平成24年度 淡 路 市 長 施 政 方 針 第40回「市議会定例会」を招集しましたところ、御参集をいただき、 ありがとうございました。開会に当たり、新年度予算案及び関連諸議案 を提案するに際し、ここに、市政運営への所信を明らかにし、議員各位、 市民の皆様の御理解と御賛同を賜りたいと思います。 はじめに、17年前に未曾有の「阪神・淡路大震災」を経験した被災 市として、改めて、昨年3月に発生した「東日本大震災」で不慮に亡く なられた方々に対し深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々、避 難生活を余儀なくされておられる方々に対し、心からお見舞いを申し上 げます。 淡路市は、 「阪神・淡路大震災」の被災地として、復旧・復興に際し、 多くの経験を重ね、教訓を得てきました。大震災による壊滅的な被害か ら、幾多の試練と苦難を乗り越え、復興を成し遂げられたのは、全国各 地から数多くいただいた心温まる御支援の賜物です。ここに、改めて、 淡路市民を代表して、深く感謝を申し上げます。 わたり り ちょう 「東日本大震災」の発生以降、宮城県 亘 理 町 をはじめ、要請のあっ た被災市町に職員派遣を行うなど、培ってきた経験と教訓を生かし、被 災地にとって真に必要な支援を行ってきました。いまだ先行きが見通せ ない復旧・復興には、想像を絶する莫大な経費と期間を要するものと案 じますが、一日も早い復興・復旧を心からお祈り申し上げます。 3/5/2012 - 1 - この国難ともいえる「東日本大震災」から得られた大津波対策などの 新たな教訓も踏まえ、近い将来、高い確率での発生が想定される「東南 海・南海地震」やゲリラ的集中豪雨などに備えた危機管理体制の再構築 と安全・安心な基盤づくりが急務となっています。 これらの諸課題を十分に踏まえながら、「いつかきっと帰りたくなる 街づくり」を合言葉に、「だれもが安心・安全に暮らせる地域づくり」 に向け、矜持を高く、気概をもって、市民の皆様と共に力を合わせ、と にかく一歩ずつ前に踏み出そうという「攻め」の基本姿勢の下、淡路市 の地域運営に邁進してまいります。 (市政の振返りなど) さて、淡路市が誕生してから7年を経過しようとしています。初代淡 路市長に就任以来これまでの市政運営を振り返ります。 1期目は、 「明石海峡大橋無料化」をスローガンに掲げ、 「ふるさと五 弁の花の集約」を政策目標に、 「旧5町の融和」、 「赤字財政の回避」、 「バ ランスに配意した整備」を行いました。 2期目は、 「世界的観光立島・美しい淡路市」をスローガンに、 「身の 丈に合った市政運営」に取り組み、「企業誘致の推進」、 「観光施策の推 進」 、 「行財政改革の継続断行」の実績を残しました。特に、合併当初は、 「阪神・淡路大震災」の復旧・復興事業や下水道事業などによる財政負 担が重くのしかかり、危機的な財政状況に陥っていました。少しでも、 3/5/2012 - 2 - 行財政運営の判断に適切さを欠くと、赤字財政への転落が懸念される中、 行政の安定性と継続性の確保に最大限留意しながら、身の丈に合った地 域運営を目指しました。行財政改革には、不退転の決意をもって市民と 共に痛みを分かち合いながら断行し、その効果として、余程のことがな い限り、中期的な財政運営に道筋を立てることができました。 来る平成24年度は、2期目任期の最終年度に当たります。昨年の集 中豪雨災害等の復旧に全力を尽くすとともに、 「あわじ環境未来島特区」 の指定に伴う施策や「教育特区」の動向を踏まえながら、合併過渡期に 講じてきた諸施策の集大成を図ります。そして、真の意味での合併メリ ットを機能させる重要な節目の年とします。 (財政状況の認識) 次に、国等の財政状況です。民主党政権の下、平成24年度の国の一 般会計予算案は、市場信認の確保のため、「中期財政フレーム」を堅持 し、約90兆円3,300億円の計上となりました。前年度比較マイナ ス2.2パーセントの減額予算となっていますが、これは、基礎年金国 庫負担の財源不足額を一般会計に計上しない「年金交付国債」で賄うと いう財源措置を講じた結果です。とりわけ、3年連続、国債が税収を上 回り、憂慮すべき状況にあるといっても過言ではありません。歴史的な 円高不況が続き、ヨーロッパの債務危機などが重なり、我が国を取り巻 く経済・社会情勢は、極めて厳しい状況にあります。