新潟大学 人文学部 情報メディア論履修コース 2010 年度卒業論文概要

2010年度卒業論文概要
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
新潟大学 人文学部 情報メディア論履修コース
2010 年度卒業論文概要
青山
紗綾子
ブランドの価値構造…………………………………………………………2
阿部
幸奈
タバコと健康問題にみる公共空間論造……………………………………3
遠藤
美穂
デジタルサイネージと都市空間造…………………………………………4
奥山
満郎
子どもの「ケータイトラブル」について
―学校の役割とその取組に対する分析―………………………………5
加藤
亜希
シャンプーの広告におけるジェンダー論的分析…………………………6
加藤
千鶴
RPG作品に見るヒロインの偶像性………………………………………7
加藤
麻奈美
電子書籍を巡る論争とその背景に関する考察……………………………8
佐藤
将太
絵葉書の蓄積が描く地域社会
玉川
史記
後期資本主義における音楽環境
―明治の豪農・伊藤家を例に―………9
―アニメソングにみる音楽市場の変化―……………………………..10
田村
直美
古町に見る地域ブランドの現状と課題…………………………………..11
豊田
友香理
平成仮面ライダー作品にみられる「正義」と「悪」…………………..12
長谷川
円香
ゲーム攻略本というメディア……………………………………………..13
長谷川
優衣
地域振興の場としての道の駅の活用に向けて…………………………..14
原子
健一
物質的基盤からみる今日のポピュラー音楽
―『一億年レコード』についての考察―……………………………..15
坂内
里美
今日のメディア環境におけるライブパフォーマンス…………………..16
古川
陽之
現代の聖地巡礼による地域活性化………………………………………..17
本間
広輝
ケータイカメラを通じたコミュニケーションの広がり………………..18
前田
享子
マクドナルド広告論………………………………………………………..19
寛
ラジオの中のアニメーション……………………………………………..20
山田
雄亮
フリービジネスモデルについての分析…………………………………..21
渡辺
愛実
SNSによる対人関係への影響…………………………………………..22
三ツ橋
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2010年度卒業論文概要
青山
紗綾子
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
ブランドの価値構造
本稿では、海外の高級ブランドに注目し、消費者の中でどのようにブランドの価値が構
築されているのか分析していく。
ブランドは他の商品やサービスとの差異化をはかり、個人の頭の中にかえのきかない、
唯一のものとし、企業の貴重な財産として重要視されている。そして、ここ日本では世界
で類を見ないほど海外の高級ブランドが繁盛している。不景気にも関わらずブランドブー
ムは続き、海外の有名ブランドの店が都市や地方に次々とオープンしている。街を歩いて
いてもブランドを見ない日はないほどで、旅先でもその人気は変わらず、ブランドの盛況
はメディアでとりあげられるほどである。ブランド事業は年々幅を広げ、どれもブランド
という資本を、最大限に活用している。
商品からブランドの時代へ変化していったのはいつ頃からなのか。歴史的な背景も視野に
入れ、現在のブランドの価値構造を分析し、現在の私たちの購買意欲を掻き立てる仕組み
を解明していく。特に今回は、大学生におけるブランドについて注目した。
第1章では、ブランドの語源や定義を説明し、その起源と発展を歴史的にさかのぼってみ
た。ブランドの誕生とその後の発展には、皇室の存在が大きく影響していることを明らか
にした。
第2章では、ブランドの歴史に欠かせない貴族文化について述べている。当時の時代背景
や貴族の生活、職人との関係性やブランド誕生の瞬間について言及している。
第3章では、日本のブランド市場に注目し、海外ブランドが日本に進出してから現在に至
るまでの変化や、日本人とブランド品の関係性について述べている。
第4章では、ブランドのイメージに大きく影響を与えているメディアとブランドの関係性
を論じた。ファッション雑誌をとりあげ、雑誌が消費者にどのような影響を与えているの
かを言及している。
第5章では、大学生20人にブランドについてのインタビューをおこない、学生とブランド
の実態の検証をおこなった。ブランドの情報を得るツールである雑誌において、広告は意
識的に見られておらず、モデルや商品が掲載されているページのほうを見ている。また学
生の中で、ブランドとは高級で近寄りがたいというものと、身近であるという2種類のイメ
ージが存在することなどの実態が明らかになり、次の章のまとめにつなげている。
第6章では、大学生を今後ブランドの購買層となる重要な消費者層としてとらえ、大学生に
おけるブランドの価値観の重要性を述べている。そして、第5章のインタビュー結果から、
大学生において、刷り込み式で定着した高級感あふれるイメージと、ブランド品をもつ人
の身近なイメージの2種類の異なるイメージから、ブランド品の持ち方の変化にあらわれ、
ブランド品が持つ人をあらわす一つの要素としての意味を含んでいると示し、本論文を締
めた。
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2010年度卒業論文概要
阿部
幸奈
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
タバコと健康問題にみる公共空間論
この論文では日本におけるタバコの規制の動きを例に、公共空間がどのように捉えられ
ているかを明らかにした。
近年ではタバコについて、受動喫煙問題、喫煙者自身の健康問題などの観点から喫煙規
制の動きが活発化してきている。日本においては、たばこ行動計画、健康日本21、健康増
進法、そして地方自治体での条例など、様々な法令や行動計画が出されており、喫煙規制
という傾向は揺るぎないものとなっている。しかし、空間それぞれの特徴、そしてその変
化について語られることは少なかった。公共空間は曖昧なものであるにも関わらず、喫煙
規制の議論では公共空間が「人と人とが存在する」という空間論としてのみ捉えられてい
る。
また、喫煙者自身の健康を憂慮されることで、喫煙者は喫煙するという自由を奪われて
いる。それは喫煙問題に限らず、公共空間という議論のもとで同じように私達の権利も突
如奪われる可能性があることを本論文では示している。これらタバコと健康問題について
規制の根拠や背景を考察することで、公共空間をどのように考えることができるかを論究
した。
第1章では本論文の問題の所在を明らかにしている。公共空間については哲学的、建築学
的に多く研究されてきた。しかし、公共空間が現在の日本においてどのような機能を果た
しているかということについて多く論じてこられなかった。本論文でタバコの規制につい
て、規制の根拠や背景を考察することで、現在の公共空間の特徴と、人と人とが共存する
