根粒菌と根粒植物

根と微生物―2
根粒菌と根粒植物
植村誠次=林業試験場研究顧問
マメ科植物の多くは根に粒状の根粒を形成し,
マメ科植物の根粒内には,いずれもリゾビウム
い関連があるものとされている(図1).
そのなかに根粒菌(細菌)が共生していて,空気
属の細菌(根粒菌)
が共生して窒素固定を営んで
マメ科植物と根粒菌の共生関係は,根粒菌は寄
中の窒素を固定して自分の養分とし,同時に土
いるが,いくつかの種類に分けられている.現
主植物から炭水化物や他の栄養となる非窒素含
壌の地力改善
(とくに土壌の窒素成分の蓄積)に
在実用的見地からは,交互接種群による分類方
有化合物をもらい,寄主植物に対しては,窒素
大きな貢献をしていることは,ひろく知られて
法が用いられている.交互接種群とは,その群
化合物のほかホルモンなどを供給して,相互に
いるところである.しかし,マメ科植物以外に
にふくまれる植物は,相互に根粒菌を交換して
利益を交換しているわけである.
も,現在,百数十種にのぼる根粒植物が知られ
も根粒の形成が見られる植物群を指すものであ
根粒内における共生窒素固定の機構については,
ている.これらの植物の多くは,マメ科植物の
って,現在20数種以上の群が知られている.そ
まだ完全に解明されていないが,恐らくモリブ
根粒菌とは異種の微生物(恐らくは放線菌)と
の主なものは表1のようである.
デンと鉄を活性の中心とする酵素ナイトロゲナ
共生していることが実証され,マメ科植物と同
普通,根粒菌は土壌中に広く分布しているが,
ーゼの触媒作用によって,空気中の窒素が固定
様,地球上の窒素の循環ならびに森林生態系に
多くの場合,種子が土中で発芽すると,早いも
されてアミノ酸化合物を形成するものと考えら
大きな影響をもつことが明らかになってきた.
のでは初葉がでるころ,肉眼で根粒の形成が見
れている.その過程の中間生成物として,オキ
推算によると,地球の陸地において,生物によ
られる.菌は普通根毛から侵入し,感染糸をつ
シム説とヒドラジン説がみられたが,最近では
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る窒素固定量は,少なくとも年間10 ×53t,そ
くって内層部内に侵入してから根の肥大生長,
単独窒素固定菌(アゾトバクターやクロストリ
のうちマメ科植物によるもの106×14t,非マメ
すなわち根粒の形成を開始する.根粒の寿命は
ディウム菌)および共生窒素固定菌の場合を問
科植物(主に根粒植物と葉粒植物など)により
多くは1年以内であって,開花時期までは生長
わずアンモニア説が有力視されている.
10 6 ×5t といわれている.これは,生物による
がみられるが,結実するころから根粒の内容物
土壌中に自然に分布している根粒菌には,共生
6
は寄主植物に吸収され,次第に空洞になって崩
窒素固定能力の大きい有効菌と,殆んど窒素固
×30t とされている工業的窒素固定量にくらべ
壊し,同時に根粒内の根粒菌は土中に放出され
定能力のない寄生的な無効菌まで,各種の系統
てほぼその /3以上に該当するものである.
る.なお多年生のマメ科植物の中には,1年以
がみられる.したがってマメ科植物,とくにマ
①マメ科植物の根粒
上生き延びるものもみられる.
メ科作物を栽培するさいには,無効菌が先に寄
マメ科植物は世界各地に分布しており,とくに
根粒菌の形態は,土壌中では鞭毛のある小型の
主植物の根に侵入しない前に,人工培養した有
熱帯,亜熱帯に多数の種類がみられている.現
球菌であるが,共生する時は大型となり,根粒
効根粒菌を種子に接種して有効根粒を形成させ
在450余属,13,000種ほど知られているが,こ
内で種々な形態の変化を示す.根粒が完成する
る人工接種が行なわれ,作物の収穫量(生長)の
れまでに約2,000種について根粒の調査が行な
と桿状であった根粒菌は不規則な形態のバクテ
増加と品質の向上に大きな効果をもたらしてい
われ,その結果,マメ科に属する植物のうちに
ロイドとなり,同時に根粒組織中にレグヘモグ
る.とくにこれまで同一交互接種群のマメ科作
も,本来根粒を形成しない種類が約10%あるこ
ロビンという赤色の色素がみられるようになり,
物を栽培していない場所や,土壌条件が悪くて
とが認められた.