20年以上低迷し 3/5/2012 - 3 - 続けてきた経済は、いまだ本格的な回復軌道には乗っておらず、慢性的 なデフレ経済下で経済・雇用の停滞が長期化しています。 加えて、「東日本大震災」の復旧・復興財源や社会保障費の膨張に対 する財源の捻出が国家的な喫緊の課題であることなども併せ考慮しま すと、地方財政への影響は避け難く、まさに予断を許さない状況にある ことを深く認識しておかなければなりません。 このような情勢の下、平成24年度の「地方財政計画」において、一 般財源総額が「東日本大震災分」と別枠で整理されました。平成24年 度から26年度までの「中期財政フレーム」に基づき、23年度と同水 準の約59.6兆円が確保され、地方交付税総額も約17.5兆円、対 前年度比プラス0.5パーセントが確保されています。 また、兵庫県が、収支不足に対処するため、本年度から実施していま す「第二次行革プラン」に基づいた取り組みの動向などにも、十分に注 視する必要があります。 さて、淡路市の財政状況への認識です。合併当初の赤字転落が懸念さ れた危機的な財政状況を脱したとはいえ、健全化判断比率は、改善傾向 にあるものの、平成22年度決算において、実質公債費比率が22.5 パーセント、将来負担比率は238.4パーセントとなり、依然として 高い水準にあります。これらの指数は、「阪神・淡路大震災」の影響分 3/5/2012 - 4 - ひけん を除くと、島内他市と比肩していますが、いずれにしても、税収などの 自主財源に乏しく、地方交付税などの依存財源に頼らざるを得ない脆弱 な財政体質に変わりはありません。このような脆弱さゆえ、国の地方交 付税制度の影響を直線的に受ける懸念があります。成り行きによっては、 反射的に厳しい財政状況に置かれることを常に認識しておかなければ なりません。 特に、平成28年度以降の5年間で段階的に減額となる地方交付税の 一本算定による影響です。本年度算定の影響額が、これまで見込んでい た約23.9億円を超える約27.3億円となり、約3.4億円の広がり となりました。従前の行財政改革の取り組みとその効果を検証しながら、 その財源対策として、強力なリーダーシップの下、全庁一丸となって、 建設的な改革に取り組みます。 これより、平成24年度の市政運営の重点目標について、述べたいと 思います。 (重点目標) 新年度の重点目標は、本年度に引き続き、「教育」、「企業誘致」、「観 光」の三つの柱とし、「淡路市総合計画・後期基本計画」を踏まえた施 策を展開します。 まず、一つ目の「教育」です。少子高齢化が進む中、21世紀の淡路 市の将来を担う子どもたちの「豊かな心」と「たくましく生きる力」を 3/5/2012 - 5 - 育むことは極めて重要です。本市の教育の特色を打ち出し、教員の更な る指導力向上を図り、引き続き、信頼される学校づくりに努め、子ども たちの教育力向上を図ります。教育施策の中心として進取的に実施して きた「あさひプロジェクト」の分析と検証を行い、さらに内容を充実さ せ継続します。 二つ目は、「企業誘致」です。企業誘致による地域の活性化と雇用の 拡大、若者の定住化の促進を図ります。人口減少が進む中、基礎自治体 の地域運営に必要な人口水準を確保し地域活力を高めるには、いかにし て人口減に歯止めを掛けるかに尽きます。若者の雇用の場や賑わいの創 出、若者の定住化に繋げるため、引き続き、本市の地域特性を活かした 誘致活動を積極的に推進します。これまでの取り組みの検証等を行い、 地域課題とされる安価な事業用水と従業員の確保や割高な運搬コスト に対処するため、適切な奨励施策を講じます。 三つ目は、「観光」です。豊かな自然と伝統ある歴史文化など既存観 光資源の有効活用を図ります。「世界的観光立島・淡路市」の実現に向 け、 「食」と「教育」をキーワードに掲げ、 「はじまりと幸せの聖地・淡 路市の『お結び』事業」を展開するとともに、新年度は、学校・地域と 連携した「観光立国教育」に取り組みます。また、交流人口の増加によ る地域活性化を図るため、滞在型観光客の増加に繋がる施策を推進しま す。 3/5/2012 - 6 - これより、新年度の三つの重点目標に沿って、重点施策の御説明を申 し上げます。 【教育】 まず、一点目の「教育」について、重点施策を述べます。 (あさひプロジェクト) 一つは、「あさひプロジェクト」の継続・充実です。この「あさひ」 ・・ ・・ とは、教育研究活動のレベルを「あげる」、経費面で「ささえる」、市全 ・・ 体に「ひろげる」の言葉の頭文字に由来します。研修機関や大学等と連 携し、教員が自主的な研究活動等を通じて授業力を高め、子どもたちの 学力向上に繋げます。新年度は、学校再編の拠点校となる小中学校を中 心に9校で取り組みます。 (教育研究活動活性化事業) 二つは、新規事業の「教育研究活動活性化事業」です。本市の教育活 動拠点となる「淡路市教育センター」を新設し、教育に関する専門的・ 技術的事項の研究を行います。教育センターを中心に、21世紀を生き ていくための基礎学力の取得と、21世紀にふさわしい学びと学校の創 造に向け、 「あさひプロジェクト」の一環として、 「フロンティアプロジ ェクト事業」を創設します。タブレット型パソコンなどの情報通信技術 を活用した効果的な授業の在り方の調査研究と実践に向け、先進的に取 り組みます。 3/5/2012 - 7 - (小学校の環境整備) 三つは、 「小学校の環境整備」です。 「市立小学校再編推進計画」の基 本理念である「自ら考え、心豊かに、たくましく生きる力を育む学校づ くり」に基づき、小学校の適正規模化と適正配置を進めます。新年度は、 一宮地域の拠点校となる郡家小学校の整備に取り掛かります。 【企業誘致】 次に、二点目の「企業誘致」について、重点施策を述べます。 (企業誘致推進事業) 一つは、「企業誘致推進事業」です。平成22年度に生穂新島地区に 島外から進出した製造事業者の平成25年当初の開業が決まり、新たな 雇用の創出と地域の活性化が期待されます。新年度は、さらに企業誘致 を推進するため、新たに東京都内で開催される「企業誘致フェア」に出 展し、花博跡地、生穂新島地区をはじめ阪神圏域への交通利便性の高い 地域特性を広く情報発信するなど、地道な売込活動を繰り返し展開しま す。また、地域課題とされる安価な事業用水を確保するため、生穂新島 地区に係る取水施設整備事業を実施します。 (企業立地推進事業) 二つは、 「企業立地条例」に基づく「企業立地推進事業」の展開です。 平成20年3月に「企業立地促進法」に基づく「基本計画」を策定し、 県内では、他市に先駆け、経済産業大臣の同意を得て、地方交付税によ 3/5/2012 - 8 - る財源措置など、立地しやすい環境条件を整えました。引き続き、市内 事業者をはじめとした企業立地推進に必要な奨励金を交付し、地域の活 性化と雇用の創出に繋げます。 【観光】 次に、三点目の「観光」について、重点施策を述べます。 (観光立国教育事業) 一つは、新規事業の「観光立国教育事業」です。「ふるさとが大好き で、その良さを誰かに伝えたい。」と思う子どもたちを育成するため、 学校・地域と連携し、地域学習体験型の「観光立国教育」に取り組みま す。子どもたちが自分なりに地域をガイド・コーディネイトできる力を 身に付けることを目標に掲げ、遠からず「子ども観光大使」の輩出を目 指します。 み け つ くに 次に、食材が豊富な御食国に適した取り組みです。本年度好評であっ わん た「おむすびコンテスト・具-1グランプリ事業」を継続します。 新年度の新規事業としては、長年、食教育への取り組みが盛んな市内 の高校と連携し、若い感性と斬新な発想力を活かし、地元食材を活用し た商品を考案、試作、披露します。地元食材を活用したアイデア商品の 芽を出し、商品化を試みます。 (観光ピーアール事業) 二つは、「観光ピーアール事業」の積極的な展開です。新たな情報発 3/5/2012 - 9 - じん 信ツールとして作成した「あわ神・あわ姫」のキャラクターを効果的に 活用し、本市のイメージアップを図ります。「首都圏観光キャンペーン じん あわ神上京物語」と題する首都圏への観光ピーアールや、国生みの誕生 で“はじまり”出会った二人のキャラが一緒になって地域の“幸せ”を い ざ な ぎ 創るセレモニーとして、国生み神話で知られる伊弉諾神宮で由緒ある じん 「あわ神・あわ姫の結婚式」を挙行します。そのほか、「キャラグッズ 作成事業」として、ストラップなどの商品化を試みるとともに、新入学 児童にキャラを活用した防犯ブザーを配付し観光への関心を高めます。 