ANN No.6 (Oral Mite Anaphylaxis)

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△最近の話題
メールニュース No.6
: OMA ・ Oral
Mite Anaphylaxis
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△特異的 IgE 検査 : モノクローナル抗体 ・マウス-ヒトキメラ抗体
▽
ファディア株式会社 発行
(サーモフィッシャーサイエンティフィック グループ)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------△ 最近の話題 : OMA:Oral
Mite Anaphylaxis ▽
OMA(oral mite anaphylaxis)の総説が本年の JACI に掲載されていました 1)。
OMA はダニが混入した食物を摂取後に重篤なアレルギー症状を起こす新しい症候群で、‘pancake syndrome’とも呼ばれ、
多くがパンケーキ摂取により発症しています。
本症の最初の報告は米国の 2 例で、いずれもニューオリンズからのベニエミックスを用いたベニエ(穴のないドーナッツ)摂取
後に全身性症状を起こしました(1993 年、1994 年)2,3)。それ以前にはダニが繁殖した小麦とミルクから成る流動食摂取での死
亡例が 1963 年に報告され、解剖の結果、小腸の激しい炎症と全身臓器の肉芽腫が認められ、排泄物および消化管からケナ
ガコナダニが多数検出されました 4)。
日本では、1995 年に熊本からお好み焼き粉とホットケーキミックスによるアナフィラキシーの 2 例が報告されました 5)。その後、
多数の本症例が報告されており、ほとんどがお好み焼きが原因食物です
6-12)。その他にダニが増殖しやすい食品として、チー
ズ、ハム、チョリソ、サラミソーセージが知られており、サラミソーセージ、粗挽きのトウモロコシ粉でも本症が疑われる例が報告
されています 13,14)。
世界的には熱帯および亜熱帯地域で本症が報告され、これら地域の高温多湿が食品中のダニの繁殖に適していると考えら
れます。日本は本症の報告が多い地域の一つで、スペインの 59 例に次いで 32 例の報告があります。1)症状を誘発した粉中
のダニ数やダニ抗原が検討されており、粉 1g 当たり 50~52,200 匹と報告されています。また、お好み焼き粉および薄力粉に
雌雄のダニを添加して培養した結果、6 週間後にお好み焼き粉の方が薄力粉よりも粉中のダニ数が多い傾向でした
10)。すな
わち、小麦粉単独よりもダニのエサとなる成分が添加されたものの方が繁殖しやすいと考えられます。ダニの種類は、コナヒョ
ウヒダニとケナガコナダニが最も多いと報告されています 1)。
OMA の症状は比較的重篤で、Sanchez-Borges らが経験した 30 例のまとめでは、多くが思春期または若い成人で、性別に
は関連が認められませんでした。全例、アレルギー性鼻炎または喘息の既往があり、ダニ摂取から 10-45 分で症状を発現して
います。症状の多くが下気道症状と血管浮腫で、FDEIA の例も認められています 15)。また、OMA での死亡が 2 例報告されて
います 16,17)。
さらに Sanchez-Borges らは、以下の基準を満たせば本症の診断は確定できるとしています。1)
・小麦粉で調理した食品の摂取による誘発症状
・喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎または食物アレルギーの既往
・ダニ特異的 IgE 陽性( in vivo、in vitro)
・症状誘発時に摂取した粉の抽出液による皮膚試験陽性
・市販の小麦エキスまたはダニ非混入の小麦抽出液による皮膚試験陰性
・ダニ非混入小麦製品から調理した食品摂取は耐性
・症状誘発時に摂取した粉での顕微鏡によるダニの検出
・症状誘発時に摂取した粉での免疫測定法によるダニ抗原の検出
・アスピリン/NSAID 過敏症
特に小麦アレルギーと誤診する可能性があるので、小麦粉製品摂取で即時型反応を呈した患者には本症も念頭に診断する
必要があると思います。また、ダニ特異的 IgE 陽性患者には小麦粉製品を冷蔵庫などに保存することを指導してアナフィラキ
シーなど重篤な症状を未然に防ぐべきと考えます。
監修)福冨 友馬 先生
国立病院機構相模原病院
臨床研究センター
参考文献
1) Sanchez-Borges M, Chacon RS, Capriles-Hulett A, Caballero-Fonseca F, Fernandez-Caldas E. Anaphylaxis from
ingestion of mites: Pancake anaphylaxis. J Allergy Clin Immunol 2013; 131: 31-5.
