グローバル・タレントマネジメント

2011
1
HAYマネジメントセミナー
日本企業グローバル化の鍵
グローバル・タレントマネジメント
その当時の日本法人では、
幹部クラスのポジショ
府・要人とパイプをつくったりすることができよう
ンはドイツ人、
フランス人、
あるいはドイツ語やフ
か。人材力=企業力になっていくのである。
ランス語を話せる日本人によって占められていた。
いま、世界中の多国籍企業にとって「ダイバーシ
多くの日本人のキャリアは中間管理職止まりであ
ティ」は、単なる社会貢献のためのキャッチフレーズ
る。丁度、
日本企業の海外現法でいま起こっている
ではない。さまざまな国のタレントが疎外感や不公
ことが、
当時多くの外資系企業の日本法人で起こっ
平感を感じることなく、お互いに連携し合って持
多くの日本企業が事業のグローバル化を掲げています。そのためには、日本の枠を超えた
ていたのだ。しかし、
いまは多くの多国籍企業が
てる力を最大限に発揮できるようにすることが、
グローバル人材の活用、すなわち多様な人材を適切に配置・活用することを目的とした、
グローバルな人材マネジメントの仕組みを導入し、
ビジネスの必要条件になってきているのだ。
各国の幹部人材にグローバルなキャリアアップの
それでは、
そうしたグローバルなタレントマネジ
機会を提供している。また、
ドイツ語やフランス語
メントのための仕組みをつくる上で、
何がポイント
ではなく、
英語をグローバルなコミュニケーション
になるのだろうか。図 1はグローバルなタレントマ
の共通言語にしている。いまの日本企業に求めら
ネジメントの全体像を表したものである。ここで
れるのは、
こうしたグローバルな幹部人材を採用し、
ポイントになるのが次の4つである。
定着させるためのインフラなのである。
1 グローバルな事業戦略を組織体制に落とし込む
○
2 グローバルなグレード体系と人材評価の仕組みを持つ
○
「タレントマネジメント」が重要課題となってきます。
どの国の関連会社にどのような人材がいるのかを把握し、それら優秀人材のアセスメン
トや、それに基づく行動改革トレーニングをどのように設計 すべきか? さらに報酬政策
など関連施策のあり方は? これら、企業のグローバル化に求められる施策を支援する、
ヘイ
グループのサービスをご紹介します。
ヘイグループ
高野研一 + グローバル化担当チーム
も変質してきている。従来は海外現法における技
変化するグローバル化の意味と
人事部への期待
3 その上にタレントマネジメントの仕組みを載せて動かす
○
グローバルなタレント
マネジメントの全体像
4 エグゼクティブの報酬政策を明確にする
○
能職や営業職の採用・処遇、労務問題への対応な
どがグローバル人事の重要課題であった。しかし、
近年タレントマネジメントという言葉が国内でも使
グローバルな事業戦略を
組織体制に落とし込む
いまはグローバルな視野で連携しながらビジネス
われるようになってきた。不透明な経営環境の中
これまでも日本企業にとってグローバル化は重
を切り拓ける事業家人材、
マネジャー、
エンジニア、
で、価値を生み出すことが求められる時代におい
要な経営課題であった。しかし、近年その意味す
マーケターなどの発掘・育成・活用へとトップの
ては、事業を切り拓く才覚を持ったタレントが求め
グローバルな事業戦略の中で、
「グローバルブラン
るところが変わってきているように感じる。従来
関心が移ってきている。
られるようになる。ハリウッド映画を見ていれば、
ドを育成する」
「新興国仕様の商品を開発する」
「非
は工場の海外移転や、海外での販社展開がグロー
ところが、
ここで問題になるのが、
日本人中心の
キャスティングがいかに重要かがわかるだろう。
いい
日系のグローバルアカウントを開拓する」
などの課題
バル化の中身であった。ところが近年はそれにと
マネジメントスタイルである。
日本人同士が日本語
タレントの発掘と起用の手間を惜しんでいては、
いい
が立てられるが、
いまの日本企業を見ていると、たとえ
どまらず、研究開発や調達・品質管理、
マーケティ
で重要な意思決定を行い、
外国人の社員にはその
映画はできない。それはビジネスにおいても同じだ。
ば、
グローバルブランドを育成するという課題を推進
ング、
行政対応などの重要な機能を、
米国や中国な
場その場で指示命令が下りてくるばかり。 外国人
グローバルに事業を成功させるためには、
グロー
する上で、
本社事業部、
グローバルマーケティング本
どに移すことが課題になってきている。その背景
社員にとってグローバルなキャリアアップや幹部教
バルに連携し合って動けるビジネスリーダー、エン
部、
海外現法マーケティング部門などの間で、
責任と
には、
グローバルな市場の一体化や、新興国市場の
育の機会は限られている。このため、
日本企業は外
ジニア、マーケター、コーポレートスタッフを各国で発
権限が明確になっていないことが多い。このため、
問
台頭が進む中で、日本中心のビジネスモデルでは、
国人の社員からは閉鎖的で排他的と見なされている。
掘し、起用することが重要になる。そうでなければ、
題が起こるたびに協議が繰り返されるが、結局何
もはや太刀打ちできないという認識がある。
欧米のグローバル企業では、
世界中の社員が自
どうやってグローバルなベストプラクティスを確立
も決まらずに先送りされたり、声の大きい人物に引き
実際多くの日本企業が中期計画の中で、
「脱日系
国に居ながらにして、
グローバルなキャリアを拓
したり、新興国で事業リスクを取ったり、各国の政
ずられて物事が決まってしまうという話をよく聞く。
企業」
を戦略に掲げるようになってきている。部品
く機会を与えることが普通になってきている。我々
メーカーや素材メーカーは、アップルやサムスン、
現代自動車などをターゲット顧客として掲げている。
ヘイグループを例にとっても、
CEOはカナダ人で本
また、
日本企業の場合、
研究開発、
調達、
品質管理、
[図1]グローバル・タレントマネジメントの全体像
社のフィラデルフィアに居るが、報酬コンサルティ
一方、
自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーも、
ングのヘッドはロンドンにいるイギリス人が務める。
中国などの新興国で現地のサプライヤーを育て、
リーダーシップ開発やタレントマネジメントのヘッドは
現地仕様の商品を開発する体制づくりに注力して
アメリカ人でボストンにおり、組織コンサルティング
いる。 また、台頭著しい新興国で、いかに政府系
のヘッドはフランス人でパリを拠点としている。この
企業やオーナー企業とパイプを築くかが重要な課
ため、2カ月に1 回の経営会議は転々と場所を変え
題になっている企業もある。かつては日本企業に
て行われる。国籍や居場所に関わらず、
グローバル
とってプラスに働いた日本企業同士の排他的な関
なキャリアが拓ける状態が普通になってきているのだ。
係が、
いまは克服すべき最大の壁になっているのだ。
かつてドイツ企業やフランス企業の日本法人が、
こうした背景から、
人事部に対するトップの期待
優秀な日本人の採用に苦労していた時代がある。
グローバル
事業戦略