ことについて言及できるということを指摘している。
第2章では世界、日本、地方公共団体でのタバコの受動喫煙問題対策について論じた。そ
れぞれの規制の根拠から、公共空間が非常に曖昧なものであること、変容してきたもので
あることを指摘し、公共空間とはどういうものか論じている。公共空間として言われてい
る例を具体的にあげ、それらを現代ではどのように考えることができるか考察した。
第3章では喫煙者自身の健康を配慮した規制について考察しており、自殺対策などとの比
較をすることで、健康と公共性について論じている。その中で、喫煙者が無条件で権利を
奪われているということを指摘している。
第4章は結論として、公共空間というものがその社会の変化と密接に関係しているもので
あり、変容し得るものでると言及した。それは空間、利用アイテム、価値観の変化などが
影響していると考えた。そして私たちが他者と生きていくためには、公共空間や健康とい
う名の下に多数の意見が強力な力になる恐れもあることに注意し、またそれが本当に公共
空間での問題なのかどうかを見極めていく必要があるということを述べている。
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2010年度卒業論文概要
遠藤
美穂
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
デジタルサイネージと都市空間
本稿では「デジタルサイネージ」を取り上げる。人件費が抑えられ、紙の広告に比べゴ
ミも出ないデジタルサイネージは、ここ数年で急速に存在感を増し、電機から通信、流通
や広告といった様々な業種から参入が相次いでいる。このようなデジタルサイネージの広
がりを受けてデジタルサイネージを置く場所にも注目が集まり、街全体に配置することで
一つの「メディアの街」を形成するところもある。街を情報空間に変えるデジタルサイネ
ージは人の行動様式やライフスタイルにも影響を与える。デジタルサイネージは、時間と
空間を特定できるという大きな特徴があり明確な目的と効果を伴って情報を送り届ける手
段だからだ。発展中であるデジタルサイネージと私たちが生活する街の関係や導入の意義、
課題を考えることでこれからのメディアと私たち生活者の新しい関係性が見出せると考え
研究を行った。
まず、第1章では本稿の目的や意義、デジタルサイネージの背景について説明した。近年
注目を集めるデジタルサイネージの様子を説明し、読者に問題意識を促した。
第2章では、本論に進む前の準備としてデジタルサイネージとは何かやデジタルサイネー
ジについての先行研究を考えた。実例を紹介し、デジタルサイネージを知らない読者に知
識を提供するとともに短い期間ではあるがデジタルサイネージについて今まで研究されて
きたことをまとめた。特に、デジタルサイネージの強みとしては、動画配信や、時間・空
間でわけた情報発信、更新の素早さ、コスト削減などが、報告されている。一方で、コン
テンツの創造性の低さが今後の課題としてよくあがる。また、韓国の例を紹介し、外国の
デジタルサイネージ事情にも触れた。
第3章では、福岡市が、COMEL(コメル)社によって市内に500台設置されたデジタル
サイネージとバスに搭載したバスサイネージを使い、市の情報発信を行った福岡街メディ
ア、東京メトロポリタンテレビジョンの番組を配信し、携帯でディスプレイをタッチする
とクーポンが取得できるといった取り組みが行われた神田商店街、JR 東日本が山手線、中
央線、京浜東北線の社内にデジタルサイネージを設置し、企業 CM、天気予報、ニュースな
どを配信しているトレインチャンネル、JR や地下鉄から店内への地下動線に59台のデジタ
ルサイネージを導入し、イメージの創出やインパクトのある広報に取り組んでいる伊勢丹
新宿店などの実例を検証し、デジタルサイネージと街の関わりについて考えた。ここで挙
げた例は、規模の違いはあれどある一定の空間にデジタルサイネージを導入することで街
全体の結びつきを強め、イメージの創造を行っているものである。
第4章では、デジタルサイネージの課題や今後の発展可能性を探るとともに、デジタルサ
イネージを街に導入することについて第3章で挙げた実例などから導き出した考えを述べ、
結びとした。具体的には、デジタルサイネージに対する、広告業界者と一般での認知度に
格差があること、デジタルサイネージのルール作りが進んでいることの一部への危機感、
街とデジタルサイネージの関係を考えた時、目的をしっかりと考える必要があることなど
である。
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2010年度卒業論文概要
奥山
満郎
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
子どもの「ケータイトラブル」について
―学校の役割とその取組に対する分析―
近年におけるケータイの社会への普及は、私たちに多くの利便性と、文化、生活スタイ
ルの形成を齎した。ケータイを通じ私たちは、いつでもどこでも他者と繋がることのでき
る可能性を手にし、楽しさを齎す多くのコンテンツを得ることができた。その反面、社会
への普及が急速に進んだことで、様々な弊害が生じてきていることもまた事実である。
ケータイの利便性に目を向けられ、その普及が低年齢層にまで進んだ一方、時には彼ら
の能力に不釣り合いなまでの選択が求められることで生じる、あるいは大人世代の認識を
超えて生じる、ケータイを介した他者とのトラブル(本論文における「ケータイトラブル」)
は、正にその弊害を象徴した事例である。
このような現状がある中で、子どもたちの生活と切り離すことのできない「学校」とい
う環境は、子どもの「ケータイトラブル」に、如何なる形で関わりを持つことができるの
か。本論文では、「ケータイトラブル」の発生過程を分析することで、学校が子どもの「ケ
ータイトラブル」に対し、どのような役割を担うことができるのかについて考察を行った。
その上で、各種調査結果を参考とし、現在の学校の対応における現状や課題、望まれる対
応の在り方について分析を行った。そして最終的な結論として、教員間の連携を設けた体
系的な情報モラル教育を構築していくことの重要性を主張した。
第1章では、現在の子どもたちの間でのケータイ普及の状況と利用スタイルを、各種統計
調査の結果を用いて整理分析した。また、子どもの「ケータイトラブル」への対応策とし
て、現在強い期待が寄せられている、フィルタリング機能の現状についても触れた。
第2章では、本論文で想定する「ケータイトラブル」を定義した。その上で「チェーンメ
ール」や、「プロフ」に代表される情報の送受信の場での利用スタイルへの考察から、対
策を講じるべき点を明らかにし、求められる対応策の形について分析を行った。
第3章では、前章での分析結果を踏まえた上で、子どもの「ケータイトラブル」に対する
学校の役割と可能性について述べた。また、『子どもの携帯電話等の利用に関する調査 本
体』(文部科学省,2009:215-246)と現教員へのインタビューを参考とし、中学校に焦点を当