ご っ さ かいと (五斗長垣内遺跡活用事業) ご っ さ かいと 三つは、計画的に進めている「弥生の鍛冶工房・ 『五斗長垣内遺跡』 」 の観光への活用です。新たな公民連携の下、県の「地域再生大作戦事業」 ご っ さ かいと を活用して「五斗長垣内遺跡活動拠点施設整備事業」を進めます。従来 型の一律・画一的な遺跡整備ではなく、計画段階から地域住民の意見を 集約し事業に反映させるなど、地域が自発的かつ主体的に遺跡に関わり を持ち続ける仕組みを構築します。 これより、平成24年度の主要施策について述べます。 【一人ひとりが輝く個性創造のまちづくり】 (共生のまちづくり) 「共生のまちづくり」です。市民一人ひとりの人権が尊重され、誰も がお互いの個性と能力を認め合い、生き生きと自分らしく幸せに暮らせ 3/5/2012 - 10 - る社会の実現に向けた取り組みが重要です。地域に根付いた人権啓発活 動と人権教育を推進するとともに、男女が、お互いの人権を尊重しつつ 責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮 することができる「男女共同参画社会」の実現に向け取り組みます。 そのほか、児童虐待やDV被害に苦しむ方々に対する迅速かつ的確な 対応を図るため、引き続き関係機関との連携を強化します。 (生涯学習、スポーツ・レクリエーションなどの充実) 次に、生涯学習などの主要施策です。市民自らが実際生活に即した文 化的教養を高めることができるような環境醸成に努めます。生涯学習プ ログラム開発等の機能を中央公民館に集約し、拠点公民館で系統化した 講座等を展開するほか、文化ホールなどの利用促進を図ります。また、 徳島藩松帆台場などの歴史的文化遺産の保護・活用事業の実施や、子育 て学習センター機能を充実させるため北淡子育て学習センターを移転 します。 生涯スポーツでは、誰もが日常的にスポーツに親しみ、楽しみ、スポ ーツを支える活動に参画しやすい環境づくりを推進するため、体育協会、 スポーツ推進委員などの関係機関と連携して取り組みます。 【助け合い支え合いのあるいきいきと健やかなまちづくり】 (健康づくりの推進) 次に、「健康づくりの推進」です。市民一人ひとりが、健康な生活習 3/5/2012 - 11 - 慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康へ の意識を高めることが大切です。そのため、健康相談の充実、「肝炎ウ イルス検査・日本脳炎予防接種助成事業」の拡充のほか、介護予防事業 の「いきいき100歳体操」を市内全域に広げるなど、「健康淡路21 計画」に基づいた施策を展開します。 (地域医療体制の充実) 次に、「地域医療体制の充実」です。淡路市北部の地域医療を安定的 かつ継続的に確保する必要から花博跡地に病院誘致を推進してきまし た。新年度は、誘致コンセプトイメージに合致した建設費用の一部に対 し、合併特例債などを活用した支援を行います。また、市民の安全・安 心確保のため、引き続き、小児救急医療をはじめ、休日・夜間の救急医 療体制を確保します。 (高齢者が安心して暮らせるまちづくり) 本市の高齢化率は32パーセントを超え、65歳以上の介護保険の被 保険者数は約 1 万5,000人に上ります。そのうち、要支援認定者は 約3,000人を数え、その約8割が介護保険の利用者です。新年度は、 「第5期介護保険事業計画」の初年度に当たります。住み慣れた地域で 安心して暮らせるよう、地域支援事業や介護予防事業等の取り組みを充 実させます。 要支援者には、要介護状態にならないよう重度化の防止に努め、心身 3/5/2012 - 12 - ともに健康で生きがいを持ち、自立した生活を送ることができるよう支 援します。そのほか、75歳以上の方を対象にした「高齢者肺炎球菌ワ クチン接種費用助成事業」を継続するとともに、社会福祉協議会、民生 児童委員などとの連携を密にし、高齢者が安心して暮らせるまちづくり を進めます。 (障がいのある人がいきいきと暮らせるまちづくり) 次に、 「障がい者福祉の推進」です。 「障がい者の自立と社会参加への 支援」を施策の柱とし、障がい者が自らの能力を最大限に活かし、地域 の一員として、誰もが共に生き支え合う社会づくりを目指し、社会福祉 協議会などと連携して施策を進めます。 