グローバル
組織体制
経営理念
価値観
グローバル
タレント
マネジメント
の全体像
製造などは本社中心の運営が行われる一方で、
ガ
グローバル
共通グレード
体系
グローバル
人材評価基準
サクセッション
プラン
人材レビュー
昇進昇格運用
バナンスやコーポレート機能、
マーケティング、
セー
ルスは各国別の運営が行われていることが多い。
つまり、
グローバルな組織設計に一貫性がないのだ。
このため、「海外現法のマーケティング機能と本
各国の
雇用環境
制約条件
グローバル
報酬政策
アセスメント
多面評価
人材育成
キャリア開発
社事業部の商品企画機能が分断されている」「海
グローバル
役員報酬制度
国際異動の
ガイドライン
企業からよく聞こえてくる
(次頁図2)
。
グローバル
報酬ガバナンス
外現法のガバナンスが利かない」などの声が、
日本
こうした状況を克服するためには、
グローバル
な事業戦略に合ったグローバルな組織体制をデザ
インする必要がある。グローバルな戦略課題を実
2011
1
HAYマネジメントセミナー
日本企業グローバル化の鍵
グローバル・タレントマネジメント
その当時の日本法人では、
幹部クラスのポジショ
府・要人とパイプをつくったりすることができよう
ンはドイツ人、
フランス人、
あるいはドイツ語やフ
か。人材力=企業力になっていくのである。
ランス語を話せる日本人によって占められていた。
いま、世界中の多国籍企業にとって「ダイバーシ
多くの日本人のキャリアは中間管理職止まりであ
ティ」は、単なる社会貢献のためのキャッチフレーズ
る。丁度、
日本企業の海外現法でいま起こっている
ではない。さまざまな国のタレントが疎外感や不公
ことが、
当時多くの外資系企業の日本法人で起こっ
平感を感じることなく、お互いに連携し合って持
多くの日本企業が事業のグローバル化を掲げています。そのためには、日本の枠を超えた
ていたのだ。しかし、
いまは多くの多国籍企業が
てる力を最大限に発揮できるようにすることが、
グローバル人材の活用、すなわち多様な人材を適切に配置・活用することを目的とした、
グローバルな人材マネジメントの仕組みを導入し、
ビジネスの必要条件になってきているのだ。
各国の幹部人材にグローバルなキャリアアップの
それでは、
そうしたグローバルなタレントマネジ
機会を提供している。また、
ドイツ語やフランス語
メントのための仕組みをつくる上で、
何がポイント
ではなく、
英語をグローバルなコミュニケーション
になるのだろうか。図 1はグローバルなタレントマ
の共通言語にしている。いまの日本企業に求めら
ネジメントの全体像を表したものである。ここで
れるのは、
こうしたグローバルな幹部人材を採用し、
ポイントになるのが次の4つである。
定着させるためのインフラなのである。
1 グローバルな事業戦略を組織体制に落とし込む
○
2 グローバルなグレード体系と人材評価の仕組みを持つ
○
「タレントマネジメント」が重要課題となってきます。
どの国の関連会社にどのような人材がいるのかを把握し、それら優秀人材のアセスメン
トや、それに基づく行動改革トレーニングをどのように設計 すべきか? さらに報酬政策
など関連施策のあり方は? これら、企業のグローバル化に求められる施策を支援する、
ヘイ
グループのサービスをご紹介します。
ヘイグループ
高野研一 + グローバル化担当チーム
も変質してきている。従来は海外現法における技
変化するグローバル化の意味と
人事部への期待
3 その上にタレントマネジメントの仕組みを載せて動かす
○
グローバルなタレント
マネジメントの全体像
4 エグゼクティブの報酬政策を明確にする
○
能職や営業職の採用・処遇、労務問題への対応な
どがグローバル人事の重要課題であった。しかし、
近年タレントマネジメントという言葉が国内でも使
グローバルな事業戦略を
組織体制に落とし込む
いまはグローバルな視野で連携しながらビジネス
われるようになってきた。不透明な経営環境の中
これまでも日本企業にとってグローバル化は重
を切り拓ける事業家人材、
マネジャー、
エンジニア、
で、価値を生み出すことが求められる時代におい
要な経営課題であった。しかし、近年その意味す
マーケターなどの発掘・育成・活用へとトップの
ては、事業を切り拓く才覚を持ったタレントが求め
グローバルな事業戦略の中で、
「グローバルブラン
るところが変わってきているように感じる。従来
関心が移ってきている。
られるようになる。ハリウッド映画を見ていれば、
ドを育成する」
「新興国仕様の商品を開発する」
「非
は工場の海外移転や、海外での販社展開がグロー
ところが、
ここで問題になるのが、
日本人中心の
キャスティングがいかに重要かがわかるだろう。
いい
日系のグローバルアカウントを開拓する」
などの課題
バル化の中身であった。ところが近年はそれにと
マネジメントスタイルである。
日本人同士が日本語
タレントの発掘と起用の手間を惜しんでいては、
いい
が立てられるが、
いまの日本企業を見ていると、たとえ
どまらず、研究開発や調達・品質管理、
マーケティ
で重要な意思決定を行い、
外国人の社員にはその
映画はできない。それはビジネスにおいても同じだ。
ば、
グローバルブランドを育成するという課題を推進
ング、
行政対応などの重要な機能を、
米国や中国な
場その場で指示命令が下りてくるばかり。 外国人
グローバルに事業を成功させるためには、
グロー
する上で、
本社事業部、
グローバルマーケティング本
どに移すことが課題になってきている。その背景
社員にとってグローバルなキャリアアップや幹部教
バルに連携し合って動けるビジネスリーダー、エン
部、
海外現法マーケティング部門などの間で、
責任と
には、
グローバルな市場の一体化や、新興国市場の
育の機会は限られている。このため、
日本企業は外
ジニア、マーケター、コーポレートスタッフを各国で発
権限が明確になっていないことが多い。このため、
問
台頭が進む中で、日本中心のビジネスモデルでは、
国人の社員からは閉鎖的で排他的と見なされている。
掘し、起用することが重要になる。そうでなければ、
題が起こるたびに協議が繰り返されるが、結局何
もはや太刀打ちできないという認識がある。
欧米のグローバル企業では、
世界中の社員が自
どうやってグローバルなベストプラクティスを確立
も決まらずに先送りされたり、声の大きい人物に引き
実際多くの日本企業が中期計画の中で、
「脱日系
国に居ながらにして、
グローバルなキャリアを拓
したり、新興国で事業リスクを取ったり、各国の政
ずられて物事が決まってしまうという話をよく聞く。
企業」
を戦略に掲げるようになってきている。部品
く機会を与えることが普通になってきている。我々
メーカーや素材メーカーは、アップルやサムスン、
現代自動車などをターゲット顧客として掲げている。
ヘイグループを例にとっても、
CEOはカナダ人で本
また、
日本企業の場合、
研究開発、
調達、
品質管理、
[図1]グローバル・タレントマネジメントの全体像
社のフィラデルフィアに居るが、報酬コンサルティ
一方、
自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーも、
