コンテンツの閲覧・再生が可能となるという仕組み
にすることで, 実質的にコンテンツの権利を保護することが可能となる.
図 2.3
カプセル化コンテンツ
2.4
エ ー ジェン ト
14
エージェント
2.4
2.4.1
エージェントとは
エージェントはユーザの代理人として機能するシステムである. 「エージェ
ント」という用語はソフトウェアの抽象化/アイデア/概念を説明するものであ
り, その意味でオブジェクト指向プログラミングの各種用語 (メソッド, クラス,
オ ブ ジェク ト な ど) と 同 類 で あ る. ま た, 様々な 人々が そ れ ぞ れ に エ ー ジェン ト
の定義を提案しているが, それらには以下のような概念が共通して含まれてい
る.[5]
• 永続性
そのコードは要求されて実行されるのではなく, 常に起動された状態で,
何らかの行動を起こす時期を自身で判断する
• 自律性
エージェントは, 実行すべきタスクの選択優先順位付け, 目標に向けた行
動, 意思決定を人間の手助けなしで行う機能を持つ
• 社会性
エージェントは他のコンポーネントと何らかの通信や協調をする機能を
持ち,1 つのタスクを共同で処理する
• 反応性
エージェントは周囲の環境を把握し, その変化に適切に反応する
2.4
15
エ ー ジェン ト
2.4.2
エージェントの分類
多 く の 場 合, 一 つ の エ ー ジェン ト が す べ て の 機 能 を 実 現 す る の は 難 し い. ま
た, エージェントという名称を使う場合には, ある要素機能に着目して, いろい
ろな形容詞を付けて呼ばれることが多い.
1. 自律エージェント
自 己 充 足 的 で あ り, 観測 さ れ た 環 境に 基 づ い て 内 部 目 標 を 達 成 す る た め
の行動を独自の判断で決定する
2. 知的エージェント
一種の人工知能的機能を有するエージェントで, ユーザーを補助し、繰り
返し行うべきコンピュータ関連のタスクをユーザーに代わって行う
3. マルチエージェント
単 体 で は 目 的 を 達 成 で き ず, 複 数 の エ ー ジェン ト が 相 互 作 用 を 及 ぼ し な
がら動作する
4. モバイルエージェント
ネットワークに接続されたコンピュータ間をプログラムが移動しながら
処理を行う
図 2.4
エージェントの分類
2.4
エ ー ジェン ト
2.4.3
16
モバイルエージェント
エージェントのどのような機能に着目するかによって, エージェントが分類
さ れ る こ と は 2.4.2 に お い て 述 べ た. こ こ で は, そ の 一 つ で あ り, 本 研 究 に お い
ても重要となるモバイルエージェントについて, さらに詳しく説明する.
モバイルエージェントはネットワークを介した分散処理技術の一種であり,
状態を保持したまま自律的にネットワーク上を移動し, 到着した PC 上で処理
を継続するプログラムである. モバイルエージェントの利点としては以下のよ
うなものが挙げられる.[6]
• ネットワーク負荷の削減
タスクを局所化することで転送データを減らすことが可能
• 非同期実行
移動先と移動元は独立, 時間節約につながる
• 通信切断への対応
移動後は通信切断しても処理可能
• 動的経路変更
移動先と移動タイミングを自律的に決定・移動
• 並列実行・負荷分散
複製を生成して並列処理可能
• 通信回数・遅延の低減化
通信相手側コンピュータに移動・処理
一方, モバイルエージェントを使用するということは, 外部からやってきた信
頼できないエージェントを自分の PC 上で実行することも意味するため, セキュ
リティの問題が非常に重要となってくる. また, ネットワーク上を移動するとい
う観点から, 盗聴や改ざんといった問題への対策も必要である.