て、現在の学校における「ケータイトラブル」に対する取組について分析を行った。
第4章では、現在の中学校内での、子どもの「ケータイトラブル」への対応の課題と、課
題の克服に向け分析を行い、本論文を締めた。
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2010年度卒業論文概要
加藤
亜希
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
シャンプーの広告におけるジェンダー論的分析
本稿では、ジェンダーの視点からシャンプーのテレビ CM について分析を行い、CM に
登場する人物や商品の表象を明らかにした。広告表現は、私たちの中の「こうありたい自
分」「理想の自分」への欲望を喚起させる。そして、そのような広告はさまざまなメディ
アを通じ、私たちの生活のいたるところに溢れかえっている。諸橋泰樹(2002)は、メデ
ィアは現実よりもリアルな女性像・男性像を提示し、性別社会化するのに大きな力を持っ
ていると述べた。数ある広告の中でも、テレビCMは、15秒、30秒、60秒などの短い時間
に情報が凝縮され、私たちの視覚・聴覚に一斉に働きかけるなどの特徴を持っている。そ
のようなテレビ CM の中で近年、多くの女性芸能人を起用したことで話題になった、資生
堂シャンプー「ツバキ」がある。しかし、「ツバキ」に限ったことではなく、シャンプー
のテレビ CM の多くは女性を起用している。それらは私たちに、どのような「美しい女性
像」を提示しているのだろうか。また、シャンプーのテレビCMに関連して、有馬明恵(2004)
は、日本人本来の髪の特徴(黒髪・直毛)を提示することが守られ、西洋人的特徴が排除
されている商品領域が「シャンプー・リンス」と「ヘアトニック・育毛剤」であると述べ
た。しかし、有馬(2004)はそれらの CM をジェンダーの視点から述べることはあまりな
かった。そのため、本稿では、有馬(2004)がほとんど触れることのなかったジェンダー
の視点からシャンプーのテレビ CM について分析し、CM に登場する男女像や商品の表象
を明らかにした。本稿の構成は、以下のようになっている。
序章では、本稿の目的と、各章でどのようなことを論じていくのかを述べた。
1章では、広告表現が人々にどのような影響を与え、広告表現がジェンダーの視点にお
いてどのような問題を持っているのかを述べた。また、広告の中でもテレビCMを取り上
げ、その特徴を述べた。さらに、他の研究者がシャンプーをどのように捉えているかを踏
まえ、本稿の位置づけを明らかにした。
2章では、テレビCMを分析する前段階として、シャンプーとはどのような商品として
の歴史があるのか、また、現在人々のシャンプーの利用実態や、髪に関する意識を明らか
にした。現代の女性にとって髪は自身の美しさの象徴であり、男性の場合は身だしなみと
して髪の清潔さを重視していることがわかった。この点は、男性はシャンプーに、「髪や
頭皮を清潔で健康に保つ効果」を期待しているのに対し、女性は「髪を美しくするための
効果」を期待しているという、男女のシャンプーに期待する効果の差となって現れていた。
3章では、シャンプーのテレビ CM を分析し、ジェンダーの視点から人物や商品の表象
を明らかにした。男女とも、性別や年齢・髪の特徴における一定の関係性が見られた。ま
た、女性がメインキャストとして登場するCMでは、主に3つにジェンダーの視点からみた
特徴に分けることができた。また、男性がメインキャストとして登場するCMにおいても、
男性の性別役割が顕著に表われる結果となった。
終章では、前章までの内容から明らかとなったことと、広告表現におけるジェンダー問
題の特徴を振り返りつつ、自分なりの意見とメディアとの関わり方を述べて結論とした。
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2010年度卒業論文概要
加藤
千鶴
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
RPG作品に見るヒロインの偶像性
サブカルチャーと呼ばれる分野は現在発展途上にある。そして、サブカルチャーをとりま
く環境、それを見る我々の視線も変わりつつある。データベース消費と言われる現在のサブ
カルチャー作品、及びその消費から何が見えるのか。オタクと呼ばれる者たちの消費はどの
ようなものなのか。それらの問いについて一つの考察を成すのが本稿の目的である。
本稿の構成は以下のようになっている。
第1章では、アイドルという存在を通して、サブカルチャー全般で女性キャラクターがど
のように描かれているのかを大まかに捉え、オタク的な消費というものについて考察した。
第2章では、サブカルチャーにおける一つの現象としての二次創作、パロディの一例とし
て東方 Project を取り上げた。
第3章では、「テイルズ オブ」シリーズを取り上げ、ロールプレイングゲームと呼ばれ
るジャンルでの女性キャラクターの描かれ方について分析をした。
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2010年度卒業論文概要
加藤
麻奈美
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
電子書籍を巡る論争とその背景に関する考察
本論文では、電子書籍の登場により急速に動き始めた教育のデジタル化における課題に
ついて論じていく。
2010年、前年から販売しているアマゾンの Kindle に続き、アップル社の iPad、シャ
ープの GALAPAGOS、ソニーの Reader と、電子書籍端末が相次いで登場し、電子書籍元
年という言葉が世の中をにぎわせた。そしてこれをきっかけに、電子書籍を巡る論争が今
盛んに行われている。さまざまな論争が世の中を飛び交い、落ち着いたり激しさを増した
りと変化の大きい話題の中で、筆者の注目したものが、デジタル教育である。
日本のデジタル教育は世界の中でも発展途上の中で、開発や改善を繰り返し、少しでも
早くデジタル化を進めていかなければならないのではないだろうか。今の日本の教育を見
直し、今後の教育事情と、デジタル教科書のある将来の日本のあるべき姿を明らかにして
いくこととした。そこで、世界と日本のデジタル教育に対する取り組みの現状を明らかに
していくことで、これからの課題を考察していく。
第1章では、電子書籍の定義、歴史、デジタル教科書の定義について記しながら、教育
現場にデジタル教科書として導入されるまで、どのようにして取り入れられていったのか
という経緯を辿っていった。
第2章では、デジタル教育反対派である、ジャーナリストである田原総一郎の意見をも
とに、デジタル教育の必要性を改めて考え、日本が今後、デジタル教育化に対してどのよ
うな取り組みをしていくのが望ましいのかを考察していった。
第3章では、デジタル教育化に対する世界と日本の取り組みを比較しながら、日本のデ
ジタル教育化における問題点を明らかにしていった。
第4章では、1章から3章をもとに、日本のデジタル教育における課題や問題点を明ら
かにし、どういった対応が求められるかを考察していった。