ングのヘッドはロンドンにいるイギリス人が務める。
中国などの新興国で現地のサプライヤーを育て、
リーダーシップ開発やタレントマネジメントのヘッドは
現地仕様の商品を開発する体制づくりに注力して
アメリカ人でボストンにおり、組織コンサルティング
いる。 また、台頭著しい新興国で、いかに政府系
のヘッドはフランス人でパリを拠点としている。この
企業やオーナー企業とパイプを築くかが重要な課
ため、2カ月に1 回の経営会議は転々と場所を変え
題になっている企業もある。かつては日本企業に
て行われる。国籍や居場所に関わらず、
グローバル
とってプラスに働いた日本企業同士の排他的な関
なキャリアが拓ける状態が普通になってきているのだ。
係が、
いまは克服すべき最大の壁になっているのだ。
かつてドイツ企業やフランス企業の日本法人が、
こうした背景から、
人事部に対するトップの期待
優秀な日本人の採用に苦労していた時代がある。
グローバル
事業戦略
グローバル
組織体制
経営理念
価値観
グローバル
タレント
マネジメント
の全体像
製造などは本社中心の運営が行われる一方で、
ガ
グローバル
共通グレード
体系
グローバル
人材評価基準
サクセッション
プラン
人材レビュー
昇進昇格運用
バナンスやコーポレート機能、
マーケティング、
セー
ルスは各国別の運営が行われていることが多い。
つまり、
グローバルな組織設計に一貫性がないのだ。
このため、「海外現法のマーケティング機能と本
各国の
雇用環境
制約条件
グローバル
報酬政策
アセスメント
多面評価
人材育成
キャリア開発
社事業部の商品企画機能が分断されている」「海
グローバル
役員報酬制度
国際異動の
ガイドライン
企業からよく聞こえてくる
(次頁図2)
。
グローバル
報酬ガバナンス
外現法のガバナンスが利かない」などの声が、
日本
こうした状況を克服するためには、
グローバル
な事業戦略に合ったグローバルな組織体制をデザ
インする必要がある。グローバルな戦略課題を実
K 特1 特2
2011
●Hey-newsletter
1
2011
1
HAYマネジメントセミナー
日本企業グローバル化の鍵
グローバル・タレントマネジメント
その当時の日本法人では、
幹部クラスのポジショ
府・要人とパイプをつくったりすることができよう
行するために、地域横断的な ①意思決定プロセス
に決める必要がある。しかし、
グローバルな組織体
事を考えるプロセスである。
特に、非公開企業、再生企業、ITベンチャー、
バ
ンはドイツ人、
フランス人、
あるいはドイツ語やフ
か。人材力=企業力になっていくのである。
とガバナンスの仕組み、②マネジメントコントロー
制の中でタレントの位置づけを示す目的であれば、
また、アセスメントとは、グローバルタレントの
イオベンチャーなどとエグゼクティブクラスのタレ
ランス語を話せる日本人によって占められていた。
いま、世界中の多国籍企業にとって「ダイバーシ
ルのプロセス、③権限と責任の体系、④評価基準
必ずしも
「職能」か
「職務」かを問題にする必要はな
要件を具体的に可視化するとともに、
それに照ら
ントを競合する場合、あるいは起業や事業拡大を
多くの日本人のキャリアは中間管理職止まりであ
ティ」は、単なる社会貢献のためのキャッチフレーズ
などを設計していく必要がある。
い。もちろん、
グローバルな読み替えルールをつく
して高業績者のポテンシャルを診断し、登用や育
ミッションとする事業家人材の採用においては、
長
る。丁度、
日本企業の海外現法でいま起こっている
ではない。さまざまな国のタレントが疎外感や不公
る際に、職務評価というステップは欠かせない。
成計画に反映させるプロセスである。グローバル
期インセンティブが条件交渉の鍵を握ることが多い。
しかし、人をベースにしたグレードと、ポジション
なタレントマネジメントが機能している企業では、
人
ヘイグループの役員報酬チームは、海外でのエグ
をベースにしたグレードが混在していても大きな
材の発掘・診断・育成のためのプロセスが有効に
ゼクティブの採用・引留めに関わる報酬制度設計
支障にはならない
(図3)
。
機能している。ヘイグループでは、グローバルリー
をサポートしている。
ただ、
一つ重要になるのが、
人物を評価するため
ダーのアセスメントや、それに基づく行動改革トレー
ニングなどをサービスとして提供している。
ことが、
当時多くの外資系企業の日本法人で起こっ
平感を感じることなく、お互いに連携し合って持
多くの日本企業が事業のグローバル化を掲げています。そのためには、日本の枠を超えた
ていたのだ。しかし、
いまは多くの多国籍企業が
てる力を最大限に発揮できるようにすることが、
グローバル人材の活用、すなわち多様な人材を適切に配置・活用することを目的とした、
グローバルな人材マネジメントの仕組みを導入し、
ビジネスの必要条件になってきているのだ。
各国の幹部人材にグローバルなキャリアアップの
それでは、
そうしたグローバルなタレントマネジ
機会を提供している。また、
ドイツ語やフランス語
メントのための仕組みをつくる上で、
何がポイント
グローバルな組織体制がデザインできれば、
次
のグローバル共通のモノサシを持つことである。
年
ではなく、
英語をグローバルなコミュニケーション
になるのだろうか。図 1はグローバルなタレントマ
に必要になるのが、グローバルな観点からタレン
1 回はグローバルタレントの人材レビュー
(人事考課)
の共通言語にしている。いまの日本企業に求めら
ネジメントの全体像を表したものである。ここで
トマネジメントを行うための共通グレード体系と、
を行い、
その結果に基づき昇格運用を行う
(職能資
れるのは、
こうしたグローバルな幹部人材を採用し、
ポイントになるのが次の4つである。
人材評価の仕組みづくりである。
格制度)か、
ポスト運用に反映させる
(職務グレー
定着させるためのインフラなのである。
1 グローバルな事業戦略を組織体制に落とし込む
○
各国のタレントが連携し合ってグローバルにビ
ド制度)
ことが重要になる
(図 4)
。よくグローバル
2 グローバルなグレード体系と人材評価の仕組みを持つ
○
ジネスを展開していくためには、
一貫した考え方
共通グレード制度を導入したが、
まったく使われ
3 その上にタレントマネジメントの仕組みを載せて動かす
○
に基づき人材評価が行われ、
それが昇進昇格に反
ていないという話を聞く。それは、
グローバル共
グローバルタレントをめぐる競争が激しさを増す
えた上で、それを上位者や取締役会が監督すると
4 エグゼクティブの報酬政策を明確にする
○
映される必要がある。もちろん、
全社員を対象にす
通の目線でタレントを評価し、
彼らの昇進昇格や配
中で、エグゼクティブの報酬政策が世界中で重要
いうスタイルが主流になっている。
る必要はない。グローバルな課題の実行において
置に反映させる仕組みが欠けているからである。
な論点になりつつある。表面ではリーマン・ショッ
これに対して日本では、
合議制による意思決定
重要な役割を果たす事業家人材、
ビジネスリーダー、
日本企業のグローバル共通人事施策を見ていると、
ク以降、CEOの報酬の高さが社会的バッシングを