第3章
17
提 案 ネット ワ ー ク
第3章
提案ネットワーク
3.1
情報カプセル
図 3.1
情報カプセル
暗号化されたコンテンツは, 情報カプセルエージェントにより管理されてい
るため, 利用条件が満たされない限り, コンテンツを復号し, 再生することはで
きない. ただし, カプセル化コンテンツ自体はコンテンツ管理者のサーバ, P2P
ネットワークなどを介し, 自由に流通できるものとする
3.2
エ ー ジェン ト 間 の 交 渉
18
エージェント間の交渉
3.2
コンテンツの管理はアクセス制御エージェント, 情報カプセルエージェントと
称する 2 つの制御プログラムにより行われる. 2 つのエージェントは, それぞれ
様々な役割を果たすが, 主にアクセス制御エージェントはコンテンツを取得す
る権利 (Take), 情報カプセルエージェントはコンテンツを提供する権利 (Grant)
が与えられている. この情報カプセルエージェントとアクセス制御エージェン
トの間でコンテンツの利用に関する交渉が行われ, 契約が成立すれば, ユーザ
は許諾範囲内でのコンテンツの利用が可能となる. 以下に各エージェントのそ
れぞれの役割を説明する.
3.2.1
情報カプセルエージェント
• コンテンツ管理者 (権利者) もしくは, サイト運営者が使用するエージェン
トで Grant 権をもつ
• 情報カプセルエージェントはカプセル化コンテンツの中に組み込まれて
おりコンテンツ流通における不正流通の監視, アクセス制御等を行う
• 不正流通が行われた場合にはすぐに管理者に連絡する
• XrML により記述された著作権情報・利用条件を参照することで, コンテ
ンツの利用の可否を判別する
• 情報カプセルエージェントはカプセル化コンテンツと共にネットワーク
上 を 自 由 に 流 通 し て お り, 各 ユ ー ザ の ア ク セ ス 制 御 エ ー ジェン ト と 交 渉
を行う必要があるため, モバイルエージェントとする.
3.2
エ ー ジェン ト 間 の 交 渉
3.2.2
19
アクセス制御エージェント
• ユ ー ザ か ら の ア クセ ス 権 の 要 求 を受 け て, コ ン テ ン ツ 管 理 者 か ら ユ ー ザ
へ送信され, ユーザ側で使用されるエージェントで Take 権をもつ
• アクセス制御エージェントの秘密鍵により暗号化されたセッション鍵を
復号できる
• ユ ー ザ 毎 に コ ン テン ツ 管 理 を 行 う必 要 が あ る た め, 複 製 が 不 可 能 で な け
ればならない
• アクセス制御エージェントはプレーヤやブラウザなどのソフトウェア上
で動作する
3.3
3.3
Dublin Core
20
Dublin Core
メ タ デ ー タ は デ ー タ に つ い て の デ ー タ で あ り,イ ン タ ー ネット に 分 散 配 置
されたデータベースの中にどの様なデータがあるかを記述し,検索効率を上
げ る 目 的 が あ る .Dublin Core Metadata Element Set は ,こ の 様 に 多 種 多 様 な
メタデータを効率的に参照,交換する必要最小限のメタデータの組み合わせ
(メタデータセット)として開発された.以下は Dublin Core の 15 個のエレメ
ントである・タイトル (情報資源に与えられた名前)
・作成者 (情報資源の内容の作成に主たる責任を持つ者)
・主題及びキーワード (情報資源の内容の主題)
・内容記述 (情報資源の内容の説明)
・公開者 (情報資源を提供している主体)
・寄与者 (情報資源の内容に貢献している者)
・日付 (情報資源のライフサイクルにおけるイベントに関連する日)
・資源タイプ (情報資源の内容の種類またはジャンル)
・形式 (情報資源の物理的または電子的形式)
・資源識別子 (与えられた環境において,情報資源の一意に定まる参照)
・出処 (現在の情報資源が作り出される源となった情報資源の参照)
・言語 (情報資源の内容を記述する言語)
・関係 (関連情報資源への参照)
・時間的,空間的対象範囲 (情報資源の範囲または領域)
・権利管理 (情報資源に含まれる,ないしは関わる権利に関する情報)
その中で,著作権に関する要素に rights がある.これは,リソースが保持す
る,あるいはリソースに適用される権利に関する情報で,通常,リソースの
権利管理宣言やそのような情報を提供するサービスについて言明されて,知
的所有権,著作権などのさまざまな財産権などの情報を含むことが多い.こ
の 要 素 が な い 場 合 は, リ ソ ー ス の 権 利 に 関 し て い か な る 憶 測 も た て な い 事 に
なっている.また,right の拡張要素として,accessRights がある.これは,誰
が リ ソ ー ス に ア ク セ ス で き る か に つ い て の 情 報 も し く は セ キュリ ティス テ ー
タ ス の 提 示 で ,ア ク セ ス 権 は ,プ ラ イ バ シ ー ,セ キュリ ティ又 は そ の 他 の 規
3.3
Dublin Core
21
則に基づいたアクセスあるいは制限に関する情報を含んでいる場合がある.