この二つの特異な存在物が,共生窒素固定と深
根粒菌の分布が不足している場所(せき悪地,
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窒素固定量の約 /5 を占めており,また年間10
2
表1−交互接種群
表2−非マメ科根粒植物が属する科,属
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禿しゃ地,崩壊地,鉱毒汚染地,砂漠)での接
すように世界で8科14属,総計158の種あるい
菌の本体は放線菌とする説が有力である.なお
種効果は,マメ科農作物のみならず樹木にとっ
は変種が知られている.わが国ではハンノキ属
ハンノキ,ヤマモモ,モクマオウ属などの根粒
ても著しいことが知られている.
16,グミ属13,ヤマモモ属3,ドクウツギ属1,
内には,内生菌糸のほかに,内生菌の菌糸より
元来,マメ科植物の根粒の形成は,比較的好気
計33のものについて根粒の形成が報告されてい
生じたと思われる特異な形態物として胞状体と
的条件が必要であって,野外においては地表10
る.なお表2に記載されているバラ科のチョウ
バクテロイドの存在が報告されており,前者は
∼15cmの間に多くみられるが,堅密な粘土質
ノスケソウ属のうち,わが国の高山植物に属す
共生窒素固定機構に,後者は根粒の形成に密接
土壌や湛水地では殆んどみられない.また窒素
るチョウノスケソウには根粒の形成はみられて
な関連があるものとみなされている.
肥料を多量に施すと,根粒の形成と窒素固定能
いない.
ハンノキ型に属する代表的な根粒(ハンノキ,
力を著しく低下させるが,逆にリン酸肥料は著
この型の根粒は,いずれもほぼ類似した形態を
ヤマモモ, グミ, モクマオウ, ドクウツギ,
しく促進する効果がみられる.リン酸成分の欠
しめしており,側根が伸長をやめて膨大したも
Ceanothus,Cercocarpus など)は,最近の無
除は,たとえ他の条件が適当であっても根粒の
ので,根そのものの構成組織をもっている点で,
窒 素 培養 や
形成はみられない.またこの他,微量元素のう
マメ科植物の根粒とは内部構造が著しく異なっ
還元方法による基礎実験の結果では,マメ科根
さ
15
Nを用いた,またはアセチレン
ち,硼素(B)は根粒の組織およびバクテロイド
ている.いずれも多年生根粒で,古いものは叉
粒と同じように,共生窒素固定を行なうことが
の形成に,モリブデン(Mo)は窒素固定に必須
状分岐が密集したサンゴ状の球形をしており,
多数の研究者によって明らかにされている.そ
の元素とされている.なおこのような傾向は非
ハンノキ,グミでは直径10cm以上のものがみ
の中には,マメ科作物に劣らない窒素固定能力
マメ科根粒植物でも認められている.
られる.なおモクマオウ,ヤマモモ属の根粒に
をもつ例も少なからず報告されている.
②非マメ科植物の根粒
は,他の属のものと異なり,多くの場合根粒の
ハンノキ型の根粒についての研究は,マメ科根
マメ科植物以外の植物で根粒の形成が報告され
先端部に根本来の形態をした背地性の根粒細根
粒に比べると大変遅れており,かつ調査が進む
ているものは,表2のような科,属に属してい
の形成がみられ,これは根の呼吸作用と関連が
につれて新しく追加されたものもあり,また根
る植物の中にみられている.これらの根粒は一
あるものと推定されている.これらの根粒の内
粒内生菌の本体も解決されていない現状で,そ
応,ハンノキ型,ソテツ型,マキ型およびハマ
生菌は,根粒の肥厚した皮層部柔細胞に分布し
の共生窒素固定機構の解明も含めて,極めて興
ビシ型の4つの型に大別されるが,ハマビシ型
ているが,その本体については,これまで細菌,
味深い課題を提供している.
に属するハマビシ科およびアカネ科の根粒につ
糸状菌,放線菌,粘菌説などいろいろ異説が主
(2)ソテツ型の根粒
いては報告例も少なく,根粒の範ちゅうに入れ
張されているが,いずれについてもまだ異論の
ソテツ科の植物は,9属約90種が知られ,これ
ることについても異論がみられるので,ここで
ない根粒形成菌の分離に成功していない.しか
までにその約1/3に根粒の着生が報告されている.