スタイルが長く定着してきたことから、
各国のヘッド
マネジャー、高度エキスパートなどが対象になれば
グローバルグレードやグローバルなトレーニングに
受けているが、水面下では各国で不足する有能な
個人に大きな意思決定権を委ねるという考え方が
いい。彼らの目から見て、
グループの中での自己の位
関するものが多い。しかし一方で、
グローバル共
エグゼクティブクラスの人材を確保するために、
ス
受け入れられにくい。
また、
モニタリングの技術や
トックプランをどう活用するかが、新興国も含めて
説明責任という考え方も未発達であり、権限を与
ホットなテーマになっているのだ。
えた時のリスクも大きい。外国人に経営への参画を
「タレントマネジメント」が重要課題となってきます。
どの国の関連会社にどのような人材がいるのかを把握し、それら優秀人材のアセスメン
トや、それに基づく行動改革トレーニングをどのように設計 すべきか? さらに報酬政策
など関連施策のあり方は? これら、企業のグローバル化に求められる施策を支援する、
ヘイ
グループのサービスをご紹介します。
ヘイグループ
高野研一 + グローバル化担当チーム
グローバルなタレント
マネジメントの全体像
も変質してきている。従来は海外現法における技
変化するグローバル化の意味と
人事部への期待
グローバルなグレード体系と
人材評価の仕組みを持つ
能職や営業職の採用・処遇、労務問題への対応な
どがグローバル人事の重要課題であった。しかし、
近年タレントマネジメントという言葉が国内でも使
いまはグローバルな視野で連携しながらビジネス
われるようになってきた。不透明な経営環境の中
グローバルな事業戦略を
組織体制に落とし込む
これまでも日本企業にとってグローバル化は重
を切り拓ける事業家人材、
マネジャー、
エンジニア、
で、価値を生み出すことが求められる時代におい
置づけ、将来のキャリアパスの可能性が見えるように
通の目線による人物評価はあまり重視されていな
要な経営課題であった。しかし、近年その意味す
マーケターなどの発掘・育成・活用へとトップの
ては、事業を切り拓く才覚を持ったタレントが求め
グローバルな事業戦略の中で、
「グローバルブラン
なればいいのである。
そのために職務グレードが必
い。グローバル・タレントマネジメントを本質的に機
るところが変わってきているように感じる。従来
関心が移ってきている。
られるようになる。ハリウッド映画を見ていれば、
ドを育成する」
「新興国仕様の商品を開発する」
「非
要になる。グレードには2 つの役割がある。 ① 報
能させる上では、ここが最も重要になるのである。
は工場の海外移転や、海外での販社展開がグロー
ところが、
ここで問題になるのが、
日本人中心の
キャスティングがいかに重要かがわかるだろう。
いい
日系のグローバルアカウントを開拓する」
などの課題
酬決定の基準を提供することと、② 組織内での
ヘイグループでは、多国籍のコンサルタントチームが、
バル化の中身であった。ところが近年はそれにと
どまらず、研究開発や調達・品質管理、
マーケティ
ング、
行政対応などの重要な機能を、
米国や中国な
どに移すことが課題になってきている。その背景
マネジメントスタイルである。
日本人同士が日本語
タレントの発掘と起用の手間を惜しんでいては、
いい
で重要な意思決定を行い、
外国人の社員にはその
映画はできない。それはビジネスにおいても同じだ。
場その場で指示命令が下りてくるばかり。 外国人
グローバルに事業を成功させるためには、
グロー
社員にとってグローバルなキャリアアップや幹部教
バルに連携し合って動けるビジネスリーダー、エン
が立てられるが、
いまの日本企業を見ていると、たとえ
各社員のステータスを明確にすることである。
ば、
グローバルブランドを育成するという課題を推進
評価基準づくりや人材委員会の運営を支援して
この内、
「職能」か「職務」
かが主に問題となるの
する上で、
本社事業部、
グローバルマーケティング本
部、
海外現法マーケティング部門などの間で、
責任と
ジニア、マーケター、コーポレートスタッフを各国で発
権限が明確になっていないことが多い。このため、
問
ぼ す。このため、各現法のグレード制度においては、
台頭が進む中で、日本中心のビジネスモデルでは、
国人の社員からは閉鎖的で排他的と見なされている。
掘し、起用することが重要になる。そうでなければ、
題が起こるたびに協議が繰り返されるが、結局何
各国の報酬慣行に合わせて職能か職務かを明確
実際多くの日本企業が中期計画の中で、
「脱日系
企業」
を戦略に掲げるようになってきている。部品
国に居ながらにして、
グローバルなキャリアを拓
ヘイグループを例にとっても、
CEOはカナダ人で本
現代自動車などをターゲット顧客として掲げている。
社のフィラデルフィアに居るが、報酬コンサルティ
一方、
自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーも、
ングのヘッドはロンドンにいるイギリス人が務める。
グローバル
組織体制
かつてドイツ企業やフランス企業の日本法人が、
優秀な日本人の採用に苦労していた時代がある。
人材レビュー
昇進昇格運用
つまり、
グローバルな組織設計に一貫性がないのだ。
このため、「海外現法のマーケティング機能と本
アセスメント
多面評価
各国の
雇用環境
制約条件
グローバル
報酬政策
グローバル
役員報酬制度
グローバル
報酬ガバナンス
人材育成
キャリア開発
国際異動の
ガイドライン
社事業部の商品企画機能が分断されている」「海
外現法のガバナンスが利かない」などの声が、
日本
企業からよく聞こえてくる
(次頁図2)
。
こうした状況を克服するためには、
グローバル
な事業戦略に合ったグローバルな組織体制をデザ
インする必要がある。グローバルな戦略課題を実
海外現法は職務主義
(ポジションの格付に基づ
き給与を決定)
といった設計・運用も可能。
あらかじめ議論することは苦にはならない。
また、
そ
れに基づき報告を行い、
監督を受けることも、
職責
行い、昇格
(職能資格制度)
や昇進
(職務グレー
M3
M3
M2
M2
M2
M1
M1
M1
[図2]グローバルな事業戦略と組織体制のねじれ
の一部として受け入れ可能だ。しかし、
それらにつ
ド制度)
に反映させる。
・本社各部および各国現法の経営を担う層は、
グ
ローバルな経営の要となるため、本社が一元的
グローバル共通グレードと人物評価
日本企業のグローバル組織体制は多国籍型とグローバルセントラル型の折衷型になっている。これによって、①現法の
マーケティングと本社の商品企画開発が分断される、②海外現法のガバナンスが利かないなどの問題が生じている。
グローバル事業戦略
ガバナンス
グ コーポレート機能
ロ
事業企画
ー
バ
研究
ル
組 商品企画開発
織
体 調達・品質管理
制
生産
マーケティング
販売
輸出型
多国籍型
グローバルセントラル型
グローバルマトリクス型
国内の主力商品を
海外に輸出
海外各国で事業を
買収
世界を一つの市場と捉え
グローバルにサプライ
チェーンを構築
世界各地域でローカル
ニーズとスケールメリット
のバランスを追求
(例:タタ)