2) Erben AM, Rodriguez JL, McCullough J, Ownby D. Anaphylaxis after ingestion of beignets contaminated with
Dermatophagoides farina. J Allergy Clin Immunol 1993; 92: 846-9.
3) Spiegel WA, Anolik R, Jakabovics E, Arlian LG. Anaphylaxis associated with dust mite ingestion. Ann Allergy 1994;
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4) Herranz G. Hypersensitivity reaction to the ingestion of mites ( Tyroglyphus farina). Pathologic study of a fatal case.
Rev Med Univ Navarra 1963; 7: 137-49.
5) 松本知明、濱口正道.ケナガコナダニ経口摂取によるアナフィラキシーの 2 例.アレルギー1995;44:945.
6) 松野正知、伊藤道夫、原 正則、柳原俊雄、足立雄一.ダニの混入したお好み焼きを食べた後、全身症状を呈した 1 男子
例.アレルギー 1998;47:293.
7) 原 敦子、深堀 範、中田裕子、福島千鶴、松瀬厚人、河野 茂.お好み焼き粉に混入したダニが原因と考えられたアナフ
ィラキシーの 1 例.アレルギー 2006;55:574-7.
8) 上野充彦、西谷奈生、足立厚子.お好み焼き粉に繁殖した貯蔵庫ダニによると考えられた、お好み焼きによるアナフィラキ
シーショック.アレルギー 2007;56:365・
9) 小林律子、中野敏明、衛藤 光、白井秀治、蔵田圭吾、安枝 浩、阪口雅弘.開封後の市販お好み焼き粉内に増殖したダ
ニの多量摂取によるアナフィラキシー.アレルギー 2009;58:1304.
10) 稲葉弥寿子、白井秀治、矢上晶子、秋田浩孝、阪口雅弘、水谷 仁、松永佳世子.お好み焼き粉に繁殖したダニによる即
時型アレルギーの 2 例-inhibition immunoblot 法によるダニ数およびダニ抗原増加の検討-.日皮会誌 2010;120:
1893-900.
11) 原田 晋、白井秀治、阪口雅弘.お好み焼き粉、タコ焼き粉に混入したダニによるアレルギー反応の発症機序に関する考
察.アレルギー 2007;60:1369.
12) Takahashi K, Fukutomi Y, Sekiya K, Taniguchi M, Akiyama K. Oral mite anaphylaxis is caused by
mite-contaminated okonomiyaki mix in Japan. Proceedings XXII World Allergy Congress. World Allergy
Organization. Cancun. Mexico, December4-8 th, 2011.
13) Liccardi G, D’Amato M, D’Amato G. Oral allergy syndrome after ingestion of salami in a subject with
monosensitization to mite allergens. J Allergy Clin Immunol 1996; 98: 850-2.
14) Posthumus J, Borish L. A 71-year-old man with anaphylaxis after eating grits. Allergy Asthma Proc 2012; 33:
110-3.
15) Sanchez-Borges M, Suarez-Chacon R, Capriles-Hulett C, Caballero-Fonseca, Iraola V, Fernandez-Caldas E.
Pancake Syndrome (Oral Mite Anaphylaxis). WAO Journal 2009; 2: 91-6.
16) Edston E, van Hage-Hamstem M. Death in anaphylaxis in a man with house dust mite allergy. Int J Legal Med
2003; 117: 299-301.
17) Miller JD, Hannaway PJ. The pancake syndrome. Allergy Asthma Proc 2007; 28: 251-2.