は除外することにした.
し最近の詳細な電子顕微鏡による観察結果や,
ソテツの根粒は地表あるいはその近くに形成さ
(1)ハンノキ型の根粒
根粒から圧倒的に放線菌の分離に成功している
れ,多年生で叉状分岐をしており,古いものは
この型に属する根粒植物は,現在,表2にしめ
例がしばしば見られることなどから,根粒内生
サンゴ状体をしていて,直径 10cm 以上に達す
図1−根粒菌の生活史における菌の各種形態
<SWINGLE.1940>
URBAN KUBOTA NO.14|23
るものもある.外部形態は,ハンノキ,グミな
③根粒植物と土壌生態系におけるチッ素の集積
1ha当り27kg,壮齢林では179kgの窒素の増加が
どの根粒にやや類似しているが,内生菌を含ん
マメ科,非マメ科根粒植物は,やせ地,禿山,
報告されている.オランダの10∼15年生のHip-
だ内皮細胞は著しく発達し,これに反して維管
砂地,ときには湿地などの環境条件の悪い地域
pophae の灌木林では毎年 15kg/ha の窒素増加
束の発達は不良である.ソテツの内生菌として
において,植生の先住木(先駆樹種)としての性
が知られている.
最初に注目されたのは,内皮細胞中にみられる
質をもっているが,それと同時に土壌に窒素を
モクマオウ属は熱帯性の樹種であるが,アフリ
藍藻類であって,これは,根粒の断面が緑色を
蓄積する能力をもっているので,植物生態学上
カのケイプベルデ岬諸島におけるモクマオウの
しているので肉眼的にも認められる.この他数
重要な役割をになっている.特に林業分野では,
造林地では,毎年64kg/haの窒素固定の例がみ
種の細菌類の存在も主張されているが,根粒形
ニセアカシア,アカシア類,ハギ,イタチハギ,
られ,またマレー半島では,牧草の収量増加の
成菌の実体は明らかでない.しかし最近では,
ネムノキ,エニシダなどのマメ科樹木,ハンノ
ための母樹として,その効果が期待されている.
ソテツの根粒は,イヌマキの根粒と同様,微生
キ,ヤシャブシ,ヤマモモ,グミ,モクマオウ
ドクウツギは,マメ科植物の少ないニュージー
物と関係のない本来の性質であって,藍藻類な
などの非マメ科根粒植物は,肥料木という名称
ランドやスペインの東部山岳地帯で,林内に侵
どの内生菌は2次的に侵入したものと推定され
で,やせ地や砂防地の造林木あるいは混植樹と
入して地力の増強に大きな貢献をしている.
ている.
して利用され,大きな成果をあげている.
Ceanothus属の植物は,アメリカのオレゴンで
これらの根粒が共生窒素固定を行なうかいなか
これらの根粒植物の野外あるいは林地における
は不毛地に分布し,野獣の好飼料となっている
については,最近 Ceratozamia,Encephalartos,
1ha当たりの年間窒素固定量の調査結果の数例
一方,地力の維持,増強にも大きな役割を果た
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Macrozamia 属の根粒を対象とした N テスト
を見ると,自然植生におけるマメ科樹木では,
している.また北部ロッキー山岳地帯では,ポ
の報告があるが,強力な窒素固定がみられてい
平均して50∼150kgの間とされており,またマ
ンデローサマツの混植木として推奨されている.
る.また根粒から分離された藍藻類および細菌
メ科樹木のタンニンアカシアは,30年生の林で
チョウノスケソウ(Dryas)属の植物は,最近ア
類の中に,単独で窒素固定するものがみられて
毎年 200 kg を固 定する例がアフリカのナター
ラスカや欧州の山岳地帯の寒冷地や,氷河跡地
いる.