(例:インテル、マイクロソフト) (例:ネスレ、P&G)
の仕組みは、
パソコンにたとえれば
OS(オペレーティングシステム)
のよう
非
管
理
職
層
みとする。
・そのために、グローバルに共通のグレード体系
を導入する(バーチャルで可)
。
リーダーシップ
したり、
キャリア開発を行い、彼らが
グローバルに連携して動くようにな
本社中心
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
本社
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
るためには、その上で機能するアプ
本社中心
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
リケーションが必要になる。それがサ
本社
本社
本社
複数国のセンター
クセッションプランやアセスメントなど
業
績
貢
献
度
本社
各国/各地域
本社
複数国のセンター
本社
各国/各地域
本社 + 複数国のセンター
複数国のセンター
各国
各国/各地域
本社 + 各国/各地域
複数国のセンター
+ 各国/各地域
のタレントマネジメントの仕組みである。
バルな課題を実行する上で重要な役
その結果は、昇進昇格やサクセッションプラン、
割を果たすキーポジションの後任人
グローバル・グレード運用
(イメージ)
本社
②リーダーシップの2軸で人材の棚卸を行う。
キャリア開発に反映される。
現法A
現法B
(職能主義)
(職務主義)
(職務主義)
M4
管
理
職
層
フラストレーションを感じる。このため、少なくとも
海外現法では意思決定のスタイル自体を変える必
M3
M3
M2
M2
M2
M1
M1
M1
一グ
元ロ
人ー
材バ
管ル
理
依然として世界第二位の経済大国である。多くの
企業がグローバルな競争力を持ち、
世界中から称
賛されている。
しかし一方で、
グローバルな人材マ
ネジメントという点では、世界の潮流と完全に逆行
してきたといえる。その結果、世界中のトップクラス
の企業が、国籍に関わらず有能な人材を味方に引
き込んでいるのに対して、日本企業は日本人だけ
対しては、本社のグローバル人材委員会が年
サクセッションプランとは、グロー
を修正されたり、衆議を繰り返されるのには激しい
日本は民間セクターが発達しているという点で、
グローバルな経営において中核となる層に
1回人材レビューを実施し、① 業績貢献度と
いて事前に十分議論を尽くさずに、期中に都度方向
要があるのだ。
[図4]
グローバル共通の人材レビュー
なものである。実際にタレントを発掘
業績評価指標、
モニタリングプロセスなどについて
・ただし、グローバルに共通の基準で人材評価を
に人材の評価、登用をコントロールできる仕組
バナンスやコーポレート機能、
マーケティング、
セー
ルスは各国別の運営が行われていることが多い。
管
理
職
層
・国内は職能主義(人の格付に基づき給与を決定)
、
3
なキャリアが拓ける状態が普通になってきているのだ。
グローバル
人材評価基準
サクセッション
プラン
M4
2
て行われる。国籍や居場所に関わらず、
グローバル
経営理念
価値観
グローバル
タレント
マネジメント
の全体像
グローバル
共通グレード
体系
現法B
1
ため、2カ月に1 回の経営会議は転々と場所を変え
こうした背景から、
人事部に対するトップの期待
グローバル
事業戦略
製造などは本社中心の運営が行われる一方で、
ガ
現法A
ン
ー
ゾ
企業やオーナー企業とパイプを築くかが重要な課
係が、
いまは克服すべき最大の壁になっているのだ。
また、
日本企業の場合、
研究開発、
調達、
品質管理、
本社
外国人のビジネスリーダーにとって、経営計画や
ン
ー
ゾ
アメリカ人でボストンにおり、組織コンサルティング
のヘッドはフランス人でパリを拠点としている。この
とってプラスに働いた日本企業同士の排他的な関
ずられて物事が決まってしまうという話をよく聞く。
[図1]グローバル・タレントマネジメントの全体像
リーダーシップ開発やタレントマネジメントのヘッドは
いる。 また、台頭著しい新興国で、いかに政府系
題になっている企業もある。かつては日本企業に
したり、新興国で事業リスクを取ったり、各国の政
グローバル・グレード体系
(イメージ)
ン
ー
ゾ
現地仕様の商品を開発する体制づくりに注力して
も決まらずに先送りされたり、声の大きい人物に引き
く機会を与えることが普通になってきている。我々
メーカーや素材メーカーは、アップルやサムスン、
中国などの新興国で現地のサプライヤーを育て、
どうやってグローバルなベストプラクティスを確立
求めようとすると、途端に大きな軋轢を引き起こす。
[図3]
グローバル共通グレード体系
(職能主義)
(職務主義)
(職務主義)
タレントマネジメントの
仕組みを動かす
欧米では、
ガバナンスの観点から、
各国ヘッドが
自己完結的に動けるだけの大きな意思決定権を与
いる。
に付くのかは、日々の人事管理に大きな影響を及
育の機会は限られている。このため、
日本企業は外
欧米のグローバル企業では、
世界中の社員が自
エグゼクティブの報酬政策を
明確にする
は ①の方である。給与が人に付くのか、ポジション
には、
グローバルな市場の一体化や、新興国市場の
もはや太刀打ちできないという認識がある。
日本型の意思決定
スタイルを見直す
非
管
理
職
層
で小さくまとまろうとしているように見える。戦前
戦後に輸出立国日本を形づくってきた先人たちか
ら見ると、歯がゆく映っているかもしれない。
H
K 特1 特2
2011
●Hey-newsletter
1
2011
1
HAYマネジメントセミナー
日本企業グローバル化の鍵
グローバル・タレントマネジメント
その当時の日本法人では、
幹部クラスのポジショ
府・要人とパイプをつくったりすることができよう
行するために、地域横断的な ①意思決定プロセス
に決める必要がある。しかし、
グローバルな組織体
事を考えるプロセスである。
特に、非公開企業、再生企業、ITベンチャー、
バ
ンはドイツ人、
フランス人、
あるいはドイツ語やフ
か。人材力=企業力になっていくのである。
とガバナンスの仕組み、②マネジメントコントロー
制の中でタレントの位置づけを示す目的であれば、
また、アセスメントとは、グローバルタレントの
イオベンチャーなどとエグゼクティブクラスのタレ
ランス語を話せる日本人によって占められていた。
いま、世界中の多国籍企業にとって「ダイバーシ
ルのプロセス、③権限と責任の体系、④評価基準
必ずしも
「職能」か
「職務」かを問題にする必要はな
要件を具体的に可視化するとともに、
それに照ら
ントを競合する場合、あるいは起業や事業拡大を
多くの日本人のキャリアは中間管理職止まりであ
ティ」は、単なる社会貢献のためのキャッチフレーズ
などを設計していく必要がある。
い。もちろん、
グローバルな読み替えルールをつく
して高業績者のポテンシャルを診断し、登用や育
ミッションとする事業家人材の採用においては、
長
る。丁度、
日本企業の海外現法でいま起こっている
ではない。さまざまな国のタレントが疎外感や不公
る際に、職務評価というステップは欠かせない。