第5章では、本論文のまとめとして、デジタル教育を推し進めていく上での課題が多く
存在する中で、インフラ整備と普及の課題を解決していくことの重要性について論じ、本
論文を締めた。
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2010年度卒業論文概要
佐藤
将太
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
絵葉書の蓄積が描く地域社会
―明治の豪農・伊藤家を例に―
1840年にイギリスで世界初の郵便制度が誕生して以降、現在に至るまで、パーソナルな
情報の送受信の手段として、郵便は広く多くの人々に使われてきた。携帯電話や電子メー
ルが普及した現代においてもなお、ダイレクトメールや年賀状などの形で、郵便は私たち
の生活に深く浸透している。
郵便制度の拡大の歴史の中で、無視できない要因として挙げられるのが「絵葉書」とい
うメディアである。1900(明治33)年の私製葉書の使用認可以降、日本では数々の絵葉書
が発行され、人々は絵葉書の消費活動と同時に、その蒐集活動に奔走した。
昨年、北方文化博物館(新潟市江南区沢海)において、創設者である伊藤文吉の六代目
にあたる謙次郎(1870-1903)、および謙次郎に近しい家系の人々が収集・保存したとみら
れる絵葉書群が発見された。それらの中には、実際に表書きが書いてあるなどパーソナル
メディアとして使用されたものも多く含まれており、単純にコレクションを目的として蒐
集された他の絵葉書記録とは異なる性質を持つ可能性があった。
本稿では、絵葉書と絵葉書の研究の歴史とに触れながら、伊藤家の絵葉書コレクション
の特色を他の資料との比較などを通じて考察した。その分類・保存の方法などから紡がれ
る伊藤家と地域社会とのコネクションの在り様を見出すとともに、伊藤家コレクションに
内包された整理者の考えを推察し、資料の性質を明らかにすることを目的とした。
第1章では、絵葉書の歴史と性質について記述した。絵葉書の誕生から隆盛、現在に至る
歴史を記載するとともに、絵葉書の先行研究群にふれ、絵葉書というメディアの捉え方や
分析方法をまとめた。
第2章では、論文の中核となる伊藤家コレクションの調査・分析結果を記載した。まず、
比較対象として新潟のふたつの絵葉書コレクション(笹川・小竹)について言及し、それ
らと伊藤家コレクションとの性質の違いについて述べた。そして、第1章の考察を参考にし
ながら、伊藤家コレクションをアルバム冊子ごとに分類し、送信者・受信者・内容などの
分析を行った。詳細な調査の結果は、論文の末尾に付録として記載した。
第3章では、第2章の分析で得られた結果をもとに、伊藤家が絵葉書を用いて行ったコミ
ュニケーションの形態について考察した。同時に、伊藤家コレクションの資料としての性
質に関して、その特徴や利用方法について考え、記述した。
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2010年度卒業論文概要
玉川
史記
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
後期資本主義における音楽環境
―アニメソングにみる音楽市場の変化―
本稿においてアニメソングというテーマを取り上げた理由として、近年のアニメソング
といったものの売れ方、メディアへの露出に興味を持ち、その分析を行うことで現在のよ
うなアニメソングのブームとなっている要因を明らかにしたいと考えたからである。
オタク文化は現在ではただネガティブなものではなく、社会に影響を及ぼす大きな力を
持つようになった。その中でもアニメソングというものは以前では他の一般的な j-pop に比
べてオリコンのチャートに現れることは決して多くはなかった。それが現在ではオリコン
のトップ10にランクインするようにもなり、目にする機会も大幅に増えた。本稿では近年
頻繁に見かけるようになったアニメソングというものが受け入れられるようになったアニ
メソングの変化、アニメソングを受け取る側である消費者の変化、クリエイターといった
ところにまで焦点を当てることで、キャラクター消費、クリエイターによる楽曲の質の向
上、音楽市場(環境)の変化という結論を導き出した。
第一章においては音楽市場の現状をふまえた上でのアニメソングの流行、その音楽ジャ
ンルについての特殊性においての大まかな説明を行った。
第二章においては過去から現在にかけてアニメソングがどのように変化をしてきたのか、
その歴史を分析し、現在のアニメソングがどのようなものとなってきているのか具体的な
例を挙げて説明を行った。
第三章においてはアニメソングを東浩紀の著書を参考とし、キャラクターとキャラの分
離という概念からアニメソングの消費の分析を行った。
第四章においては二章において例として挙げたアニメソングのクリエイターである菅野
よう子、小森茂生を挙げ、現在のクリエイターに焦点をあてることでアニメソング分析を
行った。
第五章においては一章から二章において述べた内容の総括として、聞き手の変化を含め
たアニメソングをとりまく音楽環境の変化についての自説の展開を行った。
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2010年度卒業論文概要
田村
直美
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
古町に見る地域ブランドの現状と課題
本論文では、「地域ブランド」という概念を取り上げる。日本における地域ブランドと
は、野菜、米、肉などの食品や特産品のブランド化が中心となってきた。しかし、これか
ら考えていく地域ブランドとは、地域そのものにブランドという概念を適用して価値を高
めていくことである。特産品や観光地、そこに住む人々、歴史など地域に存在する固有の
資産全てに魅力を感じてもらうことが、地域ブランドの向上に繋がる。
地域ブランドの創造に成功している地域がある一方で、シャッター通り化し、衰退を遂
げていく地域もある。新潟市の古町もその1つである。かつては新潟市の中心繁華街であ
った古町が現在のように衰退していった背景には、地域ブランドを確立してきたかどうか
が大きく関与しているのではないだろうか。古町の抱える現状と課題を地域ブランドとい
う観点から考察することで、地域ブランドがまちづくりにおいて実際にどのような役割を
果たすのか明らかにできるのではと考えた。
第2章では、「地域ブランド」という概念とはいったい何なのかを、プロダクトにおけ
るブランドと関連させながら定義した。
第3章では、古町の地域ブランドの現状として新潟市まちなか再生本部の活動内容、そ
こから生じる課題を指摘した。また、古町地区における地域ブランド確立の成功例として
上古町商店街を紹介した。
第4章では結論として、古町はそもそも地域ブランド確立へ着手したばかりであること
を述べた。地域独自の魅力とは何かを考えて開発を進めなかったことが今日の衰退の大き
な原因である。しかし、その一方で、推進母体という一番の課題を乗り越えることができ
れば、今後の古町の地域ブランド確立への大きな一歩が踏み出せるのではないか、という