新年度は、「障害者自立支援法」による支援策を講じるとともに、社 会的障壁の除去に配慮し、公共施設などのバリアフリー化を進めるほか、 現行の障がい者に対する「福祉タクシー利用助成事業」の上限額を引 き上げます。 (子育て支援の充実) 次に、「子育て支援の充実」です。過日、国立社会保障・人口問題研 究所が50年後の国の総人口が現在より3割以上減少し約8,670万 人となり、しかも高齢者が4割を占めるという将来像を示され、不安を 覚えた人も少なくなかったのではないでしょうか。 本市にとっては、この予想よりも早く人口減の波が押し寄せる懸念が 3/5/2012 - 13 - あります。人口減の流れに歯止めを掛けるには、安心して子どもを生み 育てることができるよう、国策と併せ重層的に組み合わせた施策で積極 的に支える必要があります。 新年度は、子どものための手当などの支給をはじめ、本年度に創設し た3歳児から5歳児まで同時入所している2人目児童の保育料の無料 化を継続するとともに、引き続き、「多子世帯保育料軽減事業」などを 実施し、子育て支援策の充実を図ります。 学童保育では、子育ての経済的支援が必要な多子世帯に対し、2人利 用の場合に1人を無料化とする事業を継続します。また、新婚世帯の賃 貸住宅入居者を対象にした「新婚世帯家賃補助事業」や、子育て不安等 を軽減するための「予防接種費用助成事業」を継続します。 そのほか、本年度に所要の調整を要したため、新年度に繰り延べた「仮 称・一宮保育所」の調査・設計に取り掛かり、一部建築に着手するなど、 引き続き「保育所規模適正化計画」を推進します。 次に、「少子対策」の新規事業です。 一つは、つわりなどで口腔ケアの控えがちな妊婦に対する歯科検診の 無料化支援策を講じます。 二つは、北淡保育所でのモデル事業として、園児が英語と触れ合う場 を提供する「えいごであそぼう事業」を実施します。 三つは、一時預かり保育を拡充し保育サービスの質の充実を図ります。 3/5/2012 - 14 - 【安全・安心でうるおいある暮らしを実現する定住のまちづくり】 (いつかきっと帰りたくなる街づくりの推進) 次に、「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の推進です。ふるさと を離れた若者たちが、時を経て望郷の念にかられ、「いつかきっと、ふ るさとに帰りたい」と、抱懐することは少なくありません。そのとき、 ふるさと淡路市が、「安全・安心でうるおいある暮らしができる定住の まち」であることが望まれます。新年度は、この目標の実現に向け、淡 路市に住む人も、離れている人も、共に改めて「ふるさと」を考え、市 の将来像を描き出すような参加型事業を実施します。 (ふるさとづくり推進事業) また、心温まる「夢と未来へのふるさと寄附金」を活用して、活力あ る地域づくり活動を展開する町内会等に対し、引き続き、「ふるさとづ くり補助金」を交付し、地域での自主的かつ主体的な活動を支援します。 そのほか、市民の連帯意識の高揚と地域振興などを図るため、合併特 例債を活用し「地域振興基金」を創設します。更なる新市一体感の醸成 に向けた施策の充実を図るとともに、引き続き、パールブリッジ・リタ ーン通学者助成や淡路市紹介バスツアーなど定住化施策を推進します。 (緊急雇用対策) 次に、「緊急雇用対策」です。いまだ厳しい雇用情勢は回復していま せん。引き続き、国の「重点分野雇用創造事業」を活用し、離職を余儀 3/5/2012 - 15 - なくされた失業者に対し短期間ではありますが、生活の安定を図るため の雇用を確保し、次の就業への機会を創出します。 (教育による地域活力の向上) 次に、「教育による地域活力の向上」です。少子高齢化が進む中、停 滞する地域活力を再生するには、若者たちの地域への滞在、交流などが 必要です。教育の充実と相まって地域活力の向上に結び付ける観点から、 関係教育機関との連携を強化します。新年度は、公私協力体制により創 設された、市内看護医療大学の助産分野の修士課程を含めた大学院の開 設に向け、建設費用の一部を助成します。教育と地域医療の充実を図る とともに、若者たちが地域に滞在することによる地域活力の向上に繋げ ます。 (社会資本の整備) 次に、「社会資本の整備」です。安心かつ人に優しい快適な道路環境 の実現に向け、計画的に道路整備を進めます。