ル地方で報告されている.非マメ科根粒樹木で
の先占木(土壌改良植物)として注目されており,
(3)マキ型の根粒
は,ハンノキ属についての調査が多く,アラス
アラスカの氷河跡地のチョウノスケソウとShe-
マキ科(4属約60種,わが国ではイヌマキ,ナ
カの石礫の不毛地で,ハンノキ(A.crispa)と
pherdia属の植生で被覆された灌木林では,過
ギが分布している),コウヤマキ科あるいはこ
チョウノスケソウを主体とした林では,毎年62
去70年間に,毎年60kg/haの窒素の増加をみて
れに類縁の植物(Agathis,Araucaria属など)の
kg/ha の窒素の蓄積がみられ,土地が肥沃にな
いる.そのほかのハンノキ型の根粒植物に属す
根には,直径1∼2mmの球状の根粒が多数着
ると針葉樹が優生樹種となること.また,同様
る Purshia および Cercocarpus 属の植物は,
生しており,とくにマキ属の根粒は,古くから
な現象が欧州のアルプスの氷河跡地においても
アメリカの西部 11州に広く分布し, Arctosta-
内外で非マメ科根粒の一つとして注目されてき
報告されている.オランダのグルチノザハンノ
phylos uva-ursi はカリホルニア山脈のやせ地
た.これらの根粒は側根の変形したもので,中
キを主体とした森林では,毎年 60∼130 kg/ha
で,ヤマモモや Ceanothus 属の植物と一緒に
央維管束の発達は比較的不良であって,内生菌
という報告例がある.なおアメリカのカリホル
自生し,やせ地の地力増強に貢献しているとい
は内皮細胞中に分布している.普通1年生の根
ニア湖では,湖畔に面してハンノキ林が密生し
われている.
粒であるが,まれに2年生のものも認められる.
ていて,湖畔周囲の土壌及び湖水の水が富栄養
ソテツ科の根粒がかなりの共生窒素固定能力を
内生菌の本体としては,糸状菌説,細菌説など
化し,プランクトンが旺盛に発育している例が
もつことはすでに実証されているが,わが国の
が主張されてきたが,最近の電子顕微鏡による
あげられている.
暖地でも,ソテツ林の林縁下では農作物の生長
調査結果では糸状菌説
(菌根説)
が有力である.
ヤマモモは,わが国では,瀬戸内の石英粗面岩
が促進されている例からも,ハンノキ型の根粒
しかし他方では,根粒から主に放線菌を分離す
地帯における粘土質せき悪土壌の改良には必須
植物と同様な効果をもつものと思われる.
ることに成功している例もあり,根粒菌の実体
の肥料木であって,マツと混植して大きな成果
マキ型の根粒の共生窒素固定能力については,
はまだ不明である.最近多くの研究者によれば,
をあげており,混植後12年間に,毎年 80kg/ha
まだ実験的に十分な結果を得ていないが,オー
無接種の無菌養成苗にも根粒の形成をみており,
の窒素増加の例がみられている.またアメリカ
ストラリア,ニュージーランド,タスマニアの
根粒形成はソテツ型の根粒と同様,そのもの本
のペンシルバニアの窒素分不足のボタ山では,
岩石地や山岳崩壊地に,先駆樹としての森林植
来の性質であって,内生菌は2次的に侵入した
定着樹種としてヤマモモが最も優れており,次
生を占めている点から判断して,根粒植物に近
ものとする説が有力である.また,根粒は一種
いでグルチノザハンノキがあげられている.
い機能を持つものと推定される.
の保水器管の機能を兼ねるとする人もいる.
グミ科の植物のうち,グミ属とくにアキグミの
以上は,おもに各種根粒植物が,郷土の自然植
マキ属の根粒が共生窒素固定を行なうものであ
植物は,わが国の海岸砂丘などの緑化造林にク
生において,どの程度の窒素固定を行なってい
るか否かについては,最近 15N を用いた2∼3
ロマツと混植して大きな成果をあげている.ス
るかを紹介したものであるが,わが国では古く
の実験が報告されており,その中には僅かな量
カンジナビヤでは Hippophae属の植物が氷河跡
からこれらの根粒植物は,肥料木としてやせ地,
ではあるが,窒素の固定が認められた例もみら
地の最初の優生樹種の位置をしめており,英国
砂防造林に取り入れられている.
れている.
の海岸砂丘の Hippophae の若い林では,年間
いま前述のヤマモモの混植効果について,筆者
URBAN KUBOTA NO.14|24
らが調査した事例の一部を紹介する.試験地は
めた樹体全量)から換算した窒素量を加算する
らされる窒素量にくらべて,分泌される窒素量
姫路に近い,海岸から2km離れた緩斜面で,石
と,それぞれ合計 3,452kg,3,395kg,2,428kg
は極めてわずかであるとする説もみられる.