希望的観測を述べた。
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2010年度卒業論文概要
豊田
友香理
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
平成仮面ライダー作品にみられる「正義」と「悪」
本稿では、平成仮面ライダーシリーズをとりあげ、その「正義」と「悪」を分析する。
仮面ライダーシリーズは漫画『仮面ライダー』(石ノ森章太郎,1971年〜1972年,週間ぼく
らマガジン/週間マガジン)を基に制作された特撮ヒーロードラマである。第1作目の『仮
面ライダー』が1971年に放送されて以来、日本を代表する特撮ドラマとして高い人気を誇
っている。
放送開始から40年の間に時代は昭和から平成へと移り、仮面ライダーも時代に合わせて
さまざまな変化を遂げてきた。とくに平成の仮面ライダー作品では、登場するライダーの
数が増えたために、それぞれの物語が絡み合い、ときにぶつかり合って展開されるように
なり、ストーリーが複雑化している。本稿では、そんな平成仮面ライダー作品の中から『仮
面ライダークウガ』『仮面ライダー555』『仮面ライダー電王』『仮面ライダーW』の4
作品を対象とし、それぞれの作品で描かれた「正義」と「悪」の条件を明らかにして、そ
の変化の様子を考察した。
また、複雑化したストーリーの中で注目したいのが、仮面ライダーなのに「正義」とは
いいがたい行動を起こす者が登場してきたことである。これについては、個人的な欲望の
ために力を利用した二人のライダー、草加雅人=仮面ライダーカイザと照井竜=仮面ライ
ダーアクセルを例に、彼らは「正義」か「悪」かを明らかにする節を設けている。
第1章では、まず仮面ライダーシリーズの放送沿革を紹介し、そのあと「昭和」と「平成」
の特徴を比較した。また、白倉(2004)が提唱した「悪」の<わたしたち化>という概念につ
いて説明を加えた。
第2章では、前出の4作品に登場する仮面ライダーたちのプロフィールと作品のあらすじ
を示したあと、そこに描かれた「正義」と「悪」の条件を明らかにし、変化を捉えること
を試みた。
第3章では、4作品に登場した怪人の「悪」の行為を集計した結果から、年を追うごとに「悪」
がどう変化したのかを考察した。その結果と第2章の考察で明らかになったことを織り交ぜ
ながら、怪人の倒し方が<破壊>から<浄化>へ変化したことを明らかにした。
第4章では、結論として平成仮面ライダー作品にみられる「正義」と「悪」とは一体どの
ようなもので、どう変化していたのか、カイザとアクセルは「正義」だったのかについて
結論を導く。
昭和シリーズから一貫して「正義と悪は同根」というコンセプトを描き続けていること
から、仮面ライダーも怪人も両義的な存在であることは前提とした上で、それでも戦い続
ける彼らの「正義」と「悪」を導き出し、変化を考察することを本稿の目的とする。
12/22
2010年度卒業論文概要
長谷川
円香
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
ゲーム攻略本というメディア
ゲーム攻略本とは、テレビゲームの攻略法について述べた単行本のことである。1980年
代から2000年代前半までは、ゲーム攻略本の需要が非常に高く、1人が何冊も同じゲームの
攻略本を買うケースも多く、ソフトの本数以上にゲーム攻略本が売れたこともあった。し
かし近年になると、インターネットが普及しゲームの攻略情報がインターネット上で無償
に手に入るようになった影響で、ゲーム攻略本の需要は落ちてきている。
しかしながら一方で、「ファイナルファンタジーⅨ
Online Ultimania」がユーザーか
らの要望により書籍化されるなどの例があるように、ゲーム攻略本に対する需要は完全に
は失われてはいない。本論文では近年インターネットが普及し、ゲーム攻略情報がネット
上で無償で手に入るようになったのにも関わらず、ゲーム攻略本の需要がなくならないの
はなぜなのか、ということについて考察を行った。
本論分の構成は、以下のようになっている。
第1章では、本論文の研究動機について述べている。
第2章では、近年のゲーム市場とゲーム攻略本市場の動向について述べている。
第3章では、近年攻略本が非常によく売れているゲームについての考察をしている。
第4章では、初期のゲーム攻略本、並びに近年のゲーム攻略本の変化についての考察をし
ている。
第5章では、第1章から第4章を踏まえて、ゲーム攻略本の需要がなくならないことに対す
る自分なりの結論をまとめている。
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2010年度卒業論文概要
長谷川
優衣
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
地域振興の場としての道の駅の活用に向けて
本論文では、「道の駅」における地域振興への影響や取り組みについて、アンケートや
インタビューによる現地調査の結果をもとに、現状を分析する。その上で、今後地域振興
の場として道の駅を活用するために必要とされることはなにかについて考えていく。道の
駅は、駐車場やトイレのほか、物産館や郷土資料館、農産物直売所などの施設を併せ持っ
た一般道路における休憩施設である。平成22年8月現在、全国に952箇所設置されており、
休憩機能・情報交流機能・地域連携機能を基本機能としながらも、地域独自の創意工夫に
よって、各地で特色ある道の駅が登場している。「道の駅」はそれぞれの地域に根づいた
施設であることから、「地域振興」は設置目的のひとつとして欠かせない要素だと言える。
近年増加している、観光による交流人口の拡大で振興を目指す地域では、旬な地域の情報
や物産が集まる「道の駅」が、地域観光の拠点として積極的に活動している例もある。ま
た、その土地でしか食べられないご当地グルメを味わえる場として、高速道路の SA などと
ともにマスメディアに取り上げられることも増加している。これまでの研究には、おもに
日本建築学会によって行われてきた道の駅の施設・建築物調査や利用者実態調査によるも
のが多く、地域振興との関わりという観点から論じられているものは未だ少ないと言える。
「道の駅」は、地域振興へ向けてどのような取り組みをおこなっているのだろうか。また、
道の駅が地域振興の場として機能するためには、今後何が必要とされるのだろうか。こう
した疑問を持ったことが、本論文において「道の駅」を取り上げた理由である。
第1章では、道の駅が登場した背景や道の駅を取り巻く現在の状況について記している。
また、本論文で道の駅を取り上げる動機や各章の流れについて述べている。
第2章では、道の駅の設立の経緯、必要とされる3つの機能(休憩・情報交流・地域連携)
や登録の流れ、全国の道の駅の登録数の推移などから、道の駅の概要について述べた。
第3章では、道の駅と地域振興との関わりとして、山形耕一(1995)による道の駅の「地
域振興機能」について概観している。その上で、道の駅における地域振興のために重要だ
と考えられる要素について「地域情報の交流」「地域経済の活性化」「地元地域との連携」