新年度は、交付金等の有 ゆめ ぶ た い みなみ う ざ き の た お こうりゅうじ 利な財源を活用し、 「夢舞台 南 鵜崎線」 、 「野田尾興隆寺線」などの道路 新設改良を施工するとともに、引き続き、交通安全施設整備の充実と適 正な河川管理を行います。特に、昨年の集中豪雨等による道路・河川災 害の一日も早い復旧に取り組みます。 市営住宅は、「住生活基本計画」に基づき、耐震改修をはじめ、より 良い住環境を目指し計画的に整備します。 3/5/2012 - 16 - 上水道では、平成26年4月の簡易水道事業の淡路広域水道企業団へ の円滑な統合に向け、引き続き環境を整えます。 下水道では、事業全体の検証等を行いながら、弛みない経営の効率化 に努めます。更なる加入促進を図るため、排水設備工事費助成を継続す るとともに、新年度は、管渠布設工事を行うほか、淡路・東浦浄化セン ターのオゾン設備を改修します。 (公共交通対策) 次に、生活基盤となる「公共交通対策」です。縦貫線などの既存バス 路線の維持に努め、高速バス利便性の向上に取り組みます。岩屋コミバ スなどの自主運行バスの支援やデマンド交通実証試験を行うなど、多様 な手法を講じ、市民の交通手段を守り抜きます。将来の持続可能な公共 交通システムの指針となる「地域公共交通総合連携計画」に基づき、新 たな公共交通システムの確立を目指します。 また、たこフェリー休止に伴う岩屋・明石間航路の海上交通を確保す るとともに、早朝便確保に必要な支援策を継続するほか、明石海峡大橋 を通行できない自転車や125CC以下のバイクの交通手段を確保す るために最善を尽くします。 (明石海峡大橋無料化の推進) 次に、「明石海峡大橋無料化の推進」です。機会あるごとに「神戸淡 3/5/2012 - 17 - 路鳴門自動車道の海上部分の明石海峡大橋は、県内移動に高額な料金の 負担を強いる矛盾・不合理があり、代替ルートのない一般国道として無 料でなければならない。」ということを強く訴え続けてきました。これ を論拠に淡路島の活性化のため、「淡路島民会議」との連携の下、粘り 強く無料化を求めます。 (集中豪雨などの災害への備え) 次に、「集中豪雨などの災害への備え」です。昨年の集中豪雨等によ る災害を教訓に、初動体制をはじめとした危機管理体制の再構築を図る とともに、ため池管理を徹底します。新年度は、「県緊急ため池整備事 業」により、老朽ため池の改修を進め、あわせて、約30か所の危険た め池を対象に決壊予測雨量の算出、被害想定区域の把握などを行います。 また、集中豪雨災害に備え、志筑川水系を中心に河川監視カメラを増設 します。 (東日本大震災を教訓にした大津波対策) 次に、「東日本大震災を教訓にした大津波対策」です。近い将来に発 生が予想される「東海・東南海・南海地震」への備えが急務です。国の 中央防災会議が示す津波高の想定を待つまでもなく、市民の生命と財産 を守るため、県の津波対策などを斟酌し、避難所・避難経路の見直しな ど早急に必要な津波対策を講じます。何より、津波襲来時は高台への避 難が得策といえます。災害時要支援者への対策に留意しながら、市民一 3/5/2012 - 18 - 人ひとりへの防災意識の啓発に取り組みます。 (防災、減災などの対策) 次に、「防災、減災などの対策」です。防災あんしんセンターを防災 拠点にして、実践的な防災訓練をはじめ、広報誌等による防災意識の高 揚と地域住民と消防団との連携を図るほか、自主防災組織の充実に努め ます。新年度は、生穂小学校の耐震化工事を行い、今後、計画的に学校 施設の耐震化を進めます。そのほか、計画的な災害備蓄品等の調達と消 防自動車などの整備を進め、平時から災害に備えます。 (犯罪防止対策、消費者保護の充実) 次に、「犯罪防止対策」です。市民が犯罪から自らの身を守るための 犯罪意識を高める啓発を推進するとともに、防犯灯などの整備のほか防 犯協会など関係機関との連携を強化し、市民一体となった防犯活動を展 開します。 また、志筑新島の大規模店舗内に設置した「消費者相談センター」を 拠点に、消費者団体など関係機関との連携を強化し、消費者保護の充実 を図ります。 (情報通信基盤の整備) 次に、「情報通信基盤の整備」です。難視聴対策として光ファイバー ケーブルテレビ加入者への初期費用助成と、経済的要支援者に対する同 ケーブルテレビの再送信サービス視聴料の助成を継続します。