しかしながら,権利管理における要素における拡張がなされておらず,また,
利用目的が明白でないなど,Dublin Core の表現が不足している.
3.3
Dublin Core
3.3.1
22
拡張 Dublin Core モデル
著作権を保護するために必要な機能は以下のとおりである.
1. 利用目的が明白である
2. 著者の名前とコンテンツが対応していること
3. 著者が流通しているコンテンツの権限を更新,削除することが可能
著作権に拡張した Dublin Core モデルを図 3.2 に示す.Dublin Core の表現を,
著作物に関する権利関係や利用目的などについてさらに拡張したもので,著
作権情報の詳細が既存のものよりも明白になっている.図 3.8 において,著作
物の権利が何なのかを確認する.著作権とは狭義の著作権である複製権,上
演・演奏権,上映権,公衆送信権,口述権等に対応する.利用条件とは,その
中の一つの権利の有無あるいは金銭との関連の組合せである.RDF ではこの
ような各権利に対応して書き下す.
権利ごとに 3 つに分類される.
・利用目的 1 著作者の権利がないときで,例えば,著作権法での著作物の
著作権の期間が終了したときである.
・利用目的 2 著作者の権利がある状態で,ユーザの利用における課金が発
生しない場合である.
・利用目的 3 著作者の権利があり,かつユーザが利用する際に課金が発生す
る場合である.
それぞれの権利において利用目的が何なのかをコンテンツのダウンロード
と複製,改変の 3 つにに分類できる.利用目的 2 と 3 では複製において,配布
す る 際 に 配 布 後 の コ ン テ ン ツ が 残って 使 え る 状 態 な の か 残って て も 使 え な い
または再配布後にコンテンツ自体削除されるかの 2 つに分類される.利用目
的 2 において,それぞれの目的において著作権の使用における許可するかど
うかに承認が必要なのか,承認なしでも利用できるのかに分類される.利用
目 的 3 に お い て ,許 可 す る か ど う か に つ い て は 課 金 に よって 制 御 さ れ る .ま
た,二次的,三次的に利用または配布においてこのモデルを適用すれば,著
作権情報の権限が保持され,安全に流通できるようになる.提案法において
は,権限の設定に利用する.
3.4
3.4
提 案 す る ネット ワ ー ク
23
提案するネットワーク
ネットワークが図 3.3 に示すノードで構成されるよう仮定. カプセルはコン
テ ン ツ, ア ク セ ス 制 御 と ル ー ティン グ 確 認 を 管 理 す る エ ー ジェン ト を 持 つ. こ
れらのノードの機能はカプセルを作成, 使用, 転送.
ネットワークの構造は以下の通り
• distributor( 配 布 者 )は 著 作 権 を 所 有 し て い る か 配 布 さ れ た コ ン テ ン ツ
の所有者. 所有者はコンテンツのアクセス権と目的を変更可能
• ユ ー ザ は コ ン テ ン ツ を 使 用 し 二 次 コ ン テ ン ツ を 作 成. し た がって ユ ー ザ
は配布者ともなりえる
• エージェントはコンテンツに同伴してユーザのノードでのコンテンツの
使用を管理
• ル ー タ は コ ン テ ン ツ を メ タ 情 報 と 共 に 転 送. こ の 情 報 は エ ー ジェン ト と
ルーティングに使用されたトレースセットからなる
• カプセルはコンテンツ, エージェント, トレースセットでできている.
• アップリンクメッセージは配布者からエージェントまで転送されたデー
タ も し く は メッセ ー ジ. こ の メッセ ー ジ は コ ン テ ン ツ を 更 新 す る か ア ク
セス権を制御するのに使用.
• ダウンリンクメッセージはエージェントから配布者まで転送されたデー
タもしくはメッセージ. このメッセージはエージェントがコンテンツの証
明を確認できないときそれをチェックするのに使用.
3.4
提 案 す る ネット ワ ー ク
3.4.1
24
コンテンツの二次利用
エージェントによる制御によって行う手順
1. ユ ー ザ が 著 作 者 (ま た は 配 布 者) に 欲 し い 情 報 を 要 求 し ,利 用 目 的 を 伝
える.