の3つを導いた。また、それぞれの側面から考えられる道の駅の役割として、「まちの顔と
しての役割」「物産施設としての役割」「地域の交流拠点としての役割」の3つを定義し、
これを本論文での分析の基準とすることとした。さらに、それぞれの3つの役割から地域
振興に向けて取り組む道の駅の事例を紹介している。
第4章では、実際に調査をおこなった国道49号線沿いに立地する3駅への調査結果をまと
め、そこから導き出される考察を述べている。
第5章では、前述の3つの役割から道の駅の今後の課題を検討し、結論として、道の駅を
地域振興の場として活用するためには「地域の中で道の駅がどのような存在として機能す
ることが求められているのかを把握することが重要である」と述べている。
14/22
2010年度卒業論文概要
原子
健一
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
物質的基盤からみる今日のポピュラー音楽
―『一億年レコード』についての考察―
『一億年レコード』とは自宅録音家を自称するまつきあゆむが、ほぼ一人で、自宅録音
で制作し発表した音楽作品である。プロモーションだけではなくその流通まで、ダウンロ
ード販売によってレーベルに委託せずに彼自身でおこなった。この作品は、まつき本人に
よるダウンロード販売以外の方法では販売されない。代金は銀行振り込みなどでまつきに
直接支払う。またまつきは Ustream を用いて、全国各地でのフリーライブの配信や音楽の
制作過程を配信するなどの活動を行い、注目を集めた。彼は現代的な技術を効果的に用い
た様々な活動を展開し、音楽業界に影響を与えている。そして変化し続けるポピュラー音
楽の新しい在り方と可能性を提示した。
本稿ではポピュラー音楽と密接に関わってきた物質として、主に複製技術への考察を深
めることでポピュラー音楽の美学に迫っていきたい。そしてその論考を『一億年レコード』
という具体例のなかで機能させる。そして今日的なポピュラー音楽とはどういうものなの
かを考えていく。
第1章では、ポピュラー音楽研究の基礎として音響の複製技術の歴史を追っていく。レコ
ード音楽やレコード聴取の諸要素がどのように発生したか。そして現在当たり前となって
いるそれらの要素の本質を歴史に沿って論じていくことで、「レコード音楽の自律」につ
いて論じる。
第2章ではレコード聴取について論じていく。コンサート以前の聴取スタイルである共同
体的聴取や近代的コンサート聴取と、レコード聴取を比較する。またベンヤミンのアウラ
の概念をレコード聴取に当てはめていく。そういった観点から、レコードが生む同一な音
響を反復して聴取することから生じる差異について論じていく。
第3章では音楽聴取が「経験」として重視されることについて触れる。機会性や操作性、
直接的効果などの観点から、外的要因が音楽と共存することについて論じていく。
第4章では、今日のポピュラー音楽の具体例としてまつきあゆむの『一億年レコード』や
それにまつわる現象を取り上げて論じていく。複製技術に関する論考を中心に、ポピュラ
ー音楽に関する諸言説を参考にしつつ『一億年レコード』の諸要素に対する考察を行う。
一種過激な例として『一億年レコード』を取り上げ論じる実践を「ポピュラー音楽とは何
か」の再考とし、本稿を終える。
15/22
2010年度卒業論文概要
坂内
里美
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
今日のメディア環境におけるライブパフォーマンス
近年、日本のポピュラー音楽界において、CD 市場規模が縮小してきている。その要因
の一つに、メディアの発達、ネットワークの広がり、コンテンツのデジタル化等による、
音楽受容の仕方の多様化が挙げられる。一方で、音楽ライブの市場規模は増加傾向にある。
「いくらメディアが普及し、変容しようとも、コンサートやライブは今日までおこなわれ
続けており、状況に応じてその内容や意義が変容している」(永井,2009,p187)のである。
メディアの普及と変容、またその技術が発達してきたことで、ライブの形式もまた多様
化してきている。2次元のキャラクターの3D 映像をスクリーンに投影し、普通の人間と同
じようなライブが行われることもあるのだ。また、ライブを生中継し、それをインターネ
ット上で配信したり、映画館で上映したりするという試みはいまや頻繁に行われている。
それでは、今日のメディア環境の中では、ライブはどういったものとしてとらえられて
いるのだろうか。音楽受容のあり方の変化に伴い、ライブに求められるものも変わってき
ているのだろうか。本稿ではこうした関心のもと、現在ライブがどのような位置づけをさ
れているのかについて、ライブ体験で得られるものなどをあわせながら考察したい。
第1章では、「ライブ」という言葉の意味や、「ライブに行く理由」について一般的によ
く言われることを簡単にまとめた。
第2章では、分析を進めていくにあたって必要な概念についての説明をしている。1節目
ではライブのポジショニングマップを作成し、2節目では「リアル」という言葉の概念につ
いて述べる。
第3章から第6章では、実際にライブに行ったことのある5人にインタビューをおこなった。
その内容をもとに、それぞれがライブに求めるものやライブ体験から得られるものについ
て分析していく。第3章ではロック(主にロキノン系)を好む男性、第4章ではオルタナテ
ィブ・パンクロックを好む男性2人、第5章ではアニメソングを好む男性、第6章ではヴィジ
ュアル系の音楽を好む女性について、それぞれとりあげた。
第7章では、特質性をもつ、ロックフェスティバルと初音ミクのライブをとりあげ、一般
的なライブとの比較をし、その特徴についてまとめた。
第8章ではインタビューから得られた結果のまとめや全体の考察をし、今日のライブがど
のような位置づけをされているのか論じた。生で音を聴きたい、アーティストを見たいと
いうことはインタビューを行った全員に共通していたが、ライブの「場」やアーティスト
に求めるものはジャンルによって異なっていた。また、全員が音楽に関するどんなメディ
アと比べても、ライブを一番高い位置に置いていた。簡単にいつでも音楽を聴ける環境に
ある現代だからこそ、ライブの一回性が貴重なものになっているとして、本稿を締めた。
16/22
2010年度卒業論文概要
古川
陽之
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
現代の聖地巡礼による地域活性化
「聖地巡礼」とは、アニメやドラマ、映画などの作品に興味を抱いたファンが、その舞
台を巡るというものである。作品の舞台を巡る、ロケ地を訪ねるという行動は昔からあっ
たが、ファンがフィクションである作品中の特別な場所を現実世界に見出し、「聖地」と
称し訪問することを「巡礼」と呼ぶ現代の聖地巡礼は新しい観光動態として注目を集めて
いる。このような観光は、地域活性化の大きな担い手になっているようだ。
2007年放送のアニメ『らき☆すた』において、舞台のひとつとして登場した鷲宮神社は、
アニメ放送後から参拝客数が増え、2008年の正月三が日において、前年13万人だった初詣