新年度は、 3/5/2012 - 19 - リニューアルしたホームページに読上機能を導入し、視覚障がい者など の利用者の利便性を高めます。 【豊かな自然・文化を活かす魅力満載のまちづくり】 (環境基本条例の策定に向けて) 次に、「環境基本条例の策定」に向けた取り組みです。この条例は、 環境保全に関する基本理念の下に、市、事業者及び市民の役割や環境保 全施策の基本となる事項などを定め、その施策を総合的かつ計画的に推 進することを目的とします。新年度は、条例の素案づくりに着手します。 (あわじ環境未来島特区の推進) 次に、再生可能エネルギーの自給率向上などを掲げ、昨年12月に内 閣総理大臣から指定された県と島内3市の共同事業「あわじ環境未来島 特区」の推進です。 エネルギー、農と食、暮らしの三つの持続で、生命つながる「持続す る環境の島」の構築を目指します。新年度の新規事業として、竹を有効 活用した「竹資源利用促進モデル事業」や、県・3市協調の市民出資に よる「大規模太陽光発電事業」など先導的な取り組みを進めます。その ワン ほか、メガワット級ソーラー施設「あわじメガワットソーラー1」によ る“環境立島あわじ”の取り組みを全国に発信し続けるとともに、住宅 用太陽光発電システム普及促進に資する助成制度を拡充し継続します。 また、地球温暖化防止と循環型社会の構築を目指し、引き続き、廃食 3/5/2012 - 20 - 用油による代替燃料の生産と利用拡大のほか、地球温暖化対策実行計画 に基づくCO2削減の取り組みを強化します。新年度は、「バイオマス 活用推進基本計画」の策定を行います。 (火葬場、ごみ処理対策) 次に、「火葬場の整備」です。市内にある4施設の老朽化は著しく、 早期に新火葬場を建設する必要があります。建設費の財源に合併特例債 を活用するため、発行可能期限である平成27年度までの完成を目指し ます。 また、一般廃棄物焼却処理施設の「夕陽が丘クリーンセンター」は、 平成26年4月をもって、地元関係者と施設稼働に合意した15年間の 期間が満了となります。施設稼働期間の延長に向け、地元関係者との協 議を進めます。 (農業の担い手育成と生産力の向上) 次に、 「農業の担い手育成と生産力の向上」です。農業活性化のため、 「農業者戸別所得補償制度」の充実を図るとともに、「中山間地域等直 接支払事業」など集落営農化の支援を行い、更なる農業経営の安定化と 集落環境の保全などを図ります。新年度は、今後の地域農業の在り方な どの方向性を打ち出すため、 「地域農業マスタープラン」を作成します。 また、次世代の農業の担い手と集落営農組織の育成強化を図るため、 「水田農業推進協議会」と「地域担い手育成総合支援協議会」を統合し、 3/5/2012 - 21 - 新たに「淡路市農業再生協議会」を組織します。若者の就農希望者を掘 り起こし定着化を図るため、 「新規就農総合支援事業補助金」を新設し、 就農前後の不安定な経済負担を軽減します。 引き続き、農地の集積化を促進し、担い手対策を明確化した、ほ場整 備を進め、農業経営の規模拡大や効率化を図ります。 なお、新年度は、昨年の集中豪雨等による農地・農業用施設災害の一 日も早い復旧に取り組みます。 (農業のブランド化の推進) 次に、「農業のブランド化の推進」です。花き、和牛を中心とする集 約型農業の更なる普及と、たまねぎ、いちじく、カーネーションなどの 産地競争力の強化を図ります。農産物ブランド化戦略を積極的に推進し、 市場との連携による産地直売、販路拡大などの充実を図ります。 (有害鳥獣被害対策の推進) 次に、「有害鳥獣被害対策の推進」です。イノシシによる農作物への 被害が拡大・深刻化しています。集中的に捕獲を進めるため、本年度か ら3年間を強化年間と位置付け、新年度は、1,500頭の捕獲頭数を 目標に掲げ、個体数の減少に取り組みます。 被害農家対策は、県、市、農家が負担した共済基金を用い、鳥獣被害 を受けた農家に再生産のための支援金を交付します。農家の皆様の営農 意欲の継続や耕作放棄地の発生防止等に努めます。 3/5/2012 - 22 - (漁業の活性化) 次に、「漁業の活性化」です。水産物の安定的な供給と漁家経営の安 定化を図るため、引き続き、種苗の調査・研究、マダイなどの中間育成・ 放流を行うとともに、ノリなどの海面養殖業の支援策を講じ、資源管理 型漁業の推進と定着化を図ります。