△ 特異的 IgE 検査 : モノクローナル抗体‐マウス-ヒトキメラ抗体 ▽
近年、モノクローナル抗体作製技術の進歩により、大量にヒトの抗体を得ることが可能になりました。既にこの技術を利用した
モノクローナル抗体薬が日本でも使用されていることはご承知の事と思います。
モノクローナル抗体を利用して特異的 IgE 検査に用いるアレルゲン試薬の評価が可能になります。例を挙げると、卵白および
ミルクのコンポーネントに対するモノクローナル抗体を作製して、それぞれのイムノキャップ上に各コンポーネントが十分存在し
ていることを確認することができます。すなわち、卵白およびミルクイムノキャップ上には、多量のモノクローナル抗体と結合す
るのに十分な主要コンポーネントが存在していることがわかります(図 1.)。
1997 年に Chapman のグループは、抗 Der p 2 マウス-ヒト IgE 抗体(キメラ抗体)の作製およびその特異的 IgE 検査への応
用に関して JACI に報告しています。本キメラ抗体は特異的 IgE 測定系の標準として、検体中のアレルゲン特異的 IgE の絶対
量を表すことが可能であると結論しています 1)。本キメラ抗体は試薬として日本でも入手することが可能です。
本技術を利用して、サーモフィッシャーサイエンティフィック社でも種々のコンポーネントに対するキメラ抗体を作製しています
2,3,4)。これらキメラ抗体は、確保が困難な特異的
IgE の管理試料としてアレルゲンや製品の品質管理に利用することを目的と
しています。また、前回紹介いたしましたように、キメラ抗体の測定により精製コンポーネント中の他のタンパク質の混入を検
出することも可能です。
正確に秤量可能なモノクローナル抗体を用いることで、特異的 IgE 測定系の定量性を評価することが可能となります。すなわ
ち、キメラ抗体の溶液を作製し当該アレルゲンに対する特異的 IgE および総 IgE を測定すると両者の結果は理論上合致しま
す。
そこで、Wood ら 2)、佐藤 5)、Szecsi ら 3)は、キメラ抗体を用いてイムノキャップおよび他の特異的 IgE 検査キットにて特異的
IgE と総 IgE を測定した結果を報告しています。いずれの報告でもイムノキャップにおいて、特異的 IgE と総 IgE の抗体価が合
致し、他のキットでは特異的 IgE の結果が総 IgE よりも高くなる傾向が認められました(図 2.)。
したがって、イムノキャップにより得られた特異的 IgE 抗体価(UA/ml)は、総 IgE の国際標準品 WHO IRP 75/502 と同様であ
り、このことは米国臨床病理学会によるヒト IgE 測定に関するガイドラインにも記載されています
6)。すなわち、他のキットでは
標準品に用いている総 IgE と特異的 IgE の測定系において挙動が異なりますが、イムノキャップにおいて標準品に総 IgE を用
いることが妥当であることが示されています。
以上から信頼性のある特異的 IgE 結果がイムノキャップで得られるので、安心して日常診療および臨床研究にご使用いただ
けます。
参考文献
1) Schuurman J, Perdoc GJ, Lourens TE, Parren PWHI, Chapman MD, Aalberse RC. Production of mouse/human
chimeric IgE monoclonal antibody to the house dust mite allergen Der p 2 and its use for the absolute quantification
of allergen-specific IgE. J Allergy Clin Immunol 1997; 99: 545-50.
2) Wood RA, Segall N, Ahlstedt S, Williams B. Accuracy of IgE antibody laboratory results. Ann Allergy Asthma
Immunol 2007; 99: 34-41.
3) Everberg H, Brostedt P, Oman H, Bohman S, Moverare R. Affinity purification of egg-white allergens for improved
component-Resolved Diagnostics. Int Arch Allergy Immunol 2011; 154: 33-41.
4) Szecsi PB, Stender S. Comparison of immunoglobulin E measurements on IMMULITE and ImmunoCAP in
samples consisting of allergen-specific mouse-human chimeric monoclonal antibodies towards allergen extracts
and four recombinant allergens. Int Arch Allergy Immunol 2013; 162: 131-4.
5) 佐藤香奈子.アレルギー疾患患者における血中特異 IgE 測定キット2法の評価検討.医学検査 2010; 59: 929-35.
6) Analytical performance characteristics and clinical utility of immunological assays for human immunoglobulin E
(IgE) antibodies and defined allergen specificities; approved guideline – second edition. CLSI I/LA20-A2
アレルゲンコンポーネント特異的 IgE の受託測定サービス「アッセイサポート」を実施しております。詳しくはこちらをご覧くださ
い。
『第 63 回日本アレルギー学会秋季学術大会 イブニングシンポジウムのご案内』
11 月 28 日から 30 日まで東京で開催される同学会において、弊社と学会による共催シンポジウムを以下の概要で開催致し
ます。
イブニングシンポジウム 10
アレルギー診療におけるコンポーネント特異的 IgE 測定の意義
日時 2013 年 11 月 29 日(金)17:10-19:10
会場 ホテルニューオータニ 第 6 会場 ガーデンタワー宴会場階 鳳凰 中の間
司会 秋山 一男 先生(国立病院機構相模原病院 院長)
池澤 善郎 先生(国際医療福祉大学熱海病院 上席副院長)
詳細: 「だからイムノキャップ 学会情報」のページからご覧いただけます。
本イブニングシンポジウムは MA 研究会(代表世話人・秋山一男先生)によりプログラム検討がなされ、日本アレルギー学会と
弊社の共催シンポジウムとして開催されます。
本学会へ参加される先生方にぜひご参加頂けますこと、心よりお待ち申し上げます。
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