参拝客が30万人に増加したことで多くの注目を集めた。この後も、参拝客数は増え続けて
おり、2011年三が日の初詣参拝客数が過去最高の47万人だったことが明らかになった。こ
のような現代の聖地巡礼が地域活性化にどのように結びつくのだろうか。作品の舞台を訪
れる現代の聖地巡礼を地域活性化につなげるためにはどのようなことが必要なのだろうか。
以上のことを本論文で考察する。
第1章では、聖地巡礼とは何か、定義と歴史を概観し、地域を活性化するために行ってい
る各地の取り組みを取り上げる。
第2章では、アニメ・大河ドラマ・テレビドラマそれぞれの聖地巡礼に触れ、作品によっ
て異なってくる旅行動態や聖地になりやすい場所を考察する。また、アニメ作品の聖地と
して取り上げられている場所に神社仏閣が多い理由を考える。
第3章では、現代の聖地巡礼による地域活性化に関する事例から地域との関わりを考察す
る。アニメ『らき☆すた』の人気で参拝客が増加した埼玉県久喜市の鷲宮神社・観光への
影響が大きい大河ドラマである『天地人』・映画『サマーウォーズ』の聖地巡礼を意識し
て観光客誘致をしている「サマーウォーズの里・信州上田」の三つの事例に注目し、これ
らについて述べる。
第4章では、結論として、現代の聖地巡礼による地域活性化には、以下の4点が必要だと
論じる。①ファンを飽きさせないために必要なメディアとの共存②地域を宣伝し、聖地巡
礼の情報を収集するためのインターネットの活用③即時性があり、マスメディアにも影響
を与える個人の情報発信④ブームを一過性のものにさせない地域の取り組みである。
現代の聖地巡礼と地域活性化を結ぶのは情報であり、情報は情報を生み、地域活性化を
刺激していくと述べた。
17/22
2010年度卒業論文概要
本間
広輝
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
ケータイカメラを通じたコミュニケーションの広がり
本稿ではケータイカメラで撮影された写真「ケータイ写真」の個別分析を通じて、ケー
タイ写真に見られる特徴的な機能や傾向、そして写真を通じたコミュニケーションの実践
を明らかにしていく。また同時に誰もがケータイカメラを持っている社会における撮影行
為の変化、撮影「する側」と「される側」の変化を個別のケータイ写真や事件から考察す
る。
現代、コミュニケーションの形が増え続けているが、携帯電話、特にそれに付属してい
るカメラの果たす役割はとても大きいと考える。とりわけ顔の見えないコミュニケーショ
ンにおいて現実生活を踏まえたコミュニケーションを行うためには、自分の体験、感情、
意識などの共有がなければなしえないだろう。それを果たすためにケータイカメラ、及び
写真は現実を非現実に持ち込み、リンクし、伝える重要な役割を果たしていると考えられ
る。またケータイ写真を撮る行為、撮影行為は撮影「する側」と「される側」(または撮
影を「見る側」)の間で従来ではあまり見られなかった現象や問題を生み出した。実際、
従来のカメラによる撮影行為以上にその是非が問われる場面も格段に増えたように感じる。
このようなケータイカメラを用いた撮影行為の実態も本稿で考察していく。
第1章ではケータカメラ分析の土台となるカメラの歴史を追っていく。カメラという撮影
媒体がいかにして日常的に普及していったのか。さらに突き詰めていけば、撮影行為自体
がいかにして日常的な行為として受け入れられていったのかをその背景とともに紹介して
いく。
第2章では大学生を中心としたフィールドワークを通じて個別の写真の検証を行う。ここ
ではケータイ写真を「コミュニケーション媒体」と「記録媒体」に大別し、そこからケー
タイ写真に見られる特徴的な機能やケータイ写真の利用実態を考察していく。
第3章では具体的な出来事や写真を通じて、ケータイカメラを用いた撮影段階での変化や
諸問題を考察していく。その急速な普及によって今や誰もがケータイを持っているとまで
いえる現状は、いつでもカメラを向けられる可能性があることを示している。こうした社
会に埋め込まれたデバイスとしてのケータイカメラが生じさせた変化を考察していく。
おわりにでは、本論文のまとめとして、これまで論じてきたケータイカメラを用いた撮
影行為、そしてその利用実態を振り返り、我々が社会に埋め込まれたケータイカメラとど
のように付き合っていくのかを再考し、本稿を締めた。
18/22
2010年度卒業論文概要
前田
享子
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
マクドナルド広告論
本論文では、マクドナルド広告のうち、どのような広告に効果があるのか追求した。
企業のマーケティングにおいて、広告は欠かすことのできない非常に重要な分野である。
インターネットが登場する以前は、マス広告(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の力が絶大
であった。しかし、インターネットの普及とともに、消費者は情報をいつでもどこでも入
手できるようになり、消費者と広告の関係に変化が生じることとなった。消費者は広告に
よって情報を受動的に得るだけでなく、自ら情報を検索して得ることが可能となったので
ある。
そのため、消費者を惹き付けるための広告マーケティングはより複雑で難しいものとな
った。溢れんばかりの情報の中、消費者の目に留まる広告、消費者が選択する広告を作成
する必要がある。そんな中、どういった広告が消費者を惹き付けるのか、本論文では、 幅
広い年齢層・所得層から支持があって利用しやすい店舗であり、広告宣伝にも力を入れて
いるマクドナルド”の広告をもとに、可能な限りで追求した。なお、広告の中でも、最も身
近であるテレビ CM を取り上げている。
第1章では、広告の現状と、本論文を書くにあたっての意義と目標を明確にした。
第2章では、歴史、基本政策、成功秘話等をもとに、マクドナルドとはどのような企業な
のか、基本知識を集約した。
第3章では、これまでのマクドナルドの広告を、広告の歴史、マクドナルドの歴史を交え
て分析・考察した。マクドナルドの成功を広告が支えてきたこと、ブランドイメージの形
成を広告が担ってきたことを指摘している。
第4章では、アンケートをもとに、どのようなマクドナルドの広告が消費者の購買意欲を
高めるのか分析、考察した。アンケートは、新潟大学の学生50名を対象に、実際に CM の
映像を見てから回答してもらった。マクドナルドで限定商品を広告する場合、消費者を惹
きつけるために必要とされる条件は、「印象に残る」「商品のイメージが浮かびやすい」
「CM の内容と商品が合っている」の3つであることを見出した。なお、このアンケートに
基づく結果は、認知度が高く、大学生も利用しやすいマクドナルドを対象に、期間限定商
品を広告する場合に限って言えることである。
第5章では、広告がマクドナルドのブランドイメージを形成することでマクドナルドの成
功を支えてきたこと、またマクドナルドで広告する場合にはわかりやすくイメージしやす
いものが好ましい、と第1章から第4章までをまとめ、今後も広告研究が進んでいくことを
期待し、論文を締めている。
19/22