成計画に反映させるプロセスである。グローバル
期インセンティブが条件交渉の鍵を握ることが多い。
しかし、人をベースにしたグレードと、ポジション
なタレントマネジメントが機能している企業では、
人
ヘイグループの役員報酬チームは、海外でのエグ
をベースにしたグレードが混在していても大きな
材の発掘・診断・育成のためのプロセスが有効に
ゼクティブの採用・引留めに関わる報酬制度設計
支障にはならない
(図3)
。
機能している。ヘイグループでは、グローバルリー
をサポートしている。
ただ、
一つ重要になるのが、
人物を評価するため
ダーのアセスメントや、それに基づく行動改革トレー
ニングなどをサービスとして提供している。
ことが、
当時多くの外資系企業の日本法人で起こっ
平感を感じることなく、お互いに連携し合って持
多くの日本企業が事業のグローバル化を掲げています。そのためには、日本の枠を超えた
ていたのだ。しかし、
いまは多くの多国籍企業が
てる力を最大限に発揮できるようにすることが、
グローバル人材の活用、すなわち多様な人材を適切に配置・活用することを目的とした、
グローバルな人材マネジメントの仕組みを導入し、
ビジネスの必要条件になってきているのだ。
各国の幹部人材にグローバルなキャリアアップの
それでは、
そうしたグローバルなタレントマネジ
機会を提供している。また、
ドイツ語やフランス語
メントのための仕組みをつくる上で、
何がポイント
グローバルな組織体制がデザインできれば、
次
のグローバル共通のモノサシを持つことである。
年
ではなく、
英語をグローバルなコミュニケーション
になるのだろうか。図 1はグローバルなタレントマ
に必要になるのが、グローバルな観点からタレン
1 回はグローバルタレントの人材レビュー
(人事考課)
の共通言語にしている。いまの日本企業に求めら
ネジメントの全体像を表したものである。ここで
トマネジメントを行うための共通グレード体系と、
を行い、
その結果に基づき昇格運用を行う
(職能資
れるのは、
こうしたグローバルな幹部人材を採用し、
ポイントになるのが次の4つである。
人材評価の仕組みづくりである。
格制度)か、
ポスト運用に反映させる
(職務グレー
定着させるためのインフラなのである。
1 グローバルな事業戦略を組織体制に落とし込む
○
各国のタレントが連携し合ってグローバルにビ
ド制度)
ことが重要になる
(図 4)
。よくグローバル
2 グローバルなグレード体系と人材評価の仕組みを持つ
○
ジネスを展開していくためには、
一貫した考え方
共通グレード制度を導入したが、
まったく使われ
3 その上にタレントマネジメントの仕組みを載せて動かす
○
に基づき人材評価が行われ、
それが昇進昇格に反
ていないという話を聞く。それは、
グローバル共
グローバルタレントをめぐる競争が激しさを増す
えた上で、それを上位者や取締役会が監督すると
4 エグゼクティブの報酬政策を明確にする
○
映される必要がある。もちろん、
全社員を対象にす
通の目線でタレントを評価し、
彼らの昇進昇格や配
中で、エグゼクティブの報酬政策が世界中で重要
いうスタイルが主流になっている。
る必要はない。グローバルな課題の実行において
置に反映させる仕組みが欠けているからである。
な論点になりつつある。表面ではリーマン・ショッ
これに対して日本では、
合議制による意思決定
重要な役割を果たす事業家人材、
ビジネスリーダー、
日本企業のグローバル共通人事施策を見ていると、
ク以降、CEOの報酬の高さが社会的バッシングを
スタイルが長く定着してきたことから、
各国のヘッド
マネジャー、高度エキスパートなどが対象になれば
グローバルグレードやグローバルなトレーニングに
受けているが、水面下では各国で不足する有能な
個人に大きな意思決定権を委ねるという考え方が
いい。彼らの目から見て、
グループの中での自己の位
関するものが多い。しかし一方で、
グローバル共
エグゼクティブクラスの人材を確保するために、
ス
受け入れられにくい。
また、
モニタリングの技術や
トックプランをどう活用するかが、新興国も含めて
説明責任という考え方も未発達であり、権限を与
ホットなテーマになっているのだ。
えた時のリスクも大きい。外国人に経営への参画を
「タレントマネジメント」が重要課題となってきます。
どの国の関連会社にどのような人材がいるのかを把握し、それら優秀人材のアセスメン
トや、それに基づく行動改革トレーニングをどのように設計 すべきか? さらに報酬政策
など関連施策のあり方は? これら、企業のグローバル化に求められる施策を支援する、
ヘイ
グループのサービスをご紹介します。
ヘイグループ
高野研一 + グローバル化担当チーム
グローバルなタレント
マネジメントの全体像
も変質してきている。従来は海外現法における技
変化するグローバル化の意味と
人事部への期待
グローバルなグレード体系と
人材評価の仕組みを持つ
能職や営業職の採用・処遇、労務問題への対応な
どがグローバル人事の重要課題であった。しかし、
近年タレントマネジメントという言葉が国内でも使
いまはグローバルな視野で連携しながらビジネス
われるようになってきた。不透明な経営環境の中
グローバルな事業戦略を
組織体制に落とし込む
これまでも日本企業にとってグローバル化は重
を切り拓ける事業家人材、
マネジャー、
エンジニア、
で、価値を生み出すことが求められる時代におい
置づけ、将来のキャリアパスの可能性が見えるように
通の目線による人物評価はあまり重視されていな
要な経営課題であった。しかし、近年その意味す
マーケターなどの発掘・育成・活用へとトップの
ては、事業を切り拓く才覚を持ったタレントが求め
グローバルな事業戦略の中で、
「グローバルブラン
なればいいのである。
そのために職務グレードが必
い。グローバル・タレントマネジメントを本質的に機
るところが変わってきているように感じる。従来
関心が移ってきている。
られるようになる。ハリウッド映画を見ていれば、
ドを育成する」
「新興国仕様の商品を開発する」
「非
要になる。グレードには2 つの役割がある。 ① 報
能させる上では、ここが最も重要になるのである。
は工場の海外移転や、海外での販社展開がグロー
ところが、
ここで問題になるのが、
日本人中心の
キャスティングがいかに重要かがわかるだろう。
いい
日系のグローバルアカウントを開拓する」
などの課題
酬決定の基準を提供することと、② 組織内での
ヘイグループでは、多国籍のコンサルタントチームが、
バル化の中身であった。ところが近年はそれにと
どまらず、研究開発や調達・品質管理、
マーケティ
ング、
行政対応などの重要な機能を、
米国や中国な
どに移すことが課題になってきている。その背景
マネジメントスタイルである。
日本人同士が日本語
タレントの発掘と起用の手間を惜しんでいては、
いい
で重要な意思決定を行い、
外国人の社員にはその
映画はできない。それはビジネスにおいても同じだ。
場その場で指示命令が下りてくるばかり。 外国人
グローバルに事業を成功させるためには、
グロー
社員にとってグローバルなキャリアアップや幹部教
バルに連携し合って動けるビジネスリーダー、エン