2. 著作者側のアクセス制御エージェントが著作物を著作権モデルに適用し,
カプセル化してカプセルエージェントを生成する.
3. カプセル化コンテンツをユーザに配布する.
4. カプセルエ ージェントがユーザ側の アクセ ス制御 エージェント と権限 が
一致しているかどうか確認する.
5. ユ ー ザ が コ ン テ ン ツ の 中 の 欲 し い デ ー タ を 抽 出 し ,そ れ を 元 に 編 集 し ,
二次著作者となる.
6. アクセス制御エージェントが他のユーザの欲しい情報の要求と利用目的
を受け取り,カプセル化して,著作者のカプセルエージェントに加えて新たな
カプセルエージェントを生成する.
7. 新たに作られたカプセル化コンテンツを他のユーザに配布する.
3.4
提 案 す る ネット ワ ー ク
3.4.2
25
コンテンツの二次配布
二次配布では以下のような流通を行う.
1. ユ ー ザ が 著 作 者 (ま た は 配 布 者) に 欲 し い 情 報 を 要 求 し ,利 用 目 的 を 伝
える.
2. 著作者側のアクセス制御エージェントが著作物を著作権モデルに適用し,
カプセル化してカプセルエージェントを生成する.
3. カプセル化コンテンツを利用者に配布する.
4. カプセルエ ージェントが利用者側の アクセ ス制御 エージェント と権限 が
一致しているかどうか確認する.
5. カプセルエージェントがユーザにたどり着いたときにユーザの存在を確
認し,履歴としてカプセルに書き込む.
6. ユーザのアクセス制御エージェントは,カプセルを再配布する際にカプ
セルを複製する.そのとき,複製されたカプセルエージェントにおいてはユー
ザの履歴が入っているとする.
7. 他のユーザへ再配布する.
3.4
26
提 案 す る ネット ワ ー ク
図 3.2
Dublin Core モデル
3.4
27
提 案 す る ネット ワ ー ク
図 3.3
提案するネットワーク
第4章
結論
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第4章
結論
本研究ではプライバシーを保護しつつ流通後のコンテンツのエージェン
トと権利者のエージェントが通信可能な匿名経路制御を提案した. 今後の課題
としては実際にシステムの構築方法を検討していきたい.
謝辞
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謝辞
本 研究 を行 なうに あた り,終始 熱 心に 御 指 導 し て い た だ い た 木 下 宏 揚 教 授
と 鈴 木一 弘助 手に 心から 感謝 致し ま す.また ,公 私 に わ た り 良 き 研 究 生 活 を
送らせていただいた木下研究室の方々に感謝致します.
2009 年 2 月
遠山 真一朗
参考文献
参考文献
[1] ”IT 用語辞典”
http://e-words.jp/
[2] ”カプセル化と隠蔽”
http://www.nextindex.net/java/capsulate.html
[3] 山田孔太:
情報カプセルを用いた著作権管理 2006
[4] 須田大介:
エージェントによるカプセル化コンテンツの著作権管理 2008
[5] ”ウィキペディア(Wikipedia)”
http://ja.wikipedia.org/wiki/
[6] ”モバイルエージェント”
http://research.nii.ac.jp/ ichiro/download/satoh-nii010516.pdf
[7] 山田孔太, 木下宏揚, 森住哲也:
”情報フィルタと情報カプセルによる著作権所有権保護システム”
[8] 五十嵐達治, 遠藤直樹, 川森雅仁, 古原和邦, 三瓶徹, 中西康浩:
”ユビキタス時代の著作権管理技術”, 東京電機大学出版局, 2006.
[9] 山田孔太, 木下宏揚, 森住哲也, 稲積康宏:
”エージェントベースの情報カプセルを用いたコンテンツ利用の
利便性の向上”, SCIS2007
30
参考文献
31
[10] 牛頭靖幸,森住哲也,稲積泰宏,木下宏揚 :
”Covert Channel 分析評価のためのアクセス制御エージェントシステムの
提案 ”
質疑応答
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質疑応答
Q:実際にシュミレーションしてみたか?
A:実際に ns2 を使いシュミレーションしてみようとしましたがうまく tcl や
C ++といった言語を扱うことができずコンパイルなどでエラーとなってしま
いシュミレーションを行うことが出来ませんでした