2010年度卒業論文概要
三ツ橋
寛
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
ラジオの中のアニメーション
この論文では、アニメと共存するラジオ「アニラジ」について論じている。
現在、ラジオ業界は斜陽と言われているが、そんな中でもアニメブームと共に増加傾向
にあるアニラジは気を吐いていると言えよう。本稿では、アニラジの歴史を振り返ること
によってアニラジが現在のような形になった経緯を明らかにし、作り手側に直接インタビ
ューを行うことによってアニラジが宣伝媒体として用いられ、栄えるようになった理由を
明らかにした。そこから、現在のアニメ産業という点にも注目していき、アニメとラジオ
の親和性について考えていった。
第1章では、業績悪化による FM 放送局の免許返上などを取り上げ、ラジオ業界の厳し
い現状を提示。そんなラジオ業界の中でも息を吐いているアニラジの存在について簡単に
説明し、そこから生まれる疑問を提起していった。
第2章では、現在、アニラジの主流となっている Web ラジオを中心に、ラジオ業界の今
後の可能性について言及。従来のラジオと Web ラジオの違いを明らかにし、Web ラジオを
用いることのメリットを明らかにした。
第3章では、アニラジの歴史を振り返った。アニラジが現在のような形へとなっていく
変遷を示し、それによってアニラジが現在のような形に移行することとなった過程を明ら
かにした。
第4章では、実際に作り手側である宣伝マンに「Web ラジオについての考え」「ラジオ
の魅力」「ファンとの繋がりについて」「なぜアニメの宣伝をラジオで行っていくのか」
という点についてインタビュー調査を行った結果を掲載。それらをまとめていき、現場の
声から Web ラジオの存在意義と、アニメとラジオの関係性について明らかにした。
第5章では、日常系・空気系作品がヒットしている現在のアニメはキャラクター産業で
あると考え、そんな点からアニメとラジオの関係性について考察した。
アニラジとは、アニメをいかにして引き立たせるかを考えながら制作されるアニメの補
助ツールなのである。さらに、アニメだけでなくラジオからも「声」という側面からアプ
ローチをしていくことができるのは、現在のアニメ産業において非常に有効であると考え
られる。そんな、アニメと寄り添った形で制作されるからこそ、アニメとラジオには親和
性が生まれるのであると結論付け、アニラジにはラジオ業界を引っ張っていく可能性があ
ることを示唆して本稿を締めた。
20/22
2010年度卒業論文概要
山田
雄亮
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
フリービジネスモデルについての分析
2010年現在、インターネット上には様々な種類のビジネスが存在する。その中でも「フ
リービジネスモデル」と呼ばれる形式のビジネスモデルが流行している。
フリービジネスモデルとは、フリーという要素を含んだ形式のビジネスである。フリー
とは、英語でいうところの「free」に訳され、この「free」という言葉は、形容詞の意味に
「無料で」という用途がある。多くの人がこの英単語を見ただけではこの意味を連想する
のではないだろうか。しかし、このビジネスモデルでよくみられるフリーという言葉が指
す意味は、ただ無料にサービスを提供するだけではなく、ビジネスモデルの中で無料に提
供したサービスを上回る利益を見込んで設定する、その撒き餌としての意味を持つもので
ある。今回私が本論文で扱うフリービジネスモデルという言葉は、単なる無料を指すので
はなく、マーケティング手法として「無料ではあるが、そこにお金を稼ぐ算段が含まれて
いるビジネスモデルとして扱うことをここに決めたい。
そして成功しているインターネットのフリービジネスモデルと失敗しているフリービジ
ネスモデルを個別に調べていき、成功例と失敗例からわかる成功の要因を自分なりに導く
ことを本論文の目的に置いた。
1章では情報技術の発達、消費者の意識変化からインターネットにおけるフリービジネス
モデルが受け入れられた背景に追っていく。
そして、2章では著書『FREE』を書いた、クリス・アンダーソンによって提唱されてい
る4種類のフリービジネスモデル分類の紹介を行う。
続く3章では成功したフリービジネスモデルの事例として、ポータルサイト、e-コマース
サイト、SNS サイト、動画共有サイトを挙げていき、その取り組みに触れていく。
4章では上記と同等のサービスを提供しながらも失敗してしまったフリービジネスモデ
ルの事例を挙げていき、失敗した要因を説明していく。
最後の5章では、個別の事例を通して提供サービスの姿勢の差、市場への参入方法、ビジネ
スモデルの確立という3点から、自分なりのインターネットにおけるフリービジネスモデル
の成功要因に迫っていき、インターネットにおけるフリービジネスを成功させる必須の要
素として、基本となるサービスを疎かにしない・収益源の確保・ビジネスモデルの確立が
あると考えた。また、あると大きなアドバンテージとなる要素として、早期の市場参入・
基本的機能を踏まえた上での新しい機能提供・考えもしなかった斬新なアイディアがある
と結論を導いた。
21/22
2010年度卒業論文概要
渡辺
愛実
新潟大学人文学部情報メディア論履修コース
SNSによる対人関係への影響
1990年代以降からの新しいメディアの急速な普及の中、2000年代に入り登場したソーシ
ャルネットワーキングサービス(SNS)というコミュニケーション空間は、今や若者だけ
ではなく幅広い世代に浸透してきている。また、さまざまな形式の SNS が登場し、ユーザ
ーもまた様々な利用方法や目的で利用する人が増え、SNS を選ぶ時代がやってきたといえ
る。日本の最大手の SNS サイトでは会員数が2,000万人を超えるなど、多くの人が利用し
ている状況がうかがえる。これ程までに私たちの生活に浸透してきた「第2のコミュニケー
ション空間」
である SNS は実際の対人関係に何か影響を及ぼしているのではないだろうか。
この疑問をきっかけに、本稿では SNS の利用実態や先行研究から SNS の効用を明らかに
しつつ、日本の代表的な SNS である「mixi」をとりあげ、SNS(mixi)は実際の対人関係
でのコミュニケーション空間に何か影響を及ぼしているのであろうか、また、もし及ぼし
ているとするなら、いったいどのような影響を及ぼしているのであろうか、ということに
ついて考察していく。
まず第1章では SNS の定義や機能、成り立ちを追い、SNS とはいったいどのようなもの
なのかを明らかにした。
第2章では SNS の中でも日本の代表的な SNS である mixi を取り上げ、まず mixi の成り
立ちや機能を説明する。その後なぜ mixi がここまで巨大化していったのかを分析し、mixi
の利用実態を考察した。
第3章では mixi 内で行われている日記コミュニケーションの考察から、実際の対人関係
に及ぼす効用を分析した。
第4章では実際に mixi を利用している大学生の男女20人へのインタビューを行い、第3章で
明らかにした効用を基に考察し、本論文のまとめとした。
22/22