が立てられるが、
いまの日本企業を見ていると、たとえ
各社員のステータスを明確にすることである。
ば、
グローバルブランドを育成するという課題を推進
評価基準づくりや人材委員会の運営を支援して
この内、
「職能」か「職務」
かが主に問題となるの
する上で、
本社事業部、
グローバルマーケティング本
部、
海外現法マーケティング部門などの間で、
責任と
ジニア、マーケター、コーポレートスタッフを各国で発
権限が明確になっていないことが多い。このため、
問
ぼ す。このため、各現法のグレード制度においては、
台頭が進む中で、日本中心のビジネスモデルでは、
国人の社員からは閉鎖的で排他的と見なされている。
掘し、起用することが重要になる。そうでなければ、
題が起こるたびに協議が繰り返されるが、結局何
各国の報酬慣行に合わせて職能か職務かを明確
実際多くの日本企業が中期計画の中で、
「脱日系
企業」
を戦略に掲げるようになってきている。部品
国に居ながらにして、
グローバルなキャリアを拓
ヘイグループを例にとっても、
CEOはカナダ人で本
現代自動車などをターゲット顧客として掲げている。
社のフィラデルフィアに居るが、報酬コンサルティ
一方、
自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーも、
ングのヘッドはロンドンにいるイギリス人が務める。
グローバル
組織体制
かつてドイツ企業やフランス企業の日本法人が、
優秀な日本人の採用に苦労していた時代がある。
人材レビュー
昇進昇格運用
つまり、
グローバルな組織設計に一貫性がないのだ。
このため、「海外現法のマーケティング機能と本
アセスメント
多面評価
各国の
雇用環境
制約条件
グローバル
報酬政策
グローバル
役員報酬制度
グローバル
報酬ガバナンス
人材育成
キャリア開発
国際異動の
ガイドライン
社事業部の商品企画機能が分断されている」「海
外現法のガバナンスが利かない」などの声が、
日本
企業からよく聞こえてくる
(次頁図2)
。
こうした状況を克服するためには、
グローバル
な事業戦略に合ったグローバルな組織体制をデザ
インする必要がある。グローバルな戦略課題を実
海外現法は職務主義
(ポジションの格付に基づ
き給与を決定)
といった設計・運用も可能。
あらかじめ議論することは苦にはならない。
また、
そ
れに基づき報告を行い、
監督を受けることも、
職責
行い、昇格
(職能資格制度)
や昇進
(職務グレー
M3
M3
M2
M2
M2
M1
M1
M1
[図2]グローバルな事業戦略と組織体制のねじれ
の一部として受け入れ可能だ。しかし、
それらにつ
ド制度)
に反映させる。
・本社各部および各国現法の経営を担う層は、
グ
ローバルな経営の要となるため、本社が一元的
グローバル共通グレードと人物評価
日本企業のグローバル組織体制は多国籍型とグローバルセントラル型の折衷型になっている。これによって、①現法の
マーケティングと本社の商品企画開発が分断される、②海外現法のガバナンスが利かないなどの問題が生じている。
グローバル事業戦略
ガバナンス
グ コーポレート機能
ロ
事業企画
ー
バ
研究
ル
組 商品企画開発
織
体 調達・品質管理
制
生産
マーケティング
販売
輸出型
多国籍型
グローバルセントラル型
グローバルマトリクス型
国内の主力商品を
海外に輸出
海外各国で事業を
買収
世界を一つの市場と捉え
グローバルにサプライ
チェーンを構築
世界各地域でローカル
ニーズとスケールメリット
のバランスを追求
(例:タタ)
(例:インテル、マイクロソフト) (例:ネスレ、P&G)
の仕組みは、
パソコンにたとえれば
OS(オペレーティングシステム)
のよう
非
管
理
職
層
みとする。
・そのために、グローバルに共通のグレード体系
を導入する(バーチャルで可)
。
リーダーシップ
したり、
キャリア開発を行い、彼らが
グローバルに連携して動くようにな
本社中心
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
本社
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
るためには、その上で機能するアプ
本社中心
各国/各地域
本社中心
グローバルマトリクス
リケーションが必要になる。それがサ
本社
本社
本社
複数国のセンター
クセッションプランやアセスメントなど
業
績
貢
献
度
本社
各国/各地域
本社
複数国のセンター
本社
各国/各地域
本社 + 複数国のセンター
複数国のセンター
各国
各国/各地域
本社 + 各国/各地域
複数国のセンター
+ 各国/各地域
のタレントマネジメントの仕組みである。
バルな課題を実行する上で重要な役
その結果は、昇進昇格やサクセッションプラン、
割を果たすキーポジションの後任人
グローバル・グレード運用
(イメージ)
本社
②リーダーシップの2軸で人材の棚卸を行う。
キャリア開発に反映される。
現法A
現法B
(職能主義)
(職務主義)
(職務主義)
M4
管
理
職
層
フラストレーションを感じる。このため、少なくとも
海外現法では意思決定のスタイル自体を変える必
M3
M3
M2
M2
M2
M1
M1
M1
一グ
元ロ
人ー
材バ
管ル
理
依然として世界第二位の経済大国である。多くの
企業がグローバルな競争力を持ち、
世界中から称
賛されている。
しかし一方で、
グローバルな人材マ
ネジメントという点では、世界の潮流と完全に逆行
してきたといえる。その結果、世界中のトップクラス
の企業が、国籍に関わらず有能な人材を味方に引
き込んでいるのに対して、日本企業は日本人だけ
対しては、本社のグローバル人材委員会が年
サクセッションプランとは、グロー
を修正されたり、衆議を繰り返されるのには激しい
日本は民間セクターが発達しているという点で、
グローバルな経営において中核となる層に
1回人材レビューを実施し、① 業績貢献度と
いて事前に十分議論を尽くさずに、期中に都度方向
要があるのだ。
[図4]
グローバル共通の人材レビュー
なものである。実際にタレントを発掘
業績評価指標、
モニタリングプロセスなどについて
・ただし、グローバルに共通の基準で人材評価を
に人材の評価、登用をコントロールできる仕組
バナンスやコーポレート機能、
マーケティング、
セー
ルスは各国別の運営が行われていることが多い。
管
理
職
層
・国内は職能主義(人の格付に基づき給与を決定)
、
3
なキャリアが拓ける状態が普通になってきているのだ。
グローバル
人材評価基準
サクセッション
プラン
M4
2
て行われる。国籍や居場所に関わらず、
グローバル
経営理念
価値観
グローバル
タレント
マネジメント
の全体像
グローバル
共通グレード
体系
現法B
1
ため、2カ月に1 回の経営会議は転々と場所を変え
こうした背景から、
人事部に対するトップの期待
グローバル
事業戦略
製造などは本社中心の運営が行われる一方で、
ガ
現法A
ン
ー
ゾ
企業やオーナー企業とパイプを築くかが重要な課
係が、
いまは克服すべき最大の壁になっているのだ。
また、
日本企業の場合、
研究開発、
調達、
品質管理、