英粗面岩の粘土質せき悪地である.付近一帯は
となり,初期にA,B区に施与された ha 当たり
(4)根粒植物と非根粒植物の根系間の連結
わい
樹齢10∼15年,樹高1∼2mの矮生のクロマツ林
50kgの窒素を差し引いても,12年間に,C区に
異種植物間で根系の生理的連結が可能であるか
が占め,短期間の皆伐の繰返しで土性は著しく
比べてA区は974kg,B区は917kgの窒素の増加,
否かは別として,マメ科と非マメ科牧草の混播
劣悪化していた.1957年,約 30 ha のクロマツ
年間にして ha 当り80kg 内外の窒素の増加が認
あるいは肥料木と主林木(マツ,スギ,ヒノキ
林内に,ha当たりに換算して 50 kg の窒素を施
められている.いまそれらの肥培機構を分析し
など)の混植林では,しばしば両者の根系が分
して,3年生ヤマモモ苗4,000本を混植した.
てみると,以下の事項が考えられる.
離不可能な状態まで交索あるいは密着している
12年後の1969年に,隣接して,A区=ha当たり
(1)落葉・落枝の林地への還元
場合が認められる.その著しい例として,アカ
ヤマモモは萌芽株も含めて 4,300本,クロマツ
窒素含有量の高い落葉・落枝が,林床で容易に
マツの根がグミの根粒を貫いている例も見られ
1,500本の混植区.B区=ヤマモモ2,380本,ク
分解し,土壌へ還元され,土壌の物理的,化学
ている.このような場合は,根粒植物の根系あ
ロマツ1,540本の混植区.C区=クロマツ6,490
的,微生物的条件を改善する.とくに,林床の
るいは根粒からの,窒素に富んだ分泌物が非根
本単植区.という3つの試験区を設置し,各試
窒素養分の増加と土壌腐植の造成を促進する.
粒植物の根に吸収されて生長に有利な結果をも
験区のクロマツ標準木の生長ならびに土性調査
本効果は,落葉量の多いハンノキ類などでとく
たらすことも考察される.なお老木の幹のうつ
を行なった.その結果の一部を示したものが,
に大きい.
ろの中に,異樹種の植物が定着して生育してい
図2・図3である.すなわち
(2)根系および根粒崩壊物の林地への還元
る例は,時おり見られる
(1)ヤマモモ混植区のクロマツ標準木は,いずれ
本効果は,(1)の場合に準ずるものであるが,と
(5)炭酸ガス同化作用の促進
も混植後3∼4年目から生長が促進し,12年目
くに根粒は,ほかの部分にくらべて窒素含有量
一般に根粒植物の根は,他の植物の根にくらべ
には,非混植区のクロマツの標準木材積に比べ,
が多く,しかもアカシア,ハンノキなどの例で
て炭酸ガスの発生量が2∼3倍をしめしており,
A区で約5倍,B区で約3倍を示した.
は,根粒が樹体の重さの10%近くの多量を占め
とくに根粒において著しいとされている.この
(2)ヤマモモ混植区の土壌は,非混植区のものに
る場合もみられている.またマメ科作物のうち,
ことは植物の炭素同化作用を促進し,一方,土
比べ,いずれもアルカリ性に傾き,置換酸度y1
地下部が地上部に比べて大きいルーサンやクロ
壌の養分水の濃度を高めて植物の生育を促す効
の値も小さく,また置換性 Ca,Mgの含量も高
ーバーでは,その効果が大きいとされている.
果が期待される.
く,C区に比べて土性の改善がうかがわれた.
(3)肥料木の根粒あるいは根系からの化合態窒素
(6)その他
(3)A,B,C区の層別土壌の窒素含有率にはそ
の分泌
上述した以外にも,根粒植物の導入によって,
れほど差はみられないが,林床も含めて,地表
ある環境条件下で,クローバーやハンノキの根
根系による土壌の物理性の改善,病虫害を含め
下 30cm の土壌の ha 当りの窒素含有量は,それ
粒からこのような現象が見られることから,根
た諸被害の減少,林床の落葉,落枝の分解を促
ぞれ,3,089kg,3,163kg,2,370kg で,これに
粒植物がもたらす肥培効果の一つと考えられる
進して菌根菌や有効菌を増加させるなどの報告
バイオマス(ヤマモモ,クロマツの地下部も含
にいたったものであるが,(1),(2)の場合にもた
例がみられている.
図2−各試験区クロマツ標準木の樹幹材積生
長経過
表3−各試験区の土性調査結果
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