アムスルだより No. 73 2005年 Akajima Marine Science Laboratory 5月10日 阿嘉島臨海研究所 〒901‑3311 沖縄県島尻郡座間味村字阿嘉179 ホームページもご覧下さい。http://www.amsl.or.jp TEL:098‑987‑2304 FAX:098‑987‑2875 ● 海の中の動く花束 −ラッパウニ− 今年は早々と梅雨に入り、雨がちな日 が続くせいで時には涼しくも感じますが、 水温は 24℃を越えていて、海の中の夏の 準備は十分のようです。きっとこれから 海に行くことも多くなることでしょう。 海にはたくさんの危険な生き物がすんで いることは、みなさんも知っているとお りです。そこで、今回は、その危険な生 き物の一つ、ラッパウニを紹介しようと 思います。 ウニの仲間は、これまでもアムスルだ よりで紹介してきました。ナガウニ(No. 24)やシラヒゲウニ(No. 54)はとても ウニらしいウニですが、それらのトゲは それほど鋭くないので、はだしでふんだ り、ぎゅっと握ったりしないかぎり、ケ ガをすることはあまりないと思います。 ト ゲ が 鋭 い の は ガ ン ガ ゼ の 仲 間 ( No. 43)です。うっかり触っただけでも、ス ひ ふ ッと皮膚 に刺さって折れてしまうので、 十分に気をつけなければなりません。で は、ラッパウニはどうでしょうか。 ラッパウニは、阿嘉島のまわりにはあ E‑mail:[email protected] まりたくさんはいませんが、小石や海藻 や海底のゴミを体にまとって、ほかの動 物に見つからないようにカムフラージュ している姿を時々見かけます(写真 1)。 それらの小石など を取りのぞいてみ ると左上の写真の ような姿をしてい て、ちょっと見た だけでは、鋭いト ゲは見あたりませ ん。そのかわりに、たくさんのラッパの ような形をしたもので体がおおわれてい ます。一つ一つの ラッパ は、アサガ オの花をもっと広げたような形で、それ がたくさん集まっていて、まるで花束の ようです。これがラッパウニのトゲなの でしょうか。いえ、そうではありません。 注意深く見てみると、ひしめくように咲 いている 花 の間にとがったトゲを発 見することができます(写真 2)。これが、 ラッパウニの 本当の とげ 棘 です。けれど も、先端を見 ても、それほ どとがっていないので、ガンガゼのよう に刺さるとは思えません。実際のところ、 そっとさわっているかぎり、このトゲが 人に刺さることはまずなく、ラッパウニ が危険なのはこれが理由ではありません。 では、どうしてラッパウニは危険なので しょう。 定点観測 2005年4月 2005年3月 28 2 8 26 2 6 温度(℃) 24 2 4 22 2 2 20 2 0 18 1 8 16 1 6 総雨量304.2mm 総雨量172.6mm 14 1 4 気温(平均 19.8℃) 水温(平均 21.30℃) 12 10 気温(平均 23.9℃) 水温(平均 22.50℃) 1 2 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10111213141516171819202122232425262728293031 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112131415161718192021222324252627282930 日 それは、かわいらしく咲いているたく さんの 花 が原因なのです。この さ きょく 花 の本当の名前は「叉 棘 」といいま す(写真 3)。これは 枝わかれしたト ゲ という意味ですから、トゲには違い ないのですが、 これまで ト ゲ と呼んで いたもの(正 式に「棘」と いう名前で す)とは別の ものです(実は、ほかのウニの仲間にも 叉棘があるのですがとても小さくて目立 ちません)。ラッパウニの叉棘をよく見 .. てみると、3 本のすじが見えます。そして、 .... このすじには鋭くとがったかぎづめ がつ いています。例えば、人がさわると、叉 棘は根元と反対側に閉じ、つまり手をは さむように動いて、その時に問題のかぎ づめが手をひっかいてしまいます。かぎ づめはとても鋭いので、小さいながらも カミソリで切ったように切りキズができ、 さらにやっかいなことに、この叉棘から 出た毒がそのキズ口から入りこんでしま うのです。この毒は、けっこう強くて、 人によっては気を失ってしまうほどだと 言われていますから、泳いでいるときだ ったらおぼれてしまうかもしれません。 海の中でラッパウニを見ると、たくさ んの小さな花を身にまとって、時には、 その花をぱくぱくと開け閉めしていて、 日 とてもかわいらしく、不思議な感じがす るので、ついさわりたくなるのですが、 やっぱり危険な生き物には違いないので、 くれぐれもさわらないように気をつけて ください。 ●阿嘉島の海より 平成 17 年 4 月 17 日(日)、大島哲哉君、 利香さん(旧姓鈴木)の結婚式ならびに結婚 披露宴が阿嘉離島総合センターで行われ ました。島内で行われた結婚式はおよそ 40 年ぶりだということです。もちろん、 現在の総合センターでは始めてのことと なりました。 島の青年会や婦人会、ダイビング協会 などが協力して準備した今回の結婚式に は、親族の他、百数十名の島民が出席し、 二人の門出を祝いました。 二人はこれまでマリンハウスシーサー 阿嘉店のマリンスタッフとしてともに活 躍してきましたが、昨年末の退職ととも にこの阿嘉島で二人の生活を始めること を決意しました。 哲也君、利香さん、ご結婚おめでとう ございます。 これからも 末永く明る く、健康な 家庭を築い ていって下 さい。
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