本社
外国人のビジネスリーダーにとって、経営計画や
ン
ー
ゾ
アメリカ人でボストンにおり、組織コンサルティング
のヘッドはフランス人でパリを拠点としている。この
とってプラスに働いた日本企業同士の排他的な関
ずられて物事が決まってしまうという話をよく聞く。
[図1]グローバル・タレントマネジメントの全体像
リーダーシップ開発やタレントマネジメントのヘッドは
いる。 また、台頭著しい新興国で、いかに政府系
題になっている企業もある。かつては日本企業に
したり、新興国で事業リスクを取ったり、各国の政
グローバル・グレード体系
(イメージ)
ン
ー
ゾ
現地仕様の商品を開発する体制づくりに注力して
も決まらずに先送りされたり、声の大きい人物に引き
く機会を与えることが普通になってきている。我々
メーカーや素材メーカーは、アップルやサムスン、
中国などの新興国で現地のサプライヤーを育て、
どうやってグローバルなベストプラクティスを確立
求めようとすると、途端に大きな軋轢を引き起こす。
[図3]
グローバル共通グレード体系
(職能主義)
(職務主義)
(職務主義)
タレントマネジメントの
仕組みを動かす
欧米では、
ガバナンスの観点から、
各国ヘッドが
自己完結的に動けるだけの大きな意思決定権を与
いる。
に付くのかは、日々の人事管理に大きな影響を及
育の機会は限られている。このため、
日本企業は外
欧米のグローバル企業では、
世界中の社員が自
エグゼクティブの報酬政策を
明確にする
は ①の方である。給与が人に付くのか、ポジション
には、
グローバルな市場の一体化や、新興国市場の
もはや太刀打ちできないという認識がある。
日本型の意思決定
スタイルを見直す
非
管
理
職
層
で小さくまとまろうとしているように見える。戦前
戦後に輸出立国日本を形づくってきた先人たちか
ら見ると、歯がゆく映っているかもしれない。
H
ヘイからのお知らせ
第6回 人事マネジャー養成コース
開催のご案内
企業に求められる仕事の分野で、いま最も大きく変わっているのは人事部門かもしれません。グローバ ル 化 、ダイ
バーシティ、ワークライフバランスなど、新しい課題が次々と現れ、かつての経験知だけでは対応できません。
そこでヘイグループでは、こうした変化に対応できる人事戦略、リーダーシップ、グローバル化対応 などに必要な
スキル、さらにはノウハウを体系的に学んでいただけるコースをご用意しました。
テーマ
Vol.12 No. 1
若手∼中堅部員の基礎力、実務力向上 のプラットフォームとして、また、人事担当者同士の情
報交換の場として、継続的にご利用いただいている企業様も多数ございます。ぜひこの機会に
ご参加ご検討くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
2011
Contents
開催期間 2011年 6月24日
(金)
∼9月30日
(金) 全8回
p.2
・開 催 場 所: 弊社オフィス( 東京 表参道駅 徒歩3分) グローバル企業ソニーの
リーダー像 必要な人材を
いかに確保、
育成していくか
※参加人数によっては近辺の会場に変更いたします。
・主な参加対象:各種企業において人事、または人材開発業務に従事されている方/各種企業の営業・事業部門で、
人事・人材開発業務に従事されている方/必ずしも人事部門におられなくても、本コースにご関
心を持っていただいた方 ―
※同業からの参加はご遠慮願います。
・参 加 費 用:1社より1名様でご参加の場合 29万4000円(税別28万円)
1社より2名様でご参加の場合 54万6000円
(税別52万円)
※1回単位でのご参加はご遠慮ください。
いままでの修了生の方々の声もご覧いただけますので、
「人事マネジャー養成コース」で検索していただき、オンラインでお申し込みください。
シリーズ/経営イノベーション対談 8
エレクトロニクスやエンターテインメント分野で屈指のブランド力を持つソニー。
そのビジョン実現を担う次世代、次々世代人材はどのように育成されているか?
青木氏
「組織が大きくなると異部門の
リーダー交流も重要に」
http://www.haygroup.com/jp/
青木 昭明
p.8
ソニーユニバーシティ
学長
高野 研一
(株)ヘイ コンサルティング グループ
代表取締役社長
先端企業ケーススタディ30
大胆な事業再構築に成功した
フィリップスの人材活用戦略
ヘイグループは1943年に米国フィラデルフィアで創設され、過去60年以上にわたり人事・組織に関わるコンサルティングを展開し
てまいりました。
ヘイシステムはフォーチュン1000社の過半数以上でも採用され、
報酬制度の世界標準となっております。現在
は、
世界50ヵ国近くに86あまりのオフィスを構え、2600人以上のコンサルタントを抱える世界最大の人事経営コンサルティング
会社として広く認知されております。
フィリップスが進めるグローバルな戦略的経営改革を担ってきた人材育成、
組織活用の
あり方とは?さらなる経営改革を支える人材マネジメント戦略とは?
日本支社は1979年に東京に開設され、各産業界を代表する数多くの日本企業や在日外資系企業に対して、
人事制度の改革、人材能
木本 正之 人事本部長
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 力の開発、報酬制度の設計のみならず、企業変革のアーキテクトとして各種コンサルティング・サービスを提供してまいりました。
木本氏
21世紀に入り、ますます複雑化する人事・組織の課題解決に真正面から取り組んでおられるマネジメントの皆様に対して、最も頼
れるビジネス・パートナーとして、今後とも満足度の高いサービスを提供していきたいと考えております。
「人材マネジメントでビジネスを
ドライブすることが、我々人事部
門の役目です」
p.12
HAYマネジメントセミナー
日本企業グローバル化の鍵
グローバル・タレントマネジメント
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グローバル人材を適切に配置・活用するための人材アセスメントやトレーニング、報酬政策など
企業のグローバル化に求められる施策を支援するヘイグループのサービスをご紹介します。
ヘイグループのニュースレターは、
そのとき
どきに求められる変化や進歩について、
さま
ヘイグループ 高野 研一
ざまな企業とご一緒に学び、分析し、提案し
てまいります。
小さい媒体ですが、多くの企業の皆様とと
● Hay Group Newsletter Vol.12 No.1 2011 ● 2011年6月発行 ●編集協力(有)MGI ●撮影 大澤 誠 ●印刷(株)
ティー・プラス ●発行人 浅川 港
Hay Group 2011( 本誌記事・写真の無断複写・転載はご遠慮ください)
もに、
ビジネスの革新を通じて社会に貢献す
る一助でありたいと考えております。
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ヘイからのお知らせ
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グローバル化担当チーム