本市の重要な基幹産業である漁業の 経営安定化に向けた施策に取り組み、災害に強い漁港づくりを推進しま す。新年度の新規事業として、生穂漁港荷捌き施設整備、仮屋漁協製氷 冷蔵施設整備などの事業を支援します。 (商工業の活性化) 次に、「商工業の活性化」です。地域内循環型経済システムの構築に よる活性化を目指し、「淡路島ええもんうまいもんフェア」を開催する など、商工会などと連携した取り組みを充実させ、疲弊する地域活力の 再生に努めます。引き続き、市内商工業者の皆様の新たな事業展開や工 場等の拡張への支援を行います。 商工業の活性化を図るためには、もとより、商品の魅力を高め、地域 ブランド化を図ることが肝要です。日本一の生産量を誇る地場産業の線 こうし 香は、海外での現地展示会などに積極的に出展し、「あわじ島の香司」 こう ブランドの線香が「お香」として高い評価を得ています。国内外を問わ ず更なる販路拡大の推進に必要な支援策を講じます。 また、新築住宅への地場産業である淡路瓦の利用促進を図るため、引 3/5/2012 - 23 - き続き、奨励金を交付します。新年度は、屋根の葺き替えも制度対象と し、更なる受注拡大による活性化と美しい街並み景観形成を促進します。 そのほか、新年度は、昨年の集中豪雨等による被災事業者に対し、復 旧に必要な融資に係る利子補給を行い、一日も早い事業再建に向け、支 援します。 【参画と協働に基づいた市民交流のまちづくり】 (市民と行政の協働のまちづくり) 次に、「市民と行政の協働のまちづくり」です。国際化をはじめ複雑 多様化する行政ニーズに的確に対応するため、市民・事業者らと一体と なった協働のまちづくりの構築を目指します。更なる情報共有を進め、 広報機能の充実を図りながら、市民の市政参画を高め、ボランティア団 体、NPОなどと協働し、目標実現に向けた取り組みを進めます。 (行財政改革の推進) 次に、「行財政改革の推進」です。これまで人件費削減をはじめとし た取り組みにより、財政運営に道筋が立ちましたが、依然、厳しい財政 状況に変わりはありません。景気低迷による雇用情勢の悪化の影響を受 け、滞納債権が増加傾向にあり、公平負担の観点から毅然とした態度で 対応し自主財源を確保します。新年度は、本年度の地方交付税一本算定 による影響を踏まえ、持続ある身の丈に合った市政運営に向け、市議会、 市民の御意見等を拝聴しながら、「新行財政改革推進方策」の見直しを 3/5/2012 - 24 - 検討します。改めて、「市の組織及び運営の合理化に努めるとともに、 最小の経費で最大の効果を挙げる。」という法の要請を再認識し、着実 な行財政改革を実行します。 (むすび) 私たち故郷の大先輩が淡路島を考察した「津名学」という名著の中に、 淡路市の地域運営の展望に関する記述があります。「津名郡地域は、地 形と地勢、それに由来する風土により独自性が強い。新市として求心力 をいかに高めるかがポイントで、多極分散型の地域づくりの舵取りは難 しい。 」といった趣旨の論評があります。 新市発足以来、克服困難と指摘された地形等がもたらす地域の諸課題 に正面から向き合い、新市の一体感醸成に留意した地域運営に臨んでき ました。施策を実行するには、理念に基づき、ぶれることなく、時には 柔軟な姿勢を取り、集約と散開を繰り返し、熟思しながら「世界的観光 立島・美しい淡路市づくり」を進めてきました。 新年度の予算編成に当たっては、これまでの取り組みの集大成を図り つつ、次への礎とすべきことに意を用い、議員各位からいただいた貴重 な御意見、御提案には、現下の厳しい財政状況を考慮しながら、実施で きるもの、検討を要するもの、それぞれ丁寧に精査を加え、予算に反映 させていただきました。 ともあれ、厳しい社会経済情勢ではありますが、ポジティブな基本姿 3/5/2012 - 25 - 勢の下、更なる施策の重点化と財源の重点配分を図り、市民の皆様の安 心・安全を最優先にした地域づくりを推進するため、身を粉にして、地 域運営に一意専心してまいります。 終わりに当たり、皆様の格別の御理解と御協力を、心からお願いを申 し上げ、平成24年度の施政方針とさせていただきます。 3/5/2